(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165328
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】イオン発生ユニット及びそれを備えたイオン発生装置
(51)【国際特許分類】
H01T 23/00 20060101AFI20241121BHJP
H01T 19/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01T23/00
H01T19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081441
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】390000963
【氏名又は名称】白井松器械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003465
【氏名又は名称】弁理士法人OHSHIMA&ASSOCIATES
(72)【発明者】
【氏名】山下 太郎
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 基樹
(57)【要約】
【課題】安定化したマイナスイオンを空気中に十分拡散させることが可能なイオン発生ユニット及びそれを備えたイオン発生装置を提供することを目的とする。
【解決手段】通風路5と、通風路5内に設置された第1放電部6と、通風路5内において第1放電部6の下流側に設置された第2放電部7と、通風路5内において第1放電部6と第2放電部7との間に配置され、水分を吸収して保持する吸水体18を有する蒸散部8とを備え、第1放電部6及び第2放電部7は、それぞれ針電極11と、円筒状の対向電極12とからなる電極対を有し、針電極11と対向電極12との間で生じるコロナ放電によりマイナスイオンを含むイオン風W1、W2を発生させ、第1放電部6において発生したイオン風W1を吸水体18に接触させることで吸水体18からの水の蒸散を促進させ、水を含むイオン風を第2放電部7において放電処理して外部へ放出する構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風路と、
前記通風路内に設置された第1放電部と、
前記通風路内において前記第1放電部の下流側に設置された第2放電部と、
前記通風路内において前記第1放電部と前記第2放電部との間に配置され、水分を吸収して保持する吸水体を有する蒸散部とを備え、
前記第1放電部及び第2放電部は、それぞれ針電極と、円筒状の対向電極とからなる電極対を有し、前記針電極にマイナスの高電圧を印加することにより、前記対向電極との間で生じるコロナ放電によりマイナスイオンを含むイオン風を発生させ、
前記第1放電部において発生したイオン風を前記吸水体に接触させることで前記吸水体からの水の蒸散を促進させ、水を含むイオン風を第2放電部において放電処理して外部へ放出するイオン発生ユニット。
【請求項2】
前記第1放電部と、前記第2放電部とは、互いの中心線が交差するように配置され、
前記第1放電部と前記第2放電部との間に、前記第1放電部で発生したイオン風の風向きを前記第2放電部に向かうように変更させる導風部が配設され、
前記吸水体は前記導風部に支持された請求項1に記載のイオン発生ユニット。
【請求項3】
前記導風部は、前記第1放電部の中心線と交差し、かつ、前記中心線方向に対して傾斜又は湾曲するように形成された導風面部を有し、
前記吸水体は、前記導風部のうち、少なくとも前記導風面部の表面を覆うように配設された請求項2に記載のイオン発生ユニット。
【請求項4】
前記第2放電部を構成する針電極と対向電極は、前記電極対の中心線方向に相対移動可能とされた請求項3に記載のイオン発生ユニット。
【請求項5】
前記第2放電部は、前記電極対を2対有し、前記2対の電極対は、前記通風路において並列配置された請求項3に記載のイオン発生ユニット。
【請求項6】
前記各電極対を構成する針電極と対向電極は、それぞれ独立して前記電極対の中心線方向に相対移動可能とされた請求項5に記載のイオン発生ユニット。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のイオン発生ユニットと、前記イオン発生ユニットに給水する給水機構とを備えたイオン発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナ放電によりマイナスイオンを発生するイオン発生ユニット及びそれを備えたイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイナスイオンは、人体の肌や髪に潤いを与えるなど美容用途に有用であることがよく知られている。そのほかにも、マイナスイオンには病原菌に対する殺菌効果(特許文献1参照)があることや、農業害虫や作物病害の駆除・防除効果(特許文献2参照)があることも報告されている。
