(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165156
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】自律走行システム、自律走行型ロボットの走行制御方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20241121BHJP
A47L 9/28 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G05D1/02 J
A47L9/28 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081070
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】井上 智章
(72)【発明者】
【氏名】西岡 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】本田 廉治
【テーマコード(参考)】
3B057
5H301
【Fターム(参考)】
3B057DE02
5H301AA01
5H301BB10
5H301BB11
5H301BB12
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301HH10
5H301LL06
5H301LL11
5H301LL14
(57)【要約】
【課題】障害物検出の正確性を高める。
【解決手段】自律走行システム300は、本体101を走行させる走行部160と、自律走行型ロボットの周囲の物体と自律走行型ロボットとの位置関係を含むセンサ情報を取得するセンサ情報取得部121と、位置関係に基づいて、フロアの地図上での自律走行型ロボットの現在位置である自己位置を算出する自己位置算出部122と、センサ情報に基づいて、自律走行型ロボットの前部から対象物までのフロアの床面までの距離である床面距離を算出する距離算出部124と、床面の所定地点での反射率に対応した測距補正値を記憶する補正値記憶部125と、距離算出部124が算出した床面距離を、補正値記憶部125に記憶された測距補正値に基づき補正する補正部126とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアを自律的に走行する自律走行型ロボットを備える自律走行システムであって、
本体を走行させる走行部と、
前記自律走行型ロボットの周囲の物体と前記自律走行型ロボットとの位置関係を含むセンサ情報を取得するセンサ情報取得部と、
前記位置関係に基づいて、前記フロアの地図上での前記自律走行型ロボットの現在位置である自己位置を算出する自己位置算出部と、
前記センサ情報に基づいて、前記自律走行型ロボットの前部から対象物までの前記フロアの床面までの距離である床面距離を算出する距離算出部と、
前記床面の所定地点での反射率に対応した測距補正値を記憶する補正値記憶部と、
前記距離算出部が算出した前記床面距離を、前記補正値記憶部に記憶された前記測距補正値に基づき補正する補正部とを有する、
自律走行システム。
【請求項2】
前記床面距離を用いて、障害物との接近を検知する障害物検知部と、
前記障害物検知部での検知結果に基づいて、前記障害物を回避するように前記走行部を制御する走行制御部とを備える、
請求項1に記載の自律走行システム。
【請求項3】
自律走行型ロボットが走行する地図を提示する提示部と、
受付部とを備え、
前記提示部は、前記補正部が補正した前記床面距離、前記補正値記憶部が記憶した前記測距補正値及び前記床面の反射率に関する反射率情報の少なくとも1つを提示し、
前記受付部には、前記提示部に提示された前記床面距離、前記測距補正値及び前記反射率情報の少なくとも1つを修正するための修正指示情報が入力される、
請求項2に記載の自律走行システム。
【請求項4】
前記提示部は、前記自律走行型ロボットが前記障害物を回避した回避地点と、前記測距補正値とを対応付けて提示する、
請求項3に記載の自律走行システム。
【請求項5】
前記自律走行型ロボットが走行する地図を管理する地図管理部と、
前記補正値記憶部は、
前記地図内での前記自己位置から前記床面距離だけ離れた地点と、前記測距補正値と対応付けて記憶する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の自律走行システム。
【請求項6】
フロアを自律的に走行する自律走行型ロボットの走行制御方法であって、
前記自律走行型ロボットの周囲の物体と前記自律走行型ロボットとの位置関係を含むセンサ情報を取得するセンサ情報取得ステップと、
前記位置関係に基づいて、前記フロアの地図上での前記自律走行型ロボットの現在位置である自己位置を算出する自己位置算出ステップと、
前記センサ情報に基づいて、前記自律走行型ロボットの前部から前記フロアの床面までの距離である床面距離を算出する床面距離算出ステップと、
前記床面の所定地点での反射率に対応付けて測距補正値を記憶する補正値記憶ステップと、
前記床面距離算出ステップで算出された前記床面距離を、補正値記憶ステップで記憶された前記測距補正値に基づき補正する補正ステップとを有する、
自律走行型ロボットの走行制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の自律走行型ロボットの走行制御方法をコンピュータに実行させるための
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自律走行システム、自律走行型ロボットの走行制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、移動ロボットの前面に搭載された複数の光学式距離センサで床面までの距離を測定し、それらの測距結果の変化で、床面上の障害物を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、床面の材質及び色などが変化すると、反射率も変化してしまうために、床面までの距離を正確に測定できず、障害物の検出も正確に行えないおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、障害物検出の正確性を高めることができる自律走行システム、自律走行型ロボットの走行制御方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る自律走行システムは、フロアを自律的に走行する自律走行型ロボットを備える自律走行システムであって、本体を走行させる走行部と、前記自律走行型ロボットの周囲の物体と前記自律走行型ロボットとの位置関係を含むセンサ情報を取得するセンサ情報取得部と、前記位置関係に基づいて、前記フロアの地図上での前記自律走行型ロボットの現在位置である自己位置を算出する自己位置算出部と、前記センサ情報に基づいて、前記自律走行型ロボットの前部から対象物までの前記フロアの床面までの距離である床面距離を算出する距離算出部と、前記床面の所定地点での反射率に対応した測距補正値を記憶する補正値記憶部と、前記距離算出部が算出した前記床面距離を、前記補正値記憶部に記憶された前記測距補正値に基づき補正する補正部とを有する。
