(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165218
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ひずみ検出装置、及びトルクセンサ
(51)【国際特許分類】
G01L 3/14 20060101AFI20241121BHJP
G01L 1/22 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G01L3/14 Z
G01L1/22 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081166
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 賢二
【テーマコード(参考)】
2F049
【Fターム(参考)】
2F049BA13
2F049CA07
(57)【要約】
【課題】 トルクセンサユニット(ひずみ検出装置)において、半導体センサは梁の上に搭載されるため、樹脂充填加工が容易ではない。
【解決手段】 本開示技術に係るひずみ検出装置は、歪みをセンシングするセンサチップ(110)と、センサチップ(110)により計測された電気信号を処理する電子基板(120)と、センサチップ(110)と電子基板(120)とを電気的に接続するボンディングワイヤ(130)と、センサチップ(110)、電子基板(120)、及びボンディングワイヤ(130)を保護する充填樹脂材部(140)と、外力によりひずみを発生させる起歪体(150)と、電子基板(120)の台座となり、ボンディング材の流出を防止する基板台座(160)と、基板台座(160)と起歪体(150)とを接着する接着層(170)と、を備える、というものである。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歪みをセンシングするセンサチップと、
前記センサチップにより計測された電気信号を処理する電子基板と、
前記センサチップと前記電子基板とを電気的に接続するボンディングワイヤと、
前記センサチップ、前記電子基板、及び前記ボンディングワイヤを保護する充填樹脂材部と、
外力によりひずみを発生させる起歪体と、
前記電子基板の台座となり、ボンディング材の流出を防止する基板台座と、
前記基板台座と前記起歪体とを接着する接着層と、を備える、
ひずみ検出装置。
【請求項2】
歪みをセンシングする1つのセンサチップと、
前記センサチップにより計測された電気信号を処理する1つの電子基板と、
前記センサチップと前記電子基板とを電気的に接続するボンディングワイヤと、
前記センサチップ、前記電子基板、及び前記ボンディングワイヤを保護する充填樹脂材部と、
外力によりひずみを発生させる1つの起歪体と、
前記電子基板の台座となり、ボンディング材の流出を防止する1つの基板台座と、
前記基板台座と前記起歪体とを接着する接着層と、を備える、
モジュール単位のひずみ検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモジュール単位のひずみ検出装置を、フランジ上に、フランジ中心点から点対称に複数個備える、
トルクセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術はひずみ検出装置、及びトルクセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ひずみ検出装置は、半導体センサを用いる装置である。一般に、半導体センサが用いられる装置には、ひずみ検出装置のほかにも、圧力センサユニットなど、様々な装置類が存在する。半導体センサを用いる装置の生産工程において、ポッティングと称される技術が知られている。ポッティングは、簡単に言えば、樹脂を充填することによる封入である。ポッティングにおいて、充填される樹脂は、ポッティング材と称される。本明細書において、以降、ポッティングは「樹脂充填」と称されるものとする。また、ポッティング材は、「充填樹脂材」と称されるものとする。
【0003】
半導体センサが用いられる装置において、半導体センサの出力は、ボンディングワイヤを介して導通する電子基板等の外部へ取り出される。特に、ボンディングワイヤの部分は、振動による外れ、錆などの腐食、等のおそれがあり、損傷しやすい。
