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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165157
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】端子の接合構造及び端子の接合方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/557 20210101AFI20241121BHJP
   H01M 50/566 20210101ALI20241121BHJP
   H01M 50/562 20210101ALI20241121BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20241121BHJP
   H01M 50/176 20210101ALI20241121BHJP
【FI】
H01M50/557
H01M50/566
H01M50/562
H01M50/533
H01M50/176
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081071
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】藪崎 雄太
(72)【発明者】
【氏名】野中 照美
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011EE04
5H011FF04
5H011GG02
5H011HH02
5H043AA03
5H043BA19
5H043CA12
5H043DA13
5H043DA16
5H043HA17D
5H043HA17E
5H043JA22D
5H043KA08D
5H043KA09D
5H043LA11D
(57)【要約】
【課題】電気エネルギーの損失を低減することができる端子の接合構造及び端子の接合方法を提供する。
【解決手段】電池1に設けられる端子(正極端子32、負極端子42)の接合構造2であって、板形状の金属製の端子(正極端子32、負極端子42)と、板形状の金属製の部材で形成され、前記端子(正極端子32、負極端子42)の厚さ方向一方側の第一面43aと、前記端子(正極端子32、負極端子42)の前記厚さ方向他方側の第二面44aと、のうちの少なくとも一方の全面に対して接合される電極(第一電極31、第一電極41、第二電極33、第二電極45)と、を具備する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池に設けられる端子の接合構造であって、
板形状の金属製の端子と、
板形状の金属製の部材で形成され、前記端子の厚さ方向一方側の面と、前記端子の前記厚さ方向他方側の面と、のうちの少なくとも一方の全面に対して接合される電極と、
を具備する、
端子の接合構造。
【請求項2】
前記電極には、
前記端子の前記厚さ方向一方側の面の全面に対して接合される第一電極と、
前記端子の前記厚さ方向他方側の面の全面に対して接合される第二電極と、
が含まれる、
請求項1に記載の端子の接合構造。
【請求項3】
前記端子は、
前記電極を前記厚さ方向に貫通せずに、前記電極に対して接合される、
請求項1に記載の端子の接合構造。
【請求項4】
前記端子は、
複数の金属が積層されたクラッド材で形成されたクラッド端子を含む、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の端子の接合構造。
【請求項5】
電池に設けられる端子の接合方法であって、
板形状の金属製の端子と、
板形状の金属製の部材で形成され、前記端子の厚さ方向一方側に配置される第一電極と、
板形状の金属製の部材で形成され、前記端子の前記厚さ方向他方側に配置される第二電極と、
を積層した状態で、超音波接合により前記端子、前記第一電極及び前記第二電極をそれぞれ接合する、
端子の接合方法。
【請求項6】
前記厚さ方向に直交する方向の前記端子の移動を規制する規制部により、前記端子の位置ずれを規制した状態で、前記超音波接合を行う、
請求項5に記載の端子の接合方法。
【請求項7】
前記電池は、
電極体を収容可能であり、一部が開口するケースと、
前記ケースの開口を閉塞すると共に、前記端子が挿通される孔が形成された蓋と、
を具備し、
前記規制部は、
前記端子と前記孔との隙間を閉塞可能なガスケットにより形成されている、
