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特開2024-165258自給油式軸受ユニットの漏油防止装置
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  • 特開-自給油式軸受ユニットの漏油防止装置 図1
  • 特開-自給油式軸受ユニットの漏油防止装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165258
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】自給油式軸受ユニットの漏油防止装置
(51)【国際特許分類】
   F16N 7/38 20060101AFI20241121BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20241121BHJP
   F16N 7/00 20060101ALI20241121BHJP
   F16N 7/18 20060101ALI20241121BHJP
   F16N 7/40 20060101ALI20241121BHJP
   H02K 5/15 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
F16N7/38 E
F16J15/447
F16N7/00
F16N7/18
F16N7/40
H02K5/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081294
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】大橋 満裕
【テーマコード(参考)】
3J042
5H605
【Fターム(参考)】
3J042BA05
3J042CA10
3J042DA06
3J042DA13
5H605CC04
5H605EB06
5H605EB26
5H605EB28
5H605EB33
(57)【要約】
【課題】自給油式軸受ユニットにおいて、回転軸とケーシングの穴(回転軸を貫通させるもの)の間にはデフレクタが配置されているものの、ケーシング外部からの負圧により、ケーシング内の潤滑油、特にミスト状の潤滑油が回転軸とデフレクタとの間からケーシング外へ漏出するおそれがある。
【解決手段】この発明の給油式軸受ユニットの漏油防止装置において、自給油式軸受ユニットは、ケーシング、回転軸、ケーシングにおいて回転軸との間に配置されるデフレクタ、ケーシング内に配置される粘性ポンプ効果を利用したオイルサーキュレータとを備え、漏油防止装置は、ケーシングに内蔵される配管を備え、該配管の一端はデフレクタに対向あるいは挿入し、配管の他端はオイルサーキュレータのオイル入口に向かう油流れのある領域に該油流れ方向に向いて配置される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自給油式軸受ユニットの漏油防止装置であって、
前記自給油式軸受ユニットは、ケーシング、回転軸、前記ケーシングにおいて回転軸との間に配置されるデフレクタ、前記ケーシング内に配置される粘性ポンプ効果を利用したオイルサーキュレータとを備えてなり、
前記漏油防止装置は、前記ケーシングに内蔵される配管を備え、該配管の一端は前記デフレクタに対向あるいは挿入され、前記配管の他端は前記オイルサーキュレータのオイル入口に向かう油流れのある領域に該油流れ方向に向いて配置される、漏油防止装置。
【請求項2】
前記配管には気液分離装置が配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記配管は前記一端側において第1内径を有し、他端側で第2内径を有し、前記第2内径は前記第1内径と同じかあるいは前記第1内径より大きい、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記オイルサーキュレータのオイル入口付近にはオイルを取り込むパイプが配置され、前記配管の他端は、前記パイプ内に挿入されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記配管の一端は前記ケーシング内のオイル油面より高い位置であり、かつ、前記デフレクタに対向あるいは挿入されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記デフレクタはラビリンス構造部を備え、該ラビリンス構造部は前記回転軸の周方向に連続し、かつその軸方向に分離した隔壁を備え、該隔壁に前記配管の一端が貫通している、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ラビリンス構造部において、前記隔壁と隔壁との間にポケットが形成され、該ポケットに前記ラビリンス構造部で捕捉された油が蓄積される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の漏油防止装置を備える自給油式軸受ユニット。
【請求項9】
自給油式軸受ユニットの漏油防止装置を用いる漏油防止方法であって、
前記自給油式軸受ユニットは、ケーシング、回転軸、及び前記ケーシングにおいて回転軸との間に配置されるデフレクタを備え、
前記漏油防止装置は前記ケーシングに内蔵される配管を備え、
