(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165282
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】亜硝酸塩の測定方法および亜硝酸塩の測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20241121BHJP
G01N 27/30 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G01N27/416 302Z
G01N27/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081350
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(71)【出願人】
【識別番号】318004947
【氏名又は名称】株式会社ファーストスクリーニング
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】張 子平
(72)【発明者】
【氏名】緒方 元気
(72)【発明者】
【氏名】村田 道生
(72)【発明者】
【氏名】栄長 泰明
(72)【発明者】
【氏名】浅井 開
(57)【要約】
【課題】亜硝酸塩を定量的かつ簡便に測定する。
【解決手段】亜硝酸塩を含む被検査液を準備する準備工程と、被検査液について、亜硝酸塩との反応により還元可能物質を形成する識別化合物の存在下で、亜硝酸塩と識別化合物との反応により生成する還元可能物質を電気化学的手法により還元し、還元可能物質の還元にともなう還元電流値を測定する測定工程と、還元電流値に基づいて、被検査液中における亜硝酸塩の有無を判定する判定工程と、を有する、亜硝酸塩の測定方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜硝酸塩を含む被検査液を準備する準備工程と、
前記被検査液について、前記亜硝酸塩との反応により還元可能物質を形成する識別化合物の存在下で、前記亜硝酸塩と前記識別化合物との反応により生成する前記還元可能物質を電気化学的手法により還元し、前記還元可能物質の還元にともなう還元電流値を測定する測定工程と、
前記還元電流値に基づいて、前記被検査液中における前記亜硝酸塩の有無を判定する判定工程と、を有する、
亜硝酸塩の測定方法。
【請求項2】
前記測定工程では、前記識別化合物としてクレアチニンを用い、電気化学的手法により前記還元可能物質を生成する、
請求項1に記載の亜硝酸塩の測定方法。
【請求項3】
前記測定工程では、前記識別化合物として芳香族一級アミン化合物を添加し、前記還元可能物質を生成する、
請求項1に記載の亜硝酸塩の測定方法。
【請求項4】
前記測定工程では、前記識別化合物が前記亜硝酸塩に対して過剰量となる条件下で前記還元可能物質を生成させる、
請求項1又は請求項2に記載の亜硝酸塩の測定方法。
【請求項5】
前記測定工程では、前記クレアチニンとともに塩化物イオンの存在下で、電気化学的手法により前記還元可能物質を生成する
請求項2に記載の亜硝酸塩の測定方法。
【請求項6】
前記被検査液における前記塩化物イオンの濃度が10mmol/L以上300mmol/L以下である、
請求項5に記載の亜硝酸塩の測定方法。
【請求項7】
前記判定工程では、前記還元電流値を、予め取得した前記還元可能物質の還元電流値と前記亜硝酸塩の含有量との相関を示す検量線と参照し、前記亜硝酸塩の含有量を定量化する、
請求項1又は請求項2に記載の亜硝酸塩の測定方法。
【請求項8】
前記測定工程では、作用電極としてダイヤモンド電極を用いて電気化学的手法により還元を行う、
請求項1又は請求項2に記載の亜硝酸塩の測定方法。
【請求項9】
被検査液に含まれる亜硝酸塩を測定する測定装置であって、
前記被検査液について、前記亜硝酸塩との反応により還元可能物質を形成する識別化合物の存在下で、前記亜硝酸塩と前記識別化合物との反応により生成する前記還元可能物質を電気化学的手法により還元し、前記還元可能物質の還元にともなう還元電流を測定する測定部と、
前記測定部での測定結果に基づいて、前記被検査液中における前記亜硝酸塩の有無を判定する判定部と、を備える、
亜硝酸塩の測定装置。
【請求項10】
前記還元可能物質の還元電流値と前記亜硝酸塩の含有量との相関を示す検量線を記憶する記憶部をさらに備え、
前記判定部は、前記検量線に基づき、前記還元電流値から前記亜硝酸塩の含有量を定量化するよう構成される、
請求項9に記載の亜硝酸塩の測定装置。
【請求項11】
前記測定部は、
前記被検査液を収容する測定セルと、
前記被検査液に浸漬される電極として少なくとも作用電極および対極と、
前記作用電極の電位を掃引する電位掃引部と、
前記作用電極および前記対極との間に流れる電流を測定する電流測定部と、を備える、
請求項9又は請求項10に記載の亜硝酸塩の測定装置。
【請求項12】
前記作用電極がダイヤモンド電極である、
請求項11に記載の亜硝酸塩の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜硝酸塩の測定方法および亜硝酸塩の測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
膀胱炎や腎盂腎炎により尿中に亜硝酸塩が混じることがある。そのため、腎臓に影響する病態の把握の観点から、尿中の亜硝酸塩の測定は重要である。
【0003】
尿中の亜硝酸塩の測定方法としては、例えば試験紙を使用した比色法が知られている。この方法では、試験紙と尿とを接触させたときに、亜硝酸塩の存在により、試験紙に含まれる試薬が変色することで、亜硝酸塩の有無を測定することができる。
【0004】
ただし、比色法は分光機器に基づく機器分析が必要であり、測定の信頼性や定量性と簡便性とを両立できないことがある。
【0005】
一方、亜硝酸塩の測定方法として、電気化学的手法により亜硝酸塩を直接測定する方法も提案されている。例えば、電気化学的手法により亜硝酸塩を直接還元する方法がある(非特許文献1を参照)。また例えば、電気化学的手法により亜硝酸塩を直接酸化する方法がある(非特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】直接電気化学還元法, Davis J. et al. Analyst, 2000, 125, 737.
