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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165336
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】草刈り機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/64 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
A01D34/64 H
A01D34/64 M
A01D34/64 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081451
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸治
(72)【発明者】
【氏名】頭司 宏明
(72)【発明者】
【氏名】藤元 隆史
(72)【発明者】
【氏名】河原 文雄
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA11
2B083BA15
2B083CA03
2B083CA09
2B083CA28
2B083DA07
2B083EA02
2B083GA02
2B083HA02
(57)【要約】
【課題】段差がある畦の上であっても、安定した草刈り作業が可能な草刈り機を提供すること。
【解決手段】走行しながら草を刈る草刈り機であって、上下方向に回動可能な昇降部材を有する機体と、前記昇降部材に取り付けられる草を刈るための草刈り部と、前記草刈り部の前方に取付けられるゲージ部材と、を含み、前記ゲージ部材の少なくとも一部は、正面視において、前記草刈り部と重畳し、前記ゲージ部材の他の少なくとも一部は、側面視において、前記草刈り部の前端より後方に位置する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行しながら草を刈る草刈り機であって、
上下方向に回動可能な昇降部材を有する機体と、
前記昇降部材に取り付けられる草を刈るための草刈り部と、
前記草刈り部の前方に取り付けられるゲージ部材と、
を含み、
前記ゲージ部材の少なくとも一部は、正面視において、前記草刈り部と重畳し、前記ゲージ部材の他の少なくとも一部は、側面視において、前記草刈り部の前端より後方に位置する、
草刈り機。
【請求項2】
前記草刈り部は、刃部を含み、
前記ゲージ部材の少なくとも他の一部が、側面視において、前記刃部の回転軌跡の前端より後方に位置する、
請求項1に記載の草刈り機。
【請求項3】
前記ゲージ部材は湾曲部を含む橇を含み、
側面視において、前記湾曲部の少なくとも先端が前記草刈り部の前端より後方に位置する
請求項1に記載の草刈り機。
【請求項4】
前記機体は、前記昇降部材の上方への回動を補助するばねを有する、
請求項1に記載の草刈り機。
【請求項5】
前記機体は、前記昇降部材を上下方向に回動可能に支持する支持部を有し、
側面視において、
前記昇降部材に設けられた前記支持部より前方に配置された昇降部材側ばね取付部と、本体フレームに設けられた前記支持部より後方に配置された本体フレーム側ばね取付部と、の間に、前記ばねが配置され、
前記昇降部材側ばね取付部の高さは、前記本体フレーム側ばね取付部の高さより高い、
請求項4に記載の草刈り機。
【請求項6】
前記ゲージ部材は軸受をさらに含み、
前記橇は前記軸受に回転可能に挿通される、
請求項3に記載の草刈り機。
【請求項7】
前記ゲージ部材は、橇取付けピン、及び、それぞれ位置が異なる複数の橇取付ピン挿入孔をさらに含み、
前記橇取付けピンを挿入する橇取付ピン挿入孔の位置に応じて、草刈高さが調整可能である、
請求項3に記載の草刈り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畦の天面又は法面に生えた雑草等を除去するため、草刈り機を用いて、定期的に畦の草刈り作業を行う。特許文献1には、無線通信による遠隔操作によって畦の上を走行しながら、草刈り作業を行う自走式の草刈り機が記載されている。当該自走式の草刈り機は、進行方向両側に設けられた走行部と、草刈り機の本体部及び走行部の前方に位置し草刈刃を含む作業部を備え、走行部を用いて走行しながら作業部を用いて草刈り作業を行うことができる。
【0003】
当該自走式の草刈り機は昇降アームに接続されたハウジングの底面に回転可能に設けられ、地面の段差に応じてハウジングを上昇又は下降させる接地体が、当該草刈刃の下部に設けられている。また、当該昇降アームは昇降モータによって支点ピンを昇降支点として昇降可能に設けられている。さらに、当該自走式の草刈り機は、昇降アームの下降を規制する下降規制手段及び、昇降アームの上昇を規制する上昇規制手段を含む。このような構成を含む当該自走式の草刈り機では、接地体が地面の段差に応じてハウジングを上昇又は下降させることが可能であると共に、下降規制手段及び上昇規制手段によって規定される範囲内にて地面の段差に追従可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-170338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の自走式の草刈り機では、地面の段差に追従するためには、接地体と地面との間の空間を確保しつつ作業する必要があり、空間が確保できない場合には、接地体が地面に埋まってしまい、作業が中断する可能性がある。また、特許文献1とは異なる構成の草刈り機は、例えば、草刈り機が作業をする際の進行方向の前方に、地面に接する車輪状部材、又はディスク状部材を備える場合がある。しかし、この場合は、当該車輪状部材、又は当該ディスク状部材が天面から外れ、草刈り機を段差に追従させることが困難であるという問題がある。
