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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165177
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】材料移送装置及び材料供給装置
(51)【国際特許分類】
   A23P 30/20 20160101AFI20241121BHJP
   A21C 11/16 20060101ALI20241121BHJP
   A23L 17/00 20160101ALN20241121BHJP
   A23L 7/109 20160101ALN20241121BHJP
【FI】
A23P30/20
A21C11/16 A
A23L17/00 101H
A23L7/109 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081100
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】390029218
【氏名又は名称】世紀株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】戸田 寿之
【テーマコード(参考)】
4B031
4B034
4B046
4B048
【Fターム(参考)】
4B031CG06
4B031CG11
4B034LB07
4B034LP20
4B034LT20
4B034LT51
4B046LA06
4B046LP80
4B048PE16
4B048PM02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ホッパーを小径化することができ、かつ、効率よく食品原料等の粘性材料を吐出口へと移送することのできる材料移送装置及び材料供給装置を提供すること。
【解決手段】略円筒形状のホッパー6内に貯留された食品原料2を吐出口1bへ向けて移送回転体3であって、その上部構造8は、ホッパー6の内壁6aと所定間隔tを維持しつつ内壁6aに沿って回転することにより食品原料2を内壁6aから掻き落とすスクレーパ部8aと、掻き落とされた食品原料2を下部構造9に向けて移送するフィン部8bとを有し、フィン部8bは、中心軸Xから放射状に軸対称に延びて複数形成されると共に傾斜した傾斜面8dを有し、スクレーパ部8aは螺旋形状を呈して投入口1aへと向けて延びる複数の螺旋状部8eを有し、その下部構造9は、フィン部8bによって移送された食品原料2を螺旋回転により吐出口1bへと移送するスクリュー部9aを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒形状のホッパーの投入口より投入されてそのホッパー内に貯留された粘性材料を前記ホッパーの下方に形成された吐出口へ向けて移送するために、前記ホッパー内に配置されて前記ホッパーの円筒中心と略一致する中心軸周りに回転する材料移送装置であって、
上部構造と、下部構造とを有し、
前記上部構造は、
前記ホッパーの内壁と所定間隔を維持しつつ前記内壁に沿って回転することにより前記粘性材料を前記内壁から掻き落とすスクレーパ部と、
前記スクレーパ部の下方に位置し、掻き落とされた前記粘性材料を前記下部構造に向けて移送するフィン部と、を有し、
前記フィン部は、前記中心軸から放射状に軸対称に延びて複数形成されると共に、前記中心軸に対して傾斜した傾斜面を有し、
前記スクレーパ部は、前記複数のフィン部の前記内壁に近い側の各々の終端近傍から前記内壁に沿いつつ螺旋形状を呈して前記ホッパーの前記投入口へと向けて延びる複数の螺旋状部を有しており、
前記下部構造は、前記上部構造の下方に位置し、前記フィン部によって移送された前記粘性材料を螺旋回転により前記吐出口へと移送するスクリュー部を有する、材料移送装置。
【請求項2】
前記上部構造が、前記フィン部から上方に向けて前記中心軸に沿って延びる中心軸部材を有する、請求項1に記載の材料移送装置。
【請求項3】
前記上部構造が、複数の螺旋状部を前記投入口に近い側の各々の終端近傍において互いに連結する連結部を有する、請求項1に記載の材料移送装置。
【請求項4】
前記上部構造が、複数の螺旋状部を前記投入口に近い側の各々の終端近傍において互いに連結されていない、請求項1に記載の材料移送装置。
【請求項5】
前記内壁と前記スクレーパ部とは、前記内壁と前記スクレーパ部とが対向する範囲の略全体において実質的に一定の所定間隔だけ離間している、請求項1に記載の材料移送装置。
【請求項6】
