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特開2024-165209サクションバケット及びサクションバケットの貫入方法
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  • 特開-サクションバケット及びサクションバケットの貫入方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165209
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】サクションバケット及びサクションバケットの貫入方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 23/08 20060101AFI20241121BHJP
   E02D 27/52 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
E02D23/08 Z
E02D27/52 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081148
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100197848
【弁理士】
【氏名又は名称】石塚 良一
(72)【発明者】
【氏名】栗本 卓
(72)【発明者】
【氏名】松岡 義博
(72)【発明者】
【氏名】小山 宏人
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 悠紀
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046DA61
(57)【要約】
【課題】従来工法で貫入が困難な地盤であっても、サクションバケットを効果的に貫入・沈設することが可能な、サンクションバケット及びサクションバケットの貫入方法を提供する。
【解決手段】上部構造物と接続される頂版部12と、該頂版部12から下方に向けて一体に延設される筒状の側壁部11と、を少なくとも有するサクションバケット10であって、前記側壁部11の上端部には、バイブロハンマ20によって挟持される被挟持部材13が設けられることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造物と接続される頂版部と、該頂版部から下方に向けて一体に延設される筒状の側壁部と、を少なくとも有するサクションバケットであって、
前記側壁部の上端部には、バイブロハンマによって挟持される被挟持部材が設けられる
ことを特徴とするサクションバケット。
【請求項2】
前記被挟持部材は、前記側壁部の上端部に複数箇所設けられる
請求項1に記載のサクションバケット。
【請求項3】
前記バイブロハンマは水中で前記側壁部を加震することが可能である
請求項1又は2に記載のサクションバケット。
【請求項4】
上部構造物と接続される頂版部と、該頂版部から下方に向けて一体に延設される筒状の側壁部と、を少なくとも有するサクションバケットの貫入方法であって、
前記側壁部の上端部に、バイブロハンマによって挟持する被挟持部材を設ける被挟持部材設置ステップと、
前記被挟持部材に前記バイブロハンマを挟持させる挟持ステップと、
前記バイブロハンマによって前記側壁部を加震して該側壁部を水底地盤中に貫入させる加震貫入ステップと、を少なくとも有する
ことを特徴とするサクションバケットの貫入方法。
【請求項5】
前記サクションバケット内の海水を排水して前記側壁部を水底地盤中に貫入させる排水貫入ステップを有する
請求項4に記載のサクションバケットの貫入方法。
【請求項6】
前記加震貫入ステップと前記排水貫入ステップとを同時に並行して行う
請求項5に記載のサクションバケットの貫入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上構造部の基礎として利用されるサクションバケット、及び、当該サクションバケットの貫入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上風力発電など、洋上構造物の基礎工法として、従来からサクション基礎工法が利用されている。当該サクション基礎工法では、洋上風車等の上部構造物と接続される頂版部と、当該頂版部から下方に向けて一体に延設された筒状の側壁部とを備えたサクションバケットが用いられる。
【0003】
そして、側壁部の先端を水底地盤中に貫入させた状態で、頂版部と側壁部と水底地盤とで画成された領域から海水を排出し、サクション荷重を作用させ、サクションバケットを所定の深度まで貫入させて沈設する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-023838
