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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165289
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】遮蔽機構
(51)【国際特許分類】
   G21F 3/00 20060101AFI20241121BHJP
   G21F 7/005 20060101ALI20241121BHJP
   G21C 13/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G21F3/00 S
G21F7/005
G21C13/02 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081363
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小迫 和明
(72)【発明者】
【氏名】能任 琢真
(57)【要約】
【課題】遮蔽扉を備えた放射線利用施設の開口部に設けられる、遮蔽扉を閉じたときには遮蔽扉と床面の間の隙間が遮蔽可能とされ、遮蔽扉を開いたときにはスムーズにストレッチャーや人が通過可能とされる、遮蔽機構を提供する。
【解決手段】放射線利用施設の出入口の開口部1を遮蔽扉4により開閉自在に遮蔽し、遮蔽扉4と床面の間の隙間10を遮蔽する遮蔽機構であって、遮蔽扉4の開放状態では開口部1の床面と面一の状態で保持され、遮蔽扉4の閉塞状態では放射線利用施設の内部側から回転軸13を中心に遮蔽扉4側に回転させて起立状態にし、隙間10を覆う床下遮蔽板12を、開口部1の遮蔽扉4側の床下に設ける。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線利用施設の出入口の開口部を遮蔽扉により開閉自在に遮蔽し、前記遮蔽扉と床面の間の隙間を遮蔽する遮蔽機構であって、
前記遮蔽扉の開放状態では前記開口部の床面と面一の状態で保持され、前記遮蔽扉の閉塞状態では前記放射線利用施設の内部側から回転軸を中心に前記遮蔽扉側に回転させて起立状態にし、前記隙間を覆う床下遮蔽板を、前記開口部の前記遮蔽扉側の床下に設けたことを特徴とする遮蔽機構。
【請求項2】
前記床下遮蔽板は、前記遮蔽扉側の床下に形成された凹部に設けられ、
前記回転軸は、前記凹部内において前記床下遮蔽板の遮蔽扉側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の遮蔽機構。
【請求項3】
前記床下遮蔽板は、前記遮蔽扉が開放状態のとき、ゴムマットを介して前記開口部の床面に面一で保持されることを特徴とする請求項2に記載の遮蔽機構。
【請求項4】
前記開口部の床面であって前記遮蔽扉の下面側に遮蔽角柱を埋設し、該遮蔽角柱の上面は前記開口部の床面と面一であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の遮蔽機構。
【請求項5】
前記床下遮蔽板は、ガンマ線とX線との放射線遮蔽時には、鋼板フレーム内に鉛遮蔽ブロックを収納し、中性子を含む放射線遮蔽時には、鋼板フレーム内に鉛遮蔽ブロックとポリエチレン板とを収納することを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の遮蔽機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮蔽扉を備えた放射線利用施設の出入口となる開口部における簡易な構成の遮蔽機構に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用リニアック室などの放射線利用施設では、照射室などの出入口を放射線の外部漏洩を防ぐ遮蔽構造とすることが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、放射線を放出する放射線発生装置を収容する放射線遮蔽壁からなる収容室と、この収容室の出入口と、放射線発生装置からの放射線が出入口に直接到達することを防ぐために収容室内において出入口の近傍に設けられた迷路とを備える放射線遮蔽構造が開示されている。この特許文献1では、照射室などの出入口に放射線の外部漏洩を防ぐ遮蔽扉を設置している。
【0004】
この遮蔽扉は、一般に、ガンマ線とX線の遮蔽材としては鉛板または鉄板、中性子の遮蔽材としてはボロン入りポリエチレンが使用され、それらを扉枠の鋼板で覆う構造とされているため重量物となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-179851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、照射室などの出入口は、患者を載せたストレッチャーが大きな振動なくスムーズに出入りできることが求められる。このため、遮蔽扉は、床面に凹凸が形成されることを避けるため、上吊り式とされ、扉下面と床面との間に隙間を設けて摩擦が生じないように、つまり床面に接触しないように取り付けることが考えられる。
【0007】