【0003】
このようなマイナスイオンを発生させるイオン発生装置の一例として、たとえば、特許文献3に記載されているような構成のものが知られている。具体的には、空気中をコロナ放電させてイオンを発生させるための針電極とグランド電極とを有し、イオン吹き出し口もしくはイオン吹き出し口周辺に設置される外体に抵抗体を介してグランド電極を接続した構成とされる。
【0004】
ところで、マイナスイオンを用いて、より広い空間の除菌やウイルスの不活化を行う場合には、寿命の長い安定化したマイナスイオンを空気中に放出する必要がある。この点に関して、特許文献4では、超微細ミストにマイナスイオンを付加して気中イオンを生成して空気中に放出することで不安定なマイナスイオンを安定化して空気中に十分拡散させることができる旨記載されている(段落0023参照)。
【0005】
また、特許文献5には、微粒化した液体にマイナスの電荷を帯びさせ放出する装置が開示されている。より具体的には、上部に放出口を有する容器内に、第1コロナ放電部、液体貯留部及び第2コロナ放電部が設けられており、第1コロナ放電部で発生した下向きのイオン風を液体貯留部に貯留されている液体表面に当てることで液体を蒸散させ微粒化させるとともに、この微粒化した液体にマイナスの電荷を帯びさせる。次いで、第2コロナ放電部で発生した上向きのイオン風を利用して、先ほどの微粒化しマイナスの電荷を帯びた液体を上昇させて、第2コロナ放電部を通過させることで確実にマイナスの電荷を帯びさせて外部に放出する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-65879号公報
【特許文献2】特開2003-304789号公報
【特許文献3】特開2002-219355号公報
【特許文献4】特開2013-167402号公報
【特許文献5】特許第5819560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献5において液体として水を用いた場合には、特許文献4に記載されているように、超微細ミストにマイナスイオンを付加して気中イオンを生成して空気中に放出するのと同様の効果、すなわち、安定化したマイナスイオンを空気中に十分拡散させることが可能になると推測される。しかしながら、実際には、特許文献5においては、第1コロナ放電部で発生した下向きのイオン風によって液体貯留部から液体を蒸散させているため、蒸散する液体の量は限定的であり、より多量の安定化したマイナスイオンを空気中に拡散させることが要望されていた。
【0008】
そこで、本発明においては、上記問題に鑑み、安定化した多量のマイナスイオンを空気中に拡散させることが可能なイオン発生ユニット及びそれを備えたイオン発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様としてのイオン発生ユニットは、
通風路と、
前記通風路内に設置された第1放電部と、
前記通風路内において前記第1放電部の下流側に設置された第2放電部と、
前記通風路内において前記第1放電部と前記第2放電部との間に配置され、水分を吸収して保持する吸水体を有する蒸散部とを備え、
前記第1放電部及び第2放電部は、それぞれ針電極と、円筒状の対向電極とからなる電極対を有し、前記針電極にマイナスの高電圧を印加することにより、前記対向電極との間で生じるコロナ放電によりマイナスイオンを含むイオン風を発生させ、
前記第1放電部において発生したイオン風を前記吸水体に接触させることで前記吸水体からの水の蒸散を促進させ、水を含むイオン風を第2放電部において放電処理して外部へ放出する構成とする。
【0010】
前記第1放電部と、前記第2放電部とは、互いの中心線が交差するように配置され、
前記第1放電部と前記第2放電部との間に、前記第1放電部で発生したイオン風の風向きを前記第2放電部に向かうように変更させる導風部が配設され、
前記吸水体は前記導風部に支持された構成としてもよい。
【0011】
前記導風部は、前記第1放電部の中心線と交差し、かつ、前記中心線方向に対して傾斜又は湾曲するように形成された導風面部を有し、
前記吸水体は、前記導風部のうち、少なくとも前記導風面部の表面を覆うように配設された構成としてもよい。
【0012】
前記第2放電部を構成する針電極と対向電極は、前記電極対の中心線方向に相対移動可能とされた構成としてもよい。
【0013】
前記第2放電部は、前記電極対を2対有し、前記2対の電極対は、前記通風路において並列配置された構成としてもよい。
