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  • 特開-回転電機のブラシ摩耗監視システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165228
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】回転電機のブラシ摩耗監視システム
(51)【国際特許分類】
   H02K 13/00 20060101AFI20241121BHJP
   H01R 39/58 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H02K13/00 X
H02K13/00 P
H01R39/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081190
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100195718
【弁理士】
【氏名又は名称】市橋 俊規
(74)【代理人】
【識別番号】100196003
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】松崎 栄仁
(72)【発明者】
【氏名】澤 史雄
(72)【発明者】
【氏名】石塚 博明
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 農
【テーマコード(参考)】
5H613
【Fターム(参考)】
5H613AA04
5H613BB05
5H613BB15
5H613BB25
5H613GB12
5H613QQ04
5H613RR04
(57)【要約】
【課題】回転電機のコレクタリングに摺動接触するブラシの摩耗を抑制し、交換頻度の低減を図る。
【解決手段】コレクタリング2と、前記コレクタリングに摺動接触するブラシ3と、を有する回転電機1のブラシ摩耗監視システム8において、前記回転電機が設置される回転電機室の絶対湿度を5~20g/mに制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレクタリングと、前記コレクタリングに摺動接触するブラシと、を有する回転電機のブラシ摩耗監視システムにおいて、
前記回転電機が設置される回転電機室の絶対湿度を5~20g/mに制御することを特徴とする回転電機のブラシ摩耗監視システム。
【請求項2】
前記ブラシが黒鉛と銅の混合物であることを特徴とする請求項1記載の回転電機のブラシ摩耗監視システム。
【請求項3】
前記回転電機が、水車発電機、可変速揚水発電機、可変速水車発電機又は定速水車発電機であることを特徴とする請求項1又は2記載の回転電機のブラシ摩耗監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水車発電機等に用いられる回転電機のブラシ摩耗監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特定の回転電機、中でも水車発電設備では、回転軸に取り付けられたコレクタリングに摺動接触するブラシの摩耗量が多く、交換頻度が高いという課題があった。そのため、従来から、コレクタリングの材料である銅リングや鉄リングに対するカーボンブラシの摺動特性に関する性能試験や比較試験が行われてきた。
【0003】
このカーボンブラシの摩耗量を監視するために、ブラシの摩耗を電気的に開閉する接点部材で検知することや、摩耗によるブラシの寸法変化を検知することで、ブラシの摩耗量や交換時期を算出するブラシ監視手段が提案されている。
【0004】
また、図4に示すように、回転電機の周囲に火花検出器、変位計、電流計、湿度計等を配置して各種物理量を検出し、ブラシの摩耗量や異常を検出するブラシ監視手段も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60-177664号公報
【特許文献2】特開2018-74851号公報
【特許文献3】特開2020-174437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
主にカーボンからなるブラシの摩耗現象は、ブラシ材質、ブラシ圧、コレクタリングとの摺動特性、温度、湿度等、種々の要因が連動して生じるが、本発明者等は、ブラシの摩耗に影響する各種要因のうち、回転電機周辺の湿度が重要な役割を果たすことを知見し本発明に至ったものである。
【0007】
