(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165180
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】メタン発酵方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/65 20220101AFI20241121BHJP
B09B 3/80 20220101ALI20241121BHJP
B09B 101/85 20220101ALN20241121BHJP
【FI】
B09B3/65
B09B3/80 ZAB
B09B101:85
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081104
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】金 美貞
(72)【発明者】
【氏名】正司 明夫
(72)【発明者】
【氏名】張 振亜
(72)【発明者】
【氏名】原 田
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA12
4D004BA03
4D004CA18
4D004CB05
4D004CB44
4D004CC01
4D004CC12
(57)【要約】
【課題】VSあたりのバイオガス生成量の向上が図られたメタン発酵方法を提供する。
【解決手段】本発明のメタン発酵方法は、発酵原料のうち第1発酵原料を収容する第1収容部11に収容された第1発酵原料を、第1収容部11よりも上層に設けられ、発酵原料のうち予めアルカリ廃水で浸漬されたリグノセルロース系バイオマス資源の第2発酵原料を収容する第2収容部12に供給してメタン発酵させる原料供給工程と、原料供給工程において第2収容部12に供給された第1発酵原料のうち、少なくとも一部を第1収容部11へ落下させることにより第2発酵原料と分離する分離工程と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵原料のうち第1収容部に収容された第1発酵原料を、前記第1収容部よりも上層に設けられ、発酵原料のうち予めアルカリ廃水で浸漬されたリグノセルロース系バイオマス資源からなる第2発酵原料を収容する第2収容部に供給してメタン発酵させる原料供給工程と、
前記原料供給工程において前記第2収容部に供給された前記第1発酵原料のうち、少なくとも一部を前記第1収容部へ落下させることにより前記第2発酵原料と分離する分離工程と、
を有すること
を特徴とするメタン発酵方法。
【請求項2】
発酵原料のうち第2収容部に収容されたリグノセルロース系バイオマス資源からなる第2発酵原料を、アルカリ廃水で浸漬する原料浸漬工程と、
前記原料浸漬工程で浸漬された前記第2発酵原料を収容する前記第2収容部に、当該第2収容部よりも下層に設けられる第1収容部に収容される第1発酵原料を供給してメタン発酵させる原料供給工程と、
前記原料供給工程において前記第2収容部に供給された前記第1発酵原料のうち、少なくとも一部を前記第1収容部へ落下させることにより前記第2発酵原料と分離する分離工程と、
を有すること
を特徴とするメタン発酵方法。
【請求項3】
前記原料浸漬工程は、前記第2発酵原料を、少なくとも酸素を含む気体を吹き込んだ前記アルカリ廃水で浸漬すること
を特徴とする請求項2に記載のメタン発酵方法。
【請求項4】
前記原料供給工程は、少なくとも酸素を含む気体を吹き込んだ前記第1発酵原料を、前記第2収容部に供給すること
を特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のメタン発酵方法。
【請求項5】
前記原料供給工程の後、前記メタン発酵により生成された前記第1収容部内の消化液を、前記第2収容部に供給すること
を特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のメタン発酵方法。
【請求項6】
少なくとも酸素を含む気体を吹き込んだ前記消化液を、前記第2収容部に供給すること
を特徴とする請求項5に記載のメタン発酵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リグノセルロース系バイオマス資源を発酵させるために用いるメタン発酵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バイオマス資源をエネルギー資源として有効活用するための方法として、メタン発酵技術が研究されている。日本は、家畜用飼料として年4,000万トンの穀物を諸外国から輸入しており、日本国土に約0.8億トン/年(農水省、2016年)の畜産系廃棄物が残留物として生じている。これら有機系廃棄物が有効に再資源化されないまま焼却や埋立てなどによって処理されることで、窒素循環の破綻の一因となり、河川や湖沼、海洋等の環境汚染を引き起こすおそれがある。そのため、バイオマス資源の有効活用は、環境保全の面において極めて重要である。
【0003】
バイオマス資源のうち、リグノセルロース系バイオマス資源は、稲わら、トウモロコシの茎葉、籾殻、麦わら等が含まれ、地球上で最も豊富な炭水化物源として莫大な資源量の確保が可能な非食用資源である。リグノセルロース系バイオマス資源を用いたメタン発酵技術は、例えば酵素糖化(加水分解)及び発酵工程の前に、バイオマス資源の前処理工程が必要とされ、前処理工程によりリグニン等の内部構造が破壊され、分解酵素が基質へ接触しやすくなり、その結果酵素糖化率が向上する。
【0004】
前処理工程は、多様な物理化学的前処理法により実施され、例えばアルカリを用いてリグニンを分解する方法がある。しかしながら、化学薬品としてのアルカリ剤の調達が必要であるため、環境汚染の問題がある。また、リグニンを分解するためには高温処理(例えば300℃~600℃)が必要となるため、35℃~55℃程度が適温とされるメタン発酵槽とは別に高温処理槽を設けなければならず、発酵装置が大型化する問題がある。
【0005】
特許文献1には、リグノセルロース系バイオマス資源を、水酸化ナトリウムを主要有効成分とする蒸解薬液に浸漬させた後に嫌気性発酵することで、メタンガスを発生させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されたメタン発酵方法によれば、リグノセルロース系バイオマスを蒸解薬液に浸漬させることにより、セルロース系繊維を離解させて蒸解物混合液を取得し、通常のメタン発酵プロセスと同様に加水分解、酸生成分解、嫌気性発酵の順に処理することで、メタンガスを発酵させる。これにより、高価な耐熱性材料を必要とするような高温状態を経ることなく、メタンを主成分とする可燃性ガスを生成することができる。しかしながら、特許文献1に開示されたメタン発酵方法によれば、VS(Volatile Solids:投入する有機物重量)あたりのバイオガス生成量の向上については言及されていない。
【0008】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、VSあたりのバイオガス生成量の向上が図られたメタン発酵方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明におけるメタン発酵方法は、発酵原料のうち第1収容部に収容された第1発酵原料を、前記第1収容部よりも上層に設けられ、発酵原料のうち予めアルカリ廃水で浸漬されたリグノセルロース系バイオマス資源からなる第2発酵原料を収容する第2収容部に供給してメタン発酵させる原料供給工程と、前記原料供給工程において前記第2収容部に供給された前記第1発酵原料のうち、少なくとも一部を前記第1収容部へ落下させることにより前記第2発酵原料と分離する分離工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
第2発明におけるメタン発酵方法は、発酵原料のうち第2収容部に収容されたリグノセルロース系バイオマス資源からなる第2発酵原料を、アルカリ廃水で浸漬する原料浸漬工程と、前記原料浸漬工程で浸漬された前記第2発酵原料を収容する前記第2収容部に、当該第2収容部よりも下層に設けられる第1収容部に収容される第1発酵原料を供給してメタン発酵させる原料供給工程と、前記原料供給工程において前記第2収容部に供給された前記第1発酵原料のうち、少なくとも一部を前記第1収容部へ落下させることにより前記第2発酵原料と分離する分離工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
