(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165238
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 11/00 20060101AFI20241121BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20241121BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H02G11/00
B60R16/02 620C
H02G3/04 087
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081215
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光伸
(72)【発明者】
【氏名】木暮 直人
【テーマコード(参考)】
5G357
5G371
【Fターム(参考)】
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DE08
5G357DG05
5G371AA01
5G371CA03
(57)【要約】
【課題】耐久性の低下を抑えること。
【解決手段】メインプロテクタ部材30は、回転支点501の回転軸に対して平行に間隔を空けた平行軸Ppに沿ってハーネス本体10を内方で案内し、かつ、開閉体510を全閉位置から全開位置へと開く際に、アーム部材521の回転に追従させたハーネス本体の捻れ変形を内方で許容する捻れ許容部31と、捻れ許容部から第2電気接続対象物側へと引き出したハーネス本体を折り曲げながらアーム部材に向かわせ、かつ、開閉体を全閉位置から全開位置へと開く際に、アーム部材の回転に追従させたハーネス本体の曲げ変形を内方で許容する曲げ許容部32と、を有し、捻れ許容部は、アーム部材を回転支点の軸周りに360度回転させて成る円形の仮想アーム作動領域Sの内、開閉体の開閉時のアーム部材の作動領域S1から外した場所に配置されること。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と前記支持体に設けた回転支点の軸周りにリンク機構のアーム部材を回転させながら前記リンク機構を介して開閉させる開閉体との間に亘って配索され、前記支持体に設置された第1電気接続対象物と前記開閉体に設置された第2電気接続対象物とを電気接続させるハーネス本体と、
前記ハーネス本体を内方の空間に通して保護するプロテクタと、
を備え、
前記ハーネス本体は、前記開閉体の全閉位置と全開位置との間での開閉に伴う前記回転支点の軸周りの前記アーム部材の回転時に前記支持体側と前記開閉体側との間を前記アーム部材に沿わせたまま渡し、
前記プロテクタは、前記支持体に固定され、前記ハーネス本体を内方の空間に通すメインプロテクタ部材を備え、
前記メインプロテクタ部材は、前記回転支点の回転軸に対して平行に間隔を空けた平行軸に沿って前記ハーネス本体を内方で案内し、かつ、前記開閉体を全閉位置から全開位置へと開く際に、前記アーム部材の前記回転に追従させた前記ハーネス本体の捻れ変形を内方で許容する捻れ許容部と、前記捻れ許容部から前記第2電気接続対象物側へと引き出した前記ハーネス本体を折り曲げながら前記アーム部材に向かわせ、かつ、前記開閉体を全閉位置から全開位置へと開く際に、前記アーム部材の前記回転に追従させた前記ハーネス本体の曲げ変形を内方で許容する曲げ許容部と、を有し、
前記捻れ許容部は、前記アーム部材を前記回転支点の軸周りに360度回転させて成る円形の仮想アーム作動領域の内、前記開閉体の開閉時の前記アーム部材の作動領域から外した場所に配置されることを特徴としたワイヤハーネス。
【請求項2】
前記捻れ許容部は、前記仮想アーム作動領域における前記アーム部材の前記作動領域から外した場所の内、前記仮想アーム作動領域の回転中心側に配置されることを特徴とした請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記曲げ許容部は、前記開閉体を全閉位置から全開位置へと開く際に、前記ハーネス本体を前記曲げ変形に伴う曲げの内側で係止して、前記捻れ許容部の内方における前記ハーネス本体の前記捻れ変形に伴う捻れ角度を規定捻れ角度以下の角度に制限する係止内壁面を有し、