【非特許文献2】直接電気化学酸化法 , Caro C. et al. Electrochemica Acta, 2002, 47, 1489.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した還元法や酸化法では、尿中の亜硝酸塩を精度よく測定できないことがある。還元法では、亜硝酸塩を還元させるために作用電極として銅電極を使用する必要があるが、銅電極は表面の酸化状態などにより測定感度がばらつくため、実用上この方法を用いることは困難である。また同様に、酸化法では、亜硝酸塩とともに尿酸などを酸化してしまうため、亜硝酸塩のみを測定できないことがある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、亜硝酸塩を定量的かつ簡便に測定する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、
亜硝酸塩を含む被検査液を準備する準備工程と、
前記被検査液について、前記亜硝酸塩との反応により還元可能物質を形成する識別化合物の存在下で、前記亜硝酸塩と前記識別化合物との反応により生成する前記還元可能物質を電気化学的手法により還元し、前記還元可能物質の還元にともなう還元電流値を測定する測定工程と、
前記還元電流値に基づいて、前記被検査液中における前記亜硝酸塩の有無を判定する判定工程と、を有する、
亜硝酸塩の測定方法である。
【0010】
本発明の他の態様は、
被検査液に含まれる亜硝酸塩を測定する測定装置であって、
前記被検査液について、前記亜硝酸塩との反応により還元可能物質を形成する識別化合物の存在下で、前記亜硝酸塩と前記識別化合物との反応により生成する前記還元可能物質を電気化学的手法により還元し、前記還元可能物質の還元にともなう還元電流を測定する測定部と、
前記測定部での測定結果に基づいて、前記被検査液中における前記亜硝酸塩の有無を判定する判定部と、を備える、
亜硝酸塩の測定装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、亜硝酸塩を定量的かつ簡便に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態にかかる亜硝酸塩の測定装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る亜硝酸塩の測定方法のフロー図である。
【
図3】
図3は、実施例1で取得されたボルタモグラムを示す図である。
【
図4】
図4は、実施例1で取得されたボルタモグラムの負方向の電位側を拡大した図である。
【
図5】
図5は、実施例2における各被検査液のボルタモグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<本発明者等が得た知見>
上述したように、電気化学的手法により亜硝酸塩をそのまま還元もしくは酸化した場合、尿中に含まれるその他の物質(尿酸など)も反応してしまうことから、亜硝酸塩を定量的にかつ簡便に測定できないことがあった。このことから、本発明者等は、亜硝酸塩を電気化学的手法により測定する際、その他の物質とは区別して、亜硝酸塩のみの電気応答を取得する方法について検討を行った。
【0014】
その過程で、亜硝酸塩をクレアチニンおよび塩化物イオンの存在下で電気化学的手法により測定したときに、応答電流として還元シグナルを取得できることが確認された。また、この還元シグナルは亜硝酸塩の含有量に応じて変化することが確認された。このことから、亜硝酸塩をクレアチニンとの反応により還元可能物質に生成でき、この還元可能物質の還元にともなう還元シグナルに基づき、亜硝酸塩を定量的に測定できることを見出した。
【0015】
さらに、クレアチニン以外に亜硝酸塩を還元可能物質に生成させる化合物を検討したところ、芳香族一級アミン化合物でもクレアチニンと同様の効果を得られることを見出した。
【0016】
このように、上記化合物を、亜硝酸塩との反応により還元可能物質を形成する識別化合物として使用し、識別化合物の存在下で亜硝酸塩を電気化学的手法により測定することで、亜硝酸塩を定量的に、かつ簡便に測定できることを見出した。
【0017】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。
【0018】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について説明する。以下では、被検査液、識別化合物、亜硝酸塩の測定方法および測定装置について説明する。
【0019】
(1)被検査液
