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特開2024-165173情報処理装置、制御装置、電力変換装置、情報処理方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165173
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】情報処理装置、制御装置、電力変換装置、情報処理方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20241121BHJP
【FI】
H02P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081094
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】林 崇
(72)【発明者】
【氏名】高山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大盛 秀仁
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA22
5H501BB05
5H501CC05
5H501DD03
5H501DD04
5H501GG03
5H501GG05
5H501HA04
5H501HA08
5H501HA09
5H501HB07
5H501JJ03
5H501JJ04
5H501JJ22
5H501JJ23
5H501JJ26
5H501KK05
5H501LL01
5H501LL22
5H501LL23
5H501LL35
5H501MM09
(57)【要約】
【課題】電動機、及び電動機により駆動される機械負荷を含む機械系の機械特性をより精度良く推定することが可能な技術を提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態に係る機械特性推定装置75は、電動機2、及び電動機2により駆動される機械負荷3を含む機械系4の機械特性を推定する。具体的には、機械特性推定装置75は、電動機2に対する負荷トルクTが速度vに比例する線形関数f(v)、及び速度vの上昇に応じて単調増加し且つ速度vの上昇に応じて増加率が減少する、少なくとも1つの非線形関数f(v)の線形結合で近似される機械系4の第1の力学モデルに基づき、機械系4の機械特性を推定する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機、及び前記電動機により駆動される機械負荷を含む機械系の機械特性を推定する情報処理装置であって、
前記電動機に対する負荷が速度に比例する線形関数、及び速度の上昇に応じて単調増加し且つ速度の上昇に応じて増加率が減少する、少なくとも1つの非線形関数の線形結合で近似される前記機械系の第1の力学モデルに基づき、前記機械系の機械特性を推定する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記第1の力学モデルに対応する運動方程式と、所定期間における前記電動機のトルク及び速度の検出値又は推定値とに基づき、最小二乗法を用いて、前記機械系の慣性及び負荷トルクを推定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記所定期間における前記電動機のトルク及び速度の検出値又は推定値に基づき、前記電動機のトルク、速度、加速度、及び前記非線形関数の値の中から重複を許して2つを選択する全ての組み合わせの積のそれぞれの前記所定期間での積算値を算出し、算出したそれぞれの積算値に基づき、最小二乗法を用いて、前記機械系の慣性、並びに前記電動機に対する負荷トルクに対応する前記線形関数及び前記非線形関数の比例係数を推定する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記電動機のトルク及び速度の検出値又は推定値に基づく演算過程において、同じ時定数のローパスフィルタに通過させることにより得られる、前記所定期間における前記電動機のトルク、速度、加速度、及び前記非線形関数の値に基づき、前記積算値を算出する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記電動機のトルクの検出値又は推定値を第1のローパスフィルタに通過させることにより得られる、前記所定期間における前記電動機のトルク、前記電動機の速度の検出値又は推定値を前記第1のローパスフィルタと同じ時定数の第2のローパスフィルタに通過させることにより得られる、前記所定期間における前記電動機の速度、前記電動機の速度の検出値又は推定値に基づき演算した後に前記第1のローパスフィルタと同じ時定数の第3のローパスフィルタを通過させることにより得られる、前記電動機の加速度、及び前記電動機の速度又は推定値に基づき演算した後に前記第1のローパスフィルタと同じ時定数の第4のローパスフィルタを通過させることにより得られる、前記所定期間における前記非線形関数の値に基づき、前記積算値を算出する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記所定期間は、前記電動機の加速時と減速時とで前記負荷トルクに差異が生じる低速の領域の上限よりも高い第1の閾値に対して前記電動機の速度が相対的に高い状態にある期間である、
請求項2乃至5の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記所定期間は、前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値に対して前記電動機の速度が相対的に高い状態の期間を一部に含む、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記第2の閾値は、前記電動機の運転時の最大速度に基づき規定される、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
ユーザからの設定入力に応じて、前記第1の力学モデルに基づき、前記機械系の機械特性を推定する場合と、前記機械系に対する負荷が前記第1の力学モデルとは異なる形で近似される、前記機械系の第2の力学モデルに基づき、前記機械系の機械特性を推定する場合とを切り換える、
請求項1乃至5の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記第2の力学モデルでは、前記負荷が前記電動機の速度に比例する粘性摩擦の項と、前記電動機の速度の符号関数で規定されるクーロン摩擦の項との和により近似される、
請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
機械負荷を駆動する電動機を制御する制御装置であって、
前記電動機に対する負荷が速度に比例する線形関数、及び速度の上昇に応じて単調増加し且つ速度の上昇に応じて増加率が減少する、少なくとも1つの非線形関数の線形結合で近似される、前記電動機及び前記機械負荷を含む機械系の第1の力学モデルに基づき、前記機械系の機械特性を推定し、
推定した前記機械系の機械特性に基づき、前記電動機を制御する、
制御装置。
【請求項12】
推定した前記機械系の機械特性に基づき、フィードバック制御及びフィードフォワード制御を用いて、前記電動機の位置又は速度を制御する、
請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
所定の電源からの電力を所定の電力に変換し機械負荷を駆動する電動機に出力することにより前記電動機を駆動する主回路と、
前記電動機に対する負荷が速度に比例する線形関数、及び速度の上昇に応じて単調増加し且つ速度の上昇に応じて増加率が減少する、少なくとも1つの非線形関数との線形結合で近似される、前記電動機及び前記機械負荷を含む機械系の第1の力学モデルに基づき、前記機械系の機械特性を推定する推定部と、
前記推定部により推定される前記機械系の機械特性に基づき、前記主回路を制御することにより、前記電動機の駆動制御を行う制御部と、を備える、
電力変換装置。
【請求項14】
情報処理装置が、電動機、及び前記電動機により駆動される機械負荷を含む機械系の機械特性を推定する情報処理方法であって、
前記電動機に対する負荷が速度に比例する線形関数、及び速度の上昇に応じて単調増加し且つ速度の上昇に応じて増加率が減少する、少なくとも1つの非線形関数の線形結合で近似される前記機械系の第1の力学モデルに基づき、前記機械系の機械特性を推定する、
情報処理方法。
【請求項15】
電動機、及び前記電動機により駆動される機械負荷を含む機械系の機械特性を推定させる機能を情報処理装置に実行させるプログラムであって、
前記電動機に対する負荷が速度に比例する線形関数、及び速度の上昇に応じて単調増加し且つ速度の上昇に応じて増加率が減少する、少なくとも1つの非線形関数との線形結合で近似される前記機械系の第1の力学モデルに基づき、前記機械系の機械特性を推定させる機能を情報処理装置に実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機、及び電動機により駆動される機械負荷を含む機械系について、機械特性を推定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、負荷トルクが速度に比例する粘性摩擦と速度の符号関数型のクーロン摩擦との和によって表される近似モデルを前提として、機械負荷及び電動機の慣性、粘性摩擦係数、及びクーロン摩擦等を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-181905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、負荷トルクが粘性摩擦と符号関数型のクーロン摩擦との和によって表される近似モデルを前提とする場合、機械負荷によっては、実際の機械特性に対する近似誤差が比較的大きくなる可能性がある。
【0006】
そこで、上記課題に鑑み、電動機、及び電動機により駆動される機械負荷を含む機械系の機械特性をより精度良く推定することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