請求項6に記載の端子の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の端子の接合構造及び端子の接合方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池に設けられる端子の接合構造及び端子の接合方法の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、正極端子及び負極端子を備えるリチウムイオン電池が開示されている。リチウムイオン電池は、シート状の正極、負極及びセパレータがロール状に積層された蓄電素子をケース内に備えている。各端子(正極端子及び負極端子)のうちケースの内側の部分は、蓄電素子の正極及び負極に対して、集電体を介してそれぞれ電気的に接続されている。また、各端子のうちケースの外側の部分は、複数のリチウムイオン電池同士を接続する導体であるバスバーに対して電気的に接続されている。
【0004】
具体的には、特許文献1に記載のリチウムイオン電池の各端子(正極端子及び負極端子)は、上下方向に延出する円柱状の軸部と、軸部の上部において拡径する鍔部と、を有するリベット状に形成されている。上記リチウムイオン電池においては、各端子の軸部を、集電体に対してかしめて固定すると共に、軸部及び集電体をレーザ溶接により互いに接合している。また、上記リチウムイオン電池においては、各端子の鍔部とバスバーとをレーザ溶接により互いに接合している。上述のような接合を行うことにより、リチウムイオン電池の各部材(端子、集電体及びバスバー)同士が互いに電気的に接続される。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明のように、かしめ加工や溶接により部材同士を接合した場合は、部材同士が線状に接するため、部材同士の接触面積、ひいては電気を導通させるための面積が比較的小さくなることが想定される。このため、電気エネルギーの損失が発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-85961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、電気エネルギーの損失を低減することができる端子の接合構造及び端子の接合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、電池に設けられる端子の接合構造であって、板形状の金属製の端子と、板形状の金属製の部材で形成され、前記端子の厚さ方向一方側の面と、前記端子の前記厚さ方向他方側の面と、のうちの少なくとも一方の全面に対して接合される電極と、を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記電極には、前記端子の前記厚さ方向一方側の面の全面に対して接合される第一電極と、前記端子の前記厚さ方向他方側の面の全面に対して接合される第二電極と、が含まれるものである。
【0011】
請求項3においては、前記端子は、前記電極を前記厚さ方向に貫通せずに、前記電極に対して接合されるものである。
【0012】
請求項4においては、前記端子は、複数の金属が積層されたクラッド材で形成されたクラッド端子を含むものである。
【0013】
請求項5においては、電池に設けられる端子の接合方法であって、板形状の金属製の端子と、板形状の金属製の部材で形成され、前記端子の厚さ方向一方側に配置される第一電極と、板形状の金属製の部材で形成され、前記端子の前記厚さ方向他方側に配置される第二電極と、を積層した状態で、超音波接合により前記端子、前記第一電極及び前記第二電極をそれぞれ接合するものである。
【0014】
請求項6においては、前記厚さ方向に直交する方向の前記端子の移動を規制する規制部により、前記端子の位置ずれを規制した状態で、前記超音波接合を行うものである。
【0015】
請求項7においては、前記電池は、電極体を収容可能であり、一部が開口するケースと、前記ケースの開口を閉塞すると共に、前記端子が挿通される孔が形成された蓋と、を具備し、前記規制部は、前記端子と前記孔との隙間を閉塞可能なガスケットにより形成されているものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、電気エネルギーの損失を軽減することができる。
【0018】
請求項2においては、端子の厚さ方向の両面において、電気エネルギーの損失を軽減することができる。
【0019】
請求項3においては、電極に端子を貫通させる孔を形成することなく、各部材を接合することができる。
【0020】
請求項4においては、クラッド端子を好適に接合することができる。
【0021】
請求項5においては、電気エネルギーの損失を軽減することができる。
