(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165262
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】塵芥収集車
(51)【国際特許分類】
B65F 3/00 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
B65F3/00 L
B65F3/00 D
B65F3/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081300
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000192073
【氏名又は名称】株式会社モリタホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】藪 博之進
(72)【発明者】
【氏名】生島 博
(72)【発明者】
【氏名】池田 周平
(72)【発明者】
【氏名】裏野 陽大
(72)【発明者】
【氏名】稲生 貴久
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晃一
【テーマコード(参考)】
3E024
【Fターム(参考)】
3E024AA01
3E024AA04
3E024AA05
3E024AA08
3E024DC03
3E024GA03
3E024HA04
3E024HB01
3E024HB02
3E024HB03
3E024HB04
3E024HC02
3E024HD05
3E024HE02
(57)【要約】
【課題】作業員の負担軽減と第三者による操作防止を両立した後部扉の開閉操作機構を備えた塵芥収集車を提供する。
【解決手段】塵芥収集車1は、塵芥を収容する収容箱3と、収容箱3の後方に設けられ塵芥が投入される投入口1Aを有する投入箱4と、投入口1Aに設けられた開閉式の後部扉5と、後部扉5を開閉させる扉開閉装置10と、作業員が携帯する非接触タグを読み取るリーダー20と、制御装置30とを備え、作業員が非接触タグをリーダー20に近接させると、リーダー20は非接触タグから受信した信号に基づくデータを制御装置30に送信し、制御装置30は受信したデータに基づき後部扉5の操作権限の有無を判断し、操作権限を有すると判断した場合は扉開閉装置10に対して開閉動作を指示する指令信号を送信し、指令信号を受信した扉開閉装置10は後部扉5の開動作又は閉動作を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵芥を収容する収容箱と、
前記収容箱の後方に設けられ前記塵芥が投入される投入口を有する投入箱と、
前記投入口に設けられた開閉式の後部扉と、
前記後部扉を開閉させる扉開閉装置と、
作業員が携帯する非接触タグを読み取るリーダーと、
制御装置と、を備え、
前記作業員が前記非接触タグを前記リーダーに近接させると、前記リーダーは前記非接触タグから受信した信号に基づくデータを前記制御装置に送信し、前記制御装置は受信した前記データに基づき前記後部扉の操作権限の有無を判断し、前記操作権限を有すると判断した場合は前記扉開閉装置に対して開閉動作を指示する指令信号を送信し、前記指令信号を受信した前記扉開閉装置は前記後部扉の開動作又は閉動作を行うことを特徴とする塵芥収集車。
【請求項2】
前記リーダーは、車両の後部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の塵芥収集車。
【請求項3】
前記リーダーの検知範囲は50mm以内であることを特徴とする請求項1に記載の塵芥収集車。
【請求項4】
前記扉開閉装置は、前記投入口の側面に設けられたシリンダ及びアームを有し、
前記アームは、一端が前記シリンダのロッドに接続されると共に他端が前記後部扉に接続されており、
前記後部扉の開閉は、前記シリンダの前記ロッドの伸縮に伴う前記アームの回転により行われることを特徴とする請求項1に記載の塵芥収集車。
【請求項5】
前記シリンダは、電動シリンダであることを特徴とする請求項4に記載の塵芥収集車。
【請求項6】
前記後部扉の開閉をロックするロック装置を備え、
前記ロック装置は、前記アームの回転軌道に位置するロック位置と前記アームの回転軌道から外れた非ロック位置とに変位可能な回転阻止体を有し、
前記回転阻止体は、前記後部扉の全閉時又は全開時に前記ロック位置となり前記アームの回転を阻止することを特徴とする請求項4に記載の塵芥収集車。