しかしながら、照射室などの出入口において、ストレッチャーがスムーズに移動可能とすると、遮蔽扉の下方において、床面との間に隙間が生じ、遮蔽扉が重量物であることも相まって、遮蔽扉と床面の間の隙間を小さくすることは難しかった。この結果、照射室などの出入口において、ストレッチャーをスムーズに移動可能とすると、放射線の遮蔽性能が低下してしまい、両立させることはできなかった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、遮蔽扉を備えた放射線利用施設の開口部に設けられる、遮蔽扉を閉じたときには遮蔽扉と床面の間の隙間が遮蔽可能とされ、遮蔽扉を開いたときにはスムーズにストレッチャーや人が通過可能とされる、遮蔽機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、放射線利用施設の出入口の開口部を遮蔽扉により開閉自在に遮蔽し、前記遮蔽扉と床面の間の隙間を遮蔽する遮蔽機構であって、前記遮蔽扉の開放状態では前記開口部の床面と面一の状態で保持され、前記遮蔽扉の閉塞状態では前記放射線利用施設の内部側から回転軸を中心に前記遮蔽扉側に回転させて起立状態にし、前記隙間を覆う床下遮蔽板を、前記開口部の前記遮蔽扉側の床下に設けたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の発明において、前記床下遮蔽板は、前記遮蔽扉側の床下に形成された凹部に設けられ、前記回転軸は、前記凹部内において前記床下遮蔽板の遮蔽扉側に設けられることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記床下遮蔽板は、前記遮蔽扉が開放状態のとき、ゴムマットを介して前記開口部の床面に面一で保持されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の発明において、前記開口部の床面であって前記遮蔽扉の下面側に遮蔽角柱を埋設し、該遮蔽角柱の上面は前記開口部の床面と面一であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記の発明において、前記床下遮蔽板は、ガンマ線とX線との放射線遮蔽時には、鋼板フレーム内に鉛遮蔽ブロックを収納し、中性子を含む放射線遮蔽時には、鋼板フレーム内に鉛遮蔽ブロックとポリエチレン板とを収納することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、遮蔽扉を備えた放射線利用施設の開口部に設けられる、遮蔽扉を閉じたときには遮蔽扉と床面の間の隙間が遮蔽可能とされ、遮蔽扉を開いたときにはスムーズにストレッチャーや人が通過可能とされる、遮蔽機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本実施の形態である遮蔽機構の遮蔽扉が開いた時の状態を示す平面図である。
図2図2は、図1に示した遮蔽機構のA-A線断面図である。
図3図3は、遮蔽機構の遮蔽扉4が閉じた時の状態を示す平面図である。
図4図4は、図3に示した遮蔽機構のB-B線断面図である。
図5図5は、床下遮蔽板の駆動範囲を示す図である。
図6図6は、ガンマ線とX線との遮蔽時の床下遮蔽板の構成を示す図である。
図7図7は、中性子を含む放射線の遮蔽時の床下遮蔽板の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態である遮蔽機構の遮蔽扉4が開いた時の状態を示す平面図である。また、図2は、図1に示した遮蔽機構のA-A線断面図である。また、図3は、遮蔽機構の遮蔽扉4が閉じた時の状態を示す平面図である。また、図4は、図3に示した遮蔽機構のB-B線断面図である。なお、Z方向は鉛直方向であり、X方向及びY方向は水平方向であり、+Z方向が鉛直上方である。
【0018】
図1図4に示すように、遮蔽扉4は、放射線利用施設100の出入口通路である矩形の開口部1を閉塞及び開放を行う。開口部1は常に開いており、図1及び図2では、遮蔽扉4により開口部1が閉塞されている状態(閉塞状態)を示しており、図3及び図4では、遮蔽扉4が開口部1から退避して開口部1を通過可能に開放している状態(開放状態)を示している。開口部1は、±Y方向の両側面及び+Z方向の上面がコンクリート壁2により形成され、-Z方向の下面がコンクリート遮蔽床3により形成されている。遮蔽扉4は、上吊り式の電動開閉機構を持ち、±Y方向に移動する電動扉である。したがって、遮蔽扉4が閉塞状態でも、遮蔽扉4の下面とコンクリート遮蔽床3の上面との間には、隙間10が形成される。
【0019】
開口部1の下面を形成するコンクリート遮蔽床3の遮蔽扉4側には、床下遮蔽板12を収納する凹部3aが形成される。図1に示すように、床下遮蔽板12は、幅(±Y方向)が開口部1の幅(±Y方向)にほぼ等しく、図4に示すように、回転軸13を中心に回転したとき、奥行き(±Z方向の高さ)が隙間10を塞ぐ長さになっている。
【0020】
図2に示すように、床下遮蔽板12は、遮蔽扉4が開放状態のとき、開口部1を形成するコンクリート遮蔽床3の床面と面一の状態に保持し、開口部1での段差が生じないようにしている。これにより、床下遮蔽板12は、遮蔽扉4が開放状態のとき、凹部3aに格納されており、ストレッチャーの走行や人の歩行に支障がない平坦な床面を形成する。
【0021】