【0014】
前記各電極対を構成する針電極と対向電極は、それぞれ独立して前記電極対の中心線方向に相対移動可能とされた構成としてもよい。
【0015】
前述のイオン発生ユニットと、このイオン発生ユニットに給水する給水機構とを備えたイオン発生装置としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、第1放電部と第2放電部との間に、水分を吸収して保持する吸水体を有する蒸散部を設け、第1放電部において発生したイオン風を前記吸水体に接触させるようにしたため、単に水面にイオン風を接触させる場合と比較してイオン風が接触する水の表面積を増加させることができ、前記吸水体からの水の蒸散をより促進させることができる。これにより、第2放電部から安定化した多量のマイナスイオンを空気中に拡散させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態のイオン発生ユニットを示す斜視図
【
図3】
図1のイオン発生ユニットを搭載したイオン発生装置を示す一部断面図
【
図6】第2実施形態のイオン発生ユニットを示す断面図
【
図8】
図6の導風部に吸水体が支持された状態を示す斜視図
【
図10】第2実施形態の給水部及び吸水体の一部を示す断面図
【
図11】第3実施形態のイオン発生ユニットの第2放電部を示す概略図
【
図12】
図11の針電極と対向電極の距離を変化させた状態を示す概略図
【
図13】第4実施形態のイオン発生ユニットを示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図面を基に説明する。
図1は、本実施形態のイオン発生ユニットを示す斜視図であり、
図2は
図1のA-A断面図であり、
図3は
図1のイオン発生ユニットを搭載したイオン発生装置を示す一部断面図であり、
図4は
図3のB-B断面図であり、
図5は
図4のC-C断面図である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、本実施形態のイオン発生ユニット1は、外観が略直方体形状に形成される。以下、イオン発生ユニット1の長手方向をX方向、短手方向をY方向、高さ方向をZ方向として説明する。イオン発生ユニット1は、筐体2内に、吸気口3から放出口4に至る通風路5を備える。通風路5内には、第1放電部6と、第1放電部6の下流側に設置された第2放電部7と、第1放電部6と第2放電部7との間に設置された蒸散部8とを備える。筐体2内には、通風路5とは別に壁で仕切られた空間が形成されており、この空間内に第1放電部6及び第2放電部7に高電圧を印加するための高圧電源9が収容される。
【0020】
第1放電部6及び第2放電部7は、それぞれ針電極11と、円筒状の対向電極12とからなる電極対を有する。具体的に、第1放電部6は、第1針電極11aと、第1対向電極12aとからなる電極対を有する。第2放電部7は、第2針電極11bと、第2対向電極12bとからなる電極対を有する。以下、第1針電極11a及び第2針電極11bを総称する場合は針電極11と記載し、第1対向電極12a及び第2対向電極12bを総称する場合は、対向電極12として記載する。
【0021】
電極対を構成する針電極11の中心線と、対向電極12の中心線は同一線上に位置するように配置される。
図2中、C1は第1放電部6(の電極対)の中心線を示し、C2は第2放電部7(の電極対)の中心線を示す。高圧電源からマイナスの直流高電圧が印加される。なお、第1放電部6及び第2放電部の各電極対に印加される電圧は、通常、-4000V~-15000Vとされる。これにより、第1針電極11aと第1対向電極12aとの間でコロナ放電が生じ、図中、矢印で示すように、第1放電部6の中心線C1の方向に沿ってイオン風W1が流れる。また、第2針電極11bと第2対向電極12bとの間でコロナ放電が生じ、図中、矢印で示すように、第2放電部7の中心線C2の方向に沿ってイオン風W2が流れる。なお、本実施形態では針電極11として、タングステン製電極が用いられ、対向電極12としてチタン製電極が用いられる。特に、対向電極12として、チタン製電極を用いることにより、対向電極12の耐久性を向上させることが可能となる。
【0022】
通風路5内は、仕切壁14によって第1空間部15及び第2空間部16が形成される。第1対向電極12aは仕切壁14を貫通するように設置される。すなわち、第1空間部15と第2空間部16とは、円筒状の第1対向電極12aによって連通するように形成される。第1針電極11aは、第1空間部15内において、第1対向電極12aから一定距離離れた位置でその先端側が第1対向電極12aに向くように設置されており、第1放電部6の電極対の中心線C1が水平方向Xに延びるように配置されている。第1放電部6においてコロナ放電が生じることで、上流側の第1空間部15から下流側の第2空間部16に向けて第1対向電極12aの内部を通過する水平方向の空気の流れ(イオン風W1)が生じる。このような構成とすることで、第1放電部6において放電処理された空気のみを下流側へ送ることが可能となる。