【0022】
請求項6においては、超音波接合において、振動による端子の位置ずれを規制することができる。
【0023】
請求項7においては、規制部とガスケットとを兼用することで、部材点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る端子の接合構造を備えた電池を示す側面断面図。
図2】本発明の一実施形態に係る端子の接合構造を示す拡大側面断面図。
図3】(a)電池を示す斜視図。(b)負極端子、蓋及びガスケットを示す分解側面断面図。
図4】(a)超音波接合による端子の接合方法を模式的に示す側面断面図。(b)従来の端子の接合構造を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の一実施形態に係る端子の接合構造2について説明する。また、以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明する。
【0026】
端子の接合構造2は、電池1の正極側及び負極側の端子(後述する正極端子32及び負極端子42)と、電極(後述する第一電極31、第二電極33、第一電極41及び第二電極45)と、を接合した構造である。端子の接合構造2には、正極端子32の接合構造である正極端子構造30と、負極端子42の接合構造である負極端子構造40と、が含まれる。なお、正極端子構造30及び負極端子構造40の詳細な説明は後述する。以下では、まず電池1について説明する。
【0027】
図1に示す電池1は、化学反応により蓄電を行うものである。電池1は、例えば車両に搭載されたモータ等を駆動させる電源として用いられる。本実施形態では電池1として、蓄電池(二次電池)であるリチウムイオン電池を採用している。なお、電池1としては、リチウムイオン電池に限られず種々の電池を採用可能である。電池1は、ケース10、電極体20、正極端子構造30、負極端子構造40及びガスケット50を具備する。
【0028】
図1及び図3(a)に示すケース10は、電池1の外郭を構成するものである。ケース10は、上部が開口した略直方体の箱形状に形成される。ケース10は、例えばアルミニウムにより形成される。
【0029】
ケース10の上部は、蓋11によって閉塞される。蓋11は、例えばアルミニウムにより形成される。図1に示すように、蓋11には、後述する正極端子32及び負極端子42がそれぞれ挿通される一対の孔11aが形成されている。孔11aは、平面視において略円形状に形成される。また、蓋11には、ケース10の内部に電解液を供給するための注液口(不図示)が設けられる。
【0030】
図1に示す電極体20は、蓄電を行う部分である。図示は省略するが、電極体20は、アルミニウム箔で形成された正極と、銅箔で形成された負極と、正極と負極とを絶縁するシート状のセパレータと、を捲回して形成される。電極体20は、絶縁シート(不図示)に覆われた状態で、ケース10の内部に収容される。電極体20は、ケース10に収容された状態で電解液が浸透される。
【0031】
図1及び図3(a)に示す正極端子構造30は、電池1の正極側の端子の構造(接合構造)である。正極端子構造30は、電池1の右部に位置している。正極端子構造30は、第一電極31、正極端子32及び第二電極33を具備する。
【0032】
第一電極31は、電極体20の正極に電気的に接続されるものである。第一電極31は、正極側の集電体を構成する。第一電極31は、ケース10の内側に配置される。第一電極31は、電極体20の正極と同様、アルミニウムにより形成されている。第一電極31は、板形状の部材を略L字状(逆L字状)に折り曲げて形成される。第一電極31は、接合部31a及び延出部31bを具備する。
【0033】
接合部31aは、後述する正極端子32に接合される部分である。接合部31aは、厚さ方向を上下方向に向けて配置される。接合部31aは、平面視略矩形状に形成される。
【0034】
延出部31bは、接合部31aの左右方向外側端部(右端部)から下方に延出する部分である。延出部31bは、電極体20の正極に接続される。延出部31bは、厚さ方向を左右方向に向けて配置される。延出部31bは、側面視略矩形状に形成される。
【0035】
正極端子32は、第一電極31の接合部31aに接合されるものである。正極端子32は、蓋11の孔11aに挿通される。正極端子32は、アルミニウムにより形成されている。正極端子32は、平面視略円形状の平板形状(略円盤形状)に形成される(図1及び図3(a)を参照)。
【0036】
