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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165283
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】培養システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241121BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20241121BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20241121BHJP
   C12N 1/12 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
C12M1/00 E
C12M1/26
C12M1/34 Z
C12N1/12 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081351
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】木下 翔平
(72)【発明者】
【氏名】塩原 のぞみ
(72)【発明者】
【氏名】町田 賢司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 稔
(72)【発明者】
【氏名】土肥 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 諭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 研介
(72)【発明者】
【氏名】原田 健
(72)【発明者】
【氏名】荒川 結
(72)【発明者】
【氏名】田村 弘
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA07
4B029AA09
4B029BB04
4B029DA01
4B029DF05
4B029FA15
4B029HA05
4B029HA09
4B065AA83X
4B065BC18
4B065CA54
4B065CA60
(57)【要約】      (修正有)
【課題】培養液の液面を検出する水位センサが不要な、微細藻類を培養するための培養システムを提供する。
【解決手段】培養システム10は、培養槽20と、培養槽に培養液Lを供給する供給装置30とを備える。培養槽は、培養液を収容可能な複数個の収容部22を有する。供給装置は、培養液を複数個の収容部に送液する送液装置34と、培養液を複数個の収容部の各々に供給する供給管38とを有する。培養システムは、供給管を開閉可能な第1フロート弁48を有する。第1フロート弁を構成する第1フロート50は、培養液の液面が収容部の深さ方向Xに沿って上昇するにつれて深さ方向の上方に移動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細藻類を培養するための培養槽と、前記培養槽に培養液を供給する供給装置とを備える培養システムであって、
前記培養槽は、前記培養液を収容可能な複数個の収容部を有し、
前記供給装置は、前記培養液を前記複数個の収容部に送液する送液装置と、前記送液装置から送液された前記培養液を前記複数個の収容部の各々に供給する供給管とを有し、
前記培養システムは、前記供給管を開閉可能な第1フロート弁を有し、
前記第1フロート弁を構成する第1フロートは、前記培養液の液面が前記収容部の深さ方向に沿って上昇するにつれて前記深さ方向の上方に移動することで前記供給管を閉塞する、培養システム。
【請求項2】
請求項1記載の培養システムにおいて、前記送液装置は、前記複数個の収容部から前記培養液を回収可能な吸引装置を兼ね、
前記複数個の収容部の各々は、可撓性を示す素材から構成され、
前記培養システムは、回収管と、前記回収管を閉塞可能な第2フロート弁とを有し、
前記第2フロート弁を構成する第2フロートは、前記深さ方向において前記第1フロートよりも上方に位置する、培養システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の培養システムにおいて、前記供給装置は、前記送液装置に接続された基管を有し、前記供給管は、前記基管から分岐して前記複数個の収容部の各々に向かって延びる、培養システム。
【請求項4】
請求項3記載の培養システムにおいて、前記複数個の収容部は、前記基管における前記培養液の流通方向の上流から下流に沿って並び、前記基管における前記流通方向の上流から下流に向かうにつれて、前記基管と、前記複数個の収容部の各々とを接続する前記供給管が個別に分岐する、培養システム。
【請求項5】
請求項1記載の培養システムにおいて、前記培養システムは制御部を備え、前記第1フロートが前記供給管を閉塞した際に前記複数個の収容部の各々に収容された前記培養液を所定量とするとき、前記制御部は、前記複数個の収容部の全てにおいて前記所定量の前記培養液が収容されたと判断した場合に前記送液装置を停止する、培養システム。
【請求項6】
請求項5記載の培養システムにおいて、前記制御部に、前記送液装置による前記培養液の供給を開始してから前記複数個の収容部の全てにおいて前記所定量の前記培養液が収容されるまでの所要時間が予め設定され、
前記制御部は、前記送液装置による前記培養液の供給を開始してからの実経過時間が前記所要時間に一致したときに前記送液装置を停止する、培養システム。
【請求項7】
請求項5記載の培養システムにおいて、前記制御部は、前記送液装置における前記培養液の供給圧力の情報を取得し、前記供給圧力が圧力閾値まで上昇したときに前記送液装置を停止する、培養システム。
【請求項8】
