(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165296
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】翼加振装置および振動試験装置
(51)【国際特許分類】
G01M 7/02 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
G01M7/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081379
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】小野里 直樹
(72)【発明者】
【氏名】工藤 敏文
(57)【要約】
【課題】翼加振装置および振動試験装置において、高周波の大きな加振力を確保する。
【解決手段】回転する翼に向けて圧力変動を放射することで翼を加振する翼加振装置において、気体供給源と、基端部が気体供給源に連結される気体供給経路と、気体供給経路の先端部に連結される加振ノズルと、気体供給経路に設けられるロータリバルブと、ロータリバルブを駆動する駆動装置とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する翼に向けて圧力変動を放射することで前記翼を加振する翼加振装置において、
気体供給源と、
基端部が前記気体供給源に連結される気体供給経路と、
前記気体供給経路の先端部に連結される加振ノズルと、
前記気体供給経路に設けられるロータリバルブと、
前記ロータリバルブを駆動する駆動装置と、
を備える翼加振装置。
【請求項2】
前記翼の回転位置を検出する回転検出器と、前記回転検出器の検出結果に基づいて前記駆動装置を制御する制御装置とを備える、
請求項1に記載の翼加振装置。
【請求項3】
前記駆動装置は、モータであり、前記制御装置は、前記回転検出器の検出結果に基づいて前記モータの回転数を制御する、
請求項2に記載の翼加振装置。
【請求項4】
前記翼は、回転軸の外周部に周方向に間隔を空けて複数設けられ、前記加振ノズルは、前記翼の回転方向に間隔を空けて複数設けられ、前記制御装置は、前記回転検出器の検出結果に基づいて前記駆動装置を制御することで、複数の前記加振ノズルからの圧力変動の放射時期を調整する、
請求項2または請求項3に記載の翼加振装置。
【請求項5】
前記制御装置は、複数の前記加振ノズルの位置に応じた位相差をもって前記駆動装置を制御する、
請求項4に記載の翼加振装置。
【請求項6】
前記ロータリバルブは、弁体の一方向の回転により、前記気体供給経路を開放する開放位置と、前記開放位置より小さい開口面積をもって前記気体供給経路を閉止する閉止位置とを交互に移動する、
請求項1に記載の翼加振装置。
【請求項7】
請求項1に記載の翼加振装置と、
前記翼の振動を計測する振動計測装置と、
を備える振動試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、翼加振装置および振動試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転機械としての産業用タービンは、ケーシングと、ロータと、静翼と、動翼とを備える。ケーシングは、内部に複数の静翼が軸方向に間隔を空けて固定されると共に、ロータが回転自在に支持され、ロータに複数の動翼が軸方向に間隔を空けて固定される。静翼と動翼は、軸方向に交互に配置される。振動試験装置は、翼加振装置と、計測装置とを有する。翼加振装置は、回転する動翼を加振し、計測装置は、加振による動翼の振動を計測する。このような翼加振装置として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の翼振動装置は、動翼に空気を吹き付けて動翼を加振している。この場合、加振ノズルに配管を介してエアー源を連結すると共に、配管に電磁弁を設けている。そして、電磁弁を作動して配管を開閉することで、エアー源の空気を加振ノズルから動翼に向けて吹き付けることで、動翼を加振している。ところで、空気を吹き付けることで動翼を加振する場合、大きな加振力と高周波での加振が必要となる。しかし、従来の翼振動装置は、空気の供給と停止を電磁弁の作動により行っていることから応答性が低く、高周波での加振により大きな加振力を確保することが困難になるという課題がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、高周波の大きな加振力を確保することが可能な翼加振装置および振動試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の翼加振装置は、回転する翼に向けて圧力変動を放射することで前記翼を加振する翼加振装置において、気体供給源と、基端部が前記気体供給源に連結される気体供給経路と、前記気体供給経路の先端部に連結される加振ノズルと、前記気体供給経路に設けられるロータリバルブと、前記ロータリバルブを駆動する駆動装置と、を備える。