第二電極33は、正極端子32の上面に接合されるものである。第二電極33は、ケース10の外側に配置される。第二電極33は、アルミニウムにより形成されている。第二電極33は、板形状の部材を略L字状に折り曲げて形成される。第二電極33は、電池1の外部の機器に対して電気的に接続可能である。第二電極33は、接合部33a及び延出部33bを具備する。
【0037】
接合部33aは、正極端子32の上面に接合される部分である。接合部33aは、厚さ方向を上下方向に向けて配置される。接合部33aは、平面視略矩形状に形成される。
【0038】
延出部33bは、接合部33aの左右方向外側端部(左端部)から上方に延出する部分である。延出部33bは、厚さ方向を左右方向に向けて配置される。延出部33bは、側面視略矩形状に形成される。
【0039】
図1から図3までに示す負極端子構造40は、電池1の負極側の端子の構造(接合構造)である。負極端子構造40は、電池1の左部に位置している。負極端子構造40は、第一電極41、負極端子42及び第二電極45を具備する。
【0040】
第一電極41は、電極体20の負極に電気的に接続されるものである。第一電極41は、は、負極側の集電体を構成する。第一電極41は、ケース10の内側に配置される。第一電極41は、電極体20の負極と同様、銅により形成されている。第一電極41は、板形状の部材を略L字状(逆L字状)に折り曲げて形成される。第一電極41は、正極端子構造30の第一電極31に対して左右対称に配置される。第一電極41は、接合部41a及び延出部41bを具備する。
【0041】
接合部41aは、後述する正極端子32に接合される部分である。接合部41aは、第一電極31の接合部31aと概ね同形状に形成される。
【0042】
延出部41bは、接合部41aの左右方向外側端部(左端部)から下方に延出する部分である。延出部41bは、電極体20の負極に接続される。延出部41bは、第一電極31の延出部31bと概ね同形状に形成される。
【0043】
図2に示す負極端子42は、第一電極41に接合されるものである。負極端子42は、蓋11の孔11aに挿通される。負極端子42は、正極端子32と同様、平面視略円形状の平板形状(略円盤形状)に形成される(図3(a)を参照)。負極端子42は、二種類の金属による層が形成されたクラッド材で形成されている。負極端子42は、第一金属層43及び第二金属層44を有する。
【0044】
第一金属層43は、負極端子42の下側の層を構成する部分である。第一金属層43は、電極体20の負極と同様、銅により形成されている。以下では、第一金属層43の下面を第一面43aと称する。
【0045】
第二金属層44は、負極端子42の上側の層を構成する部分である。第二金属層44は、アルミニウムにより形成されている。以下では、第二金属層44の上面を第二面44aと称する。
【0046】
上述の如き負極端子42は、例えば板形状のクラッド材を略円盤形状に打ち抜くことで形成可能である。なお、クラッド材を切り抜いて負極端子42を形成してもよい。
【0047】
第二電極45は、負極端子42の上面(第二面44a)に接合されるものである。第二電極45は、ケース10の外側に配置される。第二電極45は、アルミニウムにより形成されている。第二電極45は、板形状の部材を略L字状に折り曲げて形成される。第二電極45は、正極端子構造30の第二電極33に対して左右対称に配置される。第二電極45は、電池1の外部の機器に対して電気的に接続可能である。第二電極45は、接合部45a及び延出部45bを具備する。
【0048】
接合部45aは、正極端子32の第二面44aに接合される部分である。接合部45aは、第二電極33の接合部33aと概ね同形状に形成される。
【0049】
延出部45bは、接合部45aの左右方向外側端部(右端部)から上方に延出する部分である。延出部45bは、第二電極33の延出部33bと概ね同形状に形成される。
【0050】
上述の如き正極端子構造30の各部(第一電極31、正極端子32及び第二電極33)及び負極端子構造40の各部(第一電極41、負極端子42及び第二電極45)は、それぞれ超音波接合により接合される。なお、超音波接合による接合の説明は後述する。
【0051】
図1図2及び図3(b)に示すガスケット50は、各端子(正極端子32及び負極端子42)と、蓋11の孔11aと、の間の隙間を閉塞する(シールする)と共に、各端子と蓋11とを絶縁するものである。ガスケット50は、絶縁性を有する材料で形成されている。本実施形態では、ガスケット50を樹脂により形成している。
【0052】
以下では図2及び図3(b)を参照して、負極端子構造40に設けられるガスケット50に注目して、ガスケット50の構成について説明する。ガスケット50は、内部ガスケット51及び外部ガスケット52を具備する。
【0053】
