(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165311
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】複室容器
(51)【国際特許分類】
A61J 1/05 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
A61J1/05 351A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081412
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000149435
【氏名又は名称】株式会社大塚製薬工場
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】上野 嘉輝
(72)【発明者】
【氏名】川島 悠司
(72)【発明者】
【氏名】越後 幸代
(72)【発明者】
【氏名】眞野 滋行
(72)【発明者】
【氏名】名護 由華
(72)【発明者】
【氏名】三好 雅子
(72)【発明者】
【氏名】宮本 英高
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047AA13
4C047BB08
4C047BB11
4C047BB12
4C047BB13
4C047BB17
4C047CC04
4C047CC13
4C047CC21
4C047DD12
4C047DD22
4C047DD23
4C047DD24
4C047DD25
4C047DD27
4C047DD33
4C047DD34
4C047HH04
4C047HH06
(57)【要約】
【課題】
薬液の投与前に、使用者による薬液混合作業の失念を防止可能な複室容器を提供すること。
【解決手段】
吊穴が設けられる複室容器は、第1薬剤が収納される第1収納部、第2薬剤が収納される第2収納部、及び、第1収納部と第2収納部とを仕切る剥離可能な仕切部を有する容器本体と、吊穴を覆うシールと、を備え、容器本体と、シールとのそれぞれには、第1薬剤と第2薬剤とを混合するための方策が表示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊穴が設けられる複室容器であって、
第1薬剤が収納される第1収納部、第2薬剤が収納される第2収納部、及び、前記第1収納部と前記第2収納部とを仕切る剥離可能な仕切部を有する容器本体と、
前記吊穴を覆うシールと、
を備え、
前記容器本体と、前記シールとのそれぞれには、前記第1薬剤と前記第2薬剤とを混合するための方策が表示される、
複室容器。
【請求項2】
前記方策は、前記第1薬剤と前記第2薬剤とを混合するための複数の手順を含む、請求項1に記載の複室容器。
【請求項3】
前記シールは、前記吊穴を覆う被覆部を有し、
前記シールに表示される前記方策は、前記被覆部を剥がして前記吊穴を露出するための手順をさらに含む、請求項1または2に記載の複室容器。
【請求項4】
前記吊穴が設けられると共に前記容器本体の上縁から延在するフラップ部をさらに備え、
前記シールは、前記フラップ部を前記容器本体上に固定する、請求項1または2に記載の複室容器。
【請求項5】
前記フラップ部の幅は、前記容器本体の幅よりも小さく、
前記シールは、前記フラップ部を覆う、請求項4に記載の複室容器。
【請求項6】
前記シールには、前記第1薬剤と前記第2薬剤との混合を促す第1混合促進表示が設けられ、
前記フラップ部において前記シールが貼り付けられる面とは反対側の裏面には、前記第1薬剤と前記第2薬剤との混合を促す第2混合促進表示が設けられる、請求項4に記載の複室容器。
【請求項7】
正面視にて、前記シールの大きさは、前記容器本体の大きさの5%以上30%以下であり、
前記シールには、前記方策に加えて、前記第1薬剤と前記第2薬剤との混合を促す混合促進表示が設けられ、
前記シールにおいて、前記方策に含まれる文字のサイズと、前記混合促進表示に含まれる文字のサイズとのそれぞれは、7pt以上72pt以下である、請求項1または2に記載の複室容器。
【請求項8】
前記容器本体の表面に前記方策が表示され、
前記シールが前記フラップ部を前記容器本体上に固定しているとき、前記容器本体に表示される前記方策に含まれる文字の向きと、前記シールに表示される前記方策に含まれる文字の向きとは、上下方向において互いに同一である、請求項4に記載の複室容器。
【請求項9】
前記容器本体が前記仕切部に沿って折り畳まれているとき、前記容器本体に表示される前記方策と、前記シールに表示される前記方策とのそれぞれが視認可能である、請求項8に記載の複室容器。
【請求項10】
前記容器本体において、前記第1収納部に重なる第1部分には前記方策の一部が表示され、前記第2収納部に重なる第2部分には前記方策の他の一部が表示され、
前記仕切部は、前記第1部分もしくは前記第2部分が圧迫されることによって剥離される、請求項8に記載の複室容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複室容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、静脈注射によって患者に投与される二種以上の薬液を、無菌状態で混合して使用するために複数の室を有する複室容器が知られている。このような複室容器は、剥離可能な隔壁によって区画されている複数の室内に各薬液等を分別して収容している。このため、複室容器の使用直前に、隔壁を剥離させる。これにより、各室内が連通されて薬液が混合される。
【0003】
