(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165184
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】画像形成システム及び後処理装置
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20241121BHJP
B65H 37/06 20060101ALI20241121BHJP
B65H 45/18 20060101ALI20241121BHJP
B65H 7/20 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B41J29/38 206
B65H37/06
B65H45/18
B65H7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081110
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003443
【氏名又は名称】弁理士法人TNKアジア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 優汰
(72)【発明者】
【氏名】本田 貴啓
(72)【発明者】
【氏名】宮本 健司
【テーマコード(参考)】
2C061
3F048
3F108
【Fターム(参考)】
2C061AP07
2C061AQ05
2C061AR01
2C061AS02
2C061HJ02
2C061HK19
2C061HK23
2C061HN08
2C061HN15
3F048AA01
3F048AB01
3F048BB05
3F048EB38
3F048EB39
3F108AA01
3F108AB01
3F108AC01
3F108BA03
3F108BA07
3F108BB21
3F108CD05
3F108CD07
3F108GA01
3F108GB03
(57)【要約】
【課題】印刷面の乾きが不十分による画像不良の発生を防ぐと共に、生産性の低下を抑制する。
【解決手段】後処理装置20は、画像形成装置10から受け取った記録紙に対して折り処理を実施する折り処理部210と、折り処理部210で記録紙に対して折り処理が実施される場合、折り処理の実施前に、記録紙の搬送を停止して一時的に待機させてから記録紙の搬送を再開する動作制御部220と、を備える。画像形成装置10は、折り処理部210が折り処理を実施することによって互いに接触可能となる、記録紙の2つの領域ペアの印字率に基づいて、記録紙の搬送の停止から再開までの待機時間を設定する設定部32を備える。動作制御部220は、設定部32が設定した待機時間に従って、記録紙の搬送を再開するようにする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置から前記記録紙を受け取って、前記記録紙に対して後処理を実施する後処理装置とを備え、
前記後処理装置は、
前記記録紙に対して折り処理を実施する折り処理部を備え、
前記画像形成装置又は前記後処理装置のいずれかに、
前記折り処理部で前記記録紙に対して折り処理が実施される場合、前記折り処理の実施前に、前記記録紙の搬送を停止して一時的に待機させてから前記記録紙の搬送を再開する動作制御部と、
前記折り処理部が折り処理を実施したときに互いに接触するとして予め定められた2つの領域からなる領域ペアについての合計の印字率に基づいて、前記記録紙の搬送の停止から再開までの待機時間を設定する設定部とを更に備え、
前記動作制御部は、前記設定部が設定した前記待機時間に従って、前記記録紙の搬送を再開する画像形成システム。
【請求項2】
前記設定部は、1枚の前記記録紙に前記領域ペアが複数存在する場合、最も前記印字率の高い前記領域ペアの前記合計の印字率に基づいて、前記待機時間を設定する請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記画像形成装置又は前記後処理装置のいずれかに、前記折り処理の種類に基づいて前記領域ペアを特定する特定部を更に備え、
