(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165205
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】蒸発燃料処理装置
(51)【国際特許分類】
F02M 33/00 20060101AFI20241121BHJP
F02M 33/04 20060101ALI20241121BHJP
F02M 35/024 20060101ALI20241121BHJP
F02M 25/08 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F02M33/00 B
F02M33/04
F02M35/024 521E
F02M35/024 521Z
F02M25/08 301J
F02M25/08 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081140
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】稲場 拓巳
【テーマコード(参考)】
3G144
【Fターム(参考)】
3G144BA08
3G144BA27
3G144CA12
3G144EA12
3G144EA26
3G144FA27
3G144GA12
3G144GA30
(57)【要約】
【課題】エアフローメータの上流側において、吸気管内を横切るように炭化水素吸着材を含む吸気キャニスタが配設される場合であっても、エアフローメータの出力特性がずれることを抑制することが可能な蒸発燃料処理装置を提供する。
【解決手段】蒸発燃料処理装置1は、エアフローメータ14の上流側において、吸気管内部を横切るように配設される吸気キャニスタ75と、吸気キャニスタ75の位置を動かすアクチュエータ51と、アクチュエータ51を制御して、吸気キャニスタ75の位置を調節するECU50とを備える。ECU50は、エアフローメータ14の出力特性の基準特性からのずれがより小さくなるようにアクチュエータ51を制御して、吸気キャニスタ75の位置を調節する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気管を通してエンジンに吸入される吸入空気量を検出するエアフローメータの上流側において、前記吸気管内部を横切るように配設される、炭化水素を吸着する炭化水素吸着材を含む吸気キャニスタと、
前記吸気キャニスタの位置を動かすアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御して、前記吸気キャニスタの位置を調節するコントロールユニットと、を備え、
前記コントロールユニットは、前記エアフローメータの出力特性の基準特性からのずれがより小さくなるように前記アクチュエータを制御して、前記吸気キャニスタの位置を調節することを特徴とする蒸発燃料処理装置。
【請求項2】
前記エンジンで燃焼された混合気の空燃比を検知する空燃比センサを備え、
前記コントロールユニットは、検知された実空燃比と目標空燃比とのずれ、又は、実空気過剰率と目標空気過剰率とのずれを学習し、該学習値の変化幅がより小さくなるようにかつ該学習値がゼロに近づくように、前記アクチュエータを制御して、前記吸気キャニスタの位置を調節することを特徴とする請求項1に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記吸気キャニスタを、前記吸気管の径方向に動かすことを特徴とする請求項2に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項4】
前記吸気キャニスタは、炭化水素吸着材を挟持する一対の通気性を有するシートを有し、該一対のシートの外縁部が全周にわたって密着されていることを特徴とする請求項3に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項5】
前記吸気キャニスタと平行に並べて配設される板状部材をさらに備え、
前記アクチュエータは、前記吸気キャニスタに代えて、前記板状部材の位置を動かし、
前記コントロールユニットは、前記エアフローメータの出力特性の基準特性からのずれがより小さくなるように前記アクチュエータを制御して、前記板状部材の位置を調節することを特徴とする請求項1に記載の蒸発燃料処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料タンク内で発生した蒸発燃料の環境(大気)への放出を防止するために、蒸発燃料を一時的にキャニスタ内の吸着材に吸着させ、吸着させた蒸発燃料を所定の運転条件下でエンジンの吸気系に吸引させて燃焼させ処理するエバポパージシステムが広く用いられている。
