(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165274
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ロータリ圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 29/12 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
F04C29/12 J
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081325
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 大輝
(72)【発明者】
【氏名】古川 基信
(72)【発明者】
【氏名】内海 秀斗
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇洋
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA04
3H129AA13
3H129AA21
3H129AA32
3H129AB03
3H129BB31
3H129BB33
3H129BB42
3H129CC03
3H129CC06
3H129CC23
(57)【要約】
【課題】製造を容易にしつつ、デッドボリュームを低減する。
【解決手段】実施形態にかかるロータリ圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動するモータと、圧縮部とモータとを内部に収容する圧縮機本体容器と、を備える。圧縮部は、内部にシリンダ室を形成するシリンダと、シリンダの内周側で公転するピストンと、シリンダの端部を閉塞する端板と、を有する。端板には、シリンダ室に連通し、冷媒を導通するインジェクション管が挿通可能なインジェクション孔が形成される。インジェクション孔には、インジェクション管の外周を保持する保持管を介してインジェクション管が固定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動するモータと、前記圧縮部と前記モータとを内部に収容する圧縮機本体容器と、を備え、
前記圧縮部は、内部にシリンダ室を形成するシリンダと、前記シリンダの内周側で公転するピストンと、前記シリンダの端部を閉塞する端板と、を有するロータリ圧縮機であって、
前記端板には、前記シリンダ室に連通し、前記冷媒を導通するインジェクション管が挿通可能なインジェクション孔が形成され、
前記インジェクション孔には、前記インジェクション管の外周を保持する保持管を介して前記インジェクション管が固定される、
ことを特徴とするロータリ圧縮機。
【請求項2】
前記保持管は、当該保持管の内径が、前記インジェクション管の外径以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項3】
前記端板には、前記インジェクション孔と前記シリンダ室とを連通するように、前記端板の厚み方向に沿って連通孔が形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項4】
前記インジェクション孔は、前記保持管が挿通可能な大径部と、前記インジェクション管が挿通可能な第1の小径部とを備え、
前記第1の小径部は、前記大径部から連続して形成されるとともに、前記大径部よりも前記連通孔側に位置している、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項5】
前記インジェクション孔に前記インジェクション管が固定された際に、前記保持管の先端部が前記インジェクション孔の大径部に位置し、前記インジェクション管の先端部が前記インジェクション孔の第1の小径部に位置する、
ことを特徴とする請求項4に記載のロータリ圧縮機。
【請求項6】
前記インジェクション孔の前記第1の小径部の内周面と、前記インジェクション管の前記先端部の外周面と、の間に形成される隙間の寸法が、50μm以下である、
ことを特徴とする請求項5に記載のロータリ圧縮機。
【請求項7】
前記インジェクション孔は、前記第1の小径部に連続して前記連通孔側に形成された、前記インジェクション管の先端部の外径よりも細い第2の小径部を備え、
前記インジェクション孔に前記インジェクション管が固定された際に、前記第1の小径部と前記第2の小径部との境界に形成された段差によって、前記インジェクション管の外周面と前記第1の小径部の内周面との間の隙間が塞がれている、
ことを特徴とする請求項5に記載のロータリ圧縮機。
【請求項8】
前記インジェクション孔は、当該インジェクション孔に前記インジェクション管が固定された際に、前記インジェクション管の出口から連続するように形成された前記第2の小径部を有し、
前記インジェクション管の内径は前記第2の小径部の内径よりも小さい、
ことを特徴とする請求項7に記載のロータリ圧縮機。
【請求項9】
前記インジェクション孔には、前記保持管を位置決めするための孔側テーパ部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項10】
前記保持管には、前記孔側テーパ部に対応する管側テーパ部が設けられている、
ことを特徴とする請求項9に記載のロータリ圧縮機。
【請求項11】
前記孔側テーパ部は、前記インジェクション孔の大径部に設けられ、前記孔側テーパ部において前記保持管が固定されることで、当該保持管を介して前記インジェクション管が前記インジェクション孔に対して固定される、
ことを特徴とする請求項9に記載のロータリ圧縮機。
【請求項12】
前記インジェクション管は、前記保持管に保持される部分の全体に亘って当該保持管よりも細く形成される、
ことを特徴とする請求項2に記載のロータリ圧縮機。
【請求項13】
前記インジェクション孔は、当該インジェクション孔の開口が前記端板の径方向の外周面に形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項14】
前記インジェクション管は、内径が4mm以下に形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項15】
前記インジェクション管は、キャピラリーチューブである、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項16】
前記圧縮部は、2つの前記シリンダを備え、
前記端板は、2つの前記シリンダの間に配置される中間仕切板である、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項17】
前記中間仕切板は、軸方向で前記インジェクション孔を境に2つに分割され、
分割された一方の中間仕切板に前記インジェクション管を配置した後に、分割された他方の中間仕切板が接合される、
ことを特徴とする請求項16に記載のロータリ圧縮機。
【請求項18】
前記インジェクション管の先端部には、前記インジェクション孔の内周面と、前記インジェクション管の外周面との間を塞ぐ封止部材が配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ロータリ圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリ圧縮機としては、圧縮機本体容器の内部に、冷媒を圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動するモータとが配置されたロータリ圧縮機が知られている。このロータリ圧縮機は、例えば、冷凍サイクル装置に搭載される。
【0003】
冷凍サイクル装置に搭載される圧縮機においては、凝縮された液冷媒の一部を分岐させ、この分岐させた液冷媒を圧縮機のシリンダ室に注入(インジェクション)する、液インジェクション方式の従来技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-36442号公報