電動機、及び前記電動機により駆動される機械負荷を含む機械系の機械特性を推定する情報処理装置であって、
前記電動機に対する負荷が速度に比例する線形関数、及び速度の上昇に応じて単調増加し且つ速度の上昇に応じて増加率が減少する、少なくとも1つの非線形関数の線形結合で近似される前記機械系の第1の力学モデルに基づき、前記機械系の機械特性を推定する、
情報処理装置が提供される。
【0008】
また、本開示の他の実施形態では、
機械負荷を駆動する電動機を制御する制御装置であって、
前記電動機に対する負荷が速度に比例する線形関数、及び速度の上昇に応じて単調増加し且つ速度の上昇に応じて増加率が減少する、少なくとも1つの非線形関数の線形結合で近似される、前記電動機及び前記機械負荷を含む機械系の第1の力学モデルに基づき、前記機械系の機械特性を推定し、
推定した前記機械系の機械特性に基づき、前記電動機を制御する、
制御装置が提供される。
【0009】
また、本開示の更に他の実施形態では、
所定の電源からの電力を所定の電力に変換し機械負荷を駆動する電動機に出力することにより前記電動機を駆動する主回路と、
前記電動機に対する負荷が速度に比例する線形関数、及び速度の上昇に応じて単調増加し且つ速度の上昇に応じて増加率が減少する、少なくとも1つの非線形関数との線形結合で近似される、前記電動機及び前記機械負荷を含む機械系の第1の力学モデルに基づき、前記機械系の機械特性を推定する推定部と、
前記推定部により推定される前記機械系の機械特性に基づき、前記主回路を制御することにより、前記電動機の駆動制御を行う制御部と、を備える、
電力変換装置が提供される。
【0010】
また、本開示の更に他の実施形態では、
情報処理装置が、電動機、及び前記電動機により駆動される機械負荷を含む機械系の機械特性を推定する情報処理方法であって、
前記電動機に対する負荷が速度に比例する線形関数、及び速度の上昇に応じて単調増加し且つ速度の上昇に応じて増加率が減少する、少なくとも1つの非線形関数の線形結合で近似される前記機械系の第1の力学モデルに基づき、前記機械系の機械特性を推定する、
情報処理方法が提供される。
【0011】
また、本開示の更に他の実施形態では、
電動機、及び前記電動機により駆動される機械負荷を含む機械系の機械特性を推定させる機能を情報処理装置に実行させるプログラムであって、
前記電動機に対する負荷が速度に比例する線形関数、及び速度の上昇に応じて単調増加し且つ速度の上昇に応じて増加率が減少する、少なくとも1つの非線形関数との線形結合で近似される前記機械系の第1の力学モデルに基づき、前記機械系の機械特性を推定させる機能を情報処理装置に実行させる、
プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
上述の実施形態によれば、電動機、及び電動機により駆動される機械負荷を含む機械系の機械特性をより精度良く推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】駆動システムの構成の一例を示す図である。
図2】制御装置の第1例を示す制御ブロック線図である。
図3】制御装置の第2例を示す制御ブロック線図である。
図4】制御装置の第3例を示す制御ブロック線図である。
図5】制御装置の第4例を示す制御ブロック線図である。
図6】制御装置の第5例を示す制御ブロック線図である。
図7】電動機及び機械負荷を含む機械系の機械特性の推定に関するシミュレーションの一例を説明する図である。
図8】比較例に係る機械系の機械特性の推定方法についてのシミュレーション結果を示す図である。
図9】実施形態に係る機械特性の推定方法の一例によるシミュレーション結果を示す図である。
図10】機械特性推定装置の機能構成の第1例を示す機能ブロック図である。
図11】電動機及び機械負荷を含む機械系の動作パターンの一例を示す図である。
図12】電動機及び機械負荷を含む機械系の速度と負荷トルクとの関係の一例を示す図である。
図13】機械特性推定装置の機能構成の第2例を示す機能ブロック図である。
図14】機械特性推定装置の処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0015】
[駆動システムの概要]
図1を参照して、本実施形態に係る駆動システム1の概要について説明する。
【0016】
図1は、駆動システム1の一例を示す図である。
【0017】
図1に示すように、駆動システム1は、電動機2と、機械負荷3と、電力変換装置100と、回転状態センサ110と、管理装置200と、端末装置300とを含む。
【0018】
駆動システム1は、電力変換装置100から所定の電圧や所定の周波数の三相交流を電動機2に出力し電動機2を駆動することにより、電動機2を用いて機械負荷3を駆動する。
【0019】
電動機2は、機械負荷3と機械的に連結され、機械負荷3を駆動する。電動機2は、例えば、誘導電動機や同期電動機等の交流電動機である。
【0020】
機械負荷3は、工場の生産設備や機械設備である。例えば、機械負荷3は、ボールねじを利用した搬送装置である。この場合、電動機2は、ボールねじを駆動することにより、機械負荷3としての搬送装置を駆動することができる。
【0021】
電力変換装置100は、交流電源PSから入力される三相交流(例えばR相、S相、及びT相)を所定の電圧や所定の周波数を有する三相交流(例えば、U相、V相、及びW相)に変換し、電動機2を駆動する。
【0022】
電力変換装置100は、整流回路10と、平滑回路20と、インバータ回路30と、電流センサ40と、電圧センサ50と、ゲート駆動回路60と、制御装置70と、機械特性推定装置75と、入力部80と、表示部85と、通信部90とを含む。
【0023】
整流回路10は、交流電源PSから入力される三相交流を整流し直流を出力する。整流回路10は、正側及び負側の出力端のそれぞれが正ラインPL及び負ラインNLの一端に接続され、正ラインPL及び負ラインNLを通じて、直流を平滑回路20に出力することができる。例えば、図1に示すように、整流回路10は、6つの半導体ダイオードSDを含み、上下アームを構成する2つの半導体ダイオードSDの直列接続体が3組並列接続されるブリッジ型全波整流回路である。この場合、R相、S相、及びT相の入力線は、それぞれ、3組の上下アームの中間点に接続される。
【0024】
平滑回路20は、整流回路10から出力される直流電力やインバータ回路30から回生される直流電力の脈動を抑制し平滑化する。
【0025】
例えば、図1に示すように、平滑回路20は、平滑コンデンサ21を含む。
【0026】
平滑コンデンサ21は、整流回路10やインバータ回路30と並列に、正ラインPL及び負ラインNLを繋ぐ経路に設けられてよい。
【0027】
平滑コンデンサ21は、適宜、充放電を繰り返しながら、整流回路10から出力される直流電力やインバータ回路30から出力(回生)される直流電力を平滑化する。
【0028】
平滑コンデンサ21は、一つであってよい。また、平滑コンデンサ21は、複数配置されてもよく、複数の平滑コンデンサ21が正ラインPL及び負ラインNLの間に並列接続されてもよいし、直列接続されてもよい。また、複数の平滑コンデンサ21は、2以上の平滑コンデンサの直列接続体が正ラインPL及び負ラインNLの間に複数並列接続される形で構成されてもよい。
【0029】
また、平滑回路20は、リアクトルを含んでもよい。
【0030】
リアクトルは、整流回路10と平滑コンデンサ21(具体的には、平滑コンデンサ21が配置される経路との分岐点)との間の正ラインPLに設けられてよい。
【0031】
リアクトルは、適宜、電流の変化を妨げるように電圧を発生させながら、整流回路10から出力される直流電力やインバータ回路30から出力(回生)される直流電力を平滑化する。
【0032】
インバータ回路30は、その正側及び負側の入力端が正ラインPL及び負ラインNLの他端に接続される。インバータ回路30は、平滑回路20から供給される直流を半導体スイッチSWのスイッチ動作により、所定の周波数や所定の電圧を有する三相交流電力(U相、V相、及びW相)に変換し電動機2に出力する。半導体スイッチSWは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やHEMT(High Electron Mobility Transistor)等である。半導体スイッチSWは、例えば、ケイ素(シリコン:Si)を主材料として構成される。また、半導体スイッチSWは、ワイドバンドギャップ半導体材料を主材料として構成されてもよい。ワイドバンドギャップ半導体材料は、例えば、炭化ケイ素(シリコンカーバイド:SiC)、窒化ガリウム(ガリウムナイトライド:GaN)、酸化ガリウム(ガリウムオキサイド:Ga)、炭素(ダイヤモンド:C)等である。
【0033】
例えば、図1に示すように、インバータ回路30は、6つの半導体スイッチSWを含む。具体的には、インバータ回路30は、上下アームを構成する2つの半導体スイッチSWの直列接続体(スイッチレグ)が正ラインPL及び負ラインNLの間に3組並列接続されるブリッジ回路を含んでよい。この場合、インバータ回路30は、3組の上下アームの中間点から引き出される3本の出力線を通じて、三相交流電力を出力する。また、6つの半導体スイッチSWには、それぞれ、環流ダイオードが並列接続されてよい。
【0034】
電流センサ40は、電力変換装置100の三相(3本)の出力線のそれぞれの電流、即ち、電動機2の三相のそれぞれの電流を検出する。電流センサ40は、例えば、ホール素子、シャント抵抗、磁気抵抗素子、フラックスゲート等を用いて電流を検出し、AD(Analog-Digital)コンバータを用いて電流の検出値(デジタル値)を得る。電流センサ40は、電動機2の三相のそれぞれの電流の検出値に相当する信号を出力し、電流センサ40の出力信号は、制御装置70に取り込まれる。
【0035】