請求項1記載の培養システムにおいて、前記複数個の収容部の各々における容積が互いに略同一であり、且つ前記第1フロートが、前記複数個の収容部の前記深さ方向において互いに同一位置に配置される、培養システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細藻類を培養するための培養システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気候変動の緩和又は影響軽減を目的とした取り組みが継続され、この実現に向けて二酸化炭素の排出量低減に関する研究開発が行われている。この観点から、微細藻類が着目されている。微細藻類は、光合成によって二酸化炭素を消費するからである。従って、微細藻類を培養する培養システムは、気候変動の緩和又は影響軽減に寄与するシステムとして期待されている。
【0003】
培養システムは、培養液を貯留するタンクと、培養液及び微細藻類を収容して微細藻類を培養する収容部と、制御部とを備える。タンクと収容部とは、供給管を介して接続される。供給管には、電磁弁が設けられる。タンクから収容部に培養液を供給する際、収容部における培養液の水位は、特許文献1において従来技術として説明されている水位センサ(液面指示調節計)によって検出される。制御部は、収容部内の培養液の水位に関する情報を取得する。培養液の水位が、制御部に予め入力された水位に到達したとき、制御部は、電磁弁を閉止する制御信号を発信する。
【0004】
培養システムが複数個の収容部を備える場合、上記の構成では、収容部の個数と同じ個数の水位センサ及び電磁弁が必要である。このため、設備投資が高騰する。また、水位センサと制御部とを電気的に接続するケーブルと、電磁弁と制御部とを電気的に接続するケーブルとを設けるので、両ケーブルの配線が煩雑である。
【0005】
水位センサ及び電磁弁を不要とするため、特許文献1に提案されているように、収容部に対して回転可能にU字管を設けることが考えられる。特許文献1によれば、U字管を回転させて鉛直方向に対する傾斜角度を変化させることに基づき、水位センサを用いることなく収容部内に収容される液の水位を変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1-247077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の技術では、作業者の手動操作によってU字管の傾斜角度を変更する必要がある。このため、煩雑である。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、微細藻類を培養するための培養槽と、前記培養槽に培養液を供給する供給装置とを備える培養システムであって、前記培養槽は、前記培養液を収容可能な複数個の収容部を有し、前記供給装置は、前記培養液を前記複数個の収容部に送液する送液装置と、前記送液装置から送液された前記培養液を前記複数個の収容部の各々に供給する供給管とを有し、前記培養システムは、前記供給管を開閉可能な第1フロート弁を有し、前記第1フロート弁を構成する第1フロートは、前記培養液の液面が前記収容部の深さ方向に沿って上昇するにつれて前記深さ方向の上方に移動することで前記供給管を閉塞する、培養システムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上方に移動した第1フロートが供給管を閉塞することで、収容部への培養液の供給を自動的に停止することができる。従って、培養システムにおいて、培養液の液面を検出する水位センサは不要である。これにより、設備投資の低廉化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態に係る培養システムの模式的構成図である。
図2図2は、培養槽を構成する複数個の収容部の全てが空である状態を示す模式的構成図である。
図3図3は、図2に示す状態から収容部に培養液の供給が開始された状態を示す模式的構成図である。
図4図4は、図3に示す状態から最上流の収容部において培養液の供給が終了した状態を示す模式的構成図である。
図5図5は、図1に示す状態から収容部内の培養液の回収を開始した状態を示す模式的構成図である。
図6図6は、図5に示す状態から最上流の収容部において培養液の回収が終了した状態を示す模式的構成図である。
図7図7は、1個の送液装置に複数個の収容部が直接接続された培養システムの模式的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施形態に係る培養システム10の模式的構成図である。この場合、培養システム10は、培養槽20と、供給装置30と、回収装置60とを備える。培養槽20は、複数個の収容部22を有する。図1においては、代表的に、3個の収容部22を示している。以下の説明では、3個の収容部22を容易に区別するため、図1中の最も左に位置する収容部22を第1収容部22aと呼ぶ。また、図1中の中央に位置する収容部22を第2収容部22bと呼び、図1中の最も右に位置する収容部22を第3収容部22cと呼ぶ。
【0013】
ただし、図1に示した構成は単なる例示である。収容部22の個数は、4個以上であってもよい。すなわち、図1における右方にさらに1個以上の収容部22を設けてもよい。又は、第1収容部22a及び第2収容部22bの2個で培養槽20を構成してもよい。しかしながら、以下では、説明を簡素化して理解を容易にするため、第1収容部22a~第3収容部22cについてのみ説明する。
【0014】
第1収容部22a~第3収容部22cの各々は、可撓性を示す素材から構成される。可撓性を示す素材の典型例としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が挙げられる。第1収容部22a~第3収容部22cの各々は、例えば、袋形状物である。第1収容部22a~第3収容部22cは、所定の設置箇所において、不図示の保持フレームに保持される。なお、回収装置60を設けない場合、第1収容部22a~第3収容部22cの各々の素材は、可撓性を示す材料でなくてもよい。この場合、素材は、例えば、プラスチック又はガラスであってもよい。
