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特開2024-165163封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165163
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20241121BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241121BHJP
   C08G 59/10 20060101ALI20241121BHJP
   C08G 59/22 20060101ALI20241121BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20241121BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/013
C08G59/10
C08G59/22
H01L23/30 R
C08L71/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081078
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土井 玄太
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】北川 篤
(72)【発明者】
【氏名】石垣 匡規
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
4M109
【Fターム(参考)】
4J002CC04Y
4J002CD05X
4J002CD07X
4J002CD11W
4J002CD13X
4J002CH05W
4J002DJ016
4J002ER007
4J002EX077
4J002FD016
4J002FD090
4J002FD14Y
4J002FD150
4J002FD207
4J002GQ05
4J036AB13
4J036AD08
4J036AF05
4J036DC27
4J036FA05
4J036FB10
4J036FB12
4J036GA28
4J036JA07
4M109AA01
4M109EA02
4M109EB02
4M109EB04
4M109EB06
4M109EB07
4M109EB08
4M109EB12
4M109EB19
4M109EC03
4M109EC04
4M109EC05
(57)【要約】
【課題】硬化物の吸湿に伴う密着性の低下の抑制と、硬化物に生じる反り等の変形の抑制と、硬化物の耐熱性の向上とが達成され得る封止用エポキシ樹脂組成物及び封止用エポキシ樹脂組成物から作製される半導体装置を提供する。
【解決手段】封止用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ化合物(A)と、ポリオキシアルキレン化合物(B)と、無機充填剤(C)と、イソシアネート化合物(D)と、を含有する。エポキシ化合物(A)は、グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物(A)と、ポリオキシアルキレン化合物(B)と、無機充填剤(C)と、イソシアネート化合物(D)と、を含有し、
前記エポキシ化合物(A)は、グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)を含有する、
封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記イソシアネート化合物(D)は、有効イソシアネート基の含有率が5%以上であるイソシアネート化合物(d1)を含有する、
請求項1に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレン化合物(B)は、反応性官能基を有するポリオキシアルキレン化合物(b1)を含有する、
請求項1に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記反応性官能基が、エポキシ基、ヒドロキシル基及びアミノ基よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、
請求項3に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記イソシアネート化合物(D)の含有率は、前記封止用エポキシ樹脂組成物の全体に対して、0.1質量%以上2.5質量%以下である、
請求項1に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)の含有率は、前記エポキシ化合物(A)とポリオキシアルキレン化合物(B)との合計に対して、10質量%以上60質量%以下である、
請求項1に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が120℃以上である、
請求項1に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記無機充填剤(C)の含有率が、前記封止用エポキシ樹脂組成物の全体に対して、60質量%以上90質量%以下である、
請求項1に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
硬化剤(E)を更に含有する、
請求項1に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
半導体素子と、前記半導体素子を覆う封止部とを備え、
前記封止部は、請求項1から9のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物を含む、
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般には、封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置に関する。本開示は、より詳細には、半導体素子の封止に用いられる封止用エポキシ樹脂組成物及びその封止用エポキシ樹脂組成物から作製される半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体パッケージにおける封止に用いられる封止材として、オルガノポリシロキサンとエポキシ樹脂とを含有するエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-145377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の課題は、硬化物の吸湿に伴う密着性の低下の抑制と、硬化物に生じる反り等の変形の抑制と、硬化物の耐熱性の向上とが達成され得る封止用エポキシ樹脂組成物及びその封止用エポキシ樹脂組成物から作製される半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る封止用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ化合物(A)と、ポリオキシアルキレン化合物(B)と、無機充填剤(C)と、イソシアネート化合物(D)と、を含有する。前記エポキシ化合物(A)は、グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)を含有する。
【0006】
本開示の一態様に係る半導体装置は、半導体素子と、前記半導体素子を覆う封止部とを備える。前記封止部は、前記封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によると、硬化物の吸湿に伴う密着性の低下の抑制と、硬化物に生じる反り等の変形の抑制と、硬化物の耐熱性の向上とが達成され得る封止用エポキシ樹脂組成物及び封止用エポキシ樹脂組成物から作製される半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の実施形態について説明する。なお、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一部に過ぎない。また、下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下の説明中に示される作用機序は、推測されたものであり、本開示は以下に示される作用機序に拘束されない。
【0009】
本開示の封止用エポキシ樹脂組成物(以下、組成物(X)ともいう)は、エポキシ化合物(A)と、ポリオキシアルキレン化合物(B)と、無機充填剤(C)と、イソシアネート化合物(D)と、を含有する。エポキシ化合物(A)は、グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)を含有する。これによって、組成物(X)は、組成物(X)の硬化物(以下、単に、硬化物ともいう)の吸湿に伴う密着性の低下の抑制と、硬化物に生じる反り等の変形の抑制と、硬化物の耐熱性の向上とが達成され得る。