尚、電流センサ40は、電力変換装置100の三相の出力線のうちの任意の二相の電流のみを検出してもよい。この場合、制御装置70は、二相の電流の検出値から残りの一相の電流値を取得(演算)してよい。また、制御装置70は、例えば、直流リンク(正ラインPLや負ラインNL)の電流値と、半導体スイッチSWのスイッチングパターンとに基づき、電力変換装置100の三相の出力線の電流値を取得(演算)してもよい。この場合、制御装置70は、電圧センサ50の出力に基づき、直流リンクの電流値を取得(演算)してよい。
【0036】
電圧センサ50は、電力変換装置100の正ラインPL及び負ラインNLの間の電圧(直流リンク電圧)を検出する。電圧センサ50は、正ラインPL及び負ラインNLの間の電圧値に相当する信号を出力し、電圧センサ50の出力信号は、制御装置70に取り込まれる。
【0037】
ゲート駆動回路60は、制御装置70の制御下で、インバータ回路30の6つの半導体スイッチSWをスイッチング(ON/OFF)するための駆動信号を6つの半導体スイッチSWのそれぞれのゲート端子に出力する。
【0038】
制御装置70は、電力変換装置100に関する制御を行う。
【0039】
制御装置70の機能は、任意のハードウェア或いは任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現されてよい。制御装置70は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ装置、補助記憶装置、及びインタフェース装置を含むコンピュータを中心に構成される。メモリ装置は、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)である。補助記憶装置は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)やフラッシュメモリである。インタフェース装置は、例えば、外部の記録媒体と接続する外部インタフェースや電力変換装置100の内部の他の構成要素と通信を行うための通信インタフェース等を含む。制御装置70は、例えば、補助記憶装置にインストールされるプログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行することにより各種機能を実現することができる。また、制御装置70は、外部インタフェースを通じて、記録媒体からプログラムを取り込みインストールしたり、通信インタフェース及び通信部90を通じて、電力変換装置100の外部機器からプログラムを取り込みインストールしたりすることができる。
【0040】
制御装置70は、例えば、電動機2が所定の運転条件で動作するように、ゲート駆動回路60を介してインバータ回路30を制御し、電動機2を駆動させる。
【0041】
機械特性推定装置75は、電動機2及び機械負荷3を含む機械系4の機械特性を推定する。これにより、制御装置70は、機械特性推定装置75による機械系4の機械特性の推定結果に基づき、電力変換装置100を制御することにより、電動機2を適切に制御することができる。
【0042】
機械特性推定装置75の機能は、任意のハードウェア或いは任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現されてよい。例えば、機械特性推定装置75は、制御装置70と同様、CPU、メモリ装置、補助記憶装置、及びインタフェース装置を含むコンピュータ等によって構成される。メモリ装置は、例えば、SRAMである。補助記憶装置は、例えば、EEPROMやフラッシュメモリである。インタフェース装置は、例えば、外部の記録媒体と接続する外部インタフェースや電力変換装置100の内部の他の構成要素と通信を行うための通信インタフェース等を含む。機械特性推定装置75は、補助記憶装置にインストールされるプログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行することにより各種機能を実現することができる。また、機械特性推定装置75は、外部インタフェースを通じて、記録媒体からプログラムを取り込みインストールしたり、通信インタフェース及び通信部90を通じて、電力変換装置100の外部機器からプログラムを取り込みインストールしたりすることができる。
【0043】
入力部80は、駆動システム1のユーザからの入力を受け付ける。駆動システム1のユーザは、例えば、電動機2で駆動される機械負荷3が設置される工場の管理者や作業者等である。
【0044】
例えば、入力部80は、ボタン、トグル、レバー等を含む。また、入力部80は、ユーザからの音声入力、ジェスチャ入力、生体入力等を受け付ける音声入力部、ジェスチャ入力部、生体入力部等を含んでもよい。
【0045】
入力部80に対する入力内容に対応する信号は、制御装置70や機械特性推定装置75に取り込まれる。
【0046】
表示部85は、制御装置70や機械特性推定装置75の制御下で、ユーザに向けて電力変換装置100に関する情報を表示する。表示部85は、例えば、警告灯、電光掲示板、液晶ディスプレイ、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等を含む。
【0047】
通信部90は、所定の通信回線を通じて、電力変換装置100の外部機器と通信を行う。
【0048】
所定の通信回線は、例えば、一対一の通信線であってよい。また、所定の通信回線には、例えば、電動機2により駆動される生産設備や機械設備等が設置される施設(工場)内に構築されるフィールドネットワーク等のローカルネットワーク(LAN:Local Area Network)が含まれてよい。ローカルネットワークは、有線で構築されていてもよいし、無線で構築されていてもよいし、その双方を含んでいてもよい。また、所定の通信回線には、例えば、電動機2により駆動される生産設備や機械設備等が設置される施設(工場)の外部の広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)が含まれてもよい。広域ネットワークには、例えば、基地局を末端とする移動体通信網、通信衛星を利用する衛星通信網、インターネット網等が含まれてよい。また、所定の通信回線には、例えば、ブルートゥース(登録商標)やWiFi等の所定の無線通信規格による近距離通信回線が含まれてもよい。
【0049】
尚、通信部90の機能は、インタフェース装置の一機能として、制御装置70や機械特性推定装置75に内蔵されてもよい。
【0050】
回転状態センサ110は、電動機2の回転位置や回転速度を検出する。例えば、回転状態センサ110は、光学式や磁気式のエンコーダである。回転状態センサ110は、電動機2の回転位置や回転速度の検出値に相当する信号を出力し、回転状態センサ110の出力信号は、電力変換装置100の制御装置70に取り込まれる。これにより、制御装置70は、回転状態センサ110の検出信号に基づき、電動機2の回転子の磁極位置や回転速度を把握することができる。
【0051】
管理装置200は、電力変換装置100の外部に設けられる。管理装置200は、電力変換装置100の上位装置として、電力変換装置100と通信可能に接続され、電力変換装置100及び電動機2に関する管理を行う。
【0052】
管理装置200は、例えば、電力変換装置100から電力変換装置100や電動機2の状態に関するデータを取得し、電力変換装置100や電動機2の状態の監視機能に関する処理を行う。また、管理装置200は、例えば、電力変換装置100及び電動機2が設置される工場の作業者や管理者等のユーザと、電力変換装置100との間のやり取りに関するインタフェース機能に関する処理を行う。具体的には、管理装置200は、電動機2や電力変換装置100に関する情報をユーザに提供したり、ユーザからの入力を受け付け電力変換装置100に送信したりするための処理を行ってよい。
【0053】
管理装置200は、例えば、電動機2で駆動される機械設備や生産設備が設置される工場等において、電力変換装置100を含むフィールドデバイスを管理するPLC(Programmable Logic Controller)等のエッジコントローラである。また、管理装置200は、例えば、工場の機械設備や生産設備等の管理用の端末装置である。管理用の端末装置は、例えば、工場等の事務所に設置されるデスクトップ型のPC(Personal Computer)等の定置型のコンピュータ端末であってよい。また、管理用の端末装置は、例えば、タブレット端末、スマートフォン、ラップトップ型のPC等の工場の管理者や作業者等が携帯可能な可搬型の端末装置(携帯端末)であってもよい。また、管理装置200は、例えば、サーバ装置である。サーバ装置は、例えば、電動機2で駆動される生産設備や機械設備が設置される工場等の遠隔に設置されるオンプレミスサーバやクラウドサーバであってよい。また、サーバ装置は、電動機2で電気駆動される生産設備や機械設備が設置される工場等の敷地内やその近隣の施設に設置されるエッジサーバであってもよい。
【0054】
管理装置200の機能は、任意のハードウェア或いは任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現される。例えば、管理装置200は、CPU、メモリ装置、補助記憶装置、高速演算装置、インタフェース装置を含むコンピュータを中心に構成される。また、管理装置200は、入力装置及び表示装置等のユーザインタフェース機器を有してもよい。メモリ装置は、例えば、SRAMやDRAM(Dynamic Random Access Memory)等を含む。補助記憶装置は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)やSSD(Solid State Drive)やEEPROMやフラッシュメモリ等を含む。高速演算装置は、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を含む。インタフェース装置は、例えば、外部の記録媒体と接続する外部インタフェースや他の機器と通信を行うための通信インタフェース等を含む。管理装置200は、補助記憶装置にインストールされるプログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行することにより各種機能を実現することができる。また、管理装置200は、外部インタフェースを通じて、記録媒体からプログラムを取り込みインストールしたり、通信インタフェースを通じて、他の機器からプログラムを取り込みインストールしたりすることができる。入力装置は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等を含む。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等を含む。