前記設定部は、前記特定部が特定した前記領域ペアの前記合計の印字率に基づいて、前記待機時間を設定する請求項1又は請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記設定部は、前記領域ペアを形成する各領域を分割して得られる分割領域について、前記折り処理部が折り処理を実施したときに互いに接触するとして予め定められた2つの前記分割領域からなる分割領域ペアについての合計の印字率に基づいて、前記待機時間を設定する請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記設定部は、前記後処理装置の使用環境に基づいて、前記待機時間を設定する請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記設定部は、前記印字率に加えて、前記記録紙の種類に基づいて、前記待機時間を設定する請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記後処理装置は、予め定められた待機場所で待機している前記記録紙に向けて空気を送り出し、前記記録紙を乾燥させる乾燥部を更に備え、
前記設定部は、前記乾燥部の乾燥能力に応じて短縮された待機時間Tを設定する請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項8】
記録紙に画像を形成する画像形成装置から前記記録紙を受け取って、前記記録紙に対して後処理を実施する後処理装置であって、
前記記録紙に対して折り処理を実施する折り処理部と、
前記折り処理部で前記記録紙に対して折り処理が実施される場合、前記折り処理の実施前に、前記記録紙の搬送を停止して一時的に待機させてから前記記録紙の搬送を再開する動作制御部と、
前記折り処理部が折り処理を実施したときに互いに接触するとして予め定められた2つの領域からなる領域ペアについての合計の印字率に基づいて、前記記録紙の搬送の停止から再開までの待機時間を設定する設定部と、を備え、
前記動作制御部は、前記設定部が設定した前記待機時間に従って、前記記録紙の搬送を再開する後処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像が形成された記録紙に対して折り処理を行う後処理装置を備える画像形成システム及び後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、画像読取部により原稿の画像を読み取り、画像形成部により原稿の画像を記録紙に形成する。また、後処理装置では、画像が形成された記録紙を画像形成装置から受け取って、記録紙に対して後処理を施す。後処理装置により実施される後処理として、折り処理がある。折り処理の種類には、二つ折り、三つ折り、Z折りなどがある。また、折り処理を行う後処理装置については、例えば、下記の特許文献1,2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-042442号公報
【特許文献2】特開2011-105503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像が形成された記録紙に対して折り処理を行うと、画像が形成された印刷面同士が接触することがあるが、印刷面の乾きが十分でないと、印刷面同士の摩擦によって色移りなどの画像不良の発生が懸念される。特に、インクジェット方式により画像が形成された記録紙は、インクが乾いていない状態で搬送されることが多く、画像不良が発生する可能性が高い。また、高濃度印刷の場合、低濃度印刷の場合よりも乾きが遅くなる。
【0005】
このような問題を解決するには、折り処理の開始を遅らせたり、ファンなどを用いて記録紙の乾燥を促進したりするという方法が考えられるが、開始を遅らせる時間や乾燥時間が短いと、印刷面の乾きが不十分で、その逆に、時間が長いと、生産性の低下を招く。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、生産性の低下を抑制しつつ、印刷面の乾きが不十分による画像不良の発生を防止可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る画像形成システムは、記録紙に画像を形成する画像形成装置と、前記画像形成装置から前記記録紙を受け取って、前記記録紙に対して後処理を実施する後処理装置とを備え、前記後処理装置は、前記記録紙に対して折り処理を実施する折り処理部を備え、前記画像形成装置又は前記後処理装置のいずれかに、前記折り処理部で前記記録紙に対して折り処理が実施される場合、前記折り処理の実施前に、前記記録紙の搬送を停止して一時的に待機させてから前記記録紙の搬送を再開する動作制御部と、前記折り処理部が折り処理を実施したときに互いに接触するとして予め定められた2つの領域からなる領域ペアについての合計の印字率に基づいて、前記記録紙の搬送の停止から再開までの待機時間を設定する設定部とを更に備え、前記動作制御部は、前記設定部が設定した前記待機時間に従って、前記記録紙の搬送を再開するものである。
