(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165302
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/16 20060101AFI20241121BHJP
G06F 1/20 20060101ALI20241121BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G06F1/16 312J
G06F1/16 312E
G06F1/16 312Z
G06F1/20 C
G06F1/20 B
H05K7/20 H
H05K7/20 G
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081393
(22)【出願日】2023-05-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】潮田 達也
(72)【発明者】
【氏名】田角 和也
(72)【発明者】
【氏名】梅島 一哉
【テーマコード(参考)】
5E322
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322BA01
5E322BB03
5E322DB10
5E322DB12
(57)【要約】
【課題】外観品質の低下を抑えつつ、ファンの排気効率を向上することができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、ファンと、前記ファンを収容すると共に、一側面に前記ファンから送られる空気を外部に排出する筐体排気口を有する筐体と、表面にディスプレイが臨む蓋体と、前記筐体と前記蓋体とを相対的に回動可能に連結するヒンジ装置とを備える。ヒンジ装置ジ筐体は、前記筐体排気口の下流側に配置されると共に、少なくとも一部が前記筐体排気口に対向する部分の外面が、他の部分よりも凹んだ凹状部を有する。凹状部は、前記ヒンジ筐体の外面のうち、前記ディスプレイ側に位置する前記ヒンジ筐体の第1根本部と、前記第1根本部から前記ヒンジ筐体の先端部までの範囲にある所定位置との間には設けられていない。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
ファンと、
前記ファンを収容すると共に、一側面に前記ファンから送られる空気を外部に排出する筐体排気口を有する筐体と、
表面にディスプレイが臨む蓋体と、
前記筐体と前記蓋体とを相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、
を備え、
前記ヒンジ装置は、
前記筐体と前記蓋体との間の回転軸となるシャフトと、
前記ディスプレイの側方で前記蓋体の表面から突出するように設けられ、前記シャフトの一端部を支持するヒンジ筐体と、
を有し、
前記ヒンジ筐体は、前記筐体排気口の下流側に配置されると共に、少なくとも一部が前記筐体排気口に対向する部分の外面が、他の部分よりも凹んだ凹状部を有し、
前記凹状部は、前記ヒンジ筐体の外面のうち、前記ディスプレイ側に位置する前記ヒンジ筐体の第1根本部と、前記第1根本部から前記ヒンジ筐体の先端部までの範囲にある所定位置との間には設けられていない
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記凹状部は、前記ヒンジ筐体の外面のうち、前記所定位置から前記先端部を経て前記第1根本部とは反対側にある前記ヒンジ筐体の第2根本部までの範囲における少なくとも一部に設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記筐体は、上面を形成するプレート部材を有し、
前記プレート部材の一縁部には、前記筐体排気口の上方で該筐体排気口の下流側に向かって突出し、前記ヒンジ筐体の上方に配置される庇部が設けられ、
前記蓋体を前記筐体に対して所定角度に開いた状態で、前記所定位置は、前記庇部の端部を通過して前記ヒンジ筐体の外面に接する接線と該ヒンジ筐体の外面との接点に設定されるか、又は、前記接点よりも前記先端部側の位置に設定される
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記ヒンジ筐体は、前記ディスプレイの一辺に沿って延在し、