【0015】
収容部22の底部24から頂部26に向かう方向は、深さ方向Xと定義される。収容部22の深さ方向Xは、例えば、重力方向に略一致する。この場合、重力方向に対する収容部22の深さ方向Xの傾斜角度は、略ゼロである。すなわち、収容部22は直立姿勢である。収容部22の深さ方向Xは、重力方向に対して所定角度で交差してもよい。この場合、収容部22は傾斜姿勢である。
【0016】
典型例では、第1収容部22a~第3収容部22cの容積は互いに略等しい。また、第1収容部22a~第3収容部22cの深さ方向Xは、互いに同一方向である。ただし、第1収容部22a~第3収容部22cの容積は互いに異なっていてもよいし、第1収容部22a~第3収容部22cの深さ方向Xも互いに異なっていてもよい。
【0017】
供給装置30は、貯留タンク32と、往路管33と、双方向流通管44と、送液装置34と、基管36と、供給管38とを有する。貯留タンク32には、培養液Lが貯留されている。培養液Lの典型例は、水である。培養液Lは、窒素、リン及びカリウム等の栄養素を含んでもよい。
【0018】
本実施形態において、送液装置34は双方向ポンプ40から構成される。後述するように、双方向ポンプ40は、供給装置30を構成する送液装置34と、回収装置60を構成する吸引装置62とを兼ねる。
【0019】
貯留タンク32の底部には、往路管33の一端が接続される。往路管33の他端は、双方向流通管44を介して双方向ポンプ40に接続される。双方向流通管44と往路管33との接続箇所Pには、復路管64の一端が接続される。換言すれば、往路管33及び復路管64は、双方向流通管44の一端において分岐している。復路管64の他端は、貯留タンク32の上部に引き回され、該上部において貯留タンク32に接続される。往路管33には、供給弁46が設けられる。復路管64には、回収弁66が設けられる。
【0020】
基管36の一端は、送液装置34に接続される。基管36の他端は、培養槽20に向かって延びる。供給管38は、基管36から分岐して第1収容部22a~第3収容部22cの各々に向かう。以下の説明では、基管36から第1収容部22aに向かって延びる供給管38を第1供給管38aと呼ぶ。また、基管36から第2収容部22bに向かって延びる供給管38を第2供給管38bと呼び、基管36から第3収容部22cに向かって延びる供給管38を第3供給管38cと呼ぶ。
【0021】
第1供給管38aは、基管36から分岐して、頂部26から第1収容部22a内に挿入される。第2供給管38bは、第1供給管38aとは別の箇所で基管36から分岐して、頂部26から第2収容部22b内に挿入される。第3供給管38cは、第1供給管38a及び第2供給管38bとは別の箇所で基管36から分岐して、頂部26から第3収容部22c内に挿入される。
【0022】
貯留タンク32から培養槽20に培養液Lが供給されるとき、基管36内における培養液Lの流通方向は、図1における矢印A方向である。従って、第1収容部22a~第3収容部22cは、培養液Lの供給時における基管36での培養液Lの流通方向の上流から下流となるように並んでいる。すなわち、第1収容部22aが最も上流に位置し、第3収容部22cが最も下流に位置し、第2収容部22bが中流に位置する。以下、培養液Lの流通方向における上流から下流に向かって第1収容部22a~第3収容部22cが並んで基管36に順次接続された構成を、「直列配置」と表現することがある。
【0023】
第1供給管38a~第3供給管38cの各々には、第1フロート弁48が設けられる。第1フロート弁48は、第1フロート50及び第1弁座52を有する。第1フロート50の比重は、培養液Lの比重よりも小さい。培養液Lが水である場合、第1フロート50の比重は、水の比重よりも小さい。従って、第1収容部22a~第3収容部22cに培養液Lが収容されたとき、第1フロート50は、培養液Lの液面に位置する。第1フロート50が最も上昇したとき、第1フロート50は、第1弁座52に当接する。この当接により、第1フロート弁48が閉状態となる。これに伴い、第1供給管38a~第3供給管38cの各々が第1フロート弁48によって閉塞される。
【0024】
これに対し、第1フロート50が第1弁座52から離間しているとき、第1フロート弁48は開状態である。この場合、培養液Lは、第1供給管38a~第3供給管38cを流通することが可能である。
【0025】
以上のように開閉する第1フロート弁48は、逆止弁として機能する。具体的に、第1フロート弁48は、第1供給管38aにおいて、培養液Lが基管36から第1収容部22aに向かって流通することを許容する。その一方で、第1フロート弁48は、第1供給管38aにおいて、培養液Lが第1収容部22aから基管36に向かって流通することを防止する。第2供給管38bに設けられた第1フロート弁48と、第3供給管38cに設けられた第1フロート弁48とについても同様である。
【0026】
回収装置60は、回収管68と、基管36と、吸引装置62と、双方向流通管44と、復路管64と、貯留タンク32とを有する。上記したように、吸引装置62は双方向ポンプ40から構成され、供給装置30を構成する送液装置34を兼ねる。従って、基管36、吸引装置62(双方向ポンプ40)及び貯留タンク32は、供給装置30を構成し且つ回収装置60を構成する。なお、供給装置30と回収装置60とを互いに独立した別個の装置としてもよい。この場合、例えば、送液装置34を一方向ポンプで構成し、且つ吸引装置62を別の一方向ポンプで構成することが可能である。
【0027】
回収管68は、第1供給管38a~第3供給管38cの各々から分岐する。以下、第1供給管38aから分岐した回収管68を第1回収管68aと呼ぶ。同様に、第2供給管38bから分岐した回収管68を第2回収管68bと呼び、第3供給管38cから分岐した回収管68を第3回収管68cと呼ぶ。第1回収管68aは、第1フロート弁48を迂回するように引き回され、第1供給管38aに合流する。第2回収管68b及び第3回収管68cも同様に、第1フロート弁48を迂回するように引き回され、第2供給管38b及び第3供給管38cにそれぞれ合流する。