本発明の実施形態は、ブラシの摩耗を抑制し、ブラシの長寿命化と交換頻度の低減化を図ることができる回転電機のブラシ摩耗監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回転電機のブラシ摩耗監視システムは、コレクタリングと、前記コレクタリングに摺動接触するブラシと、を有する回転電機のブラシ摩耗監視システムにおいて、前記回転電機が設置される回転電機室の絶対湿度を5~20g/mに制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、回転電機のコレクタリングに摺動接触するブラシの摩耗を抑制し、ブラシの長寿命化と交換頻度の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は本実施形態に係るコレクタリングの平面図、(b)は側面図。
図2】本実施形態に係るブラシの断面模式図。
図3】本実施形態に係る絶対湿度とブラシ摩耗量の相関図。
図4】回転電機のブラシ摩耗監視システムの概観図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の回転電機のブラシ摩耗監視システムの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
(構成)
本実施形態に係る回転電機1は、図1に示すように、回転電機1の回転軸に取り付けられたコレクタリング2、黒鉛と銅の混合物からなるブラシ3、3a~3cから構成され、例えば、水力発電所の回転電機室に設置される。ブラシ3は、図2に示すように、ブラシ本体5、ブラシホルダ4、弾性部材6、支持部材7、から構成される。
【0013】
なお、ブラシ3の材質は黒鉛と他の金属との混合物でもよい。また、本実施形態では回転電機1のコレクタリング2は3段構成となっているが、適宜増減可能である。
【0014】
ブラシ摩耗監視システム8は、図4に示すように、監視対象であるコレクタリング2を備えた回転電機1、温度、湿度、磁気、振動等を検出する多機能検出器10、ループアンテナ等からなる電流検出器12、ブラシの摩耗量を検出するTVカメラ等の外観検出器14、各検出器との間で信号を入出力する小型計算機等からなる演算処理装置11、及び演算処理装置11と電流検出器12との間に設置され電流検出器からの信号を入出力するゲートウェイ機器13、から構成され、それぞれ回転電機室の内部又はその近傍に設置される。
【0015】
なお、多機能検出器10、電流検出器12、外観検出器14との間の信号は、無線又は有線ケーブル等からなる接続手段17を介して演算処理装置11又はゲートウェイ機器13に入出力される。
【0016】
また、多機能検出器10、演算処理装置11、電流検出器12、ゲートウェイ機器13、外観検出器14は、それぞれ公知の固定具等により回転電機室の室内又はその近傍の適切な位置に設置される。
【0017】
さらに、回転電機室の温度、湿度を制御する温度制御器と湿度制御器も回転電機室内又はその近傍の適切な位置に設置される(図示せず)。
【0018】
(作用、効果)
上述したように、ブラシ3の摩耗に影響を与えるブラシ材料、ブラシ圧、温度、湿度、等の各種要因のうち、回転電機室の湿度が重要な役割を果たすことを踏まえ、絶対湿度に対するブラシ摩耗試験を行った。
【0019】
ブラシ摩耗試験は、ブラシ3として黒鉛と銅の混合物を用い、所定のブラシ圧で所定期間コレクタリング2を回転させ、図4に示す外観検出器14等によりブラシ3の摩耗量を測定解析した。
【0020】
図3は絶対湿度に対するブラシ摩耗量の相関図で、Aはブラシ3が正常に機能するか否かの閾値であり、摩耗量がA未満であればブラシ3は正常に機能し、A以上であれば摩耗が進みブラシ3としての機能を十分に果たすことができない状態となる。
【0021】
図3から、回転電機室の絶対湿度を5~20g/mに制御することで、ブラシ摩耗量を使用可能な閾値以下に抑えることができることが解る。
【0022】
このように、本実施形態によれば、回転電機室の絶対湿度を5~20g/mに制御することで、ブラシ3の長寿命化及び交換頻度の低減化を図ることができ、回転電機を長期間、安定的に運転することが可能となる。
【0023】
なお、回転電機1の運転中において、上記ブラシ摩耗監視システム8を構成する多機能検出器10、電流検出器12、外観検出器14等により、コレクタリング2とブラシ3の接触摺動部は常時監視されている。
【0024】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、例えば水車発電機、可変速揚水発電機、可変速水車発電機又は定速水車発電機等の回転電機に適用可能である。
【0025】
また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0026】
1…回転電機、2…コレクタリング、3、3a~3c…ブラシ、4…ブラシホルダ、5…ブラシ本体、6…弾性体、7…支持部材、8…ブラシ摩耗監視システム、10…多機能検出器、11…演算処理装置、12…電流検出器、13…ゲートウェイ機器、14…外観検出器、17…接続手段
図1
図2
図3
図4