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  • 特開-半導体装置およびインバータ装置 図1
  • 特開-半導体装置およびインバータ装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165288
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】半導体装置およびインバータ装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20241121BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01L21/60 301A
H01L21/60 301F
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081362
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】福永 悠
(72)【発明者】
【氏名】竹脇 善朗
(72)【発明者】
【氏名】清水 康貴
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044AA05
5F044AA14
5F044AA18
5F044AA19
5F044AA20
5F044FF09
(57)【要約】
【課題】高い寿命予測精度を実現する半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体チップ1、第1エミッタ電極3、第2エミッタ電極4、第3エミッタ電極5、第1エミッタ配線6、第2エミッタ配線7および複数の第3エミッタ配線8を備える。第1エミッタ配線6は、第1エミッタ電極3と半導体チップ1のエミッタパターン9とを接続している。第2エミッタ配線7は、第2エミッタ電極4と半導体チップ1のエミッタパターン9とを接続している。複数の第3エミッタ配線8は、第3エミッタ電極5と半導体チップ1のエミッタパターン9とを接続している。第2エミッタ配線7の直径は、第1エミッタ配線6の直径および複数の第3エミッタ配線8の各々の直径よりも太い。第1エミッタ配線6は、複数の第3エミッタ配線8から離れた位置に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エミッタパターンを含む半導体チップと、
第1エミッタ電極と、
第2エミッタ電極と、
第3エミッタ電極と、
前記第1エミッタ電極と前記半導体チップの前記エミッタパターンとを接続する第1エミッタ配線と、
前記第2エミッタ電極と前記半導体チップの前記エミッタパターンとを接続する第2エミッタ配線と、
前記第3エミッタ電極と前記半導体チップの前記エミッタパターンとを接続する複数の第3エミッタ配線と、を備え、
前記第2エミッタ配線の直径は、前記第1エミッタ配線の直径および前記複数の第3エミッタ配線の各々の直径よりも太く、
前記第1エミッタ配線は、前記複数の第3エミッタ配線から離れた位置に設けられている、半導体装置。
【請求項2】
前記第1エミッタ配線の直径は、前記複数の第3エミッタ配線の各々の直径よりも細い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記エミッタパターンは、平面視において、前記半導体チップの中央部を含む領域に設けられており、
前記第2エミッタ配線の端部は、前記半導体チップの前記中央部の前記エミッタパターンに接続されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2エミッタ配線は、前記第1エミッタ配線および前記複数の第3エミッタ配線を形成している材料よりも、強度が弱い材料で形成されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記エミッタパターンにそれぞれ接続された前記第1エミッタ配線の端部と前記複数の第3エミッタ配線の端部との間の距離は、前記エミッタパターンにそれぞれ接続された前記複数の第3エミッタ配線のうち隣接する2本の第3エミッタ配線の端部の間の距離よりも長い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1エミッタ配線と前記複数の第3エミッタ配線は、それぞれ、前記エミッタパターンの平面視において、前記エミッタパターンの一方側と、当該一方側に対向する他方側とに配置される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体装置を備えるインバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置およびインバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の寿命を予測するため、半導体装置は寿命モニタ用の配線を備える。