前記配管の一端を前記デフレクタに対向あるいは挿入させ、前記配管の他端を前記ケーシング内においてオイルが流れる領域に該オイル流れの方向に沿って配置し、オイル流れに起因する負圧により前記配管を介して前記回転軸と前記デフレクタとの間に負圧を発生させる、漏油防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自給油式軸受ユニットの漏油防止装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自給油式軸受ユニット(以下、この明細書では「軸受ユニット」と略することがある)は、軸受に支持された回転軸がケーシングで覆われ、ケーシング内に潤滑油が充填されている。この潤滑油を自動的に軸受へ給油するため、粘性ポンプ効果を利用したオイルサーキュレータが用いられている。
かかる軸受ユニットにおいて、回転軸はケーシングから突出しており、回転軸とケーシングとの間にはデフレクタが介在される。
デフレクタとしていわゆるラビリンス構造が採用されている(特許文献1参照)。このラビリンス構造は周方向に連続してかつ軸方向に独立した複数の隔壁を備える環状のシール構造であり、この隔壁の間に潤滑油を補足するポケットが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-233491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軸受ユニットの周囲は冷却等のために常に空気流れが発生しているため、回転軸とケーシングとの間は外側からの負圧にさらされることがある。回転軸とケーシングの穴(回転軸を貫通させるもの)の間にはデフレクタが配置されているものの、ケーシング外部からの負圧により、ケーシング内の潤滑油、特にミスト状の潤滑油が回転軸とデフレクタとの間からケーシング外へ漏出するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、かかる課題を解決するために鋭意検討を重ねてきた結果、回転軸とデフレクタとの間にケーシングの内側から負圧をかければ、ケーシング内の潤滑油が外側へ漏出することを防止できるのではないかと考えた。そして、ケーシング内に配置されている粘性ポンプ効果により生じる負圧に着目した。
即ち、この発明の第1局面は次のように規定される。
自給油式軸受ユニットの漏油防止装置であって、
前記自給油式軸受ユニットは、ケーシング、回転軸、前記ケーシングにおいて回転軸との間に配置されるデフレクタ、前記ケーシング内に配置される粘性ポンプ効果を利用したオイルサーキュレータとを備えてなり、
前記漏油防止装置は、前記ケーシングに内蔵される配管を備え、該配管の一端はデフレクタに対向あるいは挿入され、前記配管の他端は前記オイルサーキュレータのオイル入口に向かう油流れのある領域に該油流れ方向に向いて配置される、漏油防止装置。
【0006】
このように規定される第1局面の漏油防止装置によれば、配管の他端が油流れ方向に向いて配置される。この他端には油流れにより負圧が生じる、この負圧は配管の一端に及ぼされる。この配管の一端はデフレクタに対向あるいは挿入されているので、配管の一端に生じた負圧は回転軸とデフレクタとの間にも影響する。換言すれば、回転軸とデフレクタとの間にケーシングの内側から負圧が与えられ、もって、ケーシング内の潤滑油の外部への漏出を防止できる。
【0007】
配管には気液分離装置を配置することができる(第2局面)。回転軸とデフレクタとの間に対向する配管の一端が負圧になることで、この一端から潤滑油のミスト(以下、「オイルミスト」と言うことがある)と共に空気が吸い込まれることがある。そこで、空気とオイルミストとを分離して、オイルミストのみを液状の油分として、配管の他端から潤滑油の油流れに巻き込ませることが好ましい。
【0008】
前記配管は前記一端側において第1内径を有し、他端側で第2内径を有し、前記第2内径は前記第1内径と同じかあるいは前記第1内径より大きくすることができる(第3局面)。
これにより、配管の他端で発生した負圧が一端側においても維持される。
【0009】
オイルサーキュレータのオイル入口に潤滑油を取り込むパイプがつながれているとき、配管の他端をこのパイプ内に挿入することが好ましい(第4局面)。
オイルサーキュレータによる油流れがパイプ中に集中して、整流される。よって、パイプ内において油流れの速度が大きくなり、その中に挿入される配管の他端に発生する負圧も大きくなる。もって、配管の一端が対向する回転軸とデフレクタとの間にも負圧を与えられる。
【0010】
配管の一端の位置は、ケーシング内の潤滑油の油面より高い位置であり、かつ、デフレクタ内径の最も低い位置とすることができる(第5局面)。
配管の一端を油面より高い位置に配置することで、配管の一端に生じた負圧によりオイルミストが外部へ漏出することを防止できる。また、デフレクタに捕捉された潤滑油が集結する、デフレクタの内径の最も低い位置へ負圧を与えることで、潤滑油の漏出防止がより確実となる。
【0011】
デフレクタはラビリンス構造を備えることができる。このラビリンス構造を構成する隔壁に前記配管の一端を貫通させることができる。
ラビリンス構造において捕捉された潤滑油は、隔壁と隔壁との間に形成されるポケット内に蓄積される。配管の一端が隔壁を貫通することで、ポケット内の潤滑油をこの一端から吸い出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1はこの発明の実施の形態の自給油式軸受ユニットを示し、図1(A)はその縦断面図であり、図1(B)は部分横断面図である。