複室容器の利用者が、薬液を混合させることを失念すること、混合させたと思い込むことなどにより、未混合の薬液が患者に投与される問題が発生し得る。このような問題発生を防止すべく、様々な工夫がなされている。例えば、下記特許文献1には、薬剤室の表面に薬液混合のための圧迫操作を促す表示を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されるような複室容器を使用した場合、当該複室容器の使用者に薬液混合の注意喚起を促すことについて効果があるといえる。しかしながら、上述した問題発生をより確実に防止するためには、注意喚起をより十分に行うための改善の余地がある。
【0006】
本発明の一側面に係る目的は、薬液の投与前に、使用者による薬液混合作業の失念を防止可能な複室容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る複室容器は、吊穴が設けられる複室容器であって、第1薬剤が収納される第1収納部、第2薬剤が収納される第2収納部、及び、第1収納部と第2収納部とを仕切る剥離可能な仕切部を有する容器本体と、吊穴を覆うシールと、を備え、容器本体と、シールとのそれぞれには、第1薬剤と第2薬剤とを混合するための方策が表示される。
【0008】
この複室容器では、容器本体には、第1薬剤と第2薬剤とを混合するための方策が表示される。これにより、複室容器の使用開始時などに、使用者は、第1薬剤と第2薬剤とを混合するための方策を容易に確認できる。加えて、複室容器に設けられる吊穴は、シールによって覆われる。このため、使用者が、吊穴を用いて複室容器を吊り下げるとき、シールの少なくとも一部を容器本体から除去する(例えば、剥離する、もしくは切り取るなど)。ここで、シールにも上記方策が表示されている。よって、シールの除去作業時に使用者がシールを視認したときにも、上記方策を容易に確認できる。このように、複室容器の使用時において、使用者は、複数のタイミングにて上記方策を確認できることから、薬液の投与前に第1薬剤と第2薬剤との混合作業が良好に見落とされにくくなる。したがって、上記複室容器の利用によって、薬液の投与前に、使用者による薬液混合作業の失念を良好に防止可能である。
【0009】
方策は、第1薬剤と第2薬剤とを混合するための複数の手順を含んでもよい。この場合、使用者は、複雑な混合作業であっても薬液混合作業を適切に実施できる。
【0010】
シールは、吊穴を覆う被覆部を有し、シールに表示される方策は、吊穴を露出するための手順をさらに含んでもよい。この場合、吊穴の利用のために使用者がシールを除去するにあたって、使用者は、シールに記載される方策を視認する可能性がより高くなる。よって、薬液の投与前に第1薬剤と第2薬剤との混合作業が、より良好に見落とされにくくなる。加えて、使用者は、上記手順を確認することによって、吊穴の露出工程を適切に実施できる。
【0011】
上記複室容器は、吊穴が設けられると共に容器本体の上縁から延在するフラップ部をさらに備え、シールは、フラップ部を容器本体上に固定してもよい。加えて、フラップ部の幅は、容器本体の幅よりも小さく、シールは、フラップ部を覆ってもよい。この場合、フラップ部を容器本体上に確実に固定できる。
【0012】
シールには、第1薬剤と第2薬剤との混合を促す第1混合促進表示が設けられ、フラップ部においてシールが貼り付けられる面とは反対側の裏面には、第1薬剤と第2薬剤との混合を促す第2混合促進表示が設けられてもよい。この場合、複室容器の使用時において、使用者は、複室容器の表側及び裏側のいずれからでも混合促進表示を確認できる。よって、薬液の投与前に第1薬剤と第2薬剤との混合作業が、より良好に見落とされにくくなる。
【0013】
正面視にて、シールの大きさは、容器本体の大きさの5%以上30%以下であり、シールには、方策に加えて、第1薬剤と第2薬剤との混合を促す混合促進表示が設けられ、シールにおいて、方策に含まれる文字のサイズと、混合促進表示に含まれる文字のサイズとのそれぞれは、視認性の観点から、7pt以上がよく、72pt以下でもよい。この場合、シールには、第1薬剤と第2薬剤とを混合するための方策に含まれる文字と、混合促進表示に含まれる文字との両方が使用者にとって容易に視認可能になっている。このため、薬液の投与前に第1薬剤と第2薬剤との混合作業がより良好に見落とされにくくなる。加えて、シールの大きさは、上記文字の全てが記載可能となっている。
【0014】
容器本体の表面に方策が表示され、シールがフラップ部を容器本体上に固定しているとき、容器本体に表示される方策に含まれる文字の向きと、シールに表示される方策に含まれる文字の向きとは、上下方向において互いに同一でもよい。この場合、複室容器の使用者は、容器本体の表側、裏側のいずれからでも上記方策を視認できる。
【0015】
容器本体が仕切部に沿って折り畳まれているとき、容器本体に表示される方策と、シールに表示される方策とのそれぞれが視認可能でもよい。この場合、複室容器が折り畳まれている場合であっても、使用者は、上記方策の両方を容易に視認できる。
【0016】
容器本体において、第1収納部に重なる第1部分には方策の一部が表示され、第2収納部に重なる第2部分には方策の他の一部が表示され、仕切部は、第1部分もしくは第2部分が圧迫されることによって剥離されてもよい。この場合、使用者による圧迫作業中に第1部分もしくは第2部分が視認できない場合であっても、使用者は、上記方策の少なくとも一部を視認できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一側面によれば、薬液の投与前に、使用者による薬液混合作業の失念を防止可能な複室容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態に係る複室容器の正面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る複室容器の背面図である。
【
図3】
図3は、使用直前の複室容器の正面図である。
【