特許文献1に記載のパワー半導体モジュールはダミー配線を備え、配線の剥離を予知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-286009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配線劣化による半導体装置の寿命は、メイン配線と寿命モニタ用の配線との電位変化の計測により予測される。しかし、その電位変化はメイン配線の劣化の影響を含むため、精度の良い寿命予測ができない。
【0005】
本開示は、上記の課題を解決するため、高い寿命予測精度を実現する半導体装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置は、半導体チップ、第1エミッタ電極、第2エミッタ電極、第3エミッタ電極、第1エミッタ配線、第2エミッタ配線および複数の第3エミッタ配線を備える。半導体チップは、エミッタパターンを含む。第1エミッタ配線は、第1エミッタ電極と半導体チップのエミッタパターンとを接続している。第2エミッタ配線は、第2エミッタ電極と半導体チップのエミッタパターンとを接続している。複数の第3エミッタ配線は、第3エミッタ電極と半導体チップのエミッタパターンとを接続している。第2エミッタ配線の直径は、第1エミッタ配線の直径および複数の第3エミッタ配線の各々の直径よりも太い。第1エミッタ配線は、複数の第3エミッタ配線から離れた位置に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、高い寿命予測精度を実現する半導体装置が提供される。
【0008】
本開示の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1における半導体装置の構成を示す平面図である。
図2】実施の形態3における半導体装置の構成を示す平面図である。
図3】半導体装置の駆動時の半導体チップにおける発熱分布を示す図である。
図4】実施の形態4における半導体装置の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1における半導体装置101の構成を示す平面図である。
【0011】
半導体装置101は、半導体チップ1、コレクタ電極2、第1エミッタ電極3、第2エミッタ電極4、第3エミッタ電極5、第1エミッタ配線6、第2エミッタ配線7および複数の第3エミッタ配線8を備える。
【0012】
半導体チップ1は、その上面と下面との間に電流が流れる縦型の半導体素子(図示せず)を含む。半導体素子は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。半導体素子は、IGBTおよび還流ダイオードが1つの半導体チップ1に形成されたRC-IGBT(Reverse-Conducting IGBT)であっても良い。半導体チップ1は、例えば、Si等の半導体によって形成されている。半導体は、SiC、GaN、Ga、ダイヤモンド等のいわゆるワイドバンドギャップ半導体であっても良い。実施の形態1における半導体チップ1は、パワー半導体チップである。
【0013】
半導体チップ1は、エミッタパターン9およびコレクタパターン(図示せず)を含む。エミッタパターン9は、半導体チップ1の表面に形成されており、IGBTのエミッタに電気的に接続されている。図1においては、説明を簡単にするため、エミッタパターン9は半導体チップ1の表面の全体に設けられているが、実際にはエミッタパターン9は半導体チップ1の表面における所定の位置に設けられている。コレクタパターンは、半導体チップ1の裏面に形成されており、IGBTのコレクタに電気的に接続されている。エミッタパターン9およびコレクタパターンは、金属で形成されている。コレクタパターンは、接合材(図示せず)を介してコレクタ電極2に接合されている。つまり、半導体チップ1は、コレクタ電極2上に搭載されている。接合材は、導電性を有する。接合材は、例えば、はんだである。
【0014】
コレクタ電極2、第1エミッタ電極3、第2エミッタ電極4および第3エミッタ電極5は、例えば、絶縁部材(図示せず)の表面に形成されている。絶縁部材は、例えば、セラミック基板または放熱板上に設けられた樹脂層である。コレクタ電極2、第1エミッタ電極3、第2エミッタ電極4および第3エミッタ電極5は、金属など導電性材料で形成されている。
【0015】