【0007】
また、本開示の一態様に係る自律走行型ロボットの走行制御方法は、フロアを自律的に走行する自律走行型ロボットの走行制御方法であって、前記自律走行型ロボットの周囲の物体と前記自律走行型ロボットとの位置関係を含むセンサ情報を取得するセンサ情報取得ステップと、前記位置関係に基づいて、前記フロアの地図上での前記自律走行型ロボットの現在位置である自己位置を算出する自己位置算出ステップと、前記センサ情報に基づいて、前記自律走行型ロボットの前部から前記フロアの床面までの距離である床面距離を算出する床面距離算出ステップと、前記床面の所定地点での反射率に対応付けて測距補正値を記憶する補正値記憶ステップと、前記床面距離算出ステップで算出された前記床面距離を、補正値記憶ステップで記憶された前記測距補正値に基づき補正する補正ステップとを有する。
【0008】
なお、本開示は、前記自律走行型ロボットの走行制御方法をコンピュータに実施させるためのプログラムとして実現されてもよい。また、上記プログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能なCD-ROM等の非一時的な記録媒体として実現されてもよい。また、本開示は、そのプログラムを示す情報、データ又は信号として実現されてもよい。そして、それらプログラム、情報、データ及び信号は、インターネット等の通信ネットワークを介して配信されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の自律走行システム、自律走行型ロボットの走行制御方法及びプログラムは、障害物検出の正確性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る自律走行システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1における自律走行型ロボットを斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1における自律走行型ロボットを裏面方向から見た外観を示す底面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る地図管理部で作成されたフロアの地図の一例を示す平面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係る障害物センサでの測距のメカニズムを示す説明図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係る測距補正値が記憶された補正値マップの一例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係る測距補正値が記憶された補正値マップの一例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1に係る測距補正値取得方法の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施の形態1に係る走行制御方法の流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施の形態1に係る床面距離の変動例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、実施の形態1に係る情報端末の提示部に補正値マップが表示された一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本開示に係る自律走行システム等の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を
示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
なお、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面及び以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
【0014】
また、以下の実施の形態においては、フロアを走行する自律走行型ロボットを鉛直上方側から見た場合を上面視とし、鉛直下方側から見た場合を底面視として記載する場合がある。
【0015】
(実施の形態1)
[自律走行システム]
[1.構成]
まず、実施の形態1における自律走行システムの構成について説明する。
図1は、実施の形態1に係る自律走行システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
【0016】
自律走行システム300は、フロアを自律的に走行する自律走行型ロボット100を備えるシステムである。自律走行システム300は、フロアから障害物を取り除いた状態で自律走行型ロボット100を走行させることで、フロアの床面の所定地点での反射率に対応付けて測距補正値を記憶し、その測距補正値を用いて走行計画を作成する。走行計画は、自律走行型ロボットの走行経路、及び、走行速度などを含む。
【0017】
フロアは、自律走行型ロボット100が走行するフロアであり、例えば、壁、窓、又は、パーティションなどで区画されたフロアであってもよいし、当該フロアの一部の範囲であってもよい。また、フロアは、建物の中に限られず、船舶、又は、屋外に存在してもよい。
【0018】
なお、本実施の形態では、自律走行型ロボット100は、掃除機能を備える掃除ロボットであるが、掃除ロボットに限られない。自律走行型ロボット100は、フロアを自律的に走行するロボットであればよく、例えば、床面を拭き掃除する拭き掃除ロボット、床均しロボット、芝刈りロボット、紫外線もしくは消毒剤などで床面を消毒する消毒ロボット、打音検査ロボット、又は、地表もしくは地中の物体などを探査する探査ロボットなどであってもよい。
【0019】