第3発明におけるメタン発酵方法は、第2発明において、前記原料浸漬工程は、前記第2発酵原料を、少なくとも酸素を含む気体を吹き込んだ前記アルカリ廃水で浸漬することを特徴とする。
【0012】
第4発明におけるメタン発酵方法は、第1発明~第3発明の何れか一つにおいて、前記原料供給工程は、少なくとも酸素を含む気体を吹き込んだ前記第1発酵原料を、前記第2収容部に供給することを特徴とする。
【0013】
第5発明におけるメタン発酵方法は、第1発明~第3発明の何れか一つにおいて、前記原料供給工程の後、前記メタン発酵により生成された前記第1収容部内の消化液を、前記第2収容部に供給することを特徴とする。
【0014】
第6発明におけるメタン発酵方法は、第5発明において、少なくとも酸素を含む気体を吹き込んだ前記消化液を、前記第2収容部に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1発明、第3発明~第6発明によれば、第1収容部に収容された第1発酵原料を、予めアルカリ廃水で浸漬されたリグノセルロース系バイオマス資源の第2発酵原料を収容する第2収容部に供給してメタン発酵させる原料供給工程と、第2収容部に供給された第1発酵原料のうち、少なくとも一部を第1収容部へ落下させることにより第2発酵原料と分離する分離工程と、を備える。このため、アルカリ廃水で浸漬されたリグノセルロース系バイオマス資源を効率よくメタン発酵させることができる。これにより、VSあたりのバイオガス生成量の向上を図ることができる。また、メタン発酵を促進するために発酵原料等を攪拌する攪拌器を設ける必要がない。これにより、メタン発酵装置の小型化を図ることができる。
【0016】
第2発明~第6発明によれば、第2収容部に収容されたリグノセルロース系バイオマス資源の第2発酵原料をアルカリ廃水で浸漬する原料浸漬工程と、原料浸漬工程で浸漬された第2発酵原料を収容する第2収容部に、第1収容部に収容された第1発酵原料を供給してメタン発酵させる原料供給工程と、第2収容部に供給された第1発酵原料のうち、少なくとも一部を第1収容部へ落下させることにより第2発酵原料と分離する分離工程と、を備える。このため、アルカリ廃水で浸漬されたリグノセルロース系バイオマス資源を効率よくメタン発酵させることができる。これにより、VSあたりのバイオガス生成量の向上を図ることができる。また、第2収容部において、第2発酵原料をアルカリ廃水で浸漬させてメタン発酵するため、メタン発酵槽とは別の前処理容器が不要となる。このため、メタン発酵装置の小型化を図ることができる。
【0017】
特に、第3発明によれば、原料浸漬工程は、第2発酵原料を、少なくとも酸素を含む気体を吹き込んだアルカリ廃水で浸漬する。このため、メタン生成菌が活性化し、メタン生成量の向上により、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスをさらに生成することができる。これにより、バイオガスの有用性向上を図ることができる。
【0018】
特に、第4発明によれば、原料供給工程は、少なくとも酸素を含む気体を吹き込んだ第1発酵原料を第2収容部に供給する。このため、メタン生成菌が活性化し、メタン生成量の向上により、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスをさらに生成することができる。これにより、バイオガスの有用性向上を図ることができる。
【0019】
特に、第5発明によれば、メタン発酵により生成された第1収容部内の消化液を、第2収容部に供給する。すなわち、消化液は、第1収容部よりも上層の第2収容部に供給された後、第1収容部に流下する。このため、アルカリ廃水で浸漬されたリグノセルロース系バイオマス資源をさらに効率よくメタン発酵させることができる。これにより、VSあたりのバイオガス生成量のさらなる向上を図ることができる。
【0020】
特に、第6発明によれば、少なくとも酸素を含む気体を吹き込んだ消化液を第2収容部に供給する。このため、メタン生成菌が活性化し、メタン生成量の向上により、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスをさらに生成することができる。これにより、バイオガスの有用性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、第1実施形態のメタン発酵方法に用いるメタン発酵装置の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のメタン発酵方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第1実施形態のメタン発酵方法の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態のメタン発酵方法に用いるメタン発酵装置の構成の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態のメタン発酵方法の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態のメタン発酵方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第3実施形態のメタン発酵方法の一例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、未粉砕の発酵資源を基質とするメタン発酵方法によるバイオガス生成量を示す実験データである。
【
図9】
図9は、粉砕後の発酵資源を基質とするメタン発酵方法によるバイオガス生成量を示す実験データである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態としてのメタン発酵装置の一例について、図面を参照しながら詳細に説明をする。なお、各図における構成は、説明のため模式的に記載されており、例えば各構成の大きさや、構成毎における大きさの対比等については、図とは異なってもよい。
【0023】
(第1実施形態:メタン発酵方法)
図1を参照して、本実施形態におけるメタン発酵方法に用いるメタン発酵装置1の一例を説明する。
【0024】
メタン発酵装置1は、メタン発酵槽10を備える。メタン発酵装置1は、例えばメタン発酵装置1が生成したバイオガスを採集するバイオガス採集タンク3と外部接続される。
【0025】
メタン発酵装置1は、例えば
図1に示すように、第1収容部11と、第1収容部11よりも上層の第2収容部12と、第1収容部11と第2収容部12との間の分離機構13を備える。
【0026】
メタン発酵装置1は、第1収容部11に収容された発酵原料を第1収容部11から排出する原料排出口111と、原料排出口111から排出された発酵原料を第2収容部12に供給する原料供給口121と、原料排出口111と原料供給口121とを接続する第1接続配管21と、を有する。原料供給口121は、例えば第2収容部12内に均一に発酵原料を供給するために、第2収容部12に複数設けられてもよい。なお、図示は省略したが、バイオガス排出口122、及び原料排出口111についても、同様に複数設けられてもよい。
【0027】
<メタン発酵槽10>
メタン発酵槽10は、槽内のバイオマス資源を発酵原料として発酵させ、バイオガスと消化液とを生成する。メタン発酵槽10は、例えば内部に分離機構13が設けられており、分離機構13によって槽内が複数の区域に分離されている。一部の区域において発酵原料を乾式メタン発酵により発酵させ、他の区域において発酵原料を湿式メタン発酵により発酵させる。
【0028】
ここで、発酵原料となるバイオマス資源とは、動植物から生まれる資源を指し、本実施形態においては、特に再生可能な有機性資源を含む産業廃棄物を想定している。バイオマス資源としては、例えば動物のふん尿(鶏ふん、牛ふん、豚ふん等)、動植物系残さ(籾殻、食品残さ等)が用いられる。
【0029】
メタン発酵槽10は、例えば第1収容部11と、第1収容部11よりも上層の第2収容部12と、第1収容部11と第2収容部12との間の分離機構13を有する。
【0030】
<第1収容部11>