【0006】
本発明の一実施形態の課題の一つは、段差がある畦の上であっても、草刈り部を段差に追従させて、安定した草刈り作業が可能な草刈り機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る草刈り機は、走行しながら草を刈る草刈り機であって、上下方向に回動可能な昇降部材を有する機体と、前記昇降部材に取り付けられる草を刈るための草刈り部と、前記草刈り部の前方に取付けられるゲージ部材と、を含み、前記ゲージ部材の少なくとも一部は、正面視において、前記草刈り部と重畳し、前記ゲージ部材の他の少なくとも一部は、側面視において、前記草刈り部の前端より後方に位置する。
【0008】
前記草刈り部は、刃部を含み、前記ゲージ部材の少なくとも他の一部が、側面視において、前記刃部の回転軌跡の前端より後方に位置してもよい。
【0009】
前記ゲージ部材は湾曲部を含む橇を含み、側面視において、前記湾曲部の少なくとも先端が前記刈取り部の前端より後方に位置してもよい。
【0010】
前記機体は、前記昇降部材の上方への回動を補助するばねを有してよい。
【0011】
前記機体は、前記昇降部材上下方向に回動可能に支持する支持部を有し、側面視において、前記昇降部材に設けられた前記支持部より前方に配置された昇降部材側ばね取付部と、本体フレームに設けられた前記支持部より後方に配置された本体フレーム側ばね取付部と、の間に、前記ばねが配置され、前記昇降部材側ばね取付部の高さは、前記本体フレーム側ばね取付部の高さより高くてもよい。
【0012】
前記ゲージ部材は軸受をさらに含み、前記橇は前記軸受に回転可能に挿通されてもよい。
【0013】
前記ゲージ部材は、橇取付けピン、及び、それぞれ位置が異なる複数の橇取付ピン挿入孔をさらに含み、前記橇取付けピンを挿入する橇取付ピン挿入孔の位置に応じて、草刈高さが調整可能であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態の草刈り機によれば、段差がある畦の上であっても、草刈り部を段差に追従させて、安定した草刈り作業が可能な草刈り機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る草刈り機の構成を示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る草刈り機の構成を示す左側面図である。
図3】(A)は本発明の一実施形態に係る草刈り機のゲージ部周辺を拡大した斜視図であり、(B)はゲージ部周辺の断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る草刈り機が段差に位置する状態を示す左側面図である。
図5】(A)は図1のA1-A2に沿った切断面の概略を示す断面概略図であり、(B)は図1の中心線110に沿った切断面の概略を示す断面概略図であり、(C)は(A)に示された状態から昇降部材が回動した状態を示す断面概略図であり、(D)は(C)に示された状態の中心線110に沿った切断面の概略を示す断面概略図である。
図6】本発明の一実施形態に係る草刈り機のゲージ部及び天面刈取り部の位置関係を説明する図であり、ゲージ部190及び天面刈取り部30の一部を拡大した部分の切断面の概略を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の草刈り機について説明する。但し、本発明の草刈り機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は同一の符号の後にアルファベットを付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、進行方向に対する左右の位置に同一又は類似の部材が設けられている場合、当該部材の符号の後にL(左側の部材)又はR(右側の部材)を付する。左右の部材を特に区別しない場合は、L及びRを省略して説明する場合がある。
【0017】
本発明の一実施形態において、「上」は、草刈り機が畦に対して草刈り作業を行いながら進行する状態において、畦から垂直に遠ざかる方向を示し、「下」は、「上」とは反対の方向を示す。また、説明の便宜上、「前」は、走行部に対して天面刈取り部が位置する方向を示し、「後」は、「前」とは反対の方向を示す。また、「左」又は「右」は、草刈り機の「後」から草刈り機を見た背面視に対する「左」又は「右」を示す。
【0018】
また、平面視における草刈り機の中心線(進行方向に平行で、かつ、草刈り機の中心を通る線)を基準としたとき、相対的に、中心線に近い側を「内側」と呼び、中心線から遠い側を「外側」と呼ぶ。なお、以下において説明される実施形態において、中心線上という表現を用いた場合、中心線が誤差の範囲内でズレた位置も中心線上に含まれる。
【0019】
[草刈り機100の構成]
草刈り機100は、走行しながら畦の草刈り作業を行う自走式の草刈り機である。具体的には、リモートコントローラにより遠隔制御され、畦の上を自走して草刈り作業を行う草刈り機である。
【0020】
図1は、草刈り機100の構成を示す平面図であり、図2は草刈り機100の構成を示す左側面図である。図5(A)は図1のA1-A2に沿った切断面の概略を示す断面概略図であり、図5(B)は図1の中心線110に沿った切断面の概略を示す断面概略図であり、図5(C)は図5(A)に示された状態から昇降部材15が回動した状態を示す断面概略図であり、図5(D)は図5(C)に示された状態の中心線110に沿った切断面の概略を示す断面概略図である。なお、本発明の構成を理解しやすくするため、図2においては、図1に示される符号の一部が省略され、図5(A)及び図5(C)においては、本体フレーム14、昇降部材15、及び下方回動制限部材18以外の構成要素が省略され、図5(B)及び図5(D)においては、本体フレーム14、下方回動制限部材18、及び支持部93L以外の構成要素が省略されている。