【0008】
また、本発明の一局面に係る後処理装置は、記録紙に画像を形成する画像形成装置から前記記録紙を受け取って、前記記録紙に対して後処理を実施する後処理装置であって、前記記録紙に対して折り処理を実施する折り処理部と、前記折り処理部で前記記録紙に対して折り処理が実施される場合、前記折り処理の実施前に、前記記録紙の搬送を停止して一時的に待機させてから前記記録紙の搬送を再開する動作制御部と、前記折り処理部が折り処理を実施したときに互いに接触するとして予め定められた2つの領域からなる領域ペアについての合計の印字率に基づいて、前記記録紙の搬送の停止から再開までの待機時間を設定する設定部と、を備え、前記動作制御部は、前記設定部が設定した前記待機時間に従って、前記記録紙の搬送を再開するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、折り処理の実施前に待機時間が設けられる。待機時間は、折り処理を実施することによって互いに接触可能となる領域ペア(すなわち、色移りの生じる可能性の高い印刷面)の印字率に基づいて設定される。従って、印刷面の乾きが十分となる時間であって、不必要に長時間とならない時間に待機時間を設定可能になる。これにより、本発明によれば、画像不良の発生を防ぐと共に、生産性の低下を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の一実施形態に係る後処理装置を含んで構成される画像形成システムを概略的に示す正面図である。
【
図1B】後処理装置における中綴じ部を拡大して示す断面図である。
【
図1C】(A)~(D)は、中綴じ部により各記録紙に対して施される中綴じ処理の動作を説明するために用いられた図である。
【
図2】画像形成システムを構成する画像形成装置及び後処理装置の主要内部構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図3】(A)は、二つ折りした記録紙を示した図であり、(B)及び(C)は、二つ折りした記録紙を展開した図である。
【
図4】印字率と待機時間との関係の一例を示す待機時間設定テーブルである。
【
図5】(A)は、三つ折りした記録紙を示した図であり、(B)及び(C)は、三つ折りした記録紙を展開した図である。
【
図6】(A)は、Z折り(片袖折り)した記録紙を示した図であり、(B)及び(C)は、Z折りした記録紙を展開した図である。
【
図7】画像形成システム100における折り処理時の待機時間の設定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】(A)は、三つ折りした記録紙を示した図であり、(B)及び(C)は、三つ折りした記録紙を展開した図である。
【
図9】湿度と調整係数との関係の一例を示す調整係数テーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る画像形成システム及び後処理装置について図面を参照して説明する。
図1Aは、本発明の一実施形態に係る後処理装置を含んで構成される画像形成システムを概略的に示す正面図である。画像形成システム100は、記録紙に画像を形成する画像形成装置10と、画像形成装置10から記録紙を受け取って、記録紙に対して後処理を実施する後処理装置20と、を備えている。
【0012】
画像形成装置10は、例えば、コピー機能、プリンター機能、スキャナー機能、及びファクシミリ機能のような複数の機能を兼ね備えた複合機である。画像形成装置10は、画像読取部11と、画像形成部12と、を備えている。画像読取部11では、複数の原稿Mが原稿トレイ1に載置されると、これらの原稿Mを原稿トレイ1から順次引き出して搬送しつつ、各原稿Mの画像を撮像素子により読取り、各原稿Mを排出トレイ2に順次排出して重ねる。画像読取部11では、各原稿Mの画像毎に、撮像素子のアナログ出力がデジタル信号に変換されて、原稿Mの画像を示す画像データが生成される。
【0013】
画像形成部12は、複数の原稿Mの画像を示すそれぞれの画像データを逐次入力する度に、画像データによって示される原稿Mの画像を、インクジェット方式により記録紙Pに形成する。画像形成部12は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエロー)のインク滴を吐出するそれぞれのラインヘッド(インクヘッドの一例)15を有している。各ラインヘッド15は、それぞれの色のインク滴を、給紙部14から第1搬送路3を通じて搬送ユニット4へと搬送されて来た記録紙Pに吐出して、カラー画像を記録紙Pに形成する。
