(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165333
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】蒸気タービンのロータにおける動翼の植込み部での孔食進展量管理装置
(51)【国際特許分類】
F01D 25/00 20060101AFI20241121BHJP
F01D 5/30 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F01D25/00 V
F01D5/30
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081448
(22)【出願日】2023-05-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「2020年度~2022年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電基盤技術開発/石炭火力の負荷変動対応技術開発/タービン発電設備次世代保守技術開発」」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 泰輝
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 和宏
(72)【発明者】
【氏名】二宮 義和
(72)【発明者】
【氏名】塚田 侑香
(72)【発明者】
【氏名】牧野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田中 修
(72)【発明者】
【氏名】竹内 司
(72)【発明者】
【氏名】市川 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小野 泰規
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202FA00
3G202FB03
(57)【要約】
【課題】運転データに基づいて予測された過去から現在までの蒸気タービンのロータにおける動翼の植込み部での孔食の進展および将来の運転条件に基づいて予測された将来の孔食の進展を時系列で認識することができる蒸気タービンのロータにおける動翼の植込み部での孔食進展量管理装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、孔食進展量管理装置100は、計測された情報に基づいて算出された蒸気タービンのロータにおける動翼の植込み部での孔食進展量に関する情報を示す過去孔食進展量関連情報と、ユーザインターフェース140の入力画面を用いた操作において入力された将来の運転条件および過去孔食進展量関連情報に基づいて算出された将来における将来孔食進展量に関する情報を示す将来孔食進展量関連情報とを、ユーザインターフェース140の表示部に表示させる表示情報を生成する表示情報生成部を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測された情報に基づいて算出された過去から現在までの蒸気タービンのロータにおける動翼の植込み部で生ずる過去孔食進展量に関する情報を示す過去孔食進展量関連情報と、ユーザインターフェースの入力画面を用いた操作において入力された将来の運転条件および前記過去孔食進展量関連情報に基づいて算出された将来における前記ロータにおける動翼の植込み部で生ずる将来孔食進展量に関する情報を示す将来孔食進展量関連情報とを、前記ユーザインターフェースの表示部に表示させる表示情報を生成する表示情報生成部を備えることを特徴とする蒸気タービンのロータにおける動翼の植込み部での孔食進展量管理装置。
【請求項2】
前記表示情報生成部は、
前記過去孔食進展量関連情報および前記将来孔食進展量関連情報の双方を時系列で前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンのロータにおける動翼の植込み部での孔食進展量管理装置。
【請求項3】
前記表示情報生成部は、
所定時間おきに、前記過去孔食進展量関連情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンのロータにおける動翼の植込み部での孔食進展量管理装置。
【請求項4】
前記表示情報生成部は、
前記将来の運転条件が入力されるごとに、前記将来孔食進展量関連情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンのロータにおける動翼の植込み部での孔食進展量管理装置。
【請求項5】
前記ロータは、低圧タービンの最終段落前の3つの段落の羽根の植え込み部であり、
前記表示情報生成部は、
前記将来孔食進展量に基づいて算出された前記ロータの点検が推奨される孔食進展量を示す点検閾値に係る情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンのロータにおける動翼の植込み部での孔食進展量管理装置。
【請求項6】
前記表示情報生成部は、
ユーザインターフェース画面を用いた操作において入力された第2の将来の運転条件および前記過去孔食進展量関連情報に基づいて算出された将来における前記ロータの第2の将来孔食進展量に関する情報を示す第2の孔食進展量関連情報をさらに前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービンのロータにおける動翼の植込み部での孔食進展量管理装置。
【請求項7】
前記表示情報生成部は、
第2の孔食進展量に基づいて算出された前記ロータの点検が推奨される点検推奨時期に係る情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項6に記載の蒸気タービンのロータにおける動翼の植込み部での孔食進展量管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蒸気タービンのロータにおける動翼の植込み部での孔食進展量管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発電設備において、二酸化炭素(CO2)の排出量を削減する対策として再生可能エネルギの導入が加速されている。再生可能エネルギを利用した発電においては、天候などによって発電量が変化する。そのため、近年では、火力発電設備は、再生可能エネルギを利用した発電における不安定な電力供給を補うため、調整用電源としての調整火力を中心とした運用に移行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-26273号公報
【特許文献2】特開2006-194550号公報
【特許文献3】特開2002-297710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調整用電源としての運用に移行すると、起動停止回数や負荷変化が増える方向となる。この結果、低圧タービンの後半段落が湿り域と乾き域を行き来することとなり、従来に比べてより一層、低圧タービンのロータにおける動翼の植込み部に生ずる腐食による孔形状の孔食が発生することが知られていた。低圧タービンにとって過酷な上記の運転が繰り返されることにより、動翼の植込み部の孔食が進展し、結果として、動翼植込み部の応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking)および腐食疲労(CF:Corrosion Fatigue)の発生リスクが増すことになる。
【0005】
孔食進展によるSCC(応力腐食割れ)およびCF(腐食疲労)の調査は、タービンロータを吊り出し、羽根を抜き取りのうえ、植込み部を検査することが従来行われていた。しかしながら、運用条件次第では異常が無い場合もあり、その場合は発電事業者にとって、定期検査において不要な期間と費用を費やした結果となってしまう。そのため、実機の検査が必要かどうかだけでも知りたいというニーズがある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、運転データに基づいて予測された過去から現在までの蒸気タービンのロータにおける動翼の植込み部に生ずる孔食の進展および将来の運転条件に基づいて予測された将来の孔食の進展を時系列で認識することができる蒸気タービンのロータの孔食進展量管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、実施形態に係る蒸気タービンのロータにおける動翼の植込み部に生ずる孔食の進展量管理装置は、計測された情報に基づいて算出された過去から現在までの蒸気タービンのロータにおける動翼の植込み部に生ずる過去孔食進展量に関する情報を示す過去孔食進展量関連情報と、ユーザインターフェースの入力画面を用いた操作において入力された将来の運転条件および前記過去孔食進展量関連情報に基づいて算出された将来における前記ロータにおける動翼の植込み部に生ずる将来孔食進展量に関する情報を示す将来孔食進展量関連情報とを、前記ユーザインターフェースの表示部に表示させる表示情報を生成する表示情報生成部を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置を備えた蒸気タービンの構成を模式的に示す系統図である。
