(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165261
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】マイクロホン固定装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
H04R1/00 328C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081299
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】吉野 智
(57)【要約】
【課題】コネクタ付きのマイクケーブルをマイクロホンから取り外すことなくそのまま基台の裏面側に引き出すことができる取付作業性のよいマイクロホン固定装置を提供する。
【解決手段】一端にマイクロホン10が取り付けられた状態で基台2の取付孔3内に挿通される支持軸20と、基台2の下面側から支持軸20に嵌め込まれるスペーサーリング30と、支持軸20に螺合してスペーサーリング30を基台2に押し付けるナット40とを含み、支持軸20と取付孔3との間にはマイクケーブル11を挿通し得る隙間Gが設けられ、スペーサーリング30はその隙間Gに入り込む小径部301と、基台2の下面に当接する大径部302とを一体に備えているとともに、小径部301から大径部302にかけてケーブル引出溝303が形成されており、マイクケーブル11がケーブル引出溝303を通して基台2の下面側に引き出され、ナット40の締付によりマイクロホン10が支持軸20を介して基台2の上面に固定されるようにする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクケーブルを有するマイクロホンを机や演台等の基台の上面に固定するマイクロホン固定装置において、
長さが前記基台の厚さよりも長く一端に前記マイクロホンが取り付けられた状態で前記基台に穿設されている取付孔内に挿通される外周に雄ネジ部を有する支持軸と、前記基台の下面側から前記支持軸の外周に嵌め込まれるスペーサーリングと、前記支持軸の他端側から前記雄ネジ部に螺合して前記スペーサーリングを前記基台の下面に押し付けるナットとを含み、
前記支持軸と前記取付孔との間には、前記マイクケーブルを挿通し得る隙間が設けられており、前記スペーサーリングは、前記隙間に入り込む小径部と、前記取付孔よりも大径で前記基台の下面に当接する大径部とを一体に備えているとともに、前記小径部の上端から前記大径部にかけてケーブル引出溝が形成されており、
前記マイクケーブルが前記隙間および前記ケーブル引出溝を通して前記基台の下面側に引き出され、前記ナットの締付により前記マイクロホンが前記支持軸を介して前記基台の上面に固定されることを特徴とするマイクロホン固定装置。
【請求項2】
前記スペーサーリングは、弾性体からなることを特徴とする請求項1に記載のマイクロホン固定装置。
【請求項3】
前記マイクケーブルの直径をφb、前記大径部における前記ケーブル引出溝の前記スペーサーリングの軸方向に沿った深さをd、前記大径部の前記スペーサーリングの軸方向に沿った厚さをtとして、φb≦d<tであることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロホン固定装置。
【請求項4】
前記支持軸は前記雄ネジ部の一部分を軸線方向に沿って切削したDカット面を有し、前記ケーブル引出溝は前記Dカット面の所に配置されることを特徴とする請求項1に記載のマイクロホン固定装置。
【請求項5】
前記マイクケーブルは、その一端側が前記マイクロホンの内蔵部品に直付けされ他端側にコネクタを一体に備えており、前記取付孔は前記コネクタを挿通し得る大きさであることを特徴とする請求項1に記載のマイクロホン固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロホン固定装置に関し、さらに詳しく言えば、会議用テーブルや演台等の机上に置いて使用されるバウンダリマイクロホンやグースネック型マイクロホン等の固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの場合、バウンダリマイクロホンは扁平な形状を呈し、会議用テーブルや演台等の机上に置いて使用されるが、使用者等により動かされると収音方向が変わってしまうことがある。そこで、盗難防止の意味をも含めて机に固定することが行われている。これにはいくつかの固定方法がある。
【0003】
例えば、机上に置かれたバウンダリマイクロホンを机の裏側から複数のネジで固定する方法があるが、机に複数のネジ挿通孔を開ける必要があるばかりでなく、マイクケーブルを机の裏側に引き回す必要がある場合には、ネジ挿通孔とは別にケーブル挿通孔を開ける必要がある。また、この方法によると、机に加えられた振動がネジを伝わってマイクロホンに拾われてしまうことがある。
【0004】
これに対して、机に開ける孔を一つで済ませる方法がある。その一例として、
図5(A)(B)を参照して、特許文献1には、机等の基台30に受け具100を介して立設されるグースネック型マイクロホンにおいて、受け具100は、上端と下端が基台30からはみ出すように取付孔31内に挿通されるゴム材よりなる円筒状の受け具本体110と、受け具本体110の上端に配置されるワッシャ板120の中心孔を通して受け具本体110内に挿通される雄ネジ130と、受け具本体110の下端側から挿通されて雄ネジ130に螺合する雌ネジ筒140とを備え、雄ネジ130と雌ネジ筒140とにより受け具本体110を軸方向に圧縮し拡径して取付孔31内に固定する方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献1によると、マイクケーブル13を基台30の下面(裏面)側に引き出すため、