【特許文献2】特開2016-23582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液インジェクション方式の圧縮機では、凝縮器出口から分岐させたインジェクション用の通路の途中に開閉弁を設けることで、インジェクションを行う(インジェクション運転を行う)か否かを切り換えることが可能となる。しかしながら、この圧縮機では、インジェクション運転を行わないとき、インジョクション用の通路に設けられた開閉弁からシリンダ室までの空間が、デッドボリューム(死容積)となってしまう。このため、圧縮した冷媒が再度膨張してしまうことで圧縮効率を低下させるという問題がある。
【0006】
特許文献1に記載されるロータリ圧縮機では、仕切板の径方向に伸びるインジェクション通路にスライド弁を設け、シリンダ室に連通するインジェクションポートを開くときにはスライド弁がインジェクション通路内に位置しないようにする。一方でインジェクションポートを閉じるときには、スライド弁をインジェクションポートの位置に配置することでインジェクション通路に冷媒が逆流しないようにして、インジェクション運転を行わない場合におけるデッドボリュームを減少させている。このようなスライド構造は、バネやスライド弁の構造が複雑になり、製造が難しいという問題がある。また、スライド構造の故障等でインジェクションが正常に行われなくなることにより圧縮機の信頼性が低下するおそれもある。
【0007】
また、特許文献2に記載されるロータリ圧縮機において、インジェクション管自体を細く形成することが考えられる。しかしながら、単にインジェクション管を細くした場合、インジェクション管をインジェクション孔(横孔)に対して固定することが難しく、この場合も製造が難しいという問題がある。
【0008】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、製造を容易にしつつ、デッドボリュームを減少させることができるインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の実施形態にかかるロータリ圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動するモータと、圧縮部とモータとを内部に収容する圧縮機本体容器と、を備える。圧縮部は、内部にシリンダ室を形成するシリンダと、シリンダの内周側で公転するピストンと、シリンダの端部を閉塞する端板と、を有する。端板には、シリンダ室に連通し、冷媒を導通するインジェクション管が挿通可能なインジェクション孔が形成される。インジェクション孔には、インジェクション管の外周を保持する保持管を介してインジェクション管が固定される。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、製造を容易にしつつ、デッドボリュームを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるロータリ圧縮機の一例を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、第1の圧縮部および第2の圧縮部の上からみた横断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかるロータリ圧縮機の圧縮部を示す部分縦断面図である。
【
図4】
図4は、中間仕切板のインジェクション孔を示す部分縦断面図である。
【
図5】
図5は、中間仕切板のインジェクション孔を示す部分縦断面図である。
【
図6】
図6は、中間仕切板のインジェクション孔を示す部分縦断面図である。
【
図7】
図7は、中間仕切板のインジェクション孔を示す部分縦断面図である。
【
図8】
図8は、ロータリ圧縮機のインジェクション機構におけるデッドボリュームの従来例との比較を説明する説明図である。
【
図9】
図9は、従来例のロータリ圧縮機における環状ピストンの回転サイクルを示す径方向断面図および回転軸の直交する方向の断面図である。
【
図10】
図10は、従来例のロータリ圧縮機におけるインジェクション運転を行わない場合のシリンダ内の圧力変化を示すグラフである。
【
図11】
図11は、実施形態にかかるロータリ圧縮機における環状ピストンの回転サイクルを示す径方向断面図および回転軸の直交する方向の断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態にかかるロータリ圧縮機におけるインジェクション運転を行わない場合のシリンダ内の圧力変化を示すグラフである。
【
図13】
図13は、変形例1にかかるロータリ圧縮機の圧縮部を示す部分縦断面図である。
【
図14】
図14は、変形例2にかかるロータリ圧縮機の圧縮部を示す部分縦断面図である。
【
図16】
図16は、接続弁からのデッドボリュームを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態にかかるロータリ圧縮機を説明する。実施形態において同一の機能を有する構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の実施形態で説明するロータリ圧縮機は、一例を示すに過ぎず、実施形態を限定するものではない。また、以下の各実施形態は、矛盾しない範囲内で適宜組みあわせてもよい。
【0013】
図1は、実施形態にかかるロータリ圧縮機の一例を示す縦断面図である。
図2は、第1の圧縮部および第2の圧縮部の上からみた横断面図である。
【0014】
図1に示すように、ロータリ圧縮機1は、密閉された縦置き円筒状の圧縮機筐体10の下部に配置された圧縮部12と、圧縮機筐体10の上部に配置され、回転軸15を介して圧縮部12を駆動するモータ11と、を備えている。
【0015】
モータ11のステータ111は、円筒状に形成され、圧縮機筐体10の内周面に焼きばめされて固定されている。モータ11のロータ112は、円筒状のステータ111の内部に配置され、モータ11と圧縮部12とを機械的に接続する回転軸15に焼きばめされて固定されている。
【0016】
圧縮部12は、第1の圧縮部12Sと、第1の圧縮部12Sと並列に配置され第1の圧縮部12Sの上側に積層された第2の圧縮部12Tと、を備えている。
図2に示すように、第1の圧縮部12Sは、第1側方張出部122Sに、放射状に第1吸入孔135S、第1ベーン溝128Sが設けられた環状の第1シリンダ121Sを備えている。同様に、第2の圧縮部12Tは、第2側方張出部122Tに、放射状に第2吸入孔135T、第2ベーン溝128Tが設けられた環状の第2シリンダ121Tを備えている。
【0017】
図2に示すように、第1シリンダ121Sおよび第2シリンダ121Tには、モータ11の回転軸15と同心に、円形の第1シリンダ内壁123Sおよび第2シリンダ内壁123Tが形成されている。第1シリンダ内壁123Sおよび第2シリンダ内壁123T内には、シリンダ内径よりも小さい外径の第1環状ピストン125Sおよび第2環状ピストン125Tが夫々配置されている。第1シリンダ内壁123Sと第1環状ピストン125Sとの間には、冷媒ガスを吸入し圧縮して吐出する第1シリンダ室130Sが形成される。同様に、第2シリンダ内壁123Tと第2環状ピストン125Tとの間には、冷媒ガスを吸入し圧縮して吐出する第2シリンダ室130Tが形成される。
【0018】
第1シリンダ121Sには、第1シリンダ内壁123Sから径方向に、シリンダ高さ全域に亘る第1ベーン溝128Sが形成されている。同様に、第2シリンダ121Tには、第2シリンダ内壁123Tから径方向に、シリンダ高さ全域に亘る第2ベーン溝128Tが形成されている。第1ベーン溝128Sおよび第2ベーン溝128T内には、夫々平板状の第1ベーン127Sおよび第2ベーン127Tが、摺動自在に嵌合されている。
【0019】
図2に示すように、第1ベーン溝128Sの奥部には、第1シリンダ121Sの外周部から第1ベーン溝128Sに連通するように第1スプリング穴124Sが形成されている。同様に、第2ベーン溝128Tの奥部には、第2シリンダ121Tの外周部から第2ベーン溝128Tに連通するように第2スプリング穴124Tが形成されている。第1スプリング穴124Sには、第1ベーン127Sの背面を押圧する第1ベーンスプリング260S(
図3参照)が挿入されている。同様に、第2スプリング穴124Tには、第2ベーン127Tの背面を押圧する第2ベーンスプリング260T(
図3参照)が挿入されている。
【0020】