【0021】
図1又は図2に示されるように、草刈り機100は、機体10、走行部20L及び20R、天面刈取り部30及び法面刈取り部80を有する刈取り部120、及びゲージ部190を含む。草刈り機100は、走行部20L及び20Rで自走しながら、天面刈取り部30及び法面刈取り部80の駆動を制御することで、1回の走行で畦の天面及び法面の草刈り作業を行うことができるようになっている。
【0022】
機体10は、草刈り機100の骨格をなすフレームである本体フレーム14、本体フレーム14に回動可能に連結され前方に延びる昇降部材15、及び本体フレーム14の前側において外側に張り出すように固定されたリンク機構50L及び50Rを支持するためのリンク支持プレート(図示省略)、制御部16、エンジン60、オルタネータ70及びバッテリ40を含む。刈取り部120を含む各部の駆動は、制御部16により制御される。また、本体フレーム14、昇降部材15は、金属材料(例えば、鋼材、アルミニウム材)、繊維強化プラスチック(FRP)材料等を用いて構成することができるが、この例に限られるものではない。
【0023】
本体フレーム14の後方には、法面刈取り部80を連結するための法面刈取り部取付部12L及び12R、及び、昇降部材15の上方への回動を補助するばね90L及びばね90R(詳細は後述する)の一端(後端)を固定する本体フレーム側ばね取付部91L及び91Rが設けられている。なお、ばね90L及び90Rは引っ張りばねである。また、本体フレーム14の側方には、リンク機構50L及び50Rが連結される、第1固定部材57L及び57R、及び第1固定部材57L及び57Rよりも前方に配置された第2固定部材58L及び58R、が設けられている。
【0024】
さらに、本体フレーム14の下方には、昇降部材15の下方への回動を制限する下方回動制限部材18が設けられている。下方回動制限部材18は、本体フレーム14の左右に橋渡しされ取り付けられた板状の部材であり、昇降部材15が後述の支持部93L及び93Rを中心にして下方へ回動していくと、昇降部材15の下面が下方回動制限部材18に当接する。これにより、回動時における昇降部材15の下限位置が制限される(図5(A)を参照)。なお、回動する昇降部材15の下限位置を制限できるものであれば下方回動制限部材18の形状は、板状に限定されず、本体フレーム14の左右から内側に向かって凸状であってよい。
【0025】
また、本体フレーム14の上には、昇降部材15を本体フレーム14に対して回動可能に連結(支持)する支持部93L及び93Rが設けられている。支持部93Lには、回動軸部材95Lを挿通するための挿通孔が設けられ、支持部93Rには、回動軸部材95Rを挿通するための挿通孔が設けられている。
【0026】
昇降部材15の前方には、下方に吊り下げられるように天面刈取り部30が支持されている。詳細は後述するが、昇降部材15の下面には、天面刈取り部30の刃部32L及び32Rに連結された駆動部33L及び33Rを取付けるための天面刈取り部取付部11L及び11Rが固定され、天面刈取り部取付部11L及び11Rを介して天面刈取り部30が昇降部材15に取り付けられる構成となっている。なお、天面刈取り部30が昇降部材15に取り付けられる構成は、当該構成に限定されない。例えば、昇降部材15に取り付けられる天面刈取り部取付部11L及び11Rが、前後方向に延在する部材で構成され、当該部材を昇降部材15から前方に突出するように取り付けられるとともに、当該部材の前方側で天面刈取り部30が下方に吊り下げられるように取り付けられてもよい。また、天面刈取り部取付部11L及び11Rは、天面刈取り部30に含まれてよい。さらに、天面刈取り部取付部11L及び11Rは、昇降部材15に対して、着脱可能であってよい。また、本実施形態では、天面刈取り部取付部は、天面刈取り部取付部11L及び11Rのように2つ設けられる例が示されるが、1つであってもよい。
【0027】
昇降部材15の後方側上面には、ばね90Lの他端(前端)及びばね90Rの他端(前端)を固定する昇降部材側ばね取付部92L及び92Rが立設されている。なお、昇降部材側ばね取付部92L及び92Rの昇降部材15及び本体フレーム14からの高さは、本体フレーム側ばね取付部91L及び91Rの昇降部材15及び本体フレーム14からの高さより高くなるように構成されている。つまり、昇降部材側ばね取付部92L及び92Rのばね90Lの他端(前端)及びばね90Rの他端(前端)が固定される位置は、本体フレーム側ばね取付部91L及び91Rのばね90Lの一端(後端)及びばね90Rの一端(後端)が固定される位置より上方に位置している。
【0028】
また、昇降部材15の上面には、オルタネータ70、及びエンジン60が取付けられている。本実施形態では、後述するように、天面刈取り部30に含まれる刃部32L及び32Rを駆動する駆動部33L及び33Rの動力源として、電動モータより大きな動力が得られるエンジン60を使用している。そして、エンジン60で生成された動力を、ベルト等で構成された動力伝達手段(図示省略)を介して、駆動部33L及び33Rに伝達させているため、駆動部33L及び33Rが取り付けられる昇降部材15に、エンジン60を取り付けている。また、同様に、オルタネータ70の動力源として、エンジンを使用し、エンジン60で生成された動力を、ベルト等で構成された動力伝達手段(図示省略)を介して、オルタネータ70に伝達させているため、エンジン60が取り付けられている昇降部材15に、オルタネータ70を取り付けている。なお、エンジン60及びオルタネータ70の配置については、当該構成に限定されず、駆動部33L及び33Rの動力源をエンジン60以外の構成、例えば、電動モータを用いた場合、エンジン60及びオルタネータ70は、昇降部材15の上面ではなく、本体フレーム14に取り付けることも可能である。
【0029】