【0023】
第2空間部16には、第2放電部7が設置される。具体的には、第2空間部7を構成する筐体2の上面を貫通するように第2対向電極12bが設置されている。そして、第2対向電極12bから一定距離離れた位置でその先端側が第2対向電極12bに向くように第2針電極11bが垂直方向に立設されており、第2放電部7の電極対の中心線C2が垂直方向Zに延びるように配置されている。なお、第2対向電極12bの上端開口が通風路5の放出口4とされる。
【0024】
第2放電部7においてコロナ放電が生じることで、第2対向電極12bの内部を通過する、垂直方向Zで上向きの空気の流れ(イオン風W2)が生じる。このように、イオン発生ユニット1の上面から上向きにイオン風W2を放出することで、外部空間に広くマイナスイオンを拡散させることができる。なお、イオン発生ユニット1からイオン風W2が放出されるのに伴い、吸気口3から外部空気が通風路5内に流入する。吸気口3にはフィルター10が配されており、塵埃が除去された清浄な空気が通風路5内に供給される。
【0025】
放出口4から放出されるイオン風W2の風速は、第1放電部6の中心線C1と、第2放電部7の中心線C2とを同一線上に配置することで最大化することができる。ただ、前述のごとく、イオン風W2をイオン発生ユニット1の上面から放出する場合等のように、イオン発生ユニット1の構成部材のレイアウトの関係から、第1放電部6の中心線C1と、第2放電部7の中心線C2とを同一線上に配置できない場合がある。このような場合は、第2空間部16内において、第1放電部6と前記第2放電部7との間に、第1放電部で発生したイオン風W1の風向きを第2放電部7に向かうように変更させる導風部17を設けるのが好ましい。
【0026】
図2に示すように、第1放電部6の中心線C1と、第2放電部7の中心線C2とが交差するように、第1放電部6と第2放電部7とを配置する場合、第1放電部6の中心線C1と、第2放電部7の中心線C2との交差角度αは、90°以上180°以下とするのが好ましい。これにより、第1放電部6からのイオン風W1の風速の低下を抑えつつ、導風部17によってその風向きを第2放電部に向かうようにスムーズに変更することが可能となる。なお、本実施形態では、中心線C1と、中心線C2との交差角度αは、90°とされている。交差角度αが90°未満の場合、角度αが小さくなるほど、イオン風W1の流れに乱れが生じ、風速が低下しやすくなる。
【0027】
導風部17は、導風面部19と、導風面部19を支持する支持部21とを備える。導風部17は、第2空間部16を構成する筐体2底面のX方向中央部分に凸状に形成される。なお、導風部17は第2空間部のY方向全体に形成される。導風部17が形成されることにより、第2空間部16の下部にはX方向に互いに分離した2箇所の凹部が形成される。このうち、第1対向電極から遠い側の凹部が貯水部22とされる。貯水部22を構成する筐体の壁面には、貯水部22へ給水するための給水口28と、貯水部22に過剰の水が供給された場合に排水するための排水口29が形成される。
【0028】
導風部17は、第1対向電極12aを第1放電部6の中心線C1の方向(X方向)に見たときに、第1対向電極12aを遮る高さで形成される。導風部17は、第1放電部6の中心線C1と交差し、かつ、中心線C1方向に対して湾曲するように形成された導風面部19を有する。具体的には、導風面部19は、第1対向電極12aに近い側は水平に近い傾斜角度で、第1対向電極12aから離れるに従って垂直に近い傾斜角度まで連続的に傾斜角度が変化する面とされる。なお、導風面部19は、傾斜角度が段階的に変化する面であってもよいし、一定角度で傾斜する面であってもよいが風向きをスムーズに変更可能である観点から湾曲面であることが好ましい。
【0029】
第2空間部16内において、第1放電部6と第2放電部7との間には、水分を吸収して保持する吸水体18を有する蒸散部8が配置される。蒸散部8は、吸水体18がイオン風W1の流通を阻害しない態様であれば第1放電部6と第2放電部7との間に任意の場所に配置することが可能である。ただ、イオン発生ユニット1が、導風部17を備える場合、導風部17を吸水体8の支持部材として用いるのが好ましい。これにより、部品点数を削減することができると共に、省スペース化が可能となる。
【0030】