【0055】
端末装置300は、電力変換装置100の外部に設けられ、駆動システム1のユーザに利用されるユーザ端末である。端末装置300は、例えば、ユーザに電力変換装置100や電動機2に関する各種情報を提供したり、ユーザから各種入力を受け付け、電力変換装置100に送信したりする。端末装置300は、管理装置200経由で電動機2や電力変換装置100に関する情報を取得してもよいし、電力変換装置100から電動機2や電力変換装置100に関する情報を直接取得してもよい。同様に、端末装置300は、管理装置200経由で電力変換装置100にユーザからの各種入力を送信してもよいし、電力変換装置100にユーザからの入力を直接送信してもよい。
【0056】
端末装置300は、例えば、デスクトップ型のPC等の定置型の端末装置であってもよいし、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップ型のPC等の可搬型の端末装置(携帯端末)であってもよい。
【0057】
端末装置300の機能は、任意のハードウェア或いは任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現される。例えば、端末装置300は、CPU、メモリ装置、補助記憶装置、インタフェース装置を含むコンピュータや入力装置及び表示装置等のユーザインタフェース機器を中心に構成される。メモリ装置は、例えば、SRAMやDRAM等を含む。補助記憶装置は、例えば、HDDやSSDやEEPROMやフラッシュメモリ等を含む。インタフェース装置は、例えば、外部の記録媒体と接続する外部インタフェースや他の機器と通信を行うための通信インタフェース等を含む。端末装置300は、補助記憶装置にインストールされるプログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行することにより各種機能を実現することができる。また、端末装置300は、外部インタフェースを通じて、記録媒体からプログラムを取り込みインストールしたり、通信インタフェースを通じて、他の機器からプログラムを取り込みインストールしたりすることができる。入力装置は、例えば、ボタンスイッチ、キーボード、マウス、タッチパネル等を含む。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等を含む。
【0058】
[制御装置の具体例]
次に、図2図6を参照して、制御装置70の具体例について説明する。
【0059】
<第1例>
図2は、制御装置70の第1例を示す制御ブロック線図である。
【0060】
図2に示すように、機械系4は、電動機2のトルクTとの機械系4の負荷トルクTとの差分に相当する加速トルク(減速時を含む)によって、機械系4の回転部の全体の慣性Jに応じた運動を行う。つまり、機械系4の運動方程式は、電動機2のトルクT、機械系4の負荷トルクT、及び機械系4の回転運動の速度v或いは位置xを用いて、以下の数式1で表される。
【0061】
【数1】
【0062】
図2に示すように、本例では、制御装置70は、速度指令vに基づき、電動機2を含む機械系4の速度制御を行う。これにより、制御装置70は、機械負荷3の運転条件に合わせて、機械負荷3の可動部の速度を制御することができる。速度指令vは、機械負荷3の所定の運転条件に応じて、制御装置70により生成されてもよいし、制御装置70の外部で生成されてもよい。
【0063】
制御装置70は、フィードフォワード(FF:Feedforward)制御部701と、フィードバック(FB:Feedback)制御部702とを含む。
【0064】
FF制御部701は、速度指令vに相当する速度vで電動機2を含む機械系4を加減速させて、或いは、一定速度で回転させるための電動機2のトルクに相当するフィードフォワード(FF)トルクTFFを生成し出力する。具体的には、FF制御部701は、速度指令vに対応する負荷トルクTの推定値TLest(V)と速度指令vの変化に応じた加減速を行うために必要な加速トルクTr(V)との加算によってFFトルクTFFを生成し出力する。
【0065】
FB制御部702は、速度指令vと電動機2を含む機械系4の実際の速度vとの偏差に応じたフィードバック(FB)トルクTFBを生成し出力する。機械系4の実際の速度vは、回転状態センサ110の出力に基づき取得される、電動機2の速度検出値v_dに相当する。また、電動機2について、既知のセンサレスベクトル制御が行われる場合、機械系4の実際の速度vは、電動機2の速度推定値であってもよい。この場合、回転状態センサ110は、省略されてもよい。例えば、FB制御部702は、速度指令vと機械系4の速度vとの偏差、及び機械系4の回転部の慣性Jに基づき、PI(Proportional Integral)制御を用いて、FBトルクTFBを生成し出力する。
【0066】
制御装置70は、FFトルクTFFとFBトルクTFBとの和に相当するトルクを電動機2から出力させるように、電力変換装置100を制御する。
【0067】
このように、本例では、制御装置70は、速度のFF制御及びFB制御を併用して機械負荷3の可動部の速度を制御することができる。
【0068】
<第2例>
図3は、制御装置70の第2例を示す制御ブロック線図である。
【0069】
本例では、上述の第1例と同じ或いは対応する構成には同一の符号を付すと共に、上述の第1例と異なる部分を中心に説明し、上述の第1例と同じ或いは対応する内容の説明を省略する場合がある。
【0070】
図3に示すように、本例では、制御装置70は、上述の第1例と同様、速度指令vに基づき、電動機2を含む機械系4の速度制御を行う。
【0071】
本例では、制御装置70は、FF制御部701とFB制御部702とに加えて、指令フィルタ703を含む点で上述の第1例と異なり、他の点で上述の第1例と同じである。
【0072】
FF制御部701は、指令フィルタ703を通過後の速度指令Fvに相当する速度vで機械系4の回転部を回転させるための電動機2のトルクに相当するFFトルクTFFを生成し出力する。
【0073】
FB制御部702は、指令フィルタ703を通過後の速度指令Fvと電動機2を含む機械系4の実際の速度vとの偏差に応じたFBトルクTFBを生成し出力する。
【0074】
このように、制御装置70は、指令フィルタ703を適用後の速度指令Fvに基づき、速度のFF制御及びFB制御を併用して、電動機2を含む機械系4の速度制御を行ってもよい。
【0075】
<第3例>
図4は、制御装置70の第3例を示す制御ブロック線図である。
【0076】
本例では、上述の第1例、第2例と同じ或いは対応する構成には同一の符号を付すと共に、上述の第1例、第2例と異なる部分を中心に説明し、上述の第1例、第2例と同じ或いは対応する内容の説明を省略する場合がある。
【0077】
図3に示すように、本例では、制御装置70は、上述の第1例、第2例と同様、速度指令vに基づき、電動機2の速度制御を行う。
【0078】
本例では、制御装置70は、FF制御部701に代えて、FF制御部701Aを含む点で、上述の第2例と異なり、他の点で上述の第2例と同じである。
【0079】
FF制御部701Aは、FF制御部701と異なり、指令フィルタ703と同様の指令フィルタ機能を内蔵し、速度指令vが入力される。
【0080】
このように、制御装置70は、指令フィルタ機能を含むFF制御部701Aを用いることにより、指令フィルタの適用後の指令値Fvに基づき、速度のFF制御及びFB制御を併用して、電動機2を含む機械系4の速度制御を行ってもよい。
【0081】
<第4例>
図5は、制御装置70の第4例を示す制御ブロック線図である。
【0082】
本例では、上述の第1例~第3例と同じ或いは対応する構成には同一の符号を付すと共に、上述の第1例~第3例と異なる部分を中心に説明し、上述の第1例~第3例と同じ或いは対応する内容の説明を省略する場合がある。
【0083】
図5に示すように、本例では、制御装置70は、上述の第1例~第3例と異なり、位置指令xに基づき、電動機2を含む機械系4の位置制御を行う。これにより、制御装置70は、機械負荷3の運転条件に合わせて、機械負荷3の可動部の位置を制御することができる。位置指令xは、機械負荷3の所定の運転条件に応じて、制御装置70により生成されてもよいし、制御装置70の外部で生成されてもよい。
【0084】
制御装置70は、FF制御部701と、FB制御部702とに加えて、上述の第1例と異なり、速度指令生成部704と、速度演算部705とを含む。
【0085】
速度指令生成部704は、位置指令xと機械系4の回転部の実際の位置xとの差分に基づき、位置フィードバック制御による速度指令v FBを生成する。機械系4の可動部の実際の位置xは、回転状態センサ110の出力に基づき検出される、電動機2の回転位置の検出値に対応する。例えば、速度指令生成部704は、位置指令xと機械系4の回転部の実際の位置xとの差分に比例ゲインKを乗じることにより速度指令v FBを生成する。
【0086】
速度演算部705は、機械系4の回転部の実際の位置xを微分することにより、機械系4の回転部の実際の速度vを演算する。機械系4の回転部の実際の速度vは、回転状態センサ110の出力に基づき取得される、電動機2の速度検出値v_dに相当する。
【0087】
FF制御部701は、速度指令v FBに相当する速度vで機械系4の回転部を回転させるための電動機2のトルクに相当するFFトルクTFFを生成し出力する。
【0088】
FB制御部702は、速度指令v FBと機械系4の回転部の実際の速度vとの偏差に応じたFBトルクTFBを生成し出力する。
【0089】
このように、本例では、制御装置70は、位置のFB制御、並びに速度のFF制御及びFB制御を用いて、機械負荷3の可動部の位置を制御することができる。
【0090】
<第5例>
図6は、制御装置70の第5例を示す制御ブロック線図である。
【0091】