そこで、半導体センサが用いられる装置において、樹脂充填が実施される。樹脂充填を行うことにより、半導体センサ及びボンディングワイヤは、傷つきにくくなる、酸化が防止される、ショートが防止される、等の機械的及び電気的な保護がなされる。樹脂充填は、機械的及び電気的な保護のほか、美観を高める効果もある。
【0004】
圧力センサユニットの製造方法においても、樹脂充填は実施される。例えば、特許文献1には、圧力センサユニットの製造方法において、封止枠内に充填樹脂材を充填し、脱泡後硬化させる工程を含むことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に例示される圧力センサユニットにおいては、半導体センサの周囲に壁が存在し、充填樹脂材を充填するのに適した構造である。
一方で、トルクセンサユニット(ひずみ検出装置)における半導体センサに対して樹脂充填を実施することは、圧力センサユニットのようにはいかず、容易ではない。トルクセンサユニット(ひずみ検出装置)において、半導体センサは、梁の上に搭載される(
図1及び
図2を参照)。トルクセンサユニット(ひずみ検出装置)において、梁は綿密な剛性設計がなされる要素であるため、簡単に設計変更を行うこともできない。
【0007】
本開示技術は、既存の設計を変更せずとも、樹脂充填加工が容易となるトルクセンサユニット(ひずみ検出装置)の構成及び構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示技術に係るひずみ検出装置は、歪みをセンシングするセンサチップと、センサチップにより計測された電気信号を処理する電子基板と、センサチップと電子基板とを電気的に接続するボンディングワイヤと、センサチップ、電子基板、及びボンディングワイヤを保護する充填樹脂材部と、外力によりひずみを発生させる起歪体と、電子基板の台座となり、ボンディング材の流出を防止する基板台座と、基板台座と起歪体とを接着する接着層と、を備える、というものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示技術に係るひずみ検出装置100は上記構成を備えるため、起歪体150に関する既存の設計を変更せずとも、充填樹脂材部140によりセンサチップ110及びボンディングワイヤ130を保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、トルクセンサユニット(ひずみ検出装置)において用いられるフランジ形状タイプの起歪体の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、モジュール化された起歪体の外観を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、フランジ形状タイプの起歪体において、電子基板120が組み込まれた様子を示す説明図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係るひずみ検出装置100の外観を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係るひずみ検出装置100の構造を示す断面図(
図4におけるA-A)である。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係るひずみ検出装置100において、接着層170の形態を示す説明図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係るひずみ検出装置100の技術的特徴を示すものであり、基板台座160による効果を示す説明図である。
【
図8】
図8は、実施の形態2に係るひずみ検出装置100の外観を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、実施の形態2に係るひずみ検出装置100の構造を示す断面図(
図8におけるB-B)である。
【
図10】
図10は、実施の形態2に係るひずみ検出装置100において、接着層170の形態を示す説明図である。
【
図11】
図11は、実施の形態3に係るひずみ検出装置100の特徴を示す説明図である。
【
図12】