前記規定捻れ角度については、前記ハーネス本体の前記捻れ変形に伴う耐久性低下を抑止可能な捻れ角度に設定することを特徴とした請求項1又は2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記ハーネス本体は、前記捻れ許容部の内方から前記第1電気接続対象物側へと引き出した先で前記メインプロテクタ部材又は前記支持体の固定位置に固定される第1固定部と、前記アーム部材の固定位置に固定される第2固定部と、を有し、
前記捻れ許容部と前記曲げ許容部のそれぞれの内部空間は、前記開閉体の開閉時の前記ハーネス本体の前記捻れ変形と前記曲げ変形に伴う前記ハーネス本体の前記第1固定部と前記第2固定部との間の経路変化を許容し得るものとして形成されることを特徴とした請求項1又は2に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記プロテクタは、前記アーム部材に固定され、前記曲げ許容部から前記第2電気接続対象物側へと引き出した前記ハーネス本体を前記アーム部材に沿わせながら内方の空間に通すサブプロテクタ部材を備え、
前記ハーネス本体は、前記捻れ許容部の内方から前記第1電気接続対象物側へと引き出した先で前記メインプロテクタ部材又は前記支持体の固定位置に固定される第1固定部と、前記サブプロテクタ部材の内方から前記第2電気接続対象物側へと引き出した先で前記サブプロテクタ部材又は前記アーム部材の固定位置に固定される第2固定部と、を有し、
前記捻れ許容部と前記曲げ許容部のそれぞれの内部空間は、前記開閉体の開閉時の前記ハーネス本体の前記捻れ変形と前記曲げ変形に伴う前記ハーネス本体の前記第1固定部と前記第2固定部との間の経路変化を許容し得るものとして形成されることを特徴とした請求項1又は2に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記サブプロテクタ部材には、前記開閉体を全閉位置から全開位置へと開く際に、前記第1電気接続対象物側から入り込んだ前記ハーネス本体を前記曲げ変形に伴う曲げの内側で係止し、前記ハーネス本体の前記経路変化に伴う前記第2固定部から前記サブプロテクタ部材又は前記アーム部材の前記固定位置への負荷を軽減させる係止部を設けることを特徴とした請求項5に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、支持体と支持体に設けた回転支点の軸周りにリンク機構のアーム部材を介して回転しながら開閉させる開閉体との間に亘って配索されるワイヤハーネスが知られている。例えば、自動車等の車両には、支持体としての車体側の電源(二次電池等)や電装部品などを回転体としてのスライドドア側のスイッチや電装部品などに電気接続させるワイヤハーネスが搭載されている。この種のワイヤハーネスについては、例えば、下記の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のワイヤハーネスは、アーム部材の作動領域内での回転支点の近傍にて、その回転支点の回転軸と平行に立ち上げ、その立ち上げた先で折り曲げてアーム部材に沿って回転体としてのスライドドアまで配索される。よって、このワイヤハーネスにおいては、その立ち上げた捻れ変形させる部分(以下、「捻れ変形部」という。)の捻れ角度が大きくなり、耐久性の低下を引き起こす虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、耐久性の低下を抑え得るワイヤハーネスを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支持体と前記支持体に設けた回転支点の軸周りにリンク機構のアーム部材を回転させながら前記リンク機構を介して開閉させる開閉体との間に亘って配索され、前記支持体に設置された第1電気接続対象物と前記開閉体に設置された第2電気接続対象物とを電気接続させるハーネス本体と、前記ハーネス本体を内方の空間に通して保護するプロテクタと、を備え、前記ハーネス本体は、前記開閉体の全閉位置と全開位置との間での開閉に伴う前記回転支点の軸周りの前記アーム部材の回転時に前記支持体側と前記開閉体側との間を前記アーム部材に沿わせたまま渡し、前記プロテクタは、前記支持体に固定され、前記ハーネス本体を内方の空間に通すメインプロテクタ部材を備え、前記メインプロテクタ部材は、前記回転支点の回転軸に対して平行に