前記内壁と前記スクレーパ部とが対向する範囲が、前記中心軸に沿った方向における前記ホッパーの寸法の50%以上である、請求項5に記載の材料移送装置。
【請求項7】
前記所定間隔が、2mm以下である、請求項5に記載の材料移送装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の材料移送装置と、
前記ホッパーと、を備えた材料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料移送装置及び材料供給装置に係り、特に食品原料等の流動性を有する粘性材料に用いる材料移送装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、食品製造において例えば、あん、クリーム、洋菓子生地等の流動性を有する食品原料(粘性材料)を供給するのに材料供給装置が用いられている。材料供給装置は、大略ホッパーとスクリューを有して構成される。
【0003】
食品原料を投入する容器としてのホッパー内にスクリューが配置され、スクリューがモーター等の駆動源によって回転駆動されることにより、ホッパー内の食品原料が徐々にホッパーの出口としての吐出口へと移送されて押し出され、吐出口から食品原料が吐出されて次工程へと供給されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-095510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より多くの食品原料を投入可能とすべく、一般にホッパーとしては大径のものが用いられる。また、ホッパー内壁に付着した食品原料がスクリューと連れ回りしてしまうのを防止し、食品原料をスクリュー回転により効率よく吐出口へと移送するためにもホッパーは大径であることが好ましい。そのため、一般的なホッパーとしては、上部側が大径で、下方に進むに従い小径となるいわゆる漏斗状の形状をしたものがよく用いられる。
【0006】
しかしながら、材料供給装置を複数並べて配置しようとする場合に、ホッパーが大径だとスペース上の困難を生じる場合がある。また、従来のスクリューの構造のままホッパーを小径化すると、スクリューの軸とスクリューの羽根との間に食品原料が滞留する事象が生じやすくなり、スクリュー回転と共に食品原料が連れ回ってしまって、食品原料の吐出口への移送が困難となる場合がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、ホッパーを小径化することができ、かつ、効率よく食品原料等の粘性材料を吐出口へと移送することのできる材料移送装置及び材料供給装置を提供することを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の例示的側面としての材料移送装置は、略円筒形状のホッパーの投入口より投入されてそのホッパー内に貯留された粘性材料を前記ホッパーの下方に形成された吐出口へ向けて移送するために、前記ホッパー内に配置されて前記ホッパーの円筒中心と略一致する中心軸周りに回転する材料移送装置であって、上部構造と、下部構造とを有し、
前記上部構造は、前記ホッパーの内壁と所定間隔を維持しつつ前記内壁に沿って回転することにより前記粘性材料を前記内壁から掻き落とすスクレーパ部と、
前記スクレーパ部の下方に位置し、掻き落とされた前記粘性材料を前記下部構造に向けて移送するフィン部と、を有し、
前記フィン部は、前記中心軸から放射状に軸対称に延びて複数形成されると共に、前記中心軸に対して傾斜した傾斜面を有し、
前記スクレーパ部は、前記複数のフィン部の前記内壁に近い側の各々の終端近傍から前記内壁に沿いつつ螺旋形状を呈して前記ホッパーの前記投入口へと向けて延びる複数の螺旋状部を有しており、
前記下部構造は、前記上部構造の下方に位置し、前記フィン部によって移送された前記粘性材料を螺旋回転により前記吐出口へと移送するスクリュー部を有する。
【0009】
本発明の他の例示的側面としての材料供給装置は、上記の材料移送装置と、前記ホッパーと、を備えている。
【0010】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施の形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ホッパーを小径化することができ、かつ、効率よく食品原料等の粘性材料を吐出口へと移送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1に係るディスペンサーの概略構成図である。
図2図1のディスペンサーの縦方向部分断面図である。
