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特開2024-165307太陽電池シートの支持構造及び太陽電池シートの設置方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165307
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】太陽電池シートの支持構造及び太陽電池シートの設置方法
(51)【国際特許分類】
   H02S 20/10 20140101AFI20241121BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H02S20/10 J
E02D17/20 103B
E02D17/20 106
E02D17/20 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081406
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田中 博之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 国春
(72)【発明者】
【氏名】稲川 雄宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄大
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044DB04
2D044DB38
2D044EA01
(57)【要約】
【課題】太陽電池シートを斜面に取り付けつつ、当該斜面の安定性を高めることを可能とした太陽電池シートの支持構造及び太陽電池シートの設置方法を提供する。
【解決手段】太陽電池シート20の支持構造は、可撓性を有した太陽電池シート20と、太陽電池シート20をのり面101上で支持する支持体30と、を備える。太陽電池シート20は、太陽電池モジュール21と、太陽電池モジュール21が取り付けられた支持シート22と、を備える。支持体30は、のり面101を補強する補強材31によってのり面101に対して固定されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールと、前記太陽電池モジュールが取り付けられた支持シートと、を備える可撓性を有した太陽電池シートと、
前記太陽電池シートを斜面上で支持する支持体と、
を備える太陽電池シートの支持構造であって、
前記支持体は、前記斜面を補強する補強材によって前記斜面に対して固定されている
ことを特徴とする太陽電池シートの支持構造。
【請求項2】
前記補強材は、前記斜面に挿入されることで前記斜面を補強し、
前記支持体は、前記補強材の一端に固定された支圧板を備え、
前記支持シートが前記斜面と前記支圧板とに挟持される
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池シートの支持構造。
【請求項3】
前記支持シートは、前記補強材が挿通される固定孔を備え、
前記固定孔に前記補強材が挿通された前記支持シートが前記斜面と前記支圧板とに挟持される
ことを特徴とする請求項2に記載の太陽電池シートの支持構造。
【請求項4】
前記支持シートの外縁部が前記斜面と前記支圧板とに挟持される
ことを特徴とする請求項2に記載の太陽電池シートの支持構造。
【請求項5】
前記補強材は、前記斜面に挿入されることで前記斜面を補強し、
前記支持体は、前記補強材の一端に固定された支圧板と、前記一端において、前記支圧板の上部に配置される固定板と、を備え、
前記支持シートが前記支圧板と前記固定板とに挟持される
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池シートの支持構造。
【請求項6】
前記固定板は、前記一端において、前記支圧板の上部に着脱可能に配置される
ことを特徴とする請求項5に記載の太陽電池シートの支持構造。
【請求項7】
一対のワイヤをさらに備え、
前記支持シートは、前記太陽電池モジュールを挟んで設けられる一対の筒状部を備え、
各筒状部には、前記ワイヤが挿通され、
前記支持体は、前記ワイヤを支持することによって前記太陽電池シートを支持する
ことを特徴とする請求項2ないし6のうち何れか一項に記載の太陽電池シートの支持構造。
【請求項8】
前記太陽電池シートは、前記斜面のうち土が露出した部分を覆う
ことを特徴とする請求項2ないし6のうち何れか一項に記載の太陽電池シートの支持構造。
【請求項9】
前記土に挿入されるピンをさらに備え、
前記支持シートは、前記ピンが挿通される孔部を備える
ことを特徴とする請求項8に記載の太陽電池シートの支持構造。
【請求項10】
前記太陽電池シートが設置される用地に配置されて前記支持シートの上端が接続される上端支持部材をさらに備える
ことを特徴とする請求項2ないし6のうち何れか一項に記載の太陽電池シートの支持構造。
【請求項11】
前記補強材は、前記斜面に設けられた吹付材またはのり枠であって、
前記支持体は、前記支持シートを支持する固定治具を備え、
前記固定治具は、前記吹付材または前記のり枠に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池シートの支持構造。
【請求項12】
太陽電池モジュールと、前記太陽電池モジュールが取り付けられた支持シートとを備える可撓性を有した太陽電池シートを斜面に取り付ける太陽電池シートの設置方法であって、
前記斜面を補強する補強材を配置することと、
前記補強材によって前記斜面に対して固定される支持体を介して前記太陽電池シートを前記斜面に取り付けることと、を含む
ことを特徴とする太陽電池シートの設置方法。
【請求項13】
太陽電池モジュールと、前記太陽電池モジュールが取り付けられた支持シートとを備える可撓性を有した太陽電池シートを斜面に取り付ける太陽電池シートの設置方法であって、
前記斜面を補強する補強材によって前記斜面に対して固定された既設の支持体を介して前記太陽電池シートを前記斜面に取り付ける