ロータリ圧縮機1の起動時は、第1ベーンスプリング260Sの反発力により、第1ベーン127Sが、第1ベーン溝128S内から第1シリンダ室130S内に突出する。同様に、ロータリ圧縮機1の起動時は、第2ベーンスプリング260Tの反発力により、第2ベーン127Tが、第2ベーン溝128T内から第2シリンダ室130T内に突出する。そして、第1ベーン127Sの先端が、第1環状ピストン125Sの外周面に当接する。同様に、第2ベーン127Tの先端が、第2環状ピストン125Tの外周面に当接する。このように当接した第1ベーン127Sにより、第1シリンダ室130Sが、第1吸入室131Sと、第1圧縮室133Sとに区画される。また、第2ベーン127Tにより、第2シリンダ室130Tが、第2吸入室131Tと、第2圧縮室133Tとに区画される。
【0021】
また、第1及び第2シリンダ121S、121Tには、第1及び第2ベーン溝128S、128Tの奥部と圧縮機筐体10内とを、
図1に示す開口部Rで連通している。この開口部Rより圧縮機筐体10内に圧縮された冷媒ガスを導入し、第1及び第2ベーン127S、127Tに、冷媒ガスの圧力により背圧をかける第1及び第2圧力導入路129S、129Tが形成されている。
【0022】
第1及び第2シリンダ121S、121Tには、第1及び第2吸入室131S、131Tに外部から冷媒を吸入するために、第1及び第2吸入室131S、131Tと外部とを連通させる第1及び第2吸入孔135S、135Tが設けられている。
【0023】
また、
図1に示すように、第1シリンダ121Sと第2シリンダ121Tの間には、中間仕切板140が配置され、第1シリンダ121Sの第1シリンダ室130S(
図2参照)と第2シリンダ121Tの第2シリンダ室130T(
図2参照)とを区画、閉塞している。中間仕切板140は、第1シリンダ121Sの上端部と第2シリンダ121Tの下端部を閉塞している。すなわち、中間仕切板140は、シリンダの端部を閉塞する端板の一例である。
【0024】
第1シリンダ121Sの下端部には、下端板160Sが配置され、第1シリンダ121Sの第1シリンダ室130Sを閉塞している。また、第2シリンダ121Tの上端部には、上端板160Tが配置され、第2シリンダ121Tの第2シリンダ室130Tを閉塞している。下端板160Sは、第1シリンダ121Sの下端部を閉塞し、上端板160Tは、第2シリンダ121Tの上端部を閉塞している。
【0025】
下端板160Sには、副軸受部161Sが形成され、副軸受部161Sに、回転軸15の副軸部151が回転自在に支持されている。上端板160Tには、主軸受部161Tが形成され、主軸受部161Tに、回転軸15の主軸部153が回転自在に支持されている。
【0026】
回転軸15は、互いに180°位相をずらして偏心させた第1偏心部152Sと第2偏心部152Tとを備える。第1偏心部152Sは、第1の圧縮部12Sの第1環状ピストン125Sに回転自在に嵌合している。第2偏心部152Tは、第2の圧縮部12Tの第2環状ピストン125Tに回転自在に嵌合している。
【0027】
回転軸15が回転すると、第1及び第2環状ピストン125S、125Tが、第1及び第2シリンダ内壁123S、123Tに沿って第1及び第2シリンダ121S、121T内を
図2の時計回りに公転する。この公転に追随して第1及び第2ベーン127S、127Tが往復運動する。この第1及び第2環状ピストン125S、125T及び第1及び第2ベーン127S、127Tの運動により、第1及び第2吸入室131S、131T及び第1及び第2圧縮室133S、133Tの容積が連続的に変化する。また、圧縮部12では、連続的に冷媒ガスを吸入し圧縮して吐出する。
【0028】
図1に示すように、下端板160Sの下側には、下マフラーカバー170Sが配置され、下端板160Sとの間に下マフラー室180Sを形成している。そして、第1の圧縮部12Sは、下マフラー室180Sに開口している。すなわち、下端板160Sの第1ベーン127S近傍には、第1シリンダ121Sの第1圧縮室133Sと下マフラー室180Sとを連通する第1吐出孔190S(
図2参照)が設けられる。第1吐出孔190Sには、圧縮された冷媒ガスの逆流を防止するリード弁型の第1吐出弁200Sが配置されている。
【0029】
下マフラー室180Sは、環状に形成された1つの室であり、第1の圧縮部12Sの吐出側を、下端板160S、第1シリンダ121S、中間仕切板140、第2シリンダ121T及び上端板160Tを貫通する冷媒通路136(
図2参照)を通して上マフラー室180T内に連通させる連通路の一部である。下マフラー室180Sは、吐出冷媒ガスの圧力脈動を低減させる。また、第1吐出弁200Sに重ねて、第1吐出弁200Sの撓み開弁量を制限するための第1吐出弁押え201Sが、第1吐出弁200Sとともにリベットにより固定されている。第1吐出孔190S、第1吐出弁200S及び第1吐出弁押え201Sは、下端板160Sの第1吐出弁部を構成している。
【0030】
図1に示すように、上端板160Tの上側には、上マフラーカバー170Tが配置され、上端板160Tとの間に上マフラー室180Tを形成している。上端板160Tの第2ベーン127T近傍には、第2シリンダ121Tの第2圧縮室133Tと上マフラー室180Tとを連通する第2吐出孔190T(
図2参照)が設けられている。第2吐出孔190Tには、圧縮された冷媒ガスの逆流を防止するリード弁型の第2吐出弁200Tが配置されている。また、第2吐出弁200Tに重ねて、第2吐出弁200Tの撓み開弁量を制限するための第2吐出弁押え201Tが、第2吐出弁200Tとともにリベットにより固定されている。上マフラー室180Tは、吐出冷媒の圧力脈動を低減させる。第2吐出孔190T、第2吐出弁200T及び第2吐出弁押え201Tは、上端板160Tの第2吐出弁部を構成している。
【0031】
第1シリンダ121S、下端板160S、下マフラーカバー170S、第2シリンダ121T、上端板160T、上マフラーカバー170T及び中間仕切板140は、複数の通しボルト175等により一体に締結されている。通しボルト175等により一体に締結された圧縮部12のうち、上端板160Tの外周部が、圧縮機筐体10にスポット溶接により固着され、圧縮部12を圧縮機筐体10に固定している。
【0032】
円筒状の圧縮機筐体10の外周壁には、軸方向に離間して下部から順に、第1貫通孔101および第2貫通孔102が、第1吸入管104および第2吸入管105を通すために設けられている。また、圧縮機筐体10の外側部には、独立した円筒状の密閉容器からなるアキュムレータ25が、アキュムホルダ252及びアキュムバンド253により保持されている。
【0033】
アキュムレータ25の天部中心には、冷媒回路の蒸発器に接続するシステム接続管255が接続されている。アキュムレータ25の底部に設けられた底部貫通孔257には、一端がアキュムレータ25の内部上方まで延設され、他端が、第1吸入管104および第2吸入管105の他端に接続される第1低圧連絡管31Sおよび第2低圧連絡管31Tが固着されている。
【0034】
冷媒回路の低圧冷媒をアキュムレータ25を介して第1の圧縮部12Sに導く第1低圧連絡管31Sは、吸入部としての第1吸入管104を介して第1シリンダ121Sの第1吸入孔135S(
図2参照)に接続されている。また、冷媒回路の低圧冷媒をアキュムレータ25を介して第2の圧縮部12Tに導く第2低圧連絡管31Tは、吸入部としての第2吸入管105を介して第2シリンダ121Tの第2吸入孔135T(
図2参照)に接続されている。すなわち、第1吸入孔135Sおよび第2吸入孔135Tは、冷媒回路の蒸発器に並列に接続されている。
【0035】
圧縮機筐体10の天部には、冷媒回路と接続し高圧冷媒ガスを冷媒回路の凝縮器側に吐出する吐出部としての吐出管107が接続されている。すなわち、第1吐出孔190Sおよび第2吐出孔190Tは、冷媒回路の凝縮器に接続されている。
【0036】
圧縮機筐体10内には、およそ第2シリンダ121Tの高さまで潤滑油が封入されている。また、潤滑油は、回転軸15の下部に挿入される図示しないポンプ羽根により、回転軸15の下端部に取付けられた給油パイプ16から吸上げられ、圧縮部12を循環する。これにより、潤滑油は、摺動部品の潤滑を行なうとともに、圧縮部12の微小隙間のシールをする。
【0037】
図3は、実施形態にかかるロータリ圧縮機1の圧縮部12を示す部分縦断面図である。
図3に示すように、中間仕切板140には、連通孔302Sにより第1シリンダ室130Sに連通するとともに、連通孔302Tにより第2シリンダ室130Tに連通し、冷媒を供給するインジェクション管141が挿通可能なインジェクション孔300が形成されている。このインジェクション孔300には、インジェクション管141の外周を保持する保持管142を介してインジェクション管141が固定されている。
