(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165153
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20241121BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20241121BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H01L25/04 C
H05K7/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081066
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】溝口 智恵
(72)【発明者】
【氏名】福岡 道成
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA07
5E322AA10
5E322DA04
5E322EA10
5E322FA01
5F136BA03
5F136BA06
5F136BA22
5F136BA24
5F136CB07
5F136CB08
5F136DA27
5F136DA50
5F136FA02
(57)【要約】
【課題】複数の発熱部品を有する電力変換装置において各発熱部品を適正に冷却させる。
【解決手段】電力変換装置は、部品搭載部であるベース部に並べて搭載される複数の発熱部品と、ベース部に一体に設けられ、複数の発熱部品を冷却する冷却部13と、を有する。冷却部13は、複数の発熱部品が並ぶ向きに冷媒流路14を形成する流路形成部15と、冷媒流路14において上流側から下流側に向けて延びるフィン18と、を有する。ベース部において各発熱部品に対応する箇所がそれぞれ発熱箇所X1~X3である。冷却部13において各発熱箇所のうち上流側の発熱箇所と下流側の発熱箇所とではフィン構造が異なっており、下流側の発熱箇所では、上流側の発熱箇所に比べて冷媒流通方向に互いに分離されているフィン数が多くなっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品搭載部であるベース部(11)に並べて搭載される複数の発熱部品(12)と、前記ベース部に一体に設けられ、前記複数の発熱部品を冷却する冷却部(13)と、を有する電力変換装置(10)であって、
前記冷却部は、前記複数の発熱部品が並ぶ向きに冷媒流路(14)を形成する流路形成部(15)と、前記冷媒流路において上流側から下流側に向けて延びるフィン(18)と、を有し、
前記ベース部において前記各発熱部品に対応する箇所がそれぞれ発熱箇所であり、
前記冷却部において前記各発熱箇所のうち上流側の発熱箇所と下流側の発熱箇所とではフィン構造が異なっており、下流側の発熱箇所では、上流側の発熱箇所に比べて冷媒流通方向に互いに分離されているフィン数が多くなっている、電力変換装置。
【請求項2】
前記下流側の発熱箇所では、冷媒流通方向のフィン数が上流側に比べて多く、かつ上流側の前記フィンに比べて冷媒流通方向の前記フィンの長さが短い、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記冷却部において、前記各発熱箇所では複数の前記フィンが前記冷媒流路の幅方向に並べて設けられており、
前記下流側の発熱箇所では、冷媒流通方向のフィン数が上流側に比べて多く、かつ冷媒流通方向における前記フィンの各列において、冷媒流通方向の前列の前記フィンの間に、後列の前記フィンが配置されている、請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記下流側の発熱箇所では、前記フィンが、前記上流側の発熱箇所に設けられた前記フィンに対して交差する向きに設けられている、請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記上流側の発熱箇所では、前記冷媒流路において上流側から下流側に向けて延びる長尺板状の前記フィンが設けられているのに対し、前記下流側の発熱箇所では、ピン形状の前記フィンが冷媒流通方向に並べて設けられている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記ベース部には、少なくとも3つの前記発熱部品が並べて搭載されており、
