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特開2024-165174座標推定装置、タッチパネル、および座標推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165174
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】座標推定装置、タッチパネル、および座標推定方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20241121BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G06F3/041 512
G06F3/044 120
G06F3/041 590
G06F3/041 522
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081095
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】512093491
【氏名又は名称】株式会社アスコ
(71)【出願人】
【識別番号】393019436
【氏名又は名称】株式会社デイ・エム・シー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】市瀬 浩
(57)【要約】
【課題】水滴等が付着していても、複数のタッチ位置を推定できる。
【解決手段】座標推定装置(100)は、タッチパネル(10)のタッチ領域を複数の区域に分けた該区域ごとの静電容量の変化量を取得する取得部(110)と、前記変化量が第1閾値を超えた区域であって隣接する区域を統合して一つの統合区域とする統合部(120)と、前記統合区域ごとに、該統合区域における前記区域ごとの静電容量の変化量を用いてタッチ位置を示す座標を推定する第1推定部(130)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互容量方式によるタッチ検出が可能なタッチパネルにおけるタッチ位置を示す座標を推定する座標推定装置であって、
前記タッチパネルのタッチ領域を複数の区域に分けた該区域ごとの受信電極と送信電極との間の静電容量の変化量を取得する取得部と、
前記区域のうち、前記変化量が第1閾値を超えた区域であって隣接する区域を統合して一つの統合区域とする統合部と、
前記統合区域ごとに、該統合区域における前記区域ごとの静電容量の変化量を用いてタッチ位置を示す座標を推定する第1推定部と、
前記第1推定部が推定した座標を出力する出力部と、を備える座標推定装置。
【請求項2】
前記第1推定部は、前記統合区域における静電容量の変化量が最大の区域を示す座標をタッチ位置の座標と推定する、請求項1に記載の座標推定装置。
【請求項3】
前記複数の区域は、送信電極および受信電極の電極パターンに合わせて設定される、請求項1に記載の座標推定装置。
【請求項4】
前記区域は矩形であり、
前記統合部は、前記矩形の辺または頂点を共通とする矩形同士を隣接する矩形として統合する、請求項1に記載の座標推定装置。
【請求項5】
前記統合区域ごとに、静電容量の変化量が第2閾値を超える区域を特定する特定部と、
前記受信電極ごとに、各送信電極を駆動したときの前記静電容量の変化量の総和を算出する算出部と、
前記変化量の総和を用いて、送信電極に沿った方向におけるタッチ位置を示す送信方向タッチ位置を導出する導出部と、を備え、
前記第1推定部は、前記特定部が特定した区域のうち、送信電極に沿った方向における座標が、前記導出部が導出した送信方向タッチ位置と一致する区域を、タッチ位置を示す座標として推定する、請求項1に記載の座標推定装置。
【請求項6】
前記タッチパネルに水滴が付着していることを検知する検知部と、
前記静電容量の変化量が第3閾値を超えたか否かによりタッチ位置の座標を推定する第2推定部と、を備え、
前記検知部が水滴の付着を検知した場合、前記第1推定部がタッチ位置を示す座標の推定を行い、
前記検知部が水滴の付着を検知しない場合、前記第2推定部がタッチ位置を示す座標を推定する、請求項1に記載の座標推定装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の座標推定装置と、
タッチパネルと、を含み、
前記座標推定装置は、前記タッチパネルからの信号を用いて、該タッチパネルにおけるタッチ位置を推定する、タッチパネルシステム。
【請求項8】
相互容量方式によるタッチ検出が可能なタッチパネルにおけるタッチ位置を示す座標を推定する座標推定方法であって、