間隔を空けた平行軸に沿って前記ハーネス本体を内方で案内し、かつ、前記開閉体を全閉位置から全開位置へと開く際に、前記アーム部材の前記回転に追従させた前記ハーネス本体の捻れ変形を内方で許容する捻れ許容部と、前記捻れ許容部から前記第2電気接続対象物側へと引き出した前記ハーネス本体を折り曲げながら前記アーム部材に向かわせ、かつ、前記開閉体を全閉位置から全開位置へと開く際に、前記アーム部材の前記回転に追従させた前記ハーネス本体の曲げ変形を内方で許容する曲げ許容部と、を有し、前記捻れ許容部は、前記アーム部材を前記回転支点の軸周りに360度回転させて成る円形の仮想アーム作動領域の内、前記開閉体の開閉時の前記アーム部材の作動領域から外した場所に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るワイヤハーネスは、開閉体を全閉位置から全開位置へと開く際に、メインプロテクタ部材における曲げ許容部の係止内壁面でハーネス本体の曲げ変形に伴う曲げの内側を係止し、ハーネス本体の捻れ変形に伴う捻れ角度を規定捻れ角度以下に制限する。よって、このワイヤハーネスにおいては、開閉体の開閉が繰り返されたとしても、ハーネス本体の捻れ変形とその捻れの戻りの繰り返しに伴う耐久性低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、スライドドアが全閉位置のときの実施形態のワイヤハーネスを車室内から見た模式図である。
【
図2】
図2は、スライドドアが全閉位置のときの実施形態のワイヤハーネスを車両上方から見た模式図である。
【
図3】
図3は、スライドドアが全開位置のときの実施形態のワイヤハーネスを車両上方から見た模式図である。
【
図4】
図4は、捻れ許容部の配置について説明する説明図である。
【
図5】
図5は、スライドドアが全閉位置のときの実施形態のワイヤハーネスを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、スライドドアが全閉位置のときの実施形態のワイヤハーネスを別角度から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、スライドドアが全閉位置のときの実施形態のワイヤハーネスを車室内から見た平面図である。
【
図8】
図8は、スライドドアが全閉位置のときの実施形態のワイヤハーネスを車両上方から見た平面図である。
【
図9】
図9は、スライドドアが全開位置のときの実施形態のワイヤハーネスを示す斜視図である。
【
図10】
図10は、スライドドアが全開位置のときの実施形態のワイヤハーネスを別角度から見た斜視図である。
【
図11】
図11は、スライドドアが全開位置のときの実施形態のワイヤハーネスを車室内から見た平面図である。
【
図12】
図12は、スライドドアが全開位置のときの実施形態のワイヤハーネスを車両上方から見た平面図である。
【
図13】
図13は、スライドドアが全開位置のときの実施形態のワイヤハーネスを別角度から見た係止部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係るワイヤハーネスの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
[実施形態]
本発明に係るワイヤハーネスの実施形態の1つを
図1から
図13に基づいて説明する。
【0011】
図1から
図13の符号1は、本実施形態のワイヤハーネスを示す。
【0012】
このワイヤハーネス1は、支持体500と開閉体510との間に亘って配索され、その支持体500に設置された第1電気接続対象物(図示略)と開閉体510に設置された第2電気接続対象物(図示略)とを電気接続させるハーネス本体10を備える(
図1から
図4)。支持体500と開閉体510の間には、その間を連結させ、かつ、支持体500の開口に対して開閉体510を全閉位置と全開位置との間で開閉させるリンク機構520が設けられている(
図1から
図4)。開閉体510は、支持体500に設けた回転支点501の軸周りにリンク機構520のアーム部材521を回転させながらリンク機構520を介して開閉させる(
図1から
図4)。
【0013】