内部ガスケット51は、ケース10の内側において負極端子42と蓋11の孔11aと、の間の隙間を閉塞すると共に、蓋11、第一電極41及び負極端子42を互いに絶縁するものである。また、内部ガスケット51は、蓋11、負極端子42及び第一電極41の水平方向の相対的な移動を規制する。内部ガスケット51は、第一電極41の接合部41aと、蓋11と、負極端子42と、の間に介在するように配置される。内部ガスケット51は、板部51a、開口部51b、突部51c及び係合部51dを具備する。
【0054】
板部51aは、厚さ方向を上下方向に向けた略板形状に形成されたものである。板部51aは、平面視において、接合部41aに対応した形状(略矩形状)に形成される。
【0055】
開口部51bは、負極端子42が挿通される部分である。開口部51bは、板部51aを上下に貫通するように形成される。開口部51bの内径は、負極端子42の外径に応じた寸法に形成される。
【0056】
突部51cは、板部51aのうち開口部51bが形成された部分を上方に突出させたものである。図2に示すように、突部51cは、蓋11の孔11aに挿通される。突部51cは、孔11aの内径に応じた外径を有する略円筒形状に形成される。
【0057】
係合部51dは、第一電極41の接合部41aに対して係合する部分である。係合部51dは、板部51aの外周端部から、接合部41aの側周面(四周の側面)に沿って下方に延出する。
【0058】
図2に示すように、内部ガスケット51を取り付けた状態では、ケース10の内側において負極端子42と孔11aとの間の隙間が閉塞される。また、この状態では、蓋11と第一電極41との間に板部51aが介在することで、蓋11及び第一電極41が絶縁される。また、蓋11と負極端子42との間に突部51cが介在することで、蓋11及び負極端子42が絶縁される。また、この状態では、蓋11、負極端子42及び第一電極41の水平方向の相対的な移動が内部ガスケット51により規制される。
【0059】
外部ガスケット52は、ケース10の外側において負極端子42と蓋11の孔11aと、の間の隙間を閉塞すると共に、蓋11及び第二電極45を互いに絶縁するものである。外部ガスケット52は、第二電極45の接合部45aと、蓋11と、の間に介在するように配置される。外部ガスケット52は、開口部52aを具備する。
【0060】
開口部52aは、負極端子42が挿通される部分である。開口部52aは、外部ガスケット52を上下に貫通するように形成される。開口部52aの内径は、負極端子42の外径に応じた寸法に形成される。
【0061】
図2に示すように、外部ガスケット52を取り付けた状態では、ケース10の外側において負極端子42と孔11aとの間の隙間が閉塞される。また、この状態では、蓋11と第二電極45との間に内部ガスケット51が介在することで、蓋11及び第二電極45が絶縁される。
【0062】
以上、負極端子構造40に設けられるガスケット50の構成について説明した。ガスケット50は、正極端子構造30側においても、負極端子構造40側と概ね同様に取り付けられる。
【0063】
次に、超音波接合による各端子(正極端子32及び負極端子42)の接合方法について説明する。なお以下では、図4(a)を参照して、負極端子構造40の各部(第一電極41、負極端子42及び第二電極45)を超音波接合装置3を用いて接合する場合の説明を行う。また図4(a)では、負極端子構造40の各部を模式的に示している。
【0064】
図4(a)に示すように、超音波接合装置3は、接合対象に振動エネルギーを伝達するホーン4と、接合対象を下方から支持するアンビル5と、を備えている。接合対象である負極端子構造40の各部(第一電極41、負極端子42及び第二電極45)は、ホーン4とアンビル5によって上下に挟まれる。
【0065】
超音波接合の工程において、ホーン4は、圧力を加えた状態で負極端子構造40の各部(第一電極41、負極端子42及び第二電極45)に対して超音波振動を加える。これにより、負極端子構造40の各部が高速で擦り合わされ、摩擦により各部の界面のコンタミネーションが排斥されると共に、清浄な界面(新生面)が形成される。また、更なる超音波振動が加えられることで上記各部の新生面同士が結合し、上記各部が接合(溶着)される。
【0066】
ここで、本実施形態に係る各端子(正極端子32及び負極端子42)及び各電極(後述する第一電極31、第二電極33、第一電極41及び第二電極45)は、上記超音波接合でのホーン4の加圧による荷重(押さえ荷重)によっては塑性変形しないように形成されている。すなわち、上記各端子及び各電極を構成する金属製の板状の部材は、上記ホーン4の押さえ荷重によっては塑性変形しない程度の剛性を有するように、板厚や強度(弾性限やヤング率等)が設定されている。