前記タッチパネルのタッチ領域を複数の区域に分けた該区域ごとの受信電極と送信電極との間の静電容量の変化量を取得する取得ステップと、
前記区域のうち、前記変化量が第1閾値を超えた区域であって隣接する区域を統合して一つの統合区域とする統合ステップと、
前記統合区域ごとに、該統合区域における前記区域ごとの静電容量の変化量を用いてタッチ位置を示す座標を推定する推定ステップと、
前記推定ステップで推定した座標を出力する出力ステップと、を含む座標推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザがタッチした位置を推定する座標推定装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の携帯端末、PDA等の電子機器は、ユーザが入力操作するための手段としてタッチパネルが用いられている。タッチパネルは、ユーザの指等が接触することにより、接触位置(タッチ位置)に応じた信号を出力する入力デバイスである。
【0003】
相互容量方式のタッチパネルは、タッチパネル上に水滴が付着すると、タッチ位置を正確に検出できないことがあった。そこで、特許文献1には、相互容量方式において、水の付着があっても適切に座標を算出できる座標算出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-30655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来技術では、1点のタッチ位置しか検出できないという問題があった。本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、水滴等が付着していても、複数のタッチ位置を推定できる座標推定装置等を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る座標推定装置は、相互容量方式によるタッチ検出が可能なタッチパネルにおけるタッチ位置を示す座標を推定する座標推定装置であって、前記タッチパネルのタッチ領域を複数の区域に分けた該区域ごとの受信電極と送信電極との間の静電容量の変化量を取得する取得部と、前記区域のうち、前記変化量が第1閾値を超えた区域であって隣接する区域を統合して一つの統合区域とする統合部と、前記統合区域ごとに、該統合区域における前記区域ごとの静電容量の変化量を用いてタッチ位置を示す座標を推定する第1推定部と、前記第1推定部が推定した座標を出力する出力部と、を備える。
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る座標推定方法は、相互容量方式によるタッチ検出が可能なタッチパネルにおけるタッチ位置を示す座標を推定する座標推定方法であって、前記タッチパネルのタッチ領域を複数の区域に分けた該区域ごとの受信電極と送信電極との間の静電容量の変化量を取得する取得ステップと、前記区域のうち、前記変化量が第1閾値を超えた区域であって隣接する区域を統合して一つの統合区域とする統合ステップと、前記統合区域ごとに、該統合区域における前記区域ごとの静電容量の変化量を用いてタッチ位置を示す座標を推定する推定ステップと、前記推定ステップで推定した座標を出力する出力ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、静電容量の変化量が第1閾値を超えた区域を統合した統合区域ごとに、タッチ位置の座標を推定するので、水滴が付着している箇所と水滴が付着していない箇所とで別々にタッチ位置の推定を行うことができる。これにより、タッチパネルに水滴等が付着している場合でも、複数のタッチ位置の座標を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係るタッチパネルシステムの概要を示す機能ブロック図である。
図2】タッチパネルの一部を示す図であって、送信電極および受信電極と区域との関係を示す図である。
図3】統合区域を説明するための図である。
図4】座標推定装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態2に係るタッチパネルコントローラの概要を示す機能ブロック図である。
図6】本発明の実施形態3に係る座標推定装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
図7】静電容量の変化量の総和を説明するための図である。
図8】座標推定装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図9】従来技術の課題を説明するための図であり、タッチパネルに水滴が付着し、その水滴がある位置を指でタッチしている状態を示す図である。