【0007】
また、本開示の振動試験装置は、前記翼加振装置と、前記翼の振動を計測する振動計測装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の翼加振装置および振動試験装置によれば、高周波の大きな加振力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態の翼加振装置を備える振動試験装置を表す概略構成図である。
【
図2】
図2は、ロータリバルブを表す概略図である。
【
図3】
図3は、ロータリバルブの作動を表す概略図である。
【
図4】
図4は、ロータリバルブの変形例を表す概略図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態の翼加振装置を備える振動試験装置を表す概略構成図である。
【
図6】
図6は、翼加振装置を表す配置構成図である。
【
図7】
図7は、翼加振装置による加振時期を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0011】
[第1実施形態]
<振動試験装置>
図1は、第1実施形態の翼加振装置を備える振動試験装置を表す概略構成図である。
【0012】
図1に示すように、振動試験装置10は、回転機械の動翼を加振して振動を計測するものである。本実施形態にて、回転機械は、産業用タービン100を適用する。産業用タービン100は、ロータ(回転軸)101と、タービンディスク102と、複数の動翼103とを有する。ロータ101は、ケーシング(図示略)に軸心O1を中心として駆動回転可能に支持される。タービンディスク102は、円板形状をなし、ロータ101の外周部に固定される。複数の動翼103は、タービンディスク102の外周部に周方向に間隔(均等間隔)を空けて固定される。
【0013】
振動試験装置10は、翼加振装置11と、振動計測装置12とを備える。
【0014】
翼加振装置11は、回転する動翼103に向けて気体(例えば、空気)噴出に伴った圧力変動を放射することで、動翼103を加振する。振動計測装置12は、翼加振装置11により加振された動翼103の振動を計測する。振動計測装置12は、例えば、動翼103に装着された歪ゲージである。但し、振動計測装置12は、歪ゲージに限るものではなく、例えば、レーザ計測装置であってもよい。
【0015】
振動試験装置10は、タービン車室の内部を真空状態とし、所定温度以下に維持する。まず、翼加振装置11は、回転している動翼103に対して気体を吹き付け、気流を乱すことで動翼103を加振し、動翼103に対して1次モードや2次モードの振動を発生させる。次に、振動計測装置12は、翼加振装置11により加振された動翼103における先端部の振動を計測する。
【0016】
<翼加振装置>
翼加振装置11は、気体供給源21と、気体供給経路22と、加振ノズル23と、ロータリバルブ24と、駆動装置25とを備える。
【0017】
気体供給源21は、例えば、ポンプであり、気体を所定圧力の高圧気体に加圧して供給可能である。気体供給経路22は、例えば、配管であり、円形状の流路を有する。気体供給経路22は、基端部が気体供給源21に連結され、基端部から先端部に向けて高圧気体流す。気体供給経路22は、気体供給源21側から減圧弁31、圧力計32、開閉弁(電磁弁)33が順に装着される。減圧弁31は、気体供給源21から供給された高圧気体を、動翼103を加振するために必要な加振圧力に調整する。圧力計32は、減圧弁31により減圧された加振気体(高圧気体)の圧力を計測する。開閉弁33は、気体供給経路22を開閉することで、気体供給経路22の先端部側へ加振気体の供給および停止を行う。
【0018】
加振ノズル23は、気体供給経路22の先端部に連結される。加振ノズル23は、動翼103の先端部に対向する位置に配置される。動翼103は、複数設けられ、回転することから、加振ノズル23は、回転する複数の動翼103のいずれか1つの動翼103の先端部に対向することとなる。加振ノズル23は、気体供給経路22から供給された加振気体を動翼103の先端部に向けて噴出する。
【0019】
ロータリバルブ24は、気体供給経路22に設けられる。ロータリバルブ24は、気体供給経路22を開閉可能である。ロータリバルブ24は、後述する弁体24a(
図2参照)を有し、弁体24aにより気体供給経路22を開閉可能である。駆動装置25は、ロータリバルブ24を駆動可能である。駆動装置25は、例えば、モータであり、駆動回転可能な出力軸25aを有する。ロータリバルブ24は、弁体24aの回転軸24bを有する。駆動装置25は、出力軸25aがカップリング34を介してロータリバルブ24における弁体24aの回転軸24bに連結される。
【0020】