【0038】
ヒートポンプを用いた冷凍サイクル装置は、近年、外気温度の低い寒冷地でも普及が進んでいる。外気温度が低い環境下で蒸発器が使用されている場合、圧縮部12に吸入される冷媒の密度が下がり、十分な暖房能力を得ることが困難になる。このため、凝縮器の出口側や減圧手段通過後の液冷媒の一部を分岐させ、分岐させた液冷媒をインジェクション管141を介して圧縮部12の第1シリンダ室130Sおよび第2シリンダ室130Tに注入させること、すなわち液インジェクション(気体の冷媒を注入するガスインジェクションであってもよい)を行う。
【0039】
この液インジェクションを行うことで、冷媒の循環量を増やして暖房能力を向上させることができる。また、暖房時に外気温度が低い場合には、圧縮比が大きい条件での運転となるため、第1シリンダ室130Sおよび第2シリンダ室130T内の冷媒温度が高くなるが、液インジェクションを行うことで、液冷媒の蒸発潜熱でシリンダ室内を冷却することにより冷媒温度を下げることができる。
【0040】
図4~
図7は、中間仕切板140のインジェクション孔300を示す部分断面図である。具体的には、
図4は、インジェクション管141および保持管142をインジェクション孔300に挿入する前の部分断面図である。
図5は、保持管142をインジェクション孔300に挿入した後の部分断面図である。
図6は、インジェクション管141および保持管142をインジェクション孔300に挿入した後の部分断面図である。
図7は、インジェクション管先端141aを封止部材143で封止する構成を例示する部分断面図である。
【0041】
図4に示すように、インジェクション孔300は、中間仕切板140の外側の開口部301から奥の連通孔302S、302Tに向かって内径が徐々に小さくなる構造となっている。具体的には、インジェクション孔300は、開口部301から大径部303、第1の段差部(第1のテーパ部)304、第1の小径部305、第2の段差部(第2のテーパ部)306、第2の小径部307の順に内径が小さくなる。そして、第2の小径部307には、第1シリンダ室130Sと連通する連通孔302Sおよび第2シリンダ室130Tと連通する連通孔302Tが設けられている。
【0042】
大径部303は、開口部301から奥の第1の段差部(第1のテーパ部)304に向かって連続して形成されている。
図5に示すように、大径部303は、開口部301からの内径が保持管142の外径よりも若干大きく、保持管142を挿通可能な構成となっている。
【0043】
図4に示すように、大径部303は、例えば、奥に向かって内径が徐々に小さくなる緩やかなテーパ形状である。なお、大径部303は、開口部301側から奥の第1の段差部(第1のテーパ部)304まで内径が変化しない円筒形状であってもよい。また、大径部303は、奥に向かって内径が徐々に小さくなり、例えば、第1のテーパ部304の位置で第1の小径部305と同程度の内径となるような形状、すなわち、大径部303の全体がテーパ形状となることで第1の段差部を備えない形状となっていてもよい。
【0044】
大径部303から第1の小径部305に亘る第1の段差部(第1のテーパ部)304は、奥に向かって連続的に小径となるようにテーパ形状になっている。すなわち、第1の小径部305は、大径部303から第1の段差部(第1のテーパ部)304を介して連続的に形成されており、大径部303よりも小径であるとともに、大径部303より連通孔302S、302T側に位置している。なお、大径部303と第1の小径部305の間に位置する第1の段差部304は、テーパ形状に限られず、例えばインジェクション管141が伸びる方向に対して垂直な段差によって形成されてもよい。
【0045】
第1の小径部305は、手前の第1の段差部(第1のテーパ部)304から奥の第2の段差部(第2のテーパ部)306に向かって連続して形成されている。例えば、第1の小径部305は、第1の段差部(第1のテーパ部)304側から奥の第2の段差部(第2のテーパ部)306まで内径が変化しない円筒形状である。第1の小径部305の内径は、インジェクション管141の外径よりも若干大きく、インジェクション管141を挿通可能な構成となっている。
【0046】
第1の小径部305から第2の小径部307に亘る第2の段差部(第2のテーパ部)306は、奥に向かって徐々に小径となるようにテーパ形状になっている。すなわち、第2の小径部307は、第1の小径部305より小径であるとともに、第1の小径部305から第2の段差部(第2のテーパ部)306を介して連続的に形成されている。なお、第1の小径部305と第2の小径部307の間に位置する第2の段差部306は、テーパ形状に限られず、例えばインジェクション管141が伸びる方向に対して垂直な段差によって形成されてもよい。
【0047】
図6に示すように、保持管142は、インジェクション孔300の開口部301より差し込まれ、例えば、インジェクション孔300に形成された孔側テーパ部で、固定される。保持管142が固定される孔側テーパ部は、大径部303の内周面自体が緩やかなテーパ形状に形成されることで形成されてもよい。この場合は、
図5~6に示すように、大径部303に孔側テーパ部303aが形成され、保持管先端142aが、緩やかなテーパ形状である大径部303の途中で固定される。あるいは、保持管142が固定される孔側テーパ部は、第1の段差部(第1のテーパ部)304であってもよい。この場合は、図示しないが、保持管先端142aが、第1の段差部(第1のテーパ部)304に突き当たったところで、固定される。このように、保持管142は、インジェクション孔300に固定された際に、保持管先端142aが大径部303に位置するとともに、孔側テーパ部(303a、304)によって、差し込まれた際の保持管先端142aの位置決めが行われる。この保持管142は、内径R1がインジェクション管141の外径R2以上であり、例えば銅管などを適用できる。
【0048】
インジェクション管141は、保持管142に差し込むことで保持管142の内壁面で保持される部分の全体に亘って保持管142より細く(R1>R2)形成されている。このため、インジェクション管141は、インジェクション孔300に固定された保持管142を介して第1の小径部305に差し込まれ、例えば、インジェクション管先端141aが第2の段差部(第2のテーパ部)306に突き当たったところ固定される。
【0049】
このように、インジェクション管141は、保持管142を介してインジェクション孔300に固定された際に、インジェクション管先端141aが第1の小径部305に位置するとともに、第2の段差部(第2のテーパ部)306によって、差し込まれた際のインジェクション管先端141aの位置決めが行われる。このような位置決めにより、インジェクション管141から冷媒が吐出する出口部分(インジェクション管先端141a)は、第2の小径部307の入口部分に位置することとなる。すなわち、第2の小径部307は、インジェクション管141がインジェクション孔300に固定された際に、インジェクション管141の出口から連続するような構成となる。
【0050】
また、インジェクション管141の内径R3は、第2の小径部307の内径R4よりも小さい(R4>R3)ものとする。これにより、ロータリ圧縮機1では、インジェクション管141の出口から、滞ることなく、第2の小径部307内に冷媒を吐出させることができる。
【0051】
また、
図7に示すように、インジェクション管先端141aには、インジェクション孔300における第1の小径部305の内周面と、インジェクション管141の外周面との間を塞ぐように、封止部材143を設けてもよい。この封止部材143は、例えば、弾性のあるゴム材のO-リング、弾性のないテフロン(登録商標)製のガスケットなどを適用できる。このように、封止部材143によりインジェクション孔300における第1の小径部305の内周面と、インジェクション管141の外周面との間の隙間を塞ぐことで、中間仕切板140より第2の小径部307側に吐出した冷媒が外に漏れ出ることを抑止できる。
【0052】