図1に示されるように、自律走行システム300は、例えば、自律走行型ロボット100と情報端末200とを備えている。以下、各構成について説明する。
【0020】
[1-1.自律走行型ロボット]
まず、自律走行型ロボット100について
図1~
図3を参照しながら説明する。
図2は、実施の形態1における自律走行型ロボット100を斜め上方から見た斜視図である。
図3は、実施の形態1における自律走行型ロボット100を裏面方向から見た外観を示す底面図である。以下では、自律走行型ロボット100が掃除ロボットである例を説明するが、あくまでも一例であり、この例に限られない。
【0021】
図1~
図3に示されるように、自律走行型ロボット100は、例えば、各種の構成要素が搭載される本体101と、位置センサ102と、通信部110と、制御部120と、記憶部130と、センサ部140と、通知部150と、走行部160と、掃除部170とを備える。走行部160は、例えば、本体101を移動させる車輪161を有する。掃除部170は、例えば、フロアに存在するごみを掃除するサイドブラシ171及びメインブラシ172を有する。制御部120は、自律走行型ロボット100の動作に関する各種情報処理を行う。制御部120は、走行部160を制御する走行制御部131と、掃除部170を制御する掃除制御部132とを有する。本体101は、走行部160、掃除部170、及び、制御部120などを収容する筐体である。
【0022】
走行部160は、走行制御部131からの指示に基づき自律走行型ロボット100を走行させる。走行部160は、フロア上を走行する車輪161、車輪161にトルクを与える走行用モータ(不図示)及び走行用モータを収容するハウジング(不図示)などを有する。また、自律走行型ロボット100は、キャスタ162を補助輪として備えた対向二輪型であってもよい。この場合、走行部160は、一対の走行ユニットのそれぞれの車輪161の回転を独立して制御することで、前進、後退、左回転及び右回転など自律走行型ロボット100を自在に走行させることができる。
【0023】
掃除部170は、掃除制御部132からの指示に基づき、フロア上の塵埃を吸引口173(
図3参照)から吸引し、本体101の内部に吸引した塵埃を本体101内に収容する。掃除部170は、サイドブラシ171及びメインブラシ172を回転させるブラシ回転モータ(不図示)、吸引口173からごみを吸引する吸引モータ(不図示)、これらのモータに電力を伝達する動力伝達部(不図示)、及び、吸引したごみを収容する収容部(不図示)などを備えている。
【0024】
走行制御部131は、自律走行型ロボット100が走行計画に従って走行するように、走行部160を制御する。より具体的には、走行制御部131は、走行計画に基づいて、走行部160の動作を制御するための情報処理を行う。例えば、走行制御部131は、走行計画に加え、フロアの段差マップ及び自己位置などの情報に基づいて、走行部160の制御条件を導出し、制御条件に基づいて、走行部160の動作を制御するための制御信号を生成する。走行制御部131は、生成した制御信号を走行部160に出力する。なお、走行部160の制御条件の導出などの詳細については、従来の自律走行型ロボットと同様であるため、説明を省略する。
【0025】
掃除制御部132は、自律走行型ロボット100が掃除計画に従って掃除を行うように、掃除部170を制御する。より具体的には、掃除制御部132は、掃除計画に基づいて、掃除部170の動作を制御するための情報処理を行う。例えば、掃除制御部132は、掃除計画に加え、フロアの段差マップ及び自己位置などの情報に基づいて、掃除部170の制御条件を導出し、制御条件に基づいて、掃除部170の動作を制御するための制御信号を生成する。掃除制御部132は、生成した制御信号を掃除部170に出力する。なお、掃除部170の制御条件の導出などの詳細については、従来の自律走行型掃除ロボットと同様であるため、説明を省略する。
【0026】
位置センサ102は、本体101の周囲の物体と本体101との位置関係を取得する。例えば、位置センサ102は、本体101の上面の中央に配置されており、自律走行型ロボット100と、自律走行型ロボット100の周囲に存在する壁などを含む物体との距離及び方向を含む位置関係を取得する。位置センサ102は、例えば、光を放射し障害物により反射して返ってきた光に基づいて位置関係(例えば、自己から物体までの距離及び方向)を取得するLiDAR(Light Detection And Ranging)、又は、レーザレンジファインダであってもよい。また、位置センサ102は、光の走査軸を1軸又は2軸有することにより、自律走行型ロボット100の周囲の所定の領域の二次元計測、又は、三次元計測を行ってもよい。
【0027】
センサ部140は、自律走行型ロボット100の周囲の物体を検知し、検知された物体に関するセンシングデータを取得する。例えば、
図2及び
図3に示されるように、センサ部140は、障害物センサ141と、エンコーダ143と、床面センサ144とを備える。
【0028】
障害物センサ141は、本体101の前方に(具体的には、進行方向側に)存在する障害物を検知するセンサである。障害物は、フロアを区画する壁以外の物体であり、自律走行型ロボット100の走行方向に存在し、自律走行型ロボット100の走行を妨げる物体である。本実施の形態では、障害物センサ141には、例えば、光学式の3D測距センサが用いられる。障害物センサ141は、本体101の前側面の中央に配置される発光部141a、及び、発光部141aの両側にそれぞれ配置される受光部141bを有し、発光部141aから発信されて障害物によって反射して返ってきた光を受光部141bがそれぞれ受光することで、障害物までの距離、及び、障害物の位置等を検知することができる。
【0029】
エンコーダ143は、走行部160に備えられ、走行用モータによって回転する一対の車輪161のそれぞれの回転角を検出するセンサである。
【0030】
床面センサ144は、本体101の底面の複数個所に設置され、床面が存在するか否かを検出する。
【0031】
なお、自律走行型ロボット100は、上記のセンサ以外のセンサを備えていてもよい。例えば、自律走行型ロボット100は、自律走行型ロボット100の周囲を撮像するカメラ、自律走行型ロボット100が走行する際の加速度を検出する加速度センサ、自律走行型ロボット100が旋回する際の角速度を検出する角速度センサを備えてもよい。また、床面に堆積している塵埃の量を測定する塵埃量センサを備えてもよい。バンパ(不図示)の変位を検出して障害物が衝突したことを検出する接触センサを備えてもよい。