前記シャフトは一対設けられると共に、該一対のシャフトが前記ヒンジ筐体の長手方向の両端部にそれぞれ支持され、
前記ヒンジ筐体は、
前記一対のシャフトをそれぞれ支持する一対のシャフト支持部と、
前記一対のシャフト支持部同士の間を埋めるように前記ディスプレイの一辺に沿って延在し、前記シャフトを支持しないカバー部と、
を有し、
前記凹状部は、前記カバー部に形成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器であって、
前記凹状部は、前記カバー部の全長に亘って設けられることで、前記カバー部と前記一対のシャフト支持部との間に段差が形成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の電子機器であって、
前記凹状部は、前記ヒンジ筐体の外面のうち、前記先端部と前記第2根本部との間にある第2の所定位置と前記第2根本部との間には設けられていない
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
電子機器であって、
ファンと、
前記ファンを収容すると共に、一側面に前記ファンから送られる空気を外部に排出する筐体排気口を有する筐体と、
表面にディスプレイが臨む蓋体と、
前記筐体と前記蓋体とを相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、
を備え、
前記ヒンジ装置は、
前記筐体と前記蓋体との間の回転軸となるシャフトと、
前記ディスプレイの側方で前記蓋体の表面から突出するように設けられ、前記シャフトの一端部を支持するヒンジ筐体と、
を有し、
前記ヒンジ筐体は、前記筐体排気口の下流側に配置されると共に、少なくとも一部が前記筐体排気口に対向する部分の外面が、他の部分よりも凹んだ凹状部を有し、
前記筐体は、上面を形成するプレート部材を有し、
前記プレート部材の一縁部には、前記筐体排気口の上方で該筐体排気口の下流側に向かって突出し、前記ヒンジ筐体の上方に配置される庇部が設けられ、
前記蓋体を前記筐体に対して所定角度に開いた状態で、前記凹状部は、前記ヒンジ筐体の外面のうち、前記庇部の端部を通過して前記ヒンジ筐体の外面に接する接線と該ヒンジ筐体の外面との接点と、前記ディスプレイ側に位置する前記ヒンジ筐体の第1根本部との間には設けられていない
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジ装置を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、CPU等の発熱体を冷却するための冷却モジュールを搭載している(例えば特許文献1参照)。この種の冷却モジュールは、ヒートパイプ等の熱輸送デバイスで輸送した熱を受けたヒートシンクに空気を送るファンを備えることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば上記特許文献1の構成において、筐体は、ファンから送られる空気の排気口(筐体排気口)を後側面に有する。ところが、この後側面には、ディスプレイを搭載した蓋体と筐体とを連結するヒンジ装置の構成部品であるヒンジ筐体が対向している。このため、この構成では、筐体排気口の一部がヒンジ筐体によって塞がれ、ファンの排気効率に影響を及ぼしていた。一方で、仮にヒンジ筐体に大きな排気経路等を設けた場合には、これがユーザから見えてしまい、電子機器の外観品質を低下させる懸念がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、外観品質の低下を抑えつつ、ファンの排気効率を向上することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る電子機器は、ファンと、前記ファンを収容すると共に、一側面に前記ファンから送られる空気を外部に排出する筐体排気口を有する筐体と、表面にディスプレイが臨む蓋体と、前記筐体と前記蓋体とを相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、を備え、前記ヒンジ装置は、前記筐体と前記蓋体との間の回転軸となるシャフトと、前記ディスプレイの側方で前記蓋体の表面から突出するように設けられ、前記シャフトの一端部を支持するヒンジ筐体と、を有し、前記ヒンジ筐体は、前記筐体排気口の下流側に配置されると共に、少なくとも一部が前記筐体排気口に対向する部分の外面が、他の部分よりも凹んだ凹状部を有し、前記凹状部は、前記ヒンジ筐体の外面のうち、前記ディスプレイ側に位置する前記ヒンジ筐体の第1根本部と、前記第1根本部から前記ヒンジ筐体の先端部までの範囲にある所定位置との間には設けられていない。