【0010】
組成物(X)が、前記構成を備えることで、前記効果を奏する理由については、必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。すなわち、組成物(X)が、ポリオキシアルキレン化合物(B)を含有することにより、硬化物の柔軟性が高まり、かつ硬化収縮が抑制され得ることにより、硬化物に生じる反り等の変形が抑制され得る。また、組成物(X)が、グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)を含有するエポキシ化合物(A)を含有することで、硬化物のガラス転移温度が向上し得る。これによって、硬化物の耐熱性が高まり得る。これに加えて、組成物(X)が、イソシアネート化合物(D)を含有することにより、硬化物の吸湿が抑制され得る。その結果、吸湿に伴う硬化物の密着性の低下が抑制され得る。
【0011】
これらによって、組成物(X)は、硬化物の吸湿に伴う密着性の低下の抑制と、硬化物に生じる反り等の変形の抑制と、硬化物の耐熱性の向上とが達成され得る。また、このような効果を奏する組成物(X)は、半導体装置における封止部を作製するために好適に用いられる。具体的には、組成物(X)は、大面積の基板又はウエハを封止する場合に、封止部の反りが抑制され得る。このため、組成物(X)は、封止部を作製することにおける取り扱い性が良好である。また、組成物(X)から作製された封止部は、リフロー時等に破損及び剥離が生じにくい傾向がある。
【0012】
<組成物>
本実施形態に係る組成物(X)に含有される成分について説明する。
【0013】
[エポキシ化合物]
組成物(X)は、エポキシ化合物(A)を含有する。エポキシ化合物(A)は、25℃において液状のエポキシ化合物を含有していることが好ましい。この場合、組成物(X)の取り扱いが容易になる。なお、エポキシ化合物(A)は、25℃において固体状のエポキシ化合物を含有していても構わない。つまり、エポキシ化合物(A)は、25℃において液状のエポキシ化合物と、25℃において固体状のエポキシ化合物との両方を含有していても構わない。
【0014】
(グリシジルアミン型エポキシ化合物)
エポキシ化合物(A)は、上記の通り、グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)を含有する。グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)は、分子内に窒素原子を有する。グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)が有する窒素原子は、エポキシ化合物(A)が有するエポキシ基と反応し得る。これによって、硬化物における架橋点の数が適度に高まり得る。その結果、硬化物のガラス転移温度が高まり得る。
【0015】
グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)は、エポキシ基を1分子中に3以上有するエポキシ化合物を含有することが好ましい。この場合、硬化物のガラス転移温度がより高まり得る。また、グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)は、エポキシ基を1分子中に10以下有するエポキシ化合物を含有することが好ましく、6以下有するエポキシ化合物を含有することが好ましく、4以下有するエポキシ化合物を含有することが更に好ましい。この場合、硬化物における架橋点の数が過度に多くなり過ぎないため、硬化物の低反り性が確保され得る。
【0016】
グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)は、芳香環を有するエポキシ化合物を含有することが好ましい。この場合、硬化物のガラス転移温度がより高まり得る。芳香環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、テトラセン環、ペンタセン環、インデン環、フルオレン環、ペリレン環等が挙げられる。なお、これらの中でも、グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)は、ベンゼン環を有するエポキシ化合物を含有することが特に好ましい。
【0017】
また、グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)が、ベンゼン環を有するエポキシ化合物を含有している場合、ベンゼン環を有するエポキシ化合物は、そのベンゼン環に直接結合するアミノ基を有していることがより好ましく、ベンゼン環に直接結合するアミノ基を有し、かつベンゼン環に直接結合するヒドロキシル基を有していることが更に好ましい。
【0018】
グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)は、窒素原子に結合するグリシジル基を有する。グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)は、1つの窒素原子に結合しているグリシジル基の数は2つであるエポキシ化合物を含有していることが好ましい。なお、グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)は、1つの窒素原子に結合しているグリシジル基の数は1つであるエポキシ化合物を含有していても構わない。また、グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)は、窒素原子以外の原子に結合するグリシジル基を有するエポキシ化合物を含有していても構わない。例えば、グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)は、炭素原子に直接結合するグリシジル基を有するエポキシ化合物を含有していてもよく、酸素原子に直接結合するグリシジル基を有するエポキシ化合物を含有していてもよい。
【0019】
続いて、グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)の好ましい化学構造について化学式を示しながら説明する。グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)は、下記式(1)で表されるグリシジルアミン型エポキシ化合物(a11)を含有することが好ましい。これによって、硬化物のガラス転移温度が更に高まり得る。
【0020】
【化1】
【0021】
上記式(1)において、Rは、それぞれ独立して、グリシジルオキシ基(2,3-エポキシプロポキシ基)又はアルキル基を示す。Rがグリシジルオキシ基である場合、Rは、窒素原子とベンゼン環との結合部位を基準としてパラ位に結合していることが好ましい。また、Rがアルキル基である場合、そのRは、窒素原子とベンゼン環との結合部位を基準として、オルト位に結合していることが好ましい。
【0022】
また、Rがアルキル基である場合、アルキル基は、1価の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。アルキル基の炭素数は、1~20であることが好ましい。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基が特に好ましい。
【0023】
上記式(1)におけるZは、単結合、水素原子、又は置換若しくは非置換の1~4価の炭素数1~38の炭化水素基を示す。炭化水素基の具体的な例としては、例えば、アルキル基等の1価の脂肪族炭化水素基、アリール基等の1価の芳香族炭化水素基、アルキレン基等の2価の脂肪族炭化水素基、アリーレン基等の2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。なお、ここで、単結合とは、Zがないことを意味する。
【0024】
がアルキレン基である場合、炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素数1~5のアルキレン基がより好ましい。なお、アルキレン基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、1,1-ジメチルエチレン基等が挙げられ、これらの結合位置は、特に限定されない。これらの中でも、メチレン基が特に好ましい。
【0025】
上記式(1)において、mは、それぞれ独立に、0~4の整数を示す。中でも、mは、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。また、上記式(1)において、nは、1~4の整数を示す。中でも、nは1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0026】
グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)における、好ましい化合物及び市販品について説明する。グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)は、例えばN,N-ジグリシジル-o-トルイジン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ベンゼン(メタンアミン)、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-メチレンビスベンゼンアミン及びp-アミノフェノール-ジグリシジルエーテル等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)の市販品としては、例えば「630(三菱ケミカル株式会社製)」、「630LSD(三菱ケミカル株式会社製)」、「EP3980S(株式会社ADEKA社製)」、「EP3950S(株式会社ADEKA社製)」、「EP3950L(株式会社ADEKA社製)」、「ELM-100(住友化学株式会社製)」、「ELM-100H(住友化学株式会社製)」、「ELM-434(住友化学株式会社製)」、「ELM-434L(住友化学株式会社製)」、「GOT(日本化薬株式会社)」等が挙げられる。なお、これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)の含有率は、エポキシ化合物(A)に対して、5質量%以上80質量%以下であることが好ましい。この場合、硬化物の吸湿に伴う密着性の低下の抑制と、硬化物に生じる反り等の変形の抑制とが確保されながら、かつ硬化物のガラス転移温度が高められ得る。この含有率は、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。この含有率は、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
【0028】
グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)の含有率は、組成物(X)に対して、0.5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。この場合、硬化物の吸湿に伴う密着性の低下の抑制と、硬化物に生じる反り等の変形の抑制とが確保されながら、かつ硬化物のガラス転移温度が高められ得る。この含有率は、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましい。この含有率は、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。
【0029】
グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)の含有率は、エポキシ化合物(A)とポリオキシアルキレン化合物(B)との合計に対して、10質量%以上60質量%以下あることが好ましい。この含有率が、10質量%以上であれば、硬化物の高められたガラス転移温度が維持され得る。この含有率が、60質量%以下であれば、硬化物における柔軟性が維持され得る。この含有率は、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。この含有率は、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましい。
【0030】
(非グリシジルアミン型エポキシ化合物)
エポキシ化合物(A)は、グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)に加えて、グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)以外のエポキシ化合物(以下、非グリシジルアミン型エポキシ化合物(a2)ともいう)を含有してもよい。非グリシジルアミン型エポキシ化合物(a2)は、例えばビスフェノール型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、トリスフェノール型エポキシ化合物、ナフトールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、tert-ブチル-カテコール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ナフトール型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、線状脂肪族エポキシ化合物、ブタジエン構造を有するエポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、複素環式エポキシ化合物、スピロ環含有エポキシ化合物、シクロヘキサン型エポキシ化合物、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物、トリメチロール型エポキシ化合物、テトラフェニルエタン型エポキシ化合物及びグリシジル基含有シリコーン化合物等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0031】
ビスフェノール型エポキシ化合物は、ビスフェノール構造を有するエポキシ化合物を意味し、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物及びビスフェノールAF型エポキシ化合物等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0032】
非グリシジルアミン型エポキシ化合物(a2)は、芳香環を有するエポキシ化合物を含有することが好ましい。この場合、硬化物のガラス転移温度が高まり得る。芳香環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、テトラセン環、ペンタセン環、インデン環、フルオレン環、ペリレン環等が挙げられる。また、非グリシジルアミン型エポキシ化合物(a2)は、ビスフェノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ナフトール型エポキシ化合物及びナフチレンエーテル型エポキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物及びナフタレン型エポキシ化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含有することがより好ましい。この場合、硬化物のガラス転移温度がより高まり得る。
【0033】
非グリシジルアミン型エポキシ化合物(a2)の含有率は、エポキシ化合物(A)に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましい。この場合、硬化物のガラス転移温度が高まり得る。この含有率は、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。この含有率は、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
【0034】
非グリシジルアミン型エポキシ化合物(a2)の含有率は、組成物(X)に対して、0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。この含有率は、1質量%以上あることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましい。この含有率は、15質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
なお、本開示では、エポキシ化合物(A)は、ポリオキシアルキレングリシジルエーテル化合物といったポリオキシアルキレン基を有するエポキシ化合物を含まない。ポリオキシアルキレン基とは、オキシアルキレン基(-R-O-)が2つ以上連結した構造を含む基を意味する。Rは、炭素数が1以上のアルキレン基である。
【0036】
[ポリオキシアルキレン化合物]
組成物(X)は、ポリオキシアルキレン化合物(B)を含有する。これによって、硬化物の柔軟性が高まり、かつ硬化収縮が抑制され得ることにより、硬化物に生じる反り等の変形が抑制され得る。
【0037】
ポリオキシアルキレン化合物(B)は、ポリオキシアルキレン基を有する化合物である。なお、上記の通り、ポリオキシアルキレン基とは、オキシアルキレン基(-R-O-)が2つ以上連結した構造を含む基をいう。Rは、炭素数が1以上のアルキレン基である。
【0038】
ポリオキシアルキレン化合物(B)の重量平均分子量(Mw)は特に定められていないが、例えば100以上20000以下であることが好ましい。この場合、硬化物の反り等の変形が抑制され得る。この重量平均分子量(Mw)は200以上であることがより好ましい。この重量平均分子量(Mw)は10000以下であることがより好ましい。なお、ポリオキシアルキレン化合物(B)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより測定することができる。
【0039】