【0032】
通信部110は、自律走行型ロボット100がネットワーク10を介して情報端末200と通信を行うための通信回路である。例えば、通信部110は、ユーザへの提示情報を情報端末200に送信する。通信部110は、広域通信ネットワークを介して通信を行うための通信回路と、局所通信ネットワークを介して通信を行うための通信回路とを備えてもよい。通信部110は、例えば、無線通信を行う無線通信回路である。通信部110が行う通信の通信規格については特に限定されない。
【0033】
なお、通信部110は、情報端末200とは近距離無線通信を行ってもよく、この場合、通信部110には、近距離無線通信を行う通信回路が含まれる。近距離無線通信の通信規格は、BLE(Blutooth(登録商標) Low Energy)またはWi-Fi(登録商標)などであるが、特に限定されない。
【0034】
制御部120は、自律走行型ロボット100の動作を制御するための各種情報処理を行う。制御部120は、具体的には、プロセッサ、マイクロコンピュータ、又は、専用回路によって実現される。また、制御部120は、プロセッサ、マイクロコンピュータ、又は、専用回路のうちの2つ以上の組み合わせによって実現されてもよい。また、制御部120の機能は、制御部120を構成するマイクロコンピュータ又はプロセッサなどのハードウェアが記憶部130に記憶されたコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することによって実現される。
【0035】
制御部120は、機能的な構成要素として、センサ情報取得部121と、自己位置算出部122と、地図管理部123と、距離算出部124と、補正値記憶部125と、補正部126と、障害物検知部127と、走行計画作成部128と、走行制御部131と、掃除制御部132とを備える。これらの機能については、動作例にて具体的に説明する。
【0036】
センサ情報取得部121は、自律走行型ロボット100の周囲の物体と自律走行型ロボット100との位置関係を含むセンサ情報を取得する。当該位置関係は、上述の位置センサ102及びセンサ部140により計測される。センサ情報は、自律走行型ロボット100が備える各種センサのセンシングデータであり、位置関係の他に、例えば、上述の障害物センサ141により検知された障害物までの距離、及び、障害物の位置、並びにエンコーダ143により検出された一対の車輪161のそれぞれの回転角などを含む。
【0037】
自己位置算出部122は、自律走行型ロボット100の周囲の物体と自律走行型ロボット100との位置関係に基づいて、フロアの地図上での自律走行型ロボット100の現在位置である自己位置を算出する。
【0038】
地図管理部123は、上記の位置関係及び自己位置に基づいて、フロアの地図を作成する。
図4は、実施の形態1に係る地図管理部123で作成されたフロアの地図の一例を示す平面図である。
図4においてドットハッチングが付された領域は、自律走行型ロボット100が走行可能な領域である。ドットハッチングが付された領域に隣接するハッチングは壁を示している。
【0039】
距離算出部124は、障害物センサ141により検知された障害物に関する情報(例えば、障害物の距離、及び、位置等)を取得し、取得された情報と、自己位置算出部122により算出された自己位置とに基づいて、フロアの地図上での障害物の位置を算出する。また、距離算出部124は、センサ情報に基づいて、自律走行型ロボット100の前部からフロアの床面Fまでの距離である床面距離を算出する。センサ情報には、障害物センサ141の検出結果も含まれており、この検出結果に基づいて距離算出部124が床面距離を算出する。
【0040】
図5は、実施の形態1に係る障害物センサ141での測距のメカニズムを示す説明図である。
図5に示されるように、発光部141aから照射される光には、本体101の前方に向かうほどフロアの床面Fに近づくように水平方向に対して傾いた成分の光Lが含まれている。この光Lの反射光を受光部141bが受光したことに基づき、距離算出部124は、発光部141aから床面Fまでの床面距離が算出できる。床面距離の始点は発光部141aであり、終点は床面Fでの光Lの反射位置(測距位置T)である。
【0041】
ところで、発光部141aから床面Fまでの基準距離は、障害物センサ141の発光部141aの画角、取り付け高さ、角度などから幾何学的に求めることも可能であるし、実測することで求めることも可能である。
【0042】
つまり、本体101の前方に障害物がない場合には、距離算出部124は、障害物センサ141の検出結果に基づいて、本体101の前部から床面までの床面距離を算出することになるが、その値は、基準距離と同等となる。
【0043】
一方、本体101から基準距離よりも近い位置に障害物が存在した場合には、距離算出部124は、障害物センサ141の検出結果に基づいて、本体101の前部から障害物までの距離を算出する。つまり、算出した距離が基準距離よりも短い場合には、本体101の前方に障害物があると検知される。
【0044】
ここで、
図5に示されるように、自律走行型ロボット100が床面Fよりも明るい色の床面F1を走行している場合には、反射率も高いためにより大きい反射光が受光部141bに入射する。このため、本体101から基準距離よりも近い位置に障害物が存在していないにも関わらず、距離算出部124での算出結果は、基準距離よりも短くなってしまい、障害物があると誤検知されてしまう。
図5のグラフでは、明るい色の床面F1で求められた床面距離(14cm)が、基準距離(20cm)よりも小さくなってしまい、障害物に対する回避を開始する回避開始距離(15cm)を下回った場合を例示している。つまり、自律走行型ロボット100は、障害物が存在しないのに回避動作を行ってしまう。このような誤検知を抑制すべく、本実施の形態の自律走行型ロボット100には、補正値記憶部125、補正部126が備えられている。
【0045】
補正値記憶部125は、床面の所定地点での反射率に対応した測距補正値を記憶する。測距補正値の取得は、フロアの地図作成中あるいは作成後に、フロアの床面から障害物を取り除いた状態で、自律走行型ロボット100で床面の全面を塗りつぶすように走行させる。このとき、距離算出部124は、常に床面距離を算出している。補正値記憶部125は、各測距位置Tでの床面距離と基準距離との差分を測距補正値として記憶する。つまり、補正値記憶部125は、地図内での自己位置から床面距離だけ離れた地点(各測距位置T)と、測距補正値と対応付けて記憶する。
【0046】
例えば