【0028】
なお、第1回収管68a~第3回収管68cを第1供給管38a~第3供給管38cからそれぞれ分岐させる必要はない。第1供給管38a~第3供給管38cと第1回収管68a~第3回収管68cとは、互いに独立して基管36に接続される別個の配管であってもよい。
【0029】
第1回収管68a~第3回収管68cの各々には、第2フロート弁70が設けられる。第2フロート弁70は、第2フロート72及び第2弁座74を有する。第2フロート72は、第1フロート50よりも上方(高位)に配置される。第1フロート50が最も上昇して第1供給管38a~第3供給管38cが閉塞されたとき、第2フロート72は、第2弁座74に当接した状態で、培養液Lの液面よりも上方に位置する。この場合、第2フロート弁70は閉状態である。
【0030】
第2フロート72は、第1収容部22a~第3収容部22c内の培養液Lが吸引装置62(双方向ポンプ40)に吸引されるとき、第2弁座74から離間する。この場合、第2フロート弁70は開状態である。
【0031】
以上のように開閉する第2フロート弁70は、逆止弁として機能する。具体的に、第2フロート弁70は、第1回収管68aにおいて、培養液Lが基管36から第1収容部22aに向かって流通することを防止する。その一方で、第2フロート弁70は、第1回収管68aにおいて、培養液Lが第1収容部22aから基管36に向かって流通することを許容する。第2回収管68bに設けられた第2フロート弁70と、第3供給管38cに設けられた第2フロート弁70とについても同様である。
【0032】
第1供給管38a及び第1回収管68aの一部は、第1収容部22aから露出する。同様に、第2供給管38b及び第2回収管68bの一部は、第2収容部22bから露出し、第3供給管38c及び第3回収管68cの一部は、第3収容部22cから露出する。第1収容部22a~第3収容部22cの各々の頂部26をシールすることは必須ではないが、シールしてもよい。
【0033】
培養システム10は、制御部80をさらに備える。制御部80は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ(processor)によって構成される。すなわち、制御部80は、処理回路(processing circuitry)によって構成される。制御部80は、供給弁46、回収弁66及び双方向ポンプ40に対して電気的に接続されている。
【0034】
制御部80は、設定部82と、タイマ部84と、比較部86とを含む。設定部82には、空の第1収容部22a~第3収容部22cに培養液Lの供給を開始してから、第1供給管38a~第3供給管38cに設けられた第1フロート弁48が全て閉状態となるまでの所要時間が設定されている。なお、所要時間は、予備試験を行うことで求めることができる。また、設定部82には、双方向ポンプ40の吐出圧に関する圧力閾値が設定されている。
【0035】
タイマ部84は、空の第1収容部22a~第3収容部22cに培養液Lの供給を開始してからの実経過時間を計測する。比較部86は、この実経過時間と、設定部82に設定された上記の所要時間とを比較する。又は、比較部86は、双方向ポンプ40の実吐出圧に関する情報を取得して、この実吐出圧と、設定部82に設定された上記の圧力閾値とを比較する。
【0036】
本実施形態に係る培養システム10は、基本的には以上のように構成される。次に、培養槽20に対して培養液Lを供給するときの培養システム10の作動状況について説明する。
【0037】
図2は、培養槽20に培養液Lが供給される前の状態を示す模式的構成図である。図2では、双方向ポンプ40が停止し、且つ供給弁46及び回収弁66が閉状態である場合を示している。この状況では、貯留タンク32内の培養液Lが双方向流通管44に流通することが防止される。従って、培養液Lが貯留タンク32から第1収容部22a~第3収容部22cに供給されることも防止される。このため、第1収容部22a~第3収容部22cは空である。なお、第1収容部22a~第3収容部22cの各々において、第1フロート弁48は、第1フロート50が第1弁座52から離間した開状態であり、第2フロート弁70は、第2フロート72が第2弁座74に当接した閉状態である。第2フロート72は、重力によって下降し、第2弁座74に当接する。
【0038】
貯留タンク32から第1収容部22a~第3収容部22cに培養液Lを供給する場合、作業者は、入力デバイス(不図示)を介して、制御部80に対して「培養液Lの第1収容部22a~第3収容部22cへの供給を開始する」旨を指示する。例えば、作業者は、供給開始スイッチをONにする。これにより、制御部80は、供給弁46を開状態とし且つ双方向ポンプ40を駆動する。この場合、双方向ポンプ40は送液装置34として機能し、双方向流通管44から基管36に向かって培養液Lを送液する。これにより、培養液Lが、往路管33、双方向流通管44及び双方向ポンプ40を通過して基管36に流入する。制御部80におけるタイマ部84は、送液を開始してからの実経過時間の計測を開始する。
【0039】
培養液Lが基管36に沿って図1及び図2に示す矢印A方向に向かって流通するとき、培養液Lの一部は、第1供給管38aに流入する。第1供給管38aに設けられた第1フロート弁48が開状態であるので、培養液Lは、第1フロート弁48を通過し、図3に示すように、第1収容部22aの内部に排出される。第2フロート弁70が閉状態であるので、培養液Lが第1回収管68aを介して第1収容部22aに供給されることが防止される。
【0040】
第1供給管38aに流入せず基管36内を矢印A方向に向かってさらに流通する培養液Lの一部は、第2供給管38bに流入する。第2供給管38bに設けられた第1フロート弁48が開状態であるので、培養液Lは、第1フロート弁48を通過し、第2収容部22bの内部に排出される。第2フロート弁70が閉状態であるので、培養液Lが第2回収管68bを介して第2収容部22bに供給されることが防止される。
【0041】