前記冷却部において最上流側の発熱箇所(X1)と、最上流側及び最下流側の間である中間位置の発熱箇所(X2)と、最下流側の発熱箇所(X3)とでは、最上流側、中間位置、最下流側の順に、冷媒流通方向のフィン数が多くなっている、請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記発熱部品として複数のリアクトル(12A~12C)を有し、
前記複数のリアクトルは、前記ベース部において前記冷却部が設けられる面とは反対側の面に、前記冷媒流路の上流側から下流側に向けて順に並べて配置されている、請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昇圧コンバータやインバータ等の電力変換装置は、リアクトルや半導体素子からなる複数の発熱部品を有しており、この発熱部品を冷却するための技術が各種提案されている。例えば特許文献1には、半導体素子に密着配置された冷却管において、半導体素子が密着する部分の冷却効率を向上させるための複数のフィンからなるフィン群が、半導体素子に対応して設けられるとともに、フィン群の中心が、フィン群に対応する半導体素子の中心よりも冷媒流路の上流側に配された技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、冷媒流路を流れる冷媒により複数の発熱部品を冷却する場合には、冷媒流路の上流側の発熱部品と、冷媒流路の下流側の発熱部品とで冷却度合が異なり、各発熱部品で温度差が生じることが懸念される。すなわち、冷媒流路を流れる冷媒は下流側ほど高温になるため、下流側の発熱部品において所望の冷却性能が得られなくなることが懸念される。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の発熱部品を有する電力変換装置において各発熱部品を適正に冷却させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するべく本開示の電力変換装置は、
部品搭載部であるベース部に並べて搭載される複数の発熱部品と、前記ベース部に一体に設けられ、前記複数の発熱部品を冷却する冷却部と、を有する電力変換装置であって、
前記冷却部は、前記複数の発熱部品が並ぶ向きに冷媒流路を形成する流路形成部と、前記冷媒流路において上流側から下流側に向けて延びるフィンと、を有し、
前記ベース部において前記各発熱部品に対応する箇所がそれぞれ発熱箇所であり、
前記冷却部において前記各発熱箇所のうち上流側の発熱箇所と下流側の発熱箇所とではフィン構造が異なっており、下流側の発熱箇所では、上流側の発熱箇所に比べて冷媒流通方向に互いに分離されているフィン数が多くなっている。
【0007】
電力変換装置において、冷却部の冷媒流路を流れる冷媒により複数の発熱部品が所定順序で冷却される場合には、冷媒流路の上流側の発熱部品に比べて、冷媒流路の下流側の発熱部品の冷却性が低下することが懸念される。この点に着目し、各発熱部品に対応する発熱箇所のうち上流側の発熱箇所と下流側の発熱箇所とでフィン構造を異ならせ、下流側の発熱箇所では、上流側の発熱箇所に比べて冷媒流通方向に互いに分離されているフィン数を多くした。これにより、上流側の発熱箇所よりも下流側の発熱箇所の冷却効率が高められる。その結果、複数の発熱部品を有する電力変換装置において各発熱部品を適正に冷却させることができる。
【0008】
なお、冷却部では、冷媒流路に沿って並ぶ複数の発熱箇所のうち最上流側となる発熱箇所と最下流側となる発熱箇所との対比において、最下流側の発熱箇所では、最上流側の発熱箇所に比べて冷媒流通方向のフィン数が多くなっているとよい。また、冷媒流路に沿って並ぶ複数の発熱箇所のうち、隣り合う発熱箇所において冷媒流通方向のフィン数が同じものが含まれていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】冷却部の構成の一部を変更した変形例を示す図。
【
図5】各リアクトルのより具体的な構成を示す平面図。
【
図6】第2実施形態における冷却部の構成を示す図。
【
図7】第3実施形態における冷却部の構成を示す図。
【
図8】第4実施形態における冷却部の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電力変換装置の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、ハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両に搭載される電源システムにおいて、車載バッテリの電圧を昇圧する昇圧コンバータとして用いられる電力変換装置について説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1に示すように、電力変換装置10は、板状をなすベース部11と、そのベース部11に並べて配置された複数のリアクトル12とを備えている。