【0014】
画像形成部12により各原稿Mの画像がそれぞれの記録紙Pに形成され、各記録紙Pが、中継搬送路18を経由し、搬送ローラー19を通じて後処理装置20へと搬送される。この場合、記録紙Pは、原稿の画像が形成された面が上向きの状態で、つまりフェイスアップで後処理装置20へと搬送される。
【0015】
また、記録紙Pを、原稿の画像が形成された面が下向きの状態で、つまりフェイスダウンで後処理装置20へと搬送させる場合、記録紙Pを中継搬送路18から搬送ローラー16へと搬送し、搬送ローラー16を一旦停止させて逆回転させるというスイッチバック搬送を行い、記録紙Pを、第2搬送路17を通じて搬送ユニット4に戻して、記録紙Pの表裏を反転させ、この記録紙Pを、中継搬送路18を経由させ、搬送ローラー19を通じて後処理装置20へと搬送させる。
【0016】
また、記録紙Pの裏面にも原稿Mの画像を記録する場合、上記スイッチバック搬送を行った後、記録紙Pを、第2搬送路17を通じて搬送ユニット4に戻して、記録紙Pの表裏を反転させ、画像形成部12により記録紙Pの裏面に原稿Mの画像を形成させ、記録紙Pを、中継搬送路18を経由させ、搬送ローラー19を通じて後処理装置20へと搬送させる。なお、上記記録紙Pの搬送及び画像形成の制御は、後述する制御部31(
図2)により行われる。
【0017】
一方、後処理装置20は、画像形成装置10からの各記録紙Pを搬送する複数の搬送ローラー21、22、23、搬送ローラー21を通過した各記録紙Pを水平方向に導いて搬送ローラー22へと送り出すか又は搬送ローラー21を通過した各記録紙Pを下方に導いて搬送ローラー23へと送り出す分岐爪241、搬送ローラー22を通じて搬送されて来た各記録紙Pを第1排紙トレイ26に排出する排出ローラー24、搬送ローラー22を通じて搬送されて来た各記録紙Pを積み重ねて、各記録紙Pの中央部にステイプル処理を施し、各記録紙Pをその中央で折り曲げる等の処理を行う折り処理部210、及び折り処理部210によりステイプル処理が施されて折り曲げられた各記録紙Pが排出される第2排紙トレイ28などを備える。後処理装置20は、後述する画像形成装置10の制御部31により、後処理装置20の動作制御部220を通じて、全体的な動作が制御される。
【0018】
尚、折り処理部210は、特許請求の範囲における折り曲げ部に対応する。第2排紙トレイ28は、特許請求の範囲における排紙トレイに対応する。
【0019】
図1Bは、後処理装置20の折り処理部210を拡大して示す断面図である。
図1A及び
図1Bに示すように折り処理部210は、搬送ローラー23により搬送され排出された複数の記録紙Pを受ける各分割テーブル75A、75B、各分割テーブル75A、75B上で記録紙Pを移動させて、記録紙Pの長手方向の位置を調節する先端カーソル85A及び後端カーソル85B、各カーソル85A、85Bを支持して、各カーソル85A、85Bを記録紙Pの排出方向Qに沿って往復移動させるそれぞれの回転ベルト76A、76B、各分割テーブル75A、75B上の各記録紙Pからなる用紙束PTの中央部にステイプル処理を施すステイプル部77、各分割テーブル75A、75B間のスペース上方に配置されて、用紙束PTを折り曲げて搬送する各折りローラー78A、78B、78C、各分割テーブル75A、75B間のスペースを通じて各折りローラー78A、78Bのニップ域に対向配置されて、このニップ域に対して接離する方向に往復移動される折りブレード79、用紙束PTを各折りローラー78A、78Bから受け取って案内するガイド部81、用紙束PTを第2排紙トレイ28へと搬送して排出する排出コンベアー83、及び用紙束PTの幅方向の位置を規制する両側の各側端カーソル91A、91Bなどを備えている。
【0020】
図1C(A)~(D)は、折り処理部210による各記録紙P(用紙束PT)の折り曲げ動作の概略を示している。