さらに、昇降部材15には、回動軸部材95L及び95Rを挿通するための挿通孔が設けられている。昇降部材15に設けられた回動軸部材95Lを挿通するための挿通孔、及び、上述の支持部93L(本体フレーム14)に設けられた回動軸部材95Lを挿通するための挿通孔に回動軸部材95Lが挿通され、昇降部材15に設けられた回動軸部材95Rを挿通するための挿通孔、及び、上述の支持部93R(本体フレーム14)に設けられた回動軸部材95Rを挿通するための挿通孔に回動軸部材95Rが挿通されることによって、昇降部材15は、回動軸部材95L及び95Rを回動軸として、本体フレーム14に対して回動可能に取付けられている。なお、図示は省略するが、回動軸部材95L及び95Rは、支持部93L及び93R、昇降部材15から抜け落ちないように、例えば、先端付近のみにねじが形成されたボルト及び当該ねじに螺合するナット等で構成される。
【0030】
また、昇降部材15は、草刈り機100が走行している地面200(走行部20の前方の地面200)に段差が無い場合等では、ゲージ部190により、下方回動制限部材18とは離間(図5(A)及び図5(B)を参照)しているが、後述するように、ゲージ部190が段差に追従し、昇降部材15が下方へ回動していくと、昇降部材15は、その下面が下方回動制限部材18に当接(図5(C)及び図5(D)を参照)するように構成されている。つまり、下方回動制限部材18により、昇降部材15の下方への回動は制限される。支持部93L及び93Rは、側面視において、昇降部材側ばね取付部92L及び92Rの下方のやや後方(法面刈取り部80が配置されている方)に配置される。なお、前述のように、エンジン60及びオルタネータ70を本体フレーム14に取り付けた場合等、支持部93L及び93Rを本体フレーム14の前方側に設け、昇降部材15を本体フレーム14の前方側で上下方向に回動可能に支持するようにしてもよい。
【0031】
さらに、昇降部材15に支持されている天面刈取り部30には、ゲージ部190が取付けられている。ゲージ部190の詳細は後述するが、ゲージ部190は、天面刈取り部30(の刃部32L及び32R)と地面200との間に空隙を確保するために、地面200に接地可能に構成された部材である。つまり、草刈り機100が走行している地面200(走行部20の前方の地面200)に段差が無い場合、走行部20の地面200との接地面とゲージ部190(後述するゲージ部材19)の最下位置の高さが同じである。ゲージ部190が地面200に接した状態で草刈り機100が走行した場合、天面刈取り部30は、刃部32L及び32Rの前方の地面200の段差に応じて上下方向に回動可能である。
【0032】
草刈り機100の走行中又は作業中の動作についての詳細は後述するが、例えば、草刈り機100の走行中又は作業中に、刃部32L及び32Rの前方の地面200に上りの段差があった場合、ゲージ部190は段差に応じて上方に動く。ばね90L及びばね90Rは、天面刈取り部30、オルタネータ70、及びエンジン60などの駆動系が取付けられた昇降部材15を常に引っ張るように構成され、昇降部材15の上方への動きを補助することができる。
【0033】
なお、上述のような、下方回動制限部材18により昇降部材15の下方への回動が制限されていない状態では、ゲージ部190が、常時、地面200に接する構成に限定されず、草刈り機100が走行している地面200(走行部20の前方の地面200)に段差が無い場合には、ゲージ部190が地面200と接触せず、草刈り機100が走行している地面200(走行部20の前方の地面200)に図4に示すような上りの段差がある場合、当該段差で、ゲージ部190が地面200と接触するような構成としてもよい。
【0034】
本実施形態において、ばね90L及び90Rは引っ張りばねである。昇降部材側ばね取付部92L及び92Rは、支持部93L及び93Rよりやや前方(天面刈取り部30が配置れている方)に配置され、本体フレーム側ばね取付部91L及び91Rは、支持部93L及び93Rより後方(法面刈取り部80が配置されている方)に配置されている。ばね90Lは昇降部材側ばね取付部92Lと本体フレーム側ばね取付部91Lとの間に取付けられ、ばね90Rは昇降部材側ばね取付部92Rと本体フレーム側ばね取付部91Rとの間に取付けられる。なお、昇降部材15の上方への回動を補助する構成は、当該構成に限定されず、例えば、本体フレーム14の前方側で本体フレーム14と昇降部材15の間に圧縮ばねを設け、当該圧縮ばねで昇降部材15の上方への回動を補助するよう構成であってもよい。
【0035】
また、本実施形態では、ばね90L及び90R、並びに、支持部93L及び93Rを含めて、回動機構と呼ぶ。草刈り機100では、ゲージ部190が段差を移動すると、回動機構を用いて、本体フレーム14に対して、天面刈取り部30、オルタネータ70、及びエンジン60などの駆動系が取り付けられた昇降部材15が上下方向に回動可能である。
【0036】
走行部20L及び20Rは、左右一対のクローラであり、草刈り機100の走行手段として機能する。背面視において、走行部20Lは、草刈り機100の進行方向に向かって左側の走行手段であり、走行部20Rは、右側の走行手段である。なお、走行部20Rの構造は、走行部20Lと同じであるため、ここでは、主に、走行部20Lに着目して説明する。
【0037】
走行部20Lは、クローラベルト21L、駆動輪22L、従動輪23L、クローラフレーム24L、駆動部54L、及びリンク取付部材25Lを含む。クローラベルト21Lは、駆動輪22L及び従動輪23Lに架け渡され、駆動輪22Lの回転に従って回転する。クローラベルト21Lは、弾性部材(具体的にはゴム)で構成され、複数のラグ部(突出部)を有している。駆動部54Lは、オルタネータ70及びバッテリ40から供給される電力により駆動されるモータで構成されている。駆動輪22Lは、駆動部54Lから伝達された動力により回転する。駆動輪22Lの回転による動力は、クローラベルト21Lを介して従動輪23Lに伝達される。クローラフレーム24Lは、駆動輪22L及び従動輪23Lをそれぞれ回転可能に支持する。