【0003】
加えて、例えば、特許文献1には、サージタンクにHC(炭化水素)吸着材を設け、エンジン停止中に吸気通路内の残留HC(例えば、前回運転時に吸気通路内に吹き返されて残留している燃料等)をHC吸着材で吸着し、エンジン停止中に吸気通路内に溜まっていたHCの大気中ヘの排出量を低減する炭化水素排出量低減装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、吹き返された燃料が吸気管から環境(大気)に放出されることを防止するため、例えば、吸気管を通してエンジンに吸入される吸入空気量を検出するエアフローメータの上流側において、吸気管内部を横切るように炭化水素吸着材を含む吸気キャニスタを配設すると、該吸気キャニスタの個体ばらつき等により、エアフローメータの出力特性(検出特性)が影響を受ける(基準特性からずれる)ことがある。その結果、空燃比フィードバック制御の制御性に好ましくない影響を与えるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、エアフローメータの上流側において、吸気管内部を横切るように炭化水素吸着材を含む吸気キャニスタが配設される場合であっても、エアフローメータの出力特性がずれることを抑制することが可能な蒸発燃料処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る蒸発燃料処理装置は、吸気管を通してエンジンに吸入される吸入空気量を検出するエアフローメータの上流側において、吸気管内部を横切るように配設される、炭化水素を吸着する炭化水素吸着材を含む吸気キャニスタと、吸気キャニスタの位置を動かすアクチュエータと、アクチュエータを制御して、吸気キャニスタの位置を調節するコントロールユニットと、を備え、該コントロールユニットが、エアフローメータの出力特性の基準特性からのずれがより小さくなるようにアクチュエータを制御して、吸気キャニスタの位置を調節することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る蒸発燃料処理装置によれば、エアフローメータの出力特性の基準特性からのずれがより小さくなるようにアクチュエータが制御されて、吸気キャニスタの位置が調節される。そのため、エアフローメータの出力特性を基準特性に近づけるように(すなわち、基準特性とのずれを解消するように)吸気キャニスタの位置を調節することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エアフローメータの上流側において、吸気管内部を横切るように炭化水素吸着材を含む吸気キャニスタが配設される場合であっても、エアフローメータの出力特性がずれることを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る蒸発燃料処理装置、及び該蒸発燃料処理装置が適用されたエンジンの構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る蒸発燃料処理装置を構成する吸気キャニスタの構成を示す図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る蒸発燃料処理装置による吸気キャニスタの位置調節処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】第2実施形態に係る蒸発燃料処理装置、及び該蒸発燃料処理装置が適用されたエンジンの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
まず、
図1~
図3を併せて用いて、第1実施形態に係る蒸発燃料処理装置1構成について説明する。
図1は、蒸発燃料処理装置1、及び、該蒸発燃料処理装置1が適用されたエンジン10の構成を示す図である。
図2は、蒸発燃料処理装置1を構成する吸気キャニスタ75の構成を示す図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【0013】
エンジン10は、例えば水平対向型の4気筒ガソリンエンジンである。また、エンジン10は、シリンダ内(筒内)に燃料を直接噴射する筒内噴射式のエンジンである。エンジン10では、エアクリーナ16から吸入された空気が、吸気管15に設けられた電子制御式スロットルバルブ(以下、単に「スロットルバルブ」ともいう)13により絞られ、インテークマニホールド11を通り、エンジン10に形成された各気筒に吸入される。ここで、エアクリーナ16から吸入された空気の量(エンジン10に吸入される空気量)は、エアクリーナ16とスロットルバルブ13との間に配置されたエアフローメータ14により検出される。また、インテークマニホールド11を構成するコレクター部(サージタンク)の内部には、インテークマニホールド11内の圧力(吸気マニホールド圧力)を検出するバキュームセンサ30が配設されている。さらに、スロットルバルブ13には、該スロットルバルブ13の開度を検出するスロットル開度センサ31が配設されている。