第1エミッタ配線6は、第1エミッタ電極3と半導体チップ1のエミッタパターン9とを接続している。第2エミッタ配線7は、第2エミッタ電極4と半導体チップ1のエミッタパターン9とを接続している。複数の第3エミッタ配線8は、第3エミッタ電極5と半導体チップ1のエミッタパターン9とを接続している。第1エミッタ配線6および第2エミッタ配線7は、配線の劣化を検出するためのモニタリング用配線である。第3エミッタ配線8は、半導体装置101の主端子(図示せず)に電気的に接続される主配線である。第1エミッタ配線6、第2エミッタ配線7および第3エミッタ配線8は、例えば、金属ワイヤである。
【0016】
第2エミッタ配線7の直径は、第1エミッタ配線6の直径および各第3エミッタ配線8の直径よりも太い。その第2エミッタ配線7の直径は、例えば、500μmである。第1エミッタ配線6および各第3エミッタ配線8の直径は、例えば、300μmである。第2エミッタ配線7と半導体チップ1との接合面積は、各第3エミッタ配線8と半導体チップ1との接合面積よりも広い。
【0017】
このような構成を有する第2エミッタ配線7は、半導体装置101の動作時において、第3エミッタ配線8よりも半導体チップ1との線膨張係数の差異の影響を大きく受ける。第2エミッタ配線7は、第3エミッタ配線8よりも早く破断する。
【0018】
第1エミッタ配線6は、第3エミッタ配線8から離れた位置に設けられている。例えば、エミッタパターン9にそれぞれ接続された第1エミッタ配線6の端部6Aと各第3エミッタ配線8の端部8Aとの間の距離は、エミッタパターン9にそれぞれ接続された隣接する2本の第3エミッタ配線8の端部8Aの間の距離よりも長い。また、第1エミッタ配線6と複数の第3エミッタ配線8とは、エミッタパターンの平面視で対向する一方側と他方側とに、それぞれ配置されている。
【0019】
このような構成を有する第1エミッタ配線6には、第3エミッタ配線8よりも電流が流れにくい。そのため、第1エミッタ配線6は、第3エミッタ配線8よりも劣化しにくい。
【0020】
寿命の予測は、半導体装置101の動作時において半導体装置101が実装されるユニットで行われる。言い換えると、ユニットは、寿命予測機能を有する。そのユニットは、第1エミッタ配線6と第2エミッタ配線7との電位差を計測する。ユニットは、計測値と初期値との差異を比較することで寿命を予測する。
【0021】
以上をまとめると、実施の形態1における半導体装置101は、半導体チップ1、第1エミッタ電極3、第2エミッタ電極4、第3エミッタ電極5、第1エミッタ配線6、第2エミッタ配線7および複数の第3エミッタ配線8を備える。半導体チップ1は、エミッタパターン9を含む。第1エミッタ配線6は、第1エミッタ電極3と半導体チップ1のエミッタパターン9とを接続している。第2エミッタ配線7は、第2エミッタ電極4と半導体チップ1のエミッタパターン9とを接続している。複数の第3エミッタ配線8は、第3エミッタ電極5と半導体チップ1のエミッタパターン9とを接続している。第2エミッタ配線7の直径は、第1エミッタ配線6の直径および複数の第3エミッタ配線8の各々の直径よりも太い。第1エミッタ配線6は、複数の第3エミッタ配線8から離れた位置に設けられている。
【0022】
半導体装置101の動作時において、上記のユニットは、他のエミッタ配線よりも電流が流れにくい第1エミッタ配線6と、他のワイヤよりも劣化しやすい第2エミッタ配線7との電位差を計測する。ユニットは、主配線である第3エミッタ配線8の劣化の影響を受けることなく、配線の劣化の程度を精度良く計測する。半導体装置101は、半導体チップ1の直近のワイヤボンドの品質劣化を精度良く見積もることを可能にし、高い寿命予測精度を実現する。
【0023】
<実施の形態2>
実施の形態2における第1エミッタ配線6の直径は、複数の第3エミッタ配線8の各々の直径よりも細い。また、実施の形態1と同様に、第2エミッタ配線7の直径は、第1エミッタ配線6の直径および各第3エミッタ配線8の直径よりも太い。第1エミッタ配線6の金属ワイヤの直径は、例えば、200μmである。第2エミッタ配線7の金属ワイヤの直径は、例えば、500μmである。第3エミッタ配線8の金属ワイヤの直径は、例えば、300μmである。
【0024】
第1エミッタ配線6と半導体チップ1のエミッタパターン9との接触面積が縮小される。半導体チップ1の小面積化、ひいては半導体装置101の小型化が可能である。
【0025】
<実施の形態3>
図2は、実施の形態3における半導体装置103の構成を示す平面図である。半導体チップ1のエミッタパターン9は、平面視において、半導体チップ1の中央部10を含む領域に設けられている。第2エミッタ配線7の端部7Aは、半導体チップ1の中央部10のエミッタパターン9に接合されている。言い換えると、第2エミッタ配線7とエミッタパターン9との接合位置は、半導体チップ1の中央部10に位置している。
【0026】