図1では、横並びに配置された3つのリアクトル12が、リアクトル12A~12Cとして示されている。ベース部11は、例えばアルミニウム等の金属材料よりなる。ベース部11は、電力変換装置10の筐体の一部を構成するものであるとよく、複数のリアクトル12を搭載する部品搭載部となっている。リアクトル12は、周知のとおりコアと、コアに巻回されたコイルとを有している。各リアクトル12は、1つのコイルを有する単相リアクトル、又は複数のコイルを有する多相リアクトルである。本実施形態ではリアクトル12が「発熱部品」に相当する。
【0012】
電力変換装置10において、ベース部11の厚み方向の両側のうちリアクトル12の反対側には、リアクトル12を冷却する冷却部13が設けられている。冷却部13は、ベース部11に一体に設けられており、冷却水等の冷媒を流通させることによりリアクトル12を冷却する水冷構造(液冷構造)となっている。冷却部13は、冷媒流路14を形成する流路形成部15を有しており、ベース部11に対して流路形成部15取り付けられることで、ベース部11と流路形成部15との間に閉空間としての冷媒流路14が形成されている。
図1では、図の左側が上流側、右側が下流側となっており、冷却部13の最上流部に入口部16が設けられ、最下流部に出口部17が設けられている。冷媒は、入口部16から流入し、冷媒流路14内で熱交換を行った後、出口部17から流出する。
【0013】
流路形成部15は底板部15aと周壁部15bとを有しており、周壁部15bによりベース部11と底板部15aとが離間され、それらの間に冷媒流路14が形成されている。周壁部15bのうち各リアクトル12の並び方向の一端側に入口部16が設けられ、他端側に出口部17が設けられている。ただしこの構成に代えて、ベース部11側に周壁部が設けられている構成であってもよい。この場合、ベース部11から延びる周壁部に入口部16及び出口部17が設けられているとよい。冷媒流路14を囲む周壁部は、ベース部11側及び流路形成部15側の少なくともいずれかに設けられていればよい。
【0014】
不図示とするが、冷媒流路14には、冷媒を循環させる外部循環経路が接続されるようになっている。外部循環経路には、例えば電動式のポンプと、ラジエータ等の放熱装置とが設けられ、ポンプの駆動に伴い循環経路と電力変換装置10の冷媒流路14とを通じて冷媒が循環する。
【0015】
ベース部11において厚み方向の両側のうち冷媒流路14側には、上流側から下流側に向けて延びる複数のフィン18が設けられている。フィン18は、平板状をなしている。ベース部11はヒートシンクとして機能する。
【0016】
図2は、冷却部13の構成を示す平面図である。
図2は、
図1の2-2線断面図に相当する。
図2には、ベース部11において各リアクトル12による複数の発熱箇所X(X1~X3)が破線にて示されている。発熱箇所Xが、ベース部11におけるリアクトル12の搭載箇所であり、かつ冷却対象となる箇所となっている。ここでは、3つのリアクトル12A~12Cに対応する発熱箇所Xを、それぞれ発熱箇所X1,X2,X3としている。冷媒流路14における位置で言えば、発熱箇所X1が最上流側の発熱箇所であり、発熱箇所X2が中間位置の発熱箇所であり、発熱箇所X3が最下流側の発熱箇所である。
【0017】
図2において、一対の周壁部15bは所定間隔を隔てて設けられ、その間が冷媒流路14となっている。冷媒流路14は、各発熱箇所X1~X3に重なるように設けられている。冷媒流路14は、途中に折り返しがなく冷媒を一方向に流すものとなっている。フィン18は、冷媒流路14において上流側から下流側に向けて延び、かつ冷媒流路14の幅方向に平行に並べて複数設けられている。
【0018】
フィン18は、冷媒流通方向において、各発熱箇所X1~X3の間となる位置Y1,Y2でそれぞれ分割されている。これにより、発熱箇所X1~X3ごとに、それぞれ複数のフィン18からなるフィン群21が設けられた構成となっている。本実施形態では、フィン群21として第1~第3フィン群21A~21Cを有している。各フィン群21A~21Cは、冷媒流通方向において互いに分離されている。第1フィン群21Aは発熱箇所X1に設けられたフィン群であり、第2フィン群21Bは発熱箇所X2に設けられたフィン群であり、第3フィン群21Cは発熱箇所X3に設けられたフィン群である。各フィン群21A~21Cは、冷媒流通方向に直交する方向に列状に並ぶ複数のフィン18により構成されている。なお、