例えば、自動車等の車両においては、車体に対してスライド動作(スライド方向への往復移動動作)が可能なスライドドアを搭載したものが知られている。この車両においては、車体とスライドドアとの間に設けた少なくとも1つのリンク機構を介して、スライドドアを車体に対してスライド方向に往復移動させながら車体のドア開口に対して全閉位置と全開位置との間で開閉させる。以下においては、支持体500と開閉体510の一例として、車体500とスライドドア510を挙げて説明する。
【0014】
その支持体500と開閉体510の例示故、ここで例示する第1電気接続対象物とは、車体500に設置される電源(二次電池等)や電装部品などのことである。例えば、この車体500側の電装部品とは、スライドドア510のスピーカに関連する音響機器やパワーシートを駆動させる駆動装置等のことを示している。一方、ここで例示する第2電気接続対象物とは、スライドドア510に設置される電装部品やスイッチ等のことである。例えば、スライドドア510の電装部品とは、パワーウインドウを駆動させる駆動装置やスピーカ等のことを示している。また、スライドドア510のスイッチとは、パワーウインドウを作動させるためのスイッチ、パワーシートを作動させるためのスイッチ等のことを示している。
【0015】
また、ここで例示する車両は、2つのリンク機構を備える。ここでは、リンク機構(以下、「メインリンク機構」という。)520と、このメインリンク機構520に対して車両下方に間隔を空けて配置されたリンク機構(以下、「サブリンク機構」という。)530と、を備えている(
図1から
図4)。ここで示す車両においては、そのメインリンク機構520とサブリンク機構530によって、車両側方のスライドドア510を車両前後方向にスライド動作させながら車体500の側方のドア開口に対して開閉させる。
【0016】
メインリンク機構520とサブリンク機構530は、各々、車体500とスライドドア510を連結させ、かつ、スライドドア510を車体500に対してスライド動作させながら車体500のドア開口に対して開閉させるための各種のリンク部材を備えている。このメインリンク機構520とサブリンク機構530は、各々、その各種のリンク部材として、車体500の回転支点501に対して回転自在に軸支された1本のアーム部材を少なくとも備える。例えば、メインリンク機構520は、そのアーム部材として、先に示したアーム部材(以下、「メインアーム部材」という。)521を備えている(
図1から
図4)。そして、サブリンク機構530は、そのアーム部材としてのアーム部材(以下、「サブアーム部材」という。)531を備えている(
図1)。
【0017】
車体500とメインアーム部材521における車体500側の一端との間には、その車体500の回転支点501における回転軸であり、その回転支点501で車体500に対してメインアーム部材521の一端を回転自在に軸支する回転軸(以下、「車体側回転軸」という。)522が設けられている(
図1から
図4)。また、スライドドア510とメインアーム部材521におけるスライドドア510側の他端との間には、スライドドア510に対してメインアーム部材521の他端を回転自在に軸支する回転軸(以下、「ドア側回転軸」という。)523が設けられている(
図1から
図4)。メインアーム部材521は、スライドドア510が全閉位置のときに車両前後方向に延在させる。また、車体側回転軸522とドア側回転軸523は、車両上下方向を軸線方向にして配置される。
【0018】
車体500とサブアーム部材531における車体500側の一端との間には、車体500に対してサブアーム部材531の一端を回転自在に軸支する回転軸(以下、「車体側回転軸」という。)532が設けられている(
図1)。また、スライドドア510とサブアーム部材531におけるスライドドア510側の他端との間には、スライドドア510に対してサブアーム部材531の他端を回転自在に軸支する回転軸(以下、「ドア側回転軸」という。)533が設けられている(
図1)。サブアーム部材531は、スライドドア510が全閉位置のときに車両前後方向に延在させる。また、車体側回転軸532とドア側回転軸533は、車両上下方向を軸線方向にして配置される。
【0019】
尚、メインリンク機構520とサブリンク機構530は、それぞれの各種のリンク部材が複数本のアーム部材を備えるものであり、この各種のリンク部材を1本のアーム部材(例えば、メインアーム部材521、サブアーム部材531)によって簡易化した簡易モデルであってもよい。
【0020】