【
図2】第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置におけるユーザインターフェースに表示させる将来の運転条件の入力画面の一例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置による孔食進展の定周期演算処理の手順を示すフロー図である。
【
図5】第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置による孔食進展の将来予測演算処理の手順を示すフロー図である。
【
図6】第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置におけるユーザインターフェースに表示させる低圧タービンの評価部位の定周期計算および将来予測計算の結果の一例を示す図である。
【
図7】第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置におけるユーザインターフェースに表示させる水質データの一例を示す図である。
【
図8】第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置における基本情報の初期設定ステップを説明するためのフロー図である。
【
図9】第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置における定周期計算ステップを説明するためのフロー図である。
【
図10】第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置における将来予測計算ステップを説明するためのフロー図である。
【
図11】第2の実施形態に係る孔食進展量管理装置における将来予測演算処理を説明するためのフローチャートである。
【
図12】第2の実施形態に係る孔食進展量管理装置における将来予測演算処理を説明するためのフローチャートである。
【
図13】第2の実施形態に係る孔食進展量管理装置における表示画面の一例を示す図である。
【
図14】第2の実施形態に係る孔食進展量管理装置におけるユーザインターフェースに表示させる比較演算結果を選択する選択画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る蒸気タービンのロータの孔食進展量管理装置(以下、「孔食進展量管理装置」という)について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重畳する説明は省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置100を有する蒸気タービン10を備えた発電設備1の構成を模式的に示す系統図である。
【0011】
発電設備1は、蒸気タービン10、発電機20、および熱源装置30を備える。ここで、熱源装置30は、ボイラ31および再熱器32を有する。
【0012】
図1に示すように、蒸気タービン10は、高圧タービン11、中圧タービン12、低圧タービン13、復水器16、給水ポンプ17、および孔食進展量管理装置100を備える。低圧タービン13は、低圧タービン回転部13a、低圧ケーシング13bを有する。ここで、低圧タービン回転部13aは、複数の動翼(羽根)が植設されたロータシャフトである。なお、以下で、ロータと呼ぶ場合は、回転部、あるいは特に、低圧タービン回転部13aを意味するものとする。
【0013】
ボイラ31は、蒸気タービン10側から供給される給水を加熱して蒸気を発生させる。ボイラ31で発生した蒸気は、主蒸気管33により高圧タービン11に導かれる。高圧タービン11は、主蒸気管33から導入された蒸気の熱エネルギを回転エネルギに変換し、高圧タービン11で仕事をした蒸気を低温再熱管34に排出する。低温再熱管34に排出された蒸気は再熱器32に導入される。再熱器32は導入された蒸気を再熱して、その蒸気を高温再熱管35に導出する。
【0014】
中圧タービン12は、高温再熱管35から導入された蒸気の熱エネルギを回転エネルギに変換し、中圧タービン12で仕事をした蒸気をクロスオーバー管14に排出する。低圧タービン13は、クロスオーバー管14から導入された蒸気の熱エネルギを低圧タービン回転部13a等の回転エネルギに変換し、低圧タービン13で仕事をした蒸気を排気管15に排出する。発電機20は、高圧タービン11、中圧タービン12および低圧タービン13により駆動されることによって回転エネルギを電気エネルギに変換し、発電を行う。
【0015】
復水器16は、排気管15から導入された蒸気を凝縮させて復水とする。給水ポンプ17は、復水器16の復水を給水として給水管18を介してボイラ31に供給する。
【0016】
孔食進展量管理装置100は、蒸気タービン10における孔食進展に係る健全性を管理するための装置である。蒸気タービン10に係る各状態量は、図示しないそれぞれの検出器により測定され、これらの信号は、たとえばDCS(Distributed Ccontrol System)などの発電設備内制御装置40に取り込まれる。孔食進展量管理装置100は、孔食進展量管理に必要な計測データを、発電設備内制御装置40から取得する。なお、孔食進展量管理装置100の詳細については、後述する。
【0017】
孔食進展量管理装置100は、蒸気タービン10のロータシャフトにおける動翼の植込み部における孔食の進展(孔食進展)を管理するための装置である。
【0018】
ここで、本第1の実施形態において孔食進展量管理装置100が対象とする蒸気タービン10の該当部は、運転中のユニットの負荷変化によって乾き蒸気と湿り蒸気に交互にさらされるロータシャフトにおける羽根の植え込み部である。以下では、低圧タービン13の最終段から1段ないし3段上流側の羽根の植え込み部を管理対象とする場合を例にとって説明する。ここで、低圧タービン13の植え込み部とは、低圧タービン回転部13aにおいて、動翼を植設するためにロータシャフトのディスクに形成された翼溝を言う。
【0019】
以下、低圧タービン13の最終段から1段ないし3段上流側の段落の植え込み部を、それぞれ植え込み部L1ないしL3と呼ぶものとする。なお、L1ないしL3は例示であり、これ以上の段落数の場合、あるいはこれより少ない段落数の場合であってもよい。
【0020】
<孔食進展量管理装置の構成>
次に、孔食進展量管理装置100について説明する。
【0021】
図2は、第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0022】
孔食進展量管理装置100は、例えば、実機で計測された情報(以下、「計測情報」または「計測された情報」)に基づいて過去から現在までの孔食進展量の予測、および将来想定する運転条件に基づいて将来の孔食進展量を予測して、孔食進展量を管理する装置である。また、孔食進展量管理装置100は、例えば、孔食進展量などの予測結果を表示部に表示させるための表示情報を生成する。なお、計測情報は、当該計測値が計測された時刻情報を含む。
【0023】
図2に示すように、孔食進展量管理装置100は、計測情報取得部110、演算部120、記憶部130、ユーザインターフェース140、および進行制御部150を備える。孔食進展量管理装置100は、たとえば、コンピュータシステムであるが、それぞれの要素の機能を有する個別の機器、装置の集合であってもよい。
【0024】
計測情報取得部110は、孔食進展量管理に必要な計測データを、発電設備内制御装置40から取得するインターフェースである。計測情報取得部110は、発電設備内制御装置40に取り込まれる計測データのうち、孔食進展量管理に必要な運転時の蒸気タービン10に関する計測情報(以下、計測データともいう)をたとえば1分などの所定の時間間隔(計測情報取得周期)で取得する。
【0025】
計測情報は、発電機気出力(MW)および水質パラメータである。水質パラメータは、たとえば、塩素濃度(μg/L)、酸電気伝導度(μS/m)、シリカ濃度(μg/L)、ヒドラジン濃度(μg/L)、ナトリウム濃度(μg/L)、SO4濃度(μg/L)、溶存酸素濃度(μg/L)、およびpH(-)である。
【0026】
計測情報取得部110は、取得した計測情報を、記憶部130の計測情報記憶部132に出力する。計測情報記憶部132は、この計測情報を収納、記憶する。
【0027】
演算部120は、乾湿交番判定部121、平均値演算部122、孔食進展演算部123、将来予測部124、および表示情報生成部125を有する。
【0028】
演算部120のうち、以下に説明する乾湿交番判定部121、平均値演算部122、および孔食進展演算部123は、過去から現在までの孔食進展量aに関する演算処理である定周期演算処理にかかわる部分である。
【0029】