【0038】
本実施形態の走行部20Lは、作業前の調整時において、クローラベルト21Lの接地長を調整可能であるが、作業時においてはクローラベルト21Lの接地長が変化することはない。なお、クローラフレーム24Lには、リンク機構50Lと連結するためのリンク取付部材25Lが固定されている。リンク取付部材25Lは、後述する第1リンクアーム51L、第2リンクアーム52Lを取付けるための取付部として、第1取付部25La及び第2取付部25Lbを有している。第1取付部25La及び第2取付部25Lbは、走行部20L(クローラベルト21L)の上端面の高さ位置よりも上側に突出するように形成されている。
【0039】
リンク機構50L及び50Rは、機体10と走行部20L及び20Rとを連結し、機体10と走行部20L及び20Rとの位置関係、すなわち機体10と走行部20L及び20Rとの距離(間隔)を相対的に変化させる機能を有している。換言すると、リンク機構50L及び50Rは、走行部20L及び20Rに対し、機体10を上下に移動させる機能を有している。リンク機構50Lは、草刈り機100の進行方向に向かって左側のリンク機構であり、走行部20Lに連結される。リンク機構50Rは、右側のリンク機構であり、走行部20Rに連結される。リンク機構50Rの構造は、リンク機構50Lと同じであるため、ここではリンク機構50Lに着目して説明する。
【0040】
リンク機構50Lは、第1リンクアーム51L、第2リンクアーム52L、プレートリンク56L、電動シリンダ53L、及び移動補助機構55Lを含む。
【0041】
第1リンクアーム51Lは、側面視において略L字状に形成された部材であり、第1固定部材57Lを用いて、本体フレーム14に回動可能に連結される。第1リンクアーム51Lの一端は、第1取付部25Laに回動可能に連結され、第1リンクアーム51Lの他端は、電動シリンダ53Lに回動可能に連結されている。また、第1リンクアーム51Lの他端は、後述するように、プレートリンク56の後端に回動可能に連結されている。
【0042】
第2リンクアーム52Lは、第1リンクアーム51Lの前方に配設され、側面視において、第1リンクアーム51Lと略同一形状(同一形状含む)に構成されている。第2リンクアーム52Lは、第2固定部材58Lを用いて、本体フレーム14に回動可能に連結されている。第2リンクアーム52Lの一端は、第2取付部25Lbに回動可能に連結され、第2リンクアーム52Lの他端は、後述するようにプレートリンク56の前端に回動可能に連結されている。
【0043】
プレートリンク56Lは、第1リンクアーム51Lの他端及び第2リンクアーム52Lの他端を連結するプレート状の部材である。プレートリンク56Lは、後端側に第1リンクアーム51Lの他端を、前端側に第2リンクアーム52Lの他端をそれぞれ回動可能に連結している。プレートリンク56Lは、第1リンクアーム51Lの他端と第2リンクアーム52Lの他端との距離を一定に保つと共に、機体10とリンク機構50Lとを水平(平行)に保つことを補助する機能を有する。
【0044】
電動シリンダ53Lは、リンク機構50Lを用いて走行部20Lに対して本体フレーム14を移動させ、機体10と走行部20Lとを離接させるための動力源として機能する。電動シリンダ53Lの前側の一端は、本体フレーム14の上方前方側に配置された支持ブラケット59Lに回動可能に支持されており、後側の一端は、第1リンクアーム51Lの他端に回動可能に連結されている。なお、支持ブラケット59Lは、本体フレーム14に固定された支持ブラケット61Lに取り付けられる。また、本実施形態では、アクチュエータの一例として、電動シリンダ53Lを用いているが、アクチュエータは支持ブラケット61Lと第1リンクアーム51Lの他端との間の長さを変更可能な構成であればよい。例えば、アクチュエータは、油圧シリンダであってもよい。
【0045】
移動補助機構55Lは、走行部20Lに対して本体フレーム14を持ち上げ移動するときの駆動を補助するための機構である。移動補助機構55Lは、第2リンクアーム52Lの他端及び第2固定部材58Lに連結されている箇所の間と、支持ブラケット61Lと間に介設されてこれらを連結する。移動補助機構55Lは、前後方向に移動可能であって、前後方向に延在するロッド55Laを含む。ロッド55Laの後端は、第2リンクアームに回動可能に連結されるとともに、ロッド55Laは、図示しないばねなどの弾性部材により後方、すなわち、図2に示す左側側面視において、第2リンクアーム52Lの第2固定部材58Lに対する時計回りの回動を補助する方向に、付勢されている。
【0046】
本実施形態では、電動シリンダ53Lの後側の一端が第1リンクアーム51Lの他端に回動可能に連結され、移動補助機構55Lの一端が第2リンクアーム52Lの他端及び第2固定部材58Lに連結されている箇所の間に固定されている例が示されているが、電動シリンダ53Lの前側の一端は第2リンクアーム52Lの他端に回動可能に連結され、移動補助機構55Lの一端が第1リンクアーム51Lの他端及び第1固定部材57Lに連結されている箇所の間に固定されていてもよい。すなわち、電動シリンダ53Lは、第1リンクアーム51L及び第2リンクアーム52Lを回動可能なように、本体フレーム14と、第1リンクアーム51L又は第2リンクアーム52Lの一方に連結され、移動補助機構55Lは本体フレーム14と、電動シリンダ53Lが連結されていない第1リンクアーム51L又は第2リンクアーム52Lの他方に連結されていればよい。
【0047】
本実施形態においては、第1リンクアーム51L、第2リンクアーム52L、リンク取付部材25L及び本体フレーム14によって平行リンクが構成される。また、第1リンクアーム51L、第2リンクアーム52L、プレートリンク56L及び本体フレーム14によっても平行リンクが構成されている。電動シリンダ53Lを伸長させると、図2に示す左側側面視において、平行リンクが時計回り(右回り)に回動して、走行部20Lが機体10に対して離間していく。一方、電動シリンダ53Lを収縮すると、図2に示す左側側面視において、平行リンクが反時計回り(左回り)に回動して、走行部20Lが機体10に対して近接していく。
