(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165287
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】車両用モータ駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241121BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241121BHJP
H05K 5/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H05K7/20 N
H05K5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081359
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000151209
【氏名又は名称】マーレジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】塚口 剛
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕貴
【テーマコード(参考)】
4E360
5E322
5H770
【Fターム(参考)】
4E360AB14
4E360AB34
4E360CA02
4E360EA03
4E360GA14
4E360GA22
4E360GA29
4E360GB92
4E360GC02
4E360GC08
4E360GC16
5E322AA01
5E322AA03
5E322AA07
5E322AA10
5E322DA04
5E322EA10
5E322FA01
5H770AA21
5H770BA02
5H770PA12
5H770PA13
5H770PA22
5H770PA24
5H770PA28
5H770PA42
5H770QA06
5H770QA28
(57)【要約】
【課題】軽量化と強度の確保を両立して改善する。
【解決手段】車両用モータ駆動制御装置1は、車両を駆動する電気モータの電力を制御するパワーデバイス12と、パワーデバイス12と熱的に接続するようにパワーデバイスの第1面の側に配置されたヒートシンク13と、熱伝導性を有する材料により形成されていて、パワーデバイスの第1面の側とは反対の第2面の側を覆う第1筐体111と、繊維強化樹脂材料により形成されていて、第1筐体よりもパワーデバイスの第1面から第2面に向かう第1方向側から第1筐体を覆う第2筐体112と、第1筐体と第2筐体との間に形成される衝撃吸収部113とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駆動する電気モータの電力を制御するパワーデバイスと、
前記パワーデバイスと熱的に接続するように前記パワーデバイスの第1面の側に配置されたヒートシンクと、
熱伝導性を有する材料により形成されていて、前記パワーデバイスの前記第1面の側とは反対の第2面の側を覆う第1筐体と、
繊維強化樹脂材料により形成されていて、前記第1筐体よりも前記パワーデバイスの前記第1面から前記第2面に向かう第1方向側から前記第1筐体を覆う第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体との間に形成される衝撃吸収部と、
を備える、
車両用モータ駆動制御装置。
【請求項2】
前記衝撃吸収部は、前記第1筐体と前記第2筐体との間に形成される空間である、
請求項1に記載の車両用モータ駆動制御装置。
【請求項3】
前記第2筐体は、前記第1筐体を覆うバスタブ型の筐体本体と、前記筐体本体に形成されている補強リブと、を有する、
請求項1に記載の車両用モータ駆動制御装置。
【請求項4】
前記第1筐体よりも前記パワーデバイスの前記第2面から前記第1面に向かう第2方向側において前記ヒートシンクに冷媒を流通させる流路を形成する流路部を備え、
前記第1筐体は、前記流路部の前記流路において前記冷媒と熱的に接続する、
請求項1に記載の車両用モータ駆動制御装置。
【請求項5】
熱伝導性を有する材料により形成されていて、前記第1筐体よりも前記パワーデバイス寄りの位置において前記第2面の側から前記パワーデバイスを覆うカバーを備える、
請求項1に記載の車両用モータ駆動制御装置。
【請求項6】
前記カバーと熱的に接続する熱伝導部を備える、