ポリオキシアルキレン化合物(B)は、反応性官能基を有するポリオキシアルキレン化合物(b1)を含有することが好ましい。この場合、反応性官能基が、エポキシ化合物(A)が有するエポキシ基と反応し得る。これによって、硬化物における架橋点の数が適度に高まり得る。その結果、硬化物のガラス転移温度の低下が抑制され得る。ポリオキシアルキレン化合物(b1)が有する反応性官能基の数は、1分子中に1つであってもよく、2つ以上であってもよい。ポリオキシアルキレン化合物(b1)が有する反応性官能基は、分子末端に結合していてもよく、分子内部に存在していてもよい。なお、ポリオキシアルキレン化合物(b1)が有する反応性官能基は、分子末端に結合していることが好ましい。また、ポリオキシアルキレン化合物(b1)は、分子末端に結合する反応性官能基と、分子内部に存在する反応性官能基との両方を有していても構わない。
【0040】
反応性官能基の具体的な例としては、例えば、エポキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基等が挙げられる。これらの中で、反応性官能基は、エポキシ基、ヒドロキシル基及びアミノ基のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。この場合、硬化物のガラス転移温度がより高まり得る。これによって、硬化物の耐熱性もより高まり得る。
【0041】
ポリオキシアルキレン化合物(b1)の好ましい化学構造について化学式を示しながら説明する。ポリオキシアルキレン化合物(b1)は、下記式(2)で表されるポリオキシアルキレン化合物(b11)を含有することが好ましい。この場合、硬化物の反り等の変形の抑制が確保されながら、かつ硬化物のガラス転移温度が高まり得る。
【0042】
【化2】
【0043】
上記式(2)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基である。Rは、それぞれ独立して、エポキシ基、ヒドロキシル基又はアミノ基等の反応性官能基である。Rは、それぞれ独立して、単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。なお、有機基とは、本開示では、炭素原子を少なくとも1つ有する基のことを意味する。また、ここで、単結合とは、Rがないことを意味する。Zは、単結合、水素原子、又は置換若しくは非置換の1~6価の炭化水素基を示す。なお、Zが、置換基を有する炭化水素基である場合、置換基としては、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、エポキシ基を含む1価の基などが挙げられる。上記式(2)中、pは、2~1000の整数である。上記式(2)中、qは、1~6の整数である。
【0044】
で表される炭素数1~10のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、1,1-ジメチルエチレン基等が挙げられる。
【0045】
で表される炭化水素基としては、例えば、アルキル基等の1価の脂肪族炭化水素基、アリール基等の1価の芳香族炭化水素基、アルキレン基等の2価の脂肪族炭化水素基、アリーレン基等の2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0046】
がアリール基である場合、炭素数6~14のアリール基が好ましく、炭素数6~10のアリール基がより好ましい。なお、アリール基としては、具体的には、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、ビフェニリル基、2-アンスリル基等が挙げられる。
【0047】
がアルキレン基である場合、炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素数1~5のアルキレン基がより好ましい。なお、アルキレン基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、1,1-ジメチルエチレン基等が挙げられ、これらの結合位置は特に限定されない。
【0048】
がアリーレン基である場合、炭素数6~14のアリーレン基が好ましく、炭素数6~10のアリーレン基がより好ましい。なお、アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等が挙げられ、これらの結合位置は特に限定されない。
【0049】
上記式(2)中、pは、2以上500以下であることが好ましい。この場合、硬化物の反り等の変形が抑制されながら、かつ硬化物のガラス転移温度が高まり得る。pは、5以上であることがより好ましく、10以上であることが更に好ましい。pは、300以下であることがより好ましく、200以下であることが更に好ましい。また、上記式(2)において、qは、1又は2であることが好ましい。
【0050】
ポリオキシアルキレン化合物(b1)における、好ましい化合物名及び市販品について説明する。
【0051】
上記の通り、ポリオキシアルキレン化合物(b1)は、エポキシ基を有することが好ましい。言い換えれば、ポリオキシアルキレン化合物(b1)は、ポリオキシアルキレングリシジルエーテル化合物を含有することが好ましい。ポリオキシアルキレングリシジルエーテル化合物は、例えばポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリトリメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、及びポリヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。ポリオキシアルキレングリシジルエーテル化合物の市販品としては、例えば「jER(登録商標)YL7410(三菱ケミカル株式会社製)」、「SR-4PG(阪本薬品工業株式会社製)」、「SR-TPG(阪本薬品工業株式会社製)」、「PG-207(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)」、「PG-207GS(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)」、「YX7400(三菱ケミカル株式会社製)」、「エポゴーセーPT(四日市合成株式会社製)」等が挙げられる。
【0052】
上記の通り、ポリオキシアルキレン化合物(b1)は、ヒドロキシル基を有することが好ましい。言い換えれば、ポリオキシアルキレン化合物(b1)は、ポリオキシアルキレングリコール化合物を含有することが好ましい。ポリオキシアルキレングリコール化合物は、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物及びビスフェノールAのブチレンオキサイド付加物等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。ポリオキシアルキレングリコール化合物の市販品としては、例えば「P400(株式会社ADEKA製)」、「P700(株式会社ADEKA製)」、「P1000(株式会社ADEKA製)」、「P2000(株式会社ADEKA製)」、「P3000(株式会社ADEKA製)」、「BPX11(株式会社ADEKA製)」、「BPX21(株式会社ADEKA製)」、「BPX33(株式会社ADEKA製)」、「BPX55(株式会社ADEKA製)」、「BPX1000(株式会社ADEKA製)」、「BPX2000(株式会社ADEKA製)」等が挙げられる。
【0053】
上記の通り、ポリオキシアルキレン化合物(b1)は、アミノ基を有することが好ましい。言い換えれば、ポリオキシアルキレン化合物(b1)は、ポリオキシアルキレンアミン化合物を含有することが好ましい。ポリオキシアルキレンアミン化合物は、例えばポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、及びトリメチロールプロパントリス[ポリ(プロピレングリコール),アミン末端]エーテル等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。ポリオキシアルキレンアミン化合物の市販品としては、例えば「ポリエーテルアミンD230(三井化学ファイン株式会社製)」、「Baxxodur(登録商標)EC301(BASF社製)」等が挙げられる。
【0054】
反応性官能基を有するポリオキシアルキレン化合物(b1)の含有率は、エポキシ化合物(A)とポリオキシアルキレン化合物(B)との合計に対して、10質量%以上25質量%以下であることが好ましい。この含有率は、10質量%以上であると、硬化物の反り等の変形が抑制され得る。この含有率は、25質量%以下であれば、硬化物の耐水性が確保され得る。
【0055】
[無機充填剤]