具体的に、本実施形態では、吸水体18は、導風面部19を含む導風部17全体をほぼ覆うように配設される。吸水体18の一部は貯水部22に浸漬される。吸水体18は、水分を吸収して保持する機能を有するものが用いられる。具体的には、繊維からなる織布や不織布のほか、スポンジに代表される連続気泡構造を有する、発泡体や、多孔質体等を用いることができる。なお、本実施形態では、柔軟性を有する吸水スポンジが使用されている。吸水体18は、その一部が貯水部22に浸漬されることにより、毛細管現象により吸水体18全体が水で湿潤した状態となる。
【0031】
湿潤状態の吸水体18にイオン風W1を接触させることにより、水を蒸散させ微粒化させるとともに、この微粒化した水にマイナスの電荷を帯びさせることができる。貯水部22に供給される水としては水道水を用いることができるが、塩化ナトリウムなどのような電解質を少量含有させるのが好ましい。
【0032】
上記構成によれば、吸水体18は表面積が大きいことから、イオン風W1が接触する水の表面積を増加させることができ、吸水体18からの水の蒸散をより促進させることができる。また、第1放電部6の中心線C1と、第2放電部7の中心線C2とを同一線上に配置できない場合、第1放電部6と前記第2放電部7との間に、第1放電部で発生したイオン風W1の風向きを第2放電部7に向かうように変更させる導風部17を設けることによって、第1放電部6からの風速の低下を抑えつつ、イオン風W1を第2放電部7に導くことができる。この場合、導風部17を吸水体8の支持部材として用いることで、省スペース化が可能となる。
【0033】
第1放電部6において発生したイオン風W1は層流であり、導風面部19に接触して導風面部19に沿って流れ、最終的には第2放電部7に向かうように層流のまま風向きが上向きに変更される。第2放電部7では、コロナ放電により上向きの空気の流れ(イオン風W2)が生じるため、導風部17によって上向きとなったイオン風W1が第2放電部7に導入されることと相まって、勢いいよく高い風速で層流のイオン風W2を放出することができる。これにより、マイナスイオンをより遠くまで送出することが可能となる。
【0034】
上記構成のイオン発生ユニット1は、
図3~
図5に示すように、イオン発生装置23に搭載して使用することができる。イオン発生装置23は、イオン発生ユニット1と、貯水タンク24と、貯水タンク24の水をイオン発生ユニット1へ供給する給水機構を構成する給水ポンプ25とを備える。イオン発生ユニット1の貯水部22には図示しないフロートスイッチが配置されており、貯水部22の水が少なくなるとスイッチがONとなり、水量が所定量に達するとスイッチがOFFとなるように設定されている。フロートスイッチがONになると給水ポンプ25が作動し、貯水タンク24から貯水部22への給水が開始され、フロートスイッチがOFFになると貯水部22への給水が停止する。
【0035】
図4及び
図5に示すように、本実施形態のイオン発生装置23には2つのイオン発生ユニット1が搭載されており、これにより大量のマイナスイオンを放出することが可能とされる。イオン発生装置23において、イオン発生ユニット1の吸気口3に対応する位置の壁面には格子状体37が配されており、格子状体37を通じてイオン発生装置23の外部からイオン発生ユニット1に空気を取り込むことが可能とされている。なお、イオン発生装置23に搭載するイオン発生ユニット1の数は放出するマイナスイオン量によって1つとしてもよいし、3つ以上としてもよい。本発明のイオン発生ユニット1は、2つの放電部6、7を備えることで勢いよくマイナスイオン風を放出することが可能となるが、より遠くまでマイナスイオンを放出するために送風ファンを補助的に使用することも可能である。
【0036】
[第2実施形態]
本実施形態では、蒸散部8を構成する吸水体18として、剛性を有する複数のシート状体を用い、それに合わせて導風部17の形状を変更した点及び給水口28の代わりに吸水体に給水する機構を新たに設けた点が特徴とされ、その他の構成は第1実施形態と同様とされる。なお、本実施形態では第1実施形態と同じ名称の部材には便宜上同じ符号を付している。
【0037】
図6~
図10に示すように、本実施形態の蒸散部8は、イオン風W1の流通方向に対して並列配置された、複数の吸水体18を備える。吸水体18は、剛性を有するシート状体からなり、
図9に示す形状にカットされて用いられる。導風部17は、第2空間部16を構成する筐体2の底面のX方向及びY方向の中央部分に凸状に形成される。
図7に示すように、導風部17は、イオン風W1の流通方向に対して直交する方向に間隔をおいて形成された複数のスリット31を備える。スリット31は、吸水体18を差し込んで固定可能な幅で形成される。
【0038】