第1収容部11は、メタン発酵槽10内の発酵原料を湿式メタン発酵により発酵させる区域である。第1収容部11は、発酵原料の湿式メタン発酵により、バイオガスと消化液とを生成する。第1収容部11は、第2収容部12に収容される流動体が、連続的又は断続的に孔130を通過して流下することで収容される。このため、第1収容部11に収容される発酵原料は、湿式メタン発酵に適したTS濃度(固形物濃度)15%未満に保たれやすい。また、第2収容部12に収容される流動体の落下(又は液体成分の流下)により、第1収容部11内が攪拌される。
【0031】
メタン発酵装置1は、第1収容部11に収容される流動体を第2収容部12に連続的又は断続的に供給する。すなわち、第2収容部12に収容される発酵資源は、第1収容部11に収容される流動体と連続的又は断続的に接触することで、攪拌と同様の効果を得ることができる。このため、乾式メタン発酵の従来課題であった流動性の低さを、攪拌装置を用いることなく解消することができる。一方で、第2収容部12に収容される流動体は、第2収容部12に収容される発酵資源と繰り返し接触することで、発酵資源のNPK成分が溶出しやすくなる。このため、湿式メタン発酵の従来課題であった栄養成分の少なさを解消でき、良質なバイオ液肥として活用できる。このように、メタン発酵装置1は、第2収容部12内の乾式メタン発酵と、第1収容部11内の湿式メタン発酵を有機的に組み合わせることで、双方の従来課題を解決しつつ、乾式メタン発酵の利点であるメタン生成量の高さを効果的に発揮することができる。
【0032】
<第2収容部12>
第2収容部12は、メタン発酵槽10内の発酵原料を乾式メタン発酵により発酵させる区域である。第2収容部12は、発酵原料の乾式メタン発酵により、バイオガスと消化液とを生成する。
【0033】
第2収容部12は、孔130が設けられた分離機構13を介して、第1収容部11より上層に設けられる。第2収容部12に収容される流動体は、連続的又は断続的に孔130を通過して第1収容部11に落下する。このため、第2収容部12に収容される発酵原料は、乾式メタン発酵に適したTS濃度(固形物濃度)15%以上に保たれやすい。また、流動体を自由落下させることにより流動体と固形体とに分離できるため、第2収容部12にTS濃度(固形物濃度)15%未満の発酵原料を収容しても、第2収容部12内の乾式メタン発酵に差し支えない。
【0034】
<分離機構13>
分離機構13は、メタン発酵槽10に収容される発酵原料を、乾式メタン発酵により発酵させる発酵原料と、湿式メタン発酵により発酵させる発酵原料と、に分離する。分離機構13は、例えばメタン発酵槽10の内壁に接して設けられる。分離機構13は、例えば所定の間隔で、第2収容部12と第1収容部11とを連通する孔130が1以上設けられる。分離機構13は、第2収容部12に収容された発酵原料のうち孔130の幅よりも小さい固形体、又は流動体を第1収容部11に落下させることで、発酵原料を分離する。その結果、第2収容部12内の第2発酵原料5が乾式メタン発酵される。この場合、アルカリ廃水で浸漬されたリグノセルロース系バイオマス資源を効率よくメタン発酵させることができる。これにより、VSあたりのバイオガス生成量の向上を図ることができる。
【0035】
分離機構13の材質としては、第2収容部12に収容される発酵原料を支持できる程度の強度を有する素材が用いられ、例えばポリエチレン等の合成樹脂が用いられる。分離機構13の厚さは、例えば0.1mm~50mmである。分離機構13に設けられる孔130の幅は、例えば0.1mm~5mmである。
【0036】
<第1接続配管21>
第1接続配管21は、メタン発酵槽10に接続される。第1接続配管21は、原料排出口111と原料供給口121とを接続する。第1接続配管21には、例えば送水ポンプ211が設けられる。送水ポンプ211の駆動により、原料排出口111から排出された発酵原料は、第1接続配管21内を流動し、原料供給口121に供給される。第1接続配管21の材質は、例えばポリエチレンパイプが用いられる。
【0037】
<第2接続配管22>
第2接続配管22は、第1接続配管21とは独立して、メタン発酵槽10に接続される。第2接続配管22は、バイオガス排出口122とバイオガス採集タンク3とを接続する。バイオガス採集タンク3の操作により、バイオガス排出口121から排出されたバイオガスは、第2接続配管22内を流動し、バイオガス採集タンク3内に採集される。第2接続配管22の材質は、例えば第1接続配管21と同様のものが用いられる。
【0038】
<バイオガス採集タンク3>
バイオガス採集タンク3は、メタン発酵装置1を構成するメタン発酵槽10内で生成されたバイオガスを採集するためのタンクである。バイオガス採集タンク3は、第2接続配管22を介してメタン発酵装置1と外部接続される。バイオガス採集タンク3は、例えばメタン発酵装置1の一部を構成してもよい。
【0039】
バイオガス採集タンク3は、メタン発酵装置1から生成されるバイオガスの採集及び排出のみを行い、バイオガス採集タンク3内でバイオガスの生成は行わない。バイオガス採集タンク3の材質としては、例えば公知のガスホルダーと同等の鋼材、ポリ塩化ビニル等の樹脂材料が用いられる。
【0040】
図2~
図3を参照して、本実施形態におけるメタン発酵装置1を用いたメタン発酵方法の一例を説明する。
【0041】
メタン発酵装置1の動作は、例えば
図2に示すように、原料供給工程S11と、分離工程S12と、を備える。
【0042】
<事前準備>
事前準備として、例えば
図3(a)に示すように、第1収容部11に第1発酵原料4を収容し、第2収容部12に、予めアルカリ廃水で浸漬された第2発酵原料5を収容する。メタン発酵槽10内にはメタン生成菌が予め収容され、例えば第1発酵原料4中に存在する。ここで、第1収容部11に収容される第1発酵原料4を第1発酵原料4aとする。また、メタン発酵槽10内を、メタン発酵が促進する嫌気性環境下となるように調整する。
【0043】
ここで、アルカリ廃水とは、生コンクリート製造工場、コンクリート製品製作工場、工事現場等において、セメント、モルタル、コンクリート等のセメント系組成物の洗浄を行う際に発生する洗浄廃水を指す。この洗浄廃水は、通常、排水を集水する集水槽、浮遊粒子等を除去する濾過槽、金属が含まれる汚泥等を沈殿させる沈殿槽を通過させた後、希硫酸等で上水を中和処理し、放流している。本実施形態におけるアルカリ廃水としては、上述の集水槽、濾過槽及び沈殿槽を通過し、中和槽を通過する前の洗浄廃水を用いる。このため、アルカリ廃水は、pH10~15程度のアルカリ性を有する。また、アルカリ廃水の回収方法としては、例えば沈殿槽から耐薬品性を有する1トン用のポリタンクに取り分けて、浸漬に用いる量だけ、アルカリ耐久性チューブを用いて浸漬容器に投入する。
【0044】
<第1発酵原料4>
第1発酵原料4は、第1収容部11に予め収容される。第1発酵原料4は、第2収容部12内において湿式メタン発酵される。第1発酵原料4は、例えばバイオマス資源のうち、TS濃度(固形物濃度)が15%未満の流動体が用いられる。
【0045】
<第2発酵原料5>
第2発酵原料5は、アルカリ廃水で浸漬された状態で、第2収容部12に予め収容される。第2発酵原料5は、第2収容部12内において乾式メタン発酵される。第2発酵原料5は、例えばリグノセルロース系バイオマス資源のうち、TS濃度(固形物濃度)が15%以上の固形体が用いられ、例えば籾殻が用いられる。
【0046】
<原料供給工程S11>
原料供給工程S11において、メタン発酵装置1は、例えば
図3(b)に示すように、送水ポンプ211を動作させて第1発酵原料4を第1収容部11から排出する。ここで、第1収容部11から排出される第1発酵原料4を第1発酵原料4bとする。第1発酵原料4bは、原料排出口111を通過して第1収容部11から排出された後、第1接続配管21内を流動して原料供給口121を通過し、第2収容部12に供給される。第1発酵原料4bは、例えば第2収容部12に収容される第2発酵原料5の上方から、第2発酵原料5に接触するように供給される。ここで、第2収容部12に供給される第1発酵原料4を第1発酵原料4cとする。
【0047】
第1発酵原料4cと接触した第2発酵原料5は、メタン生成菌の作用によりメタン発酵が促進される。その結果、第2収容部12内においてバイオガス及び消化液が生成される。第2発酵原料5から生じたバイオガスは、ガス排出口122を通過し、第2接続配管22を流動してバイオガス採集タンク3に収容される。
【0048】
<分離工程S12>
分離工程S12において、メタン発酵装置1は、例えば
