(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165181
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】加工装置、および加工方法
(51)【国際特許分類】
B21D 5/01 20060101AFI20241121BHJP
B21D 11/20 20060101ALI20241121BHJP
B21D 7/024 20060101ALI20241121BHJP
B21D 53/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B21D5/01 Q
B21D11/20 A
B21D7/024
B21D53/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081106
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】592188911
【氏名又は名称】株式会社菊地機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100166051
【弁理士】
【氏名又は名称】駒津 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】菊地 浩久
【テーマコード(参考)】
4E063
【Fターム(参考)】
4E063AA01
4E063AA18
4E063BC05
4E063DA04
4E063EA04
4E063GA01
4E063MA21
(57)【要約】
【課題】 作業領域全体の面積を抑制することができ、さらにより短時間で加工することができる加工装置、および加工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 金属製板材10における長手方向の端部と端部との間で、固定手段110が金属製板材10を一定の姿勢で固定し、固定手段110が固定した金属製板材10における長手方向の両端部から少なくとも2つの第一加工手段120または第二加工手段130が曲げ加工を施し、加工手段を3次元方向にそれぞれ独立して移動手段140が移動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製板材を曲げ加工する加工装置において、
前記金属製板材における長手方向の端部と端部との間で、前記金属製板材を一定の姿勢で固定する固定手段と、
前記固定手段が固定した前記金属製板材における長手方向の両端部から曲げ加工を施す少なくとも2つの加工手段と、
前記加工手段を3次元方向にそれぞれ独立して移動させる移動手段と、
を備えることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記加工手段は、
前記金属製板材を板幅方向に曲げ加工を施す板幅方向曲げ加工ユニット、
であることを特徴とする請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
前記板幅方向曲げ加工ユニットは、
前記金属製板材における曲げ加工を施す支点の内側縁を曲面で支持する板幅方向曲げ用芯金と、
前記板幅方向曲げ用芯金を回転軸として前記金属製板材における曲げ加工を施す支点の外側縁を旋回しながら曲面で曲げ力を与える加工ローラーと、
を備えることを特徴とする請求項2記載の加工装置。
【請求項4】
前記板幅方向曲げ加工ユニットは、
前記金属製板材における曲げ加工を施す支点付近を、前記金属製板材の板厚上下方向から挟んで押圧する支点押圧部、
を備えることを特徴とする請求項2記載の加工装置。
【請求項5】
前記板幅方向曲げ加工ユニットは、
前記金属製板材における曲げ加工を施す支点よりも、前記金属製板材における長手方向の中心側外側縁を支持し、板幅方向の曲げ加工による反力を受ける外側縁反力受構造、
を備えることを特徴とする請求項2記載の加工装置。
【請求項6】
前記加工手段は、
前記金属製板材を板厚方向に曲げ加工を施す板厚方向曲げ加工ユニット、
であることを特徴とする請求項1記載の加工装置。
【請求項7】
前記板厚方向曲げ加工ユニットは、
前記金属製板材における曲げ加工を施す支点の内側面を曲面で支持する板厚方向曲げ芯金と、
前記板厚方向曲げ芯金を回転軸として前記金属製板材における曲げ加工を施す支点の外側面を旋回しながら曲面で曲げ力を与える加工芯と、
を備えることを特徴とする請求項6記載の加工装置。
【請求項8】
前記板厚方向曲げ加工ユニットは、
前記金属製板材における曲げ加工を施す支点よりも、前記金属製板材における長手方向の中心側外側面を支持し、板厚方向の曲げ加工による反力を受ける外側面反力受構造、