図5】
図5は、折り畳まれている複室容器を示す図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る使用直前の複室容器の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の一側面の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
図1は、実施形態に係る複室容器の正面図である。
図2は、実施形態に係る複室容器の背面図である。
図3は、使用直前の複室容器の正面図である。
図1及び
図2では、使用前の複室容器が示され、
図3では使用直前の複室容器が示される。
図1~
図3に示される複室容器1は、例えば、輸液用の複数の薬液のそれぞれを独立して収容する容器である。複室容器1は、容器本体2と、容器本体2の一端2aから延在するフラップ部3と、フラップ部3に設けられる吊穴4と、吊穴4を覆うシール5と、容器本体2の内部に接続されるポート6と、ポート6の先端6aを塞ぐシール7とを有する。以下では、
図1~
図3に示される方向Xを複室容器1の上下方向とし、方向Yを複室容器1の幅方向とする。また、方向X,Yの両方に直交する方向を複室容器1の厚さ方向とする。このため、容器本体2の一端2aは、容器本体2の上縁に相当する。
【0021】
容器本体2は、可撓性を示す袋状の成形部材である。容器本体2の形状は特に限定されないが、例えば略長方形状である。容器本体2は、例えば、可撓性を示す2枚のフィルムを熱接着することによって成形される。当該フィルムは、透明かつ可撓性を示すプラスチックフィルムであって、単層構造を有してもよいし、積層構造を有してもよい。フィルムが積層構造を有する場合、当該フィルムは、例えば、ポリエチレンフィルムである外層、ポリ環状オレフィンフィルムである中間層、及び、ポリエチレンとポリプロピレンとの混合フィルムである内層を含む。方向Xに沿った容器本体2の寸法は例えば、15cm以上30cm以下であり、方向Yに沿った容器本体2の寸法は、例えば、15cm以上25cm以下である。このため、正面視における容器本体2の面積は、例えば、225cm2以上750cm2以下である。各薬剤の収容量の観点から、上記面積は、例えば400cm2以上である。なお、本明細書における「透明」とは、可視光の透過率が所定の割合以上(例えば、55%以上)であることを意味する。換言すると、本明細書における「透明」は、半透明も含む概念である。また、フィルムの少なくとも一部は、着色されてもよい。
【0022】
容器本体2は、第1収納部21、第2収納部22、第1収納部21と第2収納部22とを仕切る剥離可能な仕切部23を有する。第1収納部21は、第1薬剤が収納される部分であって、容器本体2の外縁2bと仕切部23とによって画成される。第1収納部21は、仕切部23よりも下側に位置すると共に、ポート6に連通する。第2収納部22は、第1薬剤とは異なる第2薬剤が収納される部分であって、容器本体2の外縁2bと仕切部23とによって画成される。第2収納部22は、仕切部23よりも上側に位置する。第1薬剤と第2薬剤とが互いに独立して容器本体2に収容されることによって、混合して長期保管すると安定性が低い第1薬剤と第2薬剤とが混合されない状態にて保管できる。このため、第1薬剤と第2薬剤の劣化を抑制できる。
【0023】
第1薬剤と第2薬剤とのそれぞれは、液体、固体(粉末、ゲルなども含む)、もしくは気体である内容物である。本実施形態では、第1薬剤と第2薬剤とのそれぞれは、透明であるがこれに限られず、半透明でもよいし、不透明でもよい。第1薬剤と第2薬剤とのそれぞれは、無色でもよいし、着色されてもよい。仕切部23の剥離容易性の観点から、第1薬剤と第2薬剤の少なくとも一方は、薬液であることが好ましい。本実施形態では、第1薬剤と第2薬剤とのそれぞれは、一般に輸液として用いられるもの(例えば、静脈投与用栄養輸液)である。第1薬剤と第2薬剤とのそれぞれが静脈投与用栄養輸液である場合、例えば、第1薬剤が糖液であり、第2薬剤がアミノ酸液である。なお、静脈投与用栄養輸液としては、中心静脈投与用栄養輸液、末梢静脈投与用栄養輸液などの輸液でもよい。糖液に含まれる糖は、例えば還元糖であり、ブドウ糖でもよい。糖液には、糖以外に電解質、pH調整剤、ビタミンB1、B2、B6、B12等の水溶性ビタミンが含まれてもよい。糖液には、界面活性剤と共にビタミンA、D、E等の脂溶性ビタミンが含まれてもよい。糖液の組成、pH等は、患者の病態などに応じて適宜変更できる。アミノ酸液に含まれるアミノ酸は、アミノ酸自体でもよいし、N-アセチル誘導体等のアミノ酸の誘導体でもよい。アミノ酸液には、アミノ酸以外に電解質、pH調整剤、ビタミンC等の水溶性ビタミンが含まれてもよい。アミノ酸液の組成、pH等は、患者の病態などに応じて適宜変更できる。もしくは、第1薬剤と第2薬剤とは、灌流液でもよいし、透析液でもよいし、保存液でもよい。
【0024】
仕切部23は、容器本体2に圧力(例えば、使用者による第1収納部21もしくは第2収納部22への厚さ方向に沿った押圧力)が加えられることによって剥離可能な弱シール部である。仕切部23が剥離されることによって、第1収納部21と第2収納部22とが互いに連通し、第1薬剤と第2薬剤とが混合する。仕切部23は、方向Yに沿って延在し、第1収納部21と第2収納部22を仕切る。仕切部23は、方向Yにおける中央部23aと、方向Yにおいて中央部23aを挟む一対の側部23b,23bとを有する。方向Xにおいて、中央部23aの幅は、各側部23bの幅よりも小さい。加えて、各側部23bの幅の少なくとも一部は、中央部23aに近づくほど狭くなっている。これにより、上記圧力が容器本体2に加えられるとき、中央部23aに第1薬剤もしくは第2薬剤が集まりやすくなり、中央部23aが剥離されやすくなる。
【0025】