第2供給管38bに流入せず基管36内を矢印A方向に向かってさらに流通する培養液Lの一部は、第3供給管38cに流入する。第3供給管38cに設けられた第1フロート弁48が開状態であるので、培養液Lは、第1フロート弁48を通過し、第3収容部22cの内部に排出される。第2フロート弁70が閉状態であるので、培養液Lが第3回収管68cを介して第3収容部22cに供給されることが防止される。
【0042】
培養液Lの流通方向(矢印A方向)における上流から第1収容部22a~第3収容部22cの順序で直列配置した本実施形態では、全ての第1フロート弁48が開状態であるとき、培養液Lは、最上流に位置する第1収容部22a、中流に位置する第2収容部22b、最下流に位置する第3収容部22cの順序で優先的に供給される。すなわち、第1収容部22aにおける培養液Lの単位時間当たりの流入量は、第2収容部22bにおける培養液Lの単位時間当たりの流入量よりも多い。第2収容部22bにおける培養液Lの単位時間当たりの流入量は、第3収容部22cにおける培養液Lの単位時間当たりの流入量よりも多い。
【0043】
以上のような理由から、図3及び図4に示すように、第1収容部22aにおいては、第2収容部22bよりも先に培養液Lの液面が上昇する。同様に、第2収容部22bにおいては、第3収容部22cよりも先に培養液Lの液面が上昇する。
【0044】
従って、図4に示すように、第1収容部22aの第1フロート弁48では、第2収容部22bの第1フロート弁48及び第3収容部22cの第1フロート弁48よりも短時間で、第1フロート50が上昇して第1弁座52に着座する。すなわち、第1収容部22aの第1フロート弁48が閉状態となる。これに伴い、第1収容部22aへの培養液Lの供給が停止される。これに対し、第2収容部22bの第1フロート弁48及び第3収容部22cの第1フロート弁48は未だ開状態である。従って、第2収容部22b及び第3収容部22cへの培養液Lの供給が継続される。
【0045】
上記した理由から、第2収容部22bにおいては、第3収容部22cよりも先に培養液Lの液面が上昇する。従って、第2収容部22bの第1フロート弁48は、第3収容部22cの第1フロート弁48よりも短時間で閉状態となる。これに伴い、第2収容部22bへの培養液Lの供給が停止される。これに対し、第3収容部22cの第1フロート弁48は未だ開状態であるので、第3収容部22cへの培養液Lの供給が継続される。
【0046】
次に、第3収容部22cにおいて培養液Lの液面が上昇し、第1フロート弁48が閉状態となる。その結果、第3収容部22cへの培養液Lの供給が停止されて図1に示す状態となる。以上により、第1供給管38a~第3供給管38cが開放状態から閉塞状態に切り替わる。
【0047】
第1収容部22a~第3収容部22cにおいて、第2フロート弁70は第1フロート弁48よりも上方(高位)に位置する。従って、第1収容部22a~第3収容部22cに培養液Lが供給されるとき、全ての第2フロート弁70は閉状態を保つ。このため、第1回収管68a~第3回収管68cを介して第1収容部22a~第3収容部22cに培養液Lが供給されることが防止される。
【0048】
予備試験において、培養槽20に培養液Lの供給を開始してから、第3収容部22cの第1フロート弁48が閉状態となるまでの所要時間が実測される。設定部82には、この所要時間が予め設定されている。比較部86は、設定部82に設定された所要時間と、タイマ部84によって計測された実経過時間とを比較する。所要時間と実経過時間とが一致したとき、制御部80は、「第1収容部22a~第3収容部22cの各々に所定量の培養液Lが収容された」と判断する。次に、制御部80は、双方向ポンプ40を停止させる。
【0049】
ここで、全ての第1フロート弁48が閉状態となった後、双方向ポンプ40の実吐出圧が上昇する。比較部86は、設定部82に設定された圧力閾値と、双方向ポンプ40の実吐出圧とを比較してもよい。実吐出圧が圧力閾値に到達した場合、制御部80は、「第1収容部22a~第3収容部22cの各々に所定量の培養液Lが収容された」と判断する。次に、制御部80は、双方向ポンプ40を停止させる。
【0050】
所要時間と実経過時間との比較と、圧力閾値と実吐出圧との比較とを同時に実施してもよい。この場合、実経過時間が所要時間に一致するか、又は、実吐出圧が圧力閾値に到達するかのいずれか一方の状況となったときに、制御部80は、双方向ポンプ40を停止させる。以上のようにして培養液Lの培養槽20への供給が終了した後に双方向ポンプ40を速やかに停止することにより、双方向ポンプ40に過剰な負荷が作用することが回避される。また、制御部80は、供給弁46を閉状態に切り替える。
【0051】
培養槽20に培養液Lが収容された後、培養槽20にて微細藻類の培養が実施される。特に図示していないが、培養中は培養槽20にガスが供給され、且つ培養槽20に光が照射される。
【0052】
微細藻類の培養が終了した後、以下のようにして、微細藻類を含んだ培養液Lが培養槽20から回収される。先ず、図1に示す状態において、作業者は、入力デバイスを介して制御部80に対して「第1収容部22a~第3収容部22cから培養液Lの回収を開始する」旨を指示する。例えば、作業者は、回収開始スイッチをONにする。これにより、制御部80は、回収弁66を開状態とし且つ双方向ポンプ40を駆動する。この場合、双方向ポンプ40は吸引装置62として機能し、第1供給管38a~第3供給管38cを介して培養液Lを吸引する。
【0053】
第1供給管38a~第3供給管38cの各々において、第1フロート弁48の第1フロート50は既に上昇し、第1弁座52に当接している。培養槽20からの培養液Lの吸引方向は、第1フロート50を上昇させる方向である。このため、培養槽20から培養液Lが吸引される間、第1フロート50は、図5に示すように第1弁座52に当接した状態を保つ。すなわち、第1フロート弁48は閉状態を維持する。従って、培養液Lが第1フロート弁48を通過することが防止される。
【0054】