ことを特徴とする太陽電池シートの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する太陽電池シートの支持構造及び太陽電池シートの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可撓性を有したシート状の太陽電池モジュールが開発されている。例えば、特許文献1には、防草シートと太陽電池シートとを結合したフレキシブル太陽光発電シートが開示されている。特許文献1には、道路や鉄道の法面(のり面)や遊休田畑にフレキシブル太陽光発電シートを設置することで、除草作業の省略を可能としつつ、太陽光発電を実施できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3171302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可撓性を有した太陽電池モジュールをのり面や自然斜面を含めた斜面に設置する場合、当該斜面には降雨等によって斜面が崩壊しないように高い安定性が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する太陽電池シートの支持構造は、太陽電池モジュールと、前記太陽電池モジュールが取り付けられた支持シートと、を備える可撓性を有した太陽電池シートと、前記太陽電池シートを斜面上で支持する支持体と、を備える太陽電池シートの支持構造であって、前記支持体は、前記斜面を補強する補強材によって前記斜面に対して固定されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、太陽電池シートを斜面に取り付けつつ、当該斜面の安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態の太陽電池シートの支持構造を示す模式図である。
図2図2は、太陽電池シートの層構成を示す断面図である。
図3図3は、図1のIII-III線から見た断面図である。
図4図4は、図3ののり面近傍部分を拡大して示す断面図である。
図5図5は、第1実施形態の太陽電池シートの支持構造の変更例を示す模式図である。
図6図6は、第2実施形態の太陽電池シートの支持構造を示す模式図である。
図7図7は、図6のVII-VII線から見た断面図である。
図8図8は、第2実施形態における支圧板の形状の変更例を示す模式図である。
図9図9は、第2実施形態において、太陽電池シートを挟持する保持体を用いた場合の変更例を示す断面図である。
図10図10は、図9に示す変更例の上面図である。
図11図11は、第2実施形態において、キャップ保持板を備える保持体を用いた場合の変更例を示す断面図である。
図12図12は、第3実施形態の太陽電池シートの支持構造を示す断面図である。
図13図13は、第3実施形態の太陽電池シートの支持構造の変更例を示す断面図である。
図14図14は、第3実施形態の太陽電池シートの支持構造の変更例を示す断面図である。
図15図15は、第4実施形態の太陽電池シートの支持構造を示す模式図である。
図16図16は、図15のXVI-XVI線から見た断面図である。
図17図17は、太陽電池シートの変更例を示す断面図である。
図18図18は、太陽電池シートの支持構造の変更例として、太陽電池シートの支持構造が支持体とは別にピンを備える構成を示す模式図である。
図19図19は、太陽電池シートの支持構造の変更例として、太陽電池シートの支持構造が固定治具を備える構成を示す模式図である。
図20図20は、太陽電池シートの支持構造が備える固定治具の変更例を示す上面図である。
図21図21は、図20のXXI-XXI線から見た断面図である。
図22図22は、太陽電池シートの支持構造が備える固定治具の変更例を示す上面図である。
図23図23は、太陽電池シートの支持構造の変更例として、太陽電池シートの支持構造が上端支持部材を備える構成を示す模式図である。
図24図24は、太陽電池シートの支持構造の変更例として、太陽電池シートの支持構造が端部固定部材を備える構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、太陽電池シートの支持構造、及び、太陽電池シートの設置方法の第1実施形態~第4実施形態、並びにその変更例について、図1図24を参照して説明する。
各実施形態において、太陽電池シートの支持構造は、太陽電池シートと支持体とを備える。支持体は、のり面保護工によって斜面に配置される。斜面は、自然斜面やのり面等である。各実施形態において、太陽電池シートの設置方法は、斜面を補強するのり面保護工を行いつつ、またはのり面保護工が行われた後、のり面保護工を介して斜面に配置された支持体を介して、斜面に太陽電池シートを取り付ける。
【0009】
なお、のり面は、新設切土のり面、既設切土のり面、または盛土のり面等の人工のり面でもよいが、のり面保護工による補強効果の観点から切土のり面であることが好ましい。各実施形態では、のり面が切土のり面である例を示す。のり面保護工は、例えば、すべり土塊の滑動力に対抗して崩壊を防止するための構造物による保護工である構造物工であって、地山補強土工やグラウンドアンカー工である。
【0010】
[第1実施形態]
以下、図1図5を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。
図1に示すように、地山100は、斜面の一例であるのり面101を備える。のり面101は、全面がモルタルやコンクリート等の吹付材等で覆われていてもよいし、地山100の土が露出する部分を含んでもよい。のり面101には、のり枠が設けられていてもよい。
【0011】
のり面101には、太陽電池シート20と、複数の支持体30とが設置される。複数の支持体30は、のり面101の縦方向及び横方向のそれぞれにおいて、支持体30同士が任意の間隔となるように配置される。のり面101は、複数の支持体30によって、のり面保護工の一例である地山補強土工が施されている。太陽電池シート20は、複数の支持体30によってのり面101に取り付けられる。
【0012】
太陽電池シート20は、太陽電池モジュール21と、支持シート22とを備える。太陽電池モジュール21及び支持シート22は、可撓性を有するシート状の部材である。太陽電池シート20は、太陽電池モジュール21を支持シート22に重ねた可撓性を有する1枚のシート状の部材である。太陽電池モジュール21は、太陽光を受けて発電する。太陽電池モジュール21は、支持シート22に取り付けられている。太陽電池モジュール21は、支持シート22に貼り付けられてもよく、支持シート22以外の他の部材によって支持シート22に固定されてもよい。支持シート22の一部が複数の支持体30によってのり面101に固定されることで、太陽電池シート20がのり面101に取り付けられる。
【0013】
[太陽電池シート20の構成]
図2に示すように、太陽電池モジュール21は、光電変換層21Aと、封止層21Bと、表面保護層21Cと、裏面保護層21Dとを備える。太陽電池モジュール21では、封止層21Bに包摂された光電変換層21Aが表面保護層21Cと裏面保護層21Dとの間に配置される。太陽電池モジュール21を構成する各層は、可撓性を有する。なお、図2の矢印Xは、太陽光の入射方向を示す。
【0014】
光電変換層21Aは、光エネルギーを電力に変換する光電変換素子を含む。光電変換素子は、例えば、アモルファスシリコン太陽電池素子やペロブスカイト型太陽電池素子等の任意のものを使用できる。光電変換層21Aで発生した電気は、電極を介して外部に取り出される。