図1に示されるように、容器本体2の表面には、第1薬剤と第2薬剤とを混合するための方策100が表示される。方策100は、文字、色、記号及び図の少なくとも一つを含む表示であり、例えば、容器本体2の表面に印刷される。文字は、日本語、英語、簡体字、繁体字、数字などである。本実施形態では、方策100には、赤色の背景に白抜きの文字、記号及び図の少なくとも一つが表示される。容器本体2に表示される方策100に含まれる文字の向きは、正面視にて正立している。方策100は、第1薬剤と第2薬剤とを混合するための複数の手順を含む。本実施形態では、方策100は、第1手順101と、第2手順102と、第3手順103とを含む。厚さ方向において第1収納部21に重なる容器本体2の第1部分2cと、厚さ方向において仕切部23に重なる容器本体2の中央部分2fとには、第1手順101(方策100の一部)が表示される。厚さ方向において第2収納部22に重なる容器本体2の第2部分2d及び第3部分2eには、第2手順102(方策100の他の一部)及び第3手順103(方策100のさらに他の一部)がそれぞれ表示される。なお、
図2において、方策100は割愛されている。また、容器本体2の表面には、方策100とは異なる表示(例えば、商品名を示す表示、内容物の容量を示す表示など)が設けられてもよい。
【0026】
第1手順101と第2手順102と第3手順103とのそれぞれは、第1薬剤と第2薬剤との混合作業を具体的に説明する。第1手順101は、複室容器1の使用開始時に容器本体2を圧迫する場所を示す表示101a、容器本体2の圧迫時に伝達される力の方向を示す表示101b、及び、仕切部23を開通する旨を示す表示101cを含む。表示101a,101bは第1部分2cに設けられ、表示101cは中央部分2fに設けられる。表示101aは、第1収納部21の中央部に重なるが、これに限られない。例えば、方向Xにおいて、表示101aは、第1収納部21の中心よりもポート6に近くてもよいし、第1収納部21の中心よりも仕切部23に近くてもよい。例えば、表示101aの内容にしたがって、使用者が第1部分2cを圧迫することによって、仕切部23を容易に剥離できる。このとき、使用者が第1部分2cに手を当てることによって表示101aは隠れるが、表示101bの少なくとも一部と、中央部分2fに設けられる表示101cとは隠れない。第1部分2cの圧迫による仕切部23の剥離実施、当該圧迫時における表示101cの確認などの観点から、表示101a,101cは、互いに離れるほどよい。表示101a,101b,101cのそれぞれは、文字及び図の少なくとも一方を含むが、これに限られない。第2手順102は、第1薬剤と第2薬剤とを混合する旨を示す表示を含む。本実施形態では、第2手順102の表示は、第1手順101の表示101a,101bとの関連性が高い内容である。このため、第2手順102は、第2収納部22における第1手順101の近傍に位置してもよい。例えば、圧迫時に伝達される力の方向を示す表示101bは、第1部分2cだけではなく、第2部分2dにも設けられてもよい。この場合、第2手順102は、表示101bと重ねて表示されてもよい。第3手順103は、シール5に含まれる被覆部51(詳細は後述)を剥がして吊穴4に露出する旨の表示を含む。本実施形態では、第3手順103は、第2手順102と比較して、第1手順101との関連性が低い内容である。このため、第3手順103は、第2手順102よりも第1手順101に対して離れてもよい。本実施形態では、第3部分2eは、第2部分2dよりも第1部分2cに対して離れている。短時間にて使用者が各表示を確認できる観点から、表示101a,101b,101cと、第2手順102と、第3手順103とのそれぞれに含まれる文字数は、例えば、8文字以下、もしくは6文字以下である。
【0027】
フラップ部3は、容器本体2の外縁2bと同時に形成される部分であり、吊穴4が設けられる。
図1及び
図2に示されるように、使用前の複室容器1では、フラップ部3は、第2収納部22に向かって折り畳まれている。一方、
図3に示されるように、使用直前の複室容器1では、フラップ部3は、方向Xにおいて容器本体2の上縁から、容器本体2に遠ざかるように延在している。ここで使用前の複室容器1では、フラップ部3は、シール5によって容器本体2の裏面上に固定される。換言すると、使用前の複室容器1では、シール5が、破損することなくフラップ部3と容器本体2の裏面とに貼り付けられている。これにより、多数の複室容器1が箱詰めされているときなどにおいても、フラップ部3を容器本体2上に確実に固定できる。加えて、シール5において吊穴4を塞ぐ部分が除去されにくくなるため、仕切部23の開通操作の実施前に作業者がシール5における上記部分を除去するといった、複室容器1への意図しない操作を防止できる。さらには、シール5がフラップ部3を固定することによって、フラップ部3に起因する複室容器1の損傷を抑制できる。方向Yに沿ったフラップ部3の幅は、容器本体2の幅よりも小さい。これにより、フラップ部3が折り畳まれているときなどにおいて、フラップ部3に起因する複室容器1の損傷を良好に抑制できる。例えば、フラップ部3の幅は、容器本体2の幅の70%以上90%以下である。
【0028】
吊穴4は、複室容器1をスタンド等のフックに掛けるために設けられる部分である。吊穴4は、例えば、フラップ部3において方向Yの中央部に設けられ、正面視にて円形状を有する。
【0029】
図4は、シールの拡大図である。
図2及び
図4に示されるように、シール5は、使用前の複室容器1においてフラップ部3を容器本体2上に固定すると共に吊穴4を覆う部材である。シール5は、可撓性を示すと共に帯形状を有するシート部材であり、容器本体2の裏面及びフラップ部3に貼り付けられる。フラップ部3が容器本体2上に固定されるとき、シール5は、フラップ部3を覆う。これにより、複室容器1への意図しない操作を防止できると共に、フラップ部3の角などに起因する容器本体2等の損傷を抑制できる。シール5を構成する材料は、特に制限されず、紙、合成紙、アート紙、布、ポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0030】