図5(B)に示されているように、受け具本体110の外周面の一部分にケーブル挿通溝112を軸方向に沿って形成し、マイクケーブル13をケーブル挿通溝112に沿わせて基台30の下面側に引き出すようにしている。
【0006】
これによれば、基台(机)30に一つの取付孔31を開けるだけで、マイクロホンの固定とマイクケーブルの基台下面側への引き回しを行うことができるが、基台30の厚さは区々であることから、その厚さに見合う軸長を有する受け具本体を用意する必要がある。
【0007】
また、雄ネジ130を雌ネジ筒140に螺合する際の連れ周りを確実に防止するには、雌ネジ筒140の外径を受け具本体110の内径よりも大きくして雌ネジ筒140を所定の摩擦力をもって受け具本体110内に挿通する必要があり、これが作業性を悪くする要因になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、厚さの異なる種々の机等の基台に適用可能であるとともに、コネクタ付きのマイクケーブルをマイクロホンから取り外すことなくそのまま基台の裏面側に引き出すことができる取付作業性のよいマイクロホンの固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、マイクケーブルを有するマイクロホンを机や演台等の基台の上面に固定するマイクロホン固定装置において、
長さが上記基台の厚さよりも長く一端に上記マイクロホンが取り付けられた状態で上記基台に穿設されている取付孔内に挿通される外周に雄ネジ部を有する支持軸と、上記基台の下面側から上記支持軸の外周に嵌め込まれるスペーサーリングと、上記支持軸の他端側から上記雄ネジ部に螺合して上記スペーサーリングを上記基台の下面に押し付けるナットとを含み、
上記支持軸と上記取付孔との間には、上記マイクケーブルを挿通し得る隙間が設けられており、上記スペーサーリングは、上記隙間に入り込む小径部と、上記取付孔よりも大径で上記基台の下面に当接する大径部とを一体に備えているとともに、上記小径部の上端から上記大径部にかけてケーブル引出溝が形成されており、
上記マイクケーブルが上記隙間および上記ケーブル引出溝を通して上記基台の下面側に引き出され、上記ナットの締付により上記マイクロホンが上記支持軸を介して上記基台の上面に固定されることを特徴としている。
【0011】
上記スペーサーリングは、弾性体からなることが好ましい。
【0012】
また本発明は、上記マイクケーブルの直径をφ、上記大径部における上記ケーブル引出溝の上記スペーサーリングの軸方向に沿った深さをd、上記大径部の上記スペーサーリングの軸方向に沿った厚さをtとして、φ≦d<tであることを特徴としている。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、上記支持軸は上記雄ネジ部の一部分を軸線方向に沿って切削したDカット面を有し、上記ケーブル引出溝は上記Dカット面の所に配置される。
【0014】
また本発明において、上記マイクケーブルは、その一端側が上記マイクロホンの内蔵部品に直付けされ他端側にコネクタを一体に備えており、上記取付孔は上記コネクタを挿通し得る大きさとされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、厚さの異なる種々の机等の基台に適用可能であるとともに、コネクタ付きのマイクケーブルをマイクロホンから取り外すことなくそのまま基台の裏面側に引き出すことができる取付作業性のよいマイクロホンの固定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のマイクロホン固定装置の使用状態を示す断面図。
【
図3】上記マイクロホン固定装置に含まれる支持軸を示す斜視図。
【
図4】上記マイクロホン固定装置に含まれるスペーサーリングを示す(A)斜視図、(B)その正面図、(C)正面図におけるC-C線断面図。
【
図5】(A)マイクロホン固定装置の従来例を示す斜視図、(B)上記従来例で用いられている受け具本体を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、
図1ないし
図4を参照して、本発明をよりよく理解するうえで、その実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
まず、
図1と
図2を参照して、このマイクロホン固定装置1は、マイクロホン10を会議用テーブルや演台等の基台2の上面に固定するための基本的な構成として、支持軸20と、スペーサーリング30と、ナット40とを備えている。
【0019】
本実施形態において、マイクロホン10は扁平な形状を有するバウンダリーマイクロホンで、その底部からマイクケーブル11が引き出されている。マイクケーブル11は、その一端がマイクロホン10に内蔵されている図示しない例えば回路基板等に直付けされており、他端側に図示しない例えばマイクロホンミキサー等に接続される角型のコネクタ12を一体に備えている。コネクタ12は丸型であってもよい。
【0020】
なお、マイクロホン10に対してマイクケーブル11を図示しないコネクタを介して着脱自在としてもよいが、そのコネクタを設ける分だけマイクロホン10の厚さ(高さ)が大きくなる。そこで、本実施形態においては、マイクロホン10の厚さ(高さ)を低くしてより扁平な形状とするため、マイクケーブル11の一端側をマイクロホン10にコネクタを介することなく直付けしている。
【0021】