【0007】
本発明の第2態様に係る電子機器は、ファンと、前記ファンを収容すると共に、一側面に前記ファンから送られる空気を外部に排出する筐体排気口を有する筐体と、表面にディスプレイが臨む蓋体と、前記筐体と前記蓋体とを相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、を備え、前記ヒンジ装置は、前記筐体と前記蓋体との間の回転軸となるシャフトと、前記ディスプレイの側方で前記蓋体の表面から突出するように設けられ、前記シャフトの一端部を支持するヒンジ筐体と、を有し、前記ヒンジ筐体は、前記筐体排気口の下流側に配置されると共に、少なくとも一部が前記筐体排気口に対向する部分の外面が、他の部分よりも凹んだ凹状部を有し、前記筐体は、上面を形成するプレート部材を有し、前記プレート部材の一縁部には、前記筐体排気口の上方で該筐体排気口の下流側に向かって突出し、前記ヒンジ筐体の上方に配置される庇部が設けられ、前記蓋体を前記筐体に対して所定角度に開いた状態で、前記凹状部は、前記ヒンジ筐体の外面のうち、前記庇部の端部を通過して前記ヒンジ筐体の外面に接する接線と該ヒンジ筐体の外面との接点と、前記ディスプレイ側に位置する前記ヒンジ筐体の第1根本部との間には設けられていない。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、外観品質の低下を抑えつつ、ファンの排気効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、筐体の内部構造を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3Aは、
図2中のIII-III線に沿う模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、電子機器のヒンジ装置及びその周辺部を斜め上方から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す蓋体のヒンジ装置以外の構成要素の図示を省略した説明図である。
【
図6】
図6は、第1変形例に係るヒンジ筐体を有する電子機器におけるヒンジ装置及びその周辺部の構成を模式的に示す一部断面平面図である。
【
図7】
図7は、第2変形例に係るヒンジ筐体を有する電子機器におけるヒンジ装置及びその周辺部の構成を模式的に示す一部断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。
図1に示すように、本実施形態の電子機器10は、蓋体12と筐体14とがヒンジ装置15で相対的に回動可能に連結されたクラムシェル型のノート型PCである。本出願に係る電子機器は、ヒンジ装置を介して2つの筐体同士が回動可能に連結された構成であれば、ノート型PC以外でもよい。
【0012】
蓋体12は、薄い扁平な箱状の筐体である。蓋体12は、ディスプレイ16を搭載している。ディスプレイ16は、例えば有機ELディスプレイや液晶ディスプレイである。ディスプレイ16は、その表示面が蓋体12の表面12aを臨むように設けられている。表面12aは、蓋体12を閉じて筐体14の上に積層させた際、筐体14の上面14aと対向する面である。
【0013】
以下、筐体14及びこれに搭載された各要素について、蓋体12を筐体14から開いてキーボード20を操作する姿勢(
図1参照)を基準とし、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右、高さ方向(筐体14の厚み方向)を上下、と呼んで説明する。なお、これら各方向は、説明の便宜上定めた方向であり、電子機器10の仕様、使用状態又は設置姿勢等によって変化する場合もあり得る。
【0014】
