(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165215
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】皮膚外用剤、水溶液、化粧料、および水溶液への抗菌性付与方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/20 20060101AFI20241121BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20241121BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241121BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241121BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241121BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241121BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20241121BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20241121BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A61K35/20
A61K35/12
A61P17/00 101
A61P31/04
A61K9/08
A61K47/10
A61K8/34
A61K8/98
A61Q17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081158
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(71)【出願人】
【識別番号】000119472
【氏名又は名称】一丸ファルコス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 千尋
(72)【発明者】
【氏名】禹 幸玉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仁美
(72)【発明者】
【氏名】辻 祐太朗
(72)【発明者】
【氏名】中村 紀幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢一
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB31
4C076CC31
4C076DD38
4C076FF36
4C076FF63
4C083AA071
4C083AA072
4C083AC111
4C083AC112
4C083BB51
4C083CC02
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE12
4C083EE13
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB39
4C087CA02
4C087CA06
4C087MA05
4C087MA17
4C087MA63
4C087NA03
4C087ZB35
(57)【要約】
【課題】保存安定性に優れた乳由来のエキスを含有する皮膚外用剤と水溶液、この水溶液を含む化粧料、およびこの水溶液への抗菌性付与方法を提供すること。
【解決手段】乳由来エキスと3質量%以上12質量%以下のペンチレングリコールを含有し、乳由来エキスが細胞外小胞を含有する皮膚外用剤、乳由来エキスと3質量%以上12質量%以下のペンチレングリコールを含有する水溶液と、この水溶液を含有する化粧料、および乳由来エキスを含有する水溶液に、最終濃度が3質量%以上12質量%以下となるようにペンチレングリコールを添加する抗菌性付与方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳由来エキスと、3質量%以上12質量%以下のペンチレングリコールを含有し、
前記乳由来エキスが、細胞外小胞を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
乳由来エキスと、3質量%以上12質量%以下のペンチレングリコールを含有することを特徴とする水溶液。
【請求項3】
前記乳由来エキスが、細胞外小胞を含有することを特徴とする請求項2に記載の水溶液。
【請求項4】
請求項2または3に記載の水溶液を含有する化粧料。
【請求項5】
乳由来エキスを含有する水溶液に、
最終濃度が3質量%以上12質量%以下となるようにペンチレングリコールを添加することを特徴とする抗菌性付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳に由来するエキスを含有する皮膚外用剤と水溶液、この水溶液を含む化粧料、および、この水溶液への抗菌性付与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エクソソームは、様々な細胞から分泌される膜小胞で、細胞外小胞の一種である。発見当初は、不要な細胞内容物の放出に関与すると考えられており、その機能は不明な点が多かった。しかし、近年、種々のタンパク質や遺伝情報を内包して、他の細胞へ伝達する役割を担っていることが明らかとなり、注目を集めている。特に、がん細胞が放出するエクソソームに着目したバイオマーカーや治療法の開発は世界中で盛んに行われている。また、エクソソームの性質を利用したドラッグデリバリー担体としての研究も行われており、食品や化粧品への応用が検討されている。