図3を併せて参照して、支持軸20は、基台2の厚さよりも長い軸長(長さ)を有する円筒体からなり、その外周には雄ネジ部201が形成されている。支持軸20は中実の円柱体であってもよい。支持軸20の軸長は、種々の基台2に適用し得るように、通常の会議テーブルの板厚よりも十分に長く設定される。本実施形態において、支持軸20の軸長は55mmで、外径は20mmである。
【0022】
支持軸20の一端(上端)側には、マイクロホン10の裏蓋10aにネジ止め等により取り付けられるフランジ部202が形成されている。フランジ部202の一部分には、マイクケーブル11を支持軸20の軸本体(雄ネジ部201が形成されている軸部分)に沿わせ易くするための切欠部203が形成されている。切欠部203は溝形状であってもよい。支持軸20は、合成樹脂製、金属製のいずれであってもよい。
【0023】
支持軸20は、基台2に穿設されている取付孔3内に挿通されるが、支持軸20と取付孔3との間には、マイクケーブル11を挿通し得る隙間Gが設けられる。取付孔3はコネクタ12を通すことができる大きさである。一例としては、支持軸20の外径をφa、マイクケーブル11の外径をφb、取付孔3の内径をφcとし、支持軸20が取付孔3内に同軸として挿通されるとして、取付孔3の内径φcは、φc≧φa+2×φbの大きさである。
【0024】
本実施形態によると、支持軸20は雄ネジ部201の一部分を軸線方向に沿ってほぼ平坦に切削したDカット面204を有し、後述するように、マイクケーブル11がDカット面204に沿って配置されることから、Dカット面204の削り代の深さをtとして、取付孔3の内径φcは、φc≧φa+2×φb-tであってもよい。
図3に示すように、Dカット面20は、フランジ部202に形成されている切欠部203と同じ位置に設けられる。
【0025】
スペーサーリング30はゴム材等の弾性体からなり、
図1に示すように、基台2の下面側から支持軸20の外周に嵌め込まれる。本実施形態において、スペーサーリング30は雄ネジ部201と螺合する雌ネジを有しておらず、適当な摩擦力をもって支持軸20の外周に嵌め込まれるが、別の態様として、スペーサーリング30に雄ネジ部201と螺合する雌ネジが形成されてもよい。
【0026】
スペーサーリング30は、支持軸20と取付孔3との間の隙間G内に入り込む小径部301と、取付孔3よりも大径で基台2の下面に当接する大径部302とを一体に備えている。
図4を併せて参照して、スペーサーリング30には、小径部301の上端から大径部302にかけてマイクケーブル11を基台2の下面側に引き出すためのケーブル引出溝303が形成されている。
【0027】
マイクケーブルの外径をφb、大径部302におけるケーブル引出溝303のスペーサーリング30の軸方向に沿った深さをd、大径部302のスペーサーリング30の軸方向に沿った厚さをtとして、φb≦d<tであり、ケーブル引出溝303は大径部302の下端にまでは到達していない。すなわち、スペーサーリング30は、平面視でケーブル引出溝303によってC字状に切り欠かれていない。
【0028】
ナット40は、支持軸20の他端(下端)側から雄ネジ部201に螺合してスペーサーリング30の大径部302を基台2の下面に押し付ける。ナット40の締め付けによってスペーサーリング30の小径部301は、支持軸20と取付孔3との間の隙間G内に入り込む。
【0029】
マイクロホン10を基台2に固定する手順の一例を説明する。まず前作業として、基台2に取付孔3を穿設する。取付孔3の大きさは、マイクケーブル11に取り付けられているコネクタ12を挿通可能とする大きさで、かつ、上記したように取付孔3の内径φcをφc≧φa+2×φbの大きさとする。
【0030】
次に、支持軸20のフランジ部202をマイクロホン10の裏蓋10aにネジ止め等により取り付ける。その際、マイクケーブル11をフランジ部202に形成されている溝203に嵌め込む。そして、コネクタ12を取付孔3に通して基台2の下面側に引き出すとともに、マイクケーブル11をDカット面204に沿わせて支持軸20を取付孔3内に挿通する。
【0031】
そして、スペーサーリング30を基台2の下面側から支持軸20の外周に嵌め込む。その際、ケーブル引出溝303をDカット面204のところに位置合わせし、マイクケーブル11を弛みが生じないようにケーブル引出溝303に通す。
【0032】
しかる後、ナット40を支持軸20の他端側から雄ネジ部201に螺合してスペーサーリング30の大径部302を基台2の下面に押し付ける。これにより、スペーサーリング30の小径部301が支持軸20と取付孔3との間の隙間G内に入り込み、マイクケーブル11が基台2の下面側に引き出された状態でマイクロホン10が基台2上にしっかりと固定される。
【0033】
上記に説明したように、本発明によれば、厚さの異なる種々の机等の基台に適用可能であるとともに、コネクタ付きのマイクケーブルをマイクロホンから取り外すことなくそのまま基台の裏面側に引き出すことができる取付作業性のよいマイクロホンの固定装置が提供される。
【0034】
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。当業者であるならば上記実施形態に加えられる変更もしくは改良も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1 マイクロホン固定装置
2 基台
3 取付孔
10 マイクロホン(バウンダリーマイクロホン)
11 マイクケープル
12 コネクタ
20 支持軸
201 雄ネジ部
202 フランジ部
203 溝
204 Dカット面
30 スペーサーリング
301 小径部
302 大径部
303 ケーブル引出溝
40 ナット