図10】従来技術の課題を説明するための図であり、水滴がある位置を指でタッチしたときにおける静電容量の変化量の例を示す図である。
図11】従来技術の課題を説明するための図であり、水滴がある位置と、水滴がない位置とを指でタッチしたときにおける静電容量の変化量の例を示す図である。
図12】従来技術の課題を説明するための図であり、タッチパネルに水滴が付着しているときの静電容量の変化量の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。本実施形態に係るタッチパネルシステム1は、相互容量方式によりタッチ検出を行うタッチパネルにおいて、水滴等が付着している場合であっても複数のタッチ位置の検出を可能とするものである。
【0011】
まず、図9図12を参照して、従来、相互容量方式のタッチパネルにおいて水滴等が付着した場合に、複数のタッチ位置の検出が困難であった理由について説明する。図9は、タッチパネルに水滴が付着し、その水滴がある位置を指でタッチしている状態を示す。図9の901は、タッチパネルの断面を示す。図9に示すように、相互容量方式のタッチパネルは、送信電極と受信電極とが絶縁層を挟んで重ねて配置されており、タッチされる側にフロントカバーが配されている。指等によりタッチされると、送信電極と受信電極との間の静電容量に変化が起こり、この静電容量の変化量を測定することで、タッチ位置を検出する。
【0012】
(理由1)
図9の902に、タッチパネルの水滴のあるところに指でタッチした場合の静電容量の変化量を示す。図9の902に示すように、水滴のあるところにタッチした場合、水の電気伝導性のため、タッチした指が大きな指であるかのように、水滴がある範囲に、指でタッチしたときと同程度の大きさの変化量を示す。実際に指でタッチしている位置は、近傍よりわずかに大きな変化量が現れる。しかし、変化量の差異は微小であるため、他の要因によって、タッチ位置以外にも近傍よりも変化量が突出する箇所が生じる可能性がある。例えば、図10に示すように、タッチ位置である点T1の他に、タッチ位置ではない点T2も生じる可能性がある。よって、静電容量の変化量からだけでは、適切なタッチ位置を検出することは難しい。
【0013】
(理由2)
また、静電容量の変化量が閾値を超えるか否かにより、タッチ位置を検出する場合、水滴が付着していない位置をタッチしているにもかかわらず、タッチを検出できない場合がある。図11を参照して説明する。図11のT11は、水滴中のタッチ位置における静電容量の変化量であり、T12は、水滴が付着していない箇所のタッチ位置における静電容量の変化量である。T12は、静電容量が大きく変化していることが明白であるが、閾値を超えていないため、タッチとは判定されないことになる。例えば、水滴が付着していない箇所で、受信電極の中間をタッチされた場合、静電容量の変化量は小さくなるため、タッチと判定されない可能性が高くなる。一方、T12をタッチ位置として検出できるように、閾値を下げると、T11の判定が困難となる。
【0014】
(理由3)
単に水滴が付着している場合であっても、形状等により問題が発生する可能性がある。図12を参照して説明する。図12は、タッチパネルに水滴が付着している状態を示す。図12の1201は、タッチパネルをタッチする側から見た状態を示す。1201に示すように、タッチパネルに水滴が付着しているとする。この場合、送信電極に沿った静電容量の変化量は、図12の1202に示すようになる。1202に示すように、水滴の影響による静電容量の変化は、マイナス側、すなわち指でタッチしたときの静電容量の変化とは反対側に変化する。しかし、水滴の境界において、指でタッチしたときと同じ側に変化する(T21、T22)。この変化の変化量は、水滴の形状等により増加する可能性があり、この境界位置を指によるタッチを誤検出してしまう可能性がある。
【0015】
〔タッチパネルシステム1の構成〕
本実施形態に係るタッチパネルシステム1は、上述した理由により、従来であれば困難であった、水滴等が付着したタッチパネルにおける複数のタッチ位置の検出を可能とするものである。以下、タッチパネルシステム1について説明する。
【0016】
図1に、本実施形態に係るタッチパネルシステム1の要部構成を示す。図1は、タッチパネルシステム1の要部構成を示す機能ブロック図である。
【0017】
図1に示すように、タッチパネルシステム1は、タッチパネル10とタッチパネルコントローラ20とを含む。
【0018】
タッチパネル10は、相互容量方式によりタッチ位置を検出するものであり、駆動部11、測定部12、複数の受信電極13、および複数の送信電極14を含む。