被検査液は、未知量の亜硝酸塩を含む溶液である。被検査液としては、例えば、夾雑物の多い尿などの生体液、夾雑物の少ない溶液などが挙げられる。生体液である尿には、亜硝酸塩以外に、夾雑物として、例えば尿素、尿酸、アンモニア、クレアチニン、亜硝酸塩、各種アミノ酸、塩化物イオンなどが含まれる。一般に、尿に含まれる亜硝酸塩は極微量であり、クレアチニンは亜硝酸塩に対して過剰量となる。尿に含まれる亜硝酸塩の含有量は、例えば0.075mg/dL以上0.1mg/dL以下程度となる。なお、亜硝酸塩としては、亜硝酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0020】
(2)識別化合物
本実施形態では、亜硝酸塩を電気化学的手法により測定する観点から、亜硝酸塩との反応により還元可能物質を形成する識別化合物を用いる。識別化合物としては、アミン基を有し、亜硝酸塩と反応して還元可能物質を生成するものであれば特に限定されない。識別化合物としては、クレアチニンもしくは芳香族一級アミン化合物を用いることが好ましい。これらは、亜硝酸塩と安定的に反応して、還元可能物質を生成することができる。
【0021】
ここで、還元可能物質とは、亜硝酸塩と識別化合物との反応により生成するものであり、例えば、識別化合物のアミン基と亜硝酸塩とのジアゾ化により生成するジアゾニウム化合物と推測される。還元可能物質は、電気化学的手法により電位を掃引したときに還元できるような化合物である。還元可能物質の生成メカニズムは定かではないが、以下のように推測される。
【0022】
識別化合物がクレアチニンである場合、亜硝酸塩はクレアチニンの存在下で電気化学的手法により酸化されることで、亜硝酸塩とクレアチニンとが反応し、還元可能物質が生成する。後述するように、亜硝酸塩は、クレアチニンとともに塩化物イオンが存在すると、還元可能物質をより安定して生成させることができる。
【0023】
一方、識別化合物が芳香族一級アミン化合物である場合、芳香族一級アミン化合物は亜硝酸塩と反応し、還元可能物質を生成する。つまり、電気化学的手法による酸化を行うことなく、還元可能物質を生成する。芳香族一級アミン化合物としては、例えばp-スルファニルアミドやp-アルサニル酸などを単独で、もしくは複数を併用することができる。
【0024】
(3)亜硝酸塩の測定装置
次に、本実施形態の亜硝酸塩の測定装置について
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる亜硝酸塩の測定装置の概略構成図である。
【0025】
本実施形態の亜硝酸塩の測定装置1は、
図1に示すように、電気化学的手法により電流応答を測定する測定部10と、亜硝酸塩の有無を測定する判定部20と、を備える。
【0026】
(測定部)
測定部10は、被検査液Sについて識別化合物の存在下で、亜硝酸塩と識別化合物との反応により生成する還元可能物質を電気化学的手法により還元し、還元可能物質の還元にともなう還元電流を測定するように構成される。ここで、識別化合物の存在下で電気化学的処理を行うことは、識別化合物が含まれる被検査液S、もしくは、識別化合物を添加して調製された被検査液Sについて電気化学的処理を行うことを示す。
【0027】
測定部10は、例えば、3電極式で構成され、電極として作用電極11、対極12および参照電極13と、電位掃引部14と、電流測定部15と、測定セル40と、を備えて構成される。
【0028】
測定セル40は、被検査液Sを収容するものである。測定セル40としては、従来公知のものを用いることができる。
【0029】
各電極は、測定セル40内の被検査液Sに浸漬される。作用電極11は、被検査液に含まれる成分を還元もしくは酸化させるものである。対極12は、作用電極11とは逆反応を生じさせるものである。参照電極13は、作用電極11に対して電位を一定に保つための基準となるものである。
【0030】
各電極は、特に限定されず従来公知のものを用いることができる。作用電極11や対極12としては、例えば、炭素や白金を含む電極などを用いることができ、参照電極13としては、塩化銀を含む電極などを用いることができる。作用電極11については、バックグラウンド電流を小さく抑制し、電流応答をより精度よく測定する観点からは、炭素系電極が好ましく、その中でもダイヤモンド電極がより好ましい。
【0031】
電位掃引部14は、各電極に接続され、例えば参照電極13に対する電位として作用電極11に印加する電圧を所定の範囲で掃引するように構成される。電位掃引部14は、電気化学的手法により電流応答を測定できれば掃引方法は特に限定されない。掃引方法は、例えば、所定の掃引速度で掃引するボルタンメトリー法(サイクリックボルタンメトリーやリニアリックボルタンメトリー)、もしくは、電位を段階的に掃引する電位ステップ法があり、電位掃引部14は掃引方法に応じて適宜変更するとよい。
【0032】