乾湿交番判定部121は、孔食進展量を演算するたとえば1時間などの周期(孔食進展演算周期ΔT)における発電機出力の範囲を導出し、乾湿交番の有無を判定する。
【0030】
平均値演算部122は、計測情報取得部110がたとえば1分などの計測情報取得周期ごとに取得した計測情報に基づいて、孔食進展演算周期ΔTにおけるそれぞれの水質パラメータの平均値を導出する。
【0031】
孔食進展演算部123は、孔食進展演算周期ΔTにおける乾湿交番時間ΔT1およびそれぞれの水質パラメータの平均値に基づいて、孔食進展演算周期ΔTにおける孔食進展量を算出する。
【0032】
将来予測部124は、将来、すなわち現在より後の期間の孔食進展量aに関する演算処理である将来予測演算処理を行う。将来予測部124は、将来予測演算処理として、後述するユーザインターフェース140に将来の運転計画(
図3参照)として入力された情報に基づいて、あらかじめ算出され記憶部130に収納されたそれぞれの運転パターンについての孔食進展量を積算して、1年分の孔食進展量を算出する。ここで、運転計画として入力された情報は、演算の条件であるので、以下、運転条件と呼ぶ。
【0033】
運転パターンは、1日の各時刻における出力[MW]、言い換えれば1日のうちでの出力[MW]の時間変化のパターンである。あらかじめ設定された複数の運転パターンのそれぞれの日数の1年の日数に対する割合(%)が入力される。なお、以下では、運転パターンを日負荷条件、運転パターンを示す曲線を日負荷曲線という場合もある。
【0034】
起動条件および日負荷条件のそれぞれのパターンについて、あらかじめ孔食進展量への1時間当たりの寄与分Δdjが算出されており、記憶部130のパターン別孔食進展量記憶部135に記憶、収納されている。なお、これらの寄与分の値は、インストールされ記憶部130のプログラム記憶部133に収納されているプログラム内のデータ部分として、プログラムとともにプログラム記憶部133に収納されてもよい。
【0035】
将来予測部124は、将来の運転計画として入力されたそれぞれの稼働時間をそれぞれに対応する孔食進展量への寄与分Δd
jに乗じて、当該運転パターンの年間の孔食進展量ΔD
jを算出し、その合計値を、年間の孔食進展量ΔD
mとして算出する。将来予測部124は、この孔食進展量ΔD
mを、前年の孔食量D
m-1に加えて、当該年の孔食量D
mとして算出する。また、当該年の孔食進展量ΔD
mの増加は直線的であるとする。なお、ここで、稼働時間は、後述する
図3の入力画面141で入力される稼働率に1年間の総時間を乗じたものである。
【0036】
表示情報生成部125は、ユーザインターフェース140に表示させる入力画面および出力画面の表示情報を生成する。入力画面については
図3を、また出力画面については
図6および
図7を、それぞれ引用しながら後に説明する。
【0037】
記憶部130は、入力情報記憶部131、計測情報記憶部132、プログラム記憶部133、演算結果記憶部134、パターン別孔食進展量記憶部135、テンプレート記憶部136、および表示情報記憶部137を備える。記憶部130は、例えば、ハードディスクドライブ、不揮発性メモリ装置などにより実現される。記憶部130は、孔食進展量管理装置100と物理的に一体ではなく図示しないネットワークを介して接続される形態としてもよい。
【0038】
入力情報記憶部131は、ユーザインターフェース140を介して入力された、例えば、将来の運転条件、各種設定条件などを記憶する。
【0039】
計測情報記憶部132は、計測情報取得部110により取得された計測情報を、順次、収納、記憶する。
【0040】
プログラム記憶部133は、孔食進展量管理装置100にインストールされたプログラムを収納する。この際、プログラムに付属する演算用のデータを併せて収納する。
【0041】
演算結果記憶部134は、演算部120で演算された結果を順次、収納、記憶する。演算結果記憶部134は、過去から現在までの孔食進展量(過去孔食進展量)に関する情報として、例えば、後に
図6を引用しながら説明する定周期演算処理における過去から現在までの孔食進展量の演算結果などを記憶する。なお、この情報は、過去孔食進展量関連情報として機能する。
【0042】
また、演算結果記憶部134は、後に
図6を引用しながら説明する将来の孔食進展量に関する情報として、例えば、将来における孔食進展量(将来孔食進展量)、点検閾値、点検推奨時期などの演算結果を記憶する。これらの情報は、将来孔食進展量関連情報として機能する。
【0043】
ここで、点検閾値とは、点検の実施が推奨される孔食進展量を示す閾値である。また、点検推奨時期とは、点検の実施を推奨する時期(年月日)である。
【0044】
パターン別孔食進展量記憶部135は、ユーザインターフェース140を介して入力された将来の運転条件における各パターンについて、予め算出されている孔食進展量などを収納する。なお、パターン別孔食進展量記憶部135は、プログラム記憶部133の一部であってもよい。すなわち、プログラムに付属する演算用のデータの一部として、プログラム記憶部133に収納されており、その部分をパターン別孔食進展量記憶部135と呼ぶことでもよい。
【0045】
テンプレート記憶部136は、ユーザインターフェース140に表示させる画像の生成の際に、共通部分となるテンプレートを収納する。
【0046】
表示情報記憶部137は、表示情報生成部125が生成した表示情報を収納する。
【0047】
ユーザインターフェース140は、各種情報をユーザ(管理者)に対して表示する表示部と、ユーザが各種情報を入力する入力装置とを備える。表示部は、例えば、ディスプレイなどで構成される。また、表示部は、表示用の画面の機能を備えるとともに、画面に直接入力可能な入力装置としての機能を備えるタッチパネルで構成されてもよい。入力装置は、例えば、キーボードやマウスなどで構成されてもよい。入力装置は、例えば、各種設定条件などの入力を、所定のフォーマットで入力可能とするUSBポートなどとの情報授受端末を有する。なお、前述のように、表示部の入力機能を用いる場合があってもよい。
【0048】
ユーザインターフェース140は、特に入力部は、発電設備1の管理者用と、蒸気タービン10の製造メーカの管理者用とが異なってもよい。
【0049】
進行制御部150は、孔食進展量管理装置100による孔食進展量管理方法におけるそれぞれのフローの進行を制御する。進行制御部150は、これらのフローにおける各判定ステップについての判定も行う。具体的には、進行制御部150は、後述する
図8ないし
図10に示すフローにおける判定を行い、またそれぞれのステップで孔食進展量管理装置100内の当該機能を行うべき部分にその機能の実行を命ずる。進行制御部150として、たとえば、プログラマブルロジックコントローラ(Progarammable Logic Controller)を用いてもよい。
【0050】
<入力画面>
【0051】
図3は、第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置100におけるユーザインターフェース140に表示させる将来の運転条件の入力画面141の一例を示す図である。
【0052】
入力画面141の左上のA部には、「将来運転計画の設定」(”Future operation plan setting”)の表題が表示されている。
【0053】
表題の下のB部には、「起動パターン選択」(”Select Start Up Pattern”)の小題が表示され、その下のC部には、「運転パターン選択」(”Select Oparaion Pattern”)のタイトルが表示されている。
【0054】
さらにその下のD部には、「日負荷曲線」(”Daily Load Curve”)の小題が表示されており、その下に、
図3の例では、3つの1日における負荷の時間的な変化を示す曲線(日負荷曲線)が運転パターンとして描かれたグラフFが表示されている。グラフFの横軸は、1日における時刻、縦軸は、負荷(”Load[MW]”)である。ここで、負荷は、発電機20の出力[MW]としてよい。
【0055】
グラフDの下に、運転パターン入力用の表Fが表示されている。表Fの横の各列は、運転パターン、単位、現在の属する年から以降の年の各年の入力用の欄である。表Fの縦の各行は、パターン1ないし3および各年の稼働率[%]である。パターン1ないし3の入力欄は、当該パターンの運転を行う日の1年の日数に対する割合[%]である。稼働率[%]の値は、年間での運転時間の割合[%]である。このように、将来における運転条件、すなわち各年における起動パターンおよび運転パターンを任意に設定することができる。
【0056】
入力画面141における右上の部分には、“Back”の選択表示H、および“Save”の選択表示Kが表示されている。“Save”を押した場合は、表Fに入力した情報が、表示情報記憶部137に収納、記憶される。また、“Save”を押さずに“Back”を押した場合は、表Fに入力した情報の表示が、入力前の表示に戻る。
【0057】