図1C(A)に示すように記録紙Pが各分割テーブル75A、75B上に排出されると、記録紙Pの先端が先端カーソル85Aに突き当てられて揃えられ、また各側端カーソル91A、91Bにより記録紙Pの両側端が揃えられる。先端カーソル85Aが後端カーソル85Bに接近する方向に移動されるか、又は後端カーソル85Bが先端カーソル85Aに接近する方向に移動されて、後端カーソル85Bにより記録紙Pの後端が揃えられ、先端カーソル85A及び後端カーソル85Bがそれぞれの元の位置に移動される。記録紙Pは、その自重により各分割テーブル75A、75B上で斜め下方に付勢されているので、記録紙Pの先端が先端カーソル85Aに当接された状態が維持される。このような動作を、1枚の記録紙Pが排出される度に繰り返して、複数の記録紙Pを各分割テーブル75A、75B上に積載して揃えて用紙束PTとする。尚、数枚の記録紙Pが排出される度に、上記のように各側端カーソル91A、91B、先端カーソル85A、及び後端カーソル85Bを移動させて、該各カーソルにより各記録紙Pの両側端、先端、及び後端を揃え、複数の記録紙Pを各分割テーブル75A、75B上に積載して揃えてもよい。
【0021】
図1C(B)に示すように先端カーソル85A及び後端カーソル85Bが移動されて、各分割テーブル75A、75B上で用紙束PTが移動され、用紙束PTの中央部がステイプル部77によるステイプル処理の位置に位置決めされ、ステイプル部77により用紙束PTの中央部に対してステイプル処理が施される。
【0022】
図1C(C)に示すように各カーソル85A、85Bにより各分割テーブル75A、75B上で用紙束PTが移動され、用紙束PTの中央部が各分割テーブル75A、75Bの間のスペースに位置決めされる。
【0023】
図1C(D)に示すように折りローラー78Aが反時計回り方向に回転駆動されると共に、折りローラー78Bが時計回り方向に回転駆動され、折りブレード79が各折りローラー78A、78Bのニップ域Nに接近する方向に移動され、折りブレード79の先端により用紙束PTの中央部が突き上げられて、用紙束PTの中央部が各折りローラー78A、78Bのニップ域Nに押し込まれ、各折りローラー78A、78Bにより用紙束PTの中央部が折り曲げられて、用紙束PTが2つ折りにされる。この折り曲げられた用紙束PTは、各折りローラー78A、78Bにより搬送されて、ガイド部81により排出コンベアー83へと案内され、排出コンベアー83により搬送されて第2排紙トレイ28へと排出される。
【0024】
尚、
図1Bに示す折りローラー78Cは、二つ折りにされた用紙束PTに対して3つ目の折り目をつけて、用紙束PTを三つ折りにするためのものである。二つ折りにされた用紙束が各折りローラー78A、78Bの間を通過した後、用紙束の3つ折りにされる部分が折りローラー78Bと折りローラー78Cの間へと導入されて、用紙束に3つ目の折り目が付けられ、3つ折りにされた用紙束が別のガイド部(図示せず)及び排出コンベアー83を通じて第2排紙トレイ28へと排出される(例えば、特開2021-59410号公報の
図6を参照)。
【0025】
次に、画像形成システム100の制御に係る構成について説明する。
図2は、画像形成システム100を構成する画像形成装置10及び後処理装置20の主要内部構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【0026】
図2に示すように画像形成装置10は、制御ユニット30と、画像読取部11と、画像形成部12と、記憶部40と、操作部41と、を備えている。また、画像形成装置10は、後処理装置20が装着可能に構成されている。
【0027】
記憶部40は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置であり、各種の制御プログラム等を記憶する。
【0028】
操作部41は、ユーザーから各種の指示を受け付けるためのハードキーを備える。操作部41は、ユーザーによる当該ハードキーの操作に応じて、画像形成装置10が実行可能な各種動作及び処理について、ユーザーから、画像形成動作実行指示等の指示を受け付ける。操作部41は、ユーザーへの操作案内等を表示する表示部42を備えている。また、操作部41は、表示部42が有するタッチパネルを介して、表示部42に表示されている操作画面に対するユーザーによる操作(タッチ操作)に基づく、ユーザーからの指示の入力を受け付ける。
【0029】
表示部42は、LCD(Liquid Crystal Display)等からなる。表示部42は、タッチパネルを備えている。ユーザーは画面表示されるボタンやキーに触れる操作を行うと、タッチパネルにより、タッチ操作された位置に対応付けられた指示が受け付けられる。
【0030】
制御ユニット30は、プロセッサー、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び専用のハードウェア回路を含んで構成される。プロセッサーは、例えばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はMPU(Micro Processing Unit)等である。制御ユニット30は、制御部31と、設定部32と、特定部33と、を備えている。