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、サクションバケットの設置時に、想定よりも地盤の貫入抵抗が大きく、排水のみでサクションバケットを貫入することが困難になる場合がある。このような場合、一度、サクションバケットの内部に海水を注水して撤去し、当該サクションバケットの再貫入を試みるが、それでも貫入ができない場合は、サクションバケットの設置位置を変更する必要がある。
【0006】
例えば、サクションバケットを洋上風車の基礎に適応していた場合、設置位置を変更すると、発電量予測やケーブルルートの見直し、地元関係者との再協議等が必要になり、プロジェクトに与える影響は大きい。
【0007】
そこで本願発明は、上記した問題点等に鑑み、従来工法で貫入が困難な地盤であっても、サクションバケットを効果的に貫入・沈設することが可能な、サンクションバケット及びサクションバケットの貫入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)に係る発明は、上部構造物と接続される頂版部と、該頂版部から下方に向けて一体に延設される筒状の側壁部と、を少なくとも有するサクションバケットであって、前記側壁部の上端部には、バイブロハンマによって挟持される被挟持部材が設けられることを特徴とするサクションバケットである。
【0009】
(2)に係る発明は、前記被挟持部材は、前記側壁部の上端部に複数箇所設けられる上記(1)に記載のサクションバケットである。
【0010】
(3)に係る発明は、前記バイブロハンマは水中で前記側壁部を加震することが可能である上記(1)又は(2)に記載のサクションバケットである。
【0011】
(4)に係る発明は、上部構造物と接続される頂版部と、該頂版部から下方に向けて一体に延設される筒状の側壁部と、を少なくとも有するサクションバケットの貫入方法であって、前記側壁部の上端部に、バイブロハンマによって挟持する被挟持部材を設ける被挟持部材設置ステップと、前記被挟持部材に前記バイブロハンマを挟持させる挟持ステップと、前記バイブロハンマによって前記側壁部を加震して該側壁部を水底地盤中に貫入させる加震貫入ステップと、を少なくとも有することを特徴とするサクションバケットの貫入方法である。
【0012】
(5)に係る発明は、前記サクションバケット内の海水を排水して前記側壁部を水底地盤中に貫入させる排水貫入ステップを有する上記(4)に記載のサクションバケットの貫入方法である。
【0013】
(6)に係る発明は、前記加震貫入ステップと前記排水貫入ステップとを同時に並行して行う上記(5)に記載のサクションバケットの貫入方法である。
【発明の効果】
【0014】
上記(1)、(4)~(6)に係る発明によれば、サクションバケットの側壁部の上端部に、バイブロハンマによって挟持される被挟持部材が設けるという、従来のサクションバケットでは成し得なかった革新的な構成により、サクションバケット内からの排水により得られるサクション(排水によってサクションバケット内が静水圧以下となること)に加え、バイブロハンマの挟持が可能となることから、バイブロハンマの起震力によって側壁部の水底地盤への貫入を促進することが可能となる。
【0015】
したがって、従来型のサクションバケットでは貫入が困難な水底地盤においても、サクションバケットの貫入・沈設が可能となり、サクションバケットの計画設置位置の変更や再貫入作業が不要となるほか、貫入の促進効果により、貫入作業の時間を短縮してコスト削減や工期短縮を図ることが可能となる。
【0016】
上記(2)に係る発明によれば、被挟持部材を側壁部の上端部に複数箇所設けることにより、バイブロハンマを複数台挟持させることが可能となり、サクションバケット全体をスムーズに貫入することができる。加えて、側壁部の一部が高止まりして、サクションバケットが傾斜してしまった場合でも、当該高止まり箇所のバイブロハンマを起震させて貫入させることが可能となる。
【0017】
上記(3)に係る発明によれば、水中で使用できないバイブロハンマを使用する場合、被挟持部材にヤットコ(バイブロハンマを水中に入れないように被挟持部材を海面上まで延長する部材)などを接続して、バイブロハンマの起震力を側壁部に伝えることが可能であるところ、水中で側壁部を加震することが可能なバイブロハンマを使用することで、ヤットコなどを使用することなく、作業手間を大幅に抑えて効率的にサクションバケットを貫入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】サクションバケットの貫入態様の基本原理を説明する断面図である。
図2】本発明の一実施形態における、サクションバケットの構成を説明する斜視図である。
図3】本発明の一実施形態における、サクションバケットの貫入態様を説明する斜視図である。