ここで、封止部材143の有無に関わらず、インジェクション孔300の第1の小径部305の内周面と、インジェクション管先端141aの外周面と、の間に形成される隙間の寸法は、50μm以下であることが好ましい。このように、ロータリ圧縮機1は、第1の小径部305の内周面と、インジェクション管先端141aの外周面との隙間の寸法を50μm以下とすることで、インジェクション管先端141aより注入される冷媒が上記の隙間から漏れ出ることを抑止できる。
【0053】
このインジェクション管141としては、例えば、外径R2が4mm以下であり、内径R3が3mm程度の銅管などを適用できる。これにより、実施形態のロータリ圧縮機1では、インジェクション管141がその上流側に接続される配管よりも内径が小さいキャピラリーチューブとして機能し、インジェクション管141の内部を通過する冷媒の圧力を降下させることができる。
【0054】
図8は、ロータリ圧縮機1のインジェクション機構におけるデッドボリュームの従来例との比較を説明する説明図である。具体的には、
図8(a)が実施形態のロータリ圧縮機1のインジェクション機構におけるデッドボリュームDV1を例示しており、
図8(b)従来のロータリ圧縮機の中間仕切板500におけるインジェクション機構のデッドボリュームDV2を例示している。
【0055】
図8(a)に示すように、ロータリ圧縮機1の中間仕切板140には、連通孔302S、302Tを介して第1シリンダ室130Sおよび第2シリンダ室130Tに連通し、冷媒を供給するインジェクション管141が挿通可能なインジェクション孔300が形成されている。そして、インジェクション孔300には、インジェクション管141の外周を保持する保持管142を介してインジェクション管141が固定される。
【0056】
これにより、ロータリ圧縮機1では、インジェクション運転を行わない場合のデッドボリュームとなる容積が少なくするように細く(例えば外径R2を4mm以下に)形成したインジェクション管141を、保持管142を介して容易にインジェクション孔300内の連通孔302S、302T近傍に設置することができる。このため、
図8(a)に示す実施形態のロータリ圧縮機1のデッドボリュームDV1と、
図8(b)に示すインジェクション管141がインジェクション孔300の内部まで差し込まれていない従来例のロータリ圧縮機1のデッドボリュームDV2とを比較しても明らかなように、実施形態のロータリ圧縮機1では、インジェクション運転を行わない場合におけるデッドボリュームを減少させることができる。
【0057】
図9(a)~
図9(c)は、従来例のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機における、環状ピストン125の回転サイクルを示す径方向断面図および回転軸15に直交する方向の断面図である。
図9に示すように、中間仕切板500には、インジェクション孔300に連通する連通孔302Sおよび302Tが形成されており、インジェクション運転を行う場合には、インジェクション管141から吐出された液冷媒が、連通孔302Sを介して第1シリンダ室130Sに導入されるとともに、連通孔302Tを介して第2シリンダ室130Tに導入される。
図9では、インジェクション運転を行わない場合での第1シリンダ室130Sの内部での第1環状ピストン125Sの回転サイクルを示している。なお、
図9(a)は、第1環状ピストン125Sの回転角度が約40度のタイミング(A点)での環状ピストン125Sの状態を例示している。
図9(b)は、第1環状ピストン125Sの回転角度が約130度のタイミング(B1点)での環状ピストン125Sの状態を例示している。
図9(c)は、第1環状ピストン125Sの回転角度が約200度のタイミング(C点)での環状ピストン125Sの状態を例示している。
【0058】
図10は、
図8(b)に示す従来例のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機における、インジェクション運転を行わない場合(言い換えれば、インジェクション管に繋がる開閉弁を閉じた場合)での、第1シリンダ室130Sの内部の圧力の変化(グラフG11)を、インジェクション機構自体を備えないと仮定したロータリ圧縮機における第1シリンダ室の内部の圧力の変化(グラフG12)と対比して示すグラフである。横軸は、
図9において、ベーンの位置を0度とし、第1環状ピストン125Sが第1シリンダ121Sの内周側を時計回りに公転すると仮定したときの、第1環状ピストン125Sの回転角度(0~360度)を示す。縦軸は、第1シリンダ室130Sの内部の圧力Pd[MPaG]を示す。グラフG11は、
図8(b)に示す従来例のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機1における、第1シリンダ室130Sの内部の圧力の変化を示す。グラフG12は、従来例のロータリ圧縮機がインジェクション機構自体を備えないと仮定したときにおける、第1シリンダ室の内部の圧力の変化を示す。グラフG13は、インジェクション管141の内部の圧力の変化を示す。
【0059】
図9(a)~
図9(c)に示すように、従来例のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機は、第1環状ピストン125Sの回転角度が0度のタイミング(
図9(a)と
図9(c)の間)では、連通孔302Sが第1環状ピストン125Sによって塞がれており、デッドボリュームDV2から第1シリンダ室130Sへの気体冷媒の流入は起こらない。
【0060】
次に、従来例のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機は、
図9(a)に示すように、第1環状ピストン125Sの回転角度が約40度のタイミング(A点)で、第1環状ピストン125Sに塞がれていた連通孔302Sが開放され、
図8(b)で示したデッドボリュームDV2と、第1シリンダ室130Sとが連通する。このとき、デッドボリュームDV2に閉じ込められていた高圧の気体冷媒が連通孔302Sを介して第1シリンダ室130Sへ流入する。これにより、
図10に示すように、A点以降では、従来例のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機における第1シリンダ室130Sの内部の圧力(グラフG11)が、インジェクション機構を備えないと仮定した比較例のロータリ圧縮機における第1シリンダ室の内部の圧力(グラフG12)に比べて、上昇してしまう。その結果、従来例のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機は、第1シリンダ室130Sの内部の圧力が高いことにより、第1環状ピストン125Sを回転させるのに必要な動力が、比較例に比べて増加してしまい、ロータリ圧縮機1の動作のエネルギー効率が低下してしまう。
【0061】
図9(b)に示すように、従来例のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機は、第1環状ピストン125Sの回転角度が約130度のタイミング(B1点)で、今度は逆に、第1シリンダ室130Sの内部で圧縮された気体冷媒の一部が、デッドボリュームDV2側へと逆流し始めるようになる。なお、ある回の回転サイクルで第1シリンダ室130SからデッドボリュームDV2へ逆流した気体冷媒は、その次の回の回転サイクルでデッドボリュームDV2から第1シリンダ室130Sの内部へと流入する気体冷媒となる。
【0062】
図9(c)に示すように、従来例のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機は、第1環状ピストン125Sの回転角度が約200度のタイミング(C点)では、第1シリンダ室130Sとインジェクション管141とを連通する連通孔302Sが、再び第1環状ピストン125Sによって塞がれる。この時点で、デッドボリュームDV2と第1シリンダ室130Sとの間での、気体冷媒の相互の流入が終了する。
【0063】
以上のように、
図8(b)に示す従来例のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機では、
図9および
図10に示すように、第1環状ピストン125Sの回転角度が約40度~130度の間、デッドボリュームDV2から第1シリンダ室130Sへの気体冷媒の流入が起き、第1環状ピストン125Sの回転角度が約130度~200度の間、今度は第1シリンダ室130SからデッドボリュームDV2への気体冷媒の流出が起きている。その結果、従来例のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機は、第1環状ピストン125Sを1回転させるのに必要な動力が、インジェクション機構を備えないと仮定した比較例に比べて、