本例では、上述の第1例~第4例と同じ或いは対応する構成には同一の符号を付すと共に、上述の第1例~第4例と異なる部分を中心に説明し、上述の第1例~第4例と同じ或いは対応する内容の説明を省略する場合がある。
【0092】
図6に示すように、本例では、制御装置70は、FF制御部701と、FB制御部702と、速度指令生成部704と、速度演算部705とに加えて、上述の第4例と異なり、指令フィルタ706と、速度指令生成部707とを含む。
【0093】
速度指令生成部704は、指令フィルタ706を通過後の位置指令Fxと機械系4の実際の位置xとの偏差に基づき、位置フィードバックによる速度指令v FBを生成し出力する。
【0094】
速度指令生成部707は、指令フィルタ706を通過後の位置指令Fxに基づき、位置フィードフォワード制御による速度指令v FFを生成し出力する。例えば、速度指令生成部707は、位置指令Fxを微分することにより、速度指令v FFを生成する。
【0095】
FF制御部701は、速度指令v FFに相当する速度vで機械系4の回転部を運動させるための電動機2のトルクに相当するFFトルクTFFを生成し出力する。
【0096】
FB制御部702は、速度指令v FF及び速度指令v FBの和と、機械系4の実際の速度vとの偏差に応じたFBトルクTFBを生成し出力する。
【0097】
このように、本例では、制御装置70は、位置のFF制御及びFB制御、並びに速度のFF制御及びFB制御を用いて、機械系4の可動部の位置を制御することができる。この際、制御装置70は、指令フィルタ706を適用後の位置指令Fxに基づき、電動機2を含む機械系4の位置制御を行ってもよい。
【0098】
[機械特性推定装置の概要]
次に、機械特性推定装置75の概要について説明する。
【0099】
機械特性推定装置75は、以下の数式2に示すように、機械系4の負荷トルクTが機械系4の回転部の速度vに比例する線形関数f(v)と、速度vに関する非線形関数f(v)(p=1,...,n)との線形結合によって近似される力学モデルを使用する。以下、この力学モデルを便宜的に「第1の力学モデル」と称する場合がある。
【0100】
【数2】
【0101】
非線形関数f(v)は、速度vの上昇に応じて単調増加し、且つ、速度vの上昇に応じて増加率が減少する形の非線形関数である。機械系4の負荷トルクTは、速度vの上昇に応じて単調増加し、且つ、速度vの上昇に応じて増加率が減少する傾向があるからである。これにより、第1の力学モデルは、速度vの変化に対する負荷トルクTの変化をより適切に反映し、近似誤差を抑制することができる。
【0102】
上記の数式1,2から、機械系4の運動方程式は、以下の数式3で表される。
【0103】
【数3】
【0104】
よって、機械特性推定装置75は、電動機2を含む機械系4の稼働中の電動機2のトルクT及び速度vの検出値或いは推定値に基づき、係数b,b,...,b、及び慣性Jを推定することにより、機械系4の機械特性を推定することができる。例えば、電動機2のトルクTの推定値は、電流センサ40の出力、即ち、電力変換装置100の出力電流の検出値に基づき算出される。また、電動機2のトルクTの検出値が使用されてもよい。例えば、電動機2のトルクTの検出値は、電動機2のトルクを測定するトルクセンサの出力に基づき取得されうる。例えば、電動機2の速度vの検出値は、上述の如く、回転状態センサ110の出力に基づき取得される。また、電動機2のセンサレスベクトル制御が適用される場合、上述の如く、電動機2の速度vの推定値が使用されてもよい。
【0105】
例えば、機械特性推定装置75は、電動機2を含む機械系4の稼働中の電動機2のトルクT及び速度vの検出値或いは推定値に基づき、最小二乗法を用いて、係数b,b,...,b、及び慣性Jを推定する。具体的には、機械特性推定装置75は、以下の数式4の積分値Iが最小になるように係数b,b,...,b、及び慣性Jを推定する。
【0106】
【数4】
【0107】
数式4が最小となる条件を整理すると、以下の数式5が得られる。
【0108】
【数5】
【0109】
ここで、以下の数式6のように定義する。
【0110】
【数6】
【0111】
これにより、数式5は、以下の数式7のように表される。
【0112】
【数7】
【0113】
ここで、以下の数式8のように定義する。
【0114】
【数8】
【0115】
これにより、数式7は、以下の数式9のように整理される。
【0116】
【数9】
【0117】
数式9は、以下の数式10のように行列演算に置換することができる。
【0118】
【数10】
【0119】
よって、係数b,b,...,b、及び慣性Jは、以下の数式11で表される。
【0120】
【数11】
【0121】
このように、機械特性推定装置75は、数式11を用いて、係数b,b,...,b、及び慣性Jを推定することができる。
【0122】
具体的には、機械特性推定装置75は、数式8で表される、変数x,...,x,yの中から重複を許して2つを選択する全ての組み合わせのそれぞれの積の時間積分値を算出する。そして、機械特性推定装置75は、算出した時間積分値で表される行列M,Qに関する数式11の演算により、係数b,b,...,b、及び慣性Jを推定する。これにより、機械特性推定装置75は、機械系4の機械特性、具体的には、負荷トルクT及び慣性Jを推定することができる。
【0123】
[機械特性の推定に関するシミュレーションの結果]
次に、図7図9を参照して、機械系4の機械特性の推定に関するシミュレーションの結果について説明する。
【0124】
本例では、比較例に係る機械系4の機械特性の推定方法についてのシミュレーション結果、及び実施例に係る機械系4の機械特性の推定方法についてのシミュレーションを説明する。以下、シミュレーションの実行主体を便宜的に「シミュレーション用コンピュータ」と称する場合がある。
【0125】
<シミュレーションの概要>
図7は、電動機2及び機械負荷3を含む機械系4の機械特性の推定に関するシミュレーションの一例を説明する図である。
【0126】
図7Aに示すように、シミュレーションモデルは、速度指令に基づき、制御装置70がPI制御器による速度フィードバック制御によって、機械系4の回転部の速度を制御する形で規定される。シミュレーションにおいて、機械系4の慣性J及び負荷トルクTは、以下の数式12で表される条件が適用される。
【0127】
【数12】
【0128】
図7Bに示すように、本例では、機械系4の回転部をゼロから1000[r/min]まで加速させ一定に維持させた後にゼロまで減速させる工程を2回、及びゼロから2000[r/min]まで加速させ一定に維持させた後にゼロまで減速させる工程を1回の合計3回の動作工程のシミュレーションが行われる。
【0129】
3回の工程のうち、最初(1回目)の工程では、電動機2のトルク及び速度から機械系4の機械特性が推定され、その後の2回(2回目及び3回目)の工程では、最初の工程で推定された機械特性に基づき、機械系4の負荷トルクTの推定値TLestが演算される。
【0130】
<比較例についてのシミュレーション結果>
図8は、比較例に係る機械系の機械特性の推定方法についてのシミュレーション結果を示す図である。具体的には、図8は、2回目の工程での機械系4の負荷トルクTとその推定値TLestとを表す図8Aと、3回目の工程での機械系4の負荷トルクTとその推定値TLestとを表す図8Bとを含む。
【0131】
比較例では、以下の数式13に示すように、機械系4の負荷トルクTが機械系の回転部の速度vに関する2次多項式で近似される力学モデルが使用される。
【0132】
【数13】
【0133】
シミュレーション用コンピュータは、本実施形態の場合と同様、最小二乗法を用いて、係数a,a,a、及び慣性Jを推定することにより、機械系4の機械特性を推定することができる。
【0134】
図8Aに示すように、機械系4の機械特性が推定された最初の工程と同じ速度の範囲で機械系4の回転部が動作する2回目の工程では、機械系4の負荷トルクT(実線)とその推定値TLest(破線)との近似誤差は比較的小さくなっている。
【0135】
一方、図8Bに示すように、機械系4の機械特性が推定された最初の工程よりも高い速度範囲を含む3回目の工程では、機械系4の負荷トルクT(実線)とその推定値TLest(破線)との近似誤差が比較的大きくなっている。特に、速度が大きくなるほど、機械系4の負荷トルクTとその推定値TLestとの間の近似誤差が拡大している。
【0136】
このように、比較例に係る機械系4の機械特性の推定方法によれば、機械系4の機械特性が推定されたときの速度vの範囲よりも高い速度範囲での機械系4の負荷トルクTとその推定値TLestとの推定誤差が比較的大きく乖離してしまう。そのため、例えば、機械系4の負荷状態によっては、許容される速度範囲の最大値に近い領域で運転される状況が発生し、そのような状況での実際の負荷トルクTと推定値TLestとの乖離によって制御性能が悪化してしまう可能性がある。
【0137】
<実施例についてのシミュレーション結果>
図9は、実施形態に係る機械特性の推定方法の一例によるシミュレーション結果を示す図である。具体的には、図9は、2回目の工程での機械系4の負荷トルクTとその推定値TLestとを表す図9Aと、3回目の工程での機械系4の負荷トルクTとその推定値TLestとを表す図9Bとを含む。
【0138】
本例では、以下の数式14に示すように、機械系4の負荷トルクTが機械系4の回転部の速度vに比例する線形関数f(v)と、速度vに関する非線形関数f(v),f(v)との線形結合によって近似される第1の力学モデルが使用される。
【数14】
【0139】
非線形関数f(v),f(v)は、上述の如く、速度vの上昇に応じて単調増加し、且つ、速度vの上昇に応じて増加率が減少する形の非線形関数である。
【0140】
シミュレーション用コンピュータは、上述の如く、最小二乗法を用いて、係数b,b,b2、及び慣性Jを推定することにより、機械系4の機械特性を推定することができる。
【0141】
尚、非線形関数f(v)のβは、最適化すべきパラメータの一つであってもよいし、定数であってもよい。前者の場合、例えば、βの複数の候補値β1,β2,...が予め規定され、その中から残差が最も小さい候補値が変数βとして選択される。
【0142】