【請求項7】
前記ロック装置は、前記制御装置から前記扉開閉装置に対して開閉動作を指示する前記指令信号が送信されたときに前記回転阻止体を前記非ロック位置とすることを特徴とする請求項6に記載の塵芥収集車。
【請求項8】
前記後部扉の全閉位置が前記投入口の下端よりも上方に設定されていることにより、前記後部扉が前記全閉位置にあるとき前記後部扉と前記投入口の前記下端との間に前記作業員が手を入れることが可能な隙間が形成され、
前記隙間には開閉自在のカバーが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の塵芥収集車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投入口に開閉式の後部扉を備える塵芥収集車に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は従来の塵芥収集車の図であり、
図5(a)は側面図、
図5(b)は投入箱の斜視図である。
塵芥収集車1は、塵芥(ゴミ)が投入される投入口1Aが後面に形成された投入箱4と、投入された塵芥を収容する収容箱3を備える。投入箱4の内部には、押し込み板1Bや回転板1Cといった可動部を有する塵芥積込装置が設けられている。また、投入口1Aには上下に開閉する後部扉5が設けられており、その後部扉5には作業員が開閉に用いる把手1Dが設けられている。
後部扉5は、各ゴミ集積所において塵芥投入開始時に開けて塵芥投入終了後に閉めるが、巡回ルートに存在するごみ集積所の数は数十以上であることが多く、そのたびに作業員は把手1Dを持って後部扉5を上下にスライドさせるため負担が大きい。
ここで、後部扉の開閉を自動的に行う技術として、特許文献1には、塵芥投入箱における塵芥積込装置の上方に設けられ、塵芥投入箱の左右側壁をつなぐクロスバーと、クロスバーに固定された駆動モータと、駆動モータに駆動されるベルト又はチェーンよりなり、上下に延びる伝動部材と、一端が伝動部材に回動可能に連結され、他端が投入口カバーに回動可能に連結されて上下に移動するアーム部と、駆動モータを制御して投入口カバーを上端位置と下端位置との間でスライド移動させて塵芥投入口を開閉させる制御部とを備えた塵芥収集車が開示されている。
また、特許文献2には、塵芥容器の後方に、押込装置を内装したパッカを連接し、パッカの後面に投入口を開口した塵芥車において、投入口の両側壁にガイドレ-ルを設け、投入口を開閉する投入口扉の下部をガイドレ-ルにて上下方向に案内可能に設け、投入口上部には、一端がパッカ側面にて上下回動可能に軸支されたア-ムの他端を軸支し、ア-ムとパッカとの間にはネジ軸の回転にてア-ムを上下回動させるシリンダを設けてなる塵芥車における投入口扉開閉装置が開示されている。
また、特許文献3には、昇降することで塵芥投入口を開閉する扉と、一端側が塵芥投入箱本体に回転自在に連結されるとともに、他端側が扉に回転自在に連結され、扉の昇降動作に連動して一端側の連結位置を中心に回動するよう設けられた扉開閉アームとを備え、一端側が塵芥投入箱本体に回転自在に連結されるとともに、他端側が扉開閉アームの中間部に回転自在に連結され、伸縮することにより扉開閉アームをその一端側の連結位置を中心に回動させるよう設けられた油圧シリンダを更に備える塵芥収集車の塵芥投入箱が開示されている。
また、特許文献4には、受信部による子機の検知結果として、危険エリアで子機が検知されているとき、または、安全エリアで子機が検知されていないときには、塵芥圧縮・回収機構の動作を不許可とするための信号と、安全エリアで子機が検知されているときには、塵芥圧縮・回収機構の動作を許可するための信号とを生成する処理部と、処理部により生成された信号を塵芥圧縮・回収機構の制御機構に出力する出力部とを有する塵芥収集支援装置が開示されており、段落0021において、一般住民が不適切にモノを塵芥圧縮・回収機構に投げ込む行為を明示的に禁止するため、子機が安全エリアの外であるときに、塵芥圧縮・回収機構を停止させるだけでなく、塵芥投入口を閉じることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-202887号公報
【特許文献2】実開平06-008313号公報
【特許文献3】特開2010-228850号公報
【特許文献4】特開2020-011840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の塵芥収集車は、投入口カバー(後部扉)を自動で開閉させるものであるが、投入口カバーの開閉は、開閉スイッチが押されるか、又は開閉のための動作がカメラにより認識されたことにより実行されるため、作業員以外の者によって開閉される可能性がある。