【0015】
封止層21Bは、透光性を有する。封止層21Bは、光電変換層21Aの両面に積層されることで光電変換層21Aの全体を包む。封止層21Bは、例えば、ポリオレフィンエラストマー(POE)で構成される。
【0016】
表面保護層21Cは、透光性を有する。表面保護層21Cの材料は、太陽電池モジュール21に機械的強度、耐候性、耐スクラッチ性、耐薬品性、ガスバリア性、絶縁性等を付与できるものが好ましい。表面保護層21Cの材料は、例えば、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等である。
【0017】
裏面保護層21Dは、可撓性を有するものであればよく、透光性を有するものであってもよいし、透光性を有しないものであってもよい。裏面保護層21Dの材料は、太陽電池モジュール21に絶縁性や防水性を付与できるものが好ましい。裏面保護層21Dの材料は、例えば、表面保護層21Cと同種の材料を用いることができる。
【0018】
支持シート22は、太陽電池モジュール21よりも大きな面積を有するシート状の部材である。支持シート22は、可撓性を備えているものであればよく、透光性を有するものであってもよいし、透光性を有しないものであってもよい。支持シート22は、のり面101に対する浸食防止の観点から、遮水性の高い材料で構成されることが好ましい。
【0019】
太陽電池シート20は、例えば、太陽電池モジュール21と支持シート22とを接着するための接着層23を備える。接着層23は、太陽電池モジュール21の裏面保護層21Dと、支持シート22との間に配置される。なお、太陽電池シート20は、接着層23を省略すると共に、太陽電池モジュール21と支持シート22との接着を熱融着等の他の手段で行ってもよい。また、太陽電池シート20は、接着層23に代えて、もしくは、接着層23に加えて、太陽電池モジュール21と支持シート22との間に、封止層21Bと同種の材料で構成される緩衝層を備えてもよい。太陽電池モジュール21と支持シート22との間に緩衝層を配置することで、太陽電池モジュール21と支持シート22との線膨張係数の差異を、緩衝層によって吸収することができる。
【0020】
太陽電池シート20は、発電領域20Aと、取付領域20Bとを備える。発電領域20Aは、太陽電池モジュール21と支持シート22とが積層された部分である。取付領域20Bは、太陽電池モジュール21を備えず、支持シート22のみで構成される部分である。取付領域20Bは、発電領域20Aの外周に位置する。支持シート22のうち取付領域20Bに位置する部分が支持体30を介してのり面101に固定にされることで、太陽電池シート20がのり面101に固定される。
【0021】
支持シート22は、複数の固定孔22Hを備える。固定孔22Hは、取付領域20Bに位置する。固定孔22Hには、支持体30の補強材31(図3参照)が挿通される。なお、固定孔22Hには、固定孔22Hを区画する部分を保護する金属製のグロメット(ハトメ)のような保護具が設けられてもよい。
【0022】
[第1実施形態:太陽電池シートの支持構造]
図3に示すように、支持体30は、補強材31と、支圧板32とを備える。補強材31は、長尺な棒状を有する補強鉄筋である。補強材31は、のり面101に挿入されることでのり面101を補強する。補強材31は、すべり土塊の滑動力に対抗してのり面101の崩壊を防止する。補強材31は、のり面101に形成された地中孔Hに挿入される。地中孔Hは、例えば、のり面101からすべり面102よりも深い位置まで削孔されている。地中孔Hのなかで補強材31を除く部分には、グラウトGが充填されている。補強材31は、グラウトGを介して地山100と一体になるように設置されることで、地山100全体の安定性を高める。
【0023】
補強材31は、第1端部31Aと、第2端部31Bとを備える。第1端部31Aは、補強材31が備える一端である。第2端部31Bは、補強材31が備える他端である。補強材31は、第1端部31Aをのり面101から突出させる。補強材31の第2端部31Bは、一例として、すべり面102よりも深くに配置される。この場合、補強材31は、すべり面102に跨って地山100に定着される。補強材31の第1端部31Aは、支持シート22の固定孔22Hに挿通されている。なお、補強材31の挿入される深さは、のり面101を安定化させるように設計された深さであればよく、すべり面102に達しない深さでもよい。
【0024】
図4に示すように、支圧板32は、ナット33を介して第1端部31Aに取り付けられる。支圧板32は、矩形板状でもよいし、円形板状でもよいし、他の形状を有した板状部材であってもよい。支圧板32は、一例として、正方形の板状部材である。支圧板32は、取付領域20Bに位置する支持シート22を介してのり面101に接地する。すなわち、支圧板32は、支持シート22の一部をのり面101に押し付けることで支持シート22の一部をのり面101に固定しつつ、のり面101の表層部分を拘束する。取付領域20Bに位置する支持シート22の一部は、のり面101と支圧板32とによって挟持される。なお、支圧板32は、太陽電池モジュール21と接触しないように配置される。
【0025】
[第1実施形態:太陽電池シートの設置方法]
第1実施形態における太陽電池シート20の設置方法は、まず、削孔機を用いてのり面101に所定の径、深さの地中孔Hを削孔する。次に、地中孔Hに補強材31を挿入する。次に、地中孔HにグラウトGを注入する。次に、太陽電池シート20をのり面101に配置する。このとき、支持シート22の固定孔22Hに補強材31の第1端部31Aが挿通される。次に、第1端部31Aに支圧板32を配置した後、第1端部31Aにナット33を螺合させて締結することで、第1端部31Aに支圧板32を固定する。これにより、のり面101を支持体30によって補強しつつ、支持体30によってのり面101に太陽電池シート20が取り付けられる。
【0026】
[第1実施形態の作用]
取付領域20Bに位置する支持シート22の一部は、固定孔22Hに補強材31の第1端部31Aが挿通された状態で、のり面101と支圧板32とで挟持される。これにより、のり面101の補強を担う支持体30は、補強材31によってのり面101に対して固定されると共に、太陽電池シート20をのり面101上で支持する。
【0027】
[第1実施形態の効果]
第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)のり面101の補強を担う支持体30が太陽電池シート20をのり面101に取り付ける。そのため、のり面101のすべりや変形を抑制しつつ、太陽電池シート20をのり面101に取り付けることができる。これにより、のり面101の安定性を向上させながら発電できる。また、のり面101の補強と、のり面101への太陽電池シート20の取り付けとが各別の構造に担われる場合よりも、太陽電池シート20の支持構造を簡略化できる。