図3(c)に示すように、第1発酵原料4cの少なくとも一部を、分離機構13に設けられた孔130を通過させて、第2収容部12よりも下層に設けられた第1収容部11に落下させる。ここで、第2収容部12から孔130を通過して第1収容部11に落下する第1発酵原料4を第1発酵原料4dとする。その結果、第2収容部12内の第2発酵原料5が乾式メタン発酵される。この場合、アルカリ廃水で浸漬されたリグノセルロース系バイオマス資源を効率よくメタン発酵させることができる。これにより、VSあたりのバイオガス生成量の向上を図ることができる。また、メタン発酵を促進するために発酵原料等を攪拌する攪拌器を設ける必要がない。これにより、メタン発酵装置の小型化を図ることができる。なお、本実施形態のバイオガス生成量の具体的な効用については、後述の実施例において実験データに基づいて説明する。
【0049】
また、第2発酵原料5から生じた消化液は、第1発酵原料4dと同様に、分離機構13に設けられた孔130を通過して、第2収容部12よりも下方に位置する第1収容部11に流下する。第1収容部11に流下した消化液は、第1発酵原料4aとともに、又は第1発酵原料4aの代わりに、原料排出口111を通過して第1収容部11から排出され、第1接続配管21内を流動して原料供給口121を通過し、第2収容部12に供給される。
【0050】
すなわち、第1収容部11において生成される消化液は、第1収容部11よりも上層の第2収容部12に供給された後、第1収容部11に流下する。この場合、アルカリ廃水で浸漬されたリグノセルロース系バイオマス資源をさらに効率よくメタン発酵させることができる。これにより、VSあたりのバイオガス生成量のさらなる向上を図ることができる。また、第1収容部11において生成される消化液は、第2収容部12に収容される第2発酵原料5及び第2発酵原料5の発酵による生成物との接触により、溶出したNPK成分をより多く含み得る。この場合、NPK成分の含有量が向上し、より良質なバイオ液肥として活用することができる。これにより、液肥施用に伴う労力が省力化されるなど、液肥の有用性向上を図ることができる。なお、消化液を第2収容部12に供給して循環させる場合のバイオガス生成量の具体的な効用については、後述の実施例において実験データに基づいて説明する。
【0051】
上述した各工程を実施し、本実施形態におけるメタン発酵装置1の動作は終了する。なお、メタン発酵装置1では、例えば上述した各工程を繰り返し実施してもよい。
【0052】
なお、メタン発酵装置1は、メタン生成菌の活動速度に対して各発酵原料4、5が過剰に存在する場合、すなわち有機物負荷が過剰である場合、メタン発酵に伴いメタン発酵槽10内が酸性に偏り、メタン発酵の好適な中性環境又は弱アルカリ性環境(例えばpHが6.5~8.2の間)から酸性環境となる、いわゆる酸敗現象が生じるおそれがある。これは、メタン発酵の中間反応プロセスである有機酸生成プロセスに起因する。メタン発酵槽10内が酸性環境(例えばpHが5以下)となる場合、メタン生成菌の活性が低下し、メタン発酵が阻害されるおそれがある。このため、メタン発酵装置1を動作する際、メタン発酵槽10内のpHを測定し、必要に応じて図示しない供給口からアルカリ性のpH調整剤をメタン発酵装置1に供給することで、メタン発酵槽10内を、メタン発酵の好適な環境に保つように調整することが好ましい。
【0053】
pH調整剤としては、例えば石灰や水酸化カルシウム等が用いられる。pH調整剤を供給することにより、メタン発酵槽10内は例えばpH7~8程度の弱アルカリ性の環境に調整される。これにより、有機酸生成プロセスの速度が適度に抑制され、メタン発酵槽10内をメタン発酵の好適な環境に保つことができる。
【0054】
pH調整剤の供給方法としては、例えば第1収容部11への供給、第2収容部12への供給、及び第1接続配管21への供給の何れかの方法で実施される。
【0055】
第2収容部12へpH調整剤を供給する場合、pH調整剤は、例えば第2収容部12に設けられる図示しない供給口を通過して、第2収容部12に供給される。このとき、第2収容部12中の乾式メタン発酵により生じた消化液が還元される。例えば、消化液中の酢酸が、pH調整剤中のカルシウム成分と反応して弱アルカリ性の酢酸カルシウムが生成される。これにより、メタン発酵槽10内のpHが上昇し、メタン発酵の好適な環境に保たれやすい。
【0056】
第1収容部11へpH調整剤を供給する場合、pH調整剤は、例えば第1収容部11に設けられる図示しない供給口を通過して第1収容部11に供給される。このとき、第1収容部11中の湿式メタン発酵により生じた消化液が還元される。これにより、メタン発酵槽10内のpHが上昇し、メタン発酵の好適な環境に保たれやすい。
【0057】
第1接続配管21へpH調整剤を供給する場合、pH調整剤は、例えば第1接続配管21に接続される図示しないpH調整剤供給装置を介して第1接続配管21に供給される。このとき、第1接続配管21中を流動する消化液が還元される。これにより、メタン発酵槽10内のpHが上昇し、メタン発酵の好適な環境に保たれやすい。また、pH調整剤は、例えば第1接続配管21内を流動する第1発酵原料4と混合され、第1発酵原料4とともに第2収容部12に供給されてもよい。このとき、第2収容部12中の乾式メタン発酵により生じた消化液が還元される。
【0058】
また、第2発酵原料5は、アルカリ性を有するアルカリ廃水で浸漬されているため、後述のpH調整剤を用いる量の低減を図ることができる。これにより、バイオマスエネルギーの生成コストの低減を図ることができる。
【0059】
なお、メタン発酵装置1の動作終了後に、第2収容部12を大気開放し、第2収容部12内に残った第2発酵原料5の発酵残さを曝気することで、当該発酵残さを堆肥として使用することができる。これにより、メタン発酵装置1から生じる廃棄物の減量化を図ることができる。
【0060】
本実施形態によれば、第1収容部11に収容された第1発酵原料4を、予めアルカリ廃水で浸漬されたリグノセルロース系バイオマス資源の第2発酵原料5を収容する第2収容部12に供給してメタン発酵させる原料供給工程S11と、第2収容部12に供給された第1発酵原料4のうち、少なくとも一部を第1収容部11へ落下させることにより第2発酵原料5と分離する分離工程S12と、を備える。このため、アルカリ廃水で浸漬されたリグノセルロース系バイオマス資源を効率よくメタン発酵させることができる。これにより、VSあたりのバイオガス生成量の向上を図ることができる。また、メタン発酵を促進するために発酵原料等を攪拌する攪拌器を設ける必要がない。これにより、メタン発酵装置の小型化を図ることができる。
【0061】
本実施形態によれば、分離工程S12のあと、発酵原料から生成した第1収容部11内の消化液を、第2収容部12に供給してメタン発酵させる。すなわち、第1収容部11において生成される消化液は、第1収容部11よりも上層の第2収容部12に供給された後、第1収容部11に流下する。このため、アルカリ廃水で浸漬されたリグノセルロース系バイオマス資源をさらに効率よくメタン発酵させることができる。これにより、VSあたりのバイオガス生成量のさらなる向上を図ることができる。
【0062】
(第2実施形態:メタン発酵方法)
図4を参照して、本実施形態におけるメタン発酵方法に用いるメタン発酵装置1の一例を説明する。本実施形態は、メタン発酵装置1が気泡発生装置6をさらに備える点で、第1実施形態とは異なる。なお、上述の内容と同様の構成については、説明を省略する。
【0063】
メタン発酵装置1は、気泡発生装置6をさらに備える。
【0064】
<気泡発生装置6>
気泡発生装置6は、メタン発酵槽10と接続される。気泡発生装置6は、例えば第1接続配管21を介して、メタン発酵槽10と接続される。
【0065】
気泡発生装置6は、少なくとも酸素を含む気体を流動体に吹き込むことにより、酸素ナノバブル水を生成する。気泡発生装置6は、例えば第1接続配管21内を流動する流動体又に気泡を吹き込む。気泡発生装置6は、例えば第1接続配管21内を流動する第1発酵原料4又は消化液に気泡を吹き込むことにより、酸素ナノバブル水(酸素ナノバブル含有第1発酵原料又は酸素ナノバブル含有消化液)を生成する。
【0066】