を備えることを特徴とする請求項6記載の加工装置。
【請求項9】
前記移動手段によって3次元方向に移動可能な複数の前記固定手段を具備し、
前記固定手段は、
前記加工手段が前記金属製板材に曲げ加工を施す際の加工部付近、あるいは前記金属製板材における長手方向の両端部を固定すること、
を特徴とする請求項1記載の加工装置。
【請求項10】
金属製板材を曲げ加工する加工方法において、
前記金属製板材における長手方向の端部と端部との間で、固定手段が前記金属製板材を一定の姿勢で固定する工程と、
前記固定手段が固定した前記金属製板材における長手方向の両端部から少なくとも2つの加工手段が曲げ加工を施す工程と、
前記加工手段を3次元方向にそれぞれ独立して移動手段が移動させる工程と、
を備えることを特徴とする加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置、および加工方法に関し、特に金属製板材を曲げ加工する加工装置、および加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、主に配電盤や制御盤における各部分と電源とを接続する部材としてバスバーが使われている。バスバーはたとえば銅などを素材とした長尺金属製板材に、曲げ加工や孔などの打抜き加工を施すことで形成される(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的に、特許文献1で開示されるバスバー加工装置では、平板状電気機器用バスバーの厚みにほぼ等しい間隙を介して平行に配置された2枚の側板と、この両側板に貫通して固定された固定軸と、両側板間の固定軸に取り付けられバスバーの縦曲げの曲げ半径を決定するガイドローラーと、両側板の外側に配置されそれぞれの一端部が固定軸に回動自在に支持された1対のスイングレバーと、この両レバーの他端部に連結され両レバーを往復回動させる駆動装置と、両レバーの中央部間に支持されかつローラーとの対向面が平面状に形成され、両側板間に挟み込まれると共にローラーとの間に挿入されたバスバーに両レバーの回動に従ってバスバーの外側縁をすべりながら縦曲げ力を与えるすべり板とを備えている。
【0004】
そして平板状電気機器用バスバーを2枚の側板間に挟み込むと共にガイドローラーとすべり板との間である挿入口に挿入し、バスバーの一端部を固定した状態で駆動装置を駆動して両レバーを回動させると、両レバーの回動に従ってすべり板がバスバーの外側縁を押圧しながらすべり、すべり板によりバスバーに縦曲げ力が与えられ、バスバーがその内側縁をガイドローラーの周面に沿わせて縦曲げ加工され、排出口から加工されたバスバーが排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のようなバスバー加工装置では、長尺な金属製板材を加工する場合に、加工するために必要な作業領域が大きくなってしまう問題があった。
図6は、従来のバスバー加工装置に必要な作業領域を示す概念図である。
図6に示すように、加工前の金属製板材10は、従来のバスバー加工装置20の挿入口21から挿入され、曲げ加工が施されることによって加工後の金属製板材10が形成されて排出口から排出される。
【0007】
ここで、加工前の金属製板材10の全長を2000mmとし、バスバー加工装置20における加工前の金属製板材10を挿入する挿入口21から、加工後の金属製板材10を排出する排出口22までの全長を1000mmとし、加工後の金属製板材10の全長が1800mmだとすると、加工に必要な作業領域の全長は少なくとも4800mmが必要とされるため多くの作業領域が必要になってしまう。
【0008】
また作業領域は全長方向だけではなく、高さや幅方向にも大きく必要とされる。排出口から排出された加工後の金属製板材10は、その加工された形状により様々な形状に金属製板材10が加工される。
【0009】
バスバー加工装置20では金属製板材10を様々な方向に曲げ加工を施すため、これに伴い排出口から排出された加工後の金属製板材10の先端側が様々な方向に曲げられる。このため加工後の金属製板材10の先端側が高さや幅方向の様々な方向に大きく振れて暴れてしまうことになる。さらに加工が終盤に近づき、曲げの角度が大きければ大きいほど振れ幅は
図6の点線で示すように、さらに大きくなってしまう。
【0010】
つまり作業領域を全長方向だけではなく、高さや幅方向にも大きく取っておかなければ、大きく振れて暴れた加工後の金属製板材10の先端側が周囲の構造物などと接触して、加工後の金属製板材10の形状が変形してしまうおそれがある。
【0011】