なお、ここで、選択表示を「押す」のように表現した場合は、タッチスクリーンでタッチする動作、あるいは、カーソルでクリックする動作など、当該部分に外部から働きかけて当該部分を特定あるいは選択する動作を総称するものとする。以下においても同様である。
【0058】
<孔食進展評価>
ここで、定周期演算処理における孔食進展評価について説明する。以下では、それぞれの孔食進展演算周期ΔTにおけるフローを説明する。ここで、定周期演算処理の周期を孔食進展演算周期ΔTと呼ぶものとする。すなわち、定周期演算処理は孔食進展演算周期ΔTごと(たとえば1時間おき)に行われる。
【0059】
図4は、第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置100による孔食進展評価ステップS100の手順を示すフロー図である。ここで、
図4は、
図9を引用しながら後述する計画情報の取得ステップS22に続く定周期演算ステップS100の手順の詳細である。
【0060】
孔食進展評価ステップS100に先立って、計測情報取得部110が、発電設備内制御装置40から発電機出力を含む計測情報を取得する(ステップS22)。
【0061】
孔食進展評価ステップS100として、まず、進行制御部150が、f=1と設定する(ステップS101)。ここで、fは、水質パラメータの種類に順番を付けたときの番号である。また、Fは水質パラメータの種類の数である。たとえば、水質パラメータが、塩素濃度、酸電気伝導度、シリカ濃度、ヒドラジン濃度、ナトリウム濃度、SO4濃度、溶存酸素濃度、およびpHの中から、対象とする水質パラメータを選択する。すべてを選択する場合は、8種類であり、fの最大値Fは8である。
【0062】
次に平均値演算部122は、当該孔食進展演算周期ΔTにおける当該第f水質パラメータの各取得周期で取得した時刻データ(水質データ)の平均値を算出する(ステップS102)。たとえば1分の取得周期で取り込まれる水質データについて、たとえば1時間の孔食進展演算周期ΔTにわたる平均値を算出する。次に、進行制御部150はfがFに到達したか否かを判定(ステップS103)し、到達していないと判定された(ステップS103 NO)場合は、fに1を加算し(ステップS104)、ステップS102およびステップS103を繰り返す。
【0063】
fがFに到達したと判定された(ステップS103 YES)場合は、乾湿交番判定部121が、当該孔食進展演算周期ΔTにおける発電機出力の範囲を導出する。具体的には、当該孔食進展演算周期ΔTにおける発電機出力の最高値GLHと最低値GLLを導出する(ステップS105)。
【0064】
次に、進行制御部150は、i=1と設定する(ステップS106)。ここで、iは、評価対象とする低圧タービン13の植え込み部L1ないしL3の一貫番号である。植え込み部L1ないしL3について、i=1から3とする。なお、iの最大値をIとする。この場合、I=3である。
【0065】
次に、乾湿交番判定部121が、当該iの場合について乾湿交番運転が有るか否かを判定する(ステップS107)。乾湿交番運転の有無は、当該孔食演算周期においてGLHとGLLの間にGLCiがある場合は乾湿交番運転が有り、GLHとGLLの間にGLCiがない場合は乾湿交番運転が無いと判定する。GLCiは乾湿交番が切り変わる発電機出力であり、タービン設計および段落ごとに設定する定数である。すなわち、次の式(1)で算出されるJDGの値が負の場合には、乾湿交番運転が有りとする。なお、GLCiの値は、プログラムに付随するデータとしてプログラムとともにプログラム記憶部133に収納されている。
【0066】
JDG=(GLH-GLCi)×(GLL-GLCi) ・・・(1)
【0067】
まず、当該孔食演算周期において乾湿交番運転が有ると判定された(ステップS107 YES)場合について説明する。
【0068】
まず、孔食進展演算部123が、第f水質パラメータの平均値を用いて修正係数Cfi1(f=1~F)を算出する(ステップS108a)。ここで、それぞれの修正係数Cfi1は、乾湿交番運転が有る場合の孔食進展速度(da/dt)の水質による修正係数である。修正係数Cfi1の算出のための算出式およびその算出式の係数等は、プログラムに付随するデータとしてプログラム記憶部133に収納されている。
【0069】
次に、孔食進展演算部123が、孔食進展速度(da/dt)を算出する(ステップS109a)。
【0070】
孔食進展演算部123による孔食進展速度(da/dt)の算出は、各水質パラメータによる修正係数Cfi1(f=1~F)に依存する関数の値として算出される。なおこの関数に使用される各係数等もプログラムに付随するデータとしてプログラム記憶部133に収納されている。
【0071】
次に、孔食進展演算部123が、孔食進展速度(da/dt)に孔食進展演算周期ΔTを乗じて、当該孔食進展演算周期ΔTにおける評価対象iの孔食進展量を算出する(ステップS110a)。また、評価対象iの当該孔食進展演算周期ΔTの開始時点における孔食量に、この孔食進展量を加え、新たな孔食量を算出する。なお、孔食深さの初期値は、プログラムに付随するデータとしてプログラム記憶部133に収納されている。なお、定期検査時に、植え込み部の表面をカットする欠陥除去(スキンカット)を行っている場合には、その直後の孔食初期値は0にリセットされる。
【0072】
次に、当該孔食演算周期において乾湿交番運転が有ると判定されなかった(ステップS107 NO)場合について説明する。
【0073】
まず、孔食進展演算部123が、第f水質パラメータの平均値を用いて修正係数Cfi2(f=1~F)を算出する(ステップS108b)。ここで、それぞれの修正係数Cfi2は、乾湿交番運転が無い場合の孔食進展速度(da/dt)の水質による修正係数である。修正係数Cfi2算出のための算出式およびその算出式の係数等は、プログラムに付随するデータとしてプログラム記憶部133に収納されている。
【0074】
次に、孔食進展演算部123が、ステップS109aと同様に孔食進展速度(da/dt)を算出する(ステップS109b)。さらに、孔食進展演算部123は、ステップS110aと同様に、孔食進展速度(da/dt)に孔食進展演算周期ΔTを乗じて、当該孔食進展演算周期ΔTにおける評価対象iの孔食進展量を算出する(ステップS110b)。また、評価対象iの当該孔食進展演算周期ΔTの開始時点における孔食量に、この孔食進展量を加え、新たな孔食量を算出する。
【0075】
次に、進行制御部150は、iが最大値Iに至ったか否かを判定する(ステップS111)。iが最大値Iに至ったと判定されなかった(ステップS111 NO)場合には、iの値に1を加え(ステップS112)、ステップS107からステップS111までを繰り返す。
【0076】
iが最大値Iに至ったと判定された(ステップS111 YES)場合には、定周期演算処理における当該孔食進展演算周期ΔTに関する孔食進展評価ステップS100を終了する。
【0077】
<将来孔食進展量の演算>
図5は、第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置100の将来予測部124による将来予測演算のステップ(将来予測ステップ)S200の手順を示すフロー図である。
図5は、
図10を引用しながら後述する将来運転計画の読み出しステップS32に続く将来予測ステップS200の手順の詳細である。なお、
図5では、各評価対象(植え込み部L1~L3)のそれぞれの単独のフローを示している。図示していないが、将来予測部124は、各評価対象順(植え込み部L1~L3)に自動的に評価を行う。
【0078】
将来予測ステップS200では、孔食進展計算は実施せずに、予め、各パターンについて算出されて、パターン別孔食進展量記憶部135に収納されている孔食進展量と、ユーザインターフェース140を介して入力された年ごとの各パターンの入力値とを用いて、年ごとの孔食進展量を算出する。
【0079】
まず、将来予測部124は、m=1、D1=D0と設定する(ステップS201)。ここで、mはたとえば2045年のように年の順番を示す。また、D0は、将来計算の最初の年(たとえば、現在の属する年、あるいは翌年)の孔食量計算の初期値である。たとえば、m=1が現在の属する年であれば、現在の孔食量、すなわち、定周期計算による現在の値である。D0の値は、演算結果記憶部134に収納されている。また、演算結果記憶部134は、以下のステップで算出された最新の孔食量を収納する。
【0080】
次に、将来予測部124は、D
m=D
m―1、ΔD
m=0、j=1とする(ステップS202)。すなわち、算出対象年の孔食量の初期値を、前年末の孔食量とし、当該年(m年)の孔食進展量ΔD
mを0とする。ここで、j(j=1~J)は、
図3の入力画面141における、将来運転パターンの番号である。表Fの「運転パターン」に係るそれぞれのパターンを一貫番号に並べて、その総数をJとする、たとえば、
図3に示す入力画面141の場合は、Jは3である。
【0081】
次に、将来予測部124は、第jパターンの稼働時間を導出する(ステップS203)。具体的には、