気泡発生装置6による酸素ナノバブル水の生成方法は、例えば酸素や空気等の気体を加圧して、第2発酵原料5又は消化液中に過飽和で溶解させ、急減圧により、液中にマイクロバブルとナノバブルを発生させ、マイクロバブル浮上分離後、ナノバブルのみ液中に残留させることにより実現し得る。ただし、酸素ナノバブル水は、ナノオーダー(1μm以下)の直径の酸素ガスの微細気泡を含有する水のことを指しており、ナノオーダーの酸素ガスの微細気泡に加え、マイクロオーダー(1~100μm)の微細酸素ガスを含有するマイクロナノバブル水としてもよい。また、気泡発生装置6は、酸素ナノバブル又は空気ナノバブルの何れか一方或いはその両方を含む少なくともナノサイズの微細気泡として酸素を含有する酸素ナノバブル水を生成してもよい。酸素ナノバブル水の具体例としては、直径200nm以下の気泡のうち平均直径50nm~100nmの気泡が9割程度含まれ、気泡の濃度が2×108個/L~6×109個/Lである。
【0067】
酸素ナノバブル水の生成方式としては、例えば酸素気体と水を混合し、高速で旋回させることで酸素の気泡を作る「旋回流方式」、酸素気体に圧力をかけ、水中に溶け込ませて、一気に開放することで酸素の気泡を作る「加圧溶解方式」、オリフィス等の微細孔へ酸素気体に圧力をかけて通すことで酸素の気泡を作る「微細孔方式」、超音波でキャビテーションを起こして水中の酸素気体を膨張させて酸素の気泡を作る「超音波方式」、突起物が設けられた気液流路内において気体を旋回させ粉砕して気泡を作る「スタティックミキサー式」、気液流路内に急激な圧力変化を形成して気泡を作る「エゼクター式」又は「ベンチュリ―式」等が例示される。なお、酸素ナノバブル水の生成方式は、特に限定されるものではなく、マイクロオーダー(1~100μm)の微細酸素ガスを含有するマイクロナノバブル水を生成できる手段であればよい。
【0068】
酸素をナノバブル状の微細な気泡とすることにより、通常の蒸留水よりもT1緩和時間(核磁化によって水の運動(核スピン)が活発になってから静かな状態に戻るまでの時間)の向上、すなわち運動性が高められ、メタン発酵槽10に収容される物質の移動性が高まる。これにより、メタン発酵槽10内において酸素ナノバブル水、各発酵原料4、5、消化液及びバイオガスが接触しやすくなり、メタン発酵がより促進され得る。
【0069】
次に、
図5を参照して、本実施形態におけるメタン発酵装置1を用いたメタン発酵方法の一例を説明する。
【0070】
<事前準備>
事前準備として、例えば
図5(a)に示すように、メタン発酵槽10に接続された気泡発生装置6を予め起動し、第1接続配管211内を流動する流動体に気泡を吹き込めるように調整する。
【0071】
<原料供給工程S11>
原料供給工程S11において、メタン発酵装置1は、例えば
図5(b)に示すように、送水ポンプ211を動作させて第1収容部11から第1発酵原料4を排出する(第1発酵原料4b)。第1発酵原料4bは、原料排出口111を通過して第1収容部11から排出された後、第1接続配管21内を流動して、第1接続配管21に接続された気泡発生装置6により、少なくとも酸素を含む気体を吹き込む。その結果、第1発酵原料4bから第1発酵原料4b’が生成される。ここで、第1発酵原料4b’は、例えば酸素ナノバブル水である。
【0072】
第1発酵原料4b’は、原料供給口121を通過し、第2収容部12に供給される。第1発酵原料4b’は、例えば第2収容部12に収容される第2発酵原料5の上方から、第2発酵原料5に接触するように供給される。ここで、第2収容部12に供給される第1発酵原料4を第1発酵原料4c’とする。第1発酵原料4c’は、例えば第1発酵原料4b’と同様の酸素ナノバブル水である。
【0073】
第1発酵原料4c’と接触した第2発酵原料5は、メタン生成菌の作用によりメタン発酵が促進される。その結果、第2発酵原料5が乾式メタン発酵され、第2収容部12内においてバイオガス及び消化液が発生する。第2発酵原料5から生じたバイオガスは、ガス排出口122を通過し、第2接続配管22を流動してバイオガス採集タンク3に収容される。
【0074】
第1発酵原料4c’は、例えば
図5(c)に示すように、少なくとも一部が、分離機構13に設けられた孔130を通過して、第2収容部12よりも下層に設けられた第1収容部11に落下する。ここで、第2収容部12から孔130を通過して第1収容部11に落下する第1発酵原料4を第1発酵原料4d’とする。第1発酵原料4d’は、例えば第1発酵原料4b’と同様の酸素ナノバブル水である。また、第2発酵原料5から生じた消化液は、第1発酵原料4d’と同様に、分離機構13に設けられた孔130を通過して、第2収容部12よりも下層に設けられた第1収容部11に落下する。第1収容部11に落下した消化液は、第1発酵原料4aとともに、又は第1発酵原料4aの代わりに、原料排出口111を通過して第1収容部11から排出され、第1接続配管21内を流動して、第1接続配管21に接続された気泡発生装置6により、少なくとも酸素を含む気体を吹き込む。その結果、消化液から酸素ナノバブル含有消化液が生成される。生成された酸素ナノバブル含有消化液は、原料供給口121を通過し、第2収容部12に供給される。
【0075】
すなわち、少なくとも酸素を含む気体を第1発酵原料4に吹き込むことにより、酸素ナノバブル水を生成する気泡発生装置をさらに備え、第2収容部12は、酸素ナノバブル水が供給される。この場合、メタン生成菌が活性化し、メタン生成量の向上により、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスをさらに生成することができる。これにより、バイオガスのさらなる有用性向上を図ることができる。酸素ナノバブル水の効用については、後述の実験において実験データに基づいて述べる。
【0076】
なお、本実施形態においては、気泡発生装置6を用いて、第2収容部12に供給される第1発酵原料4から酸素ナノバブル水を生成し、第2収容部12に供給する例を説明したが、これに限定されない。気泡発生装置6は、例えば第1収容部11又は第2収容部12に供給されるpH調整剤に、少なくとも酸素を含む気体を吹き込むことにより酸素ナノバブル水を生成し、第1収容部11又は第2収容部12に供給してもよい。
【0077】
また、予め酸素ナノバブル水に浸漬させた第2発酵原料5を用いる方法によっても、同様にメタン生成量が向上する効果を奏することができる。この場合も同様に、メタン生成菌が活性化し、メタン濃度が純化された発熱量の高いバイオガスをさらに生成することができる。これにより、バイオガスの有用性向上を図ることができる。
【0078】
また、気泡発生装置6は、例えば第2収容部12に供給される消化液に、少なくとも酸素を含む気体を吹き込むことにより酸素ナノバブル水を生成し、第2収容部12に供給してもよい。この場合、メタン生成菌が活性化し、メタン生成量の向上により、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスをさらに生成することができる。これにより、バイオガスの有用性向上を図ることができる。
【0079】
本実施形態によれば、原料供給工程S11は、少なくとも酸素を含む気体を吹き込んだ第1発酵原料4’を第2収容部12に供給する。このため、メタン生成菌が活性化し、メタン生成量の向上により、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスをさらに生成することができる。これにより、バイオガスの有用性向上を図ることができる。
【0080】
本実施形態によれば、少なくとも酸素を含む気体を吹き込んだ消化液を第2収容部12に供給する。このため、メタン生成菌が活性化し、メタン生成量の向上により、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスをさらに生成することができる。これにより、バイオガスの有用性向上を図ることができる。
【0081】
(第3実施形態:メタン発酵方法)
図6~
図7を参照して、本実施形態におけるメタン発酵方法の一例を説明する。本実施形態は、メタン発酵方法が原料浸漬工程S13をさらに有する点で、第1実施形態とは異なる。なお、上述の内容と同様の構成については、説明を省略する。
【0082】
メタン発酵装置1の動作は、例えば
図6に示すように、原料浸漬工程S13をさらに備える。原料浸漬工程S13は、原料供給工程S11の前に実施される。原料浸漬工程S13において、メタン発酵装置1は、例えば原料供給工程S11において第2収容部12に第1発酵原料4を供給する方法と同様の方法により、第2収容部12にアルカリ廃水7を供給する。
【0083】
<事前準備>
事前準備として、例えば