特許文献2に記載の投入口扉開閉装置は、アームとシリンダを利用して投入口扉(後部扉)の開閉操作を容易とするものであるが、投入口扉の開閉は、切換スイッチの操作により実行されるため、作業員以外の者によって開閉される可能性がある。
特許文献3に記載の塵芥投入箱は、油圧シリンダによって塵芥投入口の扉(後部扉)を開閉するものであるが、塵芥投入口の扉の開閉は上昇用ボタン及び下降用ボタンの操作により実行されるため、作業員以外の者によって開閉される可能性がある。
特許文献4に記載の塵芥収集支援装置は、作業者(作業員)がパッカー車から離れて子機が安全エリアの外にあるときに塵芥投入口を閉じるものであるが、作業者が近くにいない状況で後部扉の開閉が行われることには安全上の懸念がある。
そこで本発明は、作業員の負担軽減と第三者による操作防止を両立した後部扉の開閉操作機構を備えた塵芥収集車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の塵芥収集車1は、塵芥を収容する収容箱3と、収容箱3の後方に設けられ塵芥が投入される投入口1Aを有する投入箱4と、投入口1Aに設けられた開閉式の後部扉5と、後部扉5を開閉させる扉開閉装置10と、作業員が携帯する非接触タグを読み取るリーダー20と、制御装置30とを備え、作業員が非接触タグをリーダー20に近接させると、リーダー20は非接触タグから受信した信号に基づくデータを制御装置30に送信し、制御装置30は受信したデータに基づき後部扉5の操作権限の有無を判断し、操作権限を有すると判断した場合は扉開閉装置10に対して開閉動作を指示する指令信号を送信し、指令信号を受信した扉開閉装置10は後部扉5の開動作又は閉動作を行うことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の塵芥収集車1において、リーダー20は、車両の後部に設けられていることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の塵芥収集車1において、リーダー20の検知範囲は50mm以内であることを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1に記載の塵芥収集車1において、扉開閉装置10は、投入口1Aの側面に設けられたシリンダ11及びアーム12を有し、アーム12は、一端がシリンダ11のロッドに接続されると共に他端が後部扉5に接続されており、後部扉5の開閉は、シリンダ11のロッドの伸縮に伴うアーム12の回転により行われることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載の塵芥収集車1において、シリンダ11は、電動シリンダであることを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項4に記載の塵芥収集車1において、後部扉5の開閉をロックするロック装置50を備え、ロック装置50は、アーム12の回転軌道に位置するロック位置とアーム12の回転軌道から外れた非ロック位置とに変位可能な回転阻止体51を有し、回転阻止体51は、後部扉5の全閉時又は全開時にロック位置となりアーム12の回転を阻止することを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項6に記載の塵芥収集車1において、ロック装置50は、制御装置30から扉開閉装置10に対して開閉動作を指示する指令信号が送信されたときに回転阻止体51を非ロック位置とすることを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項1に記載の塵芥収集車1において、後部扉5の全閉位置が投入口1Aの下端よりも上方に設定されていることにより、後部扉5が全閉位置にあるとき後部扉5と投入口1Aの下端との間に作業員が手を入れることが可能な隙間が形成され、隙間には開閉自在のカバー60が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、作業員の負担軽減と第三者による操作防止を両立した後部扉の開閉操作機構を備えた塵芥収集車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1の実施の形態による塵芥収集車は、塵芥を収容する収容箱と、収容箱の後方に設けられ塵芥が投入される投入口を有する投入箱と、投入口に設けられた開閉式の後部扉と、後部扉を開閉させる扉開閉装置と、作業員が携帯する非接触タグを読み取るリーダーと、制御装置とを備え、作業員が非接触タグをリーダーに近接させると、リーダーは非接触タグから受信した信号に基づくデータを制御装置に送信し、制御装置は受信したデータに基づき後部扉の操作権限の有無を判断し、操作権限を有すると判断した場合は扉開閉装置に対して開閉動作を指示する指令信号を送信し、指令信号を受信した扉開閉装置は後部扉の開動作又は閉動作を行うものである。