一方、図4に示すように、床下遮蔽板12は、遮蔽扉4が閉塞状態のとき、放射線利用施設100の内部側から、回転軸13を中心に遮蔽扉4側に回転されて+Z方向に起立状態になり、遮蔽扉4の下面とコンクリート遮蔽床3との間の隙間10を覆う。これにより、隙間10を介した放射線の漏洩を抑えることができる。なお、起立した床下遮蔽板12と遮蔽扉4の内面とは密着している必要はなく、数cmから5cm程度の隙間は許容される。
【0022】
回転軸13は、±Y方向に延び、凹部3a内において床下遮蔽板12の遮蔽扉4側に設けられる。したがって、床下遮蔽板12が回転したとき、床下遮蔽板12は、隙間10に近接する。床下遮蔽板12の他端(-Y方向)下部は、ゴムマット14を介して保持され、コンクリート遮蔽床3の床面と、床下遮蔽板12の上面とは面一に保持される。床下遮蔽板12は、遮蔽扉4が開放状態のときに、回転軸13とゴムマット14とによって支えられ、ゴムマット14によって振動等が吸収される。なお、回転軸13は、図示しない電動機構により駆動され、床下遮蔽板12を起立状態(YZ平面に平行な状態)と収納状態(XY平面に平行な状態)とに切り替える。なお、+Z方向は鉛直上方の方向である。また、この床下遮蔽板12の駆動は、遮蔽扉4の閉塞及び退避(開放)の駆動に連動させるとよい。
【0023】
遮蔽扉4の下面に対向するコンクリート遮蔽床3には遮蔽角柱11が埋設される。遮蔽角柱11の上面は、開口部1の床面に面一となる。遮蔽角柱11の横幅(±Y方向)は、開口部1の幅(±Y方向)を塞ぐ長さである。したがって、隙間10のみから放射線が漏洩することになり、このとき、床下遮蔽板12が起立状態となって、隙間10を覆うことになる。
【0024】
図5に示すように、床下遮蔽板12は、遮蔽扉4が閉塞状態になると、回転軸13を中心に、XY平面に平行な水平状態(0度)からYZ平面に平行な起立状態(90度)に駆動される。回転軸13は、上記のように、床下遮蔽板12の遮蔽扉4側に取り付けられるが、端部には設置しない。回転軸13よりも遮蔽扉4側にある床下遮蔽板12は、床下遮蔽板12を設置するためのコンクリート遮蔽床3の空洞部分(凹部3a)による遮蔽欠損を補い、かつ、コンクリート遮蔽床3を介した漏洩を低減する役割を持つ。凹部3aは、床下遮蔽板12が0度と90度との間の回転に対応して短手側回転円R1の深さを持たせればよい。また、床下遮蔽板12の±X方向の各端部は、それぞれ短手側回転円R1及び長手側回転円R2の軌道が凹部3aの側面に接触しないようにする。なお、凹部3aにおけるコンクリート遮蔽床3と床下遮蔽板12との間の間隙を小さくするため、コンクリート遮蔽床3の±X方向の側面に、短手側回転円R1及び長手側回転円R2の軌道にそれぞれ対応した凹部を形成するようにしてもよい。
【0025】
床下遮蔽板12のZ方向の高さ(X方向の奥行き)は、約15cmを標準とするが、遮蔽扉4との間隙が広目であればそれに応じて20cm以上とする。床下遮蔽板12の厚さは、室内の放射線源の強度に比例するが、約4cm厚を基準にして強度が強い場合にはさらに厚くする必要がある。床下遮蔽板12の±Y方向の幅は、開口部1に対して遮蔽扉4が面する幅に合わせるが、開口部1の側壁(コンクリート壁2)に密着させる必要はなく、1~2cm程度のクリアランスを確保する。回転軸13を回転させる機構を取り付けるために必要なクリアランスが大きくならないように配置しなければならない。
【0026】
図6に示すように、床下遮蔽板12は、ガンマ線とX線との遮蔽時には鋼板フレーム21内に鉛遮蔽ブロック22を収納する。一方、図7に示すように、中性子を含む放射線の遮蔽時の床下遮蔽板12´は、鋼板フレーム21内に鉛遮蔽ブロック32とポリエチレン板33を収納する。なお、中性子遮蔽用のポリエチレン板33は、通常のポリエチレンでも良いが、遮蔽性能を高めるために10%ボロン入りポリエチレンを使用するとよい。また、いずれも、鋼板フレーム21の上面の厚さd1は、ストレッチャーの走行や人の歩行時の衝撃と荷重に耐えられる強度を持つ厚さとする。また、鋼板フレーム21の側面の厚さd2及び下面の厚さd3は、鉛遮蔽ブロック22,32やポリエチレン板33を保持できる厚さとする。
【0027】
これにより、本実施の形態では、遮蔽扉4とコンクリート遮蔽床3との隙間10からの漏洩線量を十分に低減できる。また、重量の大きな遮蔽扉4の下面に突起物などを取り付ける必要もなくなり、簡易な構成とすることができる。また、遮蔽扉4を開放状態にしたときにストレッチャーや人の通過をスムーズに行うことができる。さらに、ガンマ線やX線と中性子の漏洩線量に対応する遮蔽構造とすることができる。
【0028】
なお、上記の実施の形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置及び構成要素の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 開口部
2 コンクリート壁
3 コンクリート遮蔽床
3a 凹部
4 遮蔽扉
10 隙間
11 遮蔽角柱
12,12´ 床下遮蔽板
13 回転軸
14 ゴムマット
21 鋼板フレーム
22,32 鉛遮蔽ブロック
33 ポリエチレン板
100 放射線利用施設
R1 短手側回転円
R2 長手側回転円
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7