図12は、実施の形態3に係るひずみ検出装置100において、接着層170の形態を示す説明図である。
【
図13】
図13は、モジュール単位のひずみ検出装置100を、フランジ形状タイプの起歪体に組み込んだ様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(イントロダクション)
ひずみ検出装置は、起歪体の梁に生じる歪みを検出することにより、トルクセンサユニットとして機能する。
図1は、トルクセンサユニット(ひずみ検出装置)において用いられるフランジ形状タイプの起歪体(以降、「フランジ形状起歪体」と称する)の外観を示す斜視図である。また
図2は、起歪体の別の態様を示したものであり、モジュール化された起歪体の外観を示す斜視図である。
図3は、フランジ形状起歪体(起歪体150)において、半導体センサ(センサチップ110)と電子基板(電子基板120)とが組み込まれた様子を示す説明図である。一般に、半導体センサは、電子基板上にワイヤボンディング実装がなされることがよく知られた態様である。フランジ形状起歪体(起歪体150)においては、半導体センサ(センサチップ110)と電子基板(電子基板120)とは、電気的に接続されるよう、ワイヤボンディング加工がなされる。この半導体センサ(センサチップ110)と電子基板(電子基板120)とを電気的に接続するワイヤの箇所は、脆弱であるため、樹脂充填が要される。
【0012】
図1に示されるとおり、トルクセンサユニット(ひずみ検出装置)において半導体センサ(センサチップ110)は、フランジ形状起歪体(起歪体150)の梁の上に搭載される。
図1においては、フランジ形状起歪体(起歪体150)の梁の上に4個の半導体センサ(センサチップ110)が搭載されている様子が示されているが、半導体センサ(センサチップ110)の個数は、4個に限られず、対角に2個のみの場合や、3の倍数(3個、6個)、4の倍数(8個、12個)、と多様である。
図1及び
図2に示されるとおり、半導体センサ(センサチップ110)は、ひずみが生じるところに、すなわち梁の幅を狭めたくびれ部に搭載される。トルクセンサユニット(ひずみ検出装置)は、部分的に梁の幅を狭めることにより、このくびれ部に応力が集中するように工夫されている。
【0013】
樹脂充填のことだけを考えれば、トルクセンサユニット(ひずみ検出装置)は、梁に非貫通の溝を備えればよさそうである。この溝の底面に半導体センサを搭載し、充填樹脂材を充填すれば、半導体センサは保護される。
しかし、前述のとおり、トルクセンサユニット(ひずみ検出装置)において半導体センサが搭載されている部分は、応力を集中させるため幅が狭く、溝を設ける余地がない(
図1及び
図2を参照)。また、仮に充填樹脂材を充填する溝が設けられたとしても、この溝があることにより起歪体の剛性が高まり、設計仕様の許容範囲から外れるおそれがある。少なくともこの溝を設けることは、起歪体の設計自由度を低下させる。起歪体の剛性を設計どおりに実現することは、トルクセンサユニットにおいてトルクの検出精度を左右する重要な要素である。トルクセンサユニット(ひずみ検出装置)の技術分野において、起歪体の剛性に影響を与えずに装置として頑強であるという信頼性を高めることは、常に求められている。
【0014】
実施の形態1.
図4は、実施の形態1に係るひずみ検出装置100の外観を示す斜視図である。
図4に示されるひずみ検出装置100は、フランジ形状起歪体(起歪体150)の梁の上に4個の半導体センサ(センサチップ110)が搭載されている、というものである。前述のとおり、トルクセンサユニット(ひずみ検出装置100)において用いられる半導体センサ(センサチップ110)の個数は、4個に限られず、対角に2個のみの場合や、3の倍数(3個、6個)、4の倍数(8個、12個)、と多様である。
図4には、4個のセンサチップ110と、4個の電子基板120と、1つの起歪体150と、4個の起歪体壁部152と、4個の基板台座160と、が示されている。
【0015】
図5は、実施の形態1に係るひずみ検出装置100の構造を示す断面図(
図4におけるA-A)である。
図5に示されるように、実施の形態1に係るひずみ検出装置100は、センサチップ110と、電子基板120と、ボンディングワイヤ130と、充填樹脂材部140と、起歪体150と、基板台座160と、接着層170と、を含む。特に基板台座160は、本開示技術に係るひずみ検出装置100に特有の構成要素である。