本実施の形態によれば、非接触タグをリーダーに近接させれば後部扉が自動開閉するので、作業員の負担を軽減できる。また、後部扉の開閉が容易になることで第三者によるいたずら等が懸念されるが、非接触タグが鍵となっているため後部扉の開閉操作を作業員に限定することができる。
【0009】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による塵芥収集車において、リーダーは、車両の後部に設けられているものである。
本実施の形態によれば、リーダーが車両の後部に設けられていることにより、作業員は後部扉を開閉しようとする場合は必ずその近くへ移動するため、後部扉の近くに人がいないことを確認せずに後部扉の開閉が行われることを防止できる。車両の後部に設けるリーダーの数や位置は任意であるが、少なくとも車両の左後部に一個設けるか、又は車両の左後部と右後部に各一個設けることが好ましい。リーダーが車両の左後部に設けられていることにより作業員は歩道側の位置から後部扉の開閉操作を行えるので、塵芥収集車に他車両が衝突した場合に作業員が巻き込まれて負傷する可能性を低減できる。また、リーダーが車両後部の左右両側に設けられている場合は、作業員が車両の左右どちら側からでも後部扉の開閉操作を行えるため利便性が高い。
【0010】
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態による塵芥収集車において、リーダーの検知範囲を50mm以内としたものである。
本実施の形態によれば、リーダーの検知範囲を狭くすることで、リーダーの設置箇所近傍で作業員がゴミの投入等を行っている最中に意図せず後部扉の開閉が行われてしまうことを防止できる。
【0011】
本発明の第4の実施の形態は、第1の実施の形態による塵芥収集車において、扉開閉装置は、投入口の側面に設けられたシリンダ及びアームを有し、アームは、一端がシリンダのロッドに接続されると共に他端が後部扉に接続されており、後部扉の開閉は、シリンダのロッドの伸縮に伴うアームの回転により行われるものである。
本実施の形態によれば、後部扉の開閉をスムーズに行うことができる。
【0012】
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態による塵芥収集車において、シリンダとして電動シリンダを用いたものである。
本実施の形態によれば、後部扉の開速度と閉速度をほぼ同じにすることができ、動作音も小さくすることができる。
【0013】
本発明の第6の実施の形態は、第4の実施の形態による塵芥収集車において、後部扉の開閉をロックするロック装置を備え、ロック装置は、アームの回転軌道に位置するロック位置とアームの回転軌道から外れた非ロック位置とに変位可能な回転阻止体を有し、回転阻止体は、後部扉の全閉時又は全開時にロック位置となりアームの回転を阻止するものである。
本実施の形態によれば、後部扉の全開及び全閉時にはアームの回転と干渉する位置に回転阻止体があるため、後部扉が塵芥投入作業時に突然閉まったり走行中の振動によって開いたりすることを防止できる。また、ロック装置は、従来のように後部扉自体に設けるのではなく、後部扉とは別の位置に設けられているので、後部扉の開閉時の衝撃で扉本体及びロック装置が故障や破損等してしまうことを防止できる。
【0014】
本発明の第7の実施の形態は、第6の実施の形態による塵芥収集車において、ロック装置は、制御装置から扉開閉装置に対して開閉動作を指示する指令信号が送信されたときに回転阻止体を非ロック位置とするものである。
本実施の形態によれば、後部扉の開閉を迅速にスタートさせることができる。
【0015】
本発明の第8の実施の形態は、第1の実施の形態による塵芥収集車において、後部扉の全閉位置が投入口の下端よりも上方に設定されていることにより、後部扉が全閉位置にあるとき後部扉と投入口の下端との間に作業員が手を入れることが可能な隙間が形成され、隙間には開閉自在のカバーが設けられているものである。