【0014】
シリンダヘッドには、気筒毎に吸気ポート22と排気ポート23とが形成されている(
図1では片バンクのみ示した)。各吸気ポート22、排気ポート23それぞれには、該吸気ポート22、排気ポート23を開閉する吸気バルブ24、排気バルブ25が設けられている。吸気バルブ24を駆動する吸気カム軸28と吸気カムプーリとの間には、吸気カムプーリと吸気カム軸28とを相対回動してクランク軸10aに対する吸気カム軸28の回転位相(変位角)を連続的に変更して、吸気バルブ24のバルブタイミング(開閉タイミング)を進遅角する可変バルブタイミング機構26が配設されている。この可変バルブタイミング機構26により吸気バルブ24の開閉タイミングがエンジン運転状態に応じて可変設定される。
【0015】
同様に、排気カム軸29と排気カムプーリとの間には、排気カムプーリと排気カム軸29とを相対回動してクランク軸10aに対する排気カム軸29の回転位相(変位角)を連続的に変更して、排気バルブ25のバルブタイミング(開閉タイミング)を進遅角する可変バルブタイミング機構27が配設されている。この可変バルブタイミング機構27により排気バルブ25の開閉タイミングがエンジン運転状態に応じて可変設定される。
【0016】
エンジン10の各気筒には、シリンダ内に燃料を噴射するインジェクタ12が取り付けられている。インジェクタ12は、高圧燃料ポンプ60により加圧された燃料を各気筒の燃焼室内へ直接噴射する。
【0017】
インジェクタ12は、デリバリーパイプ(コモンレール)61に接続されている。デリバリーパイプ61は、高圧燃料ポンプ60から燃料配管62を通じて圧送されてきた燃料を各インジェクタ12に分配するものである。高圧燃料ポンプ60は、燃料タンク80からフィードポンプ(低圧燃料ポンプ)64により吸い上げられた燃料を、運転状態に応じて高圧(例えば、8~13MPa)に昇圧してデリバリーパイプ61へ供給する。なお、本実施形態では、高圧燃料ポンプ60として、エンジン10のカム軸28によって駆動される形式のものを用いた。
【0018】
各気筒のシリンダヘッドには、混合気に点火する点火プラグ17、及び該点火プラグ17に高電圧を印加するイグナイタ内蔵型コイル21が取り付けられている。エンジン10の各気筒では、吸入された空気とインジェクタ12によって噴射された燃料との混合気が点火プラグ17により点火されて燃焼する。燃焼後の排気ガスは排気管18を通して排出される。
【0019】
排気管18(集合部の下流かつ後述する排気浄化触媒20の上流)には、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比を検知する空燃比センサ19Aが取り付けられている。空燃比センサ19Aとしては、排ガス中の酸素濃度、未燃ガス濃度に応じた電気信号(すなわち混合気の空燃比に応じた電気信号)を出力でき、空燃比をリニアに検出することができるリニア空燃比センサ(LAFセンサ)が用いられる。
【0020】
また、空燃比センサ19Aの下流には排気浄化触媒(CAT)20が配設されている。排気浄化触媒20は三元触媒であり、排気ガス中の炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)の酸化と、窒素酸化物(NOx)の還元を同時に行い、排気ガス中の有害ガス成分を無害な二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)及び窒素(N2)に清浄化するものである。排気浄化触媒20の下流には、排気空燃比をオン-オフ的に検出するリヤ(CAT後)O2センサ19Bが設けられている。
【0021】
エンジン10(インジェクタ12)に供給される燃料が貯留される燃料タンク80には、キャニスタ70が接続されている。燃料タンク80の上部空間に溜まる燃料蒸発ガス(エバポ)は、キャニスタ70に導かれ、キャニスタ70内の活性炭等の吸着材により一時的に吸着される。キャニスタ70には外気を導入するための大気ポート71が設けられている。また、キャニスタ70の上層の空間部は、インテークマニホールド11に、パージ通路72を通して連通されている。このパージ通路72には、ECU50によって開度が調節される可変流量電磁弁(以下「パージソレノイドバルブ」ともいう)73が介装されている。
【0022】