図8に示すように、導風部17の各スリット31に吸水体18を差し込むことにより、複数の吸水体18がイオン風W1の流通方向に対して直交する方向に間隔をおいて保持される。第2空間部7を構成する上面には、吸水体18に給水するための給水部32が設けられる。吸水部32はY方向に溝状に延びる断面凹状に形成される。吸水体32の底部には、
図10に示すように、各吸水体18に対応する位置に複数の小孔33が形成されている。吸水部32の底部は、小孔33の出口に吸水体18の上端の一部が密接する位置に形成される。このように、吸水体18が小孔33を塞ぐように配置されることで給水部32の水は全量が吸水体18に吸収される。
【0039】
給水部32はチューブ34を介して給水ポンプ25に接続されている。吸水ポンプ25が作動すると給水部32に給水される。給水部32に溜まった水は、各小孔33直下に位置する吸水体18に流れ落ち、毛細管現象によって吸水体18の全体が吸水する。吸水体18に流れ落ちた過剰の水は、第2空間部16の下部に溜まる。前述のごとく、本実施形態では、導風部17は、第2空間部16の中央に形成されているため、導風部17の周囲が貯水部22とされる。
【0040】
貯水部22には、図示しないフロートスイッチが配置されており、貯水部22の水が少なくなるとスイッチがONとなり、給水ポンプ25が作動し、給水部32に送水が開始される。吸水部32に溜まった水は、流れ落ちて吸水体18に吸水され、過剰な水は吸水体18から流れ落ちて貯水部22に溜まる。貯水部22の水量が所定量に達するとスイッチがOFFとなり、貯水部22への給水が停止する。なお、貯水部22には、過剰の水が供給された場合に排水するための排水口29が形成されている点は第1実施形態と同様とされる。
【0041】
上記構成では、複数の吸水体18を導風部17によって支持するようにしたため、省スペース化が可能となる。また、蒸散部8において吸水体18は一種の整流板として機能する。すなわち、イオン風W1は、吸水体18、18の間の空間を層流のまま通過することで、イオン風W1の風速の低下を抑えつつ、吸水体18から水の蒸散を促進することができる。本実施形態では、複数の吸水体を用いることでイオン風W1と接触する吸水体18の表面積を第1実施形態よりも増大させることができ、それに伴い、第1実施形態よりも多量の水を蒸散させることが可能となる。さらに、吸水体18、18の間の空間を通過したイオン風W1は、導風面部19に接触することでその風向きをスムーズに変更することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態では、吸水体18の上方から給水され、余分な水は貯水部22に溜まる。吸水体18に吸水させる方法としては、吸水体18の下部に溜まった水を毛細管現象によって吸い上げて水を蒸散させることも考えられる。しかし、この方法では、水の蒸散に伴い、吸水量が低下する吸水体18の上部で、水中に溶解した成分が析出して吸水体18の吸水能力が低下する問題があった。これに対し、本実施形態では、水中に溶解した成分は吸水体18の上部で析出することなく、過剰な水とともに下方に流下して貯水部に溜まる。従って、吸水体18の吸水能力の低下を抑止することが可能となる。
【0043】
[第3実施形態]
本実施形態では、第2放電部7を構成する第2針電極11bと第2対向電極12bが、第2放電部7の電極対の中心線C2方向に相対移動可能された点が特徴とされ、その他の構成は第1実施形態と同様とされる。なお、本実施形態では第1実施形態と同じ名称の部材には便宜上同じ符号を付している。
【0044】
図11は、第2放電部7の第2針電極11bと、第2対向電極12bを示す部分拡大図であり、第2対向電極12bは断面図として示している。
図12は、
図11において、第2針電極11bと、第2対向電極12bが相対的に移動した状態を示す。本実施形態では、第2対向電極12bは筐体2に固定されているのではなく、筐体2に対して上下動可能に取り付けられる。具体的には、第2対向電極12bにラック35が設けられ、筐体2側にピニオン36が設けられる。
【0045】
ピニオン36を操作することにより、第2対向電極12bを上下動させることが可能となる。
図11に示すように、第2針電極11b(電極長さ:L1)と、第2対向電極12bが離れた状態(距離:L、ただしL1<L)ではマイナスイオンの発生量が多くなり、
図12に示すように、第2針電極11bが完全に第2対向電極12b内に収容された状態(距離:0)ではマイナスイオンの発生量は減少するものの、オゾン発生量が増加する。すなわち、第2針電極11bと、第2対向電極12bの相対距離を調節することでマイナスイオンとオゾンを任意の割合で発生させることが可能となる。
【0046】
オゾンは、害虫、害獣、害鳥等の有害動物を忌避するために有効であることが知られている。従って、空間内のウイルスの不活化や病原菌の除菌を目的とする使用用途では、