翼加振装置11は、制御装置40を有する。制御装置40は、駆動装置25と減圧弁31と圧力計32と開閉弁33が接続される。制御装置40は、圧力計32により計測された加振気体の圧力が入力される。制御装置40は、加振気体の圧力が所定圧力になるように減圧弁31の開度を制御する。また、制御装置40は、動翼103の振動試験を開始するときに、開閉弁33を開放し、動翼103の振動試験を終了するときに、開閉弁33を閉止する。
【0021】
また、翼加振装置11は、回転検出器26を有する。回転検出器26は、ロータ101およびタービンディスク102を介して動翼103の回転数を検出すると共に、動翼103の回転位置を検出する。制御装置40は、回転検出器26により検出された動翼103の回転数(回転位置)が入力される。制御装置40は、予め設定された動翼103を加振するためのプログラムおよび回転検出器26の検出結果に基づいて駆動装置25を制御し、ロータリバルブ24を開閉動作させる。具体的に、制御装置40は、回転検出器26の検出結果に基づいて駆動装置25を構成するモータの回転数を調整制御することで、ロータリバルブ24の開放時期を調整する。また、制御装置40は、振動計測装置12が接続される。
【0022】
なお、制御装置40は、コントローラであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などにより、記憶部に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。
【0023】
<ロータリバルブ>
図2は、ロータリバルブを表す概略図、
図3は、ロータリバルブの作動を表す概略図である。
【0024】
図2に示すように、ロータリバルブ24は、弁体24aを有する。弁体24aは、気体供給経路22の流路を閉止可能な円板形状をなす。但し、弁体24aは、気体供給経路22の流路を開閉可能な形状であればよく、円板形状に限定されるものではない。弁体24aの回転軸24bを有し、回転軸24bは、気体供給経路22を径方向に沿って貫通し、気体供給経路22に軸心O2を中心に回転自在に支持される。
【0025】
図2および
図3に示すように、弁体24aは、駆動装置25(
図1参照)により一方向(
図2および
図3にて、時計回り方向)に回転する。弁体24aは、回転軸24b(軸心O2)を中心に一方向に回転することで、閉止位置(
図2)と、開放位置(
図3)とを交互に移動することができる。ここで、閉止位置とは、弁体24aの外周面が気体供給経路22の内周面に接触することで、両者の間に隙間がない位置であり、開放位置は、弁体24aの外周面が気体供給経路22の内周面から離間することで、両者の間に隙間がある位置である。ロータリバルブ24は、弁体24aが閉止位置(
図2)にあるとき、加振気体は、気体供給経路22を加振ノズル23側に流れない。一方、ロータリバルブ24は、弁体24aが開放位置(
図3)にあるとき、加振気体は、気体供給経路22を加振ノズル23側に流れる。そのため、ロータリバルブ24の回転に伴った気体の噴出流れによって、加振ノズル23からは周期的な圧力変動が放射され、動翼103に加振力を与えることが可能となる。
【0026】
なお、ロータリバルブ24は、上述した構成に限定されるものではない。
図4は、ロータリバルブの変形例を表す概略図である。
【0027】
図4に示すように、ロータリバルブ24Aは、弁体24aの外径が気体供給経路22の内径より小さい。弁体24aは、回転軸24b(軸心O2)を中心に一方向に回転することで、閉止位置(
図4にて、実線)と、開放位置(
図4にて、二点鎖線)とを交互に移動することができる。ここで、閉止位置とは、弁体24aの外周面と気体供給経路22の内周面の間に若干の隙間がある位置であり、開放位置は、弁体24aの外周面が気体供給経路22の内周面から離間することで、両者の間に大きな隙間がある位置である。つまり、ロータリバルブ24Aの閉止位置は、開放位置より小さい開口面積をもって気体供給経路22を閉止する位置である。なお、弁体24aが閉止位置にあるときの隙間の量は、例えば、気体供給経路22の通路面積の0%より大きく、20%より小さい範囲であることが好ましい。ロータリバルブ24は、弁体24aが閉止位置にあるとき、加振気体は、気体供給経路22を加振ノズル23側にほとんど流れない。一方、ロータリバルブ24Aは、弁体24aが開放位置(
図3)にあるとき、加振気体は、気体供給経路22を加振ノズル23側に流れる。そのため、ロータリバルブ24Aの回転に伴った気体の噴出流れによって、加振ノズル23からは周期的な圧力変動が放射され、動翼103に加振力を与えることが可能となる。
【0028】