図4】本発明の一実施形態における、バイブロハンマによるサクションバケットの貫入態様を説明する斜視図である。
図5】本発明の一実施形態において、サクションバケット一部が高止まりした場合の貫入態様を説明する斜視図である。
図6】本発明の効果確認にける、縮小模型実験の実施態様を説明する断面図である。
図7】縮小模型実験におけるサクションバケット模型の上面図である。
図8】縮小模型実験におけるサクションバケット模型の貫入量の経時変化を示すグラフである。
図9】縮小模型実験の経過時間1200~2300secにおける各測定結果を示すグラフである。
図10】縮小模型実験の経過時間2400~3400secにおける各測定結果を示すグラフである。
図11】縮小模型実験の経過時間3200~4200secにおける各測定結果を示すグラフである。
図12】縮小模型実験の経過時間4700~5800secにおける各測定結果を示すグラフである。
図13】縮小模型実験の経過時間5800~6800secにおける各測定結果を示すグラフである。
図14】縮小模型実験の経過時間6800~7800secにおける各測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明のサクションバケット及びサクションバケットの貫入方法の一実施形態について説明する。
【0020】
図1には、本発明の前提構成となるサクションバケット及びその貫入方法について概略断面図が示されている。サクションバケット10は、不図示の上部構造物と接続される頂版部12と、当該頂版部12から下方に向けて一体に延設される筒状の側壁部11とを少なくとも有し、円筒形の側壁部11が水底地盤中に貫入され沈設されることで、上部構造物の安定性を確保する構造となっている。
【0021】
より詳細には、側壁部11及び頂版部12と水底地盤面で囲まれたサクションバケット10内に満たされている海水(図示斜線部)を、配管40を通してポンプで吸引・排水し、サクションバケット10内における水圧の低減によって得られるサクション(排水によってサクションバケット10内が静水圧以下となること)と、サクションバケット10の自重によって側壁部11を貫入することが可能となっている。
【0022】
次に、図2には、本実施形態におけるサクションバケット10の一例が概略斜視図で示されている。すなわち、不図示の上部構造物と接続される頂版部12と、当該頂版部12から下方に向けて一体に延設される筒状の側壁部11とを少なくとも有している。
【0023】
さらに、側壁部11の上端部には、バイブロハンマ20によって挟持される被挟持部材13が設けられ、図示される実施形態では4台のバイブロハンマ20が被挟持部材13を挟持可能に構成されている。そして、バイブロハンマ20は水中で側壁部11を加震することが可能となっている。
【0024】
加えて、頂版部12には、側壁部11と水底地盤面で囲まれた空洞内の海水を排水可能な配管40が接続されており、不図示のポンプを作動させて空洞内の海水を排水することができる。
【0025】
(サクションバケットの貫入方法)
続いて、本実施形態におけるサクションバケットの貫入方法について説明する。従来と同様、起重機船やクレーン付台船などによりサクションバケット10は吊り上げられ、設置場所において水中へ沈設される。図2等に示される例では、バイブロハンマ20が被挟持部材13を挟持することで揚重することが可能となる例を示しているが、サクションバケット10の重量や、その他安全上の配慮により、別途、サクションバケット10にフックを掛けて揚重することも可能である。
【0026】
また、バイブロハンマ20は垂直の懸垂する必要があることから、図示されるように吊り枠30を使用することが好ましい。
【0027】
続いて、図3に示されるように、サクションバケット10が水底地盤面に着底すると、サクションバケット10の自重によってある程度側壁部11が貫入する。その後、配管40を通してポンプで海水を排水し、水圧の低減によって得られるサクションによってさらに側壁部11を貫入させることができる。
【0028】
このとき、例えば、水底地盤の貫入抵抗が大きく、排水のみでサクションバケット10を貫入することが困難になってサクションバケット10が高止まりしてしまうような場合は、図4に示されるように、バイブロハンマ20を起震させ、側壁部11を加振させることで貫入を促進させることが可能となっている。
【0029】
また、例えば、図5に示されるように、一部の水底地盤の貫入抵抗が大きく、排水のみでサクションバケット10を貫入することが困難になった場合は、該当箇所近傍のバイブロハンマ20を起震させ、側壁部11を加振させることで、サクションバケット10の姿勢の修正や、該当箇所の貫入を促進させることが可能となる。
【0030】
以上、バイブロハンマ20を使用したサクションバケット10の貫入方法について説明したが、必ずしも前述した方法に限定されるものではない。