図3のユーザインターフェース140の入力画面141で入力され入力情報記憶部131に収納された第m年の第jパターンの稼働率に1年間の総時間を乗じて稼働時間を算出する。
【0082】
次に、将来予測部124は、パターン別孔食進展量記憶部135から、あらかじめ算出されているパターン別の孔食進展量への1時間当たりの寄与分Δdjを読み出し(ステップS204)、第jパターンの稼働時間を乗じて、当該運転パターンjの年間の孔食進展量ΔDjを算出する(ステップS205)。
【0083】
次に、将来予測部124は、ステップS205で導出した第jパターンの孔食進展量ΔDjを順次加算して、第m年における孔食進展量ΔDmを算出する(ステップS206)。また、将来予測部124は、jがJに達したか否かを判定(ステップS207)し、jがJに達していなければ(ステップS207 NO)、jに1を加え(ステップS209)、ステップS203からステップS207までを繰り返す。
【0084】
将来予測部124は、jがJに達したと判定すれば(ステップS207 YES)、第m年における新たな孔食量Dmを算出する(ステップS208)。詳細には、演算結果記憶部134に収納された第(m-1)年における孔食量Dm-1を読み出し、これにステップS206で算出した第m年における孔食進展量ΔDmを加算して、第m年における新たな孔食量Dmを算出する。第m年における新たな孔食量Dmは演算結果記憶部134に収納される。
【0085】
次に、将来予測部124は、mがMに達したか否かを判定(ステップS210)し、mがMに達していなければ(ステップS210 NO)、mに1を加え(ステップS211)、ステップS202からステップS210までを繰り返す。また、Mに達していると判定すれば(ステップS210 YES)、将来予測ステップS200を終了する。
【0086】
<出力画面>
図6は、第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置100におけるユーザインターフェース140に表示させる定周期計算および将来予測計算の結果の一例を示す出力画面142である。
【0087】
最上部のA部には、「タービン回転部植え込み部孔食予測」(”Rotor dovetai pitting corrosion prediction”)の表題が表示されている。
【0088】
その下のB部には、当該プラントの名称が表示される。
【0089】
B部の下のC部には、「孔食深さ」(”Pitting corrosion depth”)の表題が表示される。C部は、右側のチェック部によりプルダウン表示で、
図7に示すような水質パラメータの画面の選択が可能であり、対象とする情報を切り替えることができる。
【0090】
出力画面142の下側部分には、定周期計算および将来予測計算の結果を示すグラフFが表示される。グラフの横軸は歴年であり年の表示位置は、当該暦年の中間時点(たとえば6月30日)としている。また、縦軸は「孔食深さ比[mm/mm]」(“Pitting corrosion depth ratio[mm/mm]”)である。
【0091】
グラフFの上のD部には、”5yeares”、”10yeares”、”15yeares”、”20years”の選択肢が表示されている。出力画面142の場合は、”5years”が選択されているので、グラフFの横軸の暦年は、横軸の中央が現在を示す実線LCであり、実線LCの左側に過去の5年分、右側に将来の5年分が表示されている。
【0092】
グラフF中の曲線L11ないしL31および曲線L12ないしL32は、植え込み部L1ないしL3の孔食量をそれぞれ示す。実線LCの左側の曲線L11ないしL31は、現在までの定周期計算の結果を示す部分である。実線LCの右側の曲線L12ないしL32は、将来計算の結果を示す部分である。グラフFの右上のE部には、線種および曲線が示す評価部位の名称が表示される。なお、曲線L11ないしL31および曲線L12ないしL32の表示は、E部で表示した管理対象を示す線と対応する識別(線種、色など)方法とする。必要に応じて、定周期計算の結果と将来計算の結果を識別してもよい。
【0093】
後述するように、将来の曲線L12ないしL32を作成する将来予測演算処理は、将来の運転計画が入力されたと判断されたときのみ行われる。この際の孔食の初期値は、将来の運転計画が入力されたと判断されたときの最終値である。一方、過去の曲線を作成する孔食進展量の定周期演算は、孔食進展演算周期ΔTごと(たとえば1時間おき)に行われる。したがって、たとえば1時間ごとに、過去の部分の曲線L11ないしL31が変化し、過去の部分の最終値すなわち実線LCとの交点は増加し続ける。このため、過去の部分の最終値すなわち実線LCとの交点と、将来の部分の始点すなわち実線LCとの交点は1時間ごとにずれが増加することになる。
【0094】
図6のグラフFは、過去の部分の曲線L11ないしL31の実線LCとの交点と、将来の部分の曲線L12ないしL32の始点すなわち実線LCとの交点とがそれぞれ一致している時点の場合、すなわち、将来予測演算処理が行われその結果が将来の部分として表示されてから、孔食進展演算周期ΔTたとえば1時間以内の時点の場合を示している。
【0095】
グラフFの縦軸方向には、点検閾値のレベルを示す破線H1が表示されている。これに対応して、出力画面142中の右上には、アラーム表示としての表Gが表示されている。表Gには、「詳細タービン回転部点検」(”Detail rotor inspection”)の「推奨時期」(”Recommendation”)および「残余期間」(”Remaining Period”)が表示される。なお、表Gは、
図9および
図10を引用しながら後述する判定結果により、表示されない場合と表示される場合とがある。
【0096】
出力画面142において表Gの上には、選択表示(「レ」の部分)を有するプルダウン選択欄Hが表示されている。選択表示を押すと、プルダウンで、将来の運転計画の入力画面141などの選択候補画面が表示され、遷移する画面を選択できる。
【0097】
なお、出力画面142に表示されている項目のうち、A部、B部、C部、H部は、
図7で示す出力画面143を含めて、各出力画面に共通である。
【0098】
図7は、第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置におけるユーザインターフェースに表示させる水質データの一例を示す出力画面143である。以下では、出力画面142と共通の部分は説明を省略する。
【0099】
C部には、選択された表題として、「蒸気中塩素」(”Steam chloride”)と表示されている。すなわち、出力画面143は、水質データのうちの塩素の濃度について示している。
【0100】
出力画面143中のグラフF1には、平均値処理された塩素濃度[μg/L]の閾値LCth[μg/L]に対する塩素濃度(”Average steam chroride[μg/L]”)を示す曲線LCが表示されている。
【0101】
横軸のスパンの選択欄であるD部で、10年が選択されている。ここで、塩素濃度は過去から現在までの実績値であるので、曲線LCは、過去の10年前から現在までの実績値が示されている。
【0102】
グラフF1には、縦軸の値の閾値を示す直線LCthが表示されている。グラフF1に示す場合では、塩素濃度の実績を示す曲線LCの値が、閾値を示す直線LCthを超えた場合が2回ある。
【0103】
これに対応するアラーム表示として、右上の表G1には、グラフF1に表示されている範囲での、塩素濃度の実績を示す曲線LCの値が閾値を示す直線LCthを超えた回数、および直近で越えた時期を表示する。
【0104】
以上、
図6および
図7を引用しながら、出力画面142および出力画面143を説明した。なお、出力画面143では、水質パラメータとして、塩素濃度の場合を例にとって示したが、出力画面のC部を押すことにより、酸電気伝導度、シリカ濃度などの他の水質についての出力画面を表示させることができる。
【0105】
次に、第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置100による孔食進展量管理方法におけるそれぞれのフローについて説明する。
【0106】
<基本情報の設定処理>
図8は、第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置100における基本情報の初期設定ステップ(S10)を説明するためのフロー図である。この基本情報の設定処理は、製造メーカの管理者、技術者等が行う処理である。
【0107】
まず、孔食進展量管理装置100にプログラムを書き込む(ステップS11)。書き込まれたプログラムは、孔食進展量管理装置100のプログラム記憶部133に収納、記憶される。ここで、プログラムが書き込まれる際には、演算用の各種パラメータ、設定値、孔食量の初期値などのテータ情報が付随して書き込まれる。以下のステップは、プログラムがインストールされた後に、孔食進展量管理装置100を起動した状態を前提としている。
【0108】