図9Aに示すように、機械系4の機械特性が推定された最初の工程と同じ速度の範囲で機械系4の回転部が動作する2回目の工程では、上述の比較例の場合と同様、機械系4の負荷トルクT(実線)とその推定値TLest(破線)との近似誤差は比較的小さくなっている。
【0143】
また、図9Bに示すように、機械系4の機械特性が推定された最初の工程よりも高い速度範囲を含む3回目の工程でも、機械系4の負荷トルクT(実線)とその推定値TLest(破線)との近似誤差が比較的小さくなっている。特に、速度が大きくなっても、機械系4の負荷トルクTとその推定値TLestとの近似誤差の増加が非常に小さく抑制されている。
【0144】
このように、本実施形態に係る機械系4の機械特性の推定方法によれば、機械系4の機械特性が推定されたときの速度vの範囲よりも高い速度範囲での機械系4の負荷トルクTとその推定値TLestとの推定誤差を比較的小さく抑えることができる。そのため、例えば、機械系4の許容される速度範囲の最大値に近い領域で運転される状況が発生しても、実際の負荷トルクTと推定値TLestとの誤差が抑制され、機械系4の所望の制御性能を維持することができる。特に、上述の如く、FB制御に加えて、FF制御を併用することで、速度制御や位置制御の追従性を向上させることができる一方、負荷トルクの推定誤差が大きい場合、FF制御による追従性の向上の効果を十分に得られない可能性がある。これに対して、本実施形態に係る機械系4の機械特性の推定方法によれば、機械系4の負荷トルクTとその推定値TLestとの推定誤差が抑制されることから、FF制御による追従性の向上を適切に図ることができる。
【0145】
[機械特性推定装置の具体例]
【0146】
次に、図10図13を参照して、機械特性推定装置75の具体例について説明する。
【0147】
<第1例>
図10は、機械特性推定装置75の機能構成の第1例を示す機能ブロック図である。図11は、電動機2及び機械負荷3を含む機械系の動作パターンの一例を示す図である。図12は、電動機及び機械負荷を含む機械系の速度と負荷トルクとの関係の一例を示す図である。
【0148】
図10に示すように、機械特性推定装置75は、加速度演算部751と、非線形関数演算部752と、ローパスフィルタ(LPF:Lowpass Filter)753と、積算部754と、積算管理部755と、推定部756と、機械特性更新部757とを含む。
【0149】
加速度演算部751は、電動機2を含む機械系4の速度vの検出値(速度検出値v_d)を微分することにより、機械系4の加速度の検出値(加速度検出値a_d)を演算する。
【0150】
非線形関数演算部752は、電動機2を含む機械系4の速度検出値v_dに基づき、非線形関数f(v)(p=1,...,n)の値(非線形関数値f(v_d))を演算する。
【0151】
LPF753は、LPF753A~LPF753Dを含む。LPF753A~753Dは、例えば、互いに時定数が等しい。
【0152】
電動機2のトルクの推定値(トルク推定値Tm_e)は、LPF753Aを通過し、LPF753Aを通過後のトルク推定値Tm_eは、積算部754に入力される。トルク推定値Tm_eは、電流センサ40の出力、即ち、電動機2の電流の検出値に基づき演算される。
【0153】
速度検出値v_dは、LPF753Bを通過し、LPF753Bを通過後の速度検出値v_dは、積算部754に入力される。
【0154】
加速度検出値a_dは、LPF753Cを通過し、LPF753Cを通過後の加速度検出値a_dは、積算部754に入力される。
【0155】
非線形関数値f(v_d)は、LPF753Dを通過し、LPF754Dを通過後の非線形関数値f(v_d)は、積算部754に入力される。
【0156】
積算部754は、LPF753を通過後のトルク推定値Tm_e、速度検出値v_d、加速度検出値a_d、及び非線形関数値f(v_d)の中から重複を許して2つを選択する全ての組み合わせの積のそれぞれの所定期間PDにおける積算値(数値積分値)を演算する。つまり、積算部754は、上述の数式8の演算を行う。積算部754は、リアルタイムに数式8の演算を行ってもよいし、LPF753を通過後のトルク推定値Tm_e、速度検出値v_d、加速度検出値a_d、及び非線形関数値f(v_d)の取得済みの時系列データに基づき事後的に数式8の演算を行ってもよい。
【0157】
積算管理部755は、積算部754による積算値の演算に関する管理を行う。具体的には、積算管理部755は、積算部754の積算対象の期間(上述の所定期間PD)に関する管理を行う。
【0158】
例えば、図11に示すように、所定期間PDは、機械系4の回転部の速度vが閾値v_th1に対して相対的に大きい状態にある期間である。速度vが閾値v_th1に対して相対的に大きいとは、速度vが閾値v_th1以上であることであってもよいし、速度vが閾値v_th1より大きいことであってもよい。本例では、積算管理部755は、時刻t1~t2までの間を所定期間PDと判断する。例えば、積算部754によりリアルタイムに上記の積算値の演算が行われる場合、積算管理部755は、時刻t1で速度vが閾値v_th1に到達すると、積算部754に積算開始の指示を出力する。そして、積算管理部755は、時刻t2の直後に速度vが閾値v_th1より小さくなると、積算部754に積算停止の指示を出力する。これにより、積算部754は、時刻t1~t2を所定期間PDとしての時刻t1~t2の間での上記の積算値を演算することができる。
【0159】
図12に示すように、機械系4の回転部の速度vが比較的低い低速領域では、加速時と減速時とで負荷トルクTが異なるヒステリシス現象が生じうる。そのため、閾値v_th1は、ヒステリシス現象が生じる低速領域の上限よりも大きくなるように設定される。これにより、機械特性推定装置75は、ヒステリシス現象の影響を排除し、機械系4の機械特性の推定精度を向上させることができる。
【0160】
また、図11に示すように、所定期間PDは速度vが閾値v_th2に対して相対的に大きい状態にある期間を一部に含むように設定されてもよい。これにより、機械特性推定装置75は、機械系4の運転時におけるより広い速度範囲での時系列データを利用して、機械系4の機械特性を推定することができる。そのため、機械特性推定装置75は、機械系4の機械特性の推定精度を向上させることができる。例えば、図11の実線の機械系4の速度vの変化のように、時刻t1~t2の間で速度vが閾値v_th2より相対的に大きい状態になった期間が一部に存在する場合、時刻t1~t2の間は、所定期間PDに該当する。一方、図11の一点鎖線の機械系4の速度vの変化のように、時刻t1~t2の間で速度vが閾値v_th2より相対的に大きい状態になった期間が全く存在しない場合、時刻t1~t2の間は、所定期間PDに該当しない。この場合、積算部754による積算値の演算結果に基づく機械系4の機械特性の推定処理は実施されない。例えば、積算部754によりリアルタイムに上記の積算値の演算が行われる場合、積算管理部755は、時刻t1~t2の間で速度vが閾値v_th2より相対的に大きい状態になっていない場合、積算部754による積算値の演算結果を破棄させる。
【0161】
例えば、閾値v_th2は、電動機2を含む機械系4の運転時における許容される最大速度に基づき規定される。具体的には、閾値v_th2は、機械系4の運転時における許容される最大速度に対して係数γ(0<γ<1)を乗じた値であってよい。係数γは、固定値であってもよいし可変値であってもよい。
【0162】
推定部756は、積算部754により演算される上記の積算値に基づき、機械系4の機械特性を推定する。具体的には、推定部756は、積算部754により演算される上記の積算値に基づき、上述の数式11を用いて、負荷トルクTに対応する係数b,...,b、及び慣性Jを推定する。
【0163】
推定部756の推定結果は、制御装置70に取り込まれる。これにより、制御装置70は、慣性J及び負荷トルクTの推定値を、電動機2を含む機械系4の制御に反映させることができる。
【0164】
機械特性更新部757は、推定部756の推定結果に基づき、制御装置70で使用される機械系4の機械特性を更新し制御装置70に送信する。
【0165】
例えば、機械特性更新部757は、推定部756の最新の推定結果をそのまま制御装置70で使用される機械系4の機械特性として採用する。また、機械特性更新部757は、推定部756による直近の一定期間或いは一定回数の推定結果の移動平均によって、制御装置70で使用される機械系4の機械特性を更新してもよい。また、機械特性更新部757は、新しい推定結果が重視されるように、推定部756による直近の一定期間或いは一定回数の推定結果の加重平均によって、制御装置70で使用される機械系4の機械特性を更新してもよい。
【0166】
<第2例>
図13は、機械特性推定装置75の機能構成の第2例を示す機能ブロック図である。
【0167】
本例では、上述の第1例と同じ或いは対応する構成に同一の符号を付すと共に、上述の第1例と異なる部分を中心に説明し、上述の第1例と同じ或いは対応する内容の説明を省略する場合がある。
【0168】
図13に示すように、本例に係る機械特性推定装置75は、演算部758と切換部759とを含む点で上述の第1例と異なり、他の点で上述の第1例と同じであってよい。
【0169】
演算部758は、負荷トルクTが第1の力学モデルとは異なる方法で近似される力学モデル(以下、便宜的に「第2の力学モデル」)を使用して機械系4の機械特性を推定するために必要な演算を行う。
【0170】
例えば、第2の力学モデルでは、以下の数式15に示すように、機械系4の負荷トルクTが速度に比例する粘性摩擦の項と、機械系4の速度vの符号関数で規定されるクーロン摩擦の項との和により近似される。
【0171】
【数15】
【0172】
本例では、機械特性推定装置75は、最小二乗法を用いて、上述の数式11と同様の方法で慣性J、粘性係数D、及びクーロン摩擦係数Tを推定することができる。この場合、機械特性推定装置75は、数式8と同様の方法で、速度vの符号関数の値とトルク推定値Tm_e、速度検出値v_d、及び加速度aのそれぞれとの積の時間積算値(数値積分値)を演算する必要がある。そのため、本例では、演算部758は、速度検出値v_dに基づき、符号関数の値を演算する。
【0173】