その一方で、培養槽20からの培養液Lの吸引方向は、第2フロート72を第2弁座74から上昇させる方向である。従って、第1回収管68a~第3回収管68cの各々において、図5に示すように第2フロート72が第2弁座74から離間し、第2フロート弁70が開状態となる。これに伴い、第1回収管68a~第3回収管68cが閉塞状態から開放状態に切り替わる。その結果、第1収容部22a~第3収容部22cの内部と基管36とが、第1回収管68a~第3回収管68cを介してそれぞれ連通する。
【0055】
従って、第1収容部22a~第3収容部22c内の培養液Lが吸引される。培養液Lは、図5中の矢印Bに沿って基管36を流通した後、双方向流通管44及び復路管64を通過して貯留タンク32に流入する。これにより、培養液Lが微細藻類を含んだ状態で貯留タンク32に回収される。
【0056】
直列配置された第1収容部22a~第3収容部22cにおいて、第1収容部22aが双方向ポンプ40に最近接する。このため、全ての第1フロート弁48が閉状態である場合、培養液Lは、第1収容部22a、第2収容部22b、第3収容部22cの順序で優先的に吸引される。すなわち、第1収容部22aにおける培養液Lの単位時間当たりの吸引量は、第2収容部22bにおける培養液Lの単位時間当たりの吸引量よりも多い。第2収容部22bにおける培養液Lの単位時間当たりの吸引量は、第3収容部22cにおける培養液Lの単位時間当たりの吸引量よりも多い。
【0057】
以上のような理由から、図5及び図6に示すように、第1収容部22aにおいては、第2収容部22bよりも先に培養液Lの吸引が終了する。同様に、第2収容部22bにおいては、第3収容部22cよりも先に培養液Lの吸引が終了する。
【0058】
上記したように、本実施形態では、第1収容部22a~第3収容部22cの素材は可撓性を示す。このため、第1収容部22a~第3収容部22cから培養液Lの回収が進むにつれ、第1収容部22a~第3収容部22cは、大気に押されて潰れる。すなわち、第1収容部22a~第3収容部22cが収縮する。従って、例えば、図6に示すように第1収容部22aにおいて培養液Lの吸引が終了した場合、第1収容部22aの内部は真空状態(負圧)である。また、全ての第1フロート弁48は閉状態を維持している。以上のような理由から、全ての第2フロート弁70が開状態を保った状態であるにも拘わらず、培養液Lが第1回収管68a~第3回収管68cから第1収容部22a~第3収容部22cにそれぞれ戻ることが防止される。
【0059】
この状況において、次に、第2収容部22bに残った培養液Lが、第3収容部22cに残った培養液Lに優先して回収される。第2収容部22bにおいて培養液Lの吸引が終了したとき、第2収容部22bの内部は真空状態である。このため、第2回収管68bにおける第2フロート弁70が開状態を保った状態で、第2収容部22bが大気に押されて潰れた(収縮した)形状となる。
【0060】
この状況において、第3収容部22cに残った培養液Lが回収される。第3収容部22cにおいて培養液Lの吸引が終了したとき、第3収容部22cの内部は真空状態である。このため、第3回収管68cにおける第2フロート弁70が開状態を保った状態で、第2収容部22bが大気に押されて潰れた(収縮した)形状となる。以上により、培養槽20から培養液Lの回収が終了する。
【0061】
予備試験において、培養槽20から培養液Lの回収を開始してから、第3収容部22cが真空状態となるまでの所要時間を実測し、この所要時間を設定部82に設定してもよい。この場合、比較部86は、設定部82に設定された所要時間と、培養槽20からの培養液Lの回収が開始されてからの実経過時間とを比較する。所要時間と実経過時間とが一致したとき、制御部80は、「第1収容部22a~第3収容部22cからの培養液Lの回収が終了した」と判断する。次に、制御部80は、双方向ポンプ40を停止させる。
【0062】
また、設定部82に、双方向ポンプ40の吸引圧に関する圧力閾値を設定してもよい。この場合、比較部86は、設定部82に設定された圧力閾値と、双方向ポンプ40の実吸引圧とを比較する。実吸引圧が圧力閾値に到達した場合、制御部80は、「第1収容部22a~第3収容部22cからの培養液Lの回収が終了した」と判断する。次に、制御部80は、双方向ポンプ40を停止させる。
【0063】
所要時間と実経過時間との比較と、圧力閾値と実吸引圧との比較とを同時に実施してもよい。この場合、実経過時間が所要時間に一致するか、又は、実吸引圧が圧力閾値に到達するかのいずれか一方の状況となったときに、制御部80は、双方向ポンプ40を停止させる。以上のようにして培養液Lの貯留タンク32への回収が終了した後に双方向ポンプ40を速やかに停止することにより、双方向ポンプ40に過剰な負荷が作用することが回避される。また、制御部80は、回収弁66を閉状態に切り替える。
【0064】
本実施形態に係る培養システム10は、以下の効果を奏する。
【0065】
培養システム10は、微細藻類を培養するための培養槽20と、培養槽20に培養液Lを供給する供給装置30とを備える。培養槽20は、培養液Lを収容可能な複数個の収容部22を有する。
【0066】
供給装置30は、培養液Lを複数個の収容部22に送液する送液装置34と、送液装置34から送液された培養液Lを複数個の収容部22の各々に供給する供給管38とを有する。培養システム10は、供給管38を開閉可能な第1フロート弁48を有する。第1フロート弁48を構成する第1フロート50は、培養液Lの液面が収容部22の深さ方向Xに沿って上昇するにつれて深さ方向Xの上方に移動する。上方に移動した第1フロート50が第1弁座52に当接することにより、第1フロート弁48が供給管38を閉塞する。
【0067】
上記したように、複数個の収容部22の各々に培養液Lを供給するとき、培養液Lの液面が上昇するにつれて第1フロート50が上方に移動する。上方に移動した第1フロート50が供給管38を閉塞することで、収容部22において培養液Lの供給が停止される。このように、上記の構成により、培養液Lの液面位置を検出する水位センサを設けることなく、培養液Lの収容部22への供給を自動的に停止することができる。すなわち、培養システム10において、水位センサは不要である。このため、設備投資の低廉化を図ることができる。