【0028】
(1-2)可撓性を有した太陽電池シート20は、架台を用いる太陽電池アレイより軽量かつ柔軟である。そのため、太陽電池シート20をのり面101に設置することで、太陽電池アレイをのり面101に設置する場合よりも運搬性や施工性が向上する。また、可撓性を有する太陽電池シート20であれば、のり面101が凹凸を有する場合でも容易に設置することができる。太陽電池シート20であれば、飛び石等の飛来物の衝突による割れ、破損が生じ難くなる。
【0029】
(1-3)のり面101のうち土が露出した部分が太陽電池シート20によって覆われる場合、太陽電池シート20の遮水作用が、当該部分への水の浸透、及び、当該部分の浸食を抑制する。そのため、のり面101の安定性をより高めることができる。
【0030】
(1-4)太陽電池シート20の設置時には、固定孔22Hに配置された補強材31に支持シート22が挿通された後、支圧板32が取り付けられることで支持シート22がのり面101と支圧板32とに挟持される。そのため、補強材31と固定孔22Hとの係合によって、のり面101に対する太陽電池シート20の位置ずれが抑制された状態で、太陽電池シート20をのり面101に取り付けることができる。したがって、太陽電池シート20の取り付けの作業効率を向上できる。
【0031】
[第1実施形態の変更例]
図5に示すように、1つの支持体30によって、複数の太陽電池シート20をのり面101に対して取り付ける構成としてもよい。例えば、図5に示す例では、2つの太陽電池シート20の取付領域20Bが重ねて配置されるとともに、1つの補強材31が各太陽電池シート20の固定孔22Hに挿通されている。そして、2つの太陽電池シート20の取付領域20Bが1つの支圧板32とのり面101とによって挟持されることで、各太陽電池シート20がのり面101に取り付けられる。
【0032】
・固定孔22Hにハトメのような保護具を設ける場合、支圧板32のうち当該保護具と接する面に滑り止め加工を設けてもよい。滑り止め加工は、例えば、摩擦力を高めるためのゴムシートでもよいし、表面粗さを大きくすることで摩擦力を高めるような凹凸形状であってもよい。
【0033】
[第2実施形態]
以下、図6図11を用いて、本発明の第2実施形態を説明する。
図6に示すように、第2実施形態において、のり面101には、第1実施形態と同様に複数の支持体30を用いたのり面保護工の一例である地山補強土工が施されている。また、のり面101には、複数の支持体30によって太陽電池シート20が取り付けられている。
【0034】
図6では、2枚の太陽電池シート20がのり面101の横方向に並んで取り付けられた状態を図示している。この場合、2枚の太陽電池シート20の間に位置する支持体30は、2枚の太陽電池シート20をのり面101に取り付けている。
【0035】
図7に示すように、支持シート22は、取付領域20Bに位置する外縁部22Eを備える。第2実施形態では、支持シート22における外縁部22Eの一部が、のり面101と支圧板32とで挟持される。これにより、太陽電池シート20がのり面101に取り付けられる。なお、第2実施形態では、支持シート22は固定孔22Hを備えていない。また、図7では、2枚の太陽電池シート20の間に位置する支持体30を示している。
【0036】
[第2実施形態:太陽電池シートの設置方法]
第2実施形態における太陽電池シート20の設置方法は、第1実施形態と同じく、地中孔Hの削孔、補強材31の配置、およびグラウトGの注入を行う。次に、太陽電池シート20の設置方法は、支持シート22の外縁部22Eが支圧板32とのり面101との間に挟まれるように、太陽電池シート20及び支圧板32をのり面101に配置する。
【0037】
[第2実施形態の作用]
支持シート22における外縁部22Eの一部がのり面101と支圧板32とで挟持される。これにより、のり面101の補強を担う支持体30は、補強材31によってのり面101に対して固定されると共に、太陽電池シート20をのり面101上で支持する。
【0038】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態によれば、上記(1-1)~(1-3)に加えて以下の効果が得られる。
(2-1)支持シート22における外縁部22Eの一部がのり面101と支圧板32とで挟持される。そのため、支持シート22が固定孔22Hを備えずとも、太陽電池シート20の取り付けが可能となる。これにより、太陽電池シート20の構成の簡略化や、固定孔22Hの形成に伴う強度低下の抑制が可能となる。
【0039】
[第2実施形態の変更例]
第2実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
図8に示すように、支圧板32の形状は、正方形状に限定されない。例えば、支持体30は、十字状の支圧板32Aを備えてもよいし、長方形状の支圧板32Bを備えてもよい。十字状の支圧板32Aは、支持シート22の外縁部22Eのうち支持シート22の角部と重なるように配置される。長方形状の支圧板32Bは、支持シート22の外縁部22Eのうち一方向に伸びる部分に沿って、当該部分と重なるように配置される。このような構成によれば、支圧板32A,32Bと太陽電池モジュール21との干渉を防ぎつつ、支持シート22と重なる面積を増やすことができる。したがって、のり面101に取り付けられた太陽電池シート20の姿勢をより安定させることができる。
【0040】
・第2実施形態においても、2つの太陽電池シート20の取付領域20Bが重ねて配置されるとともに、各太陽電池シート20の取付領域20Bが1つの支圧板32とのり面101とによって挟持される構成としてもよい。
【0041】
図9に示すように、支持体30は、支圧板32とのり面101との間に太陽電池シート20の外縁部22Eを挟持する構成に代えて、支圧板32とは別に外縁部22Eを挟持する保持体90を備えてもよい。保持体90は、例えば、上下で一対の保持板90Aと、締結部材90Bとを備える。一対の保持板90Aは、太陽電池シート20の外縁部22Eを挟持する。締結部材90Bは、外縁部22Eに設けられた孔部22Bに挿通される。孔部22Bには、ハトメなどが設けられてもよい。締結部材90Bは、外縁部22Eを挟持する一対の保持板90A同士を締結する。保持体90は、上下で一対の保持板90Aが支圧板32とナット33との間に配置されるとともに、一対の保持板90Aが支圧板32とナット33とで挟み込まれることで補強材31の第1端部31Aに固定される。なお、締結部材90Bは、一対の保持板90A同士を締結した状態で、さらに支圧板32に設けられた締結孔に固定されてもよい。言い換えれば、締結部材90Bは、一対の保持板90Aと支圧板32との3つの部材をまとめて締結してもよい。