図10に示す面積S1の分だけ増加する。その結果、従来例のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機は、圧縮機としての動作のエネルギー効率が低下してしまう。
【0064】
次に、実施形態のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機1の場合について説明する。
図11(a)~
図11(c)は、実施形態のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機1における、環状ピストン125の回転サイクルを示す径方向断面図および回転軸15に直交する方向の断面図である。
図11に示すように、中間仕切板140には、インジェクション孔300に連通する連通孔302Sおよび302Tが形成されており、インジェクション運転を行う場合には、インジェクション管141から吐出された液冷媒が、連通孔302Sを介して第1シリンダ室130Sに導入されるとともに、連通孔302Tを介して第2シリンダ室130Tに導入される。
図11では、インジェクション運転を行わない場合での第1シリンダ室130Sの内部での第1環状ピストン125Sの回転サイクルを示している。なお、
図11(a)は、第1環状ピストン125Sの回転角度が約40度のタイミング(A点)での環状ピストン125Sの状態を例示している。
図11(b)は、第1環状ピストン125Sの回転角度が約70度のタイミング(B2点)での環状ピストン125Sの状態を例示している。
図11(c)は、第1環状ピストン125Sの回転角度が約200度のタイミング(C点)での環状ピストン125Sの状態を例示している。
【0065】
図12は、
図8(a)に示す実施形態のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機1における、インジェクション運転を行わない場合(言い換えれば、インジェクション管に繋がる開閉弁を閉じた場合)での、第1シリンダ室130Sの内部の圧力の変化(グラフG14)を、インジェクション機構自体を備えないと仮定したロータリ圧縮機における第1シリンダ室の内部の圧力の変化(グラフG15)と対比して示すグラフである。横軸は、
図11において、ベーンの位置を0度とし、第1環状ピストン125Sが第1シリンダ121Sの内周側を時計回りに公転すると仮定したときの、第1環状ピストン125Sの回転角度(0~360度)を示す。縦軸は、第1シリンダ室130Sの内部の圧力Pd[MPaG]を示す。グラフG14は、
図8(a)に示す実施形態のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機1における、第1シリンダ室130Sの内部の圧力の変化を示す。グラフG15は、実施形態のロータリ圧縮機がインジェクション機構自体を備えないと仮定したときにおける、第1シリンダ室の内部の圧力の変化を示す。グラフG16は、インジェクション管141の内部の圧力の変化を示す。
【0066】
図11(a)~(c)示すように、実施形態のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機1は、第1環状ピストン125Sの回転角度が0度のタイミング(
図11(a)~
図11(c)の間)では、連通孔302Sが第1環状ピストン125Sによって塞がれており、デッドボリュームDV1から第1シリンダ室130Sへの気体冷媒の流入は起こらない。
【0067】
次に、実施形態のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機1は、
図11(a)に示すように、第1環状ピストン125Sの回転角度が約40度のタイミング(A点)で、第1環状ピストン125Sに塞がれていた連通孔302Sが開放され、
図8(a)で示したデッドボリュームDV1と、第1シリンダ室130Sとが連通する。このとき、デッドボリュームDV1に閉じ込められていた高圧の気体冷媒が連通孔302Sを介して第1シリンダ室130Sへ流入する。しかしながら、
図8(a)および
図12に示すように、実施形態のインジェクション機構はデッドボリュームDV1の体積が小さいので、デッドボリュームDV1と第1シリンダ室130Sとが連通するA点以降でも、実施形態のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機1における第1シリンダ室130Sの内部の圧力(グラフG14)は、実施形態のロータリ圧縮機1がインジェクション機構を備えないと仮定した場合における第1シリンダ室の内部の圧力(グラフG15)に比べても、殆ど増大しない。そのため、実施形態のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機1は、第1シリンダ室130Sの内部の圧力が増大するのを抑制できる。その結果、実施形態のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機1は、第1環状ピストン125Sを回転させるのに必要な動力が増加するのを抑制でき、ロータリ圧縮機1の動作のエネルギー効率が低下するのを抑制できる。
【0068】
図11(b)に示すように、実施形態のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機1は、第1環状ピストン125Sの回転角度が約70度のタイミング(B2点)で、第1シリンダ室130Sの内部で圧縮された気体冷媒の一部が、デッドボリュームDV1側へと逆流し始める。しかし、実施形態のインジェクション機構はデッドボリュームDV1の体積が小さいので、第1シリンダ室130SからデッドボリュームDV1への逆流の影響が小さい。そのため、
図12に示すように、B2点以降でも、実施形態のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機1における第1シリンダ室130Sの内部の圧力(グラフG14)は、実施形態のロータリ圧縮機1がインジェクション機構を備えないと仮定した場合における第1シリンダ室の内部の圧力(グラフG15)に比べて、殆ど増大しない。
【0069】
図11(c)に示すように、実施形態のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機1は、第1環状ピストン125Sの回転角度が約200度のタイミング(C点)では、第1シリンダ室130Sとインジェクション管141とを連通する連通孔302Sが、再び第1環状ピストン125Sによって塞がれる。この時点で、デッドボリュームDV1と第1シリンダ室130Sとの間での、気体冷媒の相互の流入が終了する。
【0070】
以上のように、
図8(a)に示す実施形態のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機1では、
図11および
図12に示すように、第1環状ピストン125Sの回転角度が約40度~70度の間、デッドボリュームDV1から第1シリンダ室130Sへの気体冷媒の流入が起き、第1環状ピストン125Sの回転角度が約70度~200度の間、今度は第1シリンダ室130SからデッドボリュームDV1への気体冷媒の流出が起きる。その結果、実施形態のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機1は、第1環状ピストン125Sを1回転させるのに必要な動力が、実施形態のロータリ圧縮機がインジェクション機構を備えないと仮定した場合に比べて、
図12に示す面積S2の分だけ増加する。しかしながら、実施形態のインジェクション機構はデッドボリュームDV1が小さいので、実施形態のインジェクション機構を備えたロータリ圧縮機1は、圧縮機としての動作のエネルギー効率の低下が殆どない。
【0071】
図13は、変形例1にかかるロータリ圧縮機1の圧縮部を示す部分縦断面図である。