請求項5に記載の車両用モータ駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用モータ駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、駆動用や制御用などのさまざまな用途のために電子部品により構成される電子装置が搭載されている。自動車において、動力源の電動化により搭載される電子装置が増加するのに伴い、電子装置に対する軽量化の要求も高まっている。
【0003】
なお、車両に搭載される電子装置において、例えば、ケースとカバーが、それぞれ、別体として構成された内側に配置される金網成形部品と外側に配置される樹脂成形部品とからなる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
動力源が電動化されている自動車には、PCU(Power Control Unit)とも称される、駆動用モータを制御する駆動制御装置が搭載されている。PCUには、筐体の内部に、直流電流を交流電流に変換するインバータの他に、インバータを含むPCUの動作を制御する回路を構成する制御回路基板に各種の電子部品が搭載されている。
【0006】
ところで、PCUは、電子部品の放熱を考慮して、筐体の材料に放熱性の高い材料であるアルミダイカストなどを採用している。
【0007】
しかしながら、上述したように、PCUにおいても、筐体の軽量化に対する要求が高まっている。一方で、軽量化のために、筐体の材料を樹脂に置き換えようとした場合に、樹脂材料のみで構成された筐体によって車両の衝突時における筐体の安全規格の要求を満たそうとすると、重量が増えてしまうという課題がある。また、PCUの筐体には、電磁波シールド性能の要求や電子部品の放熱性能の要求なども求められる。
【0008】
そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、軽量化と強度の確保を両立して改善することができる車両用モータ駆動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用モータ駆動制御装置は、車両を駆動する電気モータの電力を制御するパワーデバイスと、前記パワーデバイスと熱的に接続するように前記パワーデバイスの第1面の側に配置されたヒートシンクと、熱伝導性を有する材料により形成されていて、前記パワーデバイスの前記第1面の側とは反対の第2面の側を覆う第1筐体と、繊維強化樹脂材料により形成されていて、前記第1筐体よりも前記パワーデバイスの前記第1面から前記第2面に向かう第1方向側から前記第1筐体を覆う第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体との間に形成される衝撃吸収部と、を備える。
【0010】
本発明の一態様に係る車両用モータ駆動制御装置において、前記衝撃吸収部は、前記第1筐体と前記第2筐体との間に形成される空間である。
【0011】
本発明の一態様に係る車両用モータ駆動制御装置において、前記第2筐体は、前記第1筐体を覆うバスタブ型の筐体本体と、前記筐体本体に形成されている補強リブと、を有する。
【0012】
本発明の一態様に係る車両用モータ駆動制御装置において、前記第1筐体よりも前記パワーデバイスの前記第2面から前記第1面に向かう第2方向側において前記ヒートシンクに冷媒を流通させる流路を形成する流路部を備え、前記第1筐体は、前記流路部の前記流路において前記冷媒と熱的に接続する。
【0013】
本発明の一態様に係る車両用モータ駆動制御装置において、熱伝導性を有する材料により形成されていて、前記第1筐体よりも前記パワーデバイス寄りの位置において前記第2面の側から前記パワーデバイスを覆うカバーを備える。
【0014】
本発明の一態様に係る車両用モータ駆動制御装置において、前記カバーと熱的に接続する熱伝導部を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、軽量化と強度の確保を両立して改善することができる車両用モータ駆動制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る車両用モータ駆動制御装置の模式的な分解斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る車両用モータ駆動制御装置の断面図である。
【
図3】実施の形態に係る車両用モータ駆動制御装置において第1筐体及び第2筐体の側面部とその周辺部分を示す部分拡大断面図である。
【
図4】実施の形態に係る車両用モータ駆動制御装置において第2筐体の外側から物体が衝突した状態を示す拡大断面図である。
【