たとえ加工後の金属製板材10の先端側が周囲の構造物などと接触しなかったとしても、金属自体の重さや金属製板材10の先端側が大きく振れて暴れることによる遠心力などで加工後の金属製板材10の形状が変形してしまうことも考えられる。
【0012】
また、この加工に必要な全領域のうち、加工前の金属製板材10と加工後の金属製板材10とによる領域が約8割であり、バスバーを製造するための加工領域は2割であるため、単位面積あたりの生産能力が悪い問題もある。
【0013】
さらに生産能力が悪いだけでなく、挿入口21から挿入した加工前の金属製板材10のすべてが排出口22から排出されるまで加工後の金属製板材10が完成されないため、加工する金属製板材の長さが長くなれば長くなるほど多くの時間を要する問題がある。またバスバー加工装置20が1つの金属製板材10を加工している間は、他の金属製板材10を加工することができないため生産効率も悪い。
【0014】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、作業領域全体の面積を抑制することができ、さらにより短時間で加工することができる加工装置、および加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明では上記問題を解決するために、金属製板材を曲げ加工する加工装置において、前記金属製板材における長手方向の端部と端部との間で、前記金属製板材を一定の姿勢で固定する固定手段と、前記固定手段が固定した前記金属製板材における長手方向の両端部から曲げ加工を施す少なくとも2つの加工手段と、前記加工手段を3次元方向にそれぞれ独立して移動させる移動手段とを備えることを特徴とする加工装置が提供される。
【0016】
これにより、金属製板材における長手方向の端部と端部との間で、固定手段が金属製板材を一定の姿勢で固定し、固定手段が固定した金属製板材における長手方向の両端部から少なくとも2つの加工手段が曲げ加工を施し、加工手段を3次元方向にそれぞれ独立して移動手段が移動させる。
【0017】
また、本発明では、金属製板材を曲げ加工する加工方法において、前記金属製板材における長手方向の端部と端部との間で、固定手段が前記金属製板材を一定の姿勢で固定する工程と、前記固定手段が固定した前記金属製板材における長手方向の両端部から少なくとも2つの加工手段が曲げ加工を施す工程と、前記加工手段を3次元方向にそれぞれ独立して移動手段が移動させる工程とを備えることを特徴とする加工方法が提供される。
【0018】
これにより、金属製板材における長手方向の端部と端部との間で、固定手段が金属製板材を一定の姿勢で固定し、固定手段が固定した金属製板材における長手方向の両端部から少なくとも2つの加工手段が曲げ加工を施し、加工手段を3次元方向にそれぞれ独立して移動手段が移動させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の加工装置、および加工方法によれば、金属製板材における長手方向の端部と端部との間で、固定手段が金属製板材を一定の姿勢で固定し、固定手段が固定した金属製板材における長手方向の両端部から少なくとも2つの加工手段が曲げ加工を施し、加工手段を3次元方向にそれぞれ独立して移動手段が移動させるので、固定された金属製板材の近辺領域だけで加工作業ができる。このため加工前の金属製板材を加工装置に挿入するための領域、または加工後の金属製板材を排出する領域のうち、いずれかの領域を削減できる。
【0020】
また固定手段が固定した金属製板材における長手方向の両端部から、加工手段が曲げ加工を施していくので、加工に要する時間を大幅に抑制することができる。これにより作業効率と単位面積あたりの生産能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施の形態に係る加工装置全体を示す上面図である。
【
図2】第一加工手段が金属製板材に曲げ加工を施す様子を示す図である。
【
図3】移動手段が加工手段を移動させる様子を示す図である。
【
図4】第二加工手段が金属製板材に曲げ加工を施す様子を示す図である。
【
図5】加工装置に加工前の金属製板材を設置した状態から、加工後の金属製板材が形成されるまでの流れを示す上面図である。
【
図6】従来のバスバー加工装置に必要な作業領域を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る加工装置全体を示す上面図である。
本実施の形態に係る加工装置100は、たとえば配電盤や制御盤の各部位と電源とを接続するための導体であるバスバーを形成するための装置であって、たとえば銅などの金属製板材10を、所望の形状に曲げ加工を施すためのものである。
【0023】