図2では、冷媒流通方向に直交する方向に並ぶ各列のフィン数を4としているが、これは一例であり、5以上のフィン18が並ぶ構成であってもよい。
【0019】
各フィン群21A~21Cのうち、第1,第2フィン群21A,21Bと、第3フィン群21Cとはフィン構造が互いに異なっており、第3フィン群21Cでは、他のフィン群21A,21Bよりも冷媒流通方向におけるフィン分割数が多くなっている。具体的には、第1,第2フィン群21A,21Bでは、発熱箇所X1,X2における冷媒流通方向のフィン分割数がゼロ(フィン数は1)であるのに対し、第3フィン群21Cでは、発熱箇所X3における冷媒流通方向のフィン分割数が1(フィン数は2)となっている。つまり、冷却部13において、下流側の発熱箇所X3では、上流側の発熱箇所X1,X2に比べて冷媒流通方向に互いに分離されているフィン数が多くなっている。
【0020】
また、第3フィン群21C(下流側の発熱箇所X3)では、上流側のフィン群21A,21Bに比べてフィン18の長さが短くなっている。第3フィン群21Cでは、冷媒流路14の幅方向に並ぶ複数(図では4つ)のフィン18が、冷媒流通方向に2列で設けられている。
【0021】
なお、
図2において、上流側2つの発熱箇所X1,X2では、これら各発熱箇所X1,X2の間においてフィン群21を2つに分割せず、連続する1つのフィン群21を設けることも可能である。すなわち、第1,第2フィン群21A,21Bを1つに統合することも可能である。
【0022】
図2に示す冷却部13では、第3フィン群21Cにおいて、冷媒流通方向のフィン数が上流側に比べて多く、かつ上流側のフィン18に比べてフィン18の長さが短いことにより、フィン側面に形成される境界層が小さくなり、フィン18における熱伝達率の低下が抑制されるものとなっている。すなわち、冷媒の流れの中に平板状のフィン18が存在する場合には、
図3(a)のようにフィン18の先端から流れの方向に沿って境界層Zが形成され、その境界層Zは下流側ほど厚くなる。境界層Zが厚くなるほど、熱伝達率が低下する。この点、
図3(b)のように、冷媒流通方向にフィン18を分割し、かつフィン18の長さを短くすることにより、境界層Zが厚くなることを妨げ、境界層Zを薄い状態に保つことができる。これにより、第3フィン群21Cにおいて、熱伝達率の低下が抑制され、ひいては冷却性能の向上を図ることができる。
【0023】
図2において、上流側2つの発熱箇所X1,X2、すなわち上流側2つのリアクトル12A,12Bの裏側(ベース部11を挟んで反対側)に対応する箇所では、各フィン群21が冷媒流通方向に分離されておらず、発熱箇所X1,X2の間に対応する箇所のみで冷媒流通方向に分離されている。これに対して、最下流側の発熱箇所X3、すなわち最下流側のリアクトル12Cの裏側に対応する箇所では、フィン群21が冷媒流通方向に分離されている。これにより、発熱箇所X1,X2では、境界層Zの破壊の程度が比較的小さくなり、各フィン群21での熱交換が抑制されることにより冷媒温度の上昇が抑えられる。一方、発熱箇所X3では、上流側の発熱箇所X1,X2に比べて境界層Zが薄くなる。そのため、上流側の発熱箇所X1,X2での冷媒温度の上昇による冷却能力の低下を、境界層厚の発達を阻害することによる冷却能力の上昇で補うことができる。
【0024】
ここで、各フィン群21A~21Cのうちフィン18の分割により冷却性能が高められているのは、最下流側の第3フィン群21Cのみであり、上流側2つの発熱箇所X1,X2と最下流側の発熱箇所X3との比較で言えば、最下流側の発熱箇所X3だけについて冷却性能が高められている。この場合、冷媒流路14において冷媒が上流側の発熱箇所X1,X2を通過する際に熱交換により冷媒温度が上昇し、その冷媒温度の上昇により、最下流側の発熱箇所X3の温度と冷媒温度との温度差が小さくなっていても、上流側とは異なるフィン構造により冷却効率の低下を補うことができる。これにより、冷却部全体での冷却率の均等化が図られている。
【0025】
最下流側の第3フィン群21Cからすれば、最上流側の第1フィン群21Aでは冷却効率の低下が図られているとも言える。
【0026】
図2に示すように、各発熱箇所X1~X3には、各フィン群21A~21Cのフィン18として直線板状をなすストレートフィンが設けられている。また、最上流側の第1フィン群21Aのフィン18は、発熱箇所X1よりも上流側に延びる直線余剰部分を含むように設けられ、最下流側の第3フィン群21Cのフィン18は、発熱箇所X3よりも下流側に延びる直線余剰部分を含むように設けられている。これにより、冷媒流路14の入口付近と出口付近とにおいて冷媒の流れが整えられることで冷媒の流通性が良好なものとなり、流路全体の冷却効率を確保できる。なお、最上流側及び最下流側の各フィン群21A,21Cでは、各発熱箇所X1,X3の上流側及び下流側に余剰部分を有するが、発熱箇所X1の上流側及び発熱箇所X3の下流側において余剰部分がより長くなっているとよい。