【0067】
上述のように上記各端子及び各電極を形成した場合は、例えば各端子及び各電極を上記ホーン4の押さえ荷重で塑性変形可能な金属箔等で形成した場合と比べて、ホーン4の振動による各端子の位置ずれが生じ易くなる可能性がある。
【0068】
そこで本実施形態では、図4(a)に示すように、ケース10の蓋11や第一電極41に対する負極端子42の水平方向の移動を、ガスケット50で規制した状態で超音波接合を行っている。図4(a)に示す図では、ガスケット50を介在させて蓋11の孔11aに負極端子42を挿通させた状態で、当該負極端子42に対して、第一電極41及び第二電極45を超音波接合する例を示している。図2に示すように、この状態では、負極端子42が、内部ガスケット51を介して孔11aに挿通されることで、蓋11に対する負極端子42の水平方向の移動が規制される。また、この状態では、内部ガスケット51の係合部51dが、第一電極41の接合部41aに対して係合することで、蓋11及び負極端子42に対する第一電極41の水平方向の移動が規制される。本実施形態では、上述のようにして蓋11及び第一電極41に対する負極端子42の水平方向の移動を規制した状態で超音波接合を行うことができる。これにより、ホーン4の振動による負極端子42の位置ずれを規制することができる。
【0069】
上述の如き超音波接合により接合された負極端子構造40は、負極端子42の第一面43aの全面が、第一電極41の接合部41aの上面に対して接合(溶着)される。また、負極端子42の第二面44aの全面が、第二電極45の接合部45aの下面に対して接合(溶着)される。
【0070】
図2において二点鎖線で囲った第一面43a及び接合部41aの上面の接合箇所(第一接合箇所A)と、第二面44a及び接合部45aの下面の接合箇所(第二接合箇所B)と、には、超音波接合による溶着組織が形成される。
【0071】
上記第一接合箇所A及び第二接合箇所Bは、平面視において負極端子42と接合部41aとが重複する領域、及び負極端子42と接合部45aとが重複する領域の全体に形成されている。このように、超音波接合によれば、例えばかしめや溶接等により各部を接合した場合とは異なり、各部の全体を接合することができる。
【0072】
図4(b)は、特許文献1に記載の従来の端子(負極端子61)を用いた負極端子構造60を模式的に示したものである。なお、図4(b)では、本発明の実施形態の符号に対応するように、特許文献1とは符号を適宜変更している。
【0073】
負極端子61は、銅により形成された第一金属層62と、アルミニウムにより形成された第二金属層63と、を有するクラッド材を加工して形成されている。負極端子61は、上下方向に延出する円柱状の軸部64と、軸部64の上端部において拡径する鍔部65と、を有するリベット状に形成されている。負極端子61は、板形状のクラッド材に、押し出し加工を施すことで形成される。また、負極端子61には、鍔部65の上面において、軸部64を上方に延長させるように突出させたアルミニウム製の突部64aが設けられている。突部64aは、例えば溶接等により鍔部65に設けられる。
【0074】
負極端子構造60においては、上記負極端子61に、第一電極41及び第二電極45が接合される。図4(b)に示す例では、第一電極41の接合部41a及び第二電極45の接合部45aのそれぞれに軸部64及び突部64aが挿通される孔が形成されている。
【0075】
負極端子61は、鍔部65に対して下方に延出する軸部64が、蓋11、ガスケット50及び接合部41aの孔に挿通された状態で、軸部64の下端部にかしめ加工が施されることで、第一電極41(接合部41a)に対して接合される。これにより、軸部64の下端部と第一電極41との接合箇所(二点鎖線で示すかしめ接合箇所C)が形成される。なお、かしめ接合箇所Cにおいて、更にレーザ溶接を施すようにしてもよい。
【0076】
また、負極端子61は、鍔部65に対して上方に突出する突部64aが、接合部45aの孔に挿通された状態で、突部64aと接合部45aとの境界部分にレーザ溶接が施されることで、第二電極45(接合部45a)に対して接合される。これにより、突部64aと接合部45aとの接合箇所(二点鎖線で示す溶接接合箇所D)が形成される。
【0077】
負極端子構造60においては、かしめ接合箇所C及び溶接接合箇所Dにより各部(負極端子61、第一電極41及び第二電極45)が線状に接合されている。このような場合、接合された部材同士が線状に接するため、部材同士の接触面積、ひいては電気を導通させるための面積が比較的小さくなることが想定される。また、この場合、部材同士の間で電気の導通に伴う抵抗率が場所によって変化する(均一ではなくなる)ことが想定される。このため、電気エネルギーの損失が発生する可能性がある。