図5のグラフの例では、床面距離(14cm)と基準距離(20cm)との差分が+6cmであるので、+6cmが測距補正値となる。測距補正値は、床面の反射率に依存した値である。つまり、測距補正値は、床面の各測距位置T(所定位置)での反射率に対応した値であると言える。なお、床面の反射率を変動させる要因は、床面の色の明暗だけでなく、床面の素材、表面粗さなどが挙げられる。
【0047】
図6及び
図7は、実施の形態1に係る測距補正値が記憶された補正値マップの一例を示す説明図である。
図6では、ある程度の広さを持つ範囲毎に測距補正値(図中の数値)が記録されている。
図7では、地図を格子状に細分化し、格子(例えば5cm×5cm)毎に測距補正値(図中の数値)が記録されている。
【0048】
補正部126は、距離算出部124が算出した床面距離を、補正値記憶部125に記憶された測距補正値に基づき補正する。補正部126での補正は、補正値マップの作成後の走行で行われる。補正部126は、走行時における各測距位置Tで算出された床面距離に対し、当該測距位置Tでの測距補正値に基づき補正を行う。例えば、例えば
図5のグラフの例では、測距位置Tでの床面距離(14cm)を、測距位置Tでの測距補正値(+6cm)に基づいて補正し、補正後の床面距離を20cmとする。
【0049】
障害物検知部127は、補正部126で補正された床面距離を用いて、自律走行型ロボット100の障害物に対する接近を検知する。
【0050】
走行計画作成部128は、フロアの地図及び自己位置に基づいて、自律走行型ロボット100がフロアを走行するための走行計画を作成する。
【0051】
例えば、自律走行型ロボット100が掃除ロボットである場合、走行計画作成部128は、さらに、掃除計画を作成してもよい。掃除計画には、エリア内の複数の掃除エリアを掃除する掃除順序、各掃除エリアにおける走行経路及び掃除態様などが含まれる。掃除態様は、例えば、自律走行型ロボット100の走行速度、床面上のごみを吸引する吸引強度、及び、ブラシの回転速度などの組み合わせである。
【0052】
なお、走行計画作成部128は、自律走行型ロボット100が走行計画に従って走行しているときに、障害物センサ141により障害物が検出されると、障害物検知部127により検知された障害物に対する接近に基づいて走行計画を変更してもよい。この場合、走行計画作成部128は、障害物を迂回するような経路を走行計画に含める。これにより、走行制御部131は、障害物を回避するように走行部160を制御することになる。
【0053】
記憶部130は、制御部120が実行するコンピュータプログラムなどが記憶される記憶装置である。また、記憶部130は、通信部110及び制御部120で行われる情報処理により記憶する必要が生じた情報を一時的に記憶できる。記憶部130は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)によって実現されるが、半導体メモリによって実現されてもよい。記憶部130が補正値記憶部の機能を有していてもよい。
【0054】
受付部(不図示)は、ユーザの指示(より詳細には、ユーザによる指示の入力操作)を受け付ける。受付部は、例えば、タッチパネル、表示パネル、ハードウェアボタン、又は、マイクロフォンなどによって実現されてもよい。タッチパネルは、例えば、静電容量方式のタッチパネルであってもよく、抵抗膜方式のタッチパネルであってもよい。表示パネルは、画像の表示機能、及び、ユーザの手動入力を受け付ける機能を有し、液晶パネル又は有機ELパネルなどの表示パネルに表示されるテンキー画像などへの入力操作を受け付ける。マイクロフォンは、ユーザの音声入力を受け付ける。
【0055】
通知部150は、ユーザに情報を通知する。当該情報は、フロアの走行計画、及び、走行計画に基づく自律走行型ロボット100の走行結果の少なくともいずれかであってもよい。走行結果は、例えば、自律走行型ロボット100の走行軌跡、自律走行型ロボット100が掃除したゴミ量、及び、走行中に検知された障害物などである。通知部150は、例えば、スピーカ、ランプ、及び、表示パネルの少なくともいずれかで実現される。スピーカは、音又は音声を出力する。ランプは、点灯又は点滅する。表示パネルは、液晶パネル又は有機ELパネルなどであり、画像を表示する。なお、通知部150は、ユーザが使用する情報端末200に上記の情報を通知してもよい。
【0056】
[1-2.情報端末]
続いて、情報端末200について説明する。
図1に示される情報端末200は、例えば、ユーザが使用するスマートフォン又はタブレット端末などの携帯型の情報端末(いわゆる、携帯型の情報端末)であるが、パーソナルコンピュータなどの据え置き型の情報端末であってもよい。また、情報端末200は、自律走行システム300の専用端末であってもよい。情報端末200は、通信部210と、制御部220と、記憶部230と、受付部240と、提示部250とを備える。以下、各構成について説明する。
【0057】
通信部210は、情報端末200がネットワーク10を介して自律走行型ロボット100と通信を行うための通信回路である。通信部210は、広域通信ネットワークを介して通信を行うための通信回路と、局所通信ネットワークを介して通信を行うための通信回路とを備えてもよい。通信部210は、例えば、無線通信を行う無線通信回路である。通信部210が行う通信の通信規格については特に限定されない。
【0058】
制御部220は、受付部240への画像の表示制御、及び、ユーザにより入力された指示の識別処理(例えば、音声による入力であれば、音声の認識処理)などを行う。制御部220は、例えば、マイクロコンピュータによって実現されてもよく、プロセッサによって実現されてもよい。
【0059】
記憶部230は、制御部220が実行するための専用のアプリケーションプログラムなどが記憶される記憶装置である。記憶部230は、例えば、半導体メモリなどによって実現される。
【0060】
受付部240は、ユーザの指示(より詳細には、ユーザによる指示の入力操作)を受け付ける。より具体的には、受付部240は、ユーザの指示を自律走行型ロボット100に送信するために行う入力操作を受け付ける。
【0061】
受付部240は、例えば、タッチパネル、表示パネル、ハードウェアボタン、又は、マイクロフォンなどによって実現されてもよい。タッチパネルは、例えば、静電容量方式のタッチパネルであってもよく、抵抗膜方式のタッチパネルであってもよい。表示パネルは、画像の表示機能、及び、ユーザの手動入力を受け付ける機能を有し、液晶パネル又は有機ELパネルなどの表示パネルに表示されるテンキー画像などへの入力操作を受け付ける。マイクロフォンは、ユーザの音声入力を受け付ける。