パージソレノイドバルブ73が開弁されてインテークマニホールド11における負圧がキャニスタ70のパージ通路72に作用すると、キャニスタ70内に大気ポート71から空気が導入され、キャニスタ70内の活性炭等に吸着されている燃料蒸発ガスが脱離される。脱離された燃料蒸発ガスは、大気ポート71から導入された空気と共にパージ通路72を通じてエンジン10のインテークマニホールド11に吸入される。
【0023】
また、加えて、例えば吸気管15に吹き返される燃料(すなわち炭化水素(HC))を吸着するため、吸気管15を通してエンジン10に吸入される吸入空気量を検出するエアフローメータ14の上流側、かつ、エアクリーナ16の下流側には、炭化水素を吸着する炭化水素吸着材751を含む吸気キャニスタ75が配設されている。吸気キャニスタ75は、例えば、エアクリーナ16と平行に並べて、吸気管内部を横切るように(吸気管15と直交するように)配設されている。
【0024】
吸気キャニスタ75は、主として、炭化水素を吸着する炭化水素吸着材751と、炭化水素吸着材751を挟持する一対の通気性を有するシート752とを有して構成されている。一対のシート752は、例えば矩形に形成され、外縁部(外周部)が全周にわたって、例えばヒートシール等により密着(シール)されている。すなわち、吸気キャニスタ75は、枠状のヒートシール部753を有している。なお、吸気キャニスタ75(一対のシート752)の外形は矩形に限られることなく、例えば、円形等に形成されていてもよい。
【0025】
炭化水素吸着材751としては、例えば、粒状(球形)の活性炭等が好適に用いられる。また、一対のシート752としては、例えば、エアクリーナ16と同様に、通気性及び不燃性(又は難燃性)を有する濾紙や不織布等が好適に用いられる。
【0026】
吸気キャニスタ75は、アクチュエータ51により、その位置を動かす(変える)ことができるように構成されている。アクチュエータ51は、吸気キャニスタ75を、例えば、吸気管15の径方向に動かす(移動させる)。その際に(より詳細には)、アクチュエータ51は、吸気キャニスタ75の対角線方向(例えば、
図2における右斜め上方向=左斜め下方向)に、吸気キャニスタ75を動かすことが好ましい。なお、アクチュエータ51が、吸気キャニスタ75の縦方向及び横方向(2方向)に、吸気キャニスタ75を動かす構成としてもよい。
【0027】
ここで、アクチュエータ51としては、例えば、印加される電流に応じてプランジャが直線的に動く(進退する)リニアソレノイド、又は、電動モータと、モータ軸の回転運動を直線運動に変換するラックアンドピニオンやボールねじ等の変換機構との組み合わせ等を用いることができる。なお、アクチュエータ51はECU50により制御される。
【0028】
上述したエアフローメータ14、空燃比センサ19A、O2センサ19B、バキュームセンサ30、スロットル開度センサ31に加え、エンジン10のカムシャフト近傍には、エンジン10の気筒判別を行うためのカム角センサ32が取り付けられている。また、エンジン10のクランク軸10a近傍には、クランク軸10aの回転位置を検出するクランク角センサ33が取り付けられている。ここで、クランク軸10aの端部には、例えば、2歯欠歯した34歯の突起が10°間隔で形成されたタイミングロータ33aが取り付けられており、クランク角センサ33は、タイミングロータ33aの突起の有無を検出することにより、クランク軸10aの回転位置を検出する。カム角センサ32及びクランク角センサ33としては、例えば電磁ピックアップ式のものなどが用いられる。
【0029】
これらのセンサは、ECU50に接続されている。さらに、ECU50には、エンジン10の冷却水の温度を検出する水温センサ34、潤滑油の温度を検出する油温センサ35、アクセルペダルの踏み込み量(操作量)を検出するアクセルセンサ36、及び吸入空気温度を検出する吸気温センサ37等の各種センサも接続されている。
【0030】
ECU50は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するEEPROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、バッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び入出力I/F等を有して構成されている。また、ECU50は、インジェクタ12を駆動するインジェクタドライバ、点火信号を出力する出力回路、及び、電子制御式スロットルバルブ13(電動モータ13a)を駆動するモータドライバ等を備えている。さらに、ECU50は、パージソレノイドバルブ73やアクチュエータ51を駆動するドライバ等も備えている。
【0031】