具体的には後述するが、電位掃引部14は、識別化合物がクレアチニンである場合は、まず被検査液S中で還元可能物質を生成するように作用電極11に正の電圧を印加し電位を正方向に掃引した後、還元可能物質を還元させるように作用電極11に負の電圧を印加し負方向に掃引する。一方、識別化合物が芳香族一級アミン化合物である場合は、被検査液S中に生成する還元可能物質を還元させるように作用電極11に負の電圧を印加し電位を負方向に掃引する。なお、正方向への掃引電位は、亜硝酸塩と識別化合物であるクレアチニンとが酸化により還元可能物質を生成できれば特に限定されない。還元可能物質の生成は+1.2Vから+1.5Vの範囲で生じることから、この電位を含むように、参照電極13に対する作用電極11の電位を掃引するとよい。また、負方向への掃引電位は、還元可能物質を還元できれば特に限定されない。還元可能物質の還元は、0Vから-0.6Vの範囲で生じることから、この電位を含むように、参照電極13に対する作用電極11の電位を掃引するとよい。また、作用電極11の掃引速度は、特に限定されないが、例えば0.05V/秒以上0.3V/秒以下となるように調整するとよい。
【0033】
電流測定部15は、各電極に接続され、電位の掃引の際に作用電極11と対極12との間を流れる応答電流を測定するように構成される。ここでは、被検査液Sに含まれる還元可能物質が還元されるのにともなう還元電流値を取得する。
【0034】
(判定部)
判定部20は、測定部10に接続され、測定部10での結果に基づき、被検査液Sに含まれる亜硝酸塩の有無を判定するように構成され、例えば、判定処理部21を備えて構成される。判定処理部21は、例えば測定部10で還元電流が検出されれば、被検査液S中に還元可能物質が存在する、つまり被検査液Sに亜硝酸塩が含まれていると判定する。一方、測定部10で還元電流が検出されなければ、被検査液Sに亜硝酸塩が含まれていないと判定する。
【0035】
判定部20は、被検査液Sに含まれる亜硝酸塩を精度よく測定する観点からは、判定処理部21が、測定部10で取得した還元電流値の大きさに基づいて、亜硝酸塩を定量化するように構成されることが好ましい。具体的には、判定部20は、判定処理部21とともに、還元可能物質の還元電流値と亜硝酸塩の含有量との相関を示す検量線を記憶する記憶部22をさらに備え、測定部10で取得した還元電流値を記憶部22における検量線と参照することで、被検査液Sに含まれる亜硝酸塩の含有量を定量するように構成される。
【0036】
検量線は、例えば以下のように作成するとよい。まず、亜硝酸塩の含有量が既知であって互いに異なる複数の標準サンプルを準備する。この複数の標準サンプルに対して、亜硝酸塩よりも過剰量であって既知量の識別化合物をそれぞれ添加し、複数の標準溶液を調製する。続いて、複数の標準溶液のそれぞれについてボルタンメトリー測定により還元電流を測定する。複数の標準溶液は、亜硝酸塩の含有量が異なることで、還元可能物質の含有量がそれぞれ異なるため、還元電流値が異なる。そして、例えば、亜硝酸塩の含有量を横軸に、亜硝酸塩の所定含有量に対する還元電流値を縦軸にプロットすることで、還元可能物質の還元電流値と亜硝酸塩の含有量との相関を示す検量線を作成することができる。
【0037】
(制御部)
制御部30は、例えばコンピュータを備え、測定部10および判定部20に接続されてこれらを制御するように構成される。具体的には、測定部10において、被検査液Sが識別化合物であるクレアチニンを含む場合、まず作用電極11の電位を参照電極13に対して正方向に掃引した後、電位を負方向に掃引するように電位掃引部14を制御するとともに、電位の掃引の際に作用電極11と対極12との間を流れる還元電流を測定するように電流測定部15を制御する。一方、被検査液Sが識別化合物である芳香族一級アミン化合物を含む場合、作用電極11の電位を参照電極13に対して負方向の電位に掃引するように電位掃引部14を制御するとともに、電位の掃引の際に作用電極11と対極12との間を流れる電流を測定するように電流測定部15を制御する。また、判定部20において、測定部10で取得された電流値から被検査液Sに含まれる亜硝酸塩の有無を判定するように判定処理部21を制御する。また判定部20が記憶部22を備える場合には、判定処理部21が記憶部22における検量線を参照して被検査液Sに含まれる亜硝酸塩の含有量を定量するように判定処理部21を制御する。
【0038】
(4)亜硝酸塩の測定方法
次に、亜硝酸塩の測定方法について被検査液として尿に含まれる亜硝酸塩を測定する場合を一例として説明する。
図2は、本発明の一実施形態にかかる測定方法のフロー図である。
【0039】
(S1準備工程)
まず、被検査液Sとして、亜硝酸塩の含有量が未知の尿を準備する。尿には、一般的に、識別化合物となるクレアチニンが亜硝酸塩に対して過剰量となる。また、尿には、夾雑物の一種である塩化物イオンが含まれている。
【0040】
(S2測定工程)
次に、上述した測定装置1における測定部10の測定セル40に尿を収容する。その後、尿に作用電極11、対極12および参照電極13を浸漬させる。続いて、電位掃引部14により、作用電極11に電圧を印加する。