本実施の形態によれば、リーダーや扉開閉装置の不具合等により非接触タグをリーダーに近接させても後部扉の開閉ができない等の事態が発生した場合は、作業員がカバーを開け当該隙間に手を差し入れて後部扉を持ち上げることができる。
【実施例0016】
以下、本発明の一実施例による塵芥収集車について説明する。
図1は本実施例による塵芥収集車の外観図であり、
図1(a)は左側面図、
図1(b)は背面図である。
図2は扉開閉装置を示す図、
図3は後部扉を全開にした状態を示す図、
図4は点検扉を少し開けた状態を示す図である。
塵芥収集車1は、運転席や助手席等を有するキャビン2と、キャビン2の後方に設けられ塵芥を収容する収容箱3と、収容箱3の後方に設けられ塵芥が投入される投入口1Aを有する投入箱4と、投入口1Aに設けられた上下開閉式の後部扉5と、後部扉5を開閉させる扉開閉装置10と、塵芥収集作業を行う作業員が携帯する非接触タグを読み取るリーダー(受信機)20と、扉開閉装置10等を制御する制御装置30と、ディスプレイやスピーカー等を有する表示装置40と、後部扉5の開閉をロックするロック装置50を備える。制御装置30はキャビン2内に設置され、扉開閉装置10、リーダー20、表示装置40、及びロック装置50等と有線又は無線にて接続されている。なお制御装置30はキャビン2外に設置されても良い。
塵芥収集車1は、バッテリーに蓄電した電気で走行用モータを駆動させる電気自動車であり、従来の主流であるディーゼル車と比べて低騒音であり環境負荷も低い。なお、塵芥収集車1はディーゼル車とすることも可能である。
作業員が携帯する非接触タグは、例えばRFIDタグ(ICタグ)であり、識別番号等の情報が記録されている。非接触タグの形状は、カード型、コイン型、シール型、又はスティック型など任意であるが、例えばコイン型の非接触タグをリストバンドに挿入して使用するなど、腕に装着するウェアラブル形態であることが好ましい。
【0017】
塵芥収集車1の後面には、塵芥積込装置の操作ボタン6、非常停止ボタン7、テールランプ8、バッテリーインジケータ80、及び負荷表示ランプ90等が設けられている。
操作ボタン6の近傍には、作業員に外国人が増えていることを考慮して、漢字等の日本語による操作ボタン6の名称表記だけでなく、操作ボタン6の操作により実行される動作を表すピクトグラムを併記している。
テールランプ8は、車両後面左上と車両後面右上のそれぞれにおいて鉛直方向に配列された複数の縦長ランプからなる。テールランプ8は、形状を縦長とすることで、横幅が小さいスペースにも配置することができ、また車両後面の上部に設けることで、車両後方で作業員が塵芥投入作業を行っているときも作業員の体に遮られることなく後方車両等から見易いものとすることができる。
バッテリーインジケータ80は、テールランプ8の下方において鉛直方向に配列された複数のランプからなり、ランプの点灯数などによって、塵芥収集車1に搭載されているバッテリーの大凡の残量を車両後方で作業する作業員に分かり易く示すものである。
負荷表示ランプ90は、後部扉5の上方において車両幅方向に設けられており、投入作業中に、投入されたゴミの量が多く塵芥積込装置の負荷が高い状態となっている場合は赤く点灯し、投入されたゴミの量がさほど多くなく塵芥積込装置の負荷が低い状態となっている場合は緑に点灯するなど、塵芥積込装置にかかっている負荷を車両後方で作業する作業員に分かり易く示すものである。塵芥積込装置が高負荷のときは低負荷のときよりも消費電力が大きくバッテリーの減りが速いため、塵芥積込装置の負荷状況を作業員に示すことで、塵芥積込装置が極力低負荷となるように投入するゴミの量を作業員が自発的に調節する効果が期待できる。
【0018】
図2に示すように、扉開閉装置10は、シリンダ(アクチュエータ)11とアーム12を有する。シリンダ11及びアーム12は、投入箱4の左側面と右側面において一対ずつ設けられている。
アーム12は、頂部が平坦な山型を成し、一端がシリンダ11のロッドに接続されると共に他端が後部扉5の上部に接続されており、シリンダ11のロッドの伸縮に伴い支点13を中心として投入箱4の側面に沿って回転する。支点13はシリンダ11のロッドの近傍に位置し、アーム12の回転範囲は約90度である。
ロッドが縮方向へ動くとアーム12が車両前方側へ回転して後部扉5が上方へスライドし、ロッドが伸方向へ動くとアーム12が車両後方側へ回転して後部扉5が下方へスライドするというように、後部扉5の開閉は、シリンダ11の伸縮に伴うアーム12の回転により行われる。これにより、後部扉5の開閉をスムーズに行うことができる。