図13に示すように、保持管142には、インジェクション孔300に設けられた第1の段差部(第1のテーパ部)304に対応する保持管先端142aが設けられていてもよい。これにより、変形例1にかかるロータリ圧縮機1では、保持管142をインジェクション孔300内に差し込んで固定する場合、保持管先端142aと第1の段差部(第1のテーパ部)304との間の隙間をなくすことができ、冷媒の漏れを防ぐことができる。
【0072】
図14は、変形例2にかかるロータリ圧縮機1の圧縮部を示す部分縦断面図である。
図14に示すように、保持管142は、凝縮器の出口側や減圧手段通過後に分岐させた液冷媒をインジェクション孔300まで導入するインジェクション導入管144と、インジェクション管141とについて、インジェクション導入管144にインジェクション管141が差し込まれた状態の外周を保持する構成であってもよい。変形例2にかかるロータリ圧縮機1のように、インジェクション孔300まではインジェクション導入管144を用いて液冷媒を運び、インジェクション孔300のところでより細く(例えば外径R2を4mm以下)形成したインジェクション管141を用いてもよい。
【0073】
図15は、中間仕切板140の分解斜視図である。
図15に示すように、中間仕切板140は、軸方向(図の上下方向)でインジェクション孔300を境に、下中間仕切板140Sと上中間仕切板140Tの2つに分割される構成であってもよい。
【0074】
これにより、下中間仕切板140Sでは、インジェクション孔300にかかる構成(開口部301、大径部303、第1の段差部(第1のテーパ部)304、第1の小径部305、第2の段差部(第2のテーパ部)306および第2の小径部307)の下部分を加工精度の高いNCフライス盤などの工作機械で形成することができる。同様に、上中間仕切板140Tでは、インジェクション孔300にかかる構成の上部分を加工精度の高いNCフライス盤などで形成することができる。
【0075】
中間仕切板140を形成する場合、インジェクション孔300にかかる構成を形成した一方の中間仕切板(例えば下中間仕切板140S)に保持管142と繋げたインジェクション管141を配置する。これにより、インジェクション孔300内のインジェクション管141の配置状態などを目視で確認することができる。ついで、インジェクション管141を配置した一方の中間仕切板に、他方の中間仕切板(例えば上中間仕切板140T)が接合される。このようにして、インジョクション機構を有する中間仕切板140を精度よく形成することができる。
【0076】
図16は、接続弁からのデッドボリュームを説明する説明図である。
図17は、
図16の点線部分の拡大図である。
【0077】
図16において、接続弁位置P1は、凝縮器の出口側や減圧手段通過後に分岐させた液冷媒をインジェクション機構へと接続させる接続弁の位置とする。したがって、
図16に示すように、接続弁位置P1から連通孔302S、302Tまでのインジェクション管141(キャピラリー)の容積がデッドボリュームDV10に相当する。
【0078】
ここで、本実施形態にかかるキャピラリーの内径を約1mm、接続弁位置P1から連通孔302S、302Tまでのキャピラリーの長さを160mmと仮定すると、キャピラリー内部の容積(デッドボリュームDV10)は、0.18ccとなる。従来の構成(
図8(b)のデッドボリュームDV2参照)におけるキャピラリー内部の容積を5.8ccと仮定した場合、本実施形態に対して従来はデッドボリュームが32.2倍にもなる。
【0079】
また、インジェクション孔300の第1の小径部305の内周面と、インジェクション管先端141aの外周面と、の間に形成される隙間が大きくなる場合は、
図12に示すように、インジェクション管141の外側に冷媒が漏れる部分のデッドボリュームDV11が生じる。例えば、上記の隙間が50μm以下であれば、冷媒漏れによるデッドボリュームDV11を考慮する必要はないが、隙間が50μmを超える場合はデッドボリュームDV11を考慮したほうがよい。
【0080】
このデッドボリュームDV11については、例えば0.42cc程度を見積もることができる。したがって、上記の隙間が50μmよりも大きい場合は、デッドボリュームDV11により、デッドボリュームDV11が生じない本実施形態と比較して、全体のデッドボリュームの大きさが0.42/0.18=2.33倍となる。
【0081】
ロータリ圧縮機1の設計は相似形なので、サイズが大型化しても小型化しても形状が大きく変化することはない。したがって、上記の隙間が50μmよりも大きい場合は、ロータリ圧縮機1のサイズ(大型化または小型化)に関係なく、本実施形態よりも全体でのデッドボリュームの大きさが2~2.5倍となる。
【0082】
以上、実施形態を説明したが、前述した内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【0083】
なお、前述した実施形態では、2シリンダ式ロータリ圧縮機において、インジェクション孔300が中間仕切板140に形成される場合を例示したが、インジェクション孔300は下端板160Sおよび上端板160Tの少なくとも一方に設けられてもよい。
【0084】
また、前述した実施形態では、2シリンダ式ロータリ圧縮機について説明したが、単シリンダ式ロータリ圧縮機及び2段圧縮式ロータリ圧縮機等に適用してもよい。例えば、単シリンダ式ロータリ圧縮機の場合、インジェクション管141が固定されるインジェクション孔300は、下端板160Sまたは上端板160Tに設けられる。
【符号の説明】
【0085】
なお、前述した実施形態では、ロータリ圧縮機1のシリンダ室130(第1シリンダ室130S)がシリンダ121(第1シリンダ121S)と環状ピストン125(第1環状ピストン125S)との間に形成され、シリンダ室130がベーン127(第1ベーン127S)により吸入室131(第1吸入室131S)と圧縮室133(第1圧縮室133S)とに区画される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、図示しないが、ピストンとベーン(ブレード)とが一体に形成された、揺動型のロータリ圧縮機に適用されてもよい。
【0086】
1…ロータリ圧縮機
10…圧縮機筐体
11…モータ
12…圧縮部
12S…第1の圧縮部
12T…第2の圧縮部
15…回転軸
16…給油パイプ
25…アキュムレータ
31S…第1低圧連絡管
31T…第2低圧連絡管
101…第1貫通孔
102…第2貫通孔
104…第1吸入管
105…第2吸入管
107…吐出管
111…ステータ
112…ロータ
121S…第1シリンダ
121T…第2シリンダ
122S…第1側方張出部
122T…第2側方張出部
123S…第1シリンダ内壁
123T…第2シリンダ内壁
124S…第1スプリング穴
124T…第2スプリング穴
125S…第1環状ピストン
125T…第2環状ピストン
127S…第1ベーン
127T…第2ベーン
128S…第1ベーン溝
128T…第2ベーン溝
129S…第1圧力導入路
129T…第2圧力導入路
130S…第1シリンダ室
130T…第2シリンダ室
131S…第1吸入室
131T…第2吸入室
131S…第1圧縮室
131T…第2圧縮室
133S…第1圧縮室
133T…第2圧縮室
135S…第1吸入孔
135T…第2吸入孔
136…冷媒通路
140…中間仕切板(端板)
140a…外周面
140S…下中間仕切板
140T…上中間仕切板
141…インジェクション管
141a…インジェクション管先端
142…保持管
142a…保持管先端
142b…テーパ部
143…封止部材
144…インジェクション導入管
151…副軸部
152S…第1偏心部
152T…第2偏心部
153…主軸部
160S…下端板(端板)
160T…上端板(端板)
161S…副軸受部
161T…主軸受部
170S…下マフラーカバー
170T…上マフラーカバー
175…通しボルト
180S…下マフラー室
180T…上マフラー室
190S…第1吐出孔
190T…第2吐出孔
200S…第1吐出弁
200T…第2吐出弁
201S…第1吐出弁押え
201T…第2吐出弁押え
252…アキュムホルダ
253…アキュムバンド
255…システム接続管
257…底部貫通孔
260S…第1ベーンスプリング
260T…第2ベーンスプリング
300…インジェクション孔
301…開口部
302S、302T…連通孔
303…大径部(孔側テーパ部)
304…第1の段差部(第1のテーパ部、孔側テーパ部)
305…第1の小径部
306…第2の段差部(第2のテーパ部)
307…第2の小径部
500…中間仕切板