【0041】
具体的には、まず、制御部30により作用電極11に正の電圧を印加し、作用電極11の電位を正方向へ掃引する。これにより、亜硝酸塩を、識別化合物であるクレアチニンの存在下で電気化学的手法により酸化させることで、還元可能物質を生成させる。この還元可能物質はジアゾニウム化合物と推測される。また、尿においては亜硝酸およびクレアチニンとともに塩化物イオンが含まれることで、還元可能物質をより安定して生成させることができる。
【0042】
続いて、還元可能物質を含む尿について、作用電極11に負の電圧を印加し、作用電極11の電位を負方向へ掃引する。このとき、電位掃引により作用電極11で生じる還元可能物質の還元反応にともなって作用電極11と対極12との間に流れる還元電流を電流測定部15により測定する。これにより、尿に含まれる還元可能物質の含有量に対応する還元電流値を取得する。
【0043】
なお、正方向および負方向への電位掃引の回数は特に限定されないが、それぞれ1回とするとよい。
【0044】
(S3判定工程)
次に、判定部20の判定処理部21にて、電流測定部15で取得された還元電流値に基づき、尿に含まれる亜硝酸塩を判定する。例えば、尿についての還元電流値が取得できれば、尿に亜硝酸塩が含まれていると判定する。一方、尿についての還元電流値が取得できなければ、尿に亜硝酸塩が含まれていないと判定する。
【0045】
S3判定工程では、好ましくは、測定工程S2で取得した尿についての還元電流値の大きさに基づき、尿に含まれる亜硝酸塩を定量するとよい。より好ましくは、尿についての還元電流値を、記憶部22の検量線と参照し、尿に含まれる亜硝酸塩の含有量を定量化するとよい。
【0046】
以上により、被検査液Sとしての尿に含まれる亜硝酸塩を測定することができる。
【0047】
<本実施形態に係る効果>
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0048】
(a)本実施形態によれば、尿を測定対象として、測定部10にて、制御部30により作用電極11を正方向の電位に掃引するよう電位掃引部14を制御する。これにより、尿に含まれる亜硝酸塩を識別化合物であるクレアチニンの存在下で酸化させ、還元可能物質を生成させる。続いて、制御部30により作用電極11を負方向の電位に掃引するよう電位掃引部14を制御する。これにより、尿に含まれる還元可能物質を還元させる。このとき、電流測定部15により作用電極11と対極12との間に流れる還元電流値を取得する。還元電流値は、尿に含まれる還元可能物質の含有量に、つまり、尿に含まれる亜硝酸塩の含有量に対応する。そして、判定部20の判定処理部21にて、電流測定部15で取得された還元電流値に基づき尿における亜硝酸塩の有無を判定している。このように、尿について電気化学的手法により酸化還元処理を行うことで、亜硝酸塩を還元可能物質として生成させた後、その還元可能物質の還元にともなう還元電流値から亜硝酸塩の有無を簡便に測定することができる。
【0049】
比較形態として、例えば比色法で目視により測定を行う場合、亜硝酸塩を半定量的にしか測定することができない。また例えば比色法で分光光度計により測定を行う場合、亜硝酸塩を定量的に測定できるものの、測定工程が複雑となる。この点、本実施形態では、亜硝酸塩の含有量を、還元可能物質の還元電流値として定量的に、かつ簡便に測定することができる。
【0050】
(b)尿においてはクレアチニンが亜硝酸塩に対して過剰量となるため、尿をそのまま酸化還元処理することで、亜硝酸塩の有無を測定することができる。
【0051】
(c)また尿に塩化物イオンが含まれることで、クレアチニンおよび塩化物イオンの存在下で亜硝酸塩を酸化させて、還元可能物質をより安定して生成させることができる。塩化物イオンの濃度は、還元可能物質の生成をより安定させる観点からは、10mmol/L以上300mmol/L以下とすることが好ましい。
【0052】
(d)判定部20は、還元可能物質の還元電流値と亜硝酸塩との含有量との相関を示す検量線を記憶する記憶部22をさらに備え、測定部10で取得した還元電流値を検量線と参照することで、尿に含まれる亜硝酸塩の含有量を定量化するように構成される。検量線によれば、亜硝酸塩の含有量をより精度よく定量することができる。
【0053】
(e)測定部10における作用電極11がダイヤモンド電極であることが好ましい。ダイヤモンド電極によれば、タンパク質などの非特異吸着等を抑制することができ、作用電極11の近傍で生じる還元可能物質の生成や還元可能物質の還元反応をより安定して行うことができる。これにより、亜硝酸塩の有無の判定や定量をより高い精度で行うことができる。
【0054】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【0055】