【0031】
制御ユニット30は、記憶部40に記憶されている制御プログラムに従った上記プロセッサーによる動作により、制御部31、設定部32、及び特定部33として機能するものである。但し、制御部31等は、制御ユニット30による制御プログラムに従った動作によらず、それぞれハードウェア回路により構成することも可能である。以下、特に触れない限り、各実施形態について同様である。
【0032】
制御部31は、画像形成装置10の全体的な動作制御を司る。制御部31は、画像読取部11、画像形成部12、記憶部40、及び操作部41と接続され、これら各部の駆動制御等を行う。例えば、制御部31は、画像形成装置10による画像形成に必要な各種の処理などを実行する。また、制御部31は、図略の通信インターフェイスを介して、後処理装置20との間でデータ通信を行う。設定部32及び特定部33については、後で説明する。
【0033】
後処理装置20は、折り処理部210と、動作制御部220と、記憶部230と、を備える。折り処理部210は、画像形成装置10から受け取った記録紙Pに対して折り処理を実施する。折り処理の種類は、例えば、二つ折り、三つ折り、Z折りなどである。
【0034】
動作制御部220は、CPU等であり、記憶部230に記憶されている制御プログラムに従って動作し、画像形成装置10の制御部31による制御の下、後処理装置20の全体的な動作制御を司る。また、動作制御部220は、折り処理部210で記録紙Pに対して折り処理が実施される場合、折り処理の実施前に、記録紙Pの搬送を停止して一時的に待機させてから記録紙Pの搬送を再開する。
【0035】
上記の設定部32は、折り処理部210が折り処理を実施することによって互いに接触可能となる、記録紙Pの予め定められた2つの領域からなる領域ペアを折り処理の種類毎に記憶している。設定部32は、領域ペアの各領域の印字率の合計に基づいて、記録紙Pの搬送の停止から再開までの待機時間Tを設定する。動作制御部220は、設定部32が設定した待機時間Tに従って、記録紙Pの搬送を再開する。
【0036】
図3(A)は、二つ折りした記録紙Pを示した図であり、
図3(B)及び(C)は、二つ折りした記録紙Pを展開した図である。
図3に示すように、二つ折りの場合、記録紙Pに形成される折り筋は折り筋C1の1つである。この場合、二つ折りを実施することによって互いに接触可能となる2つの領域からなる領域ペアは、「オモテ表紙面(R1)の裏面」の領域R4と「ウラ表紙面(R2)の裏面」の領域R3とのペアである。設定部32は、折り処理が二つ折りの場合、領域R3,R4の印字率の合計に基づいて、待機時間Tを設定する。
【0037】
例えば、設定部32は、画像形成部12により画像が形成される記録紙P上の印字率を必要な領域(二つ折りの場合、領域R3,R4)ごとに算出し、上記領域ペアを構成する2つの領域それぞれの印字率の合計を算出し、その合計値Vに基づいて、記憶部40に予め記憶されている待機時間設定テーブルを用いて待機時間Tを設定する。なお、印字率とは、例えば、記録紙における画像形成可能領域の面積に対する、印刷データにより画像形成が行われる画像形成領域の割合である。
【0038】
図4は、印字率と待機時間との関係の一例を示す待機時間設定テーブルである。例えば、設定部32は、合計値Vが30%以下である場合、待機時間Tを3秒に設定し、合計値が31~40%である場合、待機時間Tを5秒に設定する。
【0039】
図5(A)は、三つ折りした記録紙Pを示した図であり、
図5(B)及び(C)は、三つ折りした記録紙Pを展開した図である。
図5に示すように、三つ折りの場合、記録紙Pに形成される折り筋は折り筋C2,C3の2つである。そして、三つ折りを実施することによって互いに接触可能となる2つの領域ペアは、「オモテ表紙面(R11)の裏面」の領域R16と「中に折り込む面」の領域R13とのペア、及び「ウラ表紙面(R12)の裏面」の領域R15と「中に折り込む面」の領域R14とのペアである。
【0040】
図6(A)は、Z折り(片袖折り)した記録紙Pを示した図であり、
図6(B)及び(C)は、Z折りした記録紙Pを展開した図である。
図6に示すように、Z折りの場合、記録紙Pに形成される折り筋は折り筋C4~C6の3つである。そして、Z折りを実施することによって互いに接触可能となる2つの領域ペアは、「オモテ表紙面(R21)の裏面」の領域R28と「中に折り込む面」の領域R27とのペア、及び「中に折り込む面」の領域R22と「ウラ表紙面(R26)の裏面」の領域R23とのペアである。なお、