図1に示すように、加工装置100は金属製板材10を所望の形状に曲げ加工を施すための装置であって、金属製板材10における長手方向の端部と端部との間で、金属製板材10を一定の姿勢で支持して固定するための固定手段110、固定手段110が固定した金属製板材10における長手方向の両端部から曲げ加工を施すための第一加工手段120および第二加工手段130、および第一加工手段120と第二加工手段130と固定手段110とを3次元方向にそれぞれ独立して移動させるための移動手段140を備えている。
【0024】
なお、ここでは図示しないが、加工装置100を構成する固定手段110、第一加工手段120、第二加工手段130、および移動手段140は、たとえばサーボモーターなどの原動機の回転力によりそれぞれが動作し、その動作は図示しない制御装置によって制御されている。
【0025】
固定手段110は金属製板材10を一定の姿勢で支持して固定するためのものであって、後述するように平面2次元方向(金属製板材10の長手方向および幅方向)、および上下方向の3次元方向に移動させる移動手段140によって、加工を施す金属製板材10の幅方向外側から金属製板材10を任意の場所で挟持し、金属製板材10を一定の姿勢で支持して固定することができる。
【0026】
本実施の形態では、5つの固定手段110が任意の場所で金属製板材10を一定の姿勢で支持して固定している。また固定手段110は、後述する第一加工手段120と第二加工手段130とが加工する位置によって任意の場所に移動して金属製板材10を支持して固定することができる。
【0027】
第一加工手段120は、固定手段110によって固定された金属製板材10における長手方向の両端部から曲げ加工を施すためのものであって、具体的には金属製板材10を板幅方向に曲げ加工を施す板幅方向曲げ加工ユニットである。
【0028】
第一加工手段120は、板幅方向曲げ用芯金122、加工ローラー123、支点押圧部124、および外側縁反力受構造125を備えている。具体的な構造は後述する。
なお本実施の形態では、板幅方向曲げ加工ユニットである2つの第一加工手段120を備えており、一方の第一加工手段120は金属製板材10における板幅方向一方側の一端側に設置され、他方の第一加工手段120は金属製板材10における板幅方向他方側の他端側に設置される。
【0029】
また第一加工手段120も固定手段110と同様に、3次元方向に移動させる移動手段140によって、加工を施す金属製板材10の幅方向外側から金属製板材10を任意の部位を任意の板幅方向に曲げ加工を施すことができる。
【0030】
第二加工手段130は、固定手段110によって固定された金属製板材10における長手方向の両端部から曲げ加工を施すためのものであって、具体的には金属製板材10を板厚方向に曲げ加工を施す板厚方向曲げ加工ユニットである。
【0031】
第二加工手段130は、板厚方向曲げ芯金131、加工芯132、および外側面反力受構造133を備えている。具体的な構造は後述する。
なお本実施の形態では、板厚方向曲げ加工ユニットである2つの第二加工手段130を備えており、一方の第二加工手段130は金属製板材10における板幅方向一方側の他端側に設置され、他方の第二加工手段130は金属製板材10における板幅方向他方側の一端側に設置される。
【0032】
また第二加工手段130も固定手段110や第一加工手段120と同様に、3次元方向に移動させる移動手段140によって、加工を施す金属製板材10の幅方向外側から金属製板材10を任意の部位を任意の板厚方向に曲げ加工を施すことができる。
【0033】
上記のように第一加工手段120および第二加工手段130を配置することで、金属製板材10の中心から一方側と他方側とで、金属製板材10を介して第一加工手段120と第二加工手段130とが対向する位置に配置される。これにより金属製板材10における一方側と他方側との両側から板幅方向に曲げ加工と板厚方向に曲げ加工との曲げ加工を交互または同時に行うことができる。
【0034】
移動手段140は、固定手段110、第一加工手段120および第二加工手段130を平面2次元方向および上下方向の3次元方向に移動させるためのものである。
たとえば固定手段110を移動させる移動手段140は、金属製板材10の下面側で長手方向に敷設したレール上をスライド移動する長手方向スライド移動機構と、長手方向に移動する固定手段110をさらに板幅方向にスライド移動させる板幅方向スライド移動機構と、さらにその固定手段110を上下方向に昇降移動させる昇降移動機構によって構成される。
【0035】
また第一加工手段120および第二加工手段130を移動させる移動手段140は、金属製板材10の板幅方向一方側と板幅方向他方側とに敷設したレール上をスライド移動する長手方向スライド移動機構と、長手方向に移動する固定手段110をさらに板幅方向にスライド移動させる板幅方向スライド移動機構と、さらにその固定手段110を上下方向に昇降移動させる昇降移動機構によって構成される。