【0019】
後部扉5には接触センサ又は衝撃センサが設けられていても良い。後部扉5が閉方向に動いている途中で、下端に作業員の体が当たった場合など、センサにより接触等が検知された場合は、扉開閉装置10は動作を停止する。これにより、作業員の体が後部扉5に挟まれることを防止できる。なお、接触等を検知した場合に動作を停止するのではなく、後部扉5を開方向へ動かすようにすることも可能である。
さらに、非接触タグを用いた後部扉5の開閉に塵芥積込装置の動作を連動させることも可能である。その場合は、作業員が塵芥積込装置に巻き込まれる事故を防止できるなど、安全性を向上させることができる。
【0020】
シリンダ11は、電動シリンダであることが好ましい。シリンダ11を油圧シリンダとすることも可能であるが、油圧シリンダを用いた場合は、後部扉5の開速度と閉速度に差が生じやすく、また、その速度差が縮まるように油圧シリンダの作動を制御することも困難である。一方、電動シリンダを用いた場合は、特に制御することなく後部扉5の開速度と閉速度をほぼ同じにすることができる。また、油圧シリンダに比べて動作音も小さくできる。
【0021】
図2には、後部扉5の全閉時のアーム12の位置を実線で示し、後部扉5の全開時のアーム12の位置を破線で示している。
ロック装置50は、回転阻止体51を有する。回転阻止体51は、アーム12の回転軌道に位置するロック位置と、アーム12の回転軌道から外れた非ロック位置とに変位可能である。
図2の上部には、下方から見たロック装置50の開状態と閉状態を示している。ロック装置50の開状態とは回転阻止体51が非ロック位置にある状態であり、ロック装置50の閉状態とは回転阻止体51がロック位置にある状態である。
ロック装置50は、後部扉5が全開及び全閉のときは回転阻止体51をロック位置とする。これにより、後部扉5の全開及び全閉時にはアーム12の回転と干渉する位置に回転阻止体51があるため、後部扉5が塵芥投入作業時に突然閉まったり走行中の振動によって開いたりすることを防止できる。また、ロック装置50は、従来のように後部扉5自体に設けるのではなく、後部扉5とは別の位置に設けられているので、後部扉5の開閉時の衝撃で扉本体及びロック装置50が故障や破損等してしまうことを防止できる。
【0022】
本実施例では、後部扉5が全開となるアーム12の位置の近傍に近接センサ70を設けており、近接センサ70が反応するとロック装置50の回転阻止体51がロック位置に変位するようにしている。また、制御装置30又は扉開閉装置10に計時部を設けており、扉開閉装置10が閉動作を開始すると同時に計時部のタイマーをスタートさせ、タイマーの残時間がゼロになるとロック装置50の回転阻止体51がロック位置に変位するようにしている。タイマーは、後部扉5が全開から全閉になるまでに通常かかる時間に基づいて予めセットしておく。なお、計時部に代えて、後部扉5が全閉となるアーム12の位置の近傍にも近接センサを設けておき、その近接センサが反応した場合にロック装置50の回転阻止体51がロック位置に変位するように構成することも可能である。
また、ロック装置50は、制御装置30から扉開閉装置10に対して開閉動作を指示する指令信号が送信されたときは、回転阻止体51を非ロック位置とする。これにより、後部扉5の開閉を迅速にスタートさせることができる。
なお、ロック装置50を設けることで後部扉5のロックとシリンダ11の破損防止を確実に行うことができるが、シリンダ11が、後部扉5の重みや走行中の振動等によってはロッドが動かず、また破損の心配もないものである場合は、ロック装置50を省略することも可能である。
【0023】
塵芥収集車1の後部側面にはメンテナンス時などに開ける点検扉9を設けている。従来の塵芥収集車1における点検扉はその全体が開く構造であったが、本実施例の点検扉9は、2枚のパネルを前端から略1/3の位置においてヒンジ接続し、前側のパネルは閉めたままで後側のパネルのみを開けることが可能な構造としている。これにより、点検扉9の開閉が容易となり、点検扉9の内部に設けられている扉開閉装置10などの機器類のメンテナンスの効率を高めることができる。また、点検扉9の内部に資機材等の収納スペースを設けた場合は、収納されている資機材等へのアクセスが容易となる。
【0024】
リーダー20は、点検扉9の後方に設けられている。作業員が非接触タグをリーダー20に近接させると、リーダー20は非接触タグから受信した信号に基づくデータを制御装置30に送信する。