この車両においては、例えば、駆動源たる回転機(図示略)の出力トルクをメインリンク機構520の車体側回転軸522に伝達し、メインアーム部材521を回転支点501の軸周りに回転させることによって、スライドドア510を車体500に対してスライド動作させる。
【0021】
ワイヤハーネス1は、その車体500とスライドドア510との間に亘って配索されたハーネス本体10を備える(
図1から
図4)。そして、このワイヤハーネス1は、そのハーネス本体10を内方の空間に通して保護するプロテクタ20を備える(
図1から
図4)。
【0022】
このワイヤハーネス1においては、ハーネス本体10の一方の端末を第1電気接続対象物に対して直接的又は間接的に電気接続させ、かつ、ハーネス本体10の他方の端末を第2電気接続対象物に対して直接的又は間接的に電気接続させる。そのハーネス本体10は、複数本の電線を束ねた電線束のみで構成されたものであってもよく、この電線束の全体をコルゲートチューブ等の外装部品で覆ったものであってもよく、電線束を部分的に1つ又は複数の外装部品で覆ったものであってもよい。尚、このハーネス本体10は、1本の電線だけで構成されたものであってもよい。
【0023】
メインアーム部材521は、スライドドア510を全閉位置(
図1及び
図2)と全開位置(
図3)との間で開閉させる際に、回転支点501の軸周りに回転させる。ハーネス本体10は、そのスライドドア510の開閉に伴う回転支点501の軸周りのメインアーム部材521の回転時に車体500側とスライドドア510側との間をメインアーム部材521に沿わせたまま渡す(
図2から
図4)。ここでは、ハーネス本体10におけるメインアーム部材521に沿わせた部分をアーム配索部11と称する(
図1から
図4)。よって、このハーネス本体10は、後で詳述するが、メインアーム部材521に固定される固定部をアーム配索部11が有している。
【0024】
プロテクタ20は、車体500に固定され、ハーネス本体10を内方の空間に通すメインプロテクタ部材30を備える(
図1から
図13)。このメインプロテクタ部材30は、ハーネス本体10の配索経路上で、メインアーム部材521よりも第1電気接続対象物側に配置される。このメインプロテクタ部材30は、合成樹脂材料等で成形される。
【0025】
メインプロテクタ部材30は、回転支点501の回転軸(車体側回転軸522)に対して平行に間隔を空けた平行軸Ppに沿ってハーネス本体10を内方で案内し、かつ、スライドドア510を全閉位置から全開位置へと開く際に、メインアーム部材521の回転に追従させたハーネス本体10の捻れ変形を内方で許容する捻れ許容部31を有する(
図1から
図7、
図9から
図11及び
図13)。この捻れ許容部31は、その一部又は全体が筒状に形成され、その筒内にハーネス本体10におけるスライドドア510の開動作時に捻れ変形させる部分(捻れ変形部)12を平行軸Ppに沿わせて挿通させる(
図1から
図4、
図7及び
図11)。
【0026】
この捻れ許容部31は、メインアーム部材521を回転支点501の軸周りに360度回転させて成る円形の仮想アーム作動領域Sの内、スライドドア510の開閉時のメインアーム部材521の作動領域S1から外した場所に配置される(
図4)。例えば、この例示のメインアーム部材521は、スライドドア510を全閉位置と全開位置との間で開閉させる際に、鈍角の作動領域S1の範囲内で回転支点501の軸周りに回転する。捻れ許容部31は、仮想アーム作動領域Sの中で、そのメインアーム部材521の鈍角の作動領域S1の範囲から外れた場所に配置される。
【0027】
具体的に、捻れ許容部31は、仮想アーム作動領域Sにおけるメインアーム部材521の作動領域S1から外した場所の内、仮想アーム作動領域Sの回転中心側(つまり、回転支点501側)に配置される(
図4)。より具体的に、捻れ許容部31は、仮想アーム作動領域Sにおけるメインアーム部材521の作動領域S1から外した場所の内、仮想アーム作動領域Sの回転中心側で、かつ、車体500におけるスライドドア510の開方向側の外壁面502よりも内側で、かつ、車室内の乗員の乗車スペースSpよりもスライドドア510の開方向側に配置される(
図4)。
【0028】
メインプロテクタ部材30は、更に、捻れ許容部31から第2電気接続対象物側へと引き出したハーネス本体10を折り曲げながらメインアーム部材521に向かわせ、かつ、スライドドア510を全閉位置から全開位置へと開く際に、メインアーム部材521の回転に追従させたハーネス本体10の曲げ変形を内方で許容する曲げ許容部32を有する(