【0036】
この移動手段140により、固定手段110、第一加工手段120、および第二加工手段130を平面2次元方向および上下方向の3次元方向の任意の位置に、それぞれが独立して移動することができる。
【0037】
なお本実施の形態では、移動手段140が敷設したレール上をスライド移動する例で説明したが、この他の移動手段140の例を上げると、固定手段110、第一加工手段120、および第二加工手段130にたとえば車輪などの自走手段を設け、それぞれが独立して任意の位置に移動することもできる。
【0038】
次に、本実施の形態に係る加工装置100による金属製板材10の加工方法を説明する。
まず加工装置100が金属製板材10を固定する。具体的には、所望の長さに切断した金属製板材10を固定手段110によって固定させる。固定手段110の金属製板材10を固定する位置は任意に設定することができるが、ここでは1つの固定手段110が金属製板材10の中央部を固定し、中央部から一端側および他端側に少し離れた位置を2つの固定手段110がそれぞれの位置で金属製板材10を固定し、さらに2つの固定手段110で一端側端部および他端側端部を固定している。
【0039】
次に、第一加工手段120および第二加工手段130をそれぞれ一端側と他端側とに移動させて、金属製板材10の一端側と他端側とから所望の形状に加工するための曲げ加工を第一加工手段120または第二加工手段130で加工していく。
【0040】
第一加工手段120および第二加工手段130による曲げ加工は、一端側から中央部に向けて、あるいは他端側から中央部に向けて移動手段140によって第一加工手段120および第二加工手段130を中央部に向けて移動させながら曲げ加工を施していく。
【0041】
これにより金属製板材10は、両端部から順に中央部に向けて所望の曲げ加工が施されていく。つまり加工が施された金属製板材10は第一加工手段120および第二加工手段130よりも両端外側に形成されていくことになる。これにより第一加工手段120および第二加工手段130による曲げ加工が、金属製板材10に沿った直線上で行うことができる。
【0042】
ここで第一加工手段120および第二加工手段130による曲げ加工を、中央部から一端側に向けて、あるいは中央部から他端側に向けて移動手段140によって第一加工手段120および第二加工手段130を両端外側に向けて移動させながら曲げ加工を施していく場合を考える。
【0043】
この場合、金属製板材10の中央部から両端外側に向けて曲げ加工が施されていくので、曲げ加工の方向によっては一端側端部および他端側端部がどの方向に向いているかわからない。この状態で金属製板材10を曲げ加工するためには、一端側端部または他端側端部が曲げ加工によって向けられた方向に合わせて第一加工手段120および第二加工手段130を移動させながら曲げ加工をするしかない。すなわち、金属製板材10の中央部から両端外側に向けて曲げ加工を施すと、第一加工手段120および第二加工手段130による曲げ加工が、金属製板材10に沿った直線上で行うことができない。
【0044】
このように本実施の形態では、第一加工手段120および第二加工手段130を両端外側から中央部に向けて移動させながら曲げ加工を施していくことで、第一加工手段120および第二加工手段130による曲げ加工が、金属製板材10に沿った直線上で行うことができるので、無駄な第一加工手段120および第二加工手段130の移動がなくなり、作業効率を向上させることができる。
【0045】
さらに加工装置100は、固定手段110によって固定された金属製板材10を、両端外側から中央部に向けて第一加工手段120および第二加工手段130を移動させながら曲げ加工を施していくので、長手方向の作業領域の全長が金属製板材10の長さ程度に抑えることができる。このため従来のバスバー加工装置20よりも作業領域を大幅に抑制することができ、単位面積あたりの生産能力を向上させることができる。
【0046】
また第一加工手段120および第二加工手段130を両端外側から中央部に向けて移動させながら同時に曲げ加工を施していくので加工時間を約半分にすることができ、加工時間を大幅に圧縮することができる。したがって生産能力を大幅に向上することができる。
【0047】
なお、第一加工手段120および第二加工手段130を両端外側から中央部に向けて移動させながら曲げ加工を施して行く際に、固定手段110は金属製板材10を任意の位置で固定することができる。
【0048】