ECU50では、カム角センサ32の出力から気筒が判別され、クランク角センサ33の出力からエンジン回転数が求められる。また、ECU50では、上述した各種センサから入力される検出信号に基づいて、吸入空気量、吸気管負圧、アクセルペダル開度、混合気の空燃比、吸入空気温度、及びエンジン10の水温や油温等の各種情報が取得される。そして、ECU50は、取得したこれらの各種情報に基づいて、燃料噴射量や点火時期、及び、スロットルバルブ13や、パージソレノイドバルブ73、アクチュエータ51等の各種デバイスを制御することによりエンジン10を総合的に制御する。
【0032】
特に、ECU50は、エアフローメータ14の上流側において、吸気管内部を横切るように吸気キャニスタ75が配設される場合であっても、エアフローメータ14の出力特性がずれることを抑制する機能を有している。ECU50では、EEPROM等に記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることにより、当該機能が実現される。
【0033】
そのため、ECU50は、アクチュエータ51を制御(駆動)して、吸気キャニスタ75の位置を調節する。その際に、ECU50は、エアフローメータ14の出力特性の基準特性(基準値)からのずれ(偏差)がより小さくなるように(縮小するように)アクチュエータ51を制御して、吸気キャニスタ75の位置を調節する。
【0034】
より具体的には、ECU50は、例えば、所定の学習条件が満足された場合に、検知された実空燃比と目標空燃比(例えば14.7(理論空燃比))とのずれ、又は、実空気過剰率(実空燃比/理論空燃比)と目標空気過剰率(例えば、λ=1)とのずれを学習する。そして、ECU50は、該学習値の変化幅(振幅)がより小さくなるようにかつ該学習値がゼロに近づくように、アクチュエータ51を制御して、吸気キャニスタ75の位置を調節する。
【0035】
なお、その際に、ECU50は、例えば、ずれの大きさに応じて、吸気キャニスタ75の目標調節量(目標移動量)を定める。また、ECU50は、例えば、空燃比がリッチ側(空気過剰率λ<1)にずれているか、リーン側(空気過剰率λ>1)にずれているかにより、吸気キャニスタ75の調節方向(移動方向)を定める。
【0036】
次に、
図4を参照しつつ、蒸発燃料処理装置1の動作について説明する。ここで、
図4、蒸発燃料処理装置1による吸気キャニスタ75の位置調節処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、ECU50において、所定のタイミングで繰り返して実行される。
【0037】
まず、ステップS100では、空燃比センサ19Aにより検知された実空燃比が読み込まれる。続いて、ステップS102では、所定の学習条件が成立した場合に、検知された実空燃比と目標空燃比とのずれ(又は実空気過剰率と目標空気過剰率とのずれでもよい)が学習される。
【0038】
次に、ステップS104では、学習値の変化幅(振幅)がより小さくなるように(縮小するように)かつ該学習値がゼロに近づくように、アクチュエータ51が制御されて、吸気キャニスタ75の位置が調節される。なお、吸気キャニスタ75の位置の調節方法については、上述したとおりであるので、ここでは詳細な説明を詳細する。そして、その後、本処理から一旦抜ける。
【0039】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、エアフローメータ14の出力特性の基準特性からのずれがより小さくなるようにアクチュエータ51が制御されて、吸気キャニスタ75の位置が調節される。そのため、エアフローメータ14の出力特性を基準特性に近づけるように(すなわち、基準特性とのずれを解消するように)吸気キャニスタ75の位置を調節することができる。その結果、エアフローメータ14の上流側において、吸気管内部を横切るように吸気キャニスタ75が配設される場合であっても、エアフローメータ14の出力特性がずれることを抑制することが可能となる。
【0040】
より具体的には、本実施形態によれば、検知された実空燃比と目標空燃比とのずれ、又は、実空気過剰率と目標空気過剰率とのずれが学習され、該学習値の変化幅(振幅)がより小さくなるように(縮小するように)かつ該学習値がゼロに近づくように、アクチュエータ51が制御されて、吸気キャニスタ75の位置が調節される。そのため、より適確に、エアフローメータ14の出力特性のずれを解消することが可能となる。
【0041】
本実施形態によれば、吸気管15の径方向、かつ、矩形の吸気キャニスタ75の対角線方向(一方向)に、吸気キャニスタ75が動かされるため、一方向の移動(調節)により、より効果的にエアフローメータ14の出力特性のずれを解消することが可能となる。
【0042】