図1から
図13)。この曲げ許容部32は、その一部又は全体が筒状に形成され、その筒内にハーネス本体10におけるスライドドア510の開動作時に曲げ変形させる部分(以下、「曲げ変形部」という。)13を挿通させる(
図1から
図7、
図9から
図11及び
図13)。
【0029】
ハーネス本体10においては、メインプロテクタ部材30の曲げ許容部32からメインアーム部材521側に引き出された先がメインアーム部材521の回転支点501の軸周りの回転に追従する(
図2から
図4)。そして、このハーネス本体10においては、そのメインアーム部材521側に引き出された先がメインアーム部材521に沿って配索されたままメインアーム部材521の回転支点501の軸周りの回転に追従する(
図2から
図4)。よって、捻れ許容部31の筒内においては、スライドドア510を全閉位置から全開位置へと開く際に、メインアーム部材521の回転に合わせてハーネス本体10の捻れ変形部12が自身の軸周りに捻れ変形する。また、曲げ許容部32の筒内においては、スライドドア510を全閉位置から全開位置へと開く際に、メインアーム部材521の回転に合わせてハーネス本体10の曲げ変形部13が曲げ変形する。
【0030】
この曲げ許容部32は、スライドドア510を全閉位置から全開位置へと開く際に、ハーネス本体10を曲げ変形に伴う曲げの内側で係止する係止内壁面32aを有する(
図5から
図7、
図9から
図11及び
図13)。よって、このワイヤハーネス1においては、そのハーネス本体10における曲げ変形部13の曲げの内側に他部品が配置されていたとしても、スライドドア510を全閉位置から全開位置へと開いたときに、その他部品とハーネス本体10との干渉を曲げ許容部32で防ぐことができる。
【0031】
ここで、その係止内壁面32aは、スライドドア510を全閉位置から全開位置へと開く際に、ハーネス本体10を曲げ変形に伴う曲げの内側で係止して、捻れ許容部31の内方におけるハーネス本体10の捻れ変形に伴う捻れ角度を規定捻れ角度以下の角度に制限する形状のものとして形成される。その規定捻れ角度については、そのハーネス本体10の捻れ変形に伴う耐久性低下を抑止可能な捻れ角度に設定する。例えば、ここでは、ハーネス本体10の捻れ変形に伴う耐久性低下を抑止可能な捻れ角度の最大値を規定捻れ角度に設定する。よって、このワイヤハーネス1においては、スライドドア510の開閉が繰り返されたとしても、ハーネス本体10における捻れ変形部12の捻れ変形とその捻れの戻りの繰り返しに伴う耐久性低下を抑えることができる。
【0032】
ところで、規定捻れ角度は、ハーネス本体10における捻れ変形部12の経路長に応じて決まるものであり、その捻れ変形部12の経路長が長いほど大きな捻れ角度に設定することができる。一方、車両においては、スライドドア510の開閉時のメインアーム部材521の作動領域が決められている。そして、ハーネス本体10においては、そのメインアーム部材521の作動角度に応じて、メインアーム部材521に沿う部分の振り幅が決まり、その振り幅に応じて捻れ許容部31の内方におけるハーネス本体10の捻れ変形に伴う捻れ角度が決まる。よって、捻れ変形部12の規定捻れ角度と経路長については、例えば、ハーネス本体10におけるメインアーム部材521に沿う部分の振り幅(メインアーム部材521の作動角度)と捻れ許容部31の設置が可能なスペースと基づいて設定することができる。
【0033】
このように、このワイヤハーネス1は、曲げ許容部32の係止内壁面32aによって、スライドドア510の開閉に伴うハーネス本体10の耐久性低下を抑えることができる。
【0034】
また、その係止内壁面32aは、スライドドア510を全閉位置から全開位置へと開く際に、ハーネス本体10を曲げ変形に伴う曲げの内側で係止して、曲げ許容部32の内方におけるハーネス本体10の曲げ変形に伴う曲率を規定曲率以下の大きさに制限する形状のものとして形成されることが望ましい。その規定曲率については、そのハーネス本体10の曲げ変形に伴う耐久性低下を抑止可能な曲率に設定する。例えば、ここでは、ハーネス本体10の曲げ変形に伴う耐久性低下を抑止可能な曲率の最大値を規定曲率に設定する。よって、このワイヤハーネス1においては、スライドドア510の開閉が繰り返されたとしても、ハーネス本体10における曲げ変形部13の曲げ変形とその曲げの戻りの繰り返しに伴う耐久性低下を抑えることができる。ここで示す係止内壁面32aは、その規定曲率以下の弧状の内壁面として形成され、スライドドア510を全閉位置から全開位置へと開く際に、その内壁面に沿ってハーネス本体10の曲げ変形部13を規定曲率以下の曲率で曲げ変形させる。