次に、タービンロータ植え込み部に関係する記録があるか否かを判定する(ステップS12)。これらの記録があると判定されなかった(ステップS12 NO)場合は、本フローを終了する。
【0109】
これらの記録があると判定された(ステップS12 YES)場合は、その記録の登録を行う(ステップS13)。
【0110】
以上が、基本情報の設定ステップS10のフローである。
【0111】
<定周期演算処理>
図9は、第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置100における定周期演算ステップ(S20)を説明するためのフロー図である。
【0112】
まず、進行制御部150が、発電設備1が運転中か否かを判定する(ステップS21)。判定は、計測情報記憶部132に記憶された情報のうち、例えば、発電機出力に基づいて行われる。
【0113】
発電設備1が運転中と判定されなかった(ステップS21 NO)場合は、定周期演算処理を実施せずに終了する。
【0114】
発電設備1が運転中と判定された(ステップS21 YES)場合は、計測情報取得部110が発電設備内制御装置40から、運転データとしての計測情報を取得する(ステップS22)。ここで、取得する計測情報(計測された情報)としては、前述のように、発電機出力、各水質パラメータのデータである。
【0115】
次に、
図4を引用しながら説明したステップS100の孔食進展量の算出等が実行される。生成された演算結果は、演算結果記憶部134に収納、記憶される。
【0116】
表示情報生成部125は、演算結果記憶部134に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部136に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS23)。さらに、表示情報生成部125は、生成した表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。表示情報記憶部137は、その表示情報を記憶する。
【0117】
ユーザインターフェース140は、表示情報生成部125から出力された表示情報を
図6および
図7に示すように表示部に表示する(ステップS24)。
【0118】
ここで、表示情報生成部125は、孔食進展演算周期ΔT(たとえば1時間)ごとに、演算結果に基づく表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。そのため、表示部に表示される
図6に例示する出力
図142の演算結果を示すグラフF中の過去から現在までの曲線は、孔食進展演算周期ΔTごとに更新される。
【0119】
以上のステップS21からステップS24までの処理が、孔食進展演算周期ΔTごとに、すなわち、たとえば1時間おきに繰り返される。そのため、
図6の出力画面142で例示したグラフFに表示される定周期演算結果の部分が、孔食進展演算周期ΔTごとに更新される。
【0120】
次に、進行制御部150は、ステップS100の演算結果による孔食進展量の演算結果に基づいて、管理対象である植え込み部L1ないしL3のそれぞれについての判定を行う。これらの判定も、孔食進展演算周期ΔT(たとえば1時間)ごとに行われる。
【0121】
進行制御部150は、ステップS100の演算結果による各管理対象の孔食進展量が、それぞれ点検閾値に達したか否かを判定する(ステップS25)。
【0122】
孔食進展量がタービン回転部10aの点検閾値に達したと判定されなかった(ステップS25 NO)場合は、孔食進展演算周期ΔTごとに、この判定を繰り返す。
【0123】
孔食進展量がタービン回転部10aの点検閾値に達したと判定された(ステップS25 YES)場合は、進行制御部150は、孔食進展量が点検閾値に達した年月日に関する情報(点検推奨時期に係る情報)を演算結果記憶部134に出力する。演算結果記憶部134は、この情報を記憶する。表示情報生成部125は、演算結果記憶部134に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部136に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS26)。さらに、表示情報生成部125は、生成した表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。表示情報記憶部137は、表示情報を記憶する。
【0124】
ユーザインターフェース140は、表示情報生成部125から出力された表示情報に基づいて、点検推奨時期に係る情報を含む画面を表示する(ステップS27)。ここで、画面における点検推奨時期に係る情報は、
図6に示す出力画面142の表Gに示される“Detail rotor inspection”の部分である。なお、
図6では、定周期演算処理の範囲で点検推奨時期には至っておらず、将来予測演算処理の範囲で点検推奨時期に至った場合を示している。
【0125】
以上が、定周期演算処理のフローである。次に、将来予測演算処理のフローについて説明する。
【0126】
<将来予測演算処理>
図10は、第1の実施形態に係る孔食進展量管理装置100における将来予測演算ステップ(S30)を説明するためのフロー図である。
【0127】
ここで、孔食進展量管理装置100の導入日時点において、
図3に示す将来の運転条件は、初期設定されている。ユーザは、導入後、ユーザインターフェース140における
図3に示す入力画面141の表Fに、将来の運転条件を1年単位で入力する。
【0128】
例えば、
図6に示した出力画面142、
図7に示した出力画面143等の画面例におけるプルダウン選択欄Hの選択ボタンを押すことによって、プルダウン表示された中から、将来の運転条件の入力画面141を含む選択画面項目が表示される。プルダウン選択欄Hにおいて入力画面141が選択されると、ユーザインターフェース140の表示部の画面は、
図3に示す将来の運転条件の入力画面141に切り替わる。この際、表示情報生成部125は、ユーザインターフェース140からの入力画面141の選択に係る情報を入力し、ユーザインターフェース140に入力画面141を表示させるための表示情報を出力する。
【0129】
ユーザは、将来の運転条件を入力後、
図3の入力画面141中の“Save”表示を押す。ユーザインターフェース140は、“Save”表示をからの入力を受け、将来の運転条件に係る情報を入力情報記憶部131に出力する。入力情報記憶部131は、将来の運転条件に係る情報を記憶する。
【0130】
進行制御部150は、“Save”表示が押されたことに伴うユーザインターフェース140からの情報を受け、将来の運転条件の入力がされたと判定する。
【0131】
以上のような背景のもとで、
図10で示す将来予測演算処理の手順において、まず、進行制御部150は、将来の運転条件の入力がされたか否かを判定する(ステップS31)。
【0132】
ステップS31の判定において、将来の運転条件の入力がされていないと判定された場合(ステップS31 NO)、進行制御部150は、孔食進展演算周期ΔTごとに、この判定を繰り返す。
【0133】
ステップS31の判定において、将来の運転条件の入力がされていると判定された場合(ステップS31 YES)、将来予測部124は、プログラム記憶部133から将来予測演算を実行するためのプログラム、入力情報記憶部131に記憶された将来の運転条件を読み出す(ステップS32)。
【0134】
次に、将来予測部124は、
図5を参照して説明した演算方法で、将来孔食進展量を算出し、演算結果を演算結果記憶部134に出力する(ステップS200)。演算結果記憶部134は、演算結果を記憶する。
【0135】
表示情報生成部125は、演算結果記憶部134に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部136に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS33)。さらに、表示情報生成部125は、生成した表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。表示情報記憶部137は、表示情報を記憶する。
【0136】
ユーザインターフェース140は、表示情報生成部125から出力された表示情報を
図6の例に示すように表示部に表示する(ステップS34)。
【0137】
ここで、表示情報生成部125は、ステップS31において将来の運転計画が入力されたと判定される(ステップS31 YES)ごとに、ステップS200での将来孔食進展量の演算処理を実行し、演算結果に基づく表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。そのため、表示部に表示される将来孔食進展量に関する演算結果を示すグラフF(
図6)は、ステップS200での将来孔食進展量の演算処理が実行されるごとに更新される。換言すると、将来孔食進展量に関する演算結果を示すグラフFは、将来の運転条件の入力画面141におけるK部の“Save”が押されたことに伴う情報を受けるごとに更新される。