ここで、起歪体150は、起歪体壁部152と、起歪体貫通部154と、からなる形状上の特徴部分を有する。
図5に示されるとおり、起歪体壁部152は、起歪体150の一部と考えることもできる。また、
図4に示されるとおり、起歪体壁部152は、起歪体150とは独立した別個の構成要素と考えることもできる。起歪体壁部152を起歪体150とは独立した別個の構成要素と考えた場合、フランジ上に設置した別個の構成要素は、本明細書において「台座・壁構造」と称されるものとする。なお、台座・壁構造において、基板台座160が台座構造に、起歪体壁部152が壁構造に、それぞれ該当する。
【0016】
《センサチップ110》
センサチップ110は、歪みをセンシングする構成要素である。より詳細に言えば、センサチップ110は、後述する起歪体150に生じる歪みをセンシングする半導体センサである。センサチップ110は歪みセンサである、とも言える。センサチップ110は、歪みゲージであってもよい。歪みゲージには、金属薄膜抵抗体、例えばクロム(Cr)及び窒素(N)を含むCr-N抵抗体などがある。
【0017】
《電子基板120》
電子基板120は、センサチップ110により計測された電気信号を処理する構成要素である。
図5に示されるとおり、センサチップ110と電子基板120とは、ボンディングワイヤ130により電気的に接続される。電子基板120はボンディングパッド(コンタクトパッドとも称される)を有する。別の言い方をすれば、センサチップ110は、電子基板120が有するボンディングパッドと、ワイヤボンディング(Wire Bonding)される。
電子基板120は、参照抵抗、ブリッジ回路、フルブリッジ回路、を含んでいてもよい。また、電子基板120は、デジタル信号処理をするものでもよい。
【0018】
《ボンディングワイヤ130》
ボンディングワイヤ130は、ワイヤボンディングに使用されるワイヤである。より具体的に言えば、ボンディングワイヤ130は、直径が十数マイクロメートルから数百マイクロメートルの金、アルミニウム、銅、等の金属からなるワイヤである。
【0019】
《充填樹脂材部140》
充填樹脂材部140は、充填樹脂材が充填されることにより形成される構成要素である。
充填樹脂材には、例えば、2液(主剤及び硬化剤)を真空脱泡し、攪拌し、注入するウレタン樹脂のもの等が知られている。充填樹脂材には、ウレタン樹脂のほか、エポキシ樹脂、シリコン樹脂(広くはエラストマ系材料)が用いられる。充填樹脂材は、簡単に言えば、接着剤として使われる材料である。
充填樹脂材部140を形成する充填樹脂材の粘度は、10[Pa・s]程度か、それ未満のものが望ましい。充填樹脂材の粘度をこのように設定することにより、ボンディングワイヤ130の周囲まで充填樹脂材で満たすことが可能となる。
【0020】
《起歪体150》
起歪体150は、外力によりひずみを発生させる構成要素である。本開示技術が想定する起歪体150の外観は、例えば
図1に示されるようなもの(フランジ形状タイプ)である。起歪体150においてひずみが生じる箇所には、センサチップ110が貼り付けてある。
起歪体150は、例えばステンレス鋼(SUS、Steel special Use Stainless)等の金属製である。
【0021】
図5に示されるとおり起歪体150は、起歪体壁部152、及び起歪体貫通部154といった形状の特徴を有する。
ここで、起歪体貫通部154は、
図1に示されるフランジ形状起歪体において、梁(中央部と外周部とを接続する梁)を形成する上で必然的な特徴である。
起歪体壁部152は、充填樹脂材をどれだけ充填するかという設計事項により、その高さが決められるとよい。なお、起歪体壁部152の高さは、必ずしもボンディングワイヤ130よりも高くする必要はない。表面張力によって、充填樹脂材部140を形成する充填樹脂材がボンディングワイヤ130を覆うようであれば、表面張力を考慮して、起歪体壁部152の高さを決定すればよい。
【0022】
《基板台座160》
基板台座160は、電子基板120の台座となる構成要素である。基板台座160は、厚みが数mm程度の部材であり、充填樹脂材の流出を防止する機能を果たす。