【0078】
一方、本実施形態に係る負極端子構造40によれば、超音波接合を採用したことで、負極端子42の第一面43a及び第二面44aの全体を、第一電極41及び第二電極45に対して面で接合することができる。これにより、接合箇所に隙間が発生することで電気を導通させるための面積が減少することを抑制することができる。また、第一接合箇所A及び第二接合箇所Bにおいて、電気の導通に伴う抵抗率が概ね均一となる。このため、電気エネルギーの損失を軽減することができる。
【0079】
また、超音波接合を採用したことで、かしめによる接合とは異なり、接合に伴う異物の発生を抑制することができる。また、本実施形態に係る略円盤形状の負極端子42は、負極端子61とは異なり、クラッド材を打ち抜くことで比較的容易に形成することができる。また、負極端子61のように、押し出し加工によりクラッド材を形成した場合、加工に伴い一方の金属層の表面に他方の金属層が露出するおそれがあるが、本実施形態に係る負極端子42においては、そのような不具合の発生を抑制することができる。
【0080】
以上、負極端子構造40に注目して超音波接合による接合について説明した。なお説明は省略するが、正極端子構造30においても、上述した説明と概ね同様の工程によって超音波接合が行われる。また、正極端子構造30においても、負極端子構造40と概ね同様に、電気エネルギーの損失を軽減することができる。
【0081】
以上の如く、本実施形態に係る端子の接合構造2は、
電池1に設けられる端子(正極端子32、負極端子42)の接合構造2であって、
板形状の金属製の端子(正極端子32、負極端子42)と、
板形状の金属製の部材で形成され、前記端子(正極端子32、負極端子42)の厚さ方向一方側の面(第一面43a)と、前記端子(正極端子32、負極端子42)の前記厚さ方向他方側の面(第二面44a)と、のうちの少なくとも一方の全面に対して接合される電極(第一電極31、第一電極41、第二電極33、第二電極45)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、電気エネルギーの損失を軽減することができる。すなわち、端子(正極端子32、負極端子42)の全体を、電極(第一電極31、第一電極41、第二電極33、第二電極45)に対して面で接合したことで、各部の接合箇所(第一接合箇所A及び第二接合箇所B)において、電気の導通に伴う抵抗率が概ね均一となる。このため、電気エネルギーの損失を軽減することができる。
【0082】
また、前記電極には、
前記端子(正極端子32、負極端子42)の前記厚さ方向一方側の面(第一面43a)の全面に対して接合される第一電極(第一電極31、第一電極41)と、
前記端子(正極端子32、負極端子42)の前記厚さ方向他方側の面(第二面44a)の全面に対して接合される第二電極(第二電極33、第二電極45)と、
が含まれるものである。
このように構成することにより、端子(正極端子32、負極端子42)の厚さ方向の両面において、電気エネルギーの損失を軽減することができる。
【0083】
また、前記端子(正極端子32、負極端子42)は、
前記電極(第一電極31、第一電極41、第二電極33、第二電極45)を前記厚さ方向に貫通せずに、前記電極(第一電極31、第一電極41、第二電極33、第二電極45)に対して接合されるものである。
このように構成することにより、例えば端子をリベット状に形成したものとは異なり(図4(b)を参照)、電極(第一電極31、第一電極41、第二電極33、第二電極45)に端子(正極端子32、負極端子42)を貫通させる孔を形成することなく、各部材(電極及び端子)を接合することができる。これにより、各部材同士を接触させる面積を確保することができ、電気エネルギーの損失を軽減することができる。
【0084】
また、前記端子は、
複数の金属が積層されたクラッド材で形成されたクラッド端子(負極端子42)を含むものである。
このように構成することにより、クラッド端子(負極端子42)を好適に接合することができる。また、本実施形態のように、超音波接合により負極端子42を接合する場合は、例えばかしめ加工等により接合を行う場合とは異なり、負極端子42をリベット状に加工する必要がない。このため、容易にクラッド材による負極端子42を形成することができる。また、クラッド材に押し出し加工を施してリベット状の端子を形成する場合には、加工に伴い一方の金属層の表面に他方の金属層が露出するような不具合が発生するおそれがあるが、本実施形態に係る負極端子42においては、そのような不具合の発生を抑制することができる。