【0048】
なお、リンク機構50L及び50R(電動シリンダ53L及び53R)の各々は、個別に制御可能に構成される。つまり、リンク機構50L及び50Rの各々は、個別に駆動(制御)可能である。したがって、天面又は地面の段差に応じて、リンク機構50L及び50R(走行部20L及び20R)の各々は、それぞれ個別に駆動することができる。これにより、例えば、畦の段差により、走行部20Rに対して、走行部20Lが下方に下がったときには、機体10を走行部20Lから離間するようにリンク機構50Lを駆動させ、走行部20Lに対して機体10を上方に移動させ、走行部20Rに対して、走行部20Lが上方に上がったときには、機体10を走行部20Lに近接するようにリンク機構50Lを駆動させ、走行部20Lに対して機体10を下方に移動させることで、機体10の水平姿勢を保ちながら走行することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、図2に示す左側側面視において、エンジン60がリンク機構50Lの電動シリンダ53Lと重なる位置に配置され、図1に示すように、移動補助機構55L及び電動シリンダ53Lを、中心側(内側)から外側に向かい、移動補助機構55L、電動シリンダ53Lの順で配置することにより、電動シリンダ53Lがエンジン60からの(熱等の)影響を受けにくいように配慮されている。
【0050】
制御部16は、例えば、本体フレーム14の上方かつ後方に配置され、走行部20、刈取り部120、及びバッテリ40を制御する機能を有する。制御部16は、例えば、演算装置、メモリ、及び通信回路等を備えた電子回路基板を有している。メモリには、例えば、草刈り機100の各部を各種制御するための制御プログラムが記憶されており、演算装置はメモリから制御プログラムを読み出し、制御プログラムに基づき、走行部20、リンク機構50L(電動シリンダ53L)及び50R(電動シリンダ53R)、並びに、天面刈取り部30及び法面刈取り部80を制御する。図示は省略したが、草刈り機100の機体10には、機体10の姿勢を検出するためのIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測ユニット)が搭載されており、制御部16が、IMUにより検出した機体10の姿勢に基づいて電動シリンダ53L、53Rの駆動を制御することで、機体10の姿勢が水平に保持される。
【0051】
エンジン60は、天面刈取り部30に含まれる刃部32L及び32Rを駆動する駆動部33L及び33Rの動力源、及びオルタネータ70の動力源として機能する。なお、エンジン60で生成された動力は、ベルト等で構成された動力伝達手段(図示省略)を介して、駆動部33L及び33R、並びに、別途設けたオルタネータ70に伝達される。動力伝達手段は、例えば、オルタネータ70へ動力を伝達するための第1の動力伝達手段(図示省略)と、天面刈取り部30へ動力を伝達するための第2の動力伝達手段(図示省略)と、を含んでいる。
【0052】
オルタネータ70及びエンジン60には、第1の動力伝達手段のベルト(図示省略)が架け渡されている。当該ベルトを介してエンジン60の動力が伝達されることにより、オルタネータ70は電力を生成する。オルタネータ70は、生成した電力をバッテリ40に供給すると共に、法面刈取り部80に含まれる刃部82L及び82Rを駆動する駆動部83L及び83R、及び走行部20を駆動する駆動部54L及び54Rの動力源として機能する。また、オルタネータ70によって生成された電力は、ワイヤーハーネス、ハーネスケーブルなどと呼ばれる電力及び/又は制御信号(電気信号)を供給する電力供給手段(図示省略)を介して、駆動部83L及び83R、駆動部54L及び54R、駆動部33L及び33R、並びに、バッテリ40に供給される。
【0053】
なお、オルタネータ70には、発電制御を行うための発電制御回路(図示省略)が搭載されている。草刈り機100には、バッテリ40のバッテリ電圧を検知するセンサ(図示省略)が設けられており、センサによって検知された結果を発電制御回路がモニタリングして、その発電状態をオルタネータ70自身が制御するようになっている。発電制御回路は、バッテリ40のバッテリ電圧をモニタリングしており、バッテリ40のバッテリ電圧が所定値を下回れば、電力を生成して給電状態となり、バッテリ40のバッテリ電圧が所定値を上回れば給電停止となるように、オルタネータ70を制御する。
【0054】
バッテリ40は、例えば、本体フレーム14の上方、かつ、エンジン60と制御部16との間に配置されている。バッテリ40は、オルタネータ70で生成された電力を蓄電する。バッテリ40は、蓄電した電力を、法面刈取り部80に含まれる刃部82L及び82Rを駆動する駆動部83L及び83R、及び走行部20を前後に駆動する駆動部54L及び54Rに供給する動力源として機能する。また、バッテリ40は、蓄電した電力を、機体10と走行部20の間の上下の位置関係を変化させるリンク機構50L及び50Rを駆動させるための電動シリンダ53L及び53Rに供給する動力源として機能する。バッテリ40に蓄電された電力は、オルタネータ70と同様の電力供給手段を介して、駆動部83L及び83R、駆動部54L及び54R、及び電動シリンダ53L及び53Rに供給される。
【0055】
なお、草刈り機100は、カバー部材を含んでよい。カバー部材は、制御部16、バッテリ40、オルタネータ70、及びエンジン60を覆い、保護する役割を有する。また、カバー部材は、制御部16、バッテリ40、オルタネータ70、及びエンジン60の一部を覆う構成としてもよい。
【0056】