図5】実施の形態に係る車両用モータ駆動制御装置における第1筐体及び第2筐体に衝突する物体の移動量と第1筐体及び第2筐体への入力との関係を示す性能線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用モータ駆動制御装置1の模式的な分解斜視図である。
図2は、車両用モータ駆動制御装置1の断面図である。
【0019】
以下、説明の便宜上、
図1から
図2に示す車両用モータ駆動制御装置1における長手方向をx軸方向(左右方向、幅方向)、短手方向をy軸方向(前後方向、奥行方向)、x軸及びy軸の双方と垂直な方向をz軸方向(上下方向、高さ方向)とする。以下の説明において、各構成要素の位置関係や方向を右側、左側、前側、後側、上側、下側として説明するときは、あくまで
図1から
図2など図面における位置関係や方向を示し、実際の車両用モータ駆動制御装置1における位置関係や方向を限定するものではない。
【0020】
図1から
図2に示すように、車両用モータ駆動制御装置1は、主に、筐体11、ヒートシンク13、流路部14、
図2に示すパワーデバイス12を覆うカバー15、及び、下部カバー19を備える。以下、本実施の形態に係る車両用モータ駆動制御装置1について具体的に説明する。
【0021】
図2に示すパワーデバイス12は、車両を駆動する電気モータの電力を制御する。パワーデバイス12は、例えば、半導体材料としてSi(シリコン)やSiC(シリコンカーバイド)を用いた半導体装置である。パワーデバイス12は、具体的には、直流電流と交流電流を相互に変換するインバータとして動作する。パワーデバイス12は、他の電子部品により構成される制御回路とともに、電気モータの作動を制御するPCUを構成する。本実施の形態において、パワーデバイス12は、上下方向における下側の面(下側面121)を第1面とし、上側の面(上側面122)を第2面とする。また、本実施の形態において、下側面121から上側面122に向かう方向、すなわち、上方向を、第1方向とする。さらに、本実施の形態において、上側面122から下側面121に向かう方向、すなわち、下方向を、第2方向とする。
【0022】
ヒートシンク13は、基板部131とフィン132とを有する。
図2に示すように、ヒートシンク13において、基板部131の一方の面である上側面133が、パワーデバイス12における第1面である下側面121に取り付けられている。ヒートシンク13において、フィン132は、冷却対象であるパワーデバイス12と接する面とは反対側の面、すなわち、基板部131の他方の面である下側面134に設けられている。フィン132の数は、1つまたは任意の複数である。フィン132は、基板部131から離れる方向に立つように設けられている。フィン132の形状は、
図2に示すものに限定されない。ヒートシンク13は、パワーデバイス12に取り付けられることにより、パワーデバイス12と熱的に接続している。ヒートシンク13は、例えば、アルミニウム合金などの熱伝導性に優れた材料により形成されている。ヒートシンク13の上側面133とパワーデバイス12の下側面121との間には、スペーサなどの部材が設けられていてもよい。ヒートシンク13の上側面133とパワーデバイス12の下側面121との間には、例えば、熱伝導シートや熱伝導グリスなど、熱伝導性を高めるための部材が設けられていてもよい。
【0023】
流路部14は、上側流路部142と、下側流路部143とにより構成される。流路部14は、上側流路部142の下側の面である上側内壁141と、下側流路部143の上側の面である下側内壁144とが向かい合って相互間に空間を形成する。上側内壁141と下側内壁144とに形成される空間は、LLC(Long Life Coolant)などの冷媒Cをヒートシンク13に流通させる流路として機能する。
【0024】
上側流路部142は、上側にパワーデバイス12、下側にヒートシンク13を設けることができるように構成される。上側流路部142には、熱伝導部16を取り付けた際に、上側及び下側に熱伝導部16が露出するように、上側流路部142を上下方向に貫通する孔が形成されている。下側流路部143は、下側内壁144が設けられている。下側内壁144は、下側流路部143を上側流路部142と組み付けた際に流路を形成するための凹部形状に形成されている。
【0025】
カバー15は、カバー本体151と、接合部152を有する。カバー15は、熱伝導性を有する材料、例えば、アルミニウム合金などの熱伝導性に優れた金属材料により形成されている。カバー15は、ヒートシンク13が設けられているパワーデバイス12の第1面である下側面121の側とは反対の第2面である上側面122の側からパワーデバイス12を覆い、カバー本体151の下側(内側)にあるパワーデバイス12から受熱する。