図1Cを参照した上記説明では、Z折りの説明を省略している。
【0041】
図3、
図5及び
図6を用いて説明したように、折り処理の種類によって、上記領域ペアは変わる。そのため、特定部33が、折り処理の種類に基づいて、領域ペアを特定する。設定部32は、特定部33が特定した上記領域ペアの印字率に基づいて、待機時間Tを設定する。
【0042】
また、
図5及び
図6に示したように、三つ折りやZ折りの場合、上記領域ペアは複数存在する。設定部32は、上記領域ペアが複数存在する場合、それぞれの領域ペア毎に合計の印字率を算出し、最も印字率合計の高い上記領域ペアの印字率合計に基づいて、待機時間Tを設定する。
【0043】
次に、画像形成システム100における折り処理時の待機時間の設定処理の一例を
図7に示すフローチャートを用いて説明する。なお、この処理は、例えば、操作部41がユーザーから印刷実行指示を受け付けた場合に行われる処理である。
【0044】
制御部31は、操作部41が印刷実行指示を受け付けると、制御部31は、上記印刷実行指示に記録紙Pに対する折り処理が含まれているか否かを判断する(S1)。
【0045】
制御部31は、上記印刷実行指示折り処理が含まれていないと判断した場合(S1でNO)、印刷実行指示に従って画像形成部12等を制御して画像形成処理を実行する(S2)。続いて、制御部31は、画像が形成された記録紙Pを後処理装置20に向けて搬送させる。制御部31は、後処理装置20に対して、後処理の指示を出さず、画像が形成された記録紙Pを後処理装置20によりそのまま排出させる(S3)。この後、処理は終了する。すなわち、画像形成装置10は、画像形成装置10から後処理の指示を受けていないので、画像形成装置10から受け取った記録紙Pをそのまま外部に排出する。
【0046】
一方、制御部31が、上記印刷実行指示に折り処理が含まれていると判断した場合(S1でYES)、特定部33が、ユーザーが要求する折り処理の種類に基づいて、上記領域ペアを特定する(S4)。
【0047】
設定部32は、特定部33が特定した領域ペアを構成する2つの領域それぞれの印字率を算出し(S5)、領域ペアを構成する2つの領域それぞれの印字率の合計値Vを算出し(S6)、合計値Vに基づいて、
図4に例を示した待機時間設定テーブルを用いて待機時間Tを設定する(S7)。
【0048】
なお、設定部32は、上記領域ペアが複数存在する場合、最も合計値Vの高い領域ペアの合計値Vに基づいて、待機時間Tを設定する。例えば、設定部32は、ユーザーが要求する折り処理が三つ折りで、領域ペアが領域R13,R16のペアと領域R14,15のペアとの2つが存在し、前者の印字率の合計値Vが47%で、後者の印字率の合計値Vが26%であるとき、前者の合計値Vに基づいて、待機時間Tを設定する。そのため、待機時間Tは
図4に基づいて7秒となる。
【0049】
制御部31は、後処理装置20の動作制御部220に対して、設定部32が設定した待機時間Tを示す情報を送信すると共に(S8)、後処理装置20の動作制御部220に対して、ユーザーが要求する折り処理の実行指示を送信する(S9)。
【0050】
そして、制御部31は、上記印刷実行指示に従った画像形成処理を画像形成部12等に行わせ、画像が形成された記録紙Pを後処理装置20に向けて搬送させる(S2)。後処理装置20では、搬送されてきた記録紙Pを折り処理部210まで搬送する。動作制御部220は、この時点では、未だ折り処理部210に折り処理を実行させない。
【0051】
後処理装置20の動作制御部220は、画像形成装置10から送信されて来た上記情報を受け取った時点から、上記情報が示す待機時間Tが経過するまでは折り処理を折り処理部210に行わせずに待機させ、待機時間Tが経過した時点で、折り処理部210に折り処理を実行させる。なお、複数枚の記録紙Pに折り処理を行う場合は、例えば、折り処理対象とする全ての記録紙Pが折り処理部210に搬送されてきた時点から待機時間Tが経過した時に、折り処理部210に折り処理を実行させる。
【0052】
例えば、待機時間Tが7秒である場合、動作制御部220は、折り処理部210の分割テーブル75A、75B(処理トレイ)を待機場所として、分割テーブル75A、75B上で記録紙Pを7秒間待機させる。
【0053】
折り処理部210による折り処理後、制御部31による下、後処理装置20は、画像が形成されて折り処理済みの記録紙Pを後処理装置20により排出させる(S3)。
【0054】