図3図1の回転体を正面から見た外観図である。
図4図3の回転体の側方図である。
図5】本発明の実施形態2に係る回転体を正面から見た外観図である。
図6】比較例に係る回転体の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
<ディスペンサー1>
以下、図面を用いて本発明の実施形態1を説明する。図1は、実施形態1に係るディスペンサー(材料供給装置)1の概略構成図である。図1において、上方向と下方向とを矢印によって示している。ディスペンサー1は、その投入口1aから投入された流動性を有する食品原料(粘性材料)2を貯留し、その吐出口1bから食品原料2を吐出して次工程へと供給するものである。
【0014】
ディスペンサー1は、その下流側に食品加工装置やベルトコンベア装置等(いずれも不図示)が配置された場合には、それら装置に食品原料2を供給する。ディスペンサー1による食品原料2の供給は、回転体(材料移送装置)3を回転駆動するモーター(駆動源)4の動作をコントローラー(制御装置)5により制御することにより調整されるが詳細は説明を省略する。
【0015】
また、ディスペンサー1は、例えば食品用3Dプリンターの一部として構成されてもよい。ディスペンサー1の下流側に、例えばXYZの3軸方向に制御可能な制御テーブルが配置され、又は、半径方向位置(r)及び回転角度位置(θ)が制御可能な回転テーブルが配置されることで、食品原料2を用いた3次元形状の造形物を形成することもできる。
【0016】
食品原料2としては、例えば、あん、クリーム、餅、洋菓子や和菓子用の生地等、流動性を有する種々の粘性材料を想定することができる。もちろん食品原料に限らず、このディスペンサー1を樹脂材料、粘土、ゴム等の粘性材料に適用することも可能である。
【0017】
ディスペンサー1は、ホッパー6と回転体3とを有して大略構成される。本実施形態1では、ディスペンサー1は、更にモーター4、コントローラー5を有している。ホッパー6内に投入された食品原料2は、回転体3の回転により吐出口1bから吐出される。回転体3は、モーター4により中心軸X周りに回転可能であり、その回転制御は、コントローラー5によるモーター4の駆動制御により実行される。
【0018】
モーター4としては、例えば、ステッピングモーター、ACサーボモーター、DCモーター等の公知の駆動源が適用可能である。コントローラー5としては、プログラマブルシーケンサ、リレースイッチ、プログラム実行可能なコンピュータ等、公知の制御装置が適用可能である。
【0019】
<ホッパー6>
図2は、ディスペンサー1の縦方向の部分断面図である。図2において、上方向と下方向とを矢印によって示している。ホッパー6は、投入された食品原料2を内部に貯留することができる容器であり、略円筒形状を呈している。ホッパー6の上部には投入口1aが開口形成されており、この投入口1aからホッパー6内部に食品原料2を投入することができるようになっている。また、ホッパー6の下部には吐出口1bが開口形成されており、ホッパー6内部の食品原料2が、この吐出口1bからホッパー6外へと吐出されるようになっている。
【0020】
ホッパー6は、例えば、ステンレスやアルミニウム等の金属材料で形成されてもよいが、樹脂材料により形成されてもよい。ホッパー6は、上下方向に延びるように設置される。ここで、上下方向を縦方向ともいう。また、上下方向に直交する左右方向を横方向ともいう。ホッパー6の横方向円断面の中心位置、すなわちホッパー6の円筒中心には、上下方向に延びる中心軸Xが仮想的に想定される。
ホッパー6は縦方向、すなわち中心軸Xの延長方向に沿って延びる円筒形状であるので、その内壁6aも縦方向に沿って延びる形状である。ホッパー6の内壁6aの形状は、横方向断面において円形であり、縦方向断面において直線状である。その内壁6aの少なくとも一部、好ましくは大部分が、後述する回転体3のスクレーパ部8aと対向するようになっている。
【0021】
<回転体3>
回転体3は、ホッパー6内の食品原料2を吐出口1bへ向けて移送するためのものである。回転体3は、ホッパー6の内壁6aに付着した食品原料2を掻き落とす機能と、掻き落とされた食品原料2を吐出口1bへ向けて移動させる機能とを有する。
【0022】
図3は、回転体3の全体構成を正面から見た外観図である。回転体3は、ホッパー6内に配置され、中心軸X周りに回転可能とされている。回転体3は、モーター4に接続され、モーター4はコントローラー5に接続されている。コントローラー5からの制御信号に基づきモーター4が動作することにより、回転体3の中心軸X周りの回転が駆動制御される。
【0023】