【0003】
特許文献1(国際公開第2019/146612号)は、薬物封入ナノ粒子を抱合する脂肪由来幹細胞を含む、または脂肪由来幹細胞から分泌されたエクソソームを含む、皮膚疾患治療用組成物を提案しており、薬物がナノ粒子に封入されてなる薬物封入ナノ粒子を幹細胞に含有させると、この幹細胞から分泌されたエクソソームには、各種の皮膚疾患の治療にとって有用な成分、すなわちナノ粒子に封入されていた薬物と血管新生因子等の幹細胞の細胞内で産生される種々の因子が豊富に含まれていること、そのようなエクソソームを有効成分として用いることにより、皮膚疾患に対して顕著に優れた治療効果を奏する、外用剤として使用できる皮膚疾患治療用組成物を調製することができることを開示している。
【0004】
特許文献2(国際公開第2020/158930号)は、継代老化させた線維芽細胞において、日本酒もしくは味噌に使われる酵母に由来するエクソソームが、コラーゲンとエラスチンの発現量を亢進させること、すなわち、組織の弾力低下の予防及び弾力性の向上効果を奏することを開示している。
【0005】
特許文献3(特表2018-531932号公報)は、植物搾汁物由来の細胞外小胞体が皮膚透過度に優れ、傷治療、皮膚保湿、皮膚美白、シワ改善および老化防止などの効果に優れ、その他、発毛および育毛効果にも優れていることを開示している。しかし、酵母や植物搾汁独特の臭いが発生してしまう等の点においては十分ではなかった。
【0006】
エクソソームは唾液、血液、尿、母乳、羊水等の体液中で観察され、前述のように、培養細胞からも分泌される。
本出願人は、特許文献4(特開2022-160101号公報)において、乳由来エクソソームが、コラーゲン、エラスチンの産生促進効果を有することを報告し、乳由来エクソソームを含む皮膚外用剤、コラーゲン産生促進剤、エラスチン産生促進剤を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2019/146612号
【特許文献2】国際公開第2020/158930号
【特許文献3】特表2018-531932号公報
【特許文献4】特開2022-160101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
乳由来エキスを化粧品等へ製品展開するためには、保存安定性が必要とされる。
本発明は、保存安定性に優れた乳由来のエキスを含有する皮膚外用剤と水溶液、この水溶液を含む化粧料、およびこの水溶液への抗菌性付与方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題を解決するための主な手段は、次のとおりである。
1.乳由来エキスと、3質量%以上12質量%以下のペンチレングリコールを含有し、
前記乳由来エキスが、細胞外小胞を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
2.乳由来エキスと、3質量%以上12質量%以下のペンチレングリコールを含有することを特徴とする水溶液。
3.前記乳由来エキスが、細胞外小胞を含有することを特徴とする2.に記載の水溶液。
4.2.または3.に記載の水溶液を含有する化粧料。
5.乳由来エキスを含有する水溶液に、
最終濃度が3質量%以上12質量%以下となるようにペンチレングリコールを添加することを特徴とする抗菌性付与方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の皮膚外用剤、水溶液、化粧料は、保存安定性に優れており、長期間に亘って保管することができる。細胞外小胞を含有する本発明の皮膚外用剤、水溶液、化粧料は、細胞外小胞により様々な生理機能を付与することができる。
本発明の抗菌性付与方法により、乳由来エキスを含む水溶液に抗菌性を付与することができ、雑菌の繁殖を抑えることができるため、水溶液を長期間に亘って保管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】乳由来エキスに多価アルコールを異なる濃度で加えた後の濁度を示すグラフ。
【
図2】ヤギ乳由来エキスに多価アルコールを異なる濃度で加えた後の、多価アルコールを加える前に対する粒子数の比を示すグラフ。
【
図3】乳由来エキスにペンチレングリコール5質量%濃度含む水溶液が、混合細菌に対して抗菌性を有することを示すグラフ。
【
図4】乳由来エキスにペンチレングリコール5質量%濃度含む水溶液が、真菌(酵母)菌に対して抗菌性を有することを示すグラフ。
【
図5】乳由来エキスにブチレングリコールを5~30質量%濃度含む水溶液が、混合細菌に対して抗菌性を有することを示すグラフ。
【
図6】乳由来エキスにブチレングリコールを5、10質量%濃度含む水溶液が、真菌(酵母)菌に対して抗菌性を有さず、30質量%濃度含む水溶液が抗菌性を有することを示すグラフ。
【
図7】乳由来エキスにヘキサンジオール5質量%濃度含む水溶液が、混合細菌に対して抗菌性を有することを示すグラフ。
【
図8】乳由来エキスにヘキサンジオール5質量%濃度含む水溶液が、真菌(酵母)菌に対して抗菌性を有することを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(乳由来エキス)
本発明に用いる乳は、哺乳動物から得られる乳であり、ヒト、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、サル、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ハムスター、モルモット等から得られる乳が挙げられ、好ましくはヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタから得られる乳である。乳は、初乳であっても成熟乳であってもよいが、初乳が好ましい。乳は、殺菌、粉末化、脱脂、除タンパクなどの処理がされた乳であってもよいが、無殺菌の生乳であることが好ましく、殺菌する場合は低温処理であることが好ましい。本発明の低温処理とは、50℃以上90℃以下の熱を加える処理のことをいう。