【0062】
提示部250は、ユーザに情報を提示する。より具体的には、提示部250は、自律走行型ロボット100の通知部150により出力された情報をユーザに提示してもよい。また、提示部250は、補正部126が補正した床面距離、補正値記憶部125が記憶した測距補正値及び反射率情報の少なくとも1つをユーザに提示してもよい。反射率情報とは、床面の反射率に関する情報であり、例えば、床面の色の明暗、床面の素材、表面粗さなどである。提示部250は、補正後の床面距離、測距補正値及び反射率情報を地図とともに表示してもよい。提示部250は、例えば、表示パネルで実現されてもよく、表示パネル及びスピーカで実現されてもよい。表示パネルは、例えば、液晶パネル又は有機ELパネルなどである。スピーカは、音又は音声を出力する。
【0063】
[2.動作]
続いて、実施の形態1に係る自律走行システム300の動作について図面を参照しながら説明する。
【0064】
まず、測距補正値の取得方法について説明する。
図8は、実施の形態1に係る測距補正値取得方法の流れを示すフローチャートである。測距補正値取得方法は、補正値取得ステップの一例である。測距補正値取得方法はフロアの床面から障害物を取り除いて実行される。
【0065】
図8に示されるように、ステップS10では、走行制御部131は、走行部160を制御して、フロアの床面が塗りつぶされるように自律走行型ロボット100を走行させる。このとき、センサ情報取得部121は、自律走行型ロボット100の周囲の物体と自律走行型ロボット100との位置関係を含むセンサ情報を取得している。また、自己位置算出部122は、センサ情報取得部121が取得したセンサ情報内の位置関係に基づいて、フロアの地図上での自律走行型ロボット100の現在位置である自己位置を算出している。
【0066】
ステップS11では、距離算出部124はセンサ情報に基づいて常に床面距離を算出しており、これにより、各測距位置Tでの床面距離を取得している。
【0067】
ステップS12では、補正値記憶部125は、各測距位置Tでの床面距離と基準距離との差分を測距補正値として取得し、記憶する。
【0068】
ステップS13では、地図管理部123は、各測距位置Tでの測距補正値を地図に記録し、補正値マップを作成する。この補正値マップは、通知部150で表示されてもよいし、通信部110から情報端末200の通信部210に送られて、提示部250で表示されてもよい。この表示を視認することにより、ユーザは各測距位置Tでの測距補正値を直感的に把握できる。
【0069】
ステップS14では、走行制御部131は、走行部160を制御して、自律走行型ロボット100を初期位置に帰還させる。
【0070】
次に、通常走行時(掃除時)における走行制御方法について説明する。
図9は、実施の形態1に係る走行制御方法の流れを示すフローチャートである。
【0071】
図9に示されるように、ステップS20では、走行制御部131は、走行部160を制御して、フロアの床面が塗りつぶされるように自律走行型ロボット100を走行させるとともに、掃除制御部132は、掃除部170を制御して掃除動作を実行している。このとき、センサ情報取得部121は、自律走行型ロボット100の周囲の物体と自律走行型ロボット100との位置関係を含むセンサ情報を取得している。また、自己位置算出部122は、センサ情報取得部121が取得したセンサ情報内の位置関係に基づいて、フロアの地図上での自律走行型ロボット100の現在位置である自己位置を算出している。ステップS20は、センサ情報取得ステップ及び自己位置算出ステップの一例である。
【0072】
ステップS21では、距離算出部124はセンサ情報に基づいて常に床面距離を算出しており、これにより、各測距位置Tでの床面距離を取得している。ステップS21は、床面距離算出ステップの一例である。このとき、フロアに存在する壁によって正確に床面距離を取得できない測距位置Tも存在しうる。この対策として、距離算出部124は、予め地図から壁の位置を認識しておき、壁の近傍位置での床面距離は基準距離に置き換えておく。
【0073】
ステップS22では、補正部126は、ステップS21で距離算出部124が算出した床面距離を、補正値記憶部125に記憶された測距補正値に基づき補正する。補正部126は、走行時における各測距位置Tで算出された床面距離に対し、当該測距位置Tでの測距補正値に基づき補正を行う。ステップS22は、補正ステップの一例である。
【0074】
ステップS23では、障害物検知部127は、補正部126で補正された床面距離を用いて、自律走行型ロボット100の障害物に対する接近を検知する。
図10は、実施の形態1に係る床面距離の変動例を示す説明図である。
図10では、床面距離の時間的な変化を棒グラフで示している。棒グラフの破線は、測距補正値である。つまり、棒グラフG1、G2では、補正が不要であった床面での床面距離を示しており、棒グラフG3~G7では、補正が必要な床面での床面距離を示している。いずれの場合でも各棒グラフG1~G7は基準距離となっている。
【0075】
ここで、障害物で発光部141aの光が反射されると、その反射光は、床面の反射率の影響を受けていない。このため、障害物を検知した直後(棒グラフG6)では、補正後の床面距離が基準距離から急峻に増加してしまう。この変化量は、測距補正値と概ね同等である。障害物検知部127は、この急峻な変化を認識することで、障害物を検知したと判断する。その後、自律走行型ロボット100が障害物に近づくと、補正後の床面距離は徐々に減少(棒グラフG7)していくことになるが、測距補正値が加算されているために、障害物までの距離が正確に求められない。このため、障害物検知部127は、障害物の検知直後から実際に進んだ距離を求めて、自律走行型ロボット100から障害物までの距離を取得する。具体的には、障害物検知部127は、障害物の検知直後の補正後の床面距離と、それ以降の補正後の床面距離との差分により、自律走行型ロボット100から障害物までの距離を取得する。または、障害物検知部127は、障害物の検知直後からエンコーダ143の検出結果に基づいて、自律走行型ロボット100の実際の走行距離を求めることで、自律走行型ロボット100から障害物までの距離を取得する。
【0076】
障害物検知部127は、自律走行型ロボット100から障害物までの距離が回避開始距離未満である場合には障害物に接近したと判定してステップS24に移行する。一方、障害物検知部127は、自律走行型ロボット100から障害物までの距離が回避開始距離以上である場合には障害物に接近していないと判定してステップS25に移行する。回避開始距離は、基準距離よりも小さい値(例えば15cm)である。