筐体14は、蓋体12よりも厚みのある扁平な箱状の筐体である。ヒンジ装置15は、筐体14の後側面14bに連結されている。筐体14は、上面及び四周側面を形成する上カバー部材17と、下面を形成する下カバー部材18とで構成されている。上カバー部材17は、筐体14の上面14aを形成するプレート部材17aの四周縁部に立壁17bを有する。このため上カバー部材17は下面が開口した略バスタブ形状である。下カバー部材18は略平板形状を有し、上カバー部材17の下面開口を閉じる蓋となる。カバー部材17,18は厚み方向に重ね合わされて互いに着脱可能に連結される。筐体14の上面14aにはキーボード20及びタッチパッド21が臨んでいる。
【0015】
図2は、筐体14の内部構造を模式的に示す平面図である。
図2は、筐体14をキーボード20の少し下で切断した模式的な平面断面図である。
【0016】
図2に示すように、筐体14の内部には、冷却モジュール22と、マザーボード24と、バッテリ装置26とが収容されている。筐体14の内部には、さらに各種の電子部品や機械部品等が設けられる。
【0017】
マザーボード24は、電子機器10のメインボードとなるプリント基板である。マザーボード24は、筐体14の後方寄りに配置され、左右方向に沿って延在している。マザーボード24は、CPU(Central Processing Unit)24a及びGPU(Graphics Processing Unit)24bの他、通信モジュール、及び記憶装置等の各種電子部品が実装されている。マザーボード24は、例えば上面が上カバー部材17に対する取付面となり、下面がCPU24a等の実装面となる。バッテリ装置26は、電子機器10の電源となる充電池である。バッテリ装置26は、マザーボード24の前方に配置され、筐体14の前端部に沿って左右に延在している。
【0018】
CPU24a及びGPU24bは、筐体14内に搭載された電子部品中で最大級の発熱量の発熱体である。冷却モジュール22は、CPU24a及びGPU24bが発生する熱を吸熱及び拡散し、筐体14外へと排出する。冷却モジュール22の冷却対象となる電子部品は、CPU24a及びGPU24b以外でもよい。
【0019】
図2に示すように、本実施形態の冷却モジュール22は、2本1組のヒートパイプ28と、左右一対のヒートシンク29,29と、左右一対のファン30,30と、ベーパーチャンバ31とを備える。ヒートパイプ28は、CPU24a及びGPU24bが発する熱を左右のヒートシンク29に高効率に輸送する。左右のヒートシンク29は、左右のファン30の後面(排気口30a)に対向配置される。これによりファン30の排気口30aから送られる空気がヒートシンク29を通過する。ベーパーチャンバ31は、CPU24a及びGPU24bが発する熱を吸熱及び拡散すると共に、ヒートパイプ28に伝達する。
【0020】
従って、冷却モジュール22は、ヒートパイプ28を介してヒートシンク29に輸送されたCPU24a及びGPU24bの熱をファン30による送風によって筐体14の外部に排出することができる。冷却モジュール22の構成は上記に限定されず、各種構成を採用できる。
【0021】
次に、ヒンジ装置15及びその周辺部の構成を説明する。
【0022】
図3は、
図2中のIII-III線に沿う模式的な断面図である。
図3は、蓋体12を筐体14から開き、互いの面方向を所定角度(
図3では114度)で交差させた状態での側面断面図である。
図4は、電子機器10のヒンジ装置15及びその周辺部を斜め上方から見た斜視図である。以下では、特に説明のない限り、蓋体12を筐体14に対して
図3に示す114度に開いた状態を基準としてヒンジ装置15及びその周辺部の構成を説明する。
【0023】
先ず、筐体14の後側面14b及びその周辺部の構成例を説明する。
【0024】
図2~
図4に示すように、筐体14の後側面14bには、前側に凹んだ溝状のヒンジ収容部32が設けられている。ヒンジ収容部32は、後側面14bの左右方向の全長の大部分に亘る幅を有し、ヒンジ筐体42の全長を収容することができる。シャフト40は、ヒンジ収容部32の左右側壁を貫通し、筐体14内に引き込まれている。
【0025】
図3に示すように、後側面14bは、ヒンジ収容部32の前壁となる部分に筐体排気口34を有する。筐体排気口34は、ファン30の排気口30aから排出され、ヒートシンク29を通過した空気Aを筐体14外に排出するための開口である。筐体排気口34は、例えば左右方向に並んだ複数の縦長のスリット状の孔部で形成される。筐体排気口34は、メッシュ構造等でもよい。筐体排気口34は、ヒートシンク29と対向する位置に左右一対設けられている。筐体排気口34は、ヒンジ収容部32の前壁の左右方向の全長に亘って設けられてもよい。