【0031】
例えば、図示した実施形態では、被挟持部材13を4箇所に設けて、4台のバイブロハンマ20を挟持可能に構成したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、被挟持部材13を2箇所以上の任意の箇所に設けることが可能である。また、被挟持部材13を複数箇所に設けて、貫入が困難になった箇所にのみ1台のバイブロハンマ20を挟持させて貫入することも可能である。
【0032】
また、前述した実施形態では、サクションバケット10の貫入が困難になった場合にバイブロハンマ20を起震する例を示したが、必ずしもこのような形態に限定されるものではなく、常時、バイブロハンマ20を起震させて貫入することが可能であり、このようにすることで、貫入に要する時間を従来よりも短縮することが可能となる。
【0033】
特に、海水の排水と同時並行してバイブロハンマ20により側壁部11を加震することで、貫入が促進されて、貫入作業の時間を短縮してコスト削減や工期短縮を図ることが可能となる。
【0034】
(縮小模型による検証実験)
次に、本発明のサクションバケット及びサクションバケットの貫入方法について、縮小模型による検証実験によって効果確認を行ったので以下に説明する。
【0035】
図6には、縮小模型実験の実施態様を説明する断面図が、図7には、サクションバケット模型の上面図が示されている。図示されるように、礫層及び砂層を形成し、表面に水を張ったコンテナ容器に、サクションバケット模型を配置して貫入試験を実施した。なお、サクションバケット模型はφ508mm、長さ700mm、厚さ9mmで気中重量は125kgとなっている。
【0036】
サクションバケット模型の側壁部の下端部には、図示されるように2つの土圧計を設け、その他、図示されるように水圧計及び加速度計を設置し、サクションバケット模型内の減圧用配管は不図示のバキュームポンプに接続されている。また、図7に示されるように、本発明のバイブロハンマ20に相当する4つの小型バイブレータ(空気式ボールバイブレータを使用)を、側壁部の上端部に複数設置している。
【0037】
図8には、縮小模型実験におけるサクションバケット模型の貫入量の経時変化を示すグラフが示されており、図示されるT1~T16は、実験中の各イベントを示している。
【0038】
また、図9には縮小模型実験の経過時間1200~2300sec、図10には経過時間2400~3400sec、図11には経過時間3200~4200sec、図12には経過時間4700~5800sec、図13には経過時間5800~6800sec、図14には経過時間6800~7800secにおける貫入量を含む各測定結果がグラフで示されている。
【0039】
本検証実験では、サクションバケット模型を揚重しながら深さ6cmまで自重で貫入させ、6cm以深はサクションバケット模型の自重による貫入とバイブレータ作動による貫入を行っている。さらに20cm以深はサクション貫入とバイブレータ作動による貫入を併用している。
【0040】
図9に示されるように、「T1」では、サクションバケット模型の平均貫入深度57mmから所定のバイブ空圧(P1)にてバイブレータV(a)及びV(b)の2台を起振している。「T1」直後の貫入速度は31.1mm/minであった。さらに、「T2」では、サクションバケット模型の平均貫入深度94mmから所定のバイブ空圧(P1)にてバイブレータV(a)及びV(b)の2台を再び起振し、「T2」直後の貫入速度は5.3mm/minであった。いずれも加振直後は頂版部直下のサクション圧は変化せず、側壁部下部の過剰間隙水圧は微増する傾向にあった。
【0041】
図10に示されるように、「T3」では、サクションバケット模型の平均貫入深度103mmから所定のバイブ空圧(P1)にてバイブレータV(a)及びV(b)の2台を起振している。「T3」直後の貫入速度は6.7mm/minと、「T2」直後とほぼ同等の貫入速度であった。さらに、「T4」では、サクションバケット模型の平均貫入深度114mmから所定のバイブ空圧(P1)にてバイブレータV(a)及びV(b)の2台を再び起振し、加えて、所定のバイブ空圧(P2)にてバイブレータV(c)及びV(d)、計4台にて起振している。起振力の増大により、「T4」直後の貫入速度は54.8mm/minまで上昇した。いずれも加振直後は頂版部直下のサクション圧は変化せず、側壁部下部の過剰間隙水圧は微増する傾向にあった。
【0042】
図11に示されるように、「T5」では、サクションバケット模型の平均貫入深度178mmから所定のバイブ空圧(P2)にてバイブレータV(c)及びV(d)の2台を起振している。「T5」直後の貫入速度は2.8mm/minであった。さらに、「T6」では、サクションバケット模型の平均貫入深度182mmから所定のバイブ空圧(P1)にてバイブレータV(a)及びV(b)の2台、加えて、所定のバイブ空圧(P2)にてバイブレータV(c)及びV(d)、計4台にて起振している。「T6」直後の貫入速度は2.6mm/minであった。