【0042】
図10に示すように、保持体90は、複数の太陽電池シート20の外縁部22Eを挟持してもよい。図10では、4つの太陽電池シート20の外縁部22E(角部)を保持体90によって挟持する構成を図示している。このように保持体90を備える支持体30によっても、太陽電池シート20をのり面101上で支持できる。
【0043】
図11に示すように、保持体90は、上下で一対の保持板90Aを備える構成に限定されず、一対の保持板90Aのうち上部に位置する保持板90Aをキャップ保持板90Cに代えてもよい。保持体90は、保持板90Aとキャップ保持板90Cとによって太陽電池シート20の外縁部22Eを挟持する。締結部材90Bは、保持板90Aとキャップ保持板90Cとを締結する。保持体90は、保持板90Aが支圧板32とナット33とによって挟み込まれることで補強材31の第1端部31Aに固定される。キャップ保持板90Cは、ナット33と干渉を避けるための間隙部90Dを備える。キャップ保持板90Cには、保護キャップ90Eが取り付けられる。保護キャップ90Eの内部には、防錆剤90Fが充填される。防錆剤90Fは、補強材31の第1端部31Aを覆う。このように保護キャップ90Eを取り付けるためのキャップ保持板90Cを有する保持体90を備える支持体30によっても、太陽電池シート20をのり面101上で支持できる。
【0044】
[第3実施形態]
以下、図12図14を用いて、本発明の第3実施形態を説明する。
第3実施形態では、既設の補強材31及び支圧板32を備える太陽電池シート20の支持構造及び太陽電池シート20の設置方法について説明する。
【0045】
図12に示すように、第3実施形態において、支持体30は、固定板34を備える。固定板34は、既設の補強材31の第1端部31Aにおいて、既設の支圧板32の上部に着脱可能に配置される。第3実施形態では、取付領域20Bに位置する支持シート22の一部が支圧板32と固定板34との間に配置される。図12では、第1実施形態のように、支持シート22の固定孔22Hに補強材31が挿通された状態を図示している。
【0046】
固定板34は、ナット35を介して第1端部31Aに取り付けられる。固定板34は、矩形板状でもよいし、円形板状でもよいし、他の形状を有した板状部材であってもよい。取付領域20Bに位置する支持シート22の一部が支圧板32と固定板34とによって挟持されることによって、太陽電池シート20がのり面101に取り付けられる。支持体30では、ナット35を取り外すことで、第1端部31Aから固定板34を取り外し、これによって太陽電池シート20を取り外すことができる。
【0047】
なお、既設の支圧板32の上部にナット33等が設けられている場合には、太陽電池シート20及び固定板34が当該ナット33と干渉しないように、固定孔22Hの径や固定板34の形状が適宜変更されてもよい。また、固定板34がナット33と干渉しないように、支持シート22を挟む支圧板32と固定板34との間に、補助板などのスペーサを設けてもよい。
【0048】
[第3実施形態:太陽電池シートの設置方法]
第3実施形態における太陽電池シート20の設置方法は、支持シート22の固定孔22Hに既設の補強材31を挿通すると共に、既設の支圧板32の上に支持シート22を配置する。その後、支持シート22の上に固定板34を配置した後、第1端部31Aにナット35を螺合させて締結することで、第1端部31Aに固定板34を取り付ける。これにより、のり面101の補強を担う支持体30は、補強材31によってのり面101に対して固定されると共に、太陽電池シート20をのり面101上で支持する。
【0049】
[第3実施形態の作用]
第3実施形態の構成によれば、既設の補強材31及び支圧板32を介して太陽電池シート20をのり面101に取り付けることができる。したがって、既に地山補強土工等ののり面補強土工が施されたのり面101においても、支持体30を介して太陽電池シート20を取り付けることができる。
【0050】
[第3実施形態の効果]
第3実施形態によれば、上記(1-1)~(1-4)に加えて以下の効果が得られる。
(3-1)支持体30を構成する補強材31と支圧板32とが既設であるため、のり面保護工が行われたのり面101に太陽電池シート20の支持構造が適用される。
【0051】
(3-2)支圧板32と固定板34とが支持シート22を挟持するため、支圧板32やナット33を取り外さずとも、固定板34を取り外すだけで太陽電池シート20を取り外すことができる。そのため、太陽電池シート20の取り外しが容易となる。
【0052】
[第3実施形態の変更例]
第3実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
図12では、第1実施形態のように支持シート22が備える固定孔22Hに補強材31が挿通された状態で、太陽電池シート20が取り付けられる構成を例示した。これに限定されず、例えば、図13に示すように、支圧板32と固定板34とによって支持シート22の外縁部22Eの一部を挟持する構成であってもよい。この場合でも、上記(3-1)や(2-1)に準じた効果を得ることができる。
【0053】
・のり面101に対して既設の補強材31及び支圧板32と、新設の固定板34とを用いて太陽電池シート20をのり面101に取り付ける構成を例示した。これに限定されず、のり面101に補強材31及び支圧板32を新設する場合であっても、さらに、固定板34を設けることで、支圧板32と固定板34とによって支持シート22を挟持する構成としてもよい。この場合、支圧板32と固定板34との間にナット33が設けられてもよいし、ナット33を割愛してナット35のみで支圧板32と固定板34とを第1端部31Aに取り付けてもよい。ナット33を割愛する場合は、支持体30の構成が簡略化される点で好ましい。また、支圧板32と固定板34との間にナット33が設けられる場合は、太陽電池シート20を取り外すために固定板34が取り外される場合でも、ナット33によって支圧板32がのり面101に対してより確実に固定される点で好ましい。
【0054】
・支持体30が固定板34を備える場合の支持体30の構成は、図12及び図13に示す構成に限定されない。例えば、図14に示すように、支持体30は、支圧板32とナット33との間に配置されるワッシャ33Aと、固定板34とナット35との間に配置されるワッシャ35Aとを備えてもよい。また、支持体30は、ワッシャ33A及びワッシャ35Aのうち何れか一方のみを備えてもよい。なお、第1実施形態や第2実施形態においても、支持体30は、支圧板32とナット33との間に配置されるワッシャ33Aを備えてもよい。
【0055】
・固定板34が第1端部31Aに対して着脱可能に取り付けられる構成を例示したが、固定板34が第1端部31Aに対して着脱不能に固定されてもよい。この場合でも、上記(3-1)に準じた効果が得られる。