組成物(X)は、無機充填剤(C)を含有する。これによって、硬化物の線膨張係数が低減し得る。その結果、硬化物の反りが抑制され得る。無機充填剤(C)は、例えばシリカ、アルミナ、窒化アルミニウム及び窒化ケイ素等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。これらの中でも、無機充填剤(C)は、シリカを含有することが好ましい。この場合、半導体装置を作製する際に用いられるグラインダーの摩耗性が低減され得る。これについて少し詳しく説明すると、例えば、半導体装置の作製の際に、ウエハの上に組成物(X)の硬化物を含む封止部を形成し、続いて、ウエハ及び封止部をグラインダーで切断することがある。その際に、グラインダーが、磨耗し得ることがあるが、無機充填剤(C)が、シリカを含有する場合、グラインダーの磨耗を低減することができる。また、シリカは、例えば結晶シリカ、非結晶シリカ、アモルファスシリカ、溶融シリカ及び破砕状シリカ等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0056】
無機充填剤(C)の含有率は、組成物(X)に対して、60質量%以上90質量%以下であることが好ましい。この場合、硬化物の耐熱性の向上と、硬化物の反り等の変形の抑制とが確保され得る。この含有率は、70質量%以上であることがより好ましい。この含有率は、88質量%以下であることがより好ましい。
【0057】
無機充填剤(C)の粒子の形状としては、例えば球状、鎖状、繭状、異形状、不定形状等が挙げられる。
【0058】
無機充填剤(C)の平均粒径は、50.0μm以下であることが好ましい。この場合、硬化物の耐熱性の向上と、硬化物の反り等の変形の抑制とが確保され得る。この平均粒径は、10.0μm以下であることがより好ましく、5.0μm以下であることが更に好ましい。なお、無機充填剤(C)の平均粒径は、レーザー回折・散乱法による測定結果から得られる粒度分布から求められるメディアン径(D50)である。
【0059】
無機充填剤(C)は、例えばカップリング剤等により表面処理されていることが好ましい。無機充填剤(C)は、表面処理されていることで、エポキシ化合物(A)との親和性を向上させることができる。カップリング剤としては、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤等が挙げられる。シランカップリング剤は、例えばγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のグリシドキシシラン;N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;アルキルシラン;ウレイドシラン;及びビニルシラン等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。なお、無機充填剤(C)及びカップリング剤の合計量に対するカップリング剤の割合は、0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましい。
【0060】
[イソシアネート化合物]
組成物(X)は、イソシアネート化合物(D)を含有する。これによって、組成物(X)の硬化物の吸湿が抑制され得る。その結果、吸湿後の硬化物の密着強度の低下を抑制できる。
【0061】
上記に関し詳しく説明すると、組成物(X)に含有される成分が反応して硬化する際に、硬化物に含まれる反応後のエポキシ化合物(A)には反応に関与しなかった余剰のエポキシ基や反応後に生成した水酸基が残存し得ることがある。これに対し、イソシアネート化合物(D)が有するイソシアネート基は、余剰のエポキシ基や生成した水酸基と反応することによって、疎水性が高められた化学構造を生成し得る。これによって、硬化物における吸湿が抑えられ得る。その結果、吸湿後の硬化物と基材との密着強度の低下を抑制できる。
【0062】
また、ポリオキシアルキレン化合物(B)が、ポリオキシアルキレン化合物(b1)を含有する場合において、組成物(X)に含有される成分が反応して硬化する際に、硬化物に含まれる反応後のポリオキシアルキレン化合物(b1)には反応に関与しなかった余剰の反応性官能基が残存し得ることがある。これに対し、イソシアネート化合物(D)が有するイソシアネート基は、余剰の反応性官能基と反応することによって、親水性が適度に抑えられた化学構造を生成し得る。これによって、硬化物における吸湿が抑えられ得る。その結果、吸湿後の硬化物と基材との密着強度の低下を抑制できる。
【0063】
イソシアネート化合物(D)が取り得る分子形態は、特に限定されておらず、イソシアネート化合物(D)は、モノマー、オリゴマー及びプレポリマー等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有し得る。
【0064】
イソシアネート化合物(D)は、例えば脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物及び芳香族ジイソシアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。更に、イソシアネート化合物(D)は、前記の化合物に加えて、イソシアネート基を有するシランカップリング剤を含有することもできる。これらの中で、イソシアネート化合物(D)は、芳香族イソシアネート及びイソシアネート基を有するシランカップリング剤のうち少なくとも一方を含有していることが好ましい。
【0065】
脂肪族ジイソシアネート化合物は、例えば、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びリジンジイソシアネート等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0066】
脂環族ジイソシアネート化合物は、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート及び1,4-シクロヘキサンジイソシアネート等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0067】
芳香族ジイソシアネート化合物は、例えば、フェニレン1,4-ジイソシアネート、トリレン2,4-ジイソシアネート、トリレン2,6-ジイソシアネート、ナフチレン1,5-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネート及びジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。なお、イソシアネート化合物(D)は、上記で挙げた化合物を1種単独で用いてもよく、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0068】
イソシアネート化合物(D)は、イソシアネート基の少なくとも一部がブロック剤によりブロック化されたものであってもよく、イソシアネート基の全部がブロック剤によりブロック化されたものであってもよい。
【0069】
ブロック剤としては、特に限定されないが、例えば、活性メチレン系ブロック剤、オキシム系ブロック剤、アルコール系ブロック剤、酸アミド系ブロック剤、酸イミド系ブロック剤、フェノール系ブロック剤、アミン系ブロック剤、イミダゾール系ブロック剤、ピラゾール系ブロック剤、トリアゾール系ブロック剤等が挙げられる。
【0070】
活性メチレン系ブロック剤としては、特に限定されないが、例えば、アセト酢酸エステル、マロン酸ジエステル、イソブタノイル酢酸エステル、アセチルアセトン等が挙げられる。
【0071】
アセト酢酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル等が挙げられる。
【0072】
マロン酸ジエステルとしては、特に限定されないが、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸エチルイソプロピル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジ-sec-ブチル、マロン酸ジtert-ブチル、マロン酸メチルtert-ブチル、マロン酸エチルtert-ブチル、マロン酸ジtert-ペンチル、マロン酸ジn-ヘキシル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ジベンジル等が挙げられる。
【0073】
オキシム系ブロック剤としては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。
【0074】
アルコール系ブロック剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール等が挙げられる。
【0075】
酸アミド系ブロック剤としては、特に限定されないが、例えば、アセトアニリド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等が挙げられる。
【0076】
酸イミド系ブロック剤としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド等が挙げられる。
【0077】