回転体3は、上部構造8と下部構造9とを有して大略構成される。なお、主として上部構造8が掻き落とし機能を発揮し、下部構造9が移動機能を発揮する。上部構造8の一部は、移動機能も有する。
【0024】
<上部構造8>
上部構造8は、スクレーパ部8aとフィン部8bとを有する。スクレーパ部8aは、図2及び図3に示すように、螺旋状部8eと中心軸部材8fとを有している。螺旋状部8eは、回転体3を上方から見た平面視において内壁6aに沿う円環形状を呈し、その円環の内部空間(すなわち、ホッパー6の内部空間であって、螺旋状部8eよりも中心寄りの略円柱状空間。)に相当する中空部8cに中心軸Xに沿って延びる中心軸部材8fが配置されている。
【0025】
<スクレーパ部8a>
上部構造8において、後述するフィン部8bから投入口1aに向けた上方に位置する部分がスクレーパ部8aを構成する。そのスクレーパ部8aにおいて、フィン部8bの内壁6aに近い側の終端8g近傍から内壁6aに沿いつつ螺旋形状を呈して投入口1aへ向けて螺旋状部8eが延びている。フィン部8bが複数配置される場合は、各々の終端8g近傍から複数の螺旋状部8eが投入口1aへ向けて延びて形成される。
【0026】
<螺旋状部8e>
螺旋状部8eは、ホッパー6の内壁6aと所定間隔tを維持しつつ内壁6aに沿って回転することにより、内壁6aに付着した食品原料2を掻き落とす。所定間隔tは、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。また、実質的に回転体3の回転を妨げないのであれば、螺旋状部8eとホッパー6の内壁6aとは接触していてもよい(すなわち、所定間隔tが実質的に0mmであってもよい。)。
【0027】
螺旋状部8eは、内壁6aと螺旋状部8eとが対向する範囲Dの略全体において実質的に上記の所定間隔だけ内壁6aから離間していることが好ましい。それにより、内壁6aに付着する食品原料2の大部分をきれいに掻き落とすことができる。螺旋状部8eによって内壁6aから掻き落とされた食品原料2のうち一部は、螺旋状部8eの回転動作に伴って内壁6aに沿ったまま下方へと押し下げられてフィン部8bへと至る。また、その食品原料2のうちの他部は、内壁6aから剥がされて中空部8cへと移動し、重力により落下してフィン部8bへと至る。
【0028】
ここで、範囲Dは、中心軸Xに沿った方向におけるホッパー6の寸法Hの50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。また、中心軸Xに沿った方向におけるホッパー6の寸法Hのうち、横断面の円形状が同一半径を呈する円筒形状部分の寸法をH2としたとき、範囲Dは、寸法H2の70%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0029】
<中心軸部材8f>
中心軸部材8fは、フィン部8bから上方に向けて中心軸Xに沿って延びる棒状部材である。中心軸部材8fは、実質的に円柱形状を呈して、回転体3の回転中心に配置されており、中空部8c内に位置している。中心軸部材8fには、モーター4の回転軸が直接又は伝達機構(不図示)等を介して連結され、モーター4による回転が伝達可能とされている。
【0030】
中心軸部材8fは、上部構造8の形状に応じて、また、食品原料2の粘性、時間あたりの移送量、回転体3の回転速度等の種々ファクターに応じて、配置される場合と配置されない場合とがあってもよい。すなわち、中心軸部材8fが配置された方が食品原料2の下部構造9への移送が効率的である場合にはそれが配置され、中心軸部材8fが配置されない方が食品原料2の下部構造9への移送が効率的である場合にはそれは配置されない。
【0031】
また、上部構造8の強度を向上させるために、または、食品原料2の移送効率向上のために、中心軸部材8fが配置され、かつ中心軸部材8fから放射方向に延びる接続部材(不図示)によって中心軸部材8fと螺旋状部8eとが接続されてもよい。この場合において、接続部材は、中心軸部材8fの延長方向において、かつ、図2における寸法H2の高さの範囲内において、複数箇所に配置されてもよい。
【0032】
<フィン部8b>
上部構造8の最下方位置、すなわち、下部構造9に近い側に、中心軸部材8fとも螺旋状部8eとも接続されてフィン部8bが配置される。フィン部8bは、中心軸Xから軸対称に延びて複数形成されている。例えば、本実施形態1では、回転体3を上方から見た平面視において、2つのフィン部8bが中心軸Xから直線状に、すなわち相互に180°の開き角で形成されている。もちろん、フィン部8bが3つ形成される場合は、相互の開き角が120°であってよく、フィン部8bが4つ形成される場合は、相互の開き角が90°であってよい。