【0068】
送液装置34は、微細藻類を含んだ培養液Lを複数個の収容部22から回収可能な吸引装置62を兼ねる。この場合、送液装置34と吸引装置62とを個別に備える培養システムに比べて、構成が簡素化する。
【0069】
ここで、複数個の収容部22の各々は、可撓性を示す素材から構成される。培養システム10は、回収管68と、回収管68を閉塞可能な第2フロート弁70とを有する。第2フロート弁70を構成する第2フロート72は、深さ方向Xにおいて第1フロート50よりも上方に位置する。
【0070】
この構成において、吸引装置62が稼働すると、収容部22から回収管68に培養液Lが流入する。この培養液Lに第2フロート72が押されて上昇することで、該第2フロート72が第2弁座74から離間して第2フロート弁70が開状態となる。従って、培養液Lが回収管68を流通して、貯留タンク32に移動する。収容部22が可撓性を示す素材から構成されているので、培養液Lが収容部22から回収されて収容部22の内部が負圧となることに伴い、収容部22が収縮する。この負圧により、第1フロート弁48が閉状態を保つ。従って、回収管68に流出した培養液Lが、供給管38を介して収容部22に戻ることが回避される。
【0071】
また、負圧によって第2フロート弁70が開状態を保つので、全ての収容部22から培養液Lを回収することが容易である。
【0072】
供給装置30は、送液装置34に接続された基管36を有する。供給管38は、基管36から分岐して複数個の収容部22の各々に向かって延びる。
【0073】
この構成により、1個の送液装置34を用いて全ての収容部22に培養液Lを供給することができる。送液装置34が吸引装置62を兼ねる態様では、1個の送液装置34(吸引装置62)を用いて全ての収容部22から培養液Lを回収することもできる。この構成によれば、複数個の収容部22の各々に送液装置34及び吸引装置62を個別に接続する構成に比べて、設備投資が低廉化する。
【0074】
複数個の収容部22は、培養液Lを収容部22に供給するときの基管36における培養液Lの流通方向(矢印A方向)の上流から下流に沿って並ぶ。基管36における培養液Lの流通方向(矢印A方向)の上流から下流に向かうにつれて、基管36と、複数個の収容部22の各々とを接続する供給管38(第1供給管38a~第3供給管38c)が個別に分岐する。
【0075】
複数個の収容部22が上記のように直列配置された場合、相対的に上流に位置する収容部22では、相対的に下流に位置する収容部22に比べて単位時間当たりに多量の培養液Lが供給される傾向がある。従って、相対的に上流に位置する収容部22では、相対的に下流に位置する収容部22よりも先に、所定量の培養液Lの収容が終了する。その後、相対的に下流に位置する収容部22に、所定量の培養液Lの収容が終了する。
【0076】
図7に示すように、複数個の収容部22が供給管38を介して1個の送液装置34に直接接続される並列配置である場合、複数個の収容部22の各々に1個の送液装置34から同時に培養液Lを供給するので、大きな吐出圧(供給圧力)が必要である。従って、この場合、大型の送液装置34を用いる必要がある。これに対し、図1図6に示す直列配置では、上記のように上流に位置する収容部22(第1収容部22a)から下流に位置する収容部22(第3収容部22c)に培養液Lが順次供給されるので、大型の送液装置34を用いる必要がない。このため、設備投資の低廉化を図ることができる。ただし、本発明は、図7に示す態様を含む。
【0077】
なお、図7に示す態様では、双方向ポンプ40の個数は1個である。しかしながら、双方向ポンプ40の個数を収容部22の個数と同一にしてもよい。
【0078】
培養システム10は制御部80を備える。第1フロート50が供給管38を閉塞した際に複数個の収容部22の各々に収容された培養液Lを所定量とするとき、制御部80は、複数個の収容部22の全てにおいて所定量の培養液Lが収容されたと判断した場合、送液装置34を停止する。
【0079】
このように、制御部80は、全ての第1フロート弁48が閉状態となったと判断したとき、送液装置34を停止する。これにより、送液装置34に過剰な負荷が加わることが回避される。
【0080】
制御部80の設定部82には、例えば、送液装置34による培養液Lの供給を開始してから複数個の収容部22の全てにおいて所定量の培養液Lが収容されるまでの所要時間が予め設定される。制御部80の比較部86は、送液装置34による培養液Lの供給を開始してからの実経過時間が所要時間に一致したとき、送液装置34を停止する。
【0081】
又は、制御部80は、送液装置34における培養液Lの実吐出圧の情報を取得する。制御部80は、設定部82に予め設定された圧力閾値まで実吐出圧が上昇したとき、送液装置34を停止する。
【0082】
上記のいずれか又は双方により、水位センサを用いることなく、送液装置34の停止タイミングを設定することができる。水位センサが不要であるので、培養システム10に係る設備投資の低廉化を図ることができる。
【0083】
複数個の収容部22の各々における容積は、互いに略同一である。第1フロート50は、複数個の収容部22の深さ方向Xにおいて互いに同一位置に配置される。
【0084】
この構成により、複数個の収容部22の各々に対して略同量の培養液Lを供給することができる。このため、複数個の収容部22における培養液Lの貯留量を揃えることが可能である。
【0085】
上述した開示に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0086】
(付記1)
培養システム(10)は、微細藻類を培養するための培養槽(20)と、培養槽に培養液(L)を供給する供給装置(30)とを備える。培養槽は、培養液を収容可能な複数個の収容部(22)を有する。
【0087】