【0013】
乳由来エキスは、生乳そのもの、生乳から脂質画分、カゼイン画分、細胞画分等を除去したものを用いることができる。なお、生乳から脂質画分、カゼイン画分、細胞画分を除去することにより、ホエイ(乳清)画分が得られる。
乳由来エキスは、細胞外小胞を含むことが好ましい。細胞外小胞を多く含むため、乳由来エキスとしてホエイ画分、またはホエイ画分をさらに精製したものを用いることが好ましい。なお、細胞外小胞とは、脂質二重膜で覆われた微粒子であり、エクソソーム、エクソソーム以外の小胞があるが、エクソソームを含むことが好ましい。
【0014】
ホエイ画分から、遠心分離法、超遠心法、クロマトグラフィー法、限外ろ過法、フィルター法、密度勾配遠心法、スクロースクッション法、電気泳動法等の公知の精製方法により、細胞外小胞を濃縮することができる。例えば、遠心分離により、ホエイ画分から細胞外小胞を沈降物として得る場合、回転力は、10,000×g以上であることが好ましく、50,000×g以上であることがより好ましく、100,000×g以上であることがさらに好ましい。なお、その上限は、1,000,000×g程度であることが好ましい。また、遠心分離の時間は、20分以上が好ましく、40分以上がより好ましく、60分以上がさらに好ましい。さらに、遠心分離の前後に、フィルターろ過等の精製操作を行うことが好ましい。
【0015】
・ペンチレングリコール
ペンチレングリコールは、抗菌性を有する多価アルコールとして知られている。
本発明は、乳由来エキスとペンチレングリコールとを特定の割合で配合することにより、乳由来エキス中の成分を破壊することなく抗菌性を付与するものであり、乳由来エキスに由来する生理機能を損なうことなく長期に亘って保管することができる。それに対し、他の抗菌性を有する多価アルコールは、抗菌性を発揮する濃度で使用すると、乳由来エキス中の成分を破壊してしまうため、生理機能の発揮と安定性とを両立することができない。
【0016】
「皮膚外用剤」
本発明の皮膚外用剤は、乳由来エキスと、3質量%以上12質量%以下のペンチレングリコールを含有し、乳由来エキスが、細胞外小胞を含有する。
本発明の皮膚外用剤は、乳由来エキスを固形分濃度で0.0001質量%以上5質量%以下含むことが好ましく、0.001質量%以上3質量%以下含むことがより好ましく、0.01質量%以上1質量%以下含むことが特に好ましい。
本発明の皮膚外用剤におけるペンチレングリコールの濃度は、4質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、また、11質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0017】
本発明の皮膚外用剤の剤形は特に制限されず、溶液状製剤、乳化物状製剤、高分子ゲル状製剤、泡状製剤、スプレー製剤、不織布等に含浸させたシートあるいはゲルパック製剤等とすることができる。
本発明の皮膚外用剤には、必要に応じて、任意成分として保湿剤、界面活性剤、増粘剤、抗炎症剤、ビタミン類、抗酸化剤、血行促進剤、創傷治癒剤、抗菌性物質、皮膚賦活剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、美白剤等の薬効成分を含有させることができる。
【0018】
「水溶液」
本発明の水溶液は、乳由来エキスと、3質量%以上12質量%以下のペンチレングリコールを含有する。ペンチレングリコールが3質量%未満では、抗菌性が発揮されない場合がある。12質量%を超えるペンチレングリコールの存在下では、乳由来エキス中の成分が破壊されてしまう場合がある。ペンチレングリコールの濃度は、4質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、また、11質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0019】
「化粧料」
本発明の化粧料は、上記した本発明の水溶液を含有する。
本発明の化粧料は、乳由来エキスを、固形分濃度で0.0001質量%以上5質量%以下含むことが好ましく、0.001質量%以上3質量%以下含むことがより好ましく、0.01質量%以上1質量%以下含むことが特に好ましい。
本発明の化粧料の剤形は特に制限されず、溶液状製剤、乳化物状製剤、高分子ゲル状製剤、泡状製剤、スプレー製剤、不織布等に含浸させたシートあるいはゲルパック製剤等とすることができる。
本発明の化粧料には、必要に応じて、任意成分として植物油のような油脂類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、糖類、金属イオン封鎖剤、水溶性高分子のような高分子、増粘剤、粉体成分、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、ヒアルロン酸のような保湿剤、香料、pH調整剤等を含有させることができる。また、ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、常在菌コントロール剤、抗酸化剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、美白剤、殺菌剤等の他の薬効成分、生理活性成分を含有させることもできる。
【0020】
「抗菌性付与方法」