フェノール系ブロック剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられる。
【0078】
アミン系ブロック剤としては、特に限定されないが、例えば、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等が挙げられる。
【0079】
イミダゾール系ブロック剤としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール等が挙げられる。
【0080】
ピラゾール系ブロック剤としては、特に限定されないが、例えば、ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等が挙げられる。
【0081】
トリアゾール系ブロック剤としては、特に限定されないが、例えば、3,5-ジメチル-1,2,4-トリアゾール等が挙げられる。
【0082】
なお、上記ブロック剤は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0083】
イソシアネート化合物(D)は、有効イソシアネート基の含有率が5%以上であるイソシアネート化合物(d1)を含有することが好ましい。この場合、硬化物の吸湿がより抑制され得る。なお、有効イソシアネート基の含有率は、以下の式(3)に従って算出される。
【0084】
有効イソシアネート基の含有率=イソシアネート基の分子量(42)/イソシアネート化合物の分子量×100[%]・・・(3)
有効イソシアネート基とは、組成物(X)の硬化反応においてイソシアネート基として機能する原子団である。例えば、イソシアネート化合物(D)がブロック剤でブロック化されている場合における有効イソシアネート基の含有率とは、イソシアネート化合物(D)1分子中における潜在的に存在するイソシアネート基の含有率である。別の言い方をすれば、潜在的に存在するイソシアネート基とは、ブロック剤でブロック化されているイソシアネート化合物(D)が有するイソシアネート基が、ブロック剤と結合していないと仮定したときのイソシアネート基を意味する。なお、イソシアネート基の分子量は、上記式(3)に示すように42である。
【0085】
また、イソシアネート化合物(D)の含有率は、組成物(X)に対して、0.1質量%以上2.5質量%以下であることが好ましい。この場合、硬化物の吸湿がより抑制されながら、かつガラス転移温度が高まり得る。この含有率は、2.0質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0086】
イソシアネート化合物(d1)の含有率は、組成物(X)に対して、0.1質量%以上2.5質量%以下であることが好ましい。この場合、硬化物の吸湿が抑制されながら、かつガラス転移温度が高まり得る。この含有率は、1.5質量%以下であることがより好ましい。
【0087】
[硬化剤]
組成物(X)は、硬化剤(E)を含有していてもよい。この場合、硬化物の硬化性が、高まり得る。なお、硬化剤(E)は、上記のポリオキシアルキレン化合物(B)とイソシアネート化合物(D)とに含まれる化合物を含有しない。
【0088】
硬化剤(E)は、例えばフェノール性硬化剤、酸無水物系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤及びルイス酸-アミン錯体系硬化剤等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0089】
フェノール性硬化剤は、例えばフェノールノボラック化合物、クレゾールノボラック化合物、ナフトールノボラック化合物等のノボラック型化合物;フェニレン骨格又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル化合物、フェニレン骨格又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル化合物等のアラルキル型化合物;トリフェノールメタン型化合物等の多官能型フェノール化合物;ジシクロペンタジエン型フェノールノボラック化合物、ジシクロペンタジエン型ナフトールノボラック化合物等のジシクロペンタジエン型フェノール化合物;テルペン変性フェノール化合物;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール型化合物;及びトリアジン変性ノボラック化合物等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。また、フェノール性硬化剤は、フェノール性水酸基を1分子中に2以上有する化合物を含有していることが好ましい。加えて、フェノール性硬化剤の含有率は、硬化剤(E)に対して、50質量%以上であることが好ましい。この場合、硬化物の耐薬品性がより向上し得る。この含有率は、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。この含有率は、100質量%であってもよい。
【0090】
酸無水物系硬化剤は、例えば無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルヘキサヒドロ無水フタル酸等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。加えて、酸無水物系硬化剤の含有率は、硬化剤(E)に対して、50質量%以上であることが好ましい。この場合、硬化物の耐薬品性がより向上し得る。この含有率は、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。この含有率は、100質量%であってもよい。
【0091】
芳香族系アミン硬化剤は、例えばo-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルメチルアミン、ジメチルベンジルアミン、m-キシレンジアミン、ピリジン、ピコリン及びα-メチルベンジルメチルアミン等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。加えて、芳香族アミン系硬化剤の含有率は、硬化剤(E)に対して、50質量%以上であることが好ましい。この場合、硬化物の耐薬品性がより向上し得る。この含有率は、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。この含有率は、100質量%であってもよい。
【0092】
なお、硬化剤(E)の含有率は、組成物(X)に対して、20質量%以下であることが好ましい。この含有率は、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。この含有率は、0質量%であってもよい。また、硬化剤(E)は、1種の化合物のみを含有し、又は2種以上の化合物を含有できる。
【0093】
[硬化促進剤]
組成物(X)は、硬化促進剤(F)を含有していてもよい。この場合、エポキシ化合物(A)の反応が促進され得る。
【0094】
硬化促進剤(F)は、例えば2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2-(2-メチル-1-イミダゾリル)エチル]-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5、5,6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等のシクロアミジン類;2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン類;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンとパラベンゾキノンの付加反応物、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート;ボレート以外の対アニオンを持つ4級ホスホニウム塩;2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート;及びN-メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0095】
硬化促進剤(F)の含有率は、エポキシ化合物(A)に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。この含有率は、1質量%以上であることがより好ましい。この含有率は、5質量%以下であることがより好ましい。
【0096】
また、硬化促進剤(F)の含有率は、組成物(X)に対して、0.05質量%以上1質量%以下であることが好ましい。
【0097】
[着色剤]
組成物(X)は、本実施形態の効果を損なわない範囲内において、着色剤(G)を含有していてもよい。着色剤(G)としては、例えばカーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン、フタロシアニン、ペリレンブラック等が挙げられる。
【0098】
[添加剤]