【0027】
冷却部13について
図2の構成の一部を変更した変形例を
図4に示す。
【0028】
図4(a)では、
図2と同様に、第1,第2フィン群21A,21Bと、第3フィン群21Cとでフィン構造が異なっている。ただし、第3フィン群21Cのフィン構造が
図2の構成から変更されており、冷媒流通方向のフィン分割数が2(フィン数は3)となっている。
【0029】
図4(b)では、第1フィン群21Aと、第2,第3フィン群21B,21Cとでフィン構造が異なるものとなっている。具体的には、第1フィン群21Aでは、発熱箇所X1における冷媒流通方向のフィン分割数がゼロ(フィン数は1)であるのに対し、第2,第3フィン群21B,21Cでは、発熱箇所X2,X3における冷媒流通方向のフィン分割数が1(フィン数は2)となっている。本構成でも
図2の構成と同様に、冷却部13において、下流側の発熱箇所(発熱箇所X2,X3)では、上流側の発熱箇所(発熱箇所X1)に比べて冷媒流通方向に分離されているフィン数が多くなっている。また、第2,第3フィン群21B,21Cでは、上流側の第1フィン群21Aに比べてフィン18の長さが短くなっている。
【0030】
図4(c)では、各フィン群21A~21Cでフィン構造が互いに異なるものとなっている。具体的には、第1フィン群21Aでは、発熱箇所X1における冷媒流通方向のフィン分割数がゼロ(フィン数は1)、第2フィン群21Bでは、発熱箇所X2における冷媒流通方向のフィン分割数が1(フィン数は2)、第3フィン群21Cでは、発熱箇所X3における冷媒流通方向のフィン分割数が2(フィン数は3)となっている。本構成でも
図2の構成と同様に、冷却部13において、下流側の発熱箇所では、上流側の発熱箇所に比べて冷媒流通方向に分離されているフィン数が多くなっている。
【0031】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0032】
電力変換装置10において、冷却部13の冷媒流路14を流れる冷媒により複数のリアクトル12が所定順序で冷却される場合には、冷媒流路14の上流側のリアクトル12に比べて、冷媒流路14の下流側のリアクトル12の冷却性が低下することが懸念される。この点に着目し、各リアクトル12に対応する発熱箇所X1~X3のうち上流側の発熱箇所と下流側の発熱箇所とでフィン構造を異ならせ、下流側の発熱箇所では、上流側の発熱箇所に比べて冷媒流通方向に互いに分離されているフィン数を多くした。これにより、上流側の発熱箇所よりも下流側の発熱箇所の冷却効率が高められる。その結果、複数のリアクトル12を有する電力変換装置10において各リアクトル12を適正に冷却させることができる。
【0033】
各フィン群21A~21Cのうち最下流側の第3フィン群21C(発熱箇所X3)において、冷媒流通方向のフィン数を上流側に比べて多くし、かつ上流側のフィン群(発熱箇所X1,X2)に比べてフィン18の長さを短くした。この場合、最下流側の第3フィン群21において、境界層の発達を抑制し、却効率を確保できる。
【0034】
図4(c)に示すように、第1フィン群21A、第2フィン群21B、第3フィン群21Cの順(すなわち、最上流側の発熱箇所X1、中間位置の発熱箇所X2、最下流側の発熱箇所X3の順)に冷媒流通方向のフィン数が多くなる構成とした。この場合、中間位置の発熱箇所X2に対して、最上流側の発熱箇所X1の冷却効率を低くし、かつ最下流側の発熱箇所X3の冷却効率を高くすることにより、電力変換装置10の各リアクトル12A~12Cについて冷却度合を均等化する上で好適な構成を実現することができる。
【0035】
複数のリアクトル12(12A~12C)は、電力変換装置10のベース部11において冷却部13が設けられる面とは反対側の面に、冷媒流路14の上流側から下流側に向けて順に並べて配置されている。こうした電力変換装置10において、同一の冷媒流路14を利用する複数のリアクトル12を一様に冷却できるようにすることは、近年、特に実用的意義が高いといえる。すなわち、電気自動車においては、電動機モータに要求される駆動力が大きくなる傾向にあり、リアクトル12では電力(電流)の増加に伴い発熱量が増える一方、軽量・小型化の要求が高いことからリアクトル12の外形や配置面積を大きくし難い傾向にある。このため、リアクトル12の配置面積当たりの冷却すべき熱量は従来よりも大きくなっている。また、電力変換装置10を構成する発熱部品の中でも、リアクトル12は、インバータ等の半導体素子よりも発熱量も配置面積も大きい傾向がある。さらに、リアクトル同士を隣接して並べて配置することが多い。そのため、複数のリアクトル12が配置されているところが高温になり易く、熱がこもり易くなる方向に導いている。