【0056】
・支圧板32と固定板34とによって支持シート22を挟持する場合、支圧板32と支持シート22との間、及び、固定板34と支持シート22との間の少なくとも一方に接着剤を設けてもよい。同様に、第1実施形態や第2実施形態において、支圧板32とのり面101によって支持シート22を挟持する場合、支圧板32と支持シート22との間に接着剤を設けてもよい。
【0057】
・既設の支圧板32と、支圧板32の上に配置された固定板34とによって支持シート22を挟持する構成に代えて、太陽電池シート20の外縁部22Eを挟持する構造体を既設の支圧板32に取り付けてもよい。例えば、支持体30は、支圧板32に溶接される鋼板と、鋼板上で外縁部22Eを挟持する構造体(例えば、保持体90)とを備えてもよい。例えば、鋼板は、支圧板32の外縁部を囲う孔部を備える。鋼板及び支圧板32は、鋼板の孔部に支圧板32が嵌め込まれた状態で、鋼板と支圧板32の外縁部とが溶接される。この場合、鋼板及び支圧板32は、のり面101において、吹付材やのり枠が設けられた平坦面に配置されることが好ましい。この場合、支圧板32を固定するナット33を取り外さずとも、のり面101に太陽電池シート20を取り付けることができる。
【0058】
[第4実施形態]
以下、図15図16を用いて、本発明の第4実施形態を説明する。
図15に示すように、第4実施形態において、太陽電池シートの支持構造は、太陽電池シート20、複数の支持体30、及び一対のワイヤ40を備える。ワイヤ40は、のり面101に沿って上下に延在する。ワイヤ40の上端は、上下に並ぶ支持体30のなかの上側に位置する支持体30に固定されている。ワイヤ40の下端は、上下に並ぶ支持体30のなかの下側に位置する支持体30に固定される。
【0059】
ワイヤ40は、例えば、ワイヤ40の各端を環状に構成した輪に補強材31を挿通させた状態で、のり面101と支圧板32とで挟持されてもよい。なお、ワイヤ40は、支圧板32と固定板34とで挟持されてもよく、支圧板32や固定板34以外の他の部材によって支持体30に固定されてもよい。
【0060】
図16に示すように、第4実施形態の太陽電池シート20における支持シート22は、一対の筒状部22Aを備える。一対の筒状部22Aは、太陽電池モジュール21を挟んで設けられる。一対の筒状部22Aは、取付領域20Bに位置する中空の部分である。一対の筒状部22Aは、一例として、支持シート22の横方向の各端が筒状に巻かれて構成される。各筒状部22Aには、ワイヤ40が一本ずつ挿通される。
【0061】
[第4実施形態:太陽電池シートの設置方法]
第4実施形態における太陽電池シート20の設置方法は、まず、太陽電池シート20において、予め支持シート22の一対の筒状部22Aの各々にワイヤ40を挿通する。そして、上下に並ぶ支持体30にワイヤ40の各端が固定されることで、太陽電池シート20が支持体30及びワイヤ40によってのり面101に取り付けられる。
【0062】
具体的には、第1実施形態と同様に、地中孔Hに補強材31を配置してグラウトGを注入する。その後、ワイヤ40の端部に設けた輪に補強材31の第1端部31Aを挿通させた状態で支圧板32を取り付けることで、のり面101と支圧板32とでワイヤ40を挟持する。もしくは、第3実施形態と同様に、支圧板32を第1端部31Aに取り付けた後、ワイヤ40の端部に設けた輪に補強材31の第1端部31Aを挿通させた状態で固定板34を取り付ける。これにより、支圧板32と固定板34とでワイヤ40を挟持してもよい。この場合、既設の補強材31及び支圧板32によって太陽電池シート20をのり面101に取り付けることも、あるいは新設の補強材31及び支圧板32によって太陽電池シート20をのり面101に取り付けることもできる。
【0063】
[第4実施形態の作用]
太陽電池シート20の支持シート22にワイヤ40を挿通すると共に、ワイヤ40を支持体30に取り付けることで、太陽電池シート20が支持体30及びワイヤ40によってのり面101に取り付けられる。これにより、ワイヤ40が挿通された支持シート22の一辺の全体がワイヤ40によって支持される。
【0064】
[第4実施形態の効果]
第4実施形態によれば、上記(1-1)~(3-2)に加えて以下の効果が得られる。
(4-1)支持体30のみでのり面101に太陽電池シート20を取り付ける場合よりも、ワイヤ40によって支持シート22がより広範囲で支持されるため、太陽電池シート20の姿勢の安定性が向上する。
【0065】
(4-2)ワイヤ40の重量が太陽電池シート20の荷重となるため、例えば、1つのワイヤ40を巻取軸として太陽電池シート20を捲回することもできる。そして、他のワイヤ40を持ち手として、捲回された太陽電池シート20を巻き出すこともできるため、太陽電池シート20の設置および取り外しの際の作業性を向上できる。
【0066】
[第4実施形態の変更例]
第4実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
図15では、ワイヤ40の各端が、のり面101内で上下に並ぶ支持体30に固定される構成を例示した。これに代えて、ワイヤ40の少なくとも一部が、のり面101を補強する補強材31によってのり面101に固定された支持体30を介して固定されるのであれば、ワイヤ40の上端がのり肩に固定されてもよいし、ワイヤ40の下端がのり尻に固定されてもよい。のり肩もしくはのり尻におけるワイヤ40の固定には、例えば、後述するピン50(図18参照)を用いることができる。
【0067】
・支持シート22の上下に延びる2つの辺に筒状部22Aを設ける構成に代えて、もしくは当該構成に加えて、支持シート22の横方向に延びる2つの辺に筒状部22Aを設けると共に、横方向に伸びる筒状部22Aにワイヤ40を挿通してもよい。また、この場合についても、支持シート22の上縁側に位置するワイヤ40の各端がのり肩に固定されてもよいし、支持シート22の下縁側に位置するワイヤ40の各端がのり尻に固定されてもよい。
【0068】
・支持シート22が備える1つの辺に複数の筒状部22Aが設けられてもよい。この場合、各筒状部22Aにワイヤ40が挿通されてもよい。支持シート22が備える1つの筒状部22Aに複数のワイヤ40が挿通されてもよい。すなわち、支持シート22が備える1つの辺を複数のワイヤ40によって支持してもよい。この場合でも、支持シート22が備える1つの辺に配置される複数のワイヤ40のうち、少なくとも1つのワイヤ40の一部が、のり面101に配置された支持体30を介して固定されればよい。したがって、例えば、支持シート22の上下に延びる1つの辺に複数のワイヤ40が配置される場合、最上部に位置するワイヤ40の上端は、のり面101内に配置された支持体30に固定されてもよいし、のり肩に固定されてもよい。最下部に位置するワイヤ40の下端は、のり面101内に配置された支持体30に固定されてもよいし、のり尻に固定されてもよい。