組成物(X)は、本実施形態の効果を損なわない範囲内において、添加剤(H)を含有していてもよい。添加剤(H)は、例えば樹脂改質剤、難燃剤、難燃助剤、イオントラップ剤、低応力化剤、粘着付与剤及びシリコーン可撓剤等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0099】
<硬化物>
本実施形態の硬化物は、組成物(X)の硬化物である。組成物(X)の硬化物は、組成物(X)を加熱することによって得られる。
【0100】
組成物(X)の硬化物は、反り等の変形が生じにくい傾向がある。例えば、組成物(X)を基板上で、真空プレス成形機等により加熱成形した場合、得られた硬化物に反り等の変形が生じにくい傾向がある。なお、この時の加熱成形の温度は、例えば100℃以上180℃以下である。この温度は、120℃以上であることが好ましい。この温度は、150℃以下であることが好ましい。また、加熱成形の時間は、例えば10秒以上1時間以下である。この時間は、1分以上であることが好ましい。この時間は、20分以下であることが好ましい。
【0101】
組成物(X)の硬化物は、高温高湿条件下で放置されたとしても、密着強度の低下が生じにくい傾向がある。例えば、硬化物は温度が121℃であり、かつ湿度が100%の条件下で96時間放置されたとしても、放置後の硬化物の密着強度の低下が80%未満に抑えられる。なお、高温高湿条件下における放置前後の、硬化物における基材への密着強度をせん断強度試験機を用いて測定し、得られた値を比較することによって、密着力の低下が生じているかを確認することができる。
【0102】
組成物(X)の硬化物のガラス転移温度は、120℃以上であることが好ましい。すなわち、組成物(X)は、硬化することでガラス転移温度が120℃以上の硬化物になる性質を有することが好ましい。この場合、硬化物は良好な耐熱性を有することができる。例えば、硬化物に温度上昇を伴う処理が施された場合に、硬化物が劣化しにくい傾向がある。組成物(X)の硬化物のガラス転移温度は、135℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることが更に好ましい。なお、この硬化物のガラス転移温度は、硬化物のサンプルを、粘弾性測定装置を用いて測定することによって確認することができる。
【0103】
<適用例>
上記の通り、組成物(X)は、半導体装置が備える封止部を作製するために好適に用いられる。組成物(X)は、特にウエハレベルパッケージにおける、封止部を作製するために、使用され得る。別の言い方をすれば、組成物(X)は、ウエハレベルパッケージの製造において、複数個の半導体素子を、一度に一括して封止する用途に好ましく適用される。
【0104】
なお、封止部は、ウエハレベルパッケージ等の半導体装置における半導体素子の一部又は全部を覆うことによって、半導体素子を外部環境から保護する部材である。ウエハレベルパッケージとしては、例えば、ウエハレベルチップサイズパッケージ、ファンアウトウエハレベルパッケージが挙げられる。半導体素子としては、例えば、集積回路が形成されたダイ等が挙げられる。
【0105】
以下、ウエハレベルパッケージの製造方法の例を説明する。なお、ウエハレベルパッケージの製造方法は、以下の例に限定されない。
【0106】
まず、ウエハの表面に、再配線層を形成する。再配線層は、配線を備える。ウエハは、シリコン製であってもよい。ウエハの大きさ・形状は、特に限定されていないが、例えば、直径12インチ(300mm)の円形状である。また、ウエハの表面には集積回路が形成されていてもよい。
【0107】
続いて、再配線層の上に、配線と接触するようにしてバンプを配置する。バンプは、配線と半田ボールとを電気的に接続する。
【0108】
次いで、ウエハの上に、組成物(X)の硬化物を含む封止部を作製する。まず、組成物(X)でバンプと再配線層とを覆う。そして、バンプと再配線層とを覆った組成物(X)を加熱して硬化させることによって封止部を形成する。
【0109】
続いて、封止部を削ることで、封止部からバンプを露出させる。なお、バンプが露出するように封止部が形成されていれば、封止部は削らなくてもよい。
【0110】
次いで、バンプと接触するように半田ボ-ルを配置する。
【0111】
次いで、封止部及びウエハを切断し、個片化したウエハレベルパッケージを得る。切断にはダイシングブレード又はレーザなどを用いることができる。なお、個片化したウエハレベルパッケージにおける、ウエハに由来する部分が半導体素子(ダイ)である。つまり、半導体素子(ダイ)は封止部で覆われている。また、個片化するウエハレベルパッケージに接続されるバンプ及び半田ボールの各々の数は限定されず、ウエハレベルパッケージの種類に応じて、適宜設定することができる。
【0112】
上記のような方法に従って、組成物(X)から作製された封止部を備えるウエハレベルパッケージが作製される。上記の通り、硬化物は反り等の変形が抑制され得る。このため、ウエハに封止部を形成する際において、封止部の反り等の変形が抑制され得る。具体的には、直径12インチ(300mm)の大判のウエハ上に封止部を形成する場合であっても、反り等の変形を抑制することができる。また、このときのウエハ上に形成された封止部の厚みは、1.2mm以下であることが好ましい。この場合、ウエハレベルパッケージにおける封止部の反り等の変形が特に抑制される。この封止部の厚みが0.1mm以上1.2mm以下の範囲内であれば更に好ましい。
【0113】
以上、本開示の実施形態について述べたが、これらは本開示の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれる。例えば、組成物(X)は、ウエハレベルパッケージの製造において、基材の表面に配置された複数個の半導体素子を、一度に一括して封止する用途に好ましく適用されるが、半導体素子が1つのみの場合においても使用することができる。また、本開示では、ウエハレベルパッケージの製造方法の例について説明をしたが、組成物(X)は、ウエハレベルパッケージの製造にのみ用いられるわけではなく、適宜の方法を採用することにより、種々の半導体装置の製造に適用することができる。
【0114】
(まとめ)
上記の実施形態から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。
【0115】
本開示の第1の態様の組成物(X)は、エポキシ化合物(A)と、ポリオキシアルキレン化合物(B)と、無機充填剤(C)と、イソシアネート化合物(D)と、を含有する。エポキシ化合物(A)は、グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)を含有する。
【0116】
この態様によれば、硬化物の吸湿に伴う密着性の低下の抑制と、硬化物に生じる反り等の変形の抑制と、硬化物の耐熱性の向上とが達成され得る組成物(X)を提供することができる。
【0117】
本開示の第2の態様の組成物(X)は、第1の態様の組成物(X)に基づく。第2の態様では、イソシアネート化合物(D)は、有効イソシアネート基の含有率が5%以上であるイソシアネート化合物(d1)を含有する。
【0118】
この態様によれば、硬化物の吸湿がより抑制され得る。
【0119】
本開示の第3の態様の組成物(X)は、第1又は第2の態様の組成物(X)に基づく。第3の態様では、ポリオキシアルキレン化合物(B)は、反応性官能基を有するポリオキシアルキレン化合物(b1)を含有する。
【0120】
この態様によれば、反応性官能基が、エポキシ化合物(A)が有するエポキシ基と反応し得る。このため、硬化物における架橋点の数が適度に高まり得る。その結果、硬化物のガラス転移温度の低下が抑制され得る。
【0121】
本開示の第4の態様の組成物(X)は、第3の態様の組成物(X)に基づく。第4の態様では、反応性官能基が、エポキシ基、ヒドロキシル基及びアミノ基よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0122】
この態様によれば、硬化物のガラス転移温度がより高まり得る。これによって、硬化物の耐熱性もより高まり得る。
【0123】
本開示の第5の態様の組成物(X)は、第1から第4のいずれか1の態様の組成物(X)に基づく。第5の態様では、イソシアネート化合物(D)の含有率は、組成物(X)の全体に対して、0.1質量%以上2.5質量%以下である。
【0124】
この態様によれば、硬化物の吸湿が抑制されながら、かつガラス転移温度が高まり得る。
【0125】
本開示の第6の態様の組成物(X)は、第1から第5のいずれか1の態様の組成物(X)に基づく。第6の態様では、グリシジルアミン型エポキシ化合物(a1)の含有率は、エポキシ化合物(A)とポリオキシアルキレン化合物(B)との合計に対して、10質量%以上60質量%以下ある。
【0126】
この態様によれば、硬化物の高められたガラス転移温度が維持されながら、かつ硬化物における柔軟性が維持され得る。
【0127】
本開示の第7の態様の組成物(X)は、第1から第6のいずれか1の態様の組成物(X)に基づく。第7の態様では、組成物(X)の硬化物のガラス転移温度が120℃以上である。