図7(a)に示すように、第1収容部11にアルカリ廃水7を収容し、第2収容部12に、アルカリ廃水7で浸漬する前の第2発酵原料5’を収容する。すなわち、第2収容部12を、第2発酵原料5’を浸漬するための浸漬部12’として用いる。ここで、第1収容部11に収容されるアルカリ廃水7を第1発酵原料7aとする。
【0084】
<アルカリ廃水7>
アルカリ廃水7は、第1収容部11に予め収容される。アルカリ廃水7は、セメント、モルタル、コンクリート等の洗浄を行う際に発生する洗浄廃水が用いられる。また、アルカリ廃水7の回収方法としては、例えば沈殿槽から耐薬品性を有する1トン用のポリタンクに取り分けて、浸漬に用いる量だけ、アルカリ耐久性チューブを用いて第1収容部11に投入する。
【0085】
<第2発酵原料5’>
第2発酵原料5’は、アルカリ廃水7で浸漬されていない状態で、第2収容部12に予め収容される。第2発酵原料5’は、第2収容部12内においてアルカリ廃水7で浸漬されることで、アルカリ廃水7で浸漬された第2発酵原料5となる。第2発酵原料5’は、例えばリグノセルロース系バイオマス資源のうち、TS濃度(固形物濃度)が15%以上の固形体が用いられ、例えば籾殻が用いられる。
【0086】
<原料浸漬工程S13>
原料浸漬工程S13において、メタン発酵装置1は、例えば
図7(b)に示すように、送水ポンプ211を動作させてアルカリ廃水7を第1収容部11から排出する。ここで、第1収容部11から排出されるアルカリ廃水7をアルカリ廃水7bとする。アルカリ廃水7bは、原料排出口111を通過して第1収容部11から排出された後、第1接続配管21内を流動して原料供給口121を通過し、第2収容部12に供給される。アルカリ廃水7bは、例えば第2収容部12に収容される第2発酵原料5’の上方から、第2発酵原料5’に接触するように供給される。ここで、第2収容部12に供給されるアルカリ廃水7をアルカリ廃水7cとする。
【0087】
アルカリ廃水7cと接触した第2発酵原料5’は、アルカリ廃水7cの一部が浸透する。メタン発酵装置1は、例えば
図7(c)に示すように、アルカリ廃水7cの少なくとも一部を、分離機構13に設けられた孔130を通過させて、第2収容部12よりも下層に設けられた第1収容部11に落下させる。ここで、第2収容部12から孔130を通過して第1収容部11に落下するアルカリ廃水7をアルカリ廃水7dとする。第1収容部11に流下したアルカリ廃水7dは、アルカリ廃水7aとともに、又はアルカリ廃水7aの代わりに、原料排出口111を通過して第1収容部11から排出され、第1接続配管21内を流動して原料供給口121を通過し、第2収容部12に供給される。
【0088】
上述のとおりアルカリ廃水7の循環を繰り返すことにより、第2発酵原料5’はアルカリ廃水7で浸漬され、第2発酵原料5となる。その後、原料浸漬工程S13で浸漬された第2発酵原料5を収容する第2収容部12に、第1収容部11に収容された第1発酵原料4を供給してメタン発酵させる原料供給工程S11を実施し、さらに、第2収容部12に供給された第1発酵原料4のうち、少なくとも一部を第1収容部11へ落下させることにより第2発酵原料5と分離する分離工程S12を実施する。この場合、アルカリ廃水7で浸漬されたリグノセルロース系バイオマス資源を効率よくメタン発酵させることができる。これにより、VSあたりのバイオガス生成量の向上を図ることができる。また、第2収容部12において、第2発酵原料5’をアルカリ廃水7で浸漬させてメタン発酵するため、メタン発酵槽10とは別の前処理容器が不要となる。このため、メタン発酵装置1の小型化を図ることができる。
【0089】
また、原料浸漬工程S13において、浸漬前の第2発酵原料5’を、上述の気泡発生装置6により少なくとも酸素を含む気体を吹き込んだアルカリ廃水7で浸漬してもよい。この場合、メタン生成菌が活性化し、メタン生成量の向上により、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスをさらに生成することができる。これにより、バイオガスの有用性向上を図ることができる。
【0090】
なお、後述の実施例においては、基質ごとのアルカリ廃水7の浸漬時間を調整するために浸漬後の原料をアルカリ廃水7から取り出す例を説明しているが、これに限定されない。例えば、原料浸漬工程S13終了後は、アルカリ廃水7を、原料排出口111を通過してメタン発酵槽10から排出してもよく、排出せずにメタン発酵のpH調整剤としてそのまま使用してもよい。
【0091】
本実施形態によれば、第2収容部12に収容されたリグノセルロース系バイオマス資源の第2発酵原料5’をアルカリ廃水7で浸漬する原料浸漬工程S13と、原料浸漬工程S13で浸漬された第2発酵原料5を収容する第2収容部12に、第1収容部11に収容された第1発酵原料4を供給してメタン発酵させる原料供給工程S11と、第2収容部12に供給された第1発酵原料4のうち、少なくとも一部を第1収容部11へ落下させることにより第2発酵原料5と分離する分離工程S12と、を備える。このため、アルカリ廃水7で浸漬されたリグノセルロース系バイオマス資源を効率よくメタン発酵させることができる。これにより、VSあたりのバイオガス生成量の向上を図ることができる。また、第2収容部12において、第2発酵原料5をアルカリ廃水7で浸漬させてメタン発酵するため、メタン発酵槽10とは別の前処理容器が不要となる。このため、メタン発酵装置1の小型化を図ることができる。
【0092】
本実施形態によれば、原料浸漬工程S13は、第2発酵原料5’を、少なくとも酸素を含む気体を吹き込んだアルカリ廃水7で浸漬する。このため、メタン生成菌が活性化し、メタン生成量の向上により、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスをさらに生成することができる。これにより、バイオガスの有用性向上を図ることができる。
【実施例0093】
以下に、上述した実施形態のメタン発酵装置1を用いた場合のメタン発酵方法の効果に関する実験結果を説明する。
【0094】
<実施例1:浸漬方法ごとのバイオガス生成量の比較>
本実験では、投入したVS(有機物濃度)1gあたりバイオガス生成量(mL/g-VS)を、第2発酵原料5’の浸漬方法ごとに比較することにより、バイオガス生成量が多い好適な浸漬方法を確認した。浸漬方法としては、浸漬用水(浸漬に用いる液体)を複数用意し、それぞれ第2発酵原料5を浸漬した。浸漬用水としては、アルカリ廃水7と、水道水と、アルカリ水と、を用いた。第2発酵原料5’としては、未粉砕の籾殻と、ミキサーにより粉砕した籾殻と、を用いた。また、気泡発生装置6を用いて浸漬用水に空気を吹き込んで空気ナノバブルを生成する場合のバイオガス生成量についても確認した。
【0095】
未粉砕の籾殻を用いる場合の第2発酵原料5については、空気ナノバブルを生成したアルカリ廃水7で24時間浸漬した未粉砕の籾殻の第2発酵原料5を示す「pretreated URH-AHMCAW(Uncrushed Rice Husk Air-High Mobility Cement Alkaline Wastewater)」、空気ナノバブルを生成したアルカリ水(0.1%水酸化カルシウム溶液)で24時間浸漬した未粉砕の籾殻の第2発酵原料5を示す「pretreated URH-AHMAW(Uncrushed Rice Husk Air-High Mobility Alkaline Water)」、空気ナノバブルを生成した水道水で24時間浸漬した未粉砕の籾殻の第2発酵原料5を示す「pretreated URH-AHMTW(Uncrushed Rice Husk Air-High Mobility Tap Water)」、アルカリ廃水7で24時間浸漬した未粉砕の籾殻の第2発酵原料5を示す「pretreated URH-CAW(Uncrushed Rice Husk Cement Alkaline Wastewater)」、アルカリ水で24時間浸漬した未粉砕の籾殻の第2発酵原料5を示す「pretreated URH-AW(Uncrushed Rice Husk Alkaline Water)」、水道水で24時間浸漬した未粉砕の籾殻の第2発酵原料5を示す「pretreated URH-TW(Uncrushed Rice Husk Tap Water)」、以上を用いた。
【0096】
アルカリ廃水7としては、使用後のコンクリートミキサー内の洗浄廃水を、集水槽、濾過槽、及び沈殿槽を通過させた後で、中和槽を通過する前の廃水を用いた。
【0097】