【0077】
ステップS24では、走行制御部131は、障害物を回避するように走行部160を制御し、ステップS25に移行する。これにより、自律走行型ロボット100が障害物を回避するように走行する。この際、地図管理部123は、回避地点を補正値マップに書き込む。
【0078】
ステップS25では、補正値記憶部125は、現時点での各測距位置Tの床面距離と基準距離との差分が、補正値マップに記録された各測距位置Tでの測距補正値とを比較する。この比較は、障害物の検知直後から回避開始距離までの間には行われない。補正値記憶部125は、差異がない場合にはステップS26に移行し、差異がある場合にはその差分を新たな測距補正値として更新して記録し、ステップS26に移行する。これにより、経年劣化で床面の反射率が変化した場合、床面が他の床面に変更された場合などに対応して、測距補正値を更新することが可能である。このとき、地図管理部123は、新たな測距補正値が取得された測距位置Tに対しては、補正値マップにおいても新たな測距補正値に更新する。
【0079】
ステップS26では、走行制御部131は、掃除が終了したか否かを判定し、終了していない場合にはステップS20に移行し、終了した場合にはステップS27に移行する。
【0080】
ステップS27では、走行制御部131は、走行部160を制御して、自律走行型ロボット100を初期位置に帰還させる。
【0081】
[ユーザへの提示例]
続いて、自律走行システム300のユーザに情報を提示する例について説明する。より具体的には、情報端末200の提示部250は、例えば、補正値マップを表示し、ユーザに提示する。
【0082】
図11は、実施の形態1に係る情報端末200の提示部250に補正値マップが表示された一例を示す説明図である。
図11に示されるように、補正値マップでは、床面において各範囲の反射率に関する反射率情報が、異なるドットハッチングで示されている。各範囲には測距補正値が表示されているとともに、回避地点Rもドットで表示されている。
図11では示されていないが、回避地点Rが各範囲の境界に配置されている場合には、反射率の異なりを起因とした誤回避が行われた可能性が高いことがわかる。
【0083】
なお、提示部250は、反射率情報及び測距補正値を表示しているが、床面距離も表示してもよい。さらに、情報端末200の受付部240に対して、提示部250に提示された各種情報(床面距離、測距補正値及び反射率情報の少なくとも1つ)を修正するための修正指示情報が入力されてもよい。入力された修正指示情報は、通信部210から自律走行型ロボット100の通信部110に出力される。修正指示情報に基づき、制御部120は、各種情報を更新してもよい。これにより、各種情報を人為的に修正可能である。
【0084】
なお、自律走行型ロボット100の通知部150においても補正値マップを表示し提示してもよい。この場合、通知部150も提示部の一例となる。この場合、自律走行型ロボット100の受付部(不図示)に修正指示情報が入力されてもよい。
【0085】
[3.効果等]
以上のように、本実施の形態によれば、補正部126が、床面の所定地点での反射率に対応した測距補正に基づいて床面距離を補正するので、床面の材質及び色などの変化を考慮して床面距離を補正できる。したがって、自律走行型ロボット100から床面までの床面距離をより正確に測定でき、障害物検出の正確性も高めることができる。
【0086】
また、補正後の床面距離による障害物検知部での検知結果に基づいて、自律走行型ロボット100が障害物を回避するので、回避動作の正確性も高められる。
【0087】
また、情報端末200の受付部240に対して、提示部250に提示された各種情報(床面距離、測距補正値及び反射率情報の少なくとも1つ)を修正するための修正指示情報が入力されるので、ユーザは提示部250での提示内容を視認しながら、各種情報を人為的に修正することが可能である。
【0088】
また、提示部250が回避地点Rと、測距補正値とを対応付けて提示しているので、ユーザは提示内容を視認しながら回避が正確に行われたか否かを判断できる。
【0089】
また、補正値記憶部125は、地図内での自己位置から床面距離だけ離れた地点(測距位置T)と、測距補正値と対応付けて記憶している。つまり、自律走行型ロボット100の自己位置ではなく、測距位置Tと測距補正値とが対応付けられているので、床面の反射率に対応した測距補正値を正確に対応付けて記憶できる。
【0090】
(実施の形態2)
実施の形態2では、情報端末200の受付部240に対して、フロアの床面の所定地点での反射率に関する反射率情報が入力される場合について説明する。この場合、補正値記憶部125は、反射率情報に対応した測距補正値を記憶する。このため、反射率情報が受付部240に入力される場合には、実施の形態1で挙げた測距補正値の取得方法を省略できる。
【0091】
具体的には、ユーザは情報端末200に備わるカメラでフロアの床面を撮影する。受付部240は、床面の画像から床面上の各地点でのRGB値を反射率情報として受け付ける。つまり、受付部240には、フロアの床面の所定地点での反射率に関する反射率情報が入力される(入力ステップ)。なお、受付部240では、各地点のRGB値がユーザによる手入力で入力されてもよい。また、RGB値以外にも、明度、彩度等を反射率情報としてもよい。
【0092】
一方、補正値記憶部125は、各RGB値に対応した測距補正値を予め記憶している(補正値記憶ステップ)。各RGB値に対応した測距補正値は、種々のシミュレーション、実験、経験則等により、取得可能である。
【0093】
補正部126は、受付部240に入力された反射率情報と、補正値記憶部125に記憶された測距補正値とを照合することで所定地点での測距補正値を取得し、当該測距補正値に基づいて、床面距離を補正する(補正ステップ)。
【0094】
このように、補正部126が、受付部240に入力された反射率情報と、補正値記憶部125に記憶された測距補正値とを照合することで所定地点での測距補正値を取得し、当該測距補正値に基づいて、床面距離を補正するので、床面の材質及び色などの変化を考慮して床面距離を補正できる。したがって、自律走行型ロボット100から床面までの床面距離をより正確に測定でき、障害物検出の正確性も高めることができる。特に、反射率情報は受付部240で入力されるので、実施の形態1で必要であった測距補正値の取得方法も省略できる。
【0095】
(その他)