【0026】
筐体14の上面14aを形成するプレート部材17aは、ヒンジ収容部32の上方で後方に突き出した庇部35を有する。庇部35は、プレート部材17aの後縁部を筐体排気口34の上方でその下流側に向かって突出させた部分であり、ヒンジ筐体42の一部の上方を覆うように配置される。プレート部材17aは、庇部35の端部35aより後側が切欠部36によって切除され、上面14aに開口している。切欠部36は、筐体排気口34を通過してヒンジ筐体42の上側を通過する空気A(
図3中の空気A1)の排出経路となる。
【0027】
なお、筐体14の下カバー部材18の後縁部にも切欠部36と同様な切欠部37が設けられている。切欠部37は、筐体排気口34を通過してヒンジ筐体42の下側を通過する空気A(
図3中の空気A2)の排出経路となる。
図3中の参照符号38は、下カバー部材18の下面後部に設けられるゴム脚である。
【0028】
次に、ヒンジ装置15の具体的な構成を説明する。
【0029】
図2~
図4に示すように、ヒンジ装置15は、シャフト40と、ヒンジ筐体42とを備える。
【0030】
シャフト40は、蓋体12と筐体14との間の回転軸となる金属丸棒である。シャフト40は、左右方向に延在するヒンジ筐体42の左右端部にそれぞれ支持され、合計2本で蓋体12と筐体14との間を連結している(
図2参照)。
【0031】
ヒンジ筐体42は、ディスプレイ16の側方(下側方)で蓋体12の表面12aから起立するように突出している。ヒンジ筐体42はディスプレイ16の一辺(下辺)に沿って左右方向に延在している。ヒンジ筐体42は、蓋体12の下縁部12bの表面12aから顎状に突出した略かまぼこ形状(semicylindrical shape)の断面形状を有する。ヒンジ筐体42の先端部(突出端)42aには
図3中で略上向きに膨らんだ円弧形状が形成されている。
【0032】
ヒンジ筐体42は、左右一対のシャフト支持部44,44と、左右のシャフト支持部44,44間に設けられたカバー部46と、凹状部48とを有する。左右のシャフト支持部44,44は左右対称構造でよいため、以下では両者を区別せずに説明する。
【0033】
シャフト支持部44は、シャフト40の一端部を支持する部品である。シャフト支持部44は、例えば十分な強度を有する金属ブロックで形成され、シャフト40の一端部を相対回転不能に支持している。シャフト40の他端部は筐体14側に挿入され、筐体14に固定された所定の軸受部品に対して相対回転可能に支持されている。これによりヒンジ装置15は、ヒンジ筐体42及び蓋体12が一体となってシャフト40と共に回転する。
図2中の参照符号50は、シャフト40の回転に所定の回転トルクを付与するためのトルク発生器である。
【0034】
カバー部46は、左右のシャフト支持部44,44にそれぞれ隣接し、シャフト支持部44,44同士の間を埋めるようにディスプレイ16の一辺(下辺)に沿って左右に延在している。カバー部46は、シャフト40を支持しない化粧部品であり、例えば樹脂の成形部品である。カバー部46は、蓋体12内から筐体14内へと延びた配線やフレキシブル基板を覆い隠すこともできる。
【0035】
このようにヒンジ装置15は、シャフト支持部44及びカバー部46で構成されたヒンジ筐体42が左右方向に沿って延在した、いわゆるワンバー形状に構成されている。これにより電子機器10は筐体14の上面14aとヒンジ筐体42との間の隙間が狭くなり、意匠性が向上している。またヒンジ装置15は、ヒンジ筐体42が蓋体12と一体となって回転しつつ斜め後方へと下降し、これにより蓋体12の回動角度を稼ぐ構造、いわゆるドロップダウン構造とされている。
【0036】
図3及び
図4に示すように、凹状部48は、ヒンジ筐体42の外面52のうち、長手方向の一部を他の部分よりも凹ませたものである。凹状部48は、庇部35の端部35aとの間に形成される空気A1の排気経路54を拡大するためのものである。凹状部48は、外面52のうち、少なくとも一部が筐体排気口34に対向する部分に設けられる。本実施形態では、カバー部46が筐体排気口34に対向する。そこで、凹状部48は、カバー部46に設けられている。
図2に示す凹状部48は、カバー部46の長手方向の全長に亘って延在している。
【0037】