また、上述したロータリバルブ24は、作動中に閉止位置に位置すると、短時間ではあるが気体供給経路22を完全に閉止してしまい、圧力波形が乱れて滑らかな高速回転ができなくなる恐れがある。一方、変形例のロータリバルブ24Aは、作動中に閉止位置に位置しても、若干の隙間があることから気体供給経路22を完全に閉止することはない。そのため、ロータリバルブ24Aは、作動中に圧力波形が乱れることが抑制され、滑らかな高速回転が可能となる。なお、ロータリバルブ24の非作動時は、開閉弁(電磁弁)33により気体供給経路22が閉止される。
【0029】
<振動試験方法>
図1に示すように、気体供給源21からの高圧気体は、減圧弁31により圧力が調整され、開閉弁33が開放されることで、気体供給経路22によりロータリバルブ24に加振気体として供給される。制御装置40は、回転検出器26から複数の動翼103の回転数、つまり、動翼103の回転位置が入力する。制御装置40は、動翼103を加振するためのプログラムおよび動翼103の回転位置に基づいて駆動装置25を制御し、ロータリバルブ24を開閉動作させる。つまり、制御装置40は、回転する複数の動翼103が加振ノズル23に対向する位置にきたとき、加振ノズル23から圧力変動が放射されるように、駆動装置25によりロータリバルブ24を開放する。
【0030】
複数の動翼103は、加振ノズル23から放射された圧力変動により加振され、1次モードや2次モードで振動する。振動計測装置12は、翼加振装置11により加振された動翼103における先端部の振動を計測し、制御装置40に出力する。
【0031】
この場合、ロータリバルブ24は、弁体24aが一方向に回転することで、気体供給経路22を開閉する。そのため、駆動装置25は、モータの回転数を上昇させることで、弁体24aの回転速度を上昇させ、加振ノズル23から放射する圧力変動の加振周波数を上げることができる。また、弁体24aの外径および気体供給経路22の流路径を大きくすることで、加振ノズル23から動翼103に向けて放射する圧力変動が大きくなり、加振力が大きくなる。
【0032】
また、加振ノズル23から放射される圧力変動の位相は、弁体24aの角度を制御することができることから、動翼103の回転数と加振ノズル23の位置に応じて適切なタイミングで動翼103に圧力変動による加振力を与えることができる。そして、ロータリバルブ24は、電磁弁に比較して摺動部が少ないことから、使用寿命を延長することができる。また、ロータリバルブ24は、構造が簡素であることから、低コスト化を図ることができる。
【0033】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態の翼加振装置を備える振動試験装置を表す概略構成図、
図6は、翼加振装置を表す配置構成図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。また、
図6は、気体供給経路と加振ノズルとロータリバルブと駆動装置の一部を省略している。
【0034】
図5に示すように、振動試験装置10Aは、翼加振装置11Aと、振動計測装置12とを備える。翼加振装置11Aは、気体供給装置(図示略)と、複数の気体供給経路22a,22b,22c・・・と、複数の加振ノズル23A,23B,23C・・・と、複数のロータリバルブ24A,24B,24C・・・と、複数の駆動装置25A,25B,25C・・・とを備える。なお、気体供給経路22A,22B,22C・・・、加振ノズル23A,23B,23C・・・、ロータリバルブ24A,24B,24C・・・、駆動装置25A,25B,25C・・・の個数は、2個以上あればよい。
【0035】
制御装置40は、回転検出器26の検出結果に基づいて複数の駆動装置25A,25B,25C・・・を制御することで複数のロータリバルブ24A,24B,24C・・・を開閉制御し、複数の加振ノズル23A,23B,23C・・・からの圧力変動の放射時期を調整する。
【0036】
図6に示すように、動翼103が時計回り方向に回転するとき、複数(本実施形態では、6個)の加振ノズル23A,23B,23C,23D,23E,23Fは、軸心O1を中心とした周方向に間隔を空けて配置される。複数の加振ノズル23A,23B,23C,23D,23E,23Fは、軸心O1を中心とした周方向の角度θ1,θ2,θ3,θ4,θ5をもって配置される。翼加振装置11Aは、加振させたい動翼103の固有値frに対して、加振させたい節直径数n、ロータ101の回転数Ωから、加振力の加振周波数fairを設定する。
fair=|fr±n×Ω|
ここで、「±」が「+」の場合は、進行波、「-」の場合は、後退波である。
【0037】
加振ノズル23A,23B,23C,23D,23E,23Fの個数を増やすことで、加振できる振動レベルを大きくすることができる。但し、応答のレベルを得るために節直径数nと加振ノズル23A,23B,23C,23D,23E,23F間の角度θiに応じて位相差φiを与える。
φi=±n×θi
【0038】
例えば、節直径数n=4の進行波のモードで加振するための位相差は、下記のものとなる。
φ1=-4×30度=-120度
φ2=-4×30度=-120度
φ3=-4×120度=-480度