図7は、実施の形態1に係るひずみ検出装置100の技術的特徴を示すものであり、基板台座160による効果を示す説明図である。
図7Aは、基板台座160を備えない従来のひずみ検出器を上から見た図である。
図7Aは、基板台座160を備えない従来のひずみ検出器の場合、充填樹脂材が外に流出してしまう隙間が存在することを表している。
一方、
図7Bは、基板台座160を備える実施の形態1に係るひずみ検出装置100を上から見た図である。
図7Bは、基板台座160を備える実施の形態1に係るひずみ検出装置100においては、基板台座160が存在することにより、充填樹脂材が外に流出することを防いでいることを表している。
【0023】
本開示技術に係るひずみ検出装置100に特有の技術的特徴は、ボンディング材の流出を防止する基板台座160を備えることである。本開示技術の発明者は、電子基板120とセンサチップ110とがボンディングワイヤ130により接続されるため、高さ方向のオフセットを数mm程度許容できることに着眼した。つまり、発明者は、電子基板120の下に数mm程度の厚みの部材を追加すること、を着想した。
【0024】
基板台座160の材質は、充填樹脂材部140との接着性、及び接着層170との接着性を考慮して選択されるとよい。基板台座160の材質は、さらに、接着時及び使用時の温度に対する耐熱性を満たす範囲で、例えば、ナイロンなどの一般的な接着性を示す樹脂が選択される。
逆に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、POM(ポリオキシメチレン)、等の一般的に接着に適さない材質は、基板台座160の材質として避けるべきである。
【0025】
《接着層170》
接着層170は、基板台座160と起歪体150とを接着する接着剤により形成される構成要素である。接着層170は、基板台座160を備えることにより必要となる構成要素である。
接着層170を形成する接着剤は、基板台座160及び起歪体150の材質、膨張係数、等を考慮して選択されるとよい。
【0026】
図6は、実施の形態1に係るひずみ検出装置100において、接着層170の形態を示す説明図である。より簡単に言えば、
図6は、接着層170を形成する接着剤を塗布する領域を示したものである。
原則的には、接着層170を形成する接着剤を塗布する領域は、基板台座160の形状に対応したものであればよい。
基板台座160に切り欠きがある場合、起歪体壁部152とフランジとの間は、接着層170を形成する接着剤により塞がれるとよい。
接着層170を形成する接着剤は、起歪体貫通部154の周囲にも塗布されるとよい。
接着層170を形成する接着剤は、起歪体壁部152と基板台座160との間、起歪体壁部152とフランジとの間、に塗布されるようにする。なお、本開示技術は、起歪体壁部152に代えて、基板台座160と一体に成形された壁部が採用されてもよい。
起歪体貫通部154の真上にある基板台座160の部分は、フランジと直接的に接触しない。したがって、この部分に関しては、接着力が担保されるよう、起歪体壁部152と基板台座160とを接着するように接着層170が形成されるとよい。
【0027】
従来技術に係るひずみ検出器と比較すると、本開示技術に係るひずみ検出装置100は、充填樹脂材部140と、基板台座160と、接着層170と、が追加されていることになる。
ステンレス鋼製の起歪体150のヤング率が約200[MPa]であるのに対し、追加された充填樹脂材部140、基板台座160、及び接着層170により増加するヤング率は、5[MPa](1/40)程度に抑えることが考えられる。ここで、ヤング率の増加は、充填樹脂材部140、基板台座160、及び接着層170のうち、接着層170が支配的である。
接着層170を形成する接着剤の剛性は、針入度が40[1/10 mm]程度かそれ以上が望ましい。接着層170を形成する接着剤は、例えば、シリコン等のエラストマ系材料が採用される。
【0028】
上記のとおり、実施の形態1に係るひずみ検出装置100は、ボンディング材の流出を防止する基板台座160を備える。この特有の技術的特徴により、実施の形態1に係るひずみ検出装置100は、起歪体150に関する既存の設計を変更せずとも、充填樹脂材部140によりセンサチップ110及びボンディングワイヤ130を保護できる、という効果を奏するものである。
【0029】
実施の形態2.