上記実施形態によれば、折り処理の実施前に待機時間Tが設けられている。待機時間Tについては、折り処理を実施することによって互いに接触可能となる領域ペア(すなわち、色移りの生じる可能性の高い印刷面)の印字率に基づいて設定される。従って、印刷面の乾きが十分となる時間であって、不必要に長時間とならない時間に待機時間を設定可能になる。これにより、本実施形態によれば、画像不良の発生を防ぐと共に、生産性の低下を抑制することが可能になる。
【0055】
なお、別の実施形態として、設定部32は、
図8に例を示すように、上記領域ペアを形成する各領域を分割して得られる分割領域について、折り処理部210が折り処理を実施したときに互いに接触するとして予め定められた2つの分割領域からなる分割領域ペアについての合計の印字率に基づいて、待機時間Tを設定するものとしてもよい。
【0056】
例えば、上述した各領域を更に2分割する。例えば、
図8に示すように、三つ折りの場合、領域R13を分割領域R13A,分割領域R13Bとし、領域R16を分割領域R16A,分割領域R16B、等とする。このとき、分割領域R13Aと分割領域R16Bとの分割領域ペア、分割領域R13Bと分割領域R16Aとの分割領域ペア、分割領域R14Aと分割領域R15Bとの分割領域ペア、及び分割領域R14Bと分割領域R15Aの分割領域ペアの4つが存在する。設定部32は、各分割領域ペアについての合計の印字率のうち、最も高い印字率に基づいて、待機時間Tを設定する。これにより、局所的に発生する色移りなどの画像不良の発生を考慮した上で、一層的確に待機時間Tを設定することが可能になる。
【0057】
ところで、印刷面の乾燥速度は後処理装置20の使用環境の影響を受ける。例えば、湿度が高ければ、乾燥速度は下がり、温度が高ければ、乾燥速度は上がる。そこで、設定部32は、後処理装置20の使用環境に基づいて、待機時間Tを調整してもよい。
【0058】
例えば、後処理装置20に湿度計を備え、設定部32は、湿度計が示す検知内容に基づいて、記憶部40に予め記憶されている、
図9に例を示すような調整係数テーブルを用いて待機時間Tを調整する。
図9は、湿度と調整係数との関係の一例を示す調整係数テーブルである。設定部32は、上記合計値Vに基づく待機時間Tが7秒であっても、湿度が42%である場合、7秒に調整係数1.5を乗算して、待機時間Tを10.5秒(=7×1.5)に調整する。設定部32は、温度の場合は、係数を用いて待機時間Tを長くする方向に調整する。
【0059】
また、印刷面の乾燥速度は、記録紙Pの種類(素材)の影響を受けることが考えられる。そこで、設定部32は、印字率に加えて、記録紙Pの種類に基づいて、待機時間Tを設定するようにしてもよい。例えば、
図4に示したような待機時間設定テーブルを記録紙Pの種類ごとに用意し、設定部32は、記録紙Pの種類によって使用する待機時間設定テーブルを変更する。
【0060】
また、更なる別の実施形態では、後処理装置20は、予め定められた待機場所(例えば、分割テーブル75A、75B)で待機している記録紙Pに向けて空気を送り出し、記録紙Pを乾燥させる乾燥部を備えるようにしてもよい。この場合、上記乾燥部により印刷面の乾燥時間を短縮できるので、設定部32は、乾燥部の乾燥能力に応じて係数を用いて待機時間Tを短縮する、或いは、短縮される乾燥時間を考慮済みの待機時間設定テーブルに基づいて、待機時間Tを設定する。これにより、待機時間Tを短縮でき、生産性の低下を更に抑制することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、画像形成装置10が設定部32及び特定部33を備える場合について説明しているが、待機時間Tの設定や領域ペアの特定に必要な情報を画像形成装置10が後処理装置20に送信する構成にすれば、設定部32及び特定部33については、後処理装置20が備えるようにしてもよい。或いは、画像形成装置10が設定部32、特定部33、及び動作制御部220を備えるようにしてもよい。
【0062】
本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。また、上記実施形態では、
図1A乃至
図9を用いて上記実施形態により示した構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成及び処理に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0063】
10 画像形成装置
32 設定部
33 特定部
20 後処理装置
210 折り処理部
220 動作制御部
100 画像形成システム