【0036】
本実施形態の技術は、冷媒温度の上昇による冷却能力の低下を境界層厚の発達を阻害することによる冷却能力の上昇で補うようにして、冷媒温度の上昇と境界層の厚さを調整することにより、電力変換装置10に用いられるリアクトル12が適正に機能する温度環境を確保するという課題を解決できる。
【0037】
図1及び
図2に示す各リアクトル12のより具体的な構成を
図5に示す。
図5では、各リアクトル12が、略リング状のコア31と、コア31に巻回された一対のコイル32とを有しており、各リアクトル12が並ぶ方向(図の左右方向)に、互いに離間した状態で一対のコイル32が配置されている。一対のコイル32の間にはコイル間隙間が形成されている。発熱箇所Xは、概ねリアクトル12が平面視で投影される領域(投影部分を含む領域)となっている。
【0038】
この場合、各発熱箇所Xにおいて各コイル32に対応する箇所は発熱量が大きい。このため、
図2又は
図4のように、一対のコイル32の間となる位置(コイル間隙間)にフィン18が分離された箇所を設けることにより、発熱源であるコイル32に対応する箇所での冷媒流路14内の境界層の発達を破壊し、冷却効率を上げることができる。なお、発熱箇所X(破線枠の内側)にはコイル32が存在しない部位もあるが、ベース部11において発熱箇所Xはベース部11での伝熱より熱が集まる所となり高温となる。また、リアクトル12の一対のコイル32の配置方向によっては、発熱箇所X(破線枠内)の全体が発熱箇所となるケースもある。
【0039】
以下に、上記第1実施形態の一部を変更した他の実施形態について説明する。
【0040】
(第2実施形態)
本実施形態では、電力変換装置10の冷却部13を、
図6に示す構成としている。この場合、下流側の発熱箇所では、冷媒流通方向のフィン数を上流側に比べて多くし、かつ冷媒流通方向におけるフィン18の各列において、冷媒流通方向の前列のフィン18の間に、後列のフィン18が配置される構成となっている。
図6の構成を具体的に説明する。
【0041】
図6(a),(b)では、
図2と同様に、上流側の発熱箇所X1,X2における第1,第2フィン群21A,21Bと、下流側の発熱箇所X3における第3フィン群21Cとでフィン構造が異なっている。本実施形態では特に、第3フィン群21Cにおいて、冷媒流通方向のフィン分割数が他よりも多いためにフィン18の長さが短く、かつ冷媒流通方向の各列でフィン18が互い違いに配置されている。
【0042】
図6(a)では、第3フィン群21Cにおいて、1列目(最上流側のフィン列)の各フィン18は第2フィン群21Bの各フィン18の延長線上に配置され、2列目のフィン18は1列目の各フィン18の間に配置され、3列目のフィン18は2列目の各フィン18の間に配置されている。なお、1列目と3列目のフィン18は、第2フィン群21Bの各フィン18の延長線上に配置されているが、3列目のフィン18が第2フィン群21Bの各フィン18の延長線上から外れていてもよい。4列目のフィン18は、発熱箇所X3よりも下流側においてストレートフィンとして設けられている。また、
図6(b)では、1列目~3列目の配置パターンは異なるが、
図6(b)と同様に各列で交互配置となっている。
【0043】
また、
図6(c)では、3つの各フィン群21A~21Cにおいてフィン構造が異なり、それぞれ冷媒流通方向のフィン分割数(フィン数)が異なっている。この場合、下流側のフィン群ほど、フィン分割数(フィン数)が多くなっている。また、第3フィン群21Cでは、冷媒流通方向の各列でフィン18が互い違いに配置されている。
【0044】
本実施形態の構成によれば、冷媒流路14において冷媒が第3フィン群21Cに流れ込む際に、冷媒がフィン18に当たって乱流が生じ易くなる。これにより、第3フィン群21Cでの冷却効率を高めることができる。
【0045】
また、
図6(c)の構成では、中間位置の第2フィン群21Bに対して、最上流側の第1フィン群21Aの冷却効率を低くし、かつ最下流側の第3フィン群21Cの冷却効率を高くすることができる。これにより、電力変換装置10の各リアクトル12A~12Cについて冷却度合を均等化する上で好適な構成を実現することができる。
【0046】
(第3実施形態)
本実施形態では、電力変換装置10の冷却部13を、