【0138】
以上のステップS31からステップS34までの処理が、将来の運転計画が入力されたと判定されるごとに繰り返される。そのため
図6の出力画面142で例示したグラフFに表示される将来孔食進展量に関する演算結果を示す曲線が、その都度更新される。
【0139】
次に、進行制御部150は、ステップS200の演算結果による孔食進展量がすなわち管理対象すなわち植え込み部L1ないしL3の点検閾値に達したか否かを判定する(ステップS35)。
【0140】
孔食進展量が管理対象の点検閾値に達したと判定されなかった(ステップS35 NO)場合は、表示情報生成部125は、演算結果記憶部134に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部136に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS46)。詳細は次のとおりである。
【0141】
まず、当該孔食進展量管理装置100の製造メーカから当該発電設備1の顧客への納品の段階では、製造メーカ内で初期の環境設定がなされ、
図6に例示する当該孔食進展量管理装置100の出力画面142に、アラーム表示としての表Gが表示されている場合がある。あるいは、今回のステップS35の判定の前に、すでにアラーム表示としての表Gが表示されている場合がある。
【0142】
今回のステップS35の判定で、孔食進展量が管理対象の点検閾値に達したと判定されなかった(ステップS35 NO)場合は、表示情報生成部125は、アラーム表示としての表Gの表示のない表示情報を生成する(ステップS36)。すでにアラーム表示のない表示となっている場合にも同様の表示情報を出力するが、この場合は、改めて同じ表示情報を出力しない方式でもよい。
【0143】
さらに、表示情報生成部125は、生成した表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。表示情報記憶部137は、表示情報を収納、記憶する。ユーザインターフェース140は、生成された情報に基づいて画面を表示する(ステップS37)。この後、ステップS35以下を繰り返す。
【0144】
孔食進展量がタービン回転部10aの点検閾値に達したと判定された(ステップS35 YES)場合は、進行制御部150は、孔食進展量が点検閾値に達した年月日に関する情報(点検推奨時期に係る情報)を演算結果記憶部134に出力する。ここで、
図6に例示された出力画面142のグラフFの場合、将来孔食進展量を示す現在を示す直線Cより右側の曲線L12ないしL32は、各年については、直線的に変化する。すなわち曲線L12ないしL32は折れ線状となっている。年月に関する情報は、点検閾値を示す直線H1と曲線L12ないしL32のいずれかが最初に交差する点の横軸の値が算出されることによって得られる。
【0145】
演算結果記憶部134は、この情報を記憶する。表示情報生成部125は、演算結果記憶部134に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部136に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS38)。さらに、表示情報生成部125は、生成した表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。表示情報記憶部137は、表示情報を記憶する。
【0146】
ユーザインターフェース140は、表示情報生成部125から出力された表示情報に基づいて、点検推奨時期に係る情報を含む画面を表示する(ステップS39)。ここで、画面における点検推奨時期に係る情報は、例として示した
図6の出力画面142中の表G、グラフFで点検閾値を示す点線H1である。
【0147】
上述のように、将来予測演算処理の手順によって、
図6に例示した出力画面142における将来の孔食進展量に関する情報が更新される。将来の運転条件によって、出力画面142における将来の孔食進展量に関する情報が変化する。また、将来の運転条件によって、点検推奨時期も変化する。
【0148】
上記した本第1の実施形態の孔食進展量管理装置100によれば、ユーザインターフェース140の表示部に、実機の運転データに基づいて予測された過去から現在までの孔食進展量、および将来想定する運転条件に基づいて予測された将来の孔食進展量を時系列で出力画面142のグラフFに表示することができる。また、出力画面143で例示したように、過去の各水質パラメータの値の推移を表示することができる。この結果、過去の実績および、孔食の将来の予測を目視で確認することできる。
【0149】
また、孔食進展量管理装置100において、出力画面142のグラフFに点検閾値を表示することができる。これによって、ユーザは、管理対象についての点検推奨時期を、目視で確認することできる。
【0150】
ユーザは、点検推奨時期を具体的に認識することにより、該当する定期検査においての工程や作業場所の調整、予算の確保等の準備を的確に行うことができる。
【0151】
孔食進展量管理装置100では、
図3に示す将来の運転条件の入力画面141において入力された運転条件に基づく将来の孔食進展量の演算結果を表示することができる。そのため、ユーザは、将来の運転条件の入力画面141において運転条件を変更することによって、運転条件による将来の孔食進展量の違いを出力画面142のグラフFにおいて目視で確認することできる。また、ユーザは、将来の運転条件による点検推奨時期の違いを出力画面142のアラーム表示としての表Gにおいて目視で確認することできる。
【0152】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、ユーザインターフェース140の表示部に表示される将来孔食進展量に関する情報の他の一例を説明する。
【0153】
図11および
図12は、第2の実施形態に係る孔食進展量管理装置100における将来予測演算処理を説明するためのフローチャートである。なお、図面の構成上、フローチャートを一図で示すことができないため、
図11のステップS41のNOに続くフローチャートを
図12に示す。
図12は、第2の実施形態に係る孔食進展量管理装置100における表示画面の一例を示す図である。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態の孔食進展量管理装置100の構成と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡単な説明とする。
【0154】
第2の実施形態では、孔食進展量の演算結果を示す出力画面144(
図13)において、他の将来の運転条件における演算結果を同時に表示できる点が第1の実施形態における孔食進展量管理装置100と異なる。ここでは、この異なる構成について主に説明する。なお、第2の実施形態における孔食進展の定周期演算処理は、第1の実施形態における定周期演算処理と同様である。
【0155】
図11および
図12に示す第2の実施形態における将来予測演算処理では、第1の実施形態における将来予測演算処理に、ステップS41からステップS46の処理が追加されている。
【0156】
ここで、ユーザは、将来の運転条件を入力後、
図3の“Save”の選択表示Kを押す。第2の実施形態における将来予測演算処理において、第1の実施形態における将来予測演算処理と同様に、ユーザインターフェース140は、“Save”の選択表示Kからの入力を受け、将来の運転条件に係る情報を入力情報記憶部131に出力する。入力情報記憶部131は、将来の運転条件に係る情報を記憶する。
【0157】
また、進行制御部150は、”Save”の選択表示Kが押されたことに伴うユーザインターフェース140からの情報を受け、将来の運転条件の入力がされたと判定する。
【0158】
図11に示すように、進行制御部150は、将来の運転条件の入力がされたか否かを判定する(ステップS31)。
【0159】
ステップS31の判定において、将来の運転条件の入力がされたと判定した場合(ステップS31 YES)、前述したように、ステップS32からステップS200を経て、ステップS34までの処理が実行される。そして、前述したように、ステップS34の処理の後、再びステップS31の処理が実行される。
【0160】
一方、ステップS31の判定において、将来の運転条件の入力がされていないと判定した場合(ステップS31 NO)、
図12に示すように、表示情報生成部125は、他の将来の運転条件で演算した結果(比較演算結果)の表示要求があるか否かを判定する(ステップS41)。比較演算結果は、他の将来の運転条件に基づいてすでに予測された演算結果であり、演算結果記憶部134に記憶されている。なお、他の将来の運転条件は、第2の将来の運転条件として機能し、比較演算結果は、第2の将来孔食進展量関連情報として機能する。
【0161】
ここで、
図14は、第2の実施形態に係る孔食進展量管理装置におけるユーザインターフェース140に表示させる比較演算結果を選択する選択画面145の一例を示す図である。
【0162】