【0026】
カバー本体151は、上側からパワーデバイス12を覆うことができるように、下側が開放されている箱型の形状を有している。カバー本体151の形状は、箱型に限定されず、パワーデバイス12を上側から覆ってパワーデバイス12の上側からの放熱を受熱することができる形状であればよい。
【0027】
接合部152は、カバー15と熱伝導部16とを接合するために設けられている。接合部152は、カバー本体151の側面の端部に設けられている。接合部152は、流路部14の形状に対応した形状、例えば、幅方向及び奥行方向に平行または略平行な面を有する流路部14と同様に、幅方向及び奥行方向に平行または略平行な面を有していればよい。接合部152には、カバー15を流路部14に取り付けるための取付部材を挿通することができるように構成される。なお、接合部152は、
図2に示すように長手方向に設けられている両方の側面の端部に設けられている例に限定されず、短手方向の側面の端部に設けられていてもよい。
【0028】
熱伝導部16は、ネジなどの取付部材により、カバー15に固定される。熱伝導部16は、熱伝導部本体161と、フィン162とを有する。熱伝導部本体161は、外周面が上側流路部142に設けられている孔に接合するように形成されている。熱伝導部本体161と上側流路部142の孔との間には、接着剤やシーリング材などが充填されていてもよく、O-リングや樹脂製のガスケットなどを用いてシールがされるようにしたのでもよい。熱伝導部本体161の下側には、フィン162が設けられている。
【0029】
フィン162は、熱伝導部本体161から下側に向かって突出している、例えば、1本または複数本のピン状の部材である。フィン162は、熱伝導部16を流路部14に取り付けた状態において、流路部14の上側内壁141から流路に向かって突出している。熱伝導部本体161の上側の面にカバー15の接合部152が取り付けられることにより、熱伝導部16は、カバー15と熱的に接続する。熱伝導部本体161にフィン162が設けられていることにより、熱伝導部16は、流路部14に取り付けた状態において、流路部14の内部において冷媒Cに対してより効率よく熱的に接続する。なお、熱伝導部16におけるフィン162の形状や本数は、本実施の形態に示したものに限定されない。
【0030】
筐体11は、第1筐体111と第2筐体112と衝撃吸収部113とにより構成される。筐体11は、パワーデバイス12の上側面122からカバー15及びパワーデバイス12を覆う。第1筐体111及び第2筐体112は、いずれも、上側からカバー15及びパワーデバイス12を覆うことができるように、下側が開放されている箱型の形状を有している。筐体11は、パワーデバイス12に搭載される電子部品を保護するために、上側流路部142との接合箇所が密封されている防塵構造を採用している。
【0031】
第1筐体111は、アルミニウム合金などの熱伝導性を有する材料により形成されている。第1筐体111は、第2筐体112の内側に設けられていて、パワーデバイス12の上側面122を覆う。
【0032】
第1筐体111は、主に、第1筐体上面部1111、第1筐体側面部1112、及び、ビード1113により構成される。第1筐体111は、第1筐体上面部1111、第1筐体側面部1112、及び、ビード1113が、アルミニウム合金により一体成型されている。第1筐体上面部1111は、第1筐体111の上面、すなわち、x軸方向及びy軸方向に延びる面を構成する平面状または略平面状の部分である。第1筐体側面部1112は、第1筐体111の側面、すなわち、z軸方向及びx軸方向またはz軸方向及びy軸方向に延びる面を構成する平面状または略平面状の部分である。ビード1113は、第1筐体上面部1111及び第1筐体側面部1112の適宜な箇所に設けられている。ビード1113は、必要に応じ、第1筐体111の剛性を向上させるために設けられる。第1筐体側面部1112の下面は、流路部14上面に接続されており第1筐体111は冷媒Cと熱的に接続されるようになっている。
【0033】