【0035】
ハーネス本体10は、第1電気接続対象物側で車体500に対して直接的又は間接的に固定され、かつ、第2電気接続対象物側でメインアーム部材521に対して直接的又は間接的に固定される。
【0036】
このハーネス本体10は、捻れ許容部31の内方から第1電気接続対象物側へと引き出した先でメインプロテクタ部材30又は車体500の固定位置に固定される固定部(以下、「第1固定部」という。)14を有する(
図5から
図7、
図9及び
図11)。この例示のメインプロテクタ部材30は、その固定位置に、捻れ許容部31における第1電気接続対象物側の開口の周縁部から突出させた片部33を有している(
図5から
図7、
図9から
図11及び
図13)。ハーネス本体10は、その第1固定部14を片部33と一緒に結束バンドや粘着テープ等で巻き付けるなどして、メインプロテクタ部材30の固定位置に固定する。よって、この例示のハーネス本体10は、メインプロテクタ部材30を介し、車体500に対して間接的に固定される。
【0037】
また、このハーネス本体10は、メインアーム部材521の固定位置に対して直接的又は間接的に固定される固定部(以下、「第2固定部」という。)15を有する(
図5から
図10、
図12及び
図13)。この第2固定部15は、ハーネス本体10のアーム配索部11に設けている。ハーネス本体10は、少なくとも2箇所の第2固定部15をメインアーム部材521の固定位置に対して粘着テープで巻き付けたりクリップ止めしたりして、アーム配索部11をメインアーム部材521に沿わせたまま当該メインアーム部材521に対して直接的に固定することができる。
【0038】
ハーネス本体10においては、第1固定部14と第2固定部15の間に捻れ変形部12と曲げ変形部13が存在しており、スライドドア510を全閉位置と全開位置との間で開閉させる際に、その第1固定部14と第2固定部15の間で捻れ変形と捻れからの戻り変形と曲げ変形と曲げからの戻り変形とが生じる。つまり、このハーネス本体10においては、スライドドア510を全閉位置と全開位置との間で開閉させる際に、第1固定部14と第2固定部15の間で経路が変化する。よって、捻れ許容部31と曲げ許容部32のそれぞれの内部空間は、スライドドア510の開閉時のハーネス本体10の捻れ変形と曲げ変形に伴うハーネス本体10の第1固定部14と第2固定部15との間の経路変化を許容し得るものとして形成される。ここで示す「経路変化を許容する」とは、曲げ許容部32の係止内壁面32aによるハーネス本体10の係止状態を除き、スライドドア510の開閉時に経路が変化しているハーネス本体10を捻れ許容部31と曲げ許容部32のそれぞれの内方で引っ掛からせない、と云うことである。
【0039】
ここで、プロテクタ20は、メインアーム部材521に固定され、曲げ許容部32から第2電気接続対象物側へと引き出したハーネス本体10をメインアーム部材521に沿わせながら内方の空間に通すサブプロテクタ部材40を備える(
図1から
図13)。このサブプロテクタ部材40は、合成樹脂材料等で筒状に成形される。
【0040】
このサブプロテクタ部材40は、例えば、その筒軸方向をメインアーム部材521の延在方向に向けて、このメインアーム部材521に固定される(
図1から
図4)。例えば、このサブプロテクタ部材40は、メインアーム部材521に対して直接的に固定してもよく、メインアーム部材521に溶接等で設けたブラケット(図示略)に固定することで、メインアーム部材521に対して間接的に固定してもよい。
【0041】
ハーネス本体10は、そのようなサブプロテクタ部材40をプロテクタ20が備える場合、このサブプロテクタ部材40の内方から第2電気接続対象物側へと引き出した先でサブプロテクタ部材40又はメインアーム部材521の固定位置に固定される第2固定部15を有している。この例示のサブプロテクタ部材40は、その固定位置として、第2電気接続対象物側の開口の周縁部から突出させた片部41を有している(
図5から
図10、
図12及び