【0019】
駆動部11は、タッチパネルコントローラ20の制御部200からの指示に従い、電圧を印加する送信電極14に方形波パルス状の電圧を印加する。このとき、駆動部11は、その他の送信電極14を固定電位へ接続した状態とする。
【0020】
測定部12は、制御部200からの指示に従い、受信電極13に生じる電位の変化に基づき、当該受信電極13と、そのとき電圧を印加されている送信電極14との間の静電容量の変化量を測定する。
【0021】
タッチパネルコントローラ20は、タッチパネル10におけるタッチ位置を推定するものであり、座標推定装置100および制御部200を含む。
【0022】
座標推定装置100は、取得部110、統合部120、第1推定部130、および出力部140を含む。
【0023】
取得部110は、測定部12が測定した、受信電極13と送信電極14との間の静電容量の変化量を取得する。より詳細には、取得部110は、受信電極13と、そのとき電圧を印加されている送信電極14との間の静電容量の変化量を取得する。換言すれば、取得部110は、タッチパネル10を複数の区域に分けた区域ごとの静電容量の変化量を取得する。
【0024】
静電容量の変化量とは、タッチパネル10にタッチがなく、かつ水滴も付着していない状態における送信電極14と受信電極13との間の静電容量を基準とし、その基準からの変化量である。なお、タッチパネル10にタッチすることにより、静電容量は基準よりも減少するため、基準から減少した量をプラスの変化量とし、逆に基準から増加した量をマイナスの変化量とする。
【0025】
ここで、区域について、図2を参照して説明する。図2は、タッチパネル10の一部を示す図である。図2に示すタッチパネル10には、受信電極13および送信電極14と、区域ARが示されている。
【0026】
受信電極13および送信電極14は、一例としてダイヤモンドパターンと呼ばれる電極構造を有している。電極はITO(Indium Tin Oxide)膜を成形することにより作製されている。受信電極13は、四角形状の受信電極パターン13Pが縦一列に配置されており、送信電極14は、四角形状の送信電極パターン14Pが横一列に配置されている。タッチパネル10は、受信電極13と送信電極14とが絶縁層を挟んで重ね合わされており、タッチする側から見て、送信電極14と受信電極13とが交差するように配置されている。
【0027】
取得部110が取得する静電容量の変化量は、送信電極14に電圧を印加したときの当該送信電極14と受信電極13との間の静電容量なので、送信電極14と受信電極13とが交差している点における静電容量の変化量ということができる。区域ARは、各区域に1つずつ送信電極14と受信電極13とが交差している点を含み、かつ、区域同士が接するように仮想的に設定される。そして、仮想的に設定された区域ARにおける静電容量の変化量とは、当該区域ARに含まれる送信電極14に電圧が印加されたときに、当該送信電極14と同じ区域ARに含まれる受信電極13との間における静電容量の変化量のことをいう。
【0028】
統合部120は、区域ARのうち、静電容量の変化量が第1閾値を超えた区域ARであって隣接する区域ARを統合して一つの仮想的な統合区域IARとする。隣接する区域とは、例えば、区域ARが矩形の場合、一辺または頂点が共通している区域のことをいう。頂点が共通しているとは、換言すれば斜め方向に隣接しているということもできる。なお、一辺のみが共通する区域を隣接する区域としてもよい。
【0029】
図3を参照して、統合区域IARについて説明する。図3は、統合区域IARを説明するための図である。図3に示すように、例えば、区域ARのうち、区域AR(11、12、13、21、22、31、32、33、34)が静電容量の変化が第1閾値を超えた区域であるとする。図3では、灰色で示す。このうち、区域AR11と区域AR12とは一辺が共通し、区域AR11と区域AR13とも一辺が共通している。そこで、統合部120は、区域AR11、12、13を統合して統合区域IAR1とする。
【0030】
また、区域AR21と区域AR22とは、1つの頂点が共通している。そこで、統合部120は、区域AR21と区域AR22とを統合して統合区域IAR2とする。
【0031】
また、区域AR31と区域AR33とは一辺が共通し、区域AR32と区域AR33とも一辺が共通している。さらに、区域AR33と区域AR34とは頂点が共通している。そこで、統合部120は、区域AR31~区域AR34を統合して統合区域IAR3とする。
【0032】
