(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165271
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】シャツ
(51)【国際特許分類】
A41B 3/00 20060101AFI20241121BHJP
A41B 3/02 20060101ALI20241121BHJP
A41B 3/06 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A41B3/00
A41B3/02
A41B3/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081320
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】597008533
【氏名又は名称】フレックスジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢島 隆生
(57)【要約】
【課題】寒暖差に対し臨機応変にスタイルを変えて首回りの保温性を高めたり涼感を得られるようにしたりすることができる便利なシャツを提供する。
【解決手段】衿4の裏地を衿腰2と表衿12とで分割して形成し且つ衿4の表地を一枚生地の裏衿13で形成する一方、左右の衿先に相互に係合可能な係合部(ボタン14及びボタンホール15)を設け、衿4を立てた状態で前記係合部により衿先同士を閉じ合わせられるように構成した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衿の裏地を衿腰と表衿とで分割して形成し且つ衿の表地を一枚生地の裏衿で形成する一方、左右の衿先に相互に係合可能な係合部を設け、衿を立てた状態で前記係合部により衿先同士を閉じ合わせられるように構成したことを特徴とするシャツ。
【請求項2】
衿腰にのみ芯材を挟み込ませて保形性を持たせたことを特徴とする請求項1に記載のシャツ。
【請求項3】
衿の裏地と表地を中表にして周囲を地縫いすることで縫着したことを特徴とする請求項1又は2に記載のシャツ。
【請求項4】
衿の展開形状を衿腰側の下辺よりも反衿腰側の上辺の方が幅狭となる偏平台形状に形成したことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のシャツ。
【請求項5】
表衿と裏衿とが成す衿羽根の部分における下前側の衿先に一方の係合部を成すボタンを装着すると共に、上前側の衿先には他方の係合部を成すボタンホールを形成したことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のシャツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャツに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10に示す如く、一般的なシャツ1’にあっては、衿腰2により支えられた衿羽根3を下向きに折り返すようにした衿4が首回りに装備されており、これら衿腰2及び衿羽根3には、首回りの外観を美しく形作るための適度な硬さが求められるため、夫々の内部に芯地5,6を挟み込んで両者に適切な保形性を持たせるようにしてある。
【0003】
尚、
図10中における符号7は着用者の胸部及び腹部を覆う下前側の前身頃、8は同じく着用者の胸部及び腹部を覆う上前側の前身頃、9は肩部を覆うヨーク、10は下前側の前身頃7の前立に縫着されたボタン、11は上前側の前身頃8の前立に形成されたボタンホールを示す。
【0004】
このようなシャツ1’を寒い季節に着用して外出する場合、首回りが外気に晒され易いため、シャツ1’の下にタートルネックセーターを重ね着したり、屋外に出る時だけマフラーを首に巻いたりすることが行われている。
【0005】
尚、シャツの着用時に首回りの保温を図るための提案としては、下記の特許文献1等の如き先行技術文献情報がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、シャツ1’の下にタートルネックセーターを重ね着してしまうと、寒い屋外から暖房の効いた室内に入った時などに簡単にタートルネックセーターを脱ぐことができないため、暑くなってもタートルネックセーターを我慢して着続けなければならないという不具合があった。
しかも、タートルネックセーターを着たり脱いだりする際には、細長い筒状のネック部に頭を通さなければならないため、その度に髪形が乱れてしまって整え直さなければならないという面倒もあった。