正面視にて、シール5の大きさは、例えば、容器本体2の大きさの5%以上30%以下であり、10%以上20%以下でもよい。シール5の大きさが容器本体2の大きさの5%以上であることにより、以下に詳述する各表示を十分に設けられる。シールの大きさの下限値は、例えば、容器本体2の大きさの8%、10%、または12%である。シールの大きさの上限値は、例えば、容器本体2の大きさの25%、22%、20%、18%、または16%以下である。方向Xにおいて、シール5の寸法は、例えば、容器本体2の寸法の5%以上20%以下である。方向Yにおいて、シール5の寸法は、例えば、容器本体2の寸法の85%以上95%以下である。正面視におけるシール5の面積は、例えば、50cm2以上100cm2以下である。
【0031】
シール5には、使用時に吊穴4を開通可能であるように構成される被覆部51と、被覆部51の周囲の少なくとも一部に位置する切れ込み52(第1易開裂処理部)とが設けられる。使用前の複室容器1では、被覆部51は、吊穴4を覆う部分である。被覆部51には、吊穴4の位置を示す旨の表示が設けられるが、これに限られない。切れ込み52の存在によって、被覆部51の押圧に伴って、容易に吊穴4が開通される。吊穴4の開通後、被覆部51の一部はシール5に繋がってもよい。この場合、被覆部51をシール5から切り離すことなく吊穴4の開通が可能であるため、ごみの量が減る。
【0032】
シール5には、第1収納部21が圧迫されるとき、シール5によるフラップ部3の固定が解除されるミシン目53(第2易開裂処理部)が設けられる。これにより、上記圧迫によって仕切部23を剥離すると同時にフラップ部3の固定を解除できる。よって、複室容器1を使用するための手順を簡略化できる。ミシン目53は、例えば、フラップ部3の縁の全体に沿って設けられる。この場合、シール5によるフラップ部3の固定を容易に解除できる。
【0033】
シール5には、容器本体2と同様に、第1薬剤と第2薬剤とを混合するための方策200が表示される。加えて、シール5には、第1薬剤と第2薬剤との混合を促す表示210(混合促進表示)が設けられる。
【0034】
方策200は、文字、記号及び図の少なくとも一つを含む表示であり、例えば、シール5の表面に印刷される。本実施形態では、方策200には、赤色の背景に白抜きの文字、記号及び図の少なくとも一つが表示される。
図2に示されるように、フラップ部3の固定が解除される前において、シール5に表示される方策200に含まれる文字の向きは、正面視にて正立している。よって、使用前の複室容器1では、容器本体2に表示される方策100に含まれる文字の向きと、シール5に表示される方策200に含まれる文字の向きとのそれぞれは、方向Xにおいて同一になる。一方、フラップ部3の固定が解除され、
図3に示されるように複室容器1が使用直前になっているとき、方策100に含まれる文字の向きと、方策200に含まれる文字の向きとは、方向Xにおいて互いに反対になる。ここで上述したように、容器本体2と、第1薬剤と、第2薬剤とのそれぞれは透明である。このため
図5に示されるように、シール5が内側に位置するように容器本体2が仕切部23に沿って折り畳まれているとき、方策100に含まれる文字と、方策200に含まれる文字との両方が、正面視において認識可能になっている。このとき、方策100に含まれる文字の向きと、方策200に含まれる文字の向きとは、方向Xにおいて互いに反対になる。
【0035】
方策200は、方策100と同様に第1薬剤と第2薬剤とを混合するための複数の手順を含む。これにより、複室容器1の利用者は、シール5と容器本体2の両方から第1薬剤と第2薬剤とを混合するための手順を把握できる。本実施形態では、方策200は、複室容器1の使用開始時に仕切部23を開通することを示す第1手順201と、第1薬剤と第2薬剤とを混合させることを示す第2手順202と、被覆部51を剥がして吊穴4に露出するための第3手順203とを含む。第1手順201は、方策100の第1手順101に対応し、第2手順202は、方策100の第2手順102に対応し、第3手順203は、方策100の第3手順103に対応する。なお、第1手順201は、圧迫する場所を示す表示101aに相当する表示と、容器本体2の圧迫時に伝達される力の方向を示す表示101bに相当する表示とを有していない点で、第1手順101とは異なる。第1手順201と、第2手順202と、第3手順203とは、方向Yにおいて順に配置されるが、これに限られない。例えば、第3手順203と、第1手順201と、第2手順202とが順に配置されてもよい。
【0036】
表示210は、使用者による第1薬剤と第2薬剤との混合(つまり、仕切部23の開通)が実施されるように誘導する表示である。表示210に含まれる文字の向きは、正面視にて倒立している。このため、
図3に示されるように、使用直前の複室容器1では、表示210の内容が、正面視において容易に認識可能になる。したがって、例えば、吊穴4を介して複室容器1をフック等に掛止しているときなどに、表示210による第1薬剤と第2薬剤との混合がなされているかの注意喚起機能を十分に発揮できる。表示210、すなわち混合促進表示(第1混合促進表示)は、例えば、「開通確認」などの上記混合に関する注意喚起を示す文字等を含む。表示210は、「未開封 使用不可」などといった文字列等も含んでもよい。
【0037】