一方で、シャフト40を支持する構造部品であるシャフト支持部44には凹状部48を設けていない。すなわちシャフト支持部44は、シャフト40の支持強度を担保しつつ、ヒンジ筐体42の大型化は抑える必要がある。そこで本実施形態のシャフト支持部44は、シャフト40の支持強度を担保できる必要最小限の大きさとしているため、凹状部48を形成すると強度不足となる可能性があるためである。例えばヒンジ筐体42の小型化への要求が小さく、シャフト支持部44の外径に十分な余裕があるときは、シャフト支持部44に凹状部48を設けてもよい。
【0038】
ヒンジ筐体42の外面52は、蓋体12の表面12aからの突出方向を基準とすると、ディスプレイ16側を向いたヒンジ筐体42の基端である第1根本部52aから先端部42aに向かって直線状に延びている。外面52は、先端部42a付近で円弧状に膨らんだ先端円弧部52bを形成する。外面52は、先端部42aから先は、略90度屈曲して第1根本部52aとは反対側の基端である第2根本部52cまで直線状に延びている。これによりヒンジ筐体42の外面52は、
図3に示す側面視で略かまぼこ形状或いは略きのこ形状を成している。
【0039】
図3及び
図4に示すように、凹状部48は、カバー部46の外面52のうち、第1根本部52aと第1位置P1と間には形成されていない。
図3に示す構成例では、第1位置P1は第1根本部52aと先端部42aとの間、先端円弧部52bの一部に設定される。一方で、凹状部48は、第1位置P1から先端部42aを経て第2位置P2までの間に形成されている。
図3に示す構成例では、第2位置P2は先端円弧部52bと第2根本部52cとの間の角部付近に設定される。換言すれば、凹状部48は第1位置P1よりも第1根本部52a側には形成されず、第2位置P2よりも第2根本部52c側にも形成されていない。
【0040】
従って、シャフト支持部44及びカバー部46は、凹状部48が形成されていない部分では互いの外面52が面一又は略面一に配置され、同一又は略同一の外形形状を有する。一方、シャフト支持部44及びカバー部46は、凹状部48が形成された部分ではカバー部46の外面52が左右のシャフト支持部44の外面52よりも一段低く形成され、相互間には段差52dが形成されている。
【0041】
図2では、凹状部48の上側の境界となる第1位置P1を1点鎖線で示しており、後述する
図6及び
図7でも同様としている。なお、実際の製品において、第1位置P1は第1根本部52aから先端円弧部52bにかけて連続する滑らかな曲面の1点に過ぎず、明確に視認できるものではない。
【0042】
ここで、
図3中に2本の1点鎖線で示した視線S1,S2の間の角度θは、切欠部36を通してユーザがヒンジ筐体42を視認する場合に想定されるユーザの視線の角度範囲を示す。下側の視線S1は、例えばプレート部材17aの面方向に対して約30度傾いた直線である。上側の視線S2は、例えばプレート部材17aの面方向に対して約60度傾いた直線である。このため角度θは30度となり、この範囲が想定されるユーザが視認することが想定される視線の範囲となる。
【0043】
図3に示すように、角度θの最低角度を設定する視線S1は、庇部35の端部35aを通過して、第1位置P1でヒンジ筐体42の外面52に接する接線である。換言すれば、本実施形態では、想定される角度θの下限である視線S1が外面52に接する接点を第1位置P1に設定している。
【0044】
次に、ヒンジ筐体42のより詳細な構成例を説明する。
図5は、
図3に示す蓋体12のヒンジ装置15以外の構成要素の図示を省略した説明図である。
【0045】
図5に示すように、シャフト支持部44の先端円弧部52bは、
図5中に1点鎖線で示す円C1の円周に沿う曲線で形成することができる。円C1は、シャフト支持部44の必要強度を担保できる最小の直径を有する。円C1は視線S1と接する円である。円C1の中心C1aは直交する2本の1点鎖線で描いた直径の交点であり、シャフト40の軸心と一致する。シャフト40の軸心位置は、筐体14内に設置されるトルク発生器50の外径と、上カバー部材17との位置関係も考慮して設定される。
【0046】
次に、カバー部46の先端円弧部52bは、