たとえば複数の固定手段110のうち、一つの固定手段110は、第一加工手段120および第二加工手段130が曲げ加工を施す加工部付近で金属製板材10を固定することもでき、あるいは加工が施されて、上下左右に振れてしまう金属製板材10の両外側端部を固定することもできる。
【0049】
図2は、第一加工手段が金属製板材に曲げ加工を施す様子を示す図である。
図2(A)は、第一加工手段120が金属製板材10に曲げ加工を施す様子を示す上面図である。
【0050】
図2(A)に示すように、第一加工手段120は金属製板材10を板幅方向に曲げ加工を施す板幅方向曲げ加工ユニットであって、いわゆる金属製板材10に対してエッジワイズ加工と呼ばれる加工を施すためのものである。
【0051】
第一加工手段120は、金属製板材10を載せるためのベース部121、エッジワイズ加工を施す支点内側を する板幅方向曲げ用芯金122、金属製板材10に曲げ力を与える加工ローラー123、金属製板材10におけるエッジワイズ加工を施す支点付近を押圧する支点押圧部124、および板幅方向のエッジワイズ加工による反力を受ける外側縁反力受構造125を備えている。
【0052】
ベース部121は加工を施す金属製板材10を載置するためのものであって、いわゆる平面状の台座である。ベース部121の大きさは、加工する金属製板材10の板幅によって任意の大きさに設定することができる。
【0053】
板幅方向曲げ用芯金122は、金属製板材10におけるエッジワイズ加工を施す際に、支点となる金属製板材10内側縁を支持する芯材であって、加工する所望の曲げ半径で形成されたガイドローラーである。
【0054】
加工ローラー123は、金属製板材10におけるエッジワイズ加工を施す際に、金属製板材10におけるエッジワイズ加工を施す支点の外側縁を旋回しながら、曲げ力を金属製板材10に与えるためのガイドローラーである。
【0055】
支点押圧部124は、金属製板材10におけるエッジワイズ加工を施す支点付近を、金属製板材10の板厚上下方向から挟んで押圧するためのものである。具体的に支点押圧部124は、板幅方向曲げ用芯金122の上部に設けられており、板幅方向曲げ用芯金122に添って上下に昇降する昇降機構を備えている。そして支点押圧部124は少なくともエッジワイズ加工を施す金属製板材10板幅よりも大きな平面状の底部が設けられている。
【0056】
金属製板材10を板幅方向に曲げると、加工部付近における金属製板材10の内側では材料が収縮し、金属製板材10の外側では材料が引っ張られるので、加工部付近では金属製板材10が、たとえば板厚方向に隆起するなどの様々な変形が起こる。
【0057】
このとき支点押圧部124が金属製板材10におけるエッジワイズ加工を施す支点付近を、板幅方向曲げ用芯金122に添って下降した支点押圧部124の平面状の底部と、金属製板材10が載置されるベース部121とで、金属製板材10を板厚上下方向から挟んで押圧しながら、エッジワイズ加工を施すことで、加工部付近における金属製板材10が様々な変形を抑制することができる。
【0058】
外側縁反力受構造125は、金属製板材10におけるエッジワイズ加工を施す支点よりも、金属製板材10における長手方向の中心側外側縁を支持し、板幅方向のエッジワイズ加工による反力を受けるためのものである。
【0059】
外側縁反力受構造125は、本実施の形態では固定手段110と押当板材125Aとで構成される。この他、金属製板材10におけるエッジワイズ加工を施す支点よりも、金属製板材10における長手方向の中心側外側縁を支持して板幅方向のエッジワイズ加工による反力を受けることができれば他の形態でもよい。
【0060】
具体的に、まず固定手段110は、少なくとも金属製板材10の板幅の2倍に押当板材125Aの板厚を加算した幅よりも広い開口幅で金属製板材10を支持して固定する。このとき金属製板材10の外側縁を外側の固定手段110に近い状態で金属製板材10を支持して固定するとよい。
【0061】
次に、固定手段110の開口幅と、固定手段110が固定した金属製板材10との差分幅に押当板材125Aを押し当てる。これにより金属製板材10の外側縁が固定手段110の外側に押し当てられる。これにより固定手段110の外側が板幅方向のエッジワイズ加工による反力を受けることができ、この状態で第一加工手段120はエッジワイズ加工を施す。
外側縁反力受構造125が板幅方向のエッジワイズ加工による反力を受けることで、加工部以外での金属製板材10の不要な変形を抑制することができる。
【0062】
図2(B)は、第一加工手段120が金属製板材10にエッジワイズ加工を施す前の様子を示す側面図である。
図2(B)に示すように、第一加工手段120では、まず固定手段110によって固定されている金属製板材10を、板幅方向曲げ用芯金122と加工ローラー123とで挟み込むような位置に板幅方向曲げ用芯金122と加工ローラー123とが移動する。このとき支点押圧部124は、板幅方向曲げ用芯金122に添って上昇した状態である。