続いて、図1、又は図2を用いて、刈取り部120について説明する。刈取り部120は、走行部20の前方に設けられる天面刈取り部30、及び走行部20の後方に設けられる法面刈取り部80を有する。本実施形態では、天面刈取り部30は、機体10が進行する方向(前方)に配置され、畦に生えた雑草等の草を刈る作業(草刈り作業)を行う草刈り手段として機能する。また、法面刈取り部80は、機体10が進行する方向と180度反対(後方)に配置され、畦に生えた雑草等の草を刈る作業を行う草刈り手段として機能する。
【0057】
なお、草刈り機100において、法面刈取り部80が走行部20に対して前方に設けられ、天面刈取り部30が走行部20に対して後方に設けられてもよく、このとき、左、及び右は、前方から見た場合の左、及び右に対応する。また、本実施形態においては、天面刈取り部30が草刈り部と呼ばれる場合がある。
【0058】
天面刈取り部30は、ケーシング31、左右に並んで配置された2つの刃部32L及び32R、並びに駆動部33L及び33Rを含む。ケーシング31は、刃部32L及び32Rの上方及び側方を覆い、土、小石、草などの周囲への飛散を防ぐ機能を有する。ケーシング31は、その上面部31aに立接された取付座31bで昇降部材15に支持された天面刈取り部取付部11L及び11Rに固定されている。ケーシング31の上面部31aには、駆動部33L及び33Rが固定(支持)され、駆動部33L及び33Rには、刃部32L及び32Rが連結されている。すなわち、天面刈取り部30は、天面刈取り部取付部11L及び11Rを介して昇降部材15に取り付けられている。刃部32L、及び駆動部33Lの構造は、刃部32R、及び駆動部33Rの構造と同じであるため、ここでは刃部32R、及び駆動部33Rに着目して説明し、刃部32L及び駆動部33Lの構造は必要に応じて説明する。
【0059】
刃部32Rは、複数の草刈り刃32Raを有している。刃部32Rは、駆動部33Rの回転軸に接続され、エンジン60からの動力により回転する。駆動部33Rの回転軸の回転により、複数の草刈り刃32Raも回転し、刃部32Rは草を刈るように構成されている。駆動部33Rは、例えば、ベルト(図示省略)を含む第2の動力伝達手段(図示省略)を用いて、エンジン60からの動力を刃部32Rに伝達する。なお、刃部32Lは、複数の草刈り刃32Laを有している。
【0060】
本実施形態では、刃部32L及び32Rは、機体10の中心線110に対して、左右対称又は左右略対称に備えられ、静止時において相互に干渉しないように位相ずれして配設されている。第2の動力伝達手段は、ベルトを介して伝達されるエンジン60の駆動力を、駆動部33L及び33Rの両方に均等又は略均等に伝達するように設計されている。したがって、刃部32Lの複数の草刈り刃32La及び刃部32Rの複数の草刈り刃32Raは同じタイミングかつ同じ速度で回転する。また、例えば、刃部32Lの複数の草刈り刃32Laは右回りに回転し、刃部32Rの複数の草刈り刃32Raは左回りに回転し、刃部32Lの複数の草刈り刃32La及び刃部32Rの複数の草刈り刃32Raは互いに反対方向に回転する。回転軌跡34Lは、刃部32Lの複数の草刈り刃32Laの刃先の回転の軌跡を示し、回転軌跡34Rは、刃部32Rの複数の草刈り刃32Raの刃先の回転の軌跡を示す。また、前端34Laは、回転軌跡34Lの前端を示し、前端34Raは、回転軌跡34Rの前端を示す。
【0061】
法面刈取り部80は、左右一対の左側法面刈取り部80L及び右側法面刈取り部80Rを含んでいる。また、図1に示されるように、草刈り機100は、左右一対の法面刈取り部取付部12L及び12R、並びに、左右一対の角度調整機構130L及び130Rを有する。本体フレーム14の後方の端部は、中心線110に対して対称又は略対称に位置する後方左の端部17L及び後方右の端部17Rである。
【0062】
左側法面刈取り部80L及び右側法面刈取り部80Rは、それぞれ、ケーシング81L及び81R、刃部82L及び82R、駆動部83L及び83R、法面刈取り部支持部89L及び89R、並びに取っ手140L及び140Rを含む。刃部82L及び刃部82Rは、天面刈取り部30の刃部32L及び32Rと同様に、複数の草刈り刃を有し、複数の草刈り刃を有する刃部82L及び刃部82Rが回転することにより、畦に生えた草を刈る。なお、左側法面刈取り部80Lの構造は、右側法面刈取り部80Rの構造と同様であるため、ここでは右側法面刈取り部80Rに着目して説明する。
【0063】
右側法面刈取り部80Rは、法面刈取り部取付部12R、角度調整機構130R、及び法面刈取り部支持部89Rを介して、後方右の端部17Rに連結されている。
【0064】
法面刈取り部支持部89Rがケーシング81Rに取付けられる。ケーシング81Rは、法面刈取り部支持部89Rを介して、角度調整機構130Rに連結される。ケーシング81Rは、刃部82Rを覆い、天面刈取り部30のケーシング31と同様に、土、小石、草などの周囲への飛散を防ぐ。取っ手140Rがケーシング81Rに取付けられている。取っ手140Rは右側法面刈取り部80Rを角度調整する際の把持部となる。駆動部83Rは刃部82Rに連結され、刃部82Rを回転させるための部位であり、オルタネータ70及びバッテリ40から供給される動力により駆動されるモータを有している。本実施形態では、ケーシング81Rはカバー部と呼ばれる場合がある。
【0065】
草刈り機100では、制御部16を用いて、駆動部83L及び83Rの各々は、それぞれ個別に制御可能である。駆動部83L及び83Rは、オルタネータ70又はバッテリ40からの電力が供給され、刃部82L及び82Rを回転させる。
【0066】
角度調整機構130(130L及び130R)は、畦の天面の幅及び畦の角度に応じて、左側法面刈取り部80L及び右側法面刈取り部80Rの位置の各々を、それぞれ個別に調整することができる(図示は省略)。
【0067】
[ゲージ部190の構成]