上述の実施形態では、被検査液Sとして、識別化合物であるクレアチニンを含む尿をそのまま電気化学的処理する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、クレアチニンを含まない溶液の場合であれば、クレアチニンを添加して調製した後に上述の手順により亜硝酸塩を測定してもよい。
【0056】
また、上述の実施形態では、被検査液Sにおいて亜硝酸塩とクレアチニンとから生成される還元可能物質を電気化学的に測定する場合を説明したが、クレアチニンの代わりに芳香族一級アミン化合物を使用してもよい。この場合、例えば、被検査液Sに識別化合物である芳香族一級アミン化合物を添加した後、電気化学的処理を行ってもよい。以下、具体的に説明する。
【0057】
被検査液Sに亜硝酸塩が含まれる場合、芳香族一級アミン化合物を添加することで、亜硝酸塩と芳香族一級アミン化合物とが反応し、還元可能物質が生成する。そして、芳香族一級アミン化合物が添加され、還元可能物質を含む被検査液Sを上述の実施形態と同様、測定セル40に収容し、測定装置1に供する。測定装置1の測定部10において、制御部30により作用電極11を負方向の電位に掃引するように電位掃引部14を制御する。これにより、尿に含まれる還元可能物質を還元させる。このとき、電流測定部15により作用電極11と対極12との間に流れる還元電流値を取得する。そして、還元電流値に基づき、被検査液Sに含まれる亜硝酸塩を簡便に判定することができる。また、測定部10で取得した還元電流値を検量線と参照することで、亜硝酸塩の含有量を定量的に測定することもできる。
【0058】
この場合、識別化合物として芳香族一級アミン化合物を被検査液Sに添加するだけで、還元可能物質の生成が可能であり、作用電極11にて酸化を行うことなく、還元を行うことで、還元可能物質の還元電流値を測定することができる。
【0059】
芳香族一級アミン化合物の添加量は、被検査液Sにおいて亜硝酸塩の有無を判定するのであれば、特に限定されない。一方、亜硝酸塩の含有量を定量的に測定するのであれば、芳香族一級アミン化合物の添加量は、亜硝酸塩に対して過剰量とすることが好ましい。
【0060】
上述の実施形態では、測定部10が3電極式の場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。測定部10は、2電極式であってもよく、例えば作用電極11と、参照電極13を兼ねる対極12とを備えて構成されてもよい。
【0061】
また上述の実施形態では、亜硝酸塩を測定する場合について説明したが、被検査液Sに含まれるクレアチニンの含有量を測定することもできる。その場合、被検査液Sに含まれるクレアチニンと亜硝酸塩とが酸化処理により反応して還元可能物質を生成する。そのため、クレアチニンに対して亜硝酸塩が過剰量となる条件で電気化学的手法により測定を行うことで、クレアチニンの含有量を測定することもできる。亜硝酸塩が過剰量となる条件を満たすためには、例えば被検査液Sに亜硝酸塩をクレアチニンに対して過剰量となるように添加するとよい。これにより、被検査液Sに含まれるクレアチニンの全量を還元可能物質に生成させ、この還元電流値を測定することで、クレアチニンの含有量を測定することが可能となる。
【実施例0062】
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0063】
(実施例1)
本実施例では、被検査液について、亜硝酸塩を識別化合物であるクレアチニンの存在下で電気化学的手法により測定した。
【0064】
まず、クレアチニンを含む被検査液を準備した。具体的には、D-PBS (Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline)に、亜硝酸塩である亜硝酸ナトリウムを含有量が300mg/Lとなるように添加し、被検査液Aを調製した。また、比較のため、亜硝酸ナトリウムを添加しない以外は被検査液Aと同様に調製し、亜硝酸ナトリウムを含まない被検査液Bを調製した。なお、被検査液Aおよび被検査液Bは、いずれもクレアチニンの濃度が2000mg/L、塩化物イオンの濃度が8200mg/Lであった。
【0065】
次に、調製した被検査液AおよびBのそれぞれについて電気化学的手法により酸化還元処理を行った。具体的には、各被検査液を測定セルに収容し、測定セルを測定装置に供した後、サイクリックボルタンメトリー測定を行った。ここでは、初期電位を0V、上側折返電位(正方向の電位)を+1.5V、下側折返電位(負方向の電位)を-1.5V、掃引速度を0.1V/sとした。なお、測定装置において、作用電極としてタイヤモンド電極を、対極として白金電極を、参照電極として銀/塩化銀電極をそれぞれ用いた。
【0066】
そして、各被検査液のボルタモグラムを取得した。得られたボルタモグラムを
図3および
図4に示す。
図3は、実施例1で取得されたボルタモグラムを示す図である。