図2図2はこの発明の実施の形態の自給油式軸受ユニットを示し、図2(A)はその縦断面図であり、図2(B)は部分横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下この発明の実施の形態について説明をする。
図1Aはこの発明の実施形態の自給油式軸受ユニット1の縦断面図を示し、図1Bは同部分横断面図である。
この軸受ユニット1は、ケーシング3、回転軸5、デフレクタ7及びオイルサーキュレータ10を備える。
ケーシング3は底板部分2の上に立設され、回転軸5を貫通させる貫通孔4を備える。貫通孔4の周面には環状のデフレクタ7が嵌合される。デフレクタ7の内周面はラビリンス構造部8である。ラビリンス構造部8は回転軸5の周方向に連続してかつ軸方向に独立した複数の隔壁を備え、隔壁と隔壁との間にポケットが形成される。ケーシング3内から外部へ漏出しようとする潤滑油はラビリンス構造部8で捕捉されてこのケーシング3内に最も近いポケットの最下部、即ち、デフレクタ7の内径の最も大きい位置に集積される。
【0014】
ケーシング3には回転軸5を支持するラジアル軸受11とスラスト軸受13とが備えられる。スラスト軸受13はスラストカラー14に摺動する。スラストカラー14とオイルサーキュレータ10との間には周方向のオイルパス15が形成されている。回転軸5の回転に伴う粘性ポンプ効果により、ケーシング3内のオイル溜まり20から吸い上げられたオイルがオイルパス15内を移動する(特開平06-233491号公報参照)。
スラストカラー14のオイルパス15から放出されたオイルは、図1(B)に示す通り、各軸受11、13へ供給されるとともに、外部のラジエータ21へ送られ、オイル溜まり20へ戻される。これにより、油が循環される。
【0015】
オイル溜まり20にはパイプ30が垂直方向に配置され、その上端はオイルパス15の入口15Aに向いている。パイプ30の下端は底板部分2に向けて開口している。粘性ポンプ効果によりオイルパス15の入口15A内へと吸い込まれるオイル溜まり20内の潤滑油は、このパイプ30内において整流される。パイプ内にて整流された潤滑油の流れ30Aの速度は、パイプが無い場合に比べて、速くなる。
上記において、パイプ30は直管のものが垂直方向に配置されているが、その上端がオイルパス15の入口15Aに対向しておれば、傾斜して配置されていても、屈曲していてもよい。また、パイプの径に傾斜を持たせてパイプ内での潤滑油の流速を加速させることもできる。
【0016】
図中の符号40は、漏油防止装置を構成する配管であり、その一端41はデフレクタに対向あるいは挿入され、その他端43はパイプ30へその下端側から挿入されている。
パイプ30内では図示矢印方向にオイル流れ30Aが生じており、当該オイル流れ30Aに沿った方向に配置される配管40の他端43には、当該オイル流れ30Aによる負圧が生じている。
この他端43に生じた負圧は、配管40を介して、その一端41側に伝達する。この一端41の負圧は、デフレクタに対向あるいは挿入されている一端41にも影響を及ぼし、この間からオイルミストが外部へ漏出することを防止する。
【0017】
図1の例では鋼管を屈曲させた配管40を用いているが、その材質は耐油性であれば特に限定されない。その形状も任意であるが、他端43側の径(第2内径)は一端41側の径(第1内径)と同じとするか、これより大きくすることが好ましい。これにより、他端43側に生じた負圧を一端41側へ確実に伝達できる。
配管40の一端41は、オイル溜まり20の油面Lを超えてそれより高い位置に配置されている。これにより、オイル溜まり20の潤滑油を吸い込むことなく、回転軸5とデフレクタ7との間へ確実に負圧を付与できる。
【0018】
また配管40の一端41はデフレクタ7の内径の最も低い位置に配置されている。デフレクタ7で補足されたオイルミストはその内径の最も大きい位置に溜まるので、この部位に負圧を集中させることで、潤滑油の漏出を効率的に防止する。
デフレクタ7がラビリンス構造部8を備える場合、ラビリンス構造部8の隔壁へ配管40の一端を貫通させることで、ラビリンス構造部8のポケット内を確実に負圧とすることができる。ポケットは回転軸5の周方向へ連続しているので、回転軸5の全周に渡り、負圧が付与される。勿論、ポケットに貯められた油を吸い出すこともできる。
【0019】
図2は他の実施形態の自給油式軸受ユニット100を示す。なお、図1と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
この軸受ユニット100では、配管40に、気液分離装置140が備えられる。この気液分離装置140は、配管の一端41から吸引された空気(オイルミストが含まれる)を、油(液分)と空気とに分離する。分離された空気は空気管141を介して、オイル溜まり20の油面Lの上へ排出される。分離された油は配管40を介してオイル溜まり20へ返される。
このように気液分離装置140を配置することで、空気がオイル溜まり20へ導入されることを確実に防止できる。
空気管141の出口はオイル溜まり20の油面Lより上であって、かつ、デフレクタ7の近傍へ突出させることが好ましい。気液分離装置140で分離された空気をデフレクタ7の近傍へ戻すことで、デフレクタ7近傍の環境におけるオイルミスト濃度が希釈される。よって、漏油機能が向上する。
【0020】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0021】
1、100 自給油式軸受ユニット
3 ケーシング
5 回転軸
7 デフレクタ
8 ラビリンス構造部
10 オイルサーキュレータ
40 配管
41 一端
43 他端
140 気液分離装置
図1
図2