【0128】
この態様によれば、組成物(X)の硬化物は、良好な耐熱性を有することができる。
【0129】
本開示の第8の態様の組成物(X)は、第1から第7のいずれか1の態様の組成物(X)に基づく。第8の態様では、無機充填剤(C)の含有率が、組成物(X)の全体に対して、60質量%以上90質量%以下である。
【0130】
この態様によれば、硬化物の反りが抑制され得る。
【0131】
本開示の第9の態様の組成物(X)は、第1から第8の態様のいずれか1の態様の組成物(X)に基づく。第9の態様では、硬化剤(E)を更に含有する。
【0132】
この態様によれば、組成物(X)の硬化性が高められ得る。
【0133】
本開示の第10の態様の半導体装置は、半導体素子と、半導体素子を覆う封止部とを備える。封止部は、第1から第9のいずれか1の態様の組成物(X)の硬化物を含む。
【0134】
この態様によれば、組成物(X)の硬化物を含む封止部を備える半導体装置が提供される。
【実施例0135】
以下、実施例により本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0136】
[封止用エポキシ樹脂組成物の作製]
表1~3に示す成分を混合して、各実施例及び比較例の封止用エポキシ樹脂組成物を調製した。成分の詳細は以下の通りである。
【0137】
<エポキシ化合物>
・エポキシ化合物#1:ビスフェノールF型エポキシ化合物(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、品名:YDF-8170C、エポキシ当量160g/eq)。
【0138】
・エポキシ化合物#2:ナフタレン型エポキシ化合物(DIC株式会社製、品名:HP-4032D、エポキシ当量136~148g/eq)。
【0139】
・エポキシ化合物#3:ビスフェノールA型エポキシ化合物(株式会社レゾナック製、品名:BATG、エポキシ当量120~128g/eq)。
【0140】
・エポキシ化合物#4:グリシジルアミン型エポキシ化合物(株式会社ADEKA製、品名:EP-3950S、エポキシ当量95g/eq)。
【0141】
<ポリオキシアルキレン化合物>
・ポリオキシアルキレン化合物#1:ポリテトラメチレンエーテルグリコールジグリシジルエーテル(三菱ケミカル株式会社製、品名:jER(登録商標)YL7410)。
【0142】
・ポリオキシアルキレン化合物#2:下記式(4)において、R及びRがプロピレン基であり、r及びsがそれぞれ15であるビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(株式会社ADEKA製、品名:BPX2000、数平均分子量2000)。
【0143】
【化3】
【0144】
・ポリオキシアルキレン化合物#3:ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)(BASF製、品名:Baxxodur(登録商標)EC301)。
【0145】
<無機充填剤>
・無機充填剤#1:シリカ(株式会社龍森製、品名:EUF3V、平均粒径(D50):4μm、D99:10μm)。
【0146】
・無機充填剤#2:球状シリカ(株式会社アドマテックス製、品名:SO25R、平均粒径(D50):0.5μm)。
【0147】
<イソシアネート化合物>
・イソシアネート化合物#1:3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、品名:KBE9007N、有効イソシアネート基の含有率17.0%)。
【0148】
・イソシアネート化合物#2:ブロック化されたイソシアネートシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、品名:X-12-1308ES、有効イソシアネート基の含有率12.2%)。
【0149】
・イソシアネート化合物#3:キシレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、品名:タケネート500、有効イソシアネート基の含有率44.7%)。
【0150】
・イソシアネート化合物#4:1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、品名:スタビオPDI、有効イソシアネート基の含有率54.5%)。
【0151】
・イソシアネート化合物#5:ウレタンプレポリマー(三井化学株式会社製、品名:タケネートM-631N、有効イソシアネート基の含有率4.5%)。
【0152】
<硬化剤>
・硬化剤#1:フェノール系化合物(明和化成株式会社製、品名:MEH8000H)。
【0153】
<硬化促進剤>
・硬化促進剤#1:2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成株式会社製、品名:2E4MZ)。
【0154】
・硬化促進剤#2:2,4-ジアミノ-6-[2-(2-メチル-1-イミダゾリル)エチル]-1,3,5-トリアジン(四国化成株式会社製、品名:2MZ-A)。
【0155】
・硬化促進剤#3:2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール(四国化成株式会社製、品名:2P4MHZ)。
【0156】
・硬化促進剤#4:1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(四国化成株式会社製、品名:1B2PZ)。
【0157】
<着色剤>
・着色剤#1:カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製、品名:MA100)。
【0158】
<添加剤>
・添加剤#1:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、品名:KBM573)。
【0159】
・添加剤#2:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、品名:SILQUEST A-187 SILANE)。
【0160】
・添加剤#3:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、品名:KBM803)。
【0161】
[封止用エポキシ樹脂組成物の評価]
<密着強度評価>
まず、Si基板の上に、成形により封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物(未処理品)を作製した。続いて、シェアテスター(ノードソン社製、型番DAGE4000 Optima)を用いて、硬化物のせん断強度を測定した。なお、封止用エポキシ樹脂組成物の成形は、温度100℃1時間で加熱し、続いて、温度150℃3時間で加熱して行った。硬化物の大きさは直径4mmで、高さ4mmであった。
【0162】
次に、上に記載した手順と同じように、Si基板の上に、成形により封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物を作製した。続いて、封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物を配置したSi基板を、温度121℃、湿度100%の条件下で、96h保管した。その後、シェアテスター(ノードソン社製、型番DAGE4000 Optima)を用いて、保管後の硬化物(吸湿処理品)のせん断強度を測定した。その結果を表1~3に示した。
【0163】
また、下記の式(5)に従って、未処理品のせん断強度の測定結果と、吸湿処理品のせん断強度の測定結果とから密着強度低下率を算出し、その算出結果を表1~3に示した。
【0164】
密着強度低下率=1-(吸湿処理品せん断強度)/(未処理品せん断強度)・・(5)
更に、密着強度低下率を下に示す基準で評価し、その評価結果も表1~3に示した。
A:密着強度低下率0.60未満
B:密着強度低下率0.60以上0.80未満
C:密着強度低下率0.80以上
【0165】
<反り性評価>
アルミナセラミックス(寸法70mm×60mm、厚さ0.2mm)の上に、モールド厚さ0.5mmで、真空プレス成形機を用いて、封止用エポキシ樹脂組成物の成形物を作製した。封止用エポキシ樹脂組成物の成形は、温度135℃、時間10分で行った。その後、アフターキュアを温度150℃、1時間で行った。アフタ-キュア後に、成形物の反り量を測定し、その測定結果を表1~3に示した。また、反り量の測定結果に基づき、下記の基準で評価し、その評価結果も表1~3に示した。
A:反り量が1mm以内である
B:反り量が1mm超である
【0166】
<ガラス転移温度評価>
動的粘弾性測定装置(DMA)によりガラス転移温度(Tg)を測定した。測定結果を、下に示す基準で評価し、その評価結果を表1~3に示した。
A:ガラス転移温度が150℃以上
B:ガラス転移温度が120℃以上150℃未満
C:ガラス転移温度が120℃未満
【0167】
【表1】
【0168】
【表2】
【0169】
【表3】