図7に示す構成としている。この場合、下流側の発熱箇所では、フィン18が、上流側の発熱箇所に設けられたフィン18に対して交差する向きに設けられている構成となっている。
図7の構成を具体的に説明する。
【0047】
図7(a),(b)では、
図2と同様に、上流側の発熱箇所X1,X2における第1,第2フィン群21A,21Bと、下流側の発熱箇所X3における第3フィン群21Cとでフィン構造が異なっている。本実施形態では特に、第3フィン群21Cにおいて、フィン18が、第1,第2フィン群21A,21Bのフィン18に対して交差する向きに設けられている。換言すれば、第3フィン群21Cのフィン18が、第1,第2フィン群21A,21Bのフィン18に対し角度を付けて設けられている。この場合、第3フィン群21Cのフィン18が、上流側の第1,第2フィン群21A,21Bを通過する冷媒を遮るように設けられており、発熱箇所X3での冷却効率が高められる。
【0048】
また、第3フィン群21Cでは、1列目(前列)と2列目(後列)とでフィン18の向きが異なっている。そのため、第3フィン群21Cにおいて、冷媒の流れの向きが複数箇所で切り替えられ、冷却効率が高められる。なお、第3フィン群21Cにおいて、最後列のフィン18(発熱箇所X3よりも下流側のフィン18)は、第1,第2フィン群21A,21Bと同様に、フィン18の向きが、流路形成部15の周壁部15bに平行となる向き(すなわち各発熱箇所X1~X3の並び方向)になっている。
【0049】
本実施形態の構成によれば、冷媒流路14を流れる冷媒がフィン18の板面に当たり易くなり、第3フィン群21Cにおいて冷却効率を高めることができる。
【0050】
(第4実施形態)
本実施形態では、電力変換装置10の冷却部13を、
図8に示す構成としている。この場合、上流側の発熱箇所では、冷媒流路において上流側から下流側に向けて延びる長尺板状のフィン18が設けられているのに対し、下流側の発熱箇所では、ピン形状のフィンが冷媒流通方向に並べて設けられている構成となっている。
【0051】
図8(a)では、第3フィン群21Cのフィン18として、ピン形状のピンフィン18Aと平板状の平板フィン18Bとが設けられている。ピンフィン18Aの横断面は、真円又は楕円の円形状をなしている。ピンフィン18Aの横断面が楕円である場合、長径の向きが冷媒流通方向となるようにピンフィン18Aが配置されるとよい。ピンフィン18Aの直径(楕円の場合は短径)は、平板状のフィン18の板厚よりも大きいとよい。なお、ピンフィン18Aの横断面は、円形状以外であってもよく、円弧を上流側とする半円状としたり、3つ以上の辺を有する多角形状としたりしてもよい。
【0052】
ピンフィン18Aは、発熱箇所X3の上流側に設けられ、その下流側に平板フィン18Bが設けられている。ピンフィン18Aは、冷媒流通方向に複数列に並べて設けられている。発熱箇所X3において、ピンフィン18Aは、冷媒流通方向の各列で互い違いとなる位置に配置されている。フィン18をピンフィン18Aとしたことにより、冷媒流通方向に互いに分離されているフィン数を増やすことができ、下流側の発熱箇所X3におけるフィン数を、上流側の発熱箇所X1,X2におけるフィン数よりも多くすることができる。各発熱箇所X1~X3における各フィン18の総表面積を比べた場合、発熱箇所X3における各フィン18の総表面積が最も大きくなっているとよい。
【0053】
また、
図8(b)では、
図8(a)と同様に、第3フィン群21Cに、ピンフィン18Aと平板フィン18Bとが設けられるとともに、第2フィン群21Bにおいて、フィン18が冷媒流通方向に2分割されている。
【0054】
本実施形態の構成によれば、下流側の発熱箇所X3において、上流側の発熱箇所X1,X2よりも冷媒流通方向のフィン数を増やすことで、第3フィン群21Cにおいて冷却効率を高めることができる。
【0055】
(他の実施形態)
上記実施形態を例えば次のように変更してもよい。
【0056】
・上記各実施形態では、電力変換装置10においてベース部11に3つの発熱箇所を有する構成を想定したが、これを変更し、2つの発熱箇所を有する構成、又は4つ以上の発熱箇所を有する構成であってもよい。例えば4つの発熱箇所を有する構成では、少なくとも最下流側の発熱箇所(4番目の発熱箇所)において、上流側の発熱箇所とはフィン構造が異なり、冷媒流通方向のフィン数が多くなっているとよい。この場合、最上流側となる発熱箇所と最下流側となる発熱箇所との対比において、最下流側の発熱箇所では、最上流側の発熱箇所に比べて冷媒流通方向のフィン数が多くなっていればよく、隣り合う発熱箇所において冷媒流通方向のフィン数が同じものが含まれていてもよい。また、冷媒流通方向に沿ってn個の発熱箇所を有する構成では、最上流側からi番目(1=1~n-1)とi+1番目の発熱箇所において、i+1番目の発熱箇所が、i番目の発熱箇所と比べて冷媒流通方向のフィン数が同じ又は多い構成であるとよい。