【0069】
・ワイヤ40は、ワイヤ40の端部以外の部分に支持体30と係合可能な係合部を備えてもよい。例えば、ワイヤ40の両端の間の任意の位置に係合部が設けられると共に、支持シート22の1つの辺に位置する筒状部22Aが2つに分割されることで、2つの筒状部22Aの間から係合部が外部に配置される。これにより、ワイヤ40の端部以外の位置を支持体30と係合できる。例えば、係合部を備えるワイヤ40が上下方向に配置される場合、ワイヤ40の係合部がのり面101内に配置された支持体30に固定される。この場合、ワイヤ40の上端は、のり面101内に配置された支持体30に固定されてもよいし、のり肩に固定されてもよい。また、ワイヤ40の下端は、のり面101内に配置された支持体30に固定されてもよいし、のり尻に固定されてもよい。
【0070】
[第1~第4実施形態の変更例]
上記の第1~第4実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態の変更例及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0071】
図17に示すように、太陽電池シート20は、太陽電池モジュール21の最表面を覆う表面保護シート24を備えてもよい。表面保護シート24は、透光性を有する。表面保護シート24は、取付領域20Bにおいて、接着層23を介して支持シート22と接着される。支持シート22と表面保護シート24との接着には、例えば、接着層23に代えて熱融着を用いてもよい。このような構成であれば、太陽電池モジュール21の全周を支持シート22及び表面保護シート24によって覆うことができるため、太陽電池シート20の耐衝撃性や耐水性をより高めることができる。なお、図17に示す太陽電池シート20においても、接着層23に代えて、もしくは、接着層23に加えて、太陽電池モジュール21と支持シート22との間に、封止層21Bと同種の材料で構成される緩衝層を備えてもよい。また、太陽電池モジュール21と表面保護シート24との間に、封止層21Bと同種の材料で構成される緩衝層を備えてもよい。
【0072】
図18に示すように、のり面101の一部に土が露出している場合、太陽電池シート20は、支持体30に加えて、土に挿入されるピン50によって固定されてもよい。すなわち、太陽電池シート20の支持構造は、支持体30に加えてピン50を備えてもよい。この場合、支持シート22は、ピン50が挿通される孔部22Bを備えてもよい。ピン50は、例えば、のり面101からすべり面102よりも浅い位置まで挿入される。このような構成によれば、太陽電池シート20の姿勢の安定性を向上させることができる。
【0073】
・第1実施形態~第4実施形態では、例えば、地山補強土工に用いられる棒状の補強材31によって支持体30がのり面101に固定される構成を例示した。これに代えて、のり面保護工は、のり面101の風化、浸食、表流水の浸透防止を目的とした構造物工であって、例えば、のり面101に吹付材を設ける吹付工でもよい。のり面保護工は、のり面101の表層部の崩落防止、多少の土圧を受けるおそれのある箇所の土留め、岩盤はく落防止を目的とした構造物工であって、のり面101にのり枠を設けるコンクリート枠工でもよい。また、のり面保護工は、吹付工とコンクリート枠工とを組み合わせた吹付枠工でもよい。
【0074】
図19に示すように、のり面101にのり枠が設けられる場合や、のり面101にモルタルやコンクリート等の吹付材が設けられる場合には、太陽電池シート20の支持構造は、のり枠または吹付材に固定される固定治具60を備えてもよい。固定治具60は、取付領域20Bに位置する支持シート22を挟持する。固定治具60は、例えば、下側部材61と、上側部材62と、締結部材63とを備える。下側部材61は、支持シート22に対してのり面101側に位置する。上側部材62は、支持シート22に対して下側部材61と反対側に位置する。締結部材63は、下側部材61と上側部材62とをのり面101に設けられたのり枠または吹付材に対して固定する。このような固定治具60であれば、下側部材61と上側部材62とが支持シート22を挟持した状態で、下側部材61と上側部材62とをのり面101に対して固定できる。
【0075】
このような構成によれば、太陽電池シート20がのり面101においてのり枠または吹付材が設けられた部分を覆う場合に、太陽電池シート20の姿勢の安定性を向上できる。なお、太陽電池シート20の支持構造が支持体30を備えない場合であっても、のり面101に太陽電池シート20を固定する効果は、のり枠または吹付材と締結部材63との締結によって得られる。すなわち、のり枠または吹付材は、のり面101を補強する補強材の一例である。固定治具60は、太陽電池シート20をのり面101上で支持するとともに、のり枠または吹付材によってのり面101に対して固定されている支持体の一例である。のり枠または吹付材は、新設でもよいし、既設でもよい。
【0076】
なお、固定治具60は、図19に示す構成に限定されない。例えば、固定治具60は、肉厚の薄い帯状の鋼材であるフラットバーであってもよい。この場合、のり面101とフラットバーとの間に支持シート22が配置された状態で、フラットバーがのり枠または吹付材に固定されることにより、支持シート22がのり面101とフラットバーとに挟持される。フラットバーは、任意の形状のものを採用することができる。例えば、フラットバーには、肉抜きや、のり枠または吹付材にフラットバーを固定するための孔などが設けられてもよい。
【0077】
図20及び図21には、固定治具60の別例を示す。図20に示すように、固定治具60は、支持シート22の端部に設けられた筒状部22Aが挿通される支持軸65を備えてもよい。支持軸65は、取付部材66を介してのり枠101Aに取り付けられる。取付部材66は、支持軸65の各端に配置される。なお、図20では、のり枠101Aにドットを付して示す。図20では、固定治具60が2つの支持軸65を備える構成を例示している。
【0078】
図21に示すように、取付部材66は、上側部材66Aと、下側部材66Bと、締結部材66Cと、クランプ部材66Dとを備える。支持軸65は、上側部材66Aと下側部材66Bとの間に挟み込まれることによって取付部材66に保持される。締結部材66Cは、上側部材66Aと下側部材66Bとを締結する。下側部材66Bは、下方に突き出る一対の突出片66Eを備える。クランプ部材66Dは、一対の突出片66Eの間にのり枠101Aを位置させた状態で一対の突出片66Eを互いに近づけるように締め付ける。これにより、一対の突出片66Eがのり枠101Aを挟み込むことによって、取付部材66がのり枠101Aに固定される。このように支持軸65と取付部材66とを備える固定治具60によっても、太陽電池シート20をのり面101上で支持できる。なお、のり枠101Aに取付部材66を取り付けるための取付手段は、クランプ部材66Dによるものに限定されず、例えば、一対の突出片66Eをのり枠101Aにボルト止めしてもよい。