【0043】
図12に示されるように、「T7」では、サクションバケット模型の平均貫入深度186mmから所定のバイブ空圧(P1)にてバイブレータV(a)及びV(b)の2台、加えて、所定のバイブ空圧(P2)にてバイブレータV(c)及びV(d)、計4台にて起振している。「T7」直後の貫入速度は1.5mm/minであった。
【0044】
「T8」以降では、バキュームポンプを作動させ、サクションバケット模型内の減圧(-2kPa)を実施した。すなわち、これ以降はバイブレータとサクション圧を併用してサクションバケット模型の貫入を行った。そして、「T9」では、サクションバケット模型の平均貫入深度205mmから所定のバイブ空圧(P1)にてバイブレータV(a)及びV(b)の2台を起振している。「T9」直後の貫入速度は18.9mm/minであった。さらに「T10」では、サクションバケット模型の平均貫入深度224mmから所定のバイブ空圧(P1)にてバイブレータV(a)及びV(b)の2台を再度起振している。「T10」直後の貫入速度は6.9mm/minであった。なお、「T9」の加振直後は、頂版部直下および側壁部下部で過剰間隙水圧が1.5kPa程度生じる結果となり、「T10」の加振直後は、頂版部直下および側壁部下部で過剰間隙水圧が0.5kPa以内でわずかに生じる程度の結果となった。
【0045】
図13に示されるように、「T11」では、サクションバケット模型の平均貫入深度232mmから所定のバイブ空圧(P2)にてバイブレータV(c)及びV(d)の2台を起振している。「T11」直後の貫入速度は6.9mm/minであった。さらに「T12」では、サクション圧を-2kPaから-3kPaへ増大させ、サクションバケット模型の平均貫入深度262mmから所定のバイブ空圧(P1)にてバイブレータV(a)及びV(b)の2台を起振している。「T12」直後の貫入速度は22.2mm/minであった。「T13」では、サクション圧をさらに-3kPaから-4kPaへ増大させ、サクションバケット模型の平均貫入深度298mmから所定のバイブ空圧(P2)にてバイブレータV(c)及びV(d)の2台を起振している。「T13」直後の貫入速度は30.5mm/minであった。上記のようなサクション圧の増大に伴い、加振直後の頂版部直下と側壁部下部の過剰間隙水圧も増大する傾向がみられた。
【0046】
図14に示されるように、「T14」では、サクション圧を-4kPaから-5kPaへさらに増大させ、サクションバケット模型の平均貫入深度337mmから所定のバイブ空圧(P1)にてバイブレータV(a)及びV(b)の2台、加えて、所定のバイブ空圧(P2)にてバイブレータV(c)及びV(d)、計4台にて起振している。「T14」直後の貫入速度は26.9mm/minであった。「T14」における加振の後、7150秒あたりから頂版部直下のサクション圧が低下している。その後、「T15」で「T14」と同様に加振したが、加振中、頂版部直下のサクション圧が急激に増減していることや、貫入速度が1.7mm/secとなって概ね高止まりしたことから、側壁部の下端部が砂礫層に到達したものと推察され、「T16」における「T14」、「T15」と同様の加振実施後も、この状態は変わらなかった。
【0047】
以上のような検証実験の結果から、側壁部を加振することによって極めて効果的に水底地盤の貫入抵抗を低減させ、貫入の促進に寄与することが確認された。加えて、サクション貫入を並行して加振することで、その相乗効果によって貫入を促進させることができることが確認された。
【0048】
そして、従来のサクションバケットでは想定し得なかった革新的な加振構成により、サクションバケットの計画設置位置の変更や再貫入作業が不要となるほか、貫入の促進効果により、貫入作業の時間を短縮してコスト削減や工期短縮を図ることが可能となる。
【0049】
以上、本発明の実施形態及び別実施形態、検証実験の結果について説明したが、本発明は必ずしも上記各実施形態に限定されるものではない。
【0050】
本発明の範囲は、上記した各実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。また、上記実施形態に記載された具体的な材質、寸法形状等は本発明の課題を解決する範囲において、変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 サクションバケット
11 側壁部
12 頂版部
13 被挟持部材
20 バイブロハンマ
30 吊り枠
40 配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14