本実施形態では、シール5の表面には、方策200が表示される第1領域54と、表示210が表示される第2領域55とが存在する。第1領域54と、第2領域55とは、互いに離間しており、切れ込み52及びミシン目53には重ならない。シール5において第1領域54が占める割合は例えば30%以上であり、シール5において第2領域55が占める割合は例えば25%以上である。この場合、方策200と、表示210とのそれぞれが、無理なく示される。また、第1領域54において方策200(すなわち、第1手順201、第2手順202、及び第3手順203)が占める割合は、例えば30%以上である。これにより、シール5(特に、第1領域54)を視認した使用者は、方策200に容易に着目できる。加えて、方策200を容易に流し読みできるので、複室容器1の使用方法を容易に確認できる。一方、第2領域55において表示210が占める割合は、60%以上である。これにより、シール5(特に、第2領域55)を視認した使用者は、表示210による注意喚起を見落としにくくなる。
【0038】
第1領域54は、第1手順201及び第2手順202が表示される第1部分54aと、第1部分54aに連続すると共に第3手順203が表示される第2部分54bとを含む。第1部分54aは、例えば、被覆部51よりも方向Yにおけるシール5の一端の近くに位置する。第1部分54aの形状は特に限定されないが、例えば略四角形である。第2部分54bは、例えば、方向Xにおいて被覆部51よりも下側に位置し、方向Yに沿って延在する。このため、第2部分54bの一部は、被覆部51よりも方向Yにおけるシール5の他端の近くに位置する。第2部分54bの形状は特に限定されないが、例えば略四角形である。第1領域54において第1部分54aが占める割合と、第1領域54において第2部分54bが占める割合とは、特に制限されないが、共に30%以上であればよい。第2領域55は、例えば、方向Yにおいて吊穴4よりも他方側に位置し、方向Xにおいて第2部分54bよりも上側に位置する。
【0039】
シール5において、方策200を示す文字のサイズと、表示210を示す文字のサイズとのそれぞれは、7pt以上72pt以下である。この場合、使用者は、方策200と、表示210との両方を容易に確認できる。方策200を示す文字のサイズと、表示210を示す文字のサイズとのそれぞれは、10pt以上でもよいし、18pt以上でもよいし、24pt以上でもよいし、36pt以上でもよいし、64pt以下でもよいし、56pt以下でもよいし、48pt以下でもよいし、40pt以下でもよい。短時間にて使用者が各表示を確認できる観点から、第1手順201と、第2手順202と、第3手順203と、表示210のそれぞれに含まれる文字数は、例えば、8文字以下、もしくは6文字以下である。本実施形態では、方策200を示す文字の色と、表示210を示す文字の色とは、互いに異なっている。これにより、色覚異常の使用者が、方策200と、表示210との両方を見落としにくくなる。なお、1pt(ポイント)は1/72インチ(約0.35mm)に相当する。また、使用者へ混合作業を注意喚起する観点から、混合促進表示に含まれる文字のサイズは、方策に含まれる文字のサイズよりも大きくてもよい。
【0040】
ポート6は、容器本体2の内容物(例えば、第1薬剤、または、第1薬剤と第2薬剤との混合薬液)を排出するための薬剤排出口であり、複室容器1の下端に設けられる。ポート6は、例えば円筒形状を有するプラスチック部材である。ポート6には、例えば、中空針を刺通可能であって、ポート6の注出口を塞ぐ封止栓(不図示)が設けられている。加えて、ポート6の先端6aには、シール7が貼り付けられる。シール7を剥がすことによって、上記封止栓及び抽出口が露出する。当該抽出口に中空針を挿入することによって、容器本体2の第1薬剤と第2薬剤との混合物が排出可能になる。
【0041】
以上に説明した本実施形態に係る複室容器1では、容器本体2には、第1薬剤と第2薬剤とを混合するための方策100が表示される。これにより、複室容器1の使用開始時などに、使用者は、第1薬剤と第2薬剤とを混合するための具体的な方策100を容易に確認できる。加えて、複室容器1に設けられる吊穴4は、シール5によって覆われる。このため、使用者が、吊穴4を用いて複室容器1を吊り下げるとき、シール5の少なくとも一部を容器本体2から除去する(例えば、剥離する、切り取るなど)。ここで、シール5にも方策200が表示されている。よって、シール5の除去作業時に使用者がシール5を視認したときにも、第1薬剤と第2薬剤とを混合するための簡潔な方策200を容易に確認できる。このように、複室容器1の使用時において、使用者は、複数のタイミングにて方策100,200を確認できることから、薬液の投与前に第1薬剤と第2薬剤との混合作業が良好に見落とされにくくなる。したがって、複室容器1の利用によって、薬液の投与前に、使用者による薬液混合作業の失念を良好に防止可能である。
【0042】
本実施形態では、方策100,200のそれぞれは、第1薬剤と第2薬剤とを混合するための複数の手順を含む。このため、使用者は、複雑な混合作業であっても薬液混合作業を適切に実施できる。
【0043】
本実施形態では、シール5は、吊穴4を覆う被覆部51を有し、シール5に表示される方策200は、吊穴4を露出するための第3手順203をさらに含む。このため、吊穴4の利用のために使用者がシール5を剥がすにあたって、使用者がシール5に記載される方策200を視認する可能性は、より高くなる。よって、薬液の投与前に第1薬剤と第2薬剤との混合作業が、より良好に見落とされにくくなる。加えて、使用者は、第3手順203を確認することによって、吊穴4の露出工程を適切に実施できる。
【0044】
本実施形態では、複室容器1は、吊穴4が設けられると共に容器本体2の一端2aから延在するフラップ部3を備え、シール5は、フラップ部3を容器本体2上に固定する。加えて、フラップ部3の幅は、容器本体2の幅よりも小さく、シール5は、フラップ部3を覆う。このため、複室容器1の使用前(例えば、複室容器1の移送時など)においても、シール5を介してフラップ部3を容器本体2上に確実に固定できる。加えて、仕切部23の開通操作の実施前に作業者が吊穴4を塞ぐシール5を除去するといった、複室容器1への意図しない操作を防止できる。さらには、シール5がフラップ部3を固定することによって、フラップ部3に起因する容器本体2の損傷発生を防止できる。