本実験で用いるアルカリ廃水7をイオンクロマトグラフィーにより調べたところ、アルカリ廃水7中の微量元素組成は、Tiが37.87mg/L、Srが1.21mg/L、Liが0.31mg/L、Alが0.26mg/L、Crが0.02mg/Lであった。なお、Mg、Co、Cu、Fe、Ni、Zn、Cd、Pbは、検出限界以下であった。このうち、Ti、Sr、Liは、メタン発酵に用いる従来のアルカリ水には含まれない成分と考えられる。「Combinations of alkaline hydrogen peroxide and lithium chloride/N,N-dimethylacetamide pretreatments of corn stalk for improved biomethanation, Environmental Research Volume 186, July 2020, 109563」に記載のAliら(2020)の研究では、LiClをリグノセルロースの前処理に使用することで、リグニン分解力が高くなり、その基質でメタン発酵を行うと、メタン生産が改善されたと報告されている。このことから、前処理されたリグノセルロース系バイオマスを用いる場合、メタン発酵の初期段階において微生物や酵素の成長が促進され、加水分解速度や酸分解生成速度が促進されたと考える。このため、Li成分を含むアルカリ廃水7が、バイオガス生産量向上、メタンガス生成速度向上及びメタン濃度の向上に寄与しているものと考えられる。
【0098】
また、本実験で用いるアルカリ廃水7中の主なイオン成分は、Na+が0.002~0.003%、K+が0.002~0.01%、Ca2+が0.05~0.2%、Cl-が0.001%、SO42-が0.03~0.1%であった。
【0099】
アルカリ水としては、市販の99.9%水酸化カルシウム試薬を調製して0.1%水酸化カルシウム溶液を用いた。
【0100】
具体的な浸漬方法としては、メタン発酵装置1とは別の浸漬容器に、籾殻と浸漬用水との重量比が1:1とになるように投入し、容器のふたを閉めた。その後、浸漬温度35℃にセットしたインキュベーターに置き、浸漬時間24hの間放置した。浸漬時間経過後、浸漬容器内の液体を別の容器に取り出し、浸漬容器内の籾殻を浸漬後の第2発酵原料5として用いた。
【0101】
メタン発酵の条件は、TS濃度15%程度、発酵温度35℃、発酵期間55日間とした。また、メタン発酵槽10内がpH7~8となるように、アルカリ廃水7を投入して調整した。また、浸漬後の第2発酵原料5と、鶏ふんと、消化汚泥(種菌)と、の重量比を3:1:0.8で調整した。なお、本実験で用いる鶏ふんとしては、第2発酵原料5を基質とした場合のバイオガス生成量を計測するために、約2か月間室温で放置し、自然分解によりTS(固形物濃度)とVS(有機物濃度)と、C/N比とを極力低下させものを使用した。
【0102】
気泡発生装置6としては、pH10以上のアルカリ廃水7に対応可能な公知のナノバブル発生装置を用いた。気泡発生装置6で液体に空気を吹き込むことにより、ナノバブル水を生成した。
【0103】
【0104】
未粉砕の籾殻と、各浸漬用水とを組み合わせた基質(Substrates)ごとのバイオガス生成量(Cumulative biogas production)は、
図8のとおりである。また、
図8に関して、メタン発酵55日後のVS1gあたりバイオガス生成量の具体的な数値を[表1]に示す。
【0105】
【0106】
本実験によれば、空気ナノバブルが生成された浸漬用水で浸漬した基質である「pretreated URH-AHMCAW(本発明例1)」、「pretreated URH-AHMAW(比較例1)」、及び「pretreated URH-AHMTW(比較例2)」のバイオガス生成量の方が、空気ナノバブルを含まない浸漬用水で浸漬した基質である「pretreated URH-CAW(本発明例2)」、「pretreated URH-AW(比較例3)」及び「pretreated URH-TW(比較例4)」のバイオガス生成量よりも多い傾向にあった。空気ナノバブルを含む浸漬用水で浸漬した基質においては、アルカリ廃水7で浸漬した本発明例1の基質の方が、アルカリ水で浸漬した比較例1、及び水道水で浸漬した比較例2の基質よりも、バイオガス生成量が多い傾向にあった。また、空気ナノバブルを含まない浸漬用水で浸漬した基質においては、アルカリ廃水7で浸漬した本発明例2の基質の方が、アルカリ水で浸漬した比較例3、及び水道水で浸漬した比較例4の基質よりも、バイオガス生成量が多い傾向にあった。
【0107】
また、本実験によれば、メタン発酵55日後のVS1gあたりバイオガス生成量は、本発明例1が99mL、比較例1が83mL、比較例2が77mLであった。すなわち、VS1gあたりのバイオガス生成量は、空気ナノバブルを含むアルカリ廃水7で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合、空気ナノバブルを含むアルカリ水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合と比べて約19%増加し、空気ナノバブルを含む水道水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合と比べて約29%増加する。
【0108】
また、本実験によれば、メタン発酵55日後のVS1gあたりのバイオガス生成量は、本発明例2が75mL、比較例3が73mL、比較例4が68mLであった。すなわち、VS1gあたりのバイオガス生成量は、アルカリ廃水7で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合、気泡発生装置6により空気を吹き込まなくとも、アルカリ水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合と比べて約3%増加し、水道水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合と比べて約10%増加する。また、気泡発生装置6により空気を吹き込んだアルカリ廃水7で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合、空気を吹き込まないアルカリ廃水7で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合と比べて約32%増加する。
【0109】
粉砕後の籾殻と、各浸漬用水とを組み合わせた基質(Substrates)ごとのバイオガス生成量(Cumulative biogas production)は、
図9のとおりである。また、
図9に関して、メタン発酵55日後のVS1gあたりバイオガス生成量の具体的な数値を[表2]に示す。なお、「increase rate(増加率)」とは、[表1]において未粉砕の原料を同様の浸漬方法で浸漬した基質を用いた場合のバイオガス生成量に対する、本実施例のバイオガス生成量の増加率を示している。
【0110】
【0111】
本実験によれば、バイオガス生成量が最も多い基質は、空気ナノバブルを含むアルカリ廃水7で浸漬した「pretreated CRH-AHMCAW(本発明例3)」であった。未粉砕の籾殻の場合と異なり、空気ナノバブルを含む「pretreated CRH-AHMAW(比較例5)」及び「pretreated CRH-AHMTW(比較例6)」と、空気ナノバブルを含まない「pretreated CRH-CAW(本発明例4)」、「pretreated CRH-AW(比較例7)」及び「pretreated CRH-TW(比較例8)」と、のバイオガス生成量が同程度であった。
【0112】
また、本実験によれば、メタン発酵55日後のVS1gあたりのバイオガス生成量は、本発明例3が102mL、比較例5が88mL、比較例6が88mL、本発明例4が86mL、比較例7が85mL、比較例8が90mLであった。何れにおいても、未粉砕の第2発酵原料5を用いる場合と比べてバイオガス生成量が増加した。しかしながら、粉砕後の第2発酵原料5を用いた比較例5~8のバイオガス生成量は、未粉砕の第2発酵原料5を用いた本発明例1のバイオガス生成量よりも低い値であった。ここで、未粉砕の籾殻を基質とする本発明例1は、粉砕後の籾殻を基質とする比較例5、比較例6、本発明例4、比較例7。及び比較例8よりもバイオガス生成量が多い。すなわち、空気ナノバブルを含むアルカリ廃水7で浸漬することで、第2発酵原料5を粉砕することを要しない。このため、第2発酵原料5を粉砕するための粉砕機を用いる必要がない。これにより、メタン発酵装置1の小型化を図ることができる。