【0057】
例えば4つの発熱箇所を有する構成において、最上流側の発熱箇所を含む上流側1つの発熱箇所、上流側2つの発熱箇所、又は上流側3つの発熱箇所では、各フィン群21が冷媒流通方向に分割されていない構成とし、かつ最下流側の発熱箇所を含む残りの発熱箇所では、フィン群21が冷媒流通方向に分割されている構成とするとよい。これにより、上流側の発熱箇所において冷媒温度の上昇を抑制できるとともに、下流側の発熱箇所において上流側での温度上昇による冷却能力の低下を、境界層の発達を阻害することによる冷却能力の上昇で補うことができる。
【0058】
・電力変換装置10の冷却部13において、冷媒流路14の途中にコーナー部が設けられている構成、又は冷媒流路14の途中に折り返し(Uターン部)が設けられている構成とすることも可能である。かかる構成においても、上流側の発熱箇所と下流側の発熱箇所とでフィン構造を異ならせ、下流側の発熱箇所では、上流側の発熱箇所に比べて冷媒流通方向のフィン数を多くするとよい。
【0059】
・電力変換装置は、複数のスイッチングデバイスを有するインバータであってもよい。この場合、インバータに設けられる半導体スイッチング素子(スイッチングデバイス)が発熱部品であり、この発熱部品を冷却対象として冷却が行われるものであるとよい。
【0060】
・本発明の電力変換装置は、車両用の電源システムに用いられる以外に、飛行体や船舶等、他の移動体の電源システムに用いられるものであってもよい。また、定置式の電源システムに用いられるものであってもよい。
【0061】
上述の実施形態から抽出される技術思想を以下に記載する。
[構成1]
部品搭載部であるベース部(11)に並べて搭載される複数の発熱部品(12)と、前記ベース部に一体に設けられ、前記複数の発熱部品を冷却する冷却部(13)と、を有する電力変換装置(10)であって、
前記冷却部は、前記複数の発熱部品が並ぶ向きに冷媒流路(14)を形成する流路形成部(15)と、前記冷媒流路において上流側から下流側に向けて延びるフィン(18)と、を有し、
前記ベース部において前記各発熱部品に対応する箇所がそれぞれ発熱箇所であり、
前記冷却部において前記各発熱箇所のうち上流側の発熱箇所と下流側の発熱箇所とではフィン構造が異なっており、下流側の発熱箇所では、上流側の発熱箇所に比べて冷媒流通方向に互いに分離されているフィン数が多くなっている、電力変換装置。
[構成2]
前記下流側の発熱箇所では、冷媒流通方向のフィン数が上流側に比べて多く、かつ上流側の前記フィンに比べて冷媒流通方向の前記フィンの長さが短い、構成1に記載の電力変換装置。
[構成3]
前記冷却部において、前記各発熱箇所では複数の前記フィンが前記冷媒流路の幅方向に並べて設けられており、
前記下流側の発熱箇所では、冷媒流通方向のフィン数が上流側に比べて多く、かつ冷媒流通方向における前記フィンの各列において、冷媒流通方向の前列の前記フィンの間に、後列の前記フィンが配置されている、構成1又は2に記載の電力変換装置。
[構成4]
前記下流側の発熱箇所では、前記フィンが、前記上流側の発熱箇所に設けられた前記フィンに対して交差する向きに設けられている、構成1又は2に記載の電力変換装置。
[構成5]
前記上流側の発熱箇所では、前記冷媒流路において上流側から下流側に向けて延びる長尺板状の前記フィンが設けられているのに対し、前記下流側の発熱箇所では、ピン形状の前記フィンが冷媒流通方向に並べて設けられている、構成1~3のいずれかに記載の電力変換装置。
[構成6]
前記ベース部には、少なくとも3つの前記発熱部品が並べて搭載されており、
前記冷却部において最上流側の発熱箇所(X1)と、最上流側及び最下流側の間である中間位置の発熱箇所(X2)と、最下流側の発熱箇所(X3)とでは、最上流側、中間位置、最下流側の順に、冷媒流通方向のフィン数が多くなっている、構成1~5のいずれかに記載の電力変換装置。
[構成7]
前記発熱部品として複数のリアクトル(12A~12C)を有し、
前記複数のリアクトルは、前記ベース部において前記冷却部が設けられる面とは反対側の面に、前記冷媒流路の上流側から下流側に向けて順に並べて配置されている、構成1~6のいずれかに記載の電力変換装置。
【符号の説明】
【0062】
10…電力変換装置、11…ベース部、12…リアクトル、13…冷却部、14…冷媒流路、15…流路形成部、18…フィン、X1~X3…発熱箇所。