【0079】
図22には、固定治具60他の別例を示す。図22に示すように、固定治具60は、支持シート22の外縁部22Eを挟持する保持体67と、保持体67をのり枠101Aに取り付けるための取付部材68とを備えてもよい。保持体67は、上側保持板67Aと、下側保持板67Bと、締結部材67Cとを備える。下側保持板67Bは、上側保持板67Aよりも大きい。保持体67は、上側保持板67Aと下側保持板67Bとによって太陽電池シート20の外縁部22Eを挟持する。なお、図22では、複数の上側保持板67Aと1つの下側保持板67Bとによって、複数の太陽電池シート20の外縁部22Eを挟持する構成を図示している。締結部材67Cは、外縁部22Eに設けられた孔部22Bに挿通される。孔部22Bには、ハトメなどが設けられてもよい。締結部材67Cは、外縁部22Eを挟持する上側保持板67Aと下側保持板67Bとを締結する。
【0080】
取付部材68は、下方に突き出る一対の突出片68Aを備える。取付部材68は、クランプ部材68Bを介してのり枠101Aに固定される。クランプ部材68Bは、一対の突出片68Aの間にのり枠101Aを位置させた状態で一対の突出片68Aを互いに近づけるように締め付ける。保持体67及び取付部材68は、締結部材69によって締結される。このように保持体67と取付部材68とを備える固定治具60によっても、太陽電池シート20をのり面101上で支持できる。なお、のり枠101Aに取付部材68を取り付けるための取付手段は、クランプ部材68Bによるものに限定されず、例えば、一対の突出片68Aをのり枠101Aにボルト止めしてもよい。
【0081】
図23に示すように、太陽電池シート20の支持構造は、上端支持部材70を備えてもよい。上端支持部材70には、取付領域20Bに位置する支持シート22の上端が接続される。上端支持部材70は、例えば、のり面101、のり肩103、路面、地山等の太陽電池シート20が設置される用地に配置される。上端支持部材70は、例えば、アンカーボルトと一体化されることで、地山100に対して安定した状態で配置される。図23では、上端支持部材70がのり面101と連続する上面に配置される状態を図示しているが、上端支持部材70がのり面101に配置されてもよい。上端支持部材70の一例は、のり肩103に沿って延びる支持軸71を備える。支持シート22の上端は、筒状部22Aを備える。支持シート22は、上端に位置する筒状部22Aに支持軸71が挿通されることによって、支持シート22の上端が上端支持部材70に接続される。したがって、太陽電池シート20が上端支持部材70に吊り下げられる状態となる。これにより、例えば、太陽電池シート20を上端支持部材70に吊り下げた状態で太陽電池シート20をのり面101に設置することができるため、のり面101への太陽電池シート20の設置が容易となる。
【0082】
また、例えば、のり面101の点検時等に太陽電池シート20をのり面101から一時的に取り外すことを要する場合、太陽電池シート20を上端で保持した状態で、太陽電池シート20を捲ったり、巻き上げたりすることができる。したがって、太陽電池シート20が設置されたのり面101の点検時の作業性を向上できる。なお、図20に示す支持軸65を備える固定治具60においても同様の効果を得ることができる。
【0083】
この場合、太陽電池シート20は、のり面101に対して巻き取り可能な状態で設置される。巻き取り可能な状態とは、例えば、支持体30による太陽電池シート20の取り付けを一時的に解除可能、かつ、当該取り付けが解除されたときに支持シート22の一端がのり面101またはその近傍に吊り下げられる状態である。したがって、支持体30による太陽電池シート20の取り付けを解除し易くする観点から、第3実施形態のように支持体30が固定板34を備える構成としてもよい。また、太陽電池シート20の巻き上げを容易にする観点から、支持軸71の端部には、支持軸71を回転させる際の取手となる摘まみ部が設けられてもよい。
【0084】
図24に示すように、太陽電池シート20の支持構造は、端部固定部材80を備えてもよい。端部固定部材80は、例えば、シート状、もしくはネット(網)状の部材である。端部固定部材80は、例えば、のり面101のなかの土が露出した部分にピン50等を介して取り付けられる。端部固定部材80は、支持シート22の外縁部22Eに位置する1つの辺の全体を覆うことで、支持シート22の外縁部22Eに位置する1つの辺をのり面101に固定する。これにより、端部固定部材80は、支持シート22の捲れを抑える。なお、図24では、支持シート22の上端を端部固定部材80が覆うと共に、支持シート22の下端を他の端部固定部材80が覆う構成を例示している。
【0085】
・太陽電池シート20において、1つの支持シート22に対して複数の太陽電池モジュール21が接着されてもよい。
・上記第1実施形態~第4実施形態では、のり面保護工の一例である地山補強土工に用いられる支持体30を用いて太陽電池シート20をのり面101に取り付ける構成を例示した。これに限定されず、例えば、のり面保護工の一例であるグラウンドアンカー工によって配置される支持体を用いて太陽電池シート20をのり面101に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0086】
G…グラウト、H…地中孔、20…太陽電池シート、20A…発電領域、20B…取付領域、21…太陽電池モジュール、21A…光電変換層、21B…封止層、21C…表面保護層、21D…裏面保護層、22…支持シート、22A…筒状部、22B…孔部、22E…外縁部、22H…固定孔、23…接着層、24…表面保護シート、30…支持体、31…補強材、31A…第1端部、31B…第2端部、32,32A,32B…支圧板、33,35…ナット、33A,35A…ワッシャ、34…固定板、40…ワイヤ、50…ピン、60…固定治具、61,66B…下側部材、62,66A…上側部材、63,66C,67C,69,90B…締結部材、65,71…支持軸、66,68…取付部材、66D,68B…クランプ部材、66E,68A…突出片、67,90…保持体、67A…上側保持板、67B…下側保持板、70…上端支持部材、80…端部固定部材、90A…保持板、90C…キャップ保持板、90D…間隙部、90E…保護キャップ、90F…防錆剤、100…地山、101…のり面、101A…のり枠、102…すべり面、103…のり肩。
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