図4は、実施例1で取得されたボルタモグラムの負方向の電位側を拡大した図である。
図3および
図4において、横軸は参照電極に対する作用電極の電位(Potential)[V vs. Ag/AgCl]を、縦軸は還元電流値(Current)[μA]をそれぞれ示す。
【0067】
図3および
図4に示すように、被検査液A、Bのボルタモグラムを比較すると、電位が-0.5Vの近傍で、ボルタモグラムに違いが生じることが確認された。具体的には、被検査液B(亜硝酸ナトリウムなし)では、還元電流値が検出されず、還元反応が生じていないことが確認された。一方、被検査液A(亜硝酸ナトリウムあり)では、還元電流値が検出された。このことから、被検査液Aでは、亜硝酸ナトリウムとクレアチニンとが酸化により還元可能物質を生成し、この還元可能物質が還元されていることが確認された。つまり、還元可能物質の還元電流値から亜硝酸ナトリウムを測定できることが確認された。
【0068】
(実施例2)
実施例2では、D-PBSの代わりにプール尿を用いるとともに、亜硝酸ナトリウムの含有量が0mg/L、10mg/L、50mg/L、200mg/L、300mg/L、400mg/Lとなるように亜硝酸ナトリウムの添加量を変更した以外は、実施例1と同様に被検査液C~Hを調製し、サイクリックボルタンメトリー測定を行った。
・被検査液C:亜硝酸塩の含有量が0mg/Lの溶液
・被検査液D:亜硝酸塩の含有量が10mg/Lの溶液
・被検査液E:亜硝酸塩の含有量が50mg/Lの溶液
・被検査液F:亜硝酸塩の含有量が200mg/Lの溶液
・被検査液G:亜硝酸塩の含有量が300mg/Lの溶液
・被検査液H:亜硝酸塩の含有量が400mg/Lの溶液
【0069】
サイクリックボルタンメトリー測定により得られた各被検査液のボルタモグラムを
図5に示す。
図5は、実施例2における各被検査液のボルタモグラムを示す図であり、負方向の電位側を抽出したものである。
図5において、横軸は参照電極に対する作用電極の電位(Potential)[V vs. Ag/AgCl]を、縦軸は還元電流値(Current)[μA]をそれぞれ示す。
【0070】
図5に示すように、被検査液C~Hのそれぞれを比較すると、電位が-0.25Vから-1.00Vに変化する範囲で、ボルタモグラムに違いが生じることが確認された。具体的には、被検査液C(亜硝酸ナトリウムなし)では、還元電流値が検出されず、還元反応が生じていないことが確認された。一方、被検査液Dから被検査液Hへと亜硝酸ナトリウムの含有量が増えるにしたがい、還元電流値が大きくなることが確認された。つまり、亜硝酸ナトリウムの含有量に応じて還元電流値が変化することが確認された。このことから、還元電流値に基づき、亜硝酸ナトリウムを定量できることが分かった。なお、実施例2で還元反応が生じる電位が実施例1と相違する理由としては、被検査液に含まれる夾雑物の違いが考えられる。実施例2で使用したプール尿には、実施例1で使用したD-PBSと比較して、還元可能物質以外に、還元電流を生じる夾雑物が多く含まれる。これら夾雑物により還元反応が生じる電位が広く検出されたものと推測される。
【0071】
また、各被検査液のボルタモグラムについて電位-0.5Vでの還元電流値を求め、亜硝酸塩の含有量を横軸に、亜硝酸塩の所定含有量に対する還元電流値を縦軸にプロットすることで、還元可能物質の還元電流値と亜硝酸塩の含有量との相関を示す検量線を作成した。得られた検量線は高い直線性を有することが確認された。このことから、還元電流値に基づき、亜硝酸塩を定量的に測定できることが確認された。
【0072】
(実施例3)
実施例3では、識別化合物としてクレアチニンの代わりに芳香族一級アミン化合物としてp-スルファニルアミドを用いて被検査液に含まれる亜硝酸塩を測定した。具体的には、D-PBSに、HClの含有量が3.2mmol、p-スルファニルアミドの含有量が0.1g/L、亜硝酸ナトリウムの含有量が10mg/Lとなるように各成分を添加し、被検査液Iを調製した。また比較のため、亜硝酸ナトリウムを添加しない以外は被検査液Iと同様に調製し、亜硝酸ナトリウムを含まない被検査液Jを調製した。本実施例では、各被検査液を測定セルに収容し、測定セルを測定装置に供した後、リニアスイープボルタンメトリー測定を行った。ここでは、初期電位を0V、終了電位を-0.8V、掃引速度を0.1V/sとした。なお、測定装置において、作用電極としてタイヤモンド電極を、対極として白金電極を、参照電極として銀/塩化銀電極をそれぞれ用いた。
【0073】
被検査液IおよびJのボルタモグラムを比較すると、クレアチニンを使用した実施例1および2と同様に、被検査液J(亜硝酸ナトリウムなし)では、還元電流値が検出されないのに対し、被検査液I(亜硝酸ナトリウムが10mg/L)では、還元電流値が検出された。このことから、亜硝酸ナトリウムと芳香族一級アミン化合物とが還元可能物質を生成し、この還元可能物質が還元されることが確認された。つまり、還元可能物質の還元電流値から亜硝酸ナトリウムを測定できることが確認された。