第1閾値は、水滴が付着していない状態で、タッチパネル10に対するタッチがあると考えられる静電容量の変化量よりも小さい値(例えば、マイナス10%)に設定されてよい。水滴部分をタッチした場合の静電容量の変化量は、水滴がない箇所をタッチした場合の静電容量の変化量よりも大きいため、水滴がない箇所をタッチした場合よりも小さい値を基準とすることにより、確実にタッチ位置の座標を推定することができる。
【0033】
第1推定部130は、統合区域IARごとに、該統合区域IARにおける区域ARごとの静電容量の変化量を用いてタッチ位置を示す座標を推定する。具体的には、第1推定部130は、統合区域IARにおいて、最も静電容量の変化量が大きい区域ARの座標をタッチ位置の座標として推定する。なお、第1推定部130は、区域ARの中心の座標をタッチ位置の座標と推定してもよい。
【0034】
水滴が付着している箇所をタッチした場合、水滴が付着している箇所全体で静電容量の変化量が大きくなるが、タッチされている箇所は、その中でも最も変化量が大きくなる。第1推定部130は、統合区域IARにおける静電容量の変化量が最大の区域ARの座標をタッチ位置の座標と推定するので、水滴が付着されている箇所をタッチされた場合に、タッチ位置の座標を正確に推定することができる。
【0035】
出力部140は、第1推定部130が推定した座標位置を、例えば外部装置に出力する。
【0036】
制御部200は、電圧を印加する送信電極14を駆動部11に指示する。また、制御部200は、送信電極14と受信電極13との間の静電容量の変化量の測定を測定部12に指示する。
【0037】
〔座標推定装置100における処理の流れ〕
次に、図4を参照して、座標推定装置100における処理の流れについて説明する。図4は、座標推定装置100の処理の流れを示すフローチャートである。
【0038】
図4に示すように、座標推定装置100は、まず、測定部12からタッチパネル10の区域ARごとの静電容量の変化量を取得する(S101、取得ステップ)。次に、統合部120は、静電容量の変化量が第1閾値を超える区域ARがあれば(S102でYES)、当該区域AR同士で隣接するものも統合して統合区域IARとする(S103、統合ステップ)。そして、第1推定部130は、統合区域IARごとに、当該統合区域IARの中で最も静電容量の変化量が大きい区域ARの座標をタッチ座標として推定する(S104、推定ステップ)。そして、出力部140は、推定した座標を出力する(出力ステップ)。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る座標推定装置100は、相互容量方式によるタッチ検出が可能なタッチパネル10におけるタッチ位置を示す座標を推定するものである。そして、座標推定装置100は、タッチパネル10のタッチ領域を複数の区域ARに分けた区域ARごとの受信電極13と送信電極14との間の静電容量の変化量を取得する取得部110と、区域ARのうち、変化量が第1閾値を超えた区域ARであって隣接する区域ARを統合して一つの統合区域IARとする統合部120と、統合区域IARごとに、統合区域IARにおける区域ARごとの静電容量の変化量を用いてタッチ位置を示す座標を推定する第1推定部130と、第1推定部130が推定した座標を出力する出力部140とを備える。
【0040】
本願発明者らは、相互容量方式のタッチパネルに水滴等が付着している場合、水滴が付着している箇所をタッチした場合と水滴が付着してない箇所をタッチした場合とで、静電容量の変化量が異なることを発見した。本実施形態に係る座標推定装置100によれば、静電容量の変化量が第1閾値を超えた区域ARを統合した統合区域IARごとに、タッチ位置の座標を推定するので、水滴が付着している箇所と水滴が付着していない箇所とで別々にタッチ位置の推定を行うことができる。これにより、上述した理由2の弊害が生じることを回避でき、タッチパネル10に水滴等が付着している場合でも、複数のタッチ位置の座標を推定できる。
【0041】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0042】
図5に、本実施形態に係る座標推定装置100Aの概要を示す。図5は、座標推定装置100Aの機能ブロック図である。図5に示すように、座標推定装置100Aは、上述した座標推定装置100の構成に加え、第2推定部150および検知部160を含む。
【0043】
検知部160は、タッチパネル10に水滴が付着していることを検知する。そして、タッチパネル10に水滴が付着していることを、取得部110に通知する。
【0044】