また、第2の力学モデルでは、負荷トルクTが上記の数式13に示すような2次多項式や高次多項式で近似されてもよい。この場合、演算部758は、多項式の次数を上限として、速度検出値v_dの累乗を演算する。
【0174】
演算部758の演算結果は、LPF753Dを通過し、LPF753Dを通過後の演算部758の演算結果は、積算部754に入力される。
【0175】
切換部759は、ユーザからの選択入力に応じて、第1の力学モデルを使用して機械系4の機械特性を推定する第1のモードと、第2の力学モデルを使用して機械系4の機械特性を推定する第2のモードとを切り換える。これにより、ユーザからの選択入力は、例えば、入力部80を通じて受け付けられる。また、ユーザからの選択入力は、管理装置200や端末装置300で受け付けられ、通信部90を通じて機械特性推定装置75に入力されてもよい。
【0176】
具体的には、ユーザにより第1のモードが選択される場合、切換部759は、非線形関数演算部752の機能を有効とし、演算部758の機能を無効とする。一方、ユーザにより第2のモードが選択される場合、切換部759は、非線形関数演算部752の機能を無効として、演算部758の機能を有効とする。
【0177】
このように、本例では、機械特性推定装置75は、ユーザの要求に応じて、第1の力学モデルを使用して機械系4の機械特性を推定する場合と、第2の力学モデルを使用して機械系4の機械特性を推定する場合とを切り換えることができる。そのため、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0178】
[機械特性推定装置の処理の具体例]
次に、図14を参照して、機械特性推定装置75の処理の具体例について説明する。
【0179】
図14は、機械特性推定装置75の処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
【0180】
本フローチャートは、機械系4の運転中に繰り返し実行される。以下、フラグfは、本フローチャートの開始時に初期値0に初期化される前提で説明を進める。
【0181】
図14に示すように、ステップS102にて、機械特性推定装置75の積算管理部755は、速度検出値v_dが閾値v_th1以上であるか否かを判定する。積算管理部755は、速度検出値v_dが閾値v_th1以上である場合、ステップS104に進み、それ以外の場合、今回のフローチャートを終了する。
【0182】
ステップS104にて、機械特性推定装置75の積算部754は、積算を開始する。
【0183】
ステップS104の処理が完了すると、機械特性推定装置75は、ステップS106に進む。
【0184】
ステップS106にて、積算管理部755は、速度検出値v_dが閾値v_th2以上であるか否かを判定する。積算管理部755は、速度検出値v_dが閾値v_th2以上である場合、ステップS108に進み、それ以外の場合、ステップS110に進む。
【0185】
ステップS108にて、フラグfを"1"に設定する。
【0186】
ステップS108が完了すると、機械特性推定装置75は、ステップS110に進む。
【0187】
ステップS110にて、積算管理部755は、速度検出値v_dが閾値v_th1より小さいか否かを判定する。積算管理部755は、速度検出値v_dが閾値v_th1より小さい場合、ステップS112に進み、それ以外の場合、ステップS106に戻る。
【0188】
ステップS112にて、積算部754は、積算を終了する。
【0189】
ステップS112の処理が完了すると、機械特性推定装置75は、ステップS114に進む。
【0190】
ステップS114にて、積算管理部755は、フラグfが1であるか否かを判定する。積算管理部755は、フラグfが1である場合、ステップS116に進み、それ以外の場合、ステップS120に進む。
【0191】
ステップS116にて、機械特性推定装置75の推定部756は、積算部754の出力(積算値)に基づき、機械系4の機械特性、具体的には、機械系4の慣性J、及び負荷トルクTLに対応する係数b0,…,bnを推定する。
【0192】
ステップS116の処理が完了すると、機械特性推定装置75は、ステップS118に進む。
【0193】
ステップS118にて、機械特性推定装置75の機械特性更新部757は、ステップS116の推定結果の機械系4の機械特性に基づき、制御装置70で使用される機械系4の機械特性を更新する。
【0194】
ステップS118の処理が完了すると、機械特性推定装置75は、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0195】
一方、ステップS120にて、機械特性推定装置75は、積算部754による最新の積算値を破棄する。
【0196】
ステップS120の処理が完了すると、機械特性推定装置75は、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0197】
[他の実施形態]
次に、他の実施形態について説明する。
【0198】
上述の実施形態には、適宜変形や変更が加えられてもよい。
【0199】
例えば、上述の実施形態では、LPF753C,754Cは、省略され、加速度演算部751、非線形関数演算部752、及び演算部758は、LPF753Bを通過後の速度検出値v_dに基づき所望の演算を行ってもよい。また、LPF753は、省略されてもよい。
【0200】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、切換部759は、上述の第1の力学モデルを含む3以上の力学モデルのそれぞれを使用して機械系4の機械特性を推定する3以上のモードの中での切り換えを行ってもよい。
【0201】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、制御装置70の機能の一部又は全部は、電力変換装置100の外部に設けられてもよい。例えば、制御装置70の機能の一部又は全部は、管理装置200に設けられてもよい。
【0202】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、制御装置70の機能は、複数の制御装置により分散して実現されてもよい。
【0203】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、機械特性推定装置75の機能は、複数の機械特性推定装置によって分散して実現されてもよい。
【0204】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、機械特性推定装置75の機能の一部又は全部は、電力変換装置100の外部に設けられてもよい。例えば、機械特性推定装置75の機能の一部又は全部は、管理装置200に移管されてもよい。
【0205】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、機械特性推定装置75の機能は、複数の機械特性推定装置により分散して実現されてもよい。
【0206】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、機械特性推定装置75の機能の一部又は全部は、制御装置70に統合されてもよい。
【0207】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、駆動システム1において、管理装置200や端末装置300は、省略されてもよい。
【0208】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、電力変換装置100は、交流電源PSに代えて、或いは、加えて、直流電源から入力される直流に基づき、電動機2の駆動電力を生成し出力することが可能であってもよい。この場合、直流電源からの正側の入力線及び負側の入力線は、それぞれ、整流回路10とインバータ回路30との間の直流リンク部の正ラインPL及び負ラインNLに接続される。また、この場合、整流回路10が省略されることによって、交流電源PSからの給電を省略してもよい。
【0209】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、電力変換装置100は、R相、S相、及びT相の三相交流の電力を、直接、U相、V相、及びW相の三相交流の電力に変換可能なマトリクスコンバータであってもよい。
【0210】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、電動機2は、回転電機ではなく、リニアモータであってもよい。
【0211】
[作用]
次に、本実施形態に係る情報処理装置、情報処理方法、プログラム、制御装置、及び電力変換装置の作用について説明する。
【0212】
本実施形態では、情報処理装置は、電動機、及び電動機により駆動される機械負荷を含む機械系の機械特性を推定する。情報処理装置は、例えば、上述の機械特性推定装置75や管理装置200である。電動機は、例えば、上述の電動機2である。また、電動機は、例えば、リニアモータであってもよい。機械負荷は、例えば、上述の機械負荷3である。機械系は、例えば、上述の機械系4である。具体的には、情報処理装置は、電動機に対する負荷が速度に比例する線形関数、及び速度の上昇に応じて単調増加し且つ速度の上昇に応じて増加率が減少する、少なくとも1つの非線形関数の線形結合で近似される機械系の第1の力学モデルに基づき、機械系の機械特性を推定する。電動機に対する負荷は、例えば、回転式の電動機2に対する負荷トルクである。また、電動機に対する負荷は、例えば、リニアモータの推力に抗する方向に作用する負荷による抗力であってもよい。
【0213】
また、本実施形態では、情報処理装置が実行する情報処理方法では、電動機、及び電動機により駆動される機械負荷を含む機械系の機械特性を推定してもよい。具体的には、情報処理方法では、電動機に対する負荷が速度に比例する線形関数、及び速度の上昇に応じて単調増加し且つ速度の上昇に応じて増加率が減少する、少なくとも1つの非線形関数の線形結合で近似される機械系の第1の運動方程式に基づき、機械系の機械特性を推定する。
【0214】