例えば、
図6に示した出力画面142におけるプルダウン選択欄Hを押すことで、図示されていないが、プルダウン選択欄Hに選択画面145などの選択項目が表示される。そして、プルダウン選択欄Hの選択項目の中の選択画面145が選択されると、ユーザインターフェース140の表示部の画面は、
図14に示す選択画面145に切り替わる。この際、表示情報生成部125は、ユーザインターフェース140からの選択画面145の選択に係る情報を入力し、ユーザインターフェース140に選択画面145を表示させるための表示情報を出力する。
【0163】
図14の選択画面145には、演算結果記憶部134に記憶されているすでに演算された演算結果のリストがリスト表示部145aに表示される。また、ここでは、演算結果記憶部134に記憶された日時も表示するリスト表示部145aの一例が示されている。リスト表示部145aには、例えば、演算結果記憶部134に記憶された日時の新しい順に5つの演算結果のファイル名が表示される。なお、リスト表示部145aに表示される構成は、これに限られない。リスト表示部145aには、すでに演算された演算結果のリストが表示されればよい。
【0164】
ユーザは、リスト表示部145aに表示されたリストの中から比較演算結果としてたとえば
図6の出力画面142のグラフFに表示させたい演算結果のファイル名を選択する。そして、ユーザは、選択画面145のLoadボタン145bを押す。ユーザがLoadボタン145bを押すと、画面が演算結果を示す出力画面142に切り替わる。
【0165】
なお、BACKボタン145dは、Loadボタン145bまたはResetボタン145cを押さずにたとえば出力画面142に戻る場合に押すボタンである。
【0166】
表示情報生成部125は、ユーザインターフェース140からのLoadボタン145bが押されたことに基づく信号を受け、ステップS41において比較演算結果の表示要求があると判定する。
【0167】
ステップS41の判定において、比較演算結果の表示要求があると判定した場合(ステップS41 YES)、表示情報生成部125は、演算結果記憶部134に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部136に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS42)。ここでは、表示情報生成部125は、演算結果記憶部134に記憶された将来の運転条件に基づく演算結果および選択された比較演算結果の双方を読み出す。そして、表示情報生成部125は、生成した表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。表示情報記憶部137は、表示情報を記憶する。
【0168】
ユーザインターフェース140は、表示情報生成部125から出力された表示情報を
図12に示すように表示部に表示する(ステップS43)。
図13に示すように出力画面144には、将来孔食進展量として、将来の運転条件に基づく演算結果としての曲線L12ないしL32に加えて、比較演算結果としてそれぞれ二点鎖線で示す曲線L12aないしL32aが表示される。なお、必要に応じて、曲線L12aないしL32aを互いに識別する表示としてもよい。
【0169】
具体的には、将来孔食進展量として、それぞれの演算結果における孔食進展量比が時系列で示される。なお、比較演算結果における孔食進展量比は、破線L3で示されている。また、アラーム表示としての表Mでは、それぞれの演算結果における点検推奨時期および交換推奨時期が表示される。なお、
図13に示すように、過去孔食進展量も時系列で示されている。
【0170】
なお、比較演算結果における点検推奨時期は、第2の点検推奨時期として機能し、比較演算結果における交換推奨時期は、第2の交換推奨時期として機能する。
【0171】
ステップS61の判定において、比較演算結果の表示要求がないと判定した場合(ステップS41 NO)、表示情報生成部125は、比較演算結果の表示削除要求があるか否かを判定する(ステップS64)。
【0172】
ここで、ユーザは、
図14の選択画面145において、Resetボタン145cを押すことによって、
図13の出力画面144に示されている比較演算結果を削除することができる。表示情報生成部125は、ユーザインターフェース140からのResetボタン145cが押されたことに基づく信号を受け、ステップS64において比較演算結果の表示削除要求があると判定する。なお、ユーザがResetボタン145cを押すと、画面が演算結果を示す表示画面に切り替わる。
【0173】
ステップS44の判定において、比較演算結果の表示削除要求があると判定した場合(ステップS44 YES)、表示情報生成部125は、演算結果記憶部134に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部136に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS45)。ここでは、表示情報生成部125は、演算結果記憶部134に記憶された将来の運転条件に基づく演算結果を読み出す。そして、表示情報生成部125は、生成した表示情報を表示情報記憶部137およびユーザインターフェース140に出力する。表示情報記憶部137は、表示情報を記憶する。
【0174】
ユーザインターフェース140は、表示情報生成部125から出力された表示情報を
図12に示すように表示部に表示する(ステップS46)。すなわち、
図6に示すように出力画面142には、比較演算結果が削除され、将来の運転条件に基づく演算結果のみが表示される。
【0175】
ステップS44の判定において、比較演算結果の表示削除要求がないと判定した(ステップS44 NO)場合、ステップS31の処理に戻る。
【0176】
また、進行制御部150は、ステップS200の処理後、前述したように、ステップS200の演算結果に基づいて孔食進展量が交換閾値に達しているか否かを判定する(ステップS35)。そして、前述したように、ステップS37からステップS39までの処理が実行される。
【0177】
出力画面144の将来孔食進展量に関する情報は、将来の運転条件の入力画面141における”Save”の選択表示K、および比較演算結果の選択画面145におけるLoadボタン145bまたはResetボタン145cが押されたことに伴う情報を受けるごとに更新される。
【0178】
なお、ここでは、比較演算結果として一つの演算結果を選択する一例を示したが、複数の比較演算結果を選択できるように設定されてもよい。
【0179】
上記した第2の実施形態の孔食進展量管理装置100によれば、第1の実施形態の孔食進展量管理装置100における作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0180】
さらに、第2の実施形態の孔食進展量管理装置100によれば、出力画面144に、将来孔食進展量として、将来の運転条件に基づいて予測された演算結果および比較演算結果の双方を表示することができる。
【0181】
これによって、ユーザは、将来の運転条件に基づく演算結果における孔食進展量と比較演算結果における孔食進展量との違いを出力画面144のグラフF1において目視で確認することできる。また、ユーザは、将来の運転条件に基づく演算結果における点検推奨時期と比較演算結果における点検推奨時期との違いを出力画面144のアラーム表示としての表G1において目視で確認することできる。
【0182】
以上、説明した実施形態によれば、計測された情報に基づいて予測された過去から現在までの孔食進展量および将来の運転条件に基づいて予測された将来の孔食進展量を時系列で認識することができる蒸気タービンのロータの孔食進展量管理装置を提供することが可能となる。
【0183】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。さらに、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0184】
10…蒸気タービン、10a…タービン回転部、11…高圧タービン、12…中圧タービン、13…低圧タービン、13a…低圧タービン回転部、13b…低圧ケーシング、14…クロスオーバー管、15…排気管、16…復水器、17…給水ポンプ、18…給水管、20…発電機、30…熱源装置、31…ボイラ、32…再熱器、33…主蒸気管、34…低温再熱管、35…高温再熱管、40…発電設備内制御装置、100…孔食進展量管理装置、110…計測情報取得部、120…演算部、121…乾湿交番判定部、122…平均値算出部、123…孔食進展演算部、124…将来予測部、125…表示情報生成部、130…記憶部、131…入力情報記憶部、132…計測データ記憶部、133…プログラム記憶部、134…演算結果記憶部、135…パターン別孔食進展量記憶部、136…テンプレート記憶部、137…表示情報記憶部、140…ユーザインターフェース、141…入力画面、142、143、144…出力画面、145…選択画面、150…進行制御部