取得部110は、検知部160がタッチパネル10への水滴の付着を検知しなかった場合、すなわち、タッチパネル10に水滴が付着していない場合、取得した静電容量の変化量を第2推定部150に通知する。一方、検知部300がタッチパネル10への水滴の付着を検知した場合、取得した静電容量の変化量を統合部120に通知する。
【0045】
これにより、タッチパネル10に水滴が付着していない場合、第2推定部150がタッチパネル10へのタッチ位置の座標を推定し、タッチパネル10に水滴が付着している場合、第1推定部130がタッチパネル10へのタッチ位置の座標を推定することになる。
【0046】
第2推定部150は、測定部12が測定した静電容量の変化量を用いて、タッチパネル10へのタッチ位置の座標を推定するものである。静電容量の変化量を用いたタッチ位置の座標の推定は、公知の技術を用いて可能であるので、ここでの詳細な説明は割愛する。端的に言えば、静電容量の変化量が第3の閾値を超える位置、すなわち、静電容量の変化量が第3閾値を超えるときに駆動した送信電極14と測定した受信電極13とが交わる位置をタッチ位置として推定するものである。
【0047】
このように、本実施形態によれば、水滴が付着していない場合は、負荷が軽い第2推定部150による処理によりタッチ位置の座標を算出できるとともに、水滴が付着していても第1推定部130により正確にタッチ位置の座標を推定できる。
【0048】
〔実施形態3〕
本発明のさらに、他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0049】
1つの統合区域IARは、1つの水のかたまりを意味しているところ、タッチ位置は、1つの水のかたまりで1つになるとは限らない。そこで、本実施形態では、1つの統合区域IARにおいて複数のタッチ位置を推定するものである。
【0050】
図6に、本実施形態に係る座標推定装置100Bの概要を示す。図6は、座標推定装置100Bの要部構成を示す機能ブロック図である。図6に示すように、座標推定装置100Bは、上述した座標推定装置100の第1推定部130に代えて第1推定部130Aを備える。
【0051】
第1推定部130Aは、候補特定部(特定部)131、算出部132、導出部133を含み、統合区域IARごとに、該統合区域IARにおける区域ARごとの静電容量の変化量を用いてタッチ位置を示す座標を推定する。
【0052】
候補特定部131は、統合区域IARにおいて、静電容量の変化量が第2閾値を超える区域ARを特定する。第2閾値は、統合区域IARにおいて、静電容量の変化量が大きい区域ARを特定できる値であれば、どのような値であってもよく、例えば、当該統合区域IARにおける静電容量の変化量の最大値のマイナス10%であってよい。
【0053】
なお、候補特定部131は、統合区域IARにおいて、静電容量の変化量が大きい区域ARを大きい順に所定数選定するものであってもよい。この場合、所定数は予め定めらえた数であってよい。また、統計的な処理により、変化量の大きい区域ARと小さい区域ARとを有意に分割できる場合は、大きい側に分割された区域ARを特定するものであってもよい。さらに、候補特定部131は、統合区域IARにおいて、静電容量の変化量が突出して大きい区域ARを特定するものであってもよい。
【0054】
算出部132は、受信電極13ごとに、各送信電極14から駆動電圧が印加されたときの静電容量の変化量の総和を算出する。具体的に、図7を参照して説明する。図7は、静電容量の変化量の総和を説明するための図である。図7に示す例では、送信電極14としてT1~T8が、受信電極13としてR1~R14が示されている。なお、ここでの送信電極14および受信電極13の個数は一例であり、これに限られるものではない。
【0055】
算出部132は、まず、受信電極13(R1)について、送信電極14(T1)から駆動電圧が印加されたときの静電容量の変化量、送信電極14(T2)から駆動電圧が印加されたときの静電容量の変化量、送信電極14(T3)から駆動電圧が印加されたときの静電容量の変化量、…、送信電極14(T8)から駆動電圧が印加されたときの静電容量の変化量、というように各送信電極14からの駆動電圧が印加されたときの静電容量の変化量の総和を算出する。これを、受信電極13(R2)、受信電極13(R3)、…というように、全ての受信電極13について行う。
【0056】
導出部133は、算出部132が算出した静電容量の変化量の総和に基づいて、送信電極14が接続している方向(送信電極方向)におけるタッチ位置の座標を導出する。
【0057】
そして、第1推定部130Aは、候補特定部131が特定した候補となる区域ARのうち、導出部133が導出したタッチ位置の送信電極方向の座標が一致する区域ARの座標をタッチ位置の座標として推定する。
【0058】