また、本実施形態では、プログラムは、電動機、及び電動機により駆動される機械負荷を含む機械系の機械特性を推定させる機能を情報処理装置に実行させてもよい。具体的には、プログラムは、電動機に対する負荷が速度に比例する線形関数、及び速度の上昇に応じて単調増加し且つ速度の上昇に応じて増加率が減少する、少なくとも1つの非線形関数との線形結合で近似される機械系の第1の運動方程式に基づき、機械系の機械特性を推定させる機能を情報処理装置に実行させてもよい。
【0215】
これにより、情報処理装置は、速度の上昇に応じて単調増加し且つ速度の上昇に応じて増加率が減少する、機械系の負荷の特性を機械系の力学モデルに反映させることができる。そのため、情報処理装置は、電動機、及び電動機により駆動される機械負荷を含む機械系の機械特性をより精度良く推定することができる。特に、機械系において許容される速度範囲の中の比較的低い速度の領域での運転時のデータしか用いることができない場合でも、その範囲外の比較的高い速度の領域での機械系の機械特性をより精度良く推定することができる。よって、情報処理装置による機械系の機械特性が機械系の制御に反映されることで、機械系の制御性能を向上させることができる。
【0216】
また、本実施形態では、情報処理装置は、第1の力学モデルに対応する運動方程式と、所定期間における電動機のトルク及び速度の検出値又は推定値とに基づき、最小二乗法を用いて、機械系の慣性及び負荷トルクを推定してもよい。
【0217】
これにより、情報処理装置は、機械系の慣性及び負荷トルクをより精度良く推定することができる。
【0218】
また、本実施形態では、情報処理装置は、所定期間における電動機のトルク及び速度の検出値又は推定値に基づき、電動機のトルク、速度、加速度、及び非線形関数の値の中から重複を許して2つを選択する全ての組み合わせの積のそれぞれの所定期間での積算値を算出し、算出したそれぞれの積算値に基づき、最小二乗法を用いて、機械系の慣性、並びに電動機に対する負荷トルクに対応する線形関数及び非線形関数の比例係数を推定してもよい。
【0219】
これにより、情報処理装置は、機械系の慣性及び負荷トルクをより精度良く推定することができる。
【0220】
また、本実施形態では、情報処理装置は、電動機のトルク及び速度の検出値又は推定値に基づく演算過程において、同じ時定数のローパスフィルタに通過させることにより得られる、所定期間における電動機のトルク、速度、加速度、及び非線形関数の値に基づき、積算値を算出してもよい。ローパスフィルタは、例えば、上述のLPF753である。
【0221】
これにより、情報処理装置は、トルク及び速度の検出値又は推定値の誤差やノイズによる影響を抑制し、機械系の慣性及び負荷トルクを更に精度良く推定することができる。
【0222】
また、本実施形態では、電動機のトルクの検出値又は推定値を第1のローパスフィルタに通過させることにより得られる、所定期間における電動機のトルク、電動機の速度の検出値又は推定値を第1のローパスフィルタと同じ時定数の第2のローパスフィルタに通過させることにより得られる、所定期間における電動機の速度、電動機の速度の検出値又は推定値に基づき演算した後に第1のローパスフィルタと同じ時定数の第3のローパスフィルタを通過させることにより得られる、電動機の加速度、及び電動機の速度又は推定値に基づき演算した後に第1のローパスフィルタと同じ時定数の第4のローパスフィルタを通過させることにより得られる、所定期間における非線形関数の値に基づき、積算値を算出してもよい。第1のローパスフィルタは、例えば、上述のLPF753Aである。第2のローパスフィルタは、例えば、上述のLPF753Bである。第3のローパスフィルタは、例えば、上述のLPF753Cである。第4のローパスフィルタは、例えば、上述のLPF753Dである。
【0223】
これにより、情報処理装置は、ローパスフィルタを通過後の速度の検出値や推定値を用いて加速度や非線形関数の値を演算する場合に生じうる、機械系の慣性や負荷トルクの推定誤差を抑制することができる。
【0224】
また、本実施形態では、所定期間は、電動機の加速時と減速時とで負荷トルクに差異が生じる低速の領域の上限よりも高い第1の閾値に対して電動機の速度が相対的に高い状態にある期間であってもよい。第1の閾値は、例えば、上述の閾値v_th1である。
【0225】
これにより、情報処理装置は、電動機の加速時と減速時とで負荷トルクに差異が生じるヒステリシス領域の影響を排除し、機械系の慣性及び負荷トルクを更に精度良く推定することができる。
【0226】
また、本実施形態では、所定期間は、第1の閾値よりも大きい第2の閾値に対して電動機の速度が相対的に高い状態の期間を一部に含んでもよい。第2の閾値は、例えば、上述の閾値v_th2である。
【0227】
これにより、情報処理装置は、機械系のより広い速度範囲でのデータを利用して、機械系の慣性及び負荷トルクを推定することができる。そのため、情報処理装置は、機械系の慣性及び負荷トルクを更に精度良く推定することができる。
【0228】
また、本実施形態では、第2の閾値は、電動機の運転時の最大速度に基づき規定されてもよい。
【0229】
これにより、情報処理装置は、電動機の運転時の最大速度での推定誤差を抑制可能なように第2の閾値を規定することができる。そのため、情報処理装置は、機械系の慣性及び負荷トルクを更に精度良く推定することができる。
【0230】
また、本実施形態では、情報処理装置は、ユーザからの設定入力に応じて、第1の力学モデルに基づき、機械系の機械特性を推定する場合と、機械系に対する負荷が第1の力学モデルとは異なる形で近似される、機械系の第2の力学モデルに基づき、機械系の機械特性を推定する場合とを切り換えてもよい。
【0231】
これにより、例えば、ユーザは、運転状態や負荷状態等を考慮して、前提となる力学モデルを切り換えることができる。そのため、情報処理装置は、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0232】
また、本実施形態では、第2の力学モデルでは、負荷が電動機の速度に比例する粘性摩擦の項と、電動機の速度の符号関数で規定されるクーロン摩擦の項との和により近似されてもよい。
【0233】
これにより、情報処理装置は、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0234】
また、本実施形態では、制御装置は、機械負荷を駆動する電動機を制御する。制御装置は、例えば、上述の制御装置70や管理装置200である。具体的には、制御装置は、推定部と、制御部とを含む。推定部は、例えば、上述の推定部756と同様の機能部である。制御部は、例えば、上述のFF制御部701やFB制御部702である。具体的には、推定部は、電動機に対する負荷が速度に比例する線形関数、及び速度の上昇に応じて単調増加し且つ速度の上昇に応じて増加率が減少する、少なくとも1つの非線形関数の線形結合で近似される、電動機及び機械負荷を含む機械系の第1の力学モデルに基づき、機械系の機械特性を推定してよい。そして、制御部は、推定した機械系の機械特性に基づき、電動機を制御してもよい。
【0235】
また、本実施形態では、電力変換装置は、主回路と、推定部と、制御部と、を備えてもよい。電力変換装置は、例えば、上述の電力変換装置100である。主回路は、例えば、上述の整流回路10、平滑回路20、及びインバータ回路30である。推定部は、例えば、上述の機械特性推定装置75である。具体的には、主回路は、所定の電源からの電力を所定の電力に変換し機械負荷を駆動する電動機に出力することにより電動機を駆動する。所定の電源は、例えば、上述の交流電源PSである。また、推定部は、電動機に対する負荷が速度に比例する線形関数、及び速度の上昇に応じて単調増加し且つ速度の上昇に応じて増加率が減少する、少なくとも1つの非線形関数との線形結合で近似される、電動機及び機械負荷を含む機械系の第1の力学モデルに基づき、機械系の機械特性を推定してよい。そして、制御部は、推定部により推定される機械系の機械特性に基づき、主回路を制御することにより、電動機の駆動制御を行ってもよい。
【0236】
これにより、制御装置や電力変換装置は、機械系の機械特性をより精度良く推定することができ、その結果、機械系の制御性能を向上させることができる。
【0237】
また、本実施形態では、制御装置や制御部は、推定した機械系の機械特性に基づき、フィードバック制御及びフィードフォワード制御を用いて、電動機の位置又は速度を制御してもよい。
【0238】
例えば、フィードバック制御のみを用いる場合、ゲインをある程度高くしないと、指令に対する所望の追従性能を得ることができない可能性がある。一方、追従性能を重視してゲインを高くするとフィードバック制御系が不安定化する可能性がある。また、フィードフォワード制御を併用する場合、フィードバック制御のゲインをそれほど高くしなくても追従性能を向上させることができる一方、機械系の機械特性の推定誤差が大きい場合、その分、追従性能が悪化してしまうことになる。これに対して、本実施形態では、制御装置等は、機械系の機械特性の推定精度をより向上させることができ、その結果、フィーバック制御及びフィードフォワード制御の併用による所望の追従性能を実現させることができる。
【0239】
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0240】
1 駆動システム
2 電動機
3 機械負荷
4 機械系
10 整流回路
20 平滑回路
30 インバータ回路
70 制御装置
75 機械特性推定装置
80 入力部
85 表示部
90 通信部
100 電力変換装置
110 回転状態センサ
200 管理装置
300 端末装置
701,701A フィードフォワード制御部
702 フィードバック制御部
703 指令フィルタ
704 速度指令生成部
705 速度演算部
706 指令フィルタ
707 速度指令生成部
751 加速度演算部
752 非線形関数演算部
753 ローパスフィルタ
754 積算部
755 積算管理部
756 推定部
757 機械特性更新部
758 演算部
759 切換部
NL 負ライン
PD 所定期間
PL 正ライン
PS 交流電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14