DV1、DV2、DV10、DV11…デッドボリューム
P1…接続弁位置
R…開口部
R1、R3、R4…内径
R2…外径
【手続補正書】
【提出日】2024-09-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動するモータと、前記圧縮部と前記モータとを内部に収容する圧縮機本体容器と、を備え、
前記圧縮部は、内部にシリンダ室を形成するシリンダと、前記シリンダの内周側で公転するピストンと、前記シリンダの端部を閉塞する端板と、を有するロータリ圧縮機であって、
前記端板には、前記シリンダ室に連通し、前記冷媒を導通するインジェクション管が挿通可能なインジェクション孔が形成され、
前記インジェクション孔には、前記インジェクション管の外周を保持する保持管を介して前記インジェクション管が固定され、
前記端板には、前記インジェクション孔と前記シリンダ室とを連通するように、前記端板の厚み方向に沿って連通孔が形成され、
前記インジェクション孔は、前記保持管が挿通可能な大径部と、前記大径部から連続して形成されるとともに前記大径部よりも前記連通孔側に位置する、前記インジェクション管が挿通可能な第1の小径部と、前記第1の小径部に連続して前記連通孔側に形成された、前記インジェクション管の先端部の外径よりも細い第2の小径部と、前記第1の小径部と前記第2の小径部との境界に形成された段差と、を備え、
前記インジェクション孔に前記インジェクション管が固定された際に、前記インジェクション管の先端部が前記インジェクション孔の前記第1の小径部に位置し、前記段差によって前記インジェクション管の外周面と前記第1の小径部の内周面との間の隙間が塞がれている、
ことを特徴とするロータリ圧縮機。
【請求項2】
前記インジェクション孔に前記インジェクション管が固定された際に、前記保持管の先端部が前記インジェクション孔の大径部に位置する、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項3】
前記インジェクション孔は、当該インジェクション孔に前記インジェクション管が固定された際に、前記インジェクション管の出口から連続するように形成された前記第2の小径部を有し、
前記インジェクション管の内径は前記第2の小径部の内径よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項4】
前記保持管は、当該保持管の内径が、前記インジェクション管の外径以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項5】
前記インジェクション孔の前記第1の小径部の内周面と、前記インジェクション管の前記先端部の外周面と、の間に形成される隙間の寸法が、50μm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項6】
前記インジェクション孔には、前記保持管を位置決めするための孔側テーパ部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項7】
前記保持管には、前記孔側テーパ部に対応する管側テーパ部が設けられている、
ことを特徴とする請求項6に記載のロータリ圧縮機。
【請求項8】
前記孔側テーパ部は、前記インジェクション孔の大径部に設けられ、前記孔側テーパ部において前記保持管が固定されることで、当該保持管を介して前記インジェクション管が前記インジェクション孔に対して固定される、
ことを特徴とする請求項6に記載のロータリ圧縮機。
【請求項9】
前記インジェクション管は、前記保持管に保持される部分の全体に亘って当該保持管よりも細く形成される、
ことを特徴とする請求項4に記載のロータリ圧縮機。
【請求項10】
前記インジェクション孔は、当該インジェクション孔の開口が前記端板の径方向の外周面に形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項11】
前記インジェクション管は、内径が4mm以下に形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項12】
前記インジェクション管は、キャピラリーチューブである、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項13】
前記インジェクション管の先端部には、前記インジェクション孔の内周面と、前記インジェクション管の外周面との間を塞ぐ封止部材が配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項14】
冷媒を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動するモータと、前記圧縮部と前記モータとを内部に収容する圧縮機本体容器と、を備え、
前記圧縮部は、内部にシリンダ室を形成するシリンダと、前記シリンダの内周側で公転するピストンと、前記シリンダの端部を閉塞する端板と、を有するロータリ圧縮機であって、
前記端板には、前記シリンダ室に連通し、前記冷媒を導通するインジェクション管が挿通可能なインジェクション孔が形成され、
前記インジェクション孔には、前記インジェクション管の外周を保持する保持管を介して前記インジェクション管が固定され、
前記圧縮部は、2つの前記シリンダを備え、
前記端板は、2つの前記シリンダの間に配置される中間仕切板であり、
前記中間仕切板は、軸方向で前記インジェクション孔を境に2つに分割され、
分割された一方の中間仕切板に前記インジェクション管を配置した後に、分割された他方の中間仕切板が接合される、
ことを特徴とするロータリ圧縮機。
【請求項15】
冷媒を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動するモータと、前記圧縮部と前記モータとを内部に収容する圧縮機本体容器と、を備え、
前記圧縮部は、内部にシリンダ室を形成するシリンダと、前記シリンダの内周側で公転するピストンと、前記シリンダの端部を閉塞する端板と、を有するロータリ圧縮機であって、
前記端板には、前記シリンダ室に連通し、前記冷媒を導通するインジェクション管が挿通可能なインジェクション孔が形成され、
前記インジェクション孔には、前記インジェクション管の外周を保持する保持管を介して前記インジェクション管が固定されるとともに、前記保持管を位置決めするための孔側テーパ部が設けられ、
前記保持管には、前記孔側テーパ部に対応する管側テーパ部が設けられている、
ことを特徴とするロータリ圧縮機。
【請求項16】
前記孔側テーパ部において前記保持管が固定されることで、当該保持管を介して前記インジェクション管が前記インジェクション孔に対して固定される、
ことを特徴とする請求項15に記載のロータリ圧縮機。
【請求項17】
前記孔側テーパ部は、前記インジェクション孔の大径部に設けられる、
ことを特徴とする請求項16に記載のロータリ圧縮機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本開示の実施形態にかかるロータリ圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動するモータと、圧縮部とモータとを内部に収容する圧縮機本体容器と、を備える。圧縮部は、内部にシリンダ室を形成するシリンダと、シリンダの内周側で公転するピストンと、シリンダの端部を閉塞する端板と、を有する。端板には、シリンダ室に連通し、冷媒を導通するインジェクション管が挿通可能なインジェクション孔が形成される。インジェクション孔には、インジェクション管の外周を保持する保持管を介してインジェクション管が固定される。端板には、インジェクション孔とシリンダ室とを連通するように、端板の厚み方向に沿って連通孔が形成される。インジェクション孔は、保持管が挿通可能な大径部と、大径部から連続して形成されるとともに大径部よりも連通孔側に位置する、インジェクション管が挿通可能な第1の小径部と、第1の小径部に連続して連通孔側に形成された、インジェクション管の先端部の外径よりも細い第2の小径部と、第1の小径部と第2の小径部との境界に形成された段差と、を備える。インジェクション孔にインジェクション管が固定された際に、インジェクション管の先端部がインジェクション孔の第1の小径部に位置し、段差によってインジェクション管の外周面と第1の小径部の内周面との間の隙間が塞がれている。