供給装置は、培養液を複数個の収容部に送液する送液装置(34)と、送液装置から送液された培養液を複数個の収容部の各々に供給する供給管(38)とを有する。培養システムは、供給管を開閉可能な第1フロート弁(48)を有する。第1フロート弁を構成する第1フロート(50)は、培養液の液面が収容部の深さ方向(X)に沿って上昇するにつれて前記深さ方向の上方に移動する。この移動に基づき、第1フロート弁が供給管を閉塞する。
【0088】
上記の閉塞に伴い、収容部への培養液の供給が停止される。このように、上記の構成により、培養液の供給を自動的に停止することができる。従って、培養液の液面位置を検出する水位センサは不要である。このため、設備投資の低廉化を図ることができる。
【0089】
(付記2)
付記1に記載の培養システムにおいて、前記送液装置は、前記複数個の収容部から前記培養液を回収可能な吸引装置(62)を兼ねてもよい。前記複数個の収容部の各々は、可撓性を示す素材から構成されてもよい。前記培養システムは、回収管(68)と、前記回収管を閉塞可能な第2フロート弁(70)とを有し、前記第2フロート弁を構成する第2フロート(72)は、前記深さ方向において前記第1フロートよりも上方に位置してもよい。
【0090】
送液装置が吸引装置を兼ねるので、培養システムが送液装置及び吸引装置を個別に備える場合に比べて、構成が簡素化する。
【0091】
また、吸引装置が稼働したとき、収容部から回収管に流入した培養液に第2フロートが押されて上昇する。その結果、第2フロート弁が開状態となる。収容部が可撓性を示す素材から構成されているので、培養液が収容部から抜き出されて収容部の内部が負圧となることに伴って、収容部が収縮する。この負圧によって第1フロート弁が閉状態を保つので、培養液が供給管を介して収容部に戻ることが回避される。しかも、負圧によって第2フロート弁が開状態を保つので、全ての収容部から培養液を回収することが容易である。
【0092】
(付記3)
付記1又は2に記載の培養システムにおいて、前記供給装置は、前記送液装置に接続された基管(36)を有し、前記供給管は、前記基管から分岐して前記複数個の収容部の各々に向かって延びてもよい。
【0093】
この構成により、1個の送液装置を用いて全ての収容部に培養液を供給することができる。送液装置が吸引装置を兼ねる場合、1個の送液装置を用いて全ての収容部から培養液を回収することができる。この場合、複数個の収容部の各々に送液装置及び吸引装置を接続する構成に比べて、設備投資が低廉化する。
【0094】
(付記4)
付記3に記載の培養システムにおいて、前記複数個の収容部は、前記基管における前記培養液の流通方向の上流から下流に沿って並び、前記基管における前記流通方向の上流から下流に向かうにつれて、前記基管と、前記複数個の収容部の各々とを接続する前記供給管が個別に分岐してもよい。
【0095】
複数個の収容部が1個の送液装置に対して個別に接続される場合、送液装置は大きな供給圧力(吐出圧力)を出力する必要がある。従って、この場合、大型の送液装置を用いる必要がある。これに対し、上記のような配置(直列配置)では、上流に位置する収容部から下流に位置する収容部に培養液が順次供給されるので、大型の送液装置を用いる必要がない。このため、設備投資の低廉化を図ることができる。
【0096】
(付記5)
付記1~4のいずれか1つに記載の培養システムにおいて、前記培養システムは制御部(80)を備え、前記第1フロートが前記供給管を閉塞した際に前記複数個の収容部の各々に収容された前記培養液を所定量とするとき、前記制御部は、前記複数個の収容部の全てにおいて前記所定量の前記培養液が収容されたと判断した場合に前記送液装置を停止してもよい。
【0097】
制御部が、全ての第1フロート弁が閉状態となったと判断したときに送液装置を停止するので、送液装置に過剰な負荷が加わることが回避される。
【0098】
(付記6)
付記5に記載の培養システムにおいて、前記制御部に、前記送液装置による前記培養液の供給を開始してから前記複数個の収容部の全てにおいて前記所定量の前記培養液が収容されるまでの所要時間が予め設定され、前記制御部は、前記送液装置による前記培養液の供給を開始してからの実経過時間が前記所要時間に一致したときに前記送液装置を停止してもよい。
【0099】
この構成により、水位センサを用いることなく、送液装置の停止タイミングを設定することができる。水位センサが不要であるので、設備投資の低廉化を図ることができる。
【0100】
(付記7)
付記5又は6に記載の培養システムにおいて、前記制御部は、前記送液装置における前記培養液の供給圧力の情報を取得し、前記供給圧力が圧力閾値まで上昇したときに前記送液装置を停止してもよい。
【0101】
この場合においても、上記と同様に水位センサが不要である。従って、設備投資の低廉化を図ることができる。
【0102】
(付記8)
付記1~7のいずれか1つに記載の培養システムにおいて、前記複数個の収容部の各々における容積が互いに略同一であり、且つ前記第1フロートが、前記複数個の収容部の前記深さ方向において互いに同一位置に配置されてもよい。
【0103】
この構成により、複数個の収容部の各々に対して略同量の培養液を供給することができる。換言すれば、複数個の収容部における培養液の貯留量を揃えることが可能である。
【0104】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0105】
10…培養システム 20…培養槽
22、22a~22c…収容部 30…供給装置
32…貯留タンク 33…往路管
34…送液装置 36…基管
38、38a~38c…供給管 40…双方向ポンプ
44…双方向流通管 46…供給弁
48…第1フロート弁 50…第1フロート
52…第1弁座 60…回収装置
62…吸引装置 64…復路管
66…回収弁 68、68a~68c…回収管
70…第2フロート弁 72…第2フロート
74…第2弁座 80…制御部
82…設定部 84…タイマ部
86…比較部 L…培養液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7