φ4=-4×30度=-120度
φ5=-4×30度=-120度
【0039】
図7は、翼加振装置による加振時期を説明するための概略図である。
【0040】
図7に示すように、ロータリバルブ24A,24B,24C・・・の位相と駆動装置25A,25B,25C・・・のモータの回転角度の差は、位相差の半分(1/2)となる。すなわち、弁体24aが1回転する間に加振力は2周期分変動する。加振力の位相差は、弁体24aの回転位相差の2倍となるため、与えたい加振力位相差の半分の位相差であり、弁体24aの回転位相を制御する。例えば、加振ノズル23A,23Bにより180度の位相差を設定する場合、弁体24aの1/4回転分であり、位相差は、90度となる。加振ノズル23A,23Bとの間で、弁体24aの回転角度に対して位相差90度与えることで、加振力は、180度の位相差が生じる。
【0041】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る翼加振装置は、気体供給源21と、基端部が気体供給源21に連結される気体供給経路22と、気体供給経路22の先端部に連結される加振ノズル23と、気体供給経路22に設けられるロータリバルブ24と、ロータリバルブ24,24Aを駆動する駆動装置25とを備える。
【0042】
第1の態様に係る翼加振装置によれば、駆動装置25によりロータリバルブ24,24Aを作動することで、加振ノズル23から動翼103に向けて放射する圧力変動による加振時期が設定される。そのため、動翼103に与える加振力を任意に設定することができ、その結果、高周波の大きな加振力を確保することができる。
【0043】
第2の態様に係る翼加振装置は、第1の態様に係る翼加振装置であって、さらに、動翼103の回転位置を検出する回転検出器26と、回転検出器26の検出結果に基づいて駆動装置25を制御する制御装置40とを備える。これにより、動翼103の回転位置を把握することができることから、加振ノズル23から動翼103に向けて放射する圧力変動による加振力を適切に与えることができる。
【0044】
第3の態様に係る翼加振装置は、第1の態様または第2の態様に係る翼加振装置であって、さらに、駆動装置25は、モータであり、制御装置40は、回転検出器26の検出結果に基づいてモータの回転数を制御する。これにより、制御装置40は、駆動装置25を構成するモータの回転数を制御することで、ロータリバルブ24,24Aを容易に制御することができる。
【0045】
第4の態様に係る翼加振装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つに係る翼加振装置であって、さらに、動翼103は、ロータ101の外周部に周方向に間隔を空けて複数設けられ、加振ノズル23は、動翼103の回転方向に間隔を空けて複数設けられ、制御装置40は、回転検出器26の検出結果に基づいて駆動装置25を制御することで、複数の加振ノズル23からの圧力変動の放射時期を調整する。これにより、複数の加振ノズル23を用いることで、動翼103を加振する加振力を大きくすることができる。
【0046】
第5の態様に係る翼加振装置は、第4の態様に係る翼加振装置であって、さらに、制御装置40は、複数の加振ノズル23の位置に応じた位相差をもって駆動装置25を制御する。これにより、駆動装置25によりロータリバルブ24,24Aを容易に制御することができる。
【0047】
第6の態様に係る翼加振装置は、第1の態様から第5の態様のいずれか一つに係る翼加振装置であって、さらに、ロータリバルブ24Aは、弁体24aの一方向の回転により、気体供給経路22を開放する開放位置と、開放位置より小さい開口面積をもって気体供給経路22を閉止する閉止位置とを交互に移動する。これにより、ロータリバルブ24Aが閉止位置にあるとき、気体供給経路22が完全に閉止されることがなく、作動中における圧力波形の乱れが抑制され、滑らかな高速回転を可能とすることができる。
【0048】
第7の態様に係る振動試験装置は、翼加振装置11と、動翼103の振動を計測する振動計測装置12とを備える。これにより、高周波の大きな加振力で動翼103を加振することができることから、より広い条件範囲で振動試験を行うことができる。
【0049】
なお、上述した実施形態では、回転機械を産業用タービンとしたが、この構成に限らず、蒸気タービン、ガスタービン、航空機エンジン、圧縮機などであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
10,10A 振動試験装置
11,11A 翼加振装置
12 振動計測装置
21 気体供給源
22 気体供給経路
23 加振ノズル
24,24A ロータリバルブ
25 駆動装置
26 回転検出器
31 減圧弁
32 圧力計
33 開閉弁
40 制御装置
100 産業用タービン
101 ロータ(回転軸)
102 タービンディスク
103 動翼(翼)