制御装置30は、受信したデータに含まれる識別番号をリストと照合するなどして、当該非接触タグについて後部扉5の操作権限の有無を判断する。
当該非接触タグは操作権限を有しないと制御装置30が判断した場合は、扉開閉装置10による後部扉5の自動開閉は行われず、表示装置40からエラー表示やエラー音等が発出される。
一方、当該非接触タグが操作権限を有すると制御装置30が判断した場合は、扉開閉装置10に対して開閉動作を指示する指令信号が送信される。この指令信号は、後部扉5が全開状態のときは後部扉5を下げる動作を指示する信号であり、後部扉5が全閉状態のときは後部扉5を上げる動作を指示する信号である。指令信号を受信した扉開閉装置10は、後部扉5の開動作又は閉動作を行う。
このように、非接触タグをリーダー20に近接させれば塵芥収集車1の後部扉5が自動開閉するので、作業員の負担を軽減できる。また、後部扉5の開閉が容易になることで第三者によるいたずら等が懸念されるが、所定の非接触タグが鍵となっており、それを持たないものは後部扉5を開閉できないため、後部扉5の開閉操作を作業員に限定することができる。また、後部扉5に手動開閉用の把手等を設ける必要がないため、後部扉5を凹凸の少ないフラットなものとすることができる。また、後部扉5の開閉が手動で行う場合と比べて静かに行われるため、後部扉5の開閉時の衝撃によって周辺機器等が破損することを防止できる。
【0025】
リーダー20の数や位置は任意であるが、本実施例のように車両の左右後部の両側面に各一個設けることが好ましい。リーダー20が車両の後部に設けられていることにより、作業員は後部扉5を開閉しようとする場合は必ずその近くへ移動するため、後部扉5の近くに人がいないことを確認せずに後部扉5の開閉が行われることを防止できる。また、リーダー20が車両後部の左右両側に設けられているので、作業員は車両の左右どちら側からでも後部扉5の開閉操作を行うことができ、利便性が高い。
また、本実施例においてはリーダー20を車両後部の左右両側に設けているが、リーダー20を左右どちらか一方のみに設ける場合は車両後部の左側に設けると良い。このことにより、作業員は歩道側の位置から後部扉5の開閉操作を行えるので、塵芥収集作業中の塵芥収集車1に他車両が衝突した場合に作業員が巻き込まれて負傷する可能性を低減できる。なお、本実施例のように左右両側にリーダー20が設けられている塵芥収集車1においても、交通量の多い道路や道幅の狭い道路などでは左側のリーダーを極力利用するように周知することで、作業員の安全性を高めることができる。
【0026】
リーダー20の検知範囲は、50mm以内であることが好ましく、15mm以内であることがより好ましい。リーダー20の検知範囲を狭くすることで、リストバンド型等の非接触タグを装着した作業員がリーダー20の設置箇所近傍でゴミの投入等を行っている最中に、意図せず非接触タグがリーダー20の検知範囲に入り後部扉5の開閉が行われてしまうことを防止できる。
【0027】
表示装置40には、後部扉5の開閉動作が行われているとき、その動作状態を示す文字等が表示される。このとき周囲に注意を促す警告音や音声が発せられるようにすることも可能である。また、表示装置40のディスプレイをタッチパネルとし、メンテナンス時などにおける後部扉5の手動操作ボタン、またその手動操作ボタンの操作説明画面等を表示させることもできる。
【0028】
後部扉5が全閉位置にあるとき後部扉5と投入口1Aの下端との間に作業員が手を入れることができる程度の隙間が形成されるように、後部扉5の全閉位置は投入口1Aの下端よりもやや上方に設定されている。また、この隙間には開閉自在のカバー60が設けられている。これにより、リーダー20や扉開閉装置10の不具合等により非接触タグをリーダー20に近接させても後部扉5の開閉ができない等の事態が発生した場合は、作業員がカバー60を開け当該隙間に手を差し入れて後部扉5を持ち上げることが可能である。また、普段は当該隙間がカバー60で塞がれているので、収集したゴミが走行時に飛散してしまうことを防止できる。
本実施例では、ガイドテーブルがカバー60を兼ねている。ガイドテーブルは、車両幅方向に延設された軸を中心として回転可能に構成されており、略鉛直の立設状態と、略水平の伏臥状態をとることが可能であり、走行時にはガイドテーブルを立設状態にして当該隙間を塞いでおくことで収集したゴミが車両外へ飛散するのを防止でき、塵芥収集時にはガイドテーブルを車両後方側へ回転させ伏臥状態(カバー60を開けた状態)にすることで、作業員が塵芥投入作業の際にゴミを一旦載せるなど、補助板として用いることができる。