以上、実施の形態について説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態において、自律走行システム300は、単一の装置によって実現されてもよいし、複数の装置によって実現されてもよい。例えば、自律走行システム300は、自律走行型ロボット100に相当する単一の装置として実現されてもよい。自律走行システム300が複数の装置によって実現される場合、自律走行システム300が備える構成要素(特に、機能的な構成要素)は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。例えば、上記実施の形態において、自律走行型ロボット100が備える機能的な構成要素が情報端末200又はサーバ(不図示)によって備えられてもよい。
【0096】
また、上記実施の形態における装置間の通信方法については特に限定されるものではない。また、装置間の通信においては、図示されない中継装置が介在してもよい。
【0097】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0098】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0099】
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。例えば、各構成要素は、回路(または集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0100】
また、本発明の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0101】
例えば、本開示は、上記実施の形態に係る自律走行型ロボット100、情報端末200又は、サーバ(不図示)として実現されてもよい。また、本開示は、自律走行システム300などのコンピュータが実行する自律走行型ロボット100の走行制御方法として実現されてもよいし、このような自律走行型ロボット100の走行制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよい。本開示は、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0102】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【0103】
[付記]
以上の実施の形態等の記載により、下記の技術が開示される。
【0104】
(技術1)
フロアを自律的に走行する自律走行型ロボットを備える自律走行システムであって、
本体を走行させる走行部と、
前記自律走行型ロボットの周囲の物体と前記自律走行型ロボットとの位置関係を含むセンサ情報を取得するセンサ情報取得部と、
前記位置関係に基づいて、前記フロアの地図上での前記自律走行型ロボットの現在位置である自己位置を算出する自己位置算出部と、
前記センサ情報に基づいて、前記自律走行型ロボットの前部から対象物までの前記フロアの床面までの距離である床面距離を算出する距離算出部と、
前記床面の所定地点での反射率に対応した測距補正値を記憶する補正値記憶部と、
前記距離算出部が算出した前記床面距離を、前記補正値記憶部に記憶された前記測距補正値に基づき補正する補正部とを有する、
自律走行システム。
【0105】
(技術2)
前記床面距離を用いて、障害物との接近を検知する障害物検知部と、
前記障害物検知部での検知結果に基づいて、前記障害物を回避するように前記走行部を制御する走行制御部とを備える、
技術1に記載の自律走行システム。
【0106】
(技術3)
自律走行型ロボットが走行する地図を提示する提示部と、
受付部とを備え、
前記提示部は、前記補正部が補正した前記床面距離、前記補正値記憶部が記憶した前記測距補正値及び前記床面の反射率に関する反射率情報の少なくとも1つを提示し、
前記受付部には、前記提示部に提示された前記床面距離、前記測距補正値及び前記反射率情報の少なくとも1つを修正するための修正指示情報が入力される、
技術2に記載の自律走行システム。
【0107】
(技術4)
前記提示部は、前記自律走行型ロボットが前記障害物を回避した回避地点と、前記測距補正値とを対応付けて提示する、
技術3に記載の自律走行システム。
【0108】
(技術5)
前記自律走行型ロボットが走行する地図を管理する地図管理部と、
前記補正値記憶部は、
前記地図内での前記自己位置から前記床面距離だけ離れた地点と、前記測距補正値と対応付けて記憶する、
技術1~技術4のいずれかひとつに記載の自律走行システム。
【0109】
(技術6)
フロアを自律的に走行する自律走行型ロボットの走行制御方法であって、
前記自律走行型ロボットの周囲の物体と前記自律走行型ロボットとの位置関係を含むセンサ情報を取得するセンサ情報取得ステップと、
前記位置関係に基づいて、前記フロアの地図上での前記自律走行型ロボットの現在位置である自己位置を算出する自己位置算出ステップと、
前記センサ情報に基づいて、前記自律走行型ロボットの前部から前記フロアの床面までの距離である床面距離を算出する床面距離算出ステップと、
前記床面の所定地点での反射率に対応付けて測距補正値を記憶する補正値記憶ステップと、
前記床面距離算出ステップで算出された前記床面距離を、補正値記憶ステップで記憶された前記測距補正値に基づき補正する補正ステップとを有する、
自律走行型ロボットの走行制御方法。
【0110】
(技術7)
技術6に記載の自律走行型ロボットの走行制御方法をコンピュータに実行させるための
プログラム。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本開示は、自律的に走行するロボットに広く利用可能である。
【符号の説明】
【0112】
10 ネットワーク
100 自律走行型ロボット
101 本体
102 位置センサ
110 通信部
120 制御部
121 センサ情報取得部
122 自己位置算出部
123 地図管理部
124 距離算出部
125 補正値記憶部
126 補正部
127 障害物検知部
128 走行計画作成部
130 記憶部
131 走行制御部
132 掃除制御部
140 センサ部
141 障害物センサ
141a 発光部
141b 受光部
143 エンコーダ
144 床面センサ
150 通知部
160 走行部
161 車輪
162 キャスタ
170 掃除部
171 サイドブラシ
172 メインブラシ
173 吸引口
200 情報端末
210 通信部
220 制御部
230 記憶部
240 受付部
250 提示部
300 自律走行システム
F、F1 床面
L 光
R 回避地点
T 測距位置