図13)。ハーネス本体10は、その第2固定部15を片部41と一緒に結束バンドや粘着テープ等で巻き付けるなどして、サブプロテクタ部材40の固定位置に固定する。よって、この例示のハーネス本体10は、サブプロテクタ部材40を介し、1箇所の第2固定部15だけでメインアーム部材521に対して間接的に固定される。
【0042】
捻れ許容部31と曲げ許容部32のそれぞれの内部空間は、このようなサブプロテクタ部材40をプロテクタ20が備える場合でも、スライドドア510の開閉時のハーネス本体10の捻れ変形と曲げ変形に伴うハーネス本体10の第1固定部14と第2固定部15との間の経路変化を許容し得るものとして形成される。
【0043】
ハーネス本体10においては、そのような第1固定部14と第2固定部15との間での経路変化が許容されているので、サブプロテクタ部材40の内方(つまり、アーム配索部11)でも経路変化が生じる。そして、このハーネス本体10は、アーム配索部11における第2固定部15よりもメインプロテクタ部材30側での経路変化が大きいと、その第2固定部15がサブプロテクタ部材40又はメインアーム部材521の固定位置に過負荷を与えてしまう可能性がある。先の例示では、第2固定部15からサブプロテクタ部材40の片部41や結束バンド等に過負荷を与えてしまう可能性がある。
【0044】
そこで、サブプロテクタ部材40には、スライドドア510を全閉位置から全開位置へと開く際に、第1電気接続対象物側から入り込んだハーネス本体10を曲げ許容部32の内方での曲げ変形に伴う曲げの内側で係止し、ハーネス本体10の経路変化に伴う第2固定部15からサブプロテクタ部材40又はメインアーム部材521の固定位置への負荷を軽減させる係止部42を設ける(
図13)。この係止部42は、スライドドア510を全閉位置から全開位置へと開く際に、第1電気接続対象物側から入り込んだハーネス本体10を曲げ許容部32の内方での曲げ変形に伴う曲げの内側で係止することによって、ハーネス本体10の経路変化(特に、アーム配索部11の経路変化)が過度に大きくならないようにする。よって、この係止部42は、スライドドア510を全閉位置から全開位置へと開く際に、経路変化しているハーネス本体10の第2固定部15からサブプロテクタ部材40又はメインアーム部材521の固定位置への過負荷を抑えることができる。先の例示では、第2固定部15からサブプロテクタ部材40の片部41や結束バンド等への過負荷を抑えることができる。
【0045】
ここでは、サブプロテクタ部材40における第1電気接続対象物側の開口の周縁部を係止部42として利用する。よって、係止部42として利用する周縁部には、ハーネス本体10を例えば面接触させるための弧状面を設けることが望ましい。
【0046】
尚、この例示のプロテクタ20においては、サブプロテクタ部材40がメインプロテクタ部材30に対して回転自在に保持されている。この例示のサブプロテクタ部材40は、メインプロテクタ部材30の曲げ許容部32に対して、回転支点501の回転軸(車体側回転軸522)と同軸上で回転自在に保持されている。メインプロテクタ部材30は、回転支点501の回転軸(車体側回転軸522)と同軸上で曲げ許容部32から突出させた回転軸34を有している(
図5から
図13)。そして、サブプロテクタ部材40は、曲げ許容部32に向けて突出させた保持部43を有している(
図5から
図13)。このサブプロテクタ部材40は、その保持部43に回転軸34を差し込むことによって、メインプロテクタ部材30に対して回転支点501の回転軸(車体側回転軸522)と同軸上で回転自在に保持される。
【0047】
以上示したように、本実施形態のワイヤハーネス1は、上述したが如き形状と配置のプロテクタ20(メインプロテクタ部材30、サブプロテクタ部材40)によって耐久性の低下を抑えることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ワイヤハーネス
10 ハーネス本体
14 第1固定部
15 第2固定部
20 プロテクタ
30 メインプロテクタ部材
31 捻れ許容部
32 曲げ許容部
32a 係止内壁面
40 サブプロテクタ部材
42 係止部
500 支持体、車体
501 回転支点
510 開閉体、スライドドア
520 メインリンク機構(リンク機構)
521 メインアーム部材(アーム部材)
Pp 平行軸
S 仮想アーム作動領域
S1 作動領域