第1筐体111の形状は、箱型に限定されず、カバー15に覆われているパワーデバイス12を上側から覆うことができればよい。つまり、第1筐体111の形状は、車両用モータ駆動制御装置1のレイアウト、軽量化の要求に合わせて様々な形状を採用することができる。また、第1筐体111において、ビード1113が設けられていなくてもよい。さらに、第1筐体111の材料は、上述したアルミニウム合金に限定されず、電磁波シールドが最優先であれば銅製、コストが最優先であればスチール製、あるいは、軽量化が最優先であればアルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金製であってもよい。加えて、第1筐体111の材料は、金属製に限定されず、例えば、樹脂製の表面に金属メッキまたは金属フィルムのラミネート加工であってもよい。
【0034】
第2筐体112は、PA6、PA66、PPA、PA46、PA610などのナイロン系、PBT、PPS、変性PPE、PP、フェノール樹脂などの樹脂材料に、ガラス繊維や炭素繊維などの強化繊維を組み合わせた維強化樹脂材料により形成されている。第2筐体112は、第1筐体111の外側に設けられていて、パワーデバイス12の上側面122を直接的に覆っていない。
【0035】
第2筐体112は、主に、第2筐体上面部1121及び第2筐体側面部1122により形成されている筐体本体と、補強リブ1123,1124と、により構成される。第2筐体112は、第2筐体上面部1121、第2筐体側面部1122、及び、補強リブ1123,1124が、繊維強化樹脂材料により、例えば、バスタブ型に一体成型されている。第2筐体上面部1121は、第2筐体112の上面、すなわち、x軸方向及びy軸方向に延びる面を構成する平面状または略平面状の部分である。第2筐体側面部1122は、第2筐体112の側面、すなわち、z軸方向及びx軸方向またはz軸方向及びy軸方向に延びる面を構成する平面状または略平面状の部分である。補強リブ1123,1124は、第2筐体上面部1121及び第2筐体側面部1122の適宜な箇所に設けられている。補強リブ1123,1124は、第2筐体112の剛性を向上させて第2筐体112の変形を抑制するために必要に応じ設けられる。
【0036】
第2筐体112の形状は、第1筐体111と同様に箱型に限定されず、第1筐体111を上側から覆うことができればよい。つまり、第2筐体112の形状は、車両用モータ駆動制御装置1のレイアウト、軽量化の要求に合わせて様々な形状を採用することができる。また、第2筐体112において、補強リブ1123,1124の数や形状は特に限定されず、補強リブ1123,1124が設けられていなくてもよい。
【0037】
衝撃吸収部113は、第1筐体111の外側と第2筐体112の内側との間に形成される。衝撃吸収部113は、例えば、第1筐体111と第2筐体112との間に形成される空間(空気層)である。なお、衝撃吸収部113は、衝撃吸収性をより向上させる場合に衝撃吸収材を注入してもよい。
【0038】
次に、以上説明した車両用モータ駆動制御装置1の作用について説明する。
【0039】
車両用モータ駆動制御装置1では、筐体11の第1筐体111が、熱伝導性を有する金属材料により形成されていてパワーデバイス12の上側面122を覆う。
【0040】
車両用モータ駆動制御装置1などの車両用電子機器においては、電磁波シールド性が求められている。車両用モータ駆動制御装置1は、第1筐体111が、熱伝導性を有する金属材料により形成されていてパワーデバイス12の上側面122を覆うことで、筐体11の内部に収容されるパワーデバイス12などの電子部品の電磁波シールド性を確保することができる。
【0041】
また、車両用モータ駆動制御装置1は、発熱量が大きい半導体装置であるパワーデバイス12からの発熱を、パワーデバイス12の下側面121からヒートシンク13に伝達する経路に加えて、パワーデバイス12の上側面122から第1筐体111に伝達する経路からも放熱することができる。
【0042】
従って、第1筐体111が以上のように構成されることで、車両用モータ駆動制御装置1によれば、パワーデバイス12の電磁波シールド、及び、パワーデバイス12から受熱して放熱を改善することができる。
【0043】
車両用モータ駆動制御装置1では、筐体11の第2筐体112が、繊維強化樹脂材料により形成されていて、第1筐体111の外側を覆っている。第2筐体112は、第1筐体111の外側の面を覆うことで、第1筐体111の剛性を向上させる(補う)ことができる。具体的には、第2筐体112は、車両の衝突時などに筐体11の外部からの物体の突入による衝撃を吸収し、第1筐体111の変形を抑制することができる。
【0044】
図3は、車両用モータ駆動制御装置1において第1筐体111及び第2筐体112の側面部とその周辺部分を示す部分拡大断面図である。
図4は、車両用モータ駆動制御装置1において第2筐体112の外側から物体200が衝突した状態を示す拡大断面図である。
【0045】