【0074】
また実施例2と同様に、被検査液に含まれる亜硝酸ナトリウムの含有量を変更し、それぞれの被検査液についてボルタモグラムを取得した後、各ボルタモグラムについて電位-0.5Vでの還元電流値を求め、還元電流値と亜硝酸塩の含有量との相関を示す検量線を作成した。得られた検量線は高い直線性を有し、検量線によれば、還元電流値に基づき、亜硝酸塩を定量的に測定できることが確認された。
【0075】
以上のことから、亜硝酸塩を含む被検査液について、クレアチニンや芳香族一級アミン化合物などの識別化合物の存在下で還元可能物質を生成させ、この還元可能物質を電気化学的手法により測定することで、亜硝酸塩を定量的に、かつ簡便に測定できることが確認された。
【0076】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様を付記する。
【0077】
(付記1)
亜硝酸塩を含む被検査液を準備する準備工程と、
前記被検査液について、前記亜硝酸塩との反応により還元可能物質を形成する識別化合物の存在下で、前記亜硝酸塩と前記識別化合物との反応により生成する前記還元可能物質を電気化学的手法により還元し、前記還元可能物質の還元にともなう還元電流値を測定する測定工程と、
前記還元電流値に基づいて、前記被検査液中における前記亜硝酸塩の有無を判定する判定工程と、を有する、
亜硝酸塩の測定方法。
【0078】
(付記2)
付記1において、好ましくは、
前記測定工程では、前記識別化合物としてクレアチニンを用い、電気化学的手法により前記還元可能物質を生成する。
【0079】
(付記3)
付記1において、好ましくは、
前記測定工程では、前記識別化合物として芳香族一級アミン化合物を添加し、前記還元可能物質を生成する。
【0080】
(付記4)
付記1~3のいずれか1つにおいて、好ましくは、
前記測定工程では、前記識別化合物が前記亜硝酸塩に対して過剰量となる条件下で前記還元可能物質を生成させる。
【0081】
(付記5)
付記2において、好ましくは、
前記測定工程では、前記クレアチニンとともに塩化物イオンの存在下で、電気化学的手法により前記還元可能物質を生成する。
【0082】
(付記6)
付記5において、好ましくは、
前記被検査液における前記塩化物イオンの濃度が10mmol/L以上300mmol/L以下である。
【0083】
(付記7)
付記1~6のいずれか1つにおいて、好ましくは、
前記判定工程では、前記還元電流値を、予め取得した前記還元可能物質の還元電流値と前記亜硝酸塩の含有量との相関を示す検量線と参照し、前記亜硝酸塩の含有量を定量化する。
【0084】
(付記8)
付記1~7のいずれか1つにおいて、好ましくは、
前記測定工程では、作用電極としてダイヤモンド電極を用いて電気化学的手法により還元を行う。
【0085】
(付記9)
被検査液に含まれる亜硝酸塩を測定する測定装置であって、
前記被検査液について、前記亜硝酸塩との反応により還元可能物質を形成する識別化合物の存在下で、前記亜硝酸塩と前記識別化合物との反応により生成する前記還元可能物質を電気化学的手法により還元し、前記還元可能物質の還元にともなう還元電流を測定する測定部と、
前記測定部での測定結果に基づいて、前記被検査液中における前記亜硝酸塩の有無を判定する判定部と、を備える、
亜硝酸塩の測定装置。
【0086】
(付記10)
付記9において、好ましくは、
前記還元可能物質の還元電流値と前記亜硝酸塩の含有量との相関を示す検量線を記憶する記憶部をさらに備え、
前記判定部は、前記検量線に基づき、前記還元電流値から前記亜硝酸塩の含有量を定量化するよう構成される。
【0087】
(付記11)
付記9又は付記10において、好ましくは、
前記測定部は、
前記被検査液を収容する測定セルと、
前記被検査液に浸漬される電極として少なくとも作用電極および対極と、
前記作用電極の電位を掃引する電位掃引部と、
前記作用電極および前記対極との間に流れる電流を測定する電流測定部と、を備える。
【0088】
(付記12)
付記11において、好ましくは、
前記作用電極がダイヤモンド電極である。
【0089】
(付記13)
亜硝酸塩およびクレアチニンを含む被検査液を準備する準備工程と、
前記被検査液について、前記クレアチニンの存在下で、前記亜硝酸塩と前記クレアチニンとの反応により生成する前記還元可能物質を電気化学的手法により還元し、前記還元可能物質の還元にともなう還元電流値を測定する測定工程と、
前記還元電流値に基づいて、前記被検査液中における前記クレアチニンの有無を判定する判定工程と、を有する、
クレアチニンの測定方法。
【0090】
(付記14)
付記13において、好ましくは、
前記測定工程では、前記クレアチニンが前記亜硝酸塩に対して過剰量となる条件下で前記還元可能物質を生成させる。