図5中に1点鎖線で示す円C2の円周に沿う曲線で形成することができる。円C2は、第1位置P1よりも第1根本部52a側の範囲ではシャフト支持部44と面一の曲面に沿っている。円C2は視線S1と接する円である。円C2の中心C2aは直交する2本の1点鎖線で描いた直径の交点であり、円C1の中心C1aよりも後下方に位置ずれしている。円C2は円C1よりも大きな直径に設定されている。これにより円C1と円C2との間に段差52dが形成され、この部分が凹状部48を形成する。
【0047】
位置P1,P2の設定位置、円C1,C2の直径、及び、円C1,C2の位置関係等は上記に限定されない。例えば円C2を円C1よりもさらに大きな直径とし、段差52dを大きくすると、凹状部48と端部35aとの間の空気A1の排気経路54が拡大され、ファン30の排気効率が向上する。シャフト支持部44の外面52とカバー部46の外面52は、必ずしも円C1,C2のような円弧で形成する必要はなく、例えば連続する曲線(曲面)で形成されてもよい。
図5では、視線S1に接する位置で円C1,C2が直線上に並んでいるが、円C1,C2は曲線上に並んでいてもよい。
【0048】
この場合、当該電子機器10は、ヒンジ筐体42の外面52に凹状部48を有する。凹状部48は、外面52のうち、ディスプレイ16側に位置する第1根本部52aと、第1根本部52aから先端部42aまでの範囲にある所定位置(第1位置P1)との間には設けられていない。一方で、凹状部48は、外面52のうち、第1位置P1から先端部42aを経て反対側の第2根本部52cまでの範囲における少なくとも一部に設けられている。
【0049】
すなわち電子機器10は、ドロップダウン型のヒンジ装置15を有する。このため電子機器10は、蓋体12を筐体14から所定角度(例えば90度~130度)に開いて使用する際、筐体排気口34の後方がヒンジ筐体42によって塞がれ、ファン30の排気効率の低下を招く懸念がある。
【0050】
そこで、当該電子機器10は、筐体排気口34の障害物となるヒンジ筐体42の外面52に凹状部48を設けている。このため、ヒンジ筐体42と筐体14の上面14aを形成するプレート部材17a(庇部35)との間に形成される開口(排気経路54)の高さが凹状部48によって拡大される。その結果、電子機器10は、排気経路54を通過する空気A1の排気効率が向上し、ファン30の風量が増大するため、冷却モジュール22の冷却性能が向上し、システムパフォーマンスも向上する。
【0051】
一方で、凹状部48は、ヒンジ筐体42の外面52のうち、使用時にユーザから視認され易い角度θの範囲内に含まれる第1根本部52aと第1位置P1との間には形成していない。換言すれば、ヒンジ筐体42は、
図5に示すように、第1位置P1と第1根本部52aとの間にある外面52の任意の1点とシャフト40の軸心(中心C1a)との間の距離が、第1位置P1と第2位置P2との間にある外面52(凹状部48の外面52)の任意の1点とシャフト40の軸心(中心C1a)との間の距離よりも大きい。このため、ユーザからは、凹状部48は目立たず、外面52は滑らかな凹凸のない曲面に見える(
図3及び
図4参照)。その結果、電子機器10は、凹状部48が外観上で目立つことが抑えられ、外観品質の低下が抑制される。
【0052】
凹状部48は排気経路54の拡大に必要な部分、つまりヒンジ筐体42の長手方向で少なくとも一部がファン30の排気口30aの後方にオーバーラップする部分に設けられれば排気効率向上効果が得られる。そこで、次に、凹状部48の位置を変更した変形例に係るヒンジ筐体の構成を説明する。
【0053】
図6は、第1変形例に係るヒンジ筐体42Aを有する電子機器10におけるヒンジ装置15及びその周辺部の構成を模式的に示す一部断面平面図である。
図6において、
図1~
図5に示される参照符号と同一の参照符号は、同一又は同様な構成を示し、このため同一又は同様な機能及び効果を奏するものとして詳細な説明を省略し、
図7についても同様である。
図6及び
図7では、筐体14内の構成要素のうち、ファン30及びヒンジ装置15以外の構成要素の図示を省略している。
【0054】
上記したヒンジ筐体42の凹状部48は、カバー部46の長手方向の全長に亘って延在していた(
図2参照)。これに対し、
図6に示すヒンジ筐体42Aの凹状部48は、ヒンジ筐体42Aの全長のうち、ファン30の後方にオーバーラップする部分のみに設けられている。つまり
図6に示す凹状部48はカバー部46の一部のみを凹ませた構成である。このため、段差52dはカバー部46に設けられ、カバー部46とシャフト支持部44との隣接端面には段差はない。