他方、マフラーを首回りの防寒具として使用した場合には、暑くなった時に簡単に首から取り外せて便利であるが、その後はマフラーを持ち歩かなければならなくなって邪魔になってしまうこともあった。
【0008】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、寒暖差に対し臨機応変にスタイルを変えて首回りの保温性を高めたり涼感を得られるようにしたりすることができる便利なシャツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、衿の裏地を衿腰と表衿とで分割して形成し且つ衿の表地を一枚生地の裏衿で形成する一方、左右の衿先に相互に係合可能な係合部を装備し、衿を立てた状態で前記係合部により衿先同士を閉じ合わせられるように構成したことを特徴とするシャツ、に係るものである。
【0010】
而して、このように構成されたシャツでは、冬季の外出時などに衿を立てた状態にして衿先同士を係合部を介し閉じ合わせることによりハイネック仕様のシャツにスタイルを変えて首回りの保温性を高めることが可能となり、暖房の効いた室内に戻った際には、衿先同士のボタンとボタンホールを介した係合を解いて衿を折り返して下げ、首元の一番目のボタンも開けて開衿仕様のシャツにスタイルを変えることで涼感を得ることが可能となるので、寒暖差に対し臨機応変にスタイルを変えて対応することが可能となる。
【0011】
また、本発明においては、衿腰にのみ芯材を挟み込ませて保形性を持たせることが好ましく、このようにすれば、ハイネック仕様とした際に、首回りに適度な皺感を残してカジュアルな装いを醸し出させることが可能となる一方、開衿仕様とした際には、衿腰に芯材による保形性を持たせたことで衿羽根をしっかりと綺麗に折り返させることが可能となる。
【0012】
更に、本発明においては、衿の裏地と表地を中表にして周囲を地縫いすることで縫着すると良く、このようにすれば、表に返したときに周囲に縫い目が現れなくなるので、ハイネック仕様とした際に、首回りを美観良くすっきり見せることが可能となる。
【0013】
また、本発明においては、衿の展開形状を衿腰側の下辺よりも反衿腰側の上辺の方が幅狭となる偏平台形状に形成することが好ましく、このようにすれば、ハイネック仕様とした際に、首回りを上向きに窄まる形状として隙間を無くし、より一層保温性を高めることが可能となる。
【0014】
例えば、本発明においては、表衿と裏衿とが成す衿羽根の部分における下前側の衿先に一方の係合部を成すボタンを装着すると共に、上前側の衿先には他方の係合部を成すボタンホールを形成することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明のシャツによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0016】
(I)寒暖差に対し臨機応変にスタイルを変えて首回りの保温性を高めたり涼感を得られるようにしたりすることができるので、シャツの下にタートルネックセーターを重ね着した場合のような脱ぎ着に要する煩雑さや、マフラーを首回りの防寒具として携帯した場合における不要時の煩わしさなどを解消することができ、冬季の外出を軽快な装いで楽しむことができる。
【0017】
(II)衿腰にのみ芯材を挟み込ませて保形性を持たせるようにすれば、ハイネック仕様とした際に、首回りに適度な皺感を残してカジュアルな装いを醸し出させることができる一方、開衿仕様とした際には、衿腰に芯材による保形性を持たせたことで衿羽根をしっかりと綺麗に折り返させることができる。
【0018】
(III)衿の裏地と表地を中表にして周囲を地縫いすることで縫着すれば、表に返したときに周囲に縫い目が現れなくなるので、ハイネック仕様とした際に、首回りを美観良くすっきり見せることができる。
【0019】
(IV)衿の展開形状を衿腰側の下辺よりも反衿腰側の上辺の方が幅狭となる偏平台形状に形成すれば、ハイネック仕様とした際に、首回りを上向きに窄まる形状として隙間を無くし、より一層保温性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明を実施する形態の一例を示す正面図である。
【
図2】
図1のシャツの衿を立てた状態での模式的な断面図である。
【
図3】
図1のシャツの衿を立てた状態で裏地側から見た展開図である。
【
図4】
図1のシャツの衿を立てた状態で表地側から見た展開図である。
【
図5】衿腰に対する芯地の配置状態を示す展開図である。
【
図6】
図5の衿腰を裏返して芯止めステッチを入れた状態を示す展開図である。
【
図7】
図6の衿腰に表衿を接いだ状態を示す展開図である。
【
図8】衿の裏地と表地を中表にして周囲を地縫いした状態を示す展開図である。