図3は、半導体装置103の駆動時の半導体チップ1における発熱分布を示す図である。半導体チップ1の中央部10における発熱量が最も大きく、周縁部にかけて小さくなる。半導体チップ1の中央部10に接合された第2エミッタ配線7は、他の部分に接合された配線に比べて、半導体チップ1との線膨張係数の差異の影響を強く受ける。そのため、第2エミッタ配線7の劣化の確実性が高まる。その結果、寿命の予測精度が向上する。半導体装置103は、配線の破断による故障を予測することを可能にする。
【0027】
<実施の形態4>
図4は、実施の形態4における半導体装置104の構成を示す平面図である。第2エミッタ配線17は、第1エミッタ配線6および第3エミッタ配線8を形成している材料よりも、強度が弱い材料で形成されている。第2エミッタ配線17は、例えばニッケルを含まない純アルミニウムで形成されている。第3エミッタ配線8は、例えば微量のニッケルを含有するアルミニウムで形成されている。
【0028】
このような構成によれば、第2エミッタ配線17は、第3エミッタ配線8に比べて、半導体チップ1との線膨張係数の差異の影響をより大きく受ける。そのため、第2エミッタ配線17は、第3エミッタ配線8よりも早く劣化する。また、半導体装置104に実施の形態3の構成が適用された場合、第2エミッタ配線17の劣化速度がさらに早まる。そのため、寿命の予測精度が向上する。半導体装置104の全体の故障予測が可能である。
【0029】
<実施の形態5>
実施の形態5におけるインバータ装置は、実施の形態1から4のうちいずれかに示された半導体装置を搭載する。インバータ装置は、内蔵する半導体装置の劣化診断、寿命予測を行うことができる。
【0030】
本開示は、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0031】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0032】
(付記1)
エミッタパターンを含む半導体チップと、
第1エミッタ電極と、
第2エミッタ電極と、
第3エミッタ電極と、
前記第1エミッタ電極と前記半導体チップの前記エミッタパターンとを接続する第1エミッタ配線と、
前記第2エミッタ電極と前記半導体チップの前記エミッタパターンとを接続する第2エミッタ配線と、
前記第3エミッタ電極と前記半導体チップの前記エミッタパターンとを接続する複数の第3エミッタ配線と、を備え、
前記第2エミッタ配線の直径は、前記第1エミッタ配線の直径および前記複数の第3エミッタ配線の各々の直径よりも太く、
前記第1エミッタ配線は、前記複数の第3エミッタ配線から離れた位置に設けられている、半導体装置。
【0033】
(付記2)
前記第1エミッタ配線の直径は、前記複数の第3エミッタ配線の各々の直径よりも細い、付記1に記載の半導体装置。
【0034】
(付記3)
前記エミッタパターンは、平面視において、前記半導体チップの中央部を含む領域に設けられており、
前記第2エミッタ配線の端部は、前記半導体チップの前記中央部の前記エミッタパターンに接続されている、付記1または付記2に記載の半導体装置。
【0035】
(付記4)
前記第2エミッタ配線は、前記第1エミッタ配線および前記複数の第3エミッタ配線を形成している材料よりも、強度が弱い材料で形成されている、付記1から付記3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0036】
(付記5)
前記エミッタパターンにそれぞれ接続された前記第1エミッタ配線の端部と前記複数の第3エミッタ配線の端部との間の距離は、前記エミッタパターンにそれぞれ接続された前記複数の第3エミッタ配線のうち隣接する2本の第3エミッタ配線の端部の間の距離よりも長い、付記1から付記4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0037】
(付記6)
前記第1エミッタ配線と前記複数の第3エミッタ配線は、それぞれ、前記エミッタパターンの平面視において、前記エミッタパターンの一方側と、当該一方側に対向する他方側とに配置される、付記1から付記5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0038】
(付記7)
付記1から付記6のいずれか1項に記載の半導体装置を備えるインバータ装置。
【符号の説明】
【0039】
1 半導体チップ、2 コレクタ電極、3 第1エミッタ電極、4 第2エミッタ電極、5 第3エミッタ電極、6 第1エミッタ配線、6A 端部、7 第2エミッタ配線、7A 端部、8 第3エミッタ配線、8A 端部、9 エミッタパターン、10 中央部、17 第2エミッタ配線、101 半導体装置、103 半導体装置、104 半導体装置。
図1
図2
図3
図4