【0063】
図2(C)は、第一加工手段120が金属製板材10にエッジワイズ加工を施している様子を示す側面図である。
図2(C)に示すように、第一加工手段120が金属製板材10にエッジワイズ加工を施す前に支点押圧部124が板幅方向曲げ用芯金122に添って下降し、支点押圧部124とベース部121とで加工部付近を押圧した状態で、加工ローラー123が外側縁を旋回しながら、曲げ力を金属製板材10に与えていく。これによりエッジワイズ加工の加工部付近が板厚方向に隆起することがない。
【0064】
図3は、移動手段が加工手段を移動させる様子を示す図である。
図3(A)は、移動手段140が第一加工手段120を移動させている様子、および支点押圧部124が昇降移動をしている様子を示す側面図である。
【0065】
図3(A)に示すように移動手段140は、第一加工手段120を平面2次元方向および上下方向の3次元方向に移動させることができる。
このとき、移動手段140は、配置された金属製板材10の高さよりも第一加工手段120の高さを低くすることで、エッジワイズ加工を施す際の支点を支持する板幅方向曲げ用芯金122を、金属製板材10における板幅方向一方側あるいは他端側に移動させることができる。
【0066】
エッジワイズ加工を施す際の支点を金属製板材10における板幅方向一方側や他端側の任意側に移動させることで、エッジワイズ加工による支点を任意側に設定することができる。このため1つの第一加工手段120で金属製板材10を任意の方向に向けたエッジワイズ加工を施すことができる。
【0067】
また支点押圧部124は金属製板材10におけるエッジワイズ加工を施す支点付近を押圧するためだけに昇降移動するだけでなく、移動手段140が第一加工手段120を移動させる際に、第一加工手段120と金属製板材10との接触を回避するために支点押圧部124を昇降させることもできる。
【0068】
図3(B)は、移動手段140が第一加工手段120を移動させている様子を示す上面図である。
図3(B)に示すように移動手段140は、第一加工手段120を平面2次元方向および上下方向の3次元方向に移動させることができる。
【0069】
このとき他方側に移動させた板幅方向曲げ用芯金122で支点を支持してエッジワイズ加工を金属製板材10に施すと、金属製板材10の一端側または他端側を他方側に向けて曲げることができる。
【0070】
また一方側に移動させた板幅方向曲げ用芯金122で支点を支持してエッジワイズ加工を金属製板材10に施すと、金属製板材10の一端側または他端側を一方側に曲げることができる。
【0071】
図4は、第二加工手段が金属製板材に曲げ加工を施す様子を示す図である。
図4(A)は、第二加工手段130の詳細と、第二加工手段130が備える内側面反力受構造の詳細を示す正面図および側面図である。
【0072】
図4(A)に示すように、第二加工手段130は金属製板材10を板厚方向に曲げ加工を施す板厚方向曲げ加工ユニットであって、いわゆる金属製板材10に対してフラットワイズ加工と呼ばれる加工を施すためのものである。
【0073】
第二加工手段130は、フラットワイズ加工を施す支点内側を支持する板厚方向曲げ芯金131、金属製板材10に曲げ力を与える加工芯132、および板厚方向のフラットワイズ加工による反力を受ける外側面反力受構造133を備えている。
【0074】
板厚方向曲げ芯金131は、金属製板材10におけるフラットワイズ加工を施す際に、支点となる金属製板材10内側面を支持する芯材である。
加工芯132は、金属製板材10におけるフラットワイズ加工を施す際に、金属製板材10におけるフラットワイズ加工を施す支点の外側面を旋回しながら、曲げ力を金属製板材10に与えるための芯材である。
【0075】
外側面反力受構造133は、金属製板材10におけるフラットワイズ加工を施す支点よりも、金属製板材10における長手方向の中心側外側面を支持し、板厚方向外側へのフラットワイズ加工による反力を受けるためのものである。
【0076】
具体的に外側面反力受構造133は、金属製板材10を収容して金属製板材10の上側面の反力を受ける上側スリット133Aと、金属製板材10の下側面の反力を受ける下側スリット133Bとを備えている。
【0077】
上側スリット133Aと下側スリット133Bとの間には、仕切りが形成されており、収容される金属製板材10を適切に誘導するために仕切りの先端にはテーパー部が形成されている。この上側スリット133Aと下側スリット133Bとは、収容する金属製板材10の板厚程度で形成することが好ましい。
【0078】