【0085】
また、本実施形態に係る端子の接合方法は、
電池1に設けられる端子(正極端子32、負極端子42)の接合方法であって、
板形状の金属製の端子(正極端子32、負極端子42)と、
板形状の金属製の部材で形成され、前記端子(正極端子32、負極端子42)の厚さ方向一方側に配置される第一電極(第一電極31、第一電極41)と、
板形状の金属製の部材で形成され、前記端子(正極端子32、負極端子42)の前記厚さ方向他方側に配置される第二電極(第二電極33、第二電極45)と、
を積層した状態で、超音波接合により前記端子(正極端子32、負極端子42)、前記第一電極(第一電極31、第一電極41)及び前記第二電極(第二電極33、第二電極45)をそれぞれ接合するものである。
このように構成することにより、電気エネルギーの損失を軽減することができる。すなわち、超音波接合を採用したことで、端子(正極端子32、負極端子42)の全体を、第一電極(第一電極31、第一電極41)及び第二電極(第二電極33、第二電極45)に対して面で接合することができる。これにより、例えばかしめ加工や溶接等による接合とは異なり、各部の接合箇所(第一接合箇所A及び第二接合箇所B)に隙間が発生することを抑制することができ、各部の接合箇所において、電気の導通に伴う抵抗率が概ね均一となる。このため、電気エネルギーの損失を軽減することができる。
【0086】
また、本実施形態に係る端子の接合方法は、
前記厚さ方向に直交する方向(水平方向)の前記端子(正極端子32、負極端子42)の移動を規制する規制部(ガスケット50)により、前記端子(正極端子32、負極端子42)の位置ずれを規制した状態で、前記超音波接合を行うものである。
このように構成することにより、超音波接合において、振動による負極端子42の位置ずれを規制することができる。
【0087】
前記電池1は、
電極体20を収容可能であり、一部が開口するケース10と、
前記ケース10の開口を閉塞すると共に、前記端子(正極端子32、負極端子42)が挿通される孔11aが形成された蓋11と、
を具備し、
前記規制部は、
前記端子(正極端子32、負極端子42)と前記孔11aとの隙間を閉塞可能なガスケット50により形成されているものである。
このように構成することにより、規制部とガスケット50とを兼用することで、部材点数を削減することができる。
【0088】
なお、本実施形態に係る負極端子42は、本発明に係るクラッド端子の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るガスケット50は、本発明に係る規制部の実施の一形態である。
【0089】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、電池1を構成する各部材の形状等は、上述したものに限定されず、適宜変更可能である。
【0090】
また、電池1の各端子(正極端子32及び負極端子42)及び各電極(後述する第一電極31、第二電極33、第一電極41及び第二電極45)を構成する金属の種類は、上述したものに限定されず、種々の金属を採用可能である。
【0091】
また、本実施形態では、負極端子42を2つの金属層を有するクラッド材で形成した例を示したが、上記クラッド材としては、3つ以上の金属層を有するものを採用可能である。
【0092】
また、本実施形態では、各端子(正極端子32、負極端子42)の厚さ方向の両面(第一面43a及び第二面44a)に対して、各電極(第一電極31、第二電極33、第一電極41及び第二電極45)を超音波接合した例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、各端子(正極端子32、負極端子42)の厚さ方向の一方側の面(第一面43a又は第二面44a)のみに、超音波接合を施すようにしてもよい。
【0093】
また、本実施形態では、各端子(正極端子32及び負極端子42)及び各電極(第一電極31、第二電極33、第一電極41及び第二電極45)を超音波接合により接合した例を示したが、各部の接合方法としては超音波接合に限定されない。各部の接合方法としては、端子(正極端子32、負極端子42)の全面を、第一電極(第一電極31、第一電極41)及び第二電極(第二電極33、第二電極45)に対して接合可能な種々の接合方法を採用可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 電池
2 端子の接続構造
30 正極端子構造
40 負極端子構造
図1
図2
図3
図4