図3に示すように、車両の衝突時などの有事に、筐体11の外側から物体200が突入することが想定される。このような場合において、第1筐体111よりも外側に設けられている第2筐体112は、第1筐体111よりも先に物体200に接触する。第2筐体112は、繊維強化樹脂材料により形成されていて、第1筐体111よりも厚肉に形成されている。このため、物体200が突入する場合に、
図3に示す外形線OL1が、
図4に示す外形線OL2まで変形することが許容されている。
【0046】
また、筐体11において、第1筐体111と第2筐体112との間には、衝撃吸収部113が設けられていることにより、車両の衝突時などに筐体11の外部からの物体の突入などによる第2筐体112の変形が、衝撃吸収部113の範囲まで許容される。筐体11の外部からの物体200の突入時に、第2筐体112が変形することと、衝撃吸収部113が設けられていることとにより、筐体11では、物体200が第1筐体111に突入すること及び衝撃が第1筐体111に伝わることを抑制することができる。
【0047】
図5は、車両用モータ駆動制御装置1における第1筐体111及び第2筐体112に衝突する物体200の移動量Aと第1筐体111及び第2筐体112への入力Fとの関係を示す性能線図である。
図5において、縦軸が筐体11への物体200からの入力F[kN]を示し、横軸が物体200の筐体11内側への移動量A[mm]を示す。
【0048】
図5に示すように、筐体11では、物体200からの入力Fの荷重Fiは、第1筐体111の衝撃吸収範囲Z1、すなわち、第1筐体111の内部の領域に入ることなく、第2筐体112の衝撃吸収範囲Z2の領域内で吸収することができる。
【0049】
従って、車両用モータ駆動制御装置1によれば、軽量化と強度の確保を両立して改善することができる。
【0050】
また、
図2に示すように、車両用モータ駆動制御装置1において、車両を駆動する電気モータの電力を制御するパワーデバイス12は、第1面、具体的には下側面121がヒートシンク13と熱的に接続するように配置されている。また、パワーデバイス12は、熱伝導性を有する材料により形成されているカバー15により、第2面、具体的には上側面122が覆われている。カバー15は、熱伝導部16と熱的に接続している。熱伝導部16は、ヒートシンク13を冷却する冷媒Cが流れる流路部14の流路において冷媒Cと熱的に接続する。
【0051】
以上のように構成されることにより、車両用モータ駆動制御装置1は、発熱量が大きい半導体装置であるパワーデバイス12からの発熱を、パワーデバイス12の下側面121からヒートシンク13に伝達する経路に加えて、パワーデバイス12の上側面122からカバー15に伝達する経路からも放熱することができる。熱伝導部16に伝わった熱は、流路部14の流路を流れる冷媒Cに放熱することができる。
【0052】
従って、車両用モータ駆動制御装置1によれば、パワーデバイス12の放熱を改善することができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0054】
例えば、以上説明した車両用モータ駆動制御装置1において、冷媒CがLLCである例について説明したが、冷媒Cの種類はLLCに限定されない。
【0055】
例えば、以上説明した車両用モータ駆動制御装置1において、パワーデバイス12に用いられる半導体材料はSiとSiCである例について説明したが、半導体材料の種類は以上の例に限定されない。
【0056】
例えば、以上説明した車両用モータ駆動制御装置1において、パワーデバイス12がインバータを構成する例について説明したが、パワーデバイスにより構成される機能は以上の例に限定されない。
【符号の説明】
【0057】
1…車両用モータ駆動制御装置、11…筐体、12…パワーデバイス、13…ヒートシンク、14…流路部、15…カバー、16…熱伝導部、19…下部カバー、111…第1筐体、112…第2筐体、113…衝撃吸収部、121…下側面、122…上側面、131…基板部、132…フィン、133…上側面、134…下側面、141…上側内壁、142…上側流路部、143…下側流路部、144…下側内壁、151…カバー本体、152…接合部、161…熱伝導部本体、162…フィン、200…物体、1111…第1筐体上面部、1112…第1筐体側面部、1113…ビード、1121…第2筐体上面部、1122…第2筐体側面部、1123,1124…補強リブ、A…移動量、C…冷媒、F…筐体への入力、Fi…筐体への荷重、OL1,OL2…第2筐体の外形線、Z1…第1筐体の衝撃吸収範囲、Z2…第2筐体の衝撃吸収範囲