【
図9】衿を立てて衿先同士を閉じ合わせた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1~
図9は本発明を実施する形態の一例を示すもので、
図10と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、
図1に正面図で示す如く、本形態例のシャツ1においても、衿腰2により支えられた衿羽根3を下向きに折り返すようにした衿4が首回りに装備されているが、
図2及び
図3に示す如く、衿4の裏地を衿腰2と表衿12とで分割して形成する一方、
図2及び
図4に示す如く、衿4の表地を一枚生地の裏衿13で形成しており、しかも、下前側の衿先にボタン14を装着すると共に、上前側の衿先にはボタンホール15を形成しており、これら衿先のボタン14とボタンホール15により、衿4を立てた状態で衿先同士を閉じ合わせられるようにしてある(
図9参照)。
【0023】
ここで、
図2の断面図に示す通り、衿腰2にのみ芯材16を挟み込ませて保形性を持たせるようにしている一方、表衿12と裏衿13とが成す衿羽根3の部分には芯材を挟み込んでおらず、特に本形態例の場合は、
図5に示す通り、衿腰2の幅寸法に対し芯材16の幅寸法を短めにして、前記衿腰2の幅方向両側に芯材16の無い領域が残るようにしてある。
【0024】
より具体的に衿4を縫製する手順を説明すると、
図6に示す如く、
図5の状態から衿腰2の下端を芯材16を挟み込むように折り返して芯止めステッチを入れた後、
図7に示す如く、その芯材16付き衿腰2を表衿12に接ぐ腰飾りステッチを入れ、更に、
図8に示す如く、衿4の裏地と表地を中表にして周囲を地縫いすることで縫着し、これを表に返して衿4を完成し、該衿4の衿ぐりへの取り付けを行うようにしている。
【0025】
尚、本形態例における衿の展開形状は、
図3及び
図4に展開状態で示している通り、衿腰2側の下辺よりも反衿腰2側の上辺の方が幅狭となる偏平台形状を成すように形成されており、後述する衿4を立てた状態で衿先同士を閉じ合わせた際に、首回りを上向きに窄まる形状として、首回りにできる隙間が極力少なくなるように配慮されている。
【0026】
而して、このように構成されたシャツ1では、冬季の外出時などに衿4を立てた状態にして衿先同士をボタン14とボタンホール15を介し閉じ合わせることによりハイネック仕様のシャツ1(
図9参照)にスタイルを変えて首回りの保温性を高めることが可能となり、暖房の効いた室内に戻った際には、衿先同士のボタン14とボタンホール15を介した係合を解いて衿4を折り返して下げ、首元の一番目のボタン10も開けて開衿仕様のシャツ1(
図1参照)にスタイルを変えることで涼感を得ることが可能となるので、寒暖差に対し臨機応変にスタイルを変えて対応することが可能となる。
【0027】
従って、上記形態例によれば、寒暖差に対し臨機応変にスタイルを変えて首回りの保温性を高めたり涼感を得られるようにしたりすることができるので、シャツ1の下にタートルネックセーターを重ね着した場合のような脱ぎ着に要する煩雑さや、マフラーを首回りの防寒具として携帯した場合における不要時の煩わしさなどを解消することができ、冬季の外出を軽快な装いで楽しむことができる。
【0028】
また、特に本形態例においては、衿腰2にのみ芯材16を挟み込ませて保形性を持たせるようにしているので、ハイネック仕様とした際に、首回りに適度な皺感を残してカジュアルな装いを醸し出させることができると共に、開衿仕様とした際には、衿腰2に芯材16による保形性を持たせたことで衿羽根3をしっかりと綺麗に折り返させることができる。
【0029】
更に、本形態例のように、衿4の裏地と表地を中表にして周囲を地縫いすることで縫着すれば、表に返したときに周囲に縫い目が現れなくなるので、ハイネック仕様とした際に、首回りを美観良くすっきり見せることができ、また、衿4の展開形状を衿腰2側の下辺よりも反衿腰2側の上辺の方が幅狭となる偏平台形状に形成しているので、ハイネック仕様とした際に、首回りを上向きに窄まる形状として、首回りにできる隙間を極力少なくし、より一層保温性を高めることもできる。
【0030】
尚、本発明のシャツは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、係合部をフックとループの組み合わせや面ファスナー、スナップボタン等で構成することも可能であること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
1 シャツ
2 衿腰
3 衿羽根
4 衿
12 表衿
13 裏衿
14 ボタン(係合部)
15 ボタンホール(係合部)
16 芯材