図6では1個のファン30を筐体14の幅方向の略中央に配置した構成を例示しているが、
図6の構成においてファン30の設置数は2以上としてもよい。
【0055】
図7は、第2変形例に係るヒンジ筐体42Bを有する電子機器10におけるヒンジ装置15及びその周辺部の構成を模式的に示す一部断面平面図である。
【0056】
図7に示すヒンジ筐体42Bは、カバー部46がヒンジ筐体42Bの全長に亘って延在している。ヒンジ筐体42Bの左右のシャフト支持部44は、カバー部46の左右両端に設けた延長カバー部46aによって覆い隠されている。ヒンジ筐体42Bにおいても、少なくともファン30の後方にオーバーラップする部分に凹状部48を設けている。
図7に示す凹状部48は、延長カバー部46aを含むヒンジ筐体42Bの全長に亘って設けてもよいし、
図6に示す構成例と同様にファン30の後方にオーバーラップする部分のみに断続的に設けてもよい。
図7では、2個のファン30を筐体14の幅方向の略中央に配置した構成を例示しているが、
図7の構成においてファン30の設置数は1個でもよいし、3個以上でもよい。勿論、
図2に示す構成においてもファン30は1個でもよいし、3個でもよい。
【0057】
以上のように、本実施形態の電子機器10において、凹状部48は、ヒンジ筐体42,42A,42Bの外面52における少なくとも一部が筐体排気口34に対向する部分に設けられればよい。これにより電子機器10は、ファン30の排気効率を向上する効果と、外観品質の低下を抑制する効果とを両立できる。
【0058】
ここで、ヒンジ筐体42,42A,42Bの外面52において、凹状部48の境界線を示す第1位置P1は、蓋体12を筐体14に対して所定角度、例えば114度に開いた状態で庇部35の端部35aを通過する外面52に対する接線である視線S1の接点であることが好ましい(
図3及び
図5参照)。そうすると、凹状部48は、視線S1で電子機器10を見るユーザからは庇部35の下に隠れて視認されず、外観上で一層目立ちにくくなる。第1位置P1は必ずしも外面52と視線S1との接点である必要はなく、少なくとも当該接点よりも先端部42a側(第2根本部52c側)に設定されればよい。但し、第1位置P1を当該接点に設定することで、凹状部48が外観上に露出することを防ぎつつ、排気経路54を最大限に拡大することができるという利点がある。なお、第1位置P1として設定する接点の位置は、蓋体12と筐体14との間の想定される使用時の角度、例えば90度~130度の範囲のいずれかの角度に応じて適宜設定可能であることは言うまでもない。
【0059】
本実施形態のヒンジ筐体42,42A,42Bにおいて、凹状部48はカバー部46に形成されていることが好ましい。すなわち、シャフト支持部44はシャフト40を支持するための強度を担保する必要があり、所望の外径を有する必要がある。一方でカバー部46はシャフト支持部44のような強度を必要としない化粧部品であるため、凹状部48を形成した際に問題を生じ難いためである。
【0060】
凹状部48は、
図2及び
図4に示すように、シャフト支持部44に対するカバー部46の隣接端面を含む位置に設けることができる。この場合、段差52dは、シャフト支持部44とカバー部46との間の隣接境界面に形成される。すなわちシャフト支持部44とカバー部46との隣接境界面には、互いの材質や部品の相違から境界線が形成されている。このため、段差52dがこの境界線に沿って形成されると、段差52d及び凹状部48が電子機器10の外観上で一層目立ちにくくなるという利点があるためである。
【0061】
図3及び
図5に示すように、本実施形態の凹状部48は、第2の所定位置(第2位置P2)よりも第2根本部52c側にも形成されていない。これにより電子機器10は、蓋体12を筐体14の上に閉じた0度姿勢時に、電子機器10の後方から凹状部48及び段差52dが視認されることを抑制でき、外観品質が一層向上する。
【0062】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
10 電子機器
12 蓋体
14 筐体
15 ヒンジ装置
16 ディスプレイ
17a プレート部材
30 ファン
34 筐体排気口
35 庇部
40 シャフト
42,42A,42B ヒンジ筐体
44 シャフト支持部
46 カバー部
48 凹状部