【0033】
フィン部8bは、螺旋状部8eによって掻き落とされた食品原料2を下部構造9へ向けて移送するものである。フィン部8bは、図2及び図3に示すように、傾斜面8dを有している。傾斜面8dは、中心軸Xに対して所定角度α傾斜した面である(図4も参照)。回転体3が回転すると、フィン部8bの傾斜面8dによって食品原料2に下向きの加圧力が加えられ、食品原料2が下部構造9側へと移送されることとなる。
【0034】
なお、所定角度αは、本実施形態1では15°~75°の範囲内に設定され、30°~60°の範囲内であることがより好ましいが、これに限られない。所定角度αは、食品原料2の粘性、時間あたりの移送量、回転体3の回転速度等の種々ファクターに基づいて、適宜設定される。上部構造8の下辺がフィン部8bとして利用されているので、省スペースでありながら、効率のよい食品原料の下方への移送が実現されている。
【0035】
また、本実施形態1では、ホッパー6が略円筒形状をしており、その内壁6aの縦断面形状も中心軸Xに沿って略直線状に延びているが、ホッパー6の形状は必ずしも略円筒形状に限定されない。例えば、ホッパー6の筒状側面が曲面であり(すなわち、内壁6aの縦断面形状が曲線状であり)、その横方向断面における円半径が徐々に変化するものであってもよい。
【0036】
この場合においても、螺旋状部8eは所定間隔tを維持しつつ内壁6aに沿って回転するように形成されていることが好ましい。すなわち、螺旋状部8eが回転動作により呈する包絡的な外形形状が、内壁6aと所定間隔tを維持して内壁6aに沿うような局面形状であることが好ましい。内壁6aとスクレーパ部8aとの間隔が、その対向する範囲Dにおいて上記の所定間隔tであれば、本実施形態1と同様に、内壁6aに付着する大部分の食品原料2を掻き落とすことができる。
【0037】
<下部構造9>
下部構造9は、上部構造8の下方に位置し、フィン部8bによって移送された食品原料2を螺旋回転により吐出口1bへと移送するものである。下部構造9は、スクリュー部9aを有する。スクリュー部9aは、螺旋状に形成されており、回転体3が中心軸X周りに回転すると、スクリュー部9aによって食品原料2の吐出口1bへの移送が実現される。
【0038】
スクリュー部9aは、ホッパー6の筒状内部における下方部分に対応する位置に配置される。本実施形態1では、ホッパー6の下方部分は、徐々に絞った形状(横方向断面の円形状の半径が小さくされた形状)を呈しており、スクリュー部9aの外形形状もそれに応じた形状とされている。具体的には、ホッパー6の内径が最小である部分において、当該内径とスクリュー部9aの外径とが略同一径とされ、双方の隙間が極めて小さい状態とされる。これにより、ホッパー6の吐出口1bからの食品原料2の吐出において、吐出圧を充分に確保することができ、結果的に正確な吐出量の制御が可能となる。
【0039】
[実施形態2]
図5は、本発明の実施形態2に係る回転体13を正面から見た外観図である。この回転体13において、実施形態1の回転体3と同様の構成については同様の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
回転体13は、実施形態1の回転体3と同様に、上部構造8及び下部構造9を有している。上部構造8は、スクレーパ部8a、フィン部8bを有し、下部構造9はスクリュー部9aを有している。スクレーパ部8aは、回転体13がホッパー6(図1及び図2参照。)内に配置された際に、フィン部8bの終端8g近傍から内壁6aに沿いつつ螺旋形状を呈して投入口1aへと向けて延びる螺旋状部8eを有している。
【0041】
螺旋状部8eの投入口1aに近い側の終端(すなわち、螺旋状部8eにおける上方の終端)8h近傍は、連結部8jによって相互に連結されている。連結部8jは、回転体13の中心軸Xを通り放射状に延びて複数の螺旋状部8e同士を連結する橋桁状の棒部材である。連結部8jの存在により、螺旋状部8eの構造上の強度が向上し、食品原料2の移送による螺旋状部8eの歪みや変形が防止される。
【0042】
また、回転体13では、実施形態1の回転体3において配置された中心軸部材8fは配置されない。中心軸部材8fが配置されなければ、中空部8cのスペースが大きく確保することができる。そのため、食品原料2の特性等によっては、中空部8cを配置しないことにより、螺旋状部8eにより内壁6aから掻き落とした食品原料2を中空部8cから効率的にフィン部8bへと落下させることができる。もちろん、状況に応じて回転体13に中心軸部材8fを配置することも可能である。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。