これにより、候補特定部131により特定された区域ARのうち、導出部133により送信方向タッチ位置が一致する区域ARをタッチパネル10におけるタッチ位置と推定するので、1つの統合区域IARで複数のタッチがある場合でも正確にタッチ位置の座標を推定できる。すなわち、上述した理由1、理由3による弊害を解消することができる。
【0059】
なお、第1推定部130Aは、導出部133がタッチ位置の座標を導出しなかった場合、すなわち、タッチ無しの場合、第1推定部130Aは、タッチなしと判断する構成であってもよい。
【0060】
〔処理の流れ〕
次に、図8を参照して、座標推定装置100Aにおける処理の流れを説明する。図8は、座標推定装置100Aの処理の流れを示すフローチャートである。
【0061】
図8に示すように、座標推定装置100Aは、まず、測定部12からタッチパネル10の区域ARごとの静電容量の変化量を取得する(S201)。次に、統合部120は、静電容量の変化量が第1閾値を超える区域ARがあれば(S202でYES)、当該区域AR同士で隣接するものも統合して統合区域IARとする(S203)。そして、候補特定部131は、統合区域IARごとに、当該統合区域IARにおける静電容量の変化量が大きい区域ARを候補位置とする(S204)。
【0062】
次に、算出部132は、受信電極13ごとに、各送信電極14から駆動電圧が印加されたときの静電容量の変化量の総和を算出する(S205)。
【0063】
次に、導出部133は、静電容量の変化量の総和に基づいて、送信電極14が接続している方向(送信電極方向)におけるタッチ位置の座標を導出する(S206)。そして、第1推定部130Aは、特定された候補となる区域ARのうち、導出されたタッチ位置の送信電極方向の座標が一致する区域ARの座標をタッチ位置の座標として推定する(S207)。
【0064】
〔ソフトウェアによる実現例〕
座標推定装置100(100A)(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に統合部120、第1推定部130(130A))としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0065】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0066】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0067】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0068】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0069】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る座標推定装置は、相互容量方式によるタッチ検出が可能なタッチパネルにおけるタッチ位置を示す座標を推定する座標推定装置であって、前記タッチパネルのタッチ領域を複数の区域に分けた該区域ごとの受信電極と送信電極との間の静電容量の変化量を取得する取得部と、前記区域のうち、前記変化量が第1閾値を超えた区域であって隣接する区域を統合して一つの統合区域とする統合部と、前記統合区域ごとに、該統合区域における前記区域ごとの静電容量の変化量を用いてタッチ位置を示す座標を推定する第1推定部と、前記第1推定部が推定した座標を出力する出力部と、を備える。
【0070】
本願発明者らは、相互容量方式のタッチパネルに水滴等が付着している場合、水滴が付着している箇所をタッチした場合と水滴が付着してない箇所をタッチした場合とで、静電容量の変化量が異なることを発見した。前記の構成によれば、静電容量の変化量が第1閾値を超えた区域を統合した統合区域ごとに、タッチ位置の座標を推定するので、水滴が付着している箇所と水滴が付着していない箇所とで別々にタッチ位置の推定を行うことができる。これにより、タッチパネルに水滴等が付着している場合でも、複数のタッチ位置の座標を推定できる。
【0071】
本発明の態様2に係る座標推定装置は、前記態様1において、前記第1推定部は、前記統合区域における静電容量の変化量が最大の区域を示す座標をタッチ位置の座標と推定する。
【0072】
水滴が付着している箇所をタッチした場合、水滴が付着している箇所全体で静電容量の変化量が大きくなるが、タッチされている箇所は、その中でも最も変化量が大きくなる。前記の構成によれば、統合区域における静電容量の変化量が最大の区域の座標をタッチ位置の座標と推定するので、水滴が付着されている箇所をタッチされた場合に、タッチ位置の座標を正確に推定することができる。