【0045】
本実施形態では、正面視にて、シール5の大きさは、容器本体2の大きさの10%以上20%以下であり、シール5には、方策200に加えて、第1薬剤と第2薬剤との混合を促す表示210が設けられ、視認性の観点から、シール5において、方策200に含まれる文字のサイズと、表示210に含まれる文字のサイズとのそれぞれは、7pt以上がよく、72pt以下でもよい。この場合、シール5には、第1薬剤と第2薬剤とを混合するための方策200に含まれる文字と、表示210に含まれる文字との両方が使用者にとって容易に視認可能になっている。このため、薬液の投与前に第1薬剤と第2薬剤との混合作業がより良好に見落とされにくくなる。加えて、シール5の大きさは、上記文字の全てが記載可能となっている。
【0046】
本実施形態では、容器本体2の表面に方策100が表示され、シール5がフラップ部3を容器本体2上に固定しているとき、容器本体2に表示される方策100に含まれる文字の向きと、シール5に表示される方策200に含まれる文字の向きとは、上下方向において互いに同一である。このため、複室容器1の使用者は、容器本体2の表側、裏側のいずれからでも方策100,200を視認できる。
【0047】
本実施形態では、容器本体2、第1薬剤及び第2薬剤が透明であるため、容器本体2が仕切部23に沿って折り畳まれているとき、容器本体2に表示される方策100と、シール5に表示される方策200とのそれぞれが視認可能である。このため、複室容器1が折り畳まれている場合であっても、使用者は、方策100,200を容易に視認できる。
【0048】
本実施形態では、容器本体2において、第1収納部21に重なる第1部分2cと仕切部23に重なる中央部分2fとには方策100に含まれる第1手順101が表示され、第2収納部22に重なる第2部分2dには方策100に含まれる第2手順102が表示され、仕切部23は、第1部分2cもしくは第2部分2dが圧迫されることによって剥離されてもよい。この場合、使用者による圧迫作業中に第1部分2cもしくは第2部分2dが視認できない場合であっても、使用者は、方策100の少なくとも一部を視認できる。加えて、第2収納部22に重なる第3部分2eには、第3手順103も表示される。これにより、使用者が方策100を視認するだけで、当該使用者が吊穴4を介した複室容器1のフック等への掛止を失念しにくくなる。
【0049】
次に、
図6を参照しながら変形例に係る複室容器について説明する。変形例の説明において上述した実施形態と重複する記載は省略し、異なる部分を記載する。つまり、技術的に可能な範囲において、変形例に上述した実施形態の記載を適宜用いてもよい。
【0050】
図6は、変形例に係る使用直前の複室容器の背面図である。
図6に示される複室容器1Aは、フラップ部3の裏面3aに表示300が設けられる点で、上記実施形態の複室容器1とは異なる。フラップ部3の裏面3aは、フラップ部3が第2収納部22に向かって折り畳まれているときに容器本体2に接する面であり、フラップ部3においてシール5が貼り付けられる面(表面)とは反対側の面である。このため、使用前の複室容器1Aを正面から見た場合、裏面3aは、シール5によって隠されている。一方、裏面3aは、使用直前の複室容器1Aでは、外部に露出している。裏面3aに設けられる表示300は、上記実施形態の表示210と同様に、第1薬剤と第2薬剤との混合を促す表示(混合促進表示)である。本変形例では、表示300には、赤色の背景に白抜きの文字、記号及び図の少なくとも一つが含まれる。表示300は、使用者による第1薬液と第2薬剤との混合(つまり、仕切部23の開通)が実施されるように誘導する表示でもよい。表示300は、フラップ部3を介してシール5の反対側に設けられる。このため図示しないが、使用前の複室容器1Aを正面から見た場合、表示300は、裏面3aと同様にシール5によって隠されている。また、正面視において使用直前の複室容器1Aではフラップ部3の表面に設けられるシール5の一部が視認され、背面視において使用直前の複室容器1Aではフラップ部3の裏面3aに設けられる表示300が視認される。表示300は、例えば、裏面3aに直接印刷されているが、これに限られない。
図6に示されるように、使用直前の複室容器1Aでは、表示300の内容が、正面視において正立している。したがって、例えば、吊穴4を介して複室容器1をフック等に掛止しているときなどに、表示300による第1薬剤と第2薬剤との混合がなされているかの混合促進機能(注意喚起機能)を十分に発揮できる。加えて、本変形例では、表示300の第1部分300aは、方向Yにおけるフラップ部3の一端部に設けられ、表示300の第2部分300bは、方向Yにおけるフラップ部3の他端部に設けられるが、これに限られない。表示300は、3つ以上の部分を有してもよいし、1つの部分のみを有してもよい。表示300に示される混合促進表示(第2混合促進表示)は、表示210の混合促進表示と同様である。表示300は、「未開封 使用不可」などといった文字列等も含んでもよい。
【0051】
以上に説明した変形例においても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、使用直前の複室容器1Aでは、容器本体2の表面に表示210が位置し、容器本体2の裏面に表示300が位置する。このため、複室容器1Aの利用者は、フラップ部3の固定解除後、容器本体2の表側、裏側のいずれからでも上述した混合促進表示(注意喚起表示)を視認できる。換言すると、複室容器1Aの利用者は、フラップ部3の固定解除後、容器本体2の表側からはシール5の表示210を視認でき、かつ、容器本体2の裏側からは表示30を視認できる。したがって、薬液の投与前に第1薬剤と第2薬剤との混合作業がより良好に見落とされにくくなる。すなわち、変形例では、上記実施形態と比較して、注意喚起機能がより向上したと言える。なお、上記変形例では表示300がフラップ部3の裏面3aに設けられるが、これに限られない。例えば、表示300は、容器本体2の裏面のうち、使用前の複室容器1Aではフラップ部3に覆い隠される部分に設けられてもよい。