【0044】
[実施例]
実施形態1の回転体3及び実施形態3の回転体13による食品原料2の移送効率を評価した。比較例として、図6に示すような、回転体23を用いた。回転体23は、上部構造28がスクレーパ部28a及びフィン部28bを有し、下部構造29がスクリュー部29aを有しており、フィン部28bが傾斜面28dを有している点において、実施形態1の回転体3と共通するが、スクレーパ部28aが螺旋状部を有しておらず、その形状が正面から見て略矩形状とされている。回転体23がホッパー6内に配置された場合に、略矩形状のスクレーパ部28aの上下に延びる辺に対応する部分が、ホッパー6の内壁6aと所定間隔tを維持して回転する点は、回転体3と同様である。
【0045】
この実施例では、回転体3,13,23共に食品原料2以外においては全て同条件での評価を行った。すなわち、同じホッパー6を用い、同じ投入量で食品原料2をホッパー6内に投入し、同じ回転速度で回転体を回転させてその吐出口1bからの時間あたりの吐出量を比較した。比較結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
上記のように、回転体3においては、米粉ゲル、魚類練り物B、パスタにおいて、回転体23よりも単位時間あたりの吐出量の増加、すなわち食品原料2の移送効率の向上が見られた。また、回転体13においては、米粉ゲル、魚類練り物Aにおいて、回転体23よりも単位時間あたりの吐出量の増加、すなわち食品原料2の移送効率の向上が見られた。いずれも、実施した評価のすべてにおいて、比較例としての回転体23よりも回転体3及び回転体13の移送効率が高いことがわかった。
【0047】
なお、本発明は以下の趣旨を含むものとする。
【0048】
(趣旨1)
略円筒形状のホッパーの投入口より投入されてそのホッパー内に貯留された粘性材料を前記ホッパーの下方に形成された吐出口へ向けて移送するために、前記ホッパー内に配置されて前記ホッパーの円筒中心と略一致する中心軸周りに回転する材料移送装置であって、
上部構造と、下部構造とを有し、
前記上部構造は、
前記ホッパーの内壁と所定間隔を維持しつつ前記内壁に沿って回転することにより前記粘性材料を前記内壁から掻き落とすスクレーパ部と、
前記スクレーパ部の下方に位置し、掻き落とされた前記粘性材料を前記下部構造に向けて移送するフィン部と、を有し、
前記フィン部は、前記中心軸から放射状に軸対称に延びて複数形成されると共に、前記中心軸に対して傾斜した傾斜面を有し、
前記スクレーパ部は、前記複数のフィン部の前記内壁に近い側の各々の終端近傍から前記内壁に沿いつつ螺旋形状を呈して前記ホッパーの前記投入口へと向けて延びる複数の螺旋状部を有しており、
前記下部構造は、前記上部構造の下方に位置し、前記フィン部によって移送された前記粘性材料を螺旋回転により前記吐出口へと移送するスクリュー部を有する、材料移送装置。
【0049】
(趣旨2)
前記上部構造が、前記フィン部から上方に向けて前記中心軸に沿って延びる中心軸部材を有してもよい。
【0050】
(趣旨3)
前記上部構造が、複数の螺旋状部を前記投入口に近い側の各々の終端近傍において互いに連結する連結部を有してもよい。
【0051】
(趣旨4)
前記上部構造が、複数の螺旋状部を前記投入口に近い側の各々の終端近傍において互いに連結されていなくてもよい。
【0052】
(趣旨5)
前記内壁と前記スクレーパ部とは、前記内壁と前記スクレーパ部とが対向する範囲の略全体において実質的に一定の所定間隔だけ離間していてもよい。
【0053】
(趣旨6)
前記内壁と前記スクレーパ部とが対向する範囲が、前記中心軸に沿った方向における前記ホッパーの寸法の50%以上であってもよい。
【0054】
(趣旨7)
前記所定間隔が、2mm以下であってもよい。
【0055】
(趣旨8)
上記の記載の材料移送装置と、前記ホッパーと、を備えた材料供給装置。
【符号の説明】
【0056】
α:所定角度
D:範囲
H、H2:寸法
t:所定間隔
X:中心軸
1:ディスペンサー(材料供給装置)
1a:投入口
1b:吐出口
2:食品原料(粘性材料)
3,13,23:回転体(材料移送装置)
4:モーター(駆動源)
5:コントローラー(制御装置)
6:ホッパー
6a:内壁
8,28:上部構造
8a,28a:スクレーパ部
8b,28b:フィン部
8c:中空部
8d,28d:傾斜面
8e:螺旋状部
8f:中心軸部材
8g:フィン部の終端
8h:螺旋状部の終端
8j:連結部
9,29:下部構造
9a,29a:スクリュー部


図1
図2
図3
図4
図5
図6