図4(B)は、金属製板材10の他端側を上方に曲げるフラットワイズ加工を施すために、金属製板材10を第二加工手段130に収容した状態を示す正面図である。
図4(B)に示すように、金属製板材10の他端側を上方にフラットワイズ加工を施す場合、まず板厚方向曲げ芯金131を上側かつ加工芯132を下側にした状態にして、板厚方向曲げ芯金131と加工芯132との間かつ下側スリット133Bに金属製板材10を収容する。
【0079】
図4(C)は、金属製板材10の他端側を上方にフラットワイズ加工を施している状態を示す正面図である。
図4(C)に示すように、
図4(B)の状態から、板厚方向曲げ芯金131を回転軸として金属製板材10における曲げ加工を施す支点の外側面を旋回しながら加工芯132が金属製板材10に曲げ力を与える。
【0080】
これにより金属製板材10の他端側を上方に曲げるフラットワイズ加工が施される。これにより金属製板材10の外側面(下側面)が外側(下側スリット133Bの下側面)に押し当てられる。
【0081】
これにより下側スリット133Bの下側面が板厚方向のエッジワイズ加工による反力を受けることができる。
外側面反力受構造133が板厚方向のフラットワイズ加工による反力を受けることで、加工部以外での金属製板材10の不要な変形を抑制することができる。
【0082】
図4(D)は、金属製板材10の他端側を下方にフラットワイズ加工を施している状態を示す正面図である。
金属製板材10の他端側を下方にフラットワイズ加工を施す場合、まず板厚方向曲げ芯金131を下側かつ加工芯132を上側にした状態にして、板厚方向曲げ芯金131と加工芯132との間かつ上側スリット133Aに金属製板材10を収容する。
【0083】
次に
図4(D)に示すように、板厚方向曲げ芯金131を回転軸として金属製板材10における曲げ加工を施す支点の外側面を旋回しながら加工芯132が金属製板材10に曲げ力を与える。
【0084】
これにより金属製板材10の他端側を下方に曲げるフラットワイズ加工が施される。これにより金属製板材10の外側面(上側面)が外側(上側スリット133Aの上側面)に押し当てられる。これにより上側スリット133Aの上側面が板厚方向のエッジワイズ加工による反力を受けることができる。
外側面反力受構造133が板厚方向のフラットワイズ加工による反力を受けることで、加工部以外での金属製板材10の不要な変形を抑制することができる。
【0085】
図5は、加工装置に加工前の金属製板材を設置した状態から、加工後の金属製板材が形成されるまでの流れを示す上面図である。
図5(A)は、加工装置100に加工前の金属製板材10を設置した状態を示す上面図である。
図5(A)に示すように、金属製板材10は固定手段110によって一定の姿勢で支持されて固定されている。
【0086】
図5(B)は、加工装置100における第一加工手段120が金属製板材10にエッジワイズ加工を施す状態を示す上面図である。
図5(B)に示すように、第一加工手段120や第二加工手段130が金属製板材10の両端部から中央部に向けて所望の曲げ加工を施していくことで、第一加工手段120および第二加工手段130による曲げ加工が、金属製板材10に沿った直線上で行うことができる。
【0087】
図5(C)は、加工装置100における第二加工手段130が金属製板材10にフラットワイズ加工を施す状態を示す上面図である。
図5(C)に示すように、第一加工手段120や第二加工手段130が金属製板材10の両端部から中央部に向けて所望の曲げ加工を施していくことで、加工後の金属製板材10の先端側が様々な方向に曲げられたとしても、第一加工手段120や第二加工手段130がそれぞれ加工する全長距離が短いので、加工後の金属製板材10による振れ幅を小さくすることができる。これにより作業領域全体の面積を抑制することができ、単位面積あたりの生産能力も向上する。
【0088】
図5(D)は、加工装置100における第一加工手段120および第二加工手段130による金属製板材10の曲げ加工が完了した状態を示す上面図である。
図5(D)に示すように、第一加工手段120や第二加工手段130が金属製板材10の両端部から中央部に向けて所望の曲げ加工を施していくことで、加工に要する時間を大幅に抑制することができる。これにより作業効率と単位面積あたりの生産能力を向上させることができる。
【符号の説明】
【0089】
10 金属製板材
100 加工装置
110 固定手段
120 第一加工手段
121 ベース部
122 板幅方向曲げ用芯金
123 加工ローラー
124 支点押圧部
125 外側縁反力受構造
125A 押当板材
130 第二加工手段
131 芯金
132 加工芯
133 外側面反力受構造
133A 上側スリット
133B 下側スリット
140 移動手段