本発明の抗菌性付与方法は、乳由来エキスを含有する水溶液に、最終濃度が3質量%以上12質量%以下となるようにペンチレングリコールを添加する。ペンチレングリコールの最終濃度は、4質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、また、11質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【実施例0021】
以下、実施例に基づいて本発明について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
(ヤギ乳由来エキスの調製)
無脂乳固形分7.5%以上、乳脂肪分2.5%以上の北海道産、低温殺菌ヤギ乳(-30℃)を37℃の湯浴で解凍した。50mL容遠沈管にヤギ乳を加え、室温、遠心力3,000×gで10分間遠心分離し、上清を回収し、脱脂肪処理を行った。脱脂肪処理後の上清の1/100量の乳酸を添加、転倒混和後、室温で5分間静置した。遠心力10,000×gで10分間遠心分離し、タンパク質成分を沈殿させてタンパク除去処理を行い、上清を回収してヤギ乳由来エキスを得た。得られたヤギ乳由来エキスの固形分濃度は、6.2質量%であった。
【0023】
(ウシ乳由来エキスの調製)
牛乳(75℃で15分間低温殺菌した生乳)を用いた以外は、ヤギ乳由来エキスの調製と同様にして、ウシ乳由来エキスを得た。
【0024】
「実験1」保存安定性評価1
ヤギ乳由来エキスに対して、ブチレングリコール(BG)、ペンチレングリコール(PD)、ヘキサンジオール(HDO)を、ウシ乳由来エキスに対してブチレングリコール(BG)、ペンチレングリコール(PD)を、最終濃度5質量%、10質量%、15質量%、30質量%となるように加え、4℃で1ヶ月静置した。
1ヶ月後のサンプルについて、UV-Vis分光光度計(アジレント・テクノロジー社製、Cary 60)を用い、波長600nm、キュベット光路長10mm、室温にて濁度を測定した。結果を
図1に示す。
【0025】
・結果
ブチレングリコールは30質量%、ペンチレングリコールは15質量%、ヘキサンジオールは5質量%と10質量%で濁度が増加した。これは、多価アルコールが乳由来エキス中の成分の構造に影響を及ぼしたためである。これ以上の濃度では、濁度が低下したが、これは、脂質二重膜等が完全に破壊されて、光拡散性が低下したためである。
【0026】
「実験2」保存安定性評価2
実験1で用いた、1ヶ月静置後のヤギ乳由来エキスを用いたサンプルの一部について、Nanosight NS300(Nanosight)を用いて粒子濃度および粒子分布を測定し、Nanoparticle Tracking Analysis(NTA) software version 2.1 (Nanosight)を用いて分析を行った。また、多価アルコールを加えずに1ヶ月静置させたヤギ乳由来エキスについても、同様にして、粒子濃度と分布の分析を行った。なお、カメラレベル、閾値、焦点は全ての実験で同じ条件下で実施した。
各サンプルの粒子数を、ヤギ乳由来エキスの粒子数で除したグラフを、
図2に示す。
【0027】
・結果
ペンチレングリコール5~10質量%では8割以上の粒子数が維持されていた。
ブチレングリコール10~15質量%、ペンチレングリコール15質量%、ヘキサンジオール5質量%添加では、ペンチレングリコール5~10質量%と比較して粒子数が減少し、細胞外小胞が減少していた。
ブチレングリコール30質量%、ペンチレングリコール30質量%、ヘキサンジオール10~30質量%では、粒子数が約6割以下にまで減少していた。
実験1の結果と合わせて、ペンチレングリコール5質量%と10質量%の添加では、細胞外小胞の減少が抑えられることが確かめられた。
【0028】
「実験3」抗菌性評価
・使用菌株
日本薬局方に定める保存効力試験法に基づき、Escherichia coli(大腸菌)、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)、Candida albicans(カンジダ菌)を用いた。混合細菌は、大腸菌・緑膿菌及び黄色ブドウ球菌を1:1:1の割合で混合調製し、接種菌液とした。酵母は、カンジダ菌で調製した。
【0029】
・試験試料
(実施例)
ヤギ乳由来エキスの5%PD配合品
ウシ乳由来エキスの5%PD配合品
(比較例)
ヤギ乳由来エキスの5%BG配合品
ヤギ乳由来エキスの10%BG配合品
ヤギ乳由来エキスの30%BG配合品
ウシ乳由来エキスの5%BG配合品、
ヤギ乳由来エキスの5%HDO配合品
【0030】
・試験方法
保存効力試験法は日本薬局方を参考に実施し、抗菌効果を評価した。
試験試料に、前培養後作製した試験菌液をそれぞれ接種し、0、1、3、7、14日間経過後に生菌数測定を行った。結果を
図3~8に示す。
【0031】
・結果
本発明である、乳由来エキスと3質量%以上12質量%以下のペンチレングリコールとを組み合わせたものは、混合細菌、酵母に対する抗菌力が認められた(
図3、4)。また、これらは細胞外小胞の数も高く保たれているため、乳由来エキスによる生理機能の発揮が期待できる。
ブチレングリコールを5~30質量%含むものは、混合細菌に対して抗菌性が認められた(
図5)。一方、酵母に対しては、5質量%濃度、10質量%濃度では抗菌力が認められず、30質量%濃度で抗菌力が認められた(
図6)。しかし、ブチレングリコール30質量%濃度のものは白濁し、細胞外小胞も減少していることから、乳由来エキスによる生理機能が十分に発揮されることは期待できない(
図1、2)。
ヘキサンジオール5質量%濃度で抗菌力が認められたが(
図7、8)、ヘキサンジオール5質量%濃度のものは白濁し、細胞外小胞も減少していることから、乳由来エキスによる生理機能が十分に発揮されることは期待できない(
図1、2)。