特に、本実施形態によれば、例えば、吸気キャニスタ75が、炭化水素吸着材751を挟持する一対の通気性を有するシート752を有し、該一対のシート752の外縁部が全周にわたって密着(シール)されている場合において、吸気キャニスタ75のヒートシール部753シール幅がばらついたとしても(製造ばらつきがあったとしても)、その悪影響を抑制することができる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、
図5を用いて、第2実施形態に係る蒸発燃料処理装置2について説明する。
図5は、蒸発燃料処理装置2、及び、蒸発燃料処理装置2が適用されたエンジン10の構成を示す図である。なお、
図5において第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。
【0044】
蒸発燃料処理装置2は、吸気キャニスタ75と平行に並べて配設される板状部材76をさらに備えている点で、上述した蒸発燃料処理装置1(第1実施形態)と異なっている。
【0045】
ここで、板状部材76は、例えば、吸気キャニスタ75の枠状(枠型)のヒートシール部753と同様の形状、すなわち、枠状(枠型)に形成される。ただし、板状部材76は、要件等に応じて、例えば、帯状やL字状等に形成されてもよい。
【0046】
また、蒸発燃料処理装置2は、アクチュエータ51が、吸気キャニスタ75に代えて、板状部材76の位置を動かす点で、上述した蒸発燃料処理装置1(第1実施形態)と異なっている。なお、アクチュエータ51の構成は、上述した第1実施形態のものと同一又は同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0047】
なお、その際に、ECU50は、エアフローメータ14の出力特性の基準特性からのずれ(偏差)がより小さくなるように(縮小するように)アクチュエータ51を制御して、板状部材76の位置を調節する。より具体的には、ECU50は、検知された実空燃比と目標空燃比とのずれ、又は、実空気過剰率と目標空気過剰率とのずれを学習し、該学習値の変化幅(振幅)がより小さくなるように、かつ該学習値がゼロに近づくように、アクチュエータ51を制御して、板状部材76の位置を調節する。
【0048】
なお、その他の構成は、上述した蒸発燃料処理装置1(第1実施形態)と同一または同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0049】
本実施形態によれば、エアフローメータ14の出力特性の基準特性からのずれがより小さくなるようにアクチュエータ51が制御されて、板状部材76の位置が調節される。より具体的には、本実施形態によれば、検知された実空燃比と目標空燃比とのずれ、又は、実空気過剰率と目標空気過剰率とのずれが学習され、該学習値の変化幅(振幅)がより小さくなるように、かつ該学習値がゼロに近づくように、アクチュエータ51が制御されて、板状部材76の位置が調節される。そのため、エアフローメータ14の出力特性を基準特性に近づけるように(すなわち、基準特性とのずれを解消するように)板状部材76の位置を調節することができ、適確に、エアフローメータ14の出力特性のずれを解消することが可能となる。
【0050】
その結果、上述した第1実施形態と同様に、エアフローメータ14の上流側において、吸気管内部を横切るように炭化水素吸着材751を含む吸気キャニスタ75が配設される場合であっても、エアフローメータ14の出力特性がずれることを抑制することが可能となる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、吸気キャニスタ75の形状や素材等は上記実施形態には限られない。また、アクチュエータ51の構成等も上記実施形態には限られない。
【0052】
上記第2実施形態では、板状部材76を、吸気キャニスタ75と平行に並べて配設したが、例えば、板状部材76を、吸気キャニスタ75と略直交するように配設してもよい。
【0053】
なお、上記実施形態では、本発明を筒内噴射式のエンジンに適用した場合を例にして説明したが、本発明は、ポート噴射式のエンジンにも適用することができる。同様に、上記実施形態では、本発明をガソリンエンジン車に適応したが、本発明は、HEV(ハイブリッド車)や、PHEV(プラグイン・ハイブリッド車)等に搭載されるエンジンにも適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1、2 蒸発燃料処理装置
10 エンジン
14 エアフローメータ
15 吸気管
16 エアクリーナ
19A 空燃比センサ(LAFセンサ)
19B O2センサ
50 ECU
51 アクチュエータ
70 キャニスタ
71 大気ポート
72 パージ配管
73 可変流量電磁弁(パージソレノイドバルブ)
75 吸気キャニスタ
751 炭化水素吸着材(活性炭)
752 シート
753 ヒートシール部
76 板状部材
80 燃料タンク