【0113】
以上の実験結果によれば、本発明は、アルカリ廃水7で浸漬されたリグノセルロース系バイオマス資源を効率よくメタン発酵させることができ、VSあたりのバイオガス生成量の向上を図ることができる。
【0114】
<実施例2:消化液を循環させる場合の浸漬方法ごとのバイオガス生成量の比較>
次に、実施例1と同様の基質のうち未粉砕の基質を用いて、メタン発酵により生じた消化液を第1収容部11と第2収容部12との間で循環させる場合について、投入したVS1gあたりバイオガス生成量(mL/g-VS)を測定し、実施例1と比較した。
【0115】
浸漬方法としては、メタン発酵装置1に備わる第2収容部12に、籾殻と浸漬用水との重量比が1:1とになるように投入した。その後、浸漬温度35℃となるようにメタン発酵槽10内の温度を調整し、籾殻投入から12時間後に、第2収容部12から分離機構13を介して第1収容部11に落下した浸漬用水を含む、第1収容部11内の液体の約8割を、第2収容部12に圧送し、さらに12時間放置した。すなわち、浸漬時間は実施例1と同様に24時間とした。また、第2発酵原料5について、浸漬用水で浸漬しない未粉砕の籾殻の第2発酵原料5を示す「Untreated URH(Uncrushed Rice Husk)」を追加した。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0116】
本実験の結果として、メタン発酵55日後のVS1gあたりバイオガス生成量の具体的な数値を[表3]に示す。なお、「increase rate(増加率)」とは、実施例1において同様の基質を用いた場合のバイオガス生成量に対する本実施例のバイオガス生成量の増加率を示している。
【0117】
【0118】
本実験によれば、メタン発酵55日後のVS1gあたりバイオガス生成量は、本発明例5が123mLであった。これは、第2発酵原料5を浸漬しない比較例13のバイオガス生成量と比較して約84%の増加に相当する。また、VS1gあたりのバイオガス生成量は、空気ナノバブルを含むアルカリ廃水7で浸漬した第2発酵原料5について消化液を循環させて発酵させる場合(本発明例5)、空気ナノバブルを含むアルカリ廃水7で浸漬した第2発酵原料5について消化液を循環させずに発酵させる場合(本発明例1)と比べて約24.2%増加した。また、アルカリ廃水7で浸漬した第2発酵原料5について消化液を循環させて発酵させる場合(本発明例6)、アルカリ廃水7で浸漬した第2発酵原料5について消化液を循環させずに発酵させる場合(本発明例2)と比べて約20.0%増加した。同様に、アルカリ廃水7以外の浸漬用水で浸漬した第2発酵原料5について消化液を循環させて発酵させる比較例9~13についても、消化液を循環させずに発酵させる比較例1~4と比べてバイオガス生成量が増加した。
【0119】
また、本実験の結果として、生成したバイオガス中のメタンガス濃度について、メタン発酵日数別の推移に関する具体的な数値を[表4]に示す。
【0120】
【0121】
本実験によれば、本発明例5のメタンガス濃度は、Day15時点で80%超まで濃縮されており、比較例9~13及び本発明例6よりも高い濃度を維持している。また、本発明例6のメタンガス濃度は、Day25時点で約80%まで濃縮されており、比較例11~13よりも高い濃度を維持している。すなわち、空気ナノバブルを含むアルカリ廃水7で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(本発明例5)、メタンガス濃度は、空気ナノバブルを含むアルカリ水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(比較例9)、空気ナノバブルを含む水道水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(比較例10)、空気ナノバブルを含まない浸漬用水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(本発明例6、比較例11~12)、及び浸漬用水で浸漬しない第2発酵原料5を用いる場合(比較例13)と比べて高い傾向にあることがわかった。また、空気ナノバブルを含まない場合においても同様に、アルカリ廃水7で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(本発明例6)、メタンガス濃度は、アルカリ水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(比較例11)、水道水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(比較例12)及び浸漬用水で浸漬しない第2発酵原料5を用いる場合(比較例13)と比べて高い傾向にあることがわかった。
【0122】
以上の実験結果によれば、本発明は、アルカリ廃水7で浸漬されたリグノセルロース系バイオマス資源をさらに効率よくメタン発酵させることができ、VSあたりのバイオガス生成量のさらなる向上を図ることができる。また、メタンガス濃度が高められ、バイオガスの有用性向上を図ることができる。
【0123】
<実施例3:浸漬方法ごとの加水分解速度の比較>
次に、実施例1と同様の基質のうち未粉砕の基質を用いて、メタン発酵の発酵速度を測定し、基質ごとに比較した。実験条件は、実施例1と同様とした。
【0124】
メタン発酵速度の評価方法としては、メタン発酵2日後と7日後とで、「Soluble carbohydrates(可溶性炭水化物)」と「Volatile Fatty Acid(揮発性有機酸)」の生成量を測定した結果に基づき、メタン発酵の工程のうち加水分解の速度と酸生成工程の速度とを比較した。可溶性炭水化物についてはフェノール硫酸法に従い分光光度計を用いて測定し、揮発性有機酸についてはGC/FID(ガスクロマトグラフィー)で測定し、測定結果を炭素ベースに換算した。なお、可溶性炭水化物は、浸漬させた籾殻をメタン発酵の炭素源として基質に用いる場合に、加水分解速度が速いほど、短期間で多量に溶出する。また、揮発性有機酸は、可溶性炭水化物が酸生成工程を経て分解された酢酸であり、発酵が進むほど多量に生成される。
【0125】
本実験の結果として、メタン発酵2日後と7日後の可溶性炭水化物生成量及び揮発性有機酸生成量の具体的な数値を[表5]に示す。
【0126】
【0127】
本実験によれば、本発明例7の可溶性炭水化物生成量及び揮発性有機酸生成量は、Day2において比較例14及び比較例15よりも高い。また、本発明例8の可溶性炭水化物生成量及び揮発性有機酸生成量は、Day2において比較例16及び比較例17よりも高い。すなわち、空気ナノバブルを含むアルカリ廃水7で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(本発明例7)、メタン発酵速度は、空気ナノバブルを含むアルカリ水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(比較例14)、空気ナノバブルを含む水道水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(比較例15)、空気ナノバブルを含まない浸漬用水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(本発明例8、比較例16)、及び浸漬用水で浸漬しない第2発酵原料5を用いる場合(比較例17)と比べて高い傾向にあることがわかった。また、空気ナノバブルを含まない場合においても同様に、アルカリ廃水7で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(本発明例8)、メタン発酵速度は、水道水で浸漬した第2発酵原料5を用いる場合(比較例16)及び浸漬用水で浸漬しない第2発酵原料5を用いる場合(比較例17)と比べて高い傾向にあることがわかった。
【0128】
以上の実験結果によれば、本発明は、アルカリ廃水7で浸漬されたリグノセルロース系バイオマス資源をメタン発酵させることにより、短期間でより多くのバイオガスを生成することができる。これにより、バイオガスの生成効率の向上を図ることができる。
【0129】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。