実施の形態2に係るひずみ検出装置100は、本開示技術に係るひずみ検出装置100の変形例である。特に明記する場合を除き、実施の形態2においては、実施の形態1で用いられた符号と同じものが用いられる。また実施の形態2においては、実施の形態1と重複する説明が、適宜、省略される。
【0030】
図8は、実施の形態2に係るひずみ検出装置100の外観を示す斜視図である。より具体的に言えば、
図8は、1つのモジュールとして表した、実施の形態2に係るひずみ検出装置100を示したものである。
図8には、1つのセンサチップ110と、1つの電子基板120と、1つの基板台座160とが示され、全体として1つのモジュール(Md)を表している。
【0031】
図9は、実施の形態2に係るひずみ検出装置100の構造を示す断面図(
図8におけるB-B)である。
図9に示される構造は、
図5と比較すると、起歪体150における外周部の断面がL字ではなく、上側にしかない、という差異がある。
図9に示されるような形態のひずみ検出装置100についても、本開示技術は適用可能である。
【0032】
図9に示されるとおり、基板台座160と起歪体150とを接着する接着層170は、基板台座160と起歪体150とが接触し得る箇所のみに形成されてもよい。
【0033】
図10は、実施の形態2に係るひずみ検出装置100において、接着層170の形態を示す説明図である。より簡単に言えば、
図10は、接着層170を形成する接着剤を塗布する領域を示したものである。
原則的には、接着層170を形成する接着剤を塗布する領域は、基板台座160の形状に対応したものであればよい。
接着層170を形成する接着剤は、起歪体壁部152と基板台座160との間に塗布されるようにする。なお、本開示技術は、起歪体壁部152に代えて、基板台座160と一体に成形された壁部が採用されてもよい。
【0034】
図13は、モジュール単位のひずみ検出装置100を、フランジ形状起歪体に組み込んだ様子を示す説明図である。
図13に示されるように、実施の形態2に係るひずみ検出装置100は、モジュール単位でフランジ形状起歪体に組み込まれる。
【0035】
実施の形態2に係るひずみ検出装置100は、実施の形態1に係るひずみ検出装置100と同様に、ボンディング材の流出を防止する基板台座160を備える。この特有の技術的特徴により、実施の形態2に係るひずみ検出装置100は、起歪体150に関する既存の設計を変更せずとも、充填樹脂材部140によりセンサチップ110及びボンディングワイヤ130を保護できる、という効果を奏するものである。
【0036】
実施の形態3.
実施の形態3に係るひずみ検出装置100は、本開示技術に係るひずみ検出装置100の変形例である。特に明記する場合を除き、実施の形態3においては、既出の実施の形態で用いられた符号と同じものが用いられる。また実施の形態3においては、既出の実施の形態と重複する説明が、適宜、省略される。
【0037】
図11は、実施の形態3に係るひずみ検出装置100の特徴を示す説明図である。
図11に示されるひずみ検出装置100は、モジュール単位のひずみ検出装置100を、下面側から見た斜視図である。
図11に示されるように、実施の形態3に係るひずみ検出装置100の特徴は、基板台座160に配線コネクタ又は端子台用の孔が設けられていることである。
図11には、配線コネクタ又は端子台用の孔を通して、下面側から、四角く電子基板120の一部が露出していることが示されている。
このように、実施の形態3に係るひずみ検出装置100は、モジュール上に台座・壁構造(基板台座160、起歪体壁部152)を設置したものであって、基板台座160に配線コネクタ又は端子台用の孔が設けられたものである。
【0038】
図12は、実施の形態3に係るひずみ検出装置100において、接着層170の形態を示す説明図である。より簡単に言えば、
図12は、接着層170を形成する接着剤を塗布する領域を示したものである。
原則的には、接着層170を形成する接着剤を塗布する領域は、基板台座160の形状に対応したものであればよい。
接着層170を形成する接着剤は、起歪体壁部152と基板台座160との間に塗布されるようにする。なお、本開示技術は、起歪体壁部152に代えて、基板台座160と一体に成形された壁部が採用されてもよい。
接着層170を形成する接着剤は、配線コネクタ又は端子台用の孔の周囲にも塗布されることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本開示技術に係るひずみ検出装置は、トルクを検出するためのトルクセンサユニット、例えば自動車のトラクションコントロールシステムに適用でき、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0040】
100 ひずみ検出装置、110 センサチップ、120 電子基板、130 ボンディングワイヤ、140 充填樹脂材部、150 起歪体、152 起歪体壁部、154 起歪体貫通部、160 基板台座、170 接着層。