【0073】
本発明の態様3に係る座標推定装置は、前記態様1または2において、前記複数の区域は、送信電極および受信電極の電極パターンに合わせて設定される。
【0074】
前記の構成によれば、区域は送信電極および受信電極の電極パターンに合わせて設定されるので、区域ごとに正確に静電容量の変化量を取得することができる。
【0075】
本発明の態様4に係る座標推定装置は、前記態様1~3の何れかにおいて、前記区域は矩形であり、前記統合部は、前記矩形の辺または頂点を共通とする矩形同士を隣接する矩形として統合する。
【0076】
前記の構成によれば、1つの水たまりを1つの統合区域とすることができ、水たまりごとにタッチがあれば、そのタッチ位置を推定することができる。
【0077】
本発明の態様5に係る座標推定装置は、前記態様1~4の何れかにおいて、前記統合区域ごとに、静電容量の変化量が第2閾値を超える区域を特定する特定部と、前記受信電極ごとに、各送信電極を駆動したときの前記静電容量の変化量の総和を算出する算出部と、前記変化量の総和を用いて、送信電極に沿った方向におけるタッチ位置を示す送信方向タッチ位置を導出する導出部と、を備え、前記第1推定部は、前記特定部が特定した区域のうち、送信電極に沿った方向における座標が、前記導出部が導出した送信方向タッチ位置と一致する区域を、タッチ位置を示す座標として推定する。
【0078】
前記の構成によれば、統合区域内において複数のタッチがある場合、すなわち、1つの水たまりにおいて複数箇所のタッチがある場合でも、タッチ位置の座標を推定できる。
【0079】
本発明の態様6に係る座標推定装置は、前記態様1~5の何れかにおいて、前記タッチパネルに水滴が付着していることを検知する検知部と、前記静電容量の変化量が第3閾値を超えたか否かによりタッチ位置の座標を推定する第2推定部と、を備え、前記検知部が水滴の付着を検知した場合、前記第1推定部がタッチ位置を示す座標の推定を行い、前記検知部が水滴の付着を検知しない場合、前記第2推定部がタッチ位置を示す座標を推定する。
【0080】
前記の構成によれば、タッチパネルに水滴等が付着している場合、第1推定部を用いてタッチ位置の座標を推定し、水滴が付着していない場合、第2推定部を用いてタッチ位置の座標を推定する。第2推定部は単に静電容量の変化量が第3閾値を超えたか否かにより座標の推定処理を行うので、第1推定部と比較して、処理の負荷が軽い。よって、タッチパネルに水滴が付着していない場合、負荷の軽い処理でタッチ位置の座標を推定できる。
【0081】
本発明の態様7に係るタッチパネルシステムは、前記座標推定装置と、タッチパネルと、を含み、前記座標推定装置は、前記タッチパネルからの信号を用いて、該タッチパネルにおけるタッチ位置を推定する。
【0082】
前記の構成によれば、タッチパネルを含むタッチパネルシステムにおいて、タッチパネルに水滴が付着している場合であっても、正確にタッチ位置を推定することができる。
【0083】
本発明の態様8に係る座標推定方法は、相互容量方式によるタッチ検出が可能なタッチパネルにおけるタッチ位置を示す座標を推定する座標推定方法であって、前記タッチパネルのタッチ領域を複数の区域に分けた該区域ごとの受信電極と送信電極との間の静電容量の変化量を取得する取得ステップと、前記区域のうち、前記変化量が第1閾値を超えた区域であって隣接する区域を統合して一つの統合区域とする統合ステップと、前記統合区域ごとに、該統合区域における前記区域ごとの静電容量の変化量を用いてタッチ位置を示す座標を推定する推定ステップと、前記推定ステップで推定した座標を出力する出力ステップと、を含む。
【0084】
前記の方法によれば、静電容量の変化量が第1閾値を超えた区域を統合した統合区域ごとに、タッチ位置の座標を推定するので、水滴が付着している箇所と水滴が付着していない箇所とで別々にタッチ位置の推定を行うことができる。これにより、タッチパネルに水滴等が付着している場合でも、複数のタッチ位置の座標を推定できる。
【0085】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 タッチパネルシステム
12 測定部
11 駆動部
10 タッチパネル
14 送信電極
13 受信電極
20、20A タッチパネルコントローラ
100、100A、100B 座標推定装置
110 取得部
120 統合部
130、130A 第1推定部
131 候補特定部(特定部)
132 算出部
133 導出部
140 出力部
150 第2推定部
160 検知部
200 制御部
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