【0052】
本発明の一側面に係る複室容器は、例えば以下の[1]~[10]に記載する通りであり、上記実施形態及び上記変形例に基づいてこれらを詳細に説明した。
[1] 吊穴が設けられる複室容器であって、
第1薬剤が収納される第1収納部、第2薬剤が収納される第2収納部、及び、前記第1収納部と前記第2収納部とを仕切る剥離可能な仕切部を有する容器本体と、
前記吊穴を覆うシールと、
を備え、
前記容器本体と、前記シールとのそれぞれには、前記第1薬剤と前記第2薬剤とを混合するための方策が表示される、
複室容器。
[2] 前記方策は、前記第1薬剤と前記第2薬剤とを混合するための複数の手順を含む、[1]に記載の複室容器。
[3] 前記シールは、前記吊穴を覆う被覆部を有し、
前記シールに表示される前記方策は、前記被覆部を剥がして前記吊穴を露出するための手順をさらに含む、[1]または[2]に記載の複室容器。
[4] 前記吊穴が設けられると共に前記容器本体の上縁から延在するフラップ部をさらに備え、
前記シールは、前記フラップ部を前記容器本体上に固定する、[1]~[3]のいずれかに記載の複室容器。
[5] 前記フラップ部の幅は、前記容器本体の幅よりも小さく、
前記シールは、前記フラップ部を覆う、[4]に記載の複室容器。
[6] 前記シールには、前記第1薬剤と前記第2薬剤との混合を促す第1混合促進表示が設けられ、
前記フラップ部において前記シールが貼り付けられる面とは反対側の裏面には、前記第1薬剤と前記第2薬剤との混合を促す第2混合促進表示が設けられる、[4]または[5]に記載の複室容器。
[7] 正面視にて、前記シールの大きさは、前記容器本体の大きさの5%以上30%以下であり、
前記シールには、前記方策に加えて、前記第1薬剤と前記第2薬剤との混合を促す混合促進表示が設けられ、
前記シールにおいて、前記方策に含まれる文字のサイズと、前記混合促進表示に含まれる文字のサイズとのそれぞれは、7pt以上72pt以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の複室容器。
[8] 前記容器本体の表面に前記方策が表示され、
前記シールが前記フラップ部を前記容器本体上に固定しているとき、前記容器本体に表示される前記方策に含まれる文字の向きと、前記シールに表示される前記方策に含まれる文字の向きとは、上下方向において互いに同一である、[4]~[6]のいずれかに記載の複室容器。
[9] 前記容器本体が前記仕切部に沿って折り畳まれているとき、前記容器本体に表示される前記方策と、前記シールに表示される前記方策とのそれぞれが視認可能である、[8]に記載の複室容器。
[10] 前記容器本体において、前記第1収納部に重なる第1部分には前記方策の一部が表示され、前記第2収納部に重なる第2部分には前記方策の他の一部が表示され、
前記仕切部は、前記第1部分もしくは前記第2部分が圧迫されることによって剥離される、[8]または[9]に記載の複室容器。
【0053】
しかし、本発明の一側面は、上記実施形態、上記変形例及び上記[1]~[10]に限定されない。本発明の一側面は、その要旨を逸脱しない範囲でさらなる変形が可能である。例えば、上記実施形態及び上記変形例では、シールは吊穴を覆うが、これに限られない。例えば、シールは、フラップ部の固定のみに用いられ、吊穴を覆わなくてもよい。
【0054】
上記実施形態及び上記変形例では、シールに混合促進表示が設けられるが、これに限られない。例えば、シールの代わりに容器本体のみに混合促進表示が設けられてもよいし、シールと容器本体との両方に混合促進表示が設けられてもよい。また、第3手順は、シールのみに設けられてもよく、容器本体のみに設けられてもよい。
【0055】
上記実施形態及び上記変形例において、容器本体は、第1薬剤及び第2薬剤とは異なる薬剤を収容する袋状の小容器をさらに備えてもよい。当該小容器は、例えば、第1収納部もしくは第2収納部の内部に設けられ、上記異なる薬剤を収容する本体と、当該本体の内部と第1収納部もしくは第2収納部とを仕切る仕切部とを有する。当該仕切部は、容器本体の仕切部の剥離に連動して剥離可能に構成される。これにより、第1薬剤、第2薬剤及び上記異なる薬剤とが良好に混合可能になる。容器本体は、小容器を複数備えてもよい。この場合、一部の小容器は第1収納部の内部に設けられ、他の小容器は第2収納部の内部に設けられる。なお、小容器に収容される薬剤は、例えば、界面活性剤及び脂溶性ビタミンを含む薬液、鉄、マンガン、亜鉛、銅、ヨウ素等の微量元素を含む薬液である。
【符号の説明】
【0056】
1,1A…複室容器、2a…一端(上縁)、2b…外縁、2c…第1部分(方策100の一部)、2d…第2部分(方策100の他の一部)、2e…第3部分、2f…中央部分、3…フラップ部、3a…裏面、4…吊穴、5…シール、6…ポート、6a…先端、7…シール、21…第1収納部、22…第2収納部、23…仕切部、23a…中央部、23b…側部、51…被覆部、52…切れ込み、53…ミシン目、54…第1領域、54a…第1部分、54b…第2部分、55…第2領域、100…方策、101…第1手順、101a…表示、101b…表示、101c…表示、102…第2手順、103…第3手順、200…方策、201…第1手順、202…第2手順、203…第3手順、210…表示、300…表示、300a…第1部分、300b…第2部分。