図11に示すように、第2針電極11bと、第2対向電極12bが離れた状態でイオン発生ユニット1を使用し、有害動物の忌避を目的とする使用用途では、
図12に示すように、第2針電極11bと、第2対向電極12bが接近した状態でイオン発生ユニット1を使用すればよい。このように、第2針電極11bと、第2対向電極12bの相対距離を調節することで1台のイオン発生ユニットを用いて多目的用途で使用することが可能となる。
【0047】
なお、第2針電極11bと第2対向電極12bとを相対移動させる機構は上記機構に限定されない。たとえば、第2対向電極12bを筐体2に固定し、第2針電極11bを移動可能としてもよい。また、本実施形態では第2放電部7を構成する第2針電極11bと第2対向電極12bが、第2放電部7の中心線C2方向に相対移動可能としているが、これに限らず、第1放電部6を構成する第1針電極11aと第1対向電極12aを、第1放電部6の中心線C1方向に相対移動可能としてもよい。また、第1放電部6及び第2放電部7を構成する針電極11と対向電極12をそれぞれ相対移動可能としてもよい。
【0048】
[第4実施形態]
本実施形態では、第2放電部7において電極対を2対使用し、各電極対を構成する第2針電極11bと第2対向電極12bを、それぞれ独立して各電極対の中心線C2方向に相対移動可能とした点が特徴とされ、その他の構成は第3実施形態と同様とされる。なお、本実施形態では第1実施形態と同じ名称の部材には便宜上同じ符号を付している。
【0049】
図13及び
図14に示すように、本実施形態のイオン発生ユニット1は、第2放電部7として電極対を2対有する。2対の電極対は、通風路5において並列配置される。各電極対を構成する針電極11bと対向電極12bは、それぞれ独立して電極対の中心線C2方向に相対移動可能とされる。なお、各電極対の間は板状の絶縁体27が配置される。これにより、2対の電極対の間でのコロナ放電の発生を防止することができる。
【0050】
第3実施形態では第2放電部として電極対を1対使用していたが、1対の電極対だけでは、マイナスイオンの発生量とオゾンの発生量はトレードオフの関係となる。一方、本実施形態では第2放電部7として電極対を2対使用し、それぞれ独立して電極対の中心線C2方向に相対移動可能としたため、マイナスイオンの発生量とオゾンの発生量を任意に調整することが可能となる。
【0051】
なお、本実施形態では、第2放電部7の2対の電極対をそれぞれ独立して電極対の中心線C2方向に相対移動可能としているが、これに限らず、第2針電極11bと、第2対向電極12bの位置を固定することも可能であることは勿論である。具体的に、各電極対とも、第2針電極11bと、第2対向電極12bを離れた位置で固定すれば、マイナスイオンをより大量に放出することが可能となる。これは、本発明では、吸水体18を用いることで大量の水の蒸散を可能としたためである。すなわち、第2放電部7の電極対が2対となっても、それに見合うマイナスの電荷を帯びた微粒化した水を十分供給することが可能となり、その結果、大量のマイナスイオンを放出することが可能となる。
【0052】
また、第2放電部7の2対の電極対のうち、一対の電極対のみ電極対の中心線C2方向に第2針電極11bと、第2対向電極12bとを相対移動可能とし、他の電極対の第2針電極11bと、第2対向電極12bの位置を固定してもよい。また、第1放電部6を構成する第1針電極11aと第1対向電極12aを、第1放電部6の中心線C1方向に相対移動可能としてもよい。
【0053】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。たとえば、上記実施形態では、通風路内に、導風部を別途配置しているが、これに限らず、通風路をダクト状に形成し、第1放電部と第2放電部の間のダクトを屈曲形成し、この屈曲形成したダクト部分を導風部とすることも可能である。
【0054】
実施形態及び上記変形例に開示されている構成要件は互いに組合せ可能であり、組合せることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 イオン発生ユニット
2 筐体
3 吸気口
4 放出口
5 通風路
6 第1放電部
7 第2放電部
8 蒸散部
9 高圧電源
10 フィルター
11 針電極
12 対向電極
13 電極対
14 仕切壁
15 第1空間部
16 第2空間部
17 導風部
18 吸水体
19 導風面部
21 支持部
22 貯水部
23 イオン発生装置
24 貯水タンク
25 給水ポンプ
27 絶縁体
28 給水口
29 排水口
31 スリット
32 給水部
33 小孔
34 チューブ
35 ラック
36 ピニオン
37 格子状体