図1図2図3(A)及び図3(B)、又は図6を用いて、ゲージ部190について説明する。図3(A)はゲージ部190の周辺を拡大した斜視図であり、図3(B)はゲージ部190を中心線110で切断した断面概略図である。図6は、ゲージ部190及び天面刈取り部30の位置関係を説明する図であり、ゲージ部190及び天面刈取り部30の一部を拡大した部分の断面概略図である。
【0068】
ゲージ部190は、ゲージ部材19、ゲージ部材取付部191、橇取付ピン195を有している。ゲージ部材19は、ゲージ部材取付部191及び天面刈取り部30のケーシング31の取付座31bを介してケーシング31に固定される。ゲージ部材取付部191は、略コ字状に折り曲げられ、アーム部199を取付座31bに固定するための取付部198と、取付部198から前方に延びるアーム部199と、アーム部199前端に設けられた円筒状のゲージ部材ブラケット194と、を有する。ゲージ部材19は、断面形状円形の丸棒状や丸パイプ状の部材であり、軸受197に回転可能に支持される下方に延在する垂直部192b、及び垂直部192bの下方に連続するとともに進行方向と反対側に湾曲し、地面200に接することが可能な湾曲部192aを含む略J字状の橇192、橇192を回転可能に支持する軸受197、及び、ゲージ部材ブラケット194の内側に配置されると共に軸受197を支持する内部ケース193を含む。橇取付ピン195は、ゲージ部材ブラケット194に形成された橇取付ピン挿入孔196、及び内部ケース193に形成された挿入孔193aに挿通され、内部ケース193をゲージ部材ブラケット194に固定する。
【0069】
また、ゲージ部材19の少なくとも一部は、図3(A)の斜視図から理解されるとおり、正面視において、天面刈取り部30と重畳し、ゲージ部材19の他の少なくとも一部は、図6に示されるとおり、側面視において、天面刈取り部30の前端より後方に位置するように構成される。より詳細には、正面視において、橇192の一部は天面刈取り部30のケーシング31と重畳する。なお、ゲージ部材19の他の少なくとも一部は、側面視において、天面刈取り部30の前端より後方に位置するように構成されてもよい。また、図6に示されるとおり、橇192の一部は刃部32Rより前方に設けられ、橇192の他の一部(後端192c(先端))は刃部32Rの下方かつ回転軌跡34Rの前端34Raより後方に位置するように構成され、湾曲部192aが地面200に接することが可能である。なお、図示は省略されるが、刃部32Lと同様に、橇192の一部は刃部32Rより前方に設けられ、橇192の他の一部は刃部32Rの下方かつ回転軌跡34Rの前端34Raより後方に位置するように構成される。その結果、草刈り機100は、刃部32L及び32Rより前方の橇192により、天面刈取り部30を地面200の段差に追従させながら天面などの地面200の草を刈ることができる。
【0070】
さらに、橇192は、前述のとおり、軸受197によって回転可能に支持され、地面200の段差に応じて、地面200から受ける軽い力で進行方向に向きを変えることができる。よって、草刈り機100においては、ゲージ部材19が、例えば、特許文献1に記載の刃部の下方に固定された接地体のように、地面に埋まり、作業が中断することがなく、作業効率の低下を抑制することができる。
【0071】
また、ゲージ部材ブラケット194には、複数の橇取付ピン挿入孔196が形成されている。橇取付ピン挿入孔196は、それぞれ高さ位置が異なる複数対(本実施形態では3対)の橇取付ピン挿入孔196を含む。内部ケース193は、同じ高さ位置に形成され、互いに対向する一対の挿入孔193aを含む。複数の橇取付ピン挿入孔196のうち、いずれか一箇所の一対の橇取付ピン挿入孔196と一対の挿入孔193aとを重畳させ、橇取付ピン195を挿入することによって、橇取付ピン挿入孔196(橇取付ピン195)と地面200との間の距離を固定することができる。複数の一対の橇取付ピン挿入孔196のうち、橇取付ピン195を挿入する一対の橇取付ピン挿入孔196の位置に応じて、橇取付ピン挿入孔196(橇取付ピン195)と地面200との間の距離、換言すると、刃部32L及び32Rが回転するときの各々の外縁を含む面である刈面と地面200との間の距離を調整することができる。これによって、草刈り機100では、草の刈り高さ(草刈り作業時に設定される草刈り後の地面200から草の高さ)を変更することができる。
【0072】
ゲージ部材19は、平面視(図1)において、中心線110上に設けられる。図示は省略されるが、橇192の湾曲部192aの垂直部192b側は、正面視において、天面刈取り部30(ケーシング31)に重畳、すなわち、刃部32L及び32Rの重なりによって生じる凹部に対応して配置され、橇192の湾曲部192aの後端193c(先端)は、側面視において、刃部32L及び32Rの下方(地面200側)に配置されている。なお、橇192の垂直部192bを、平面視において、刃部32L及び32Rの重なりによって生じる凹部に対応して配置させることにより、橇192の垂直部192bと刃部32L及び32Rとの距離を近づけることが可能である。さらに、ゲージ部材19(湾曲部192aの後端192c(先端))は、側面視の前後方向において、刃部32L及び32Rの回転軌跡34L及び34Rの前端34La及び34Raよりも後方に位置するが、この構成に限定されず、少なくともケーシング31の前端よりも後方に位置すればよい。例えば、ゲージ部材19に相当する部分が車輪状部材で形成される場合、車輪状部材と天面刈取り部(刈刃)とが当接することを避けるため、車輪状部材は天面刈取り部(刈刃)から離れて配置する必要がある。その結果、草刈り作業機の全長が長くなる。また、ゲージ部材19に相当する部分が車輪状部材で形成される場合、段差を乗り越えやすくするために、車輪状部材の直径が大きくなる。その結果、草刈り作業機の全長が長くなる。一方、橇192は丸棒状や丸パイプ状の部材であり、橇192のうち地面200に近い側に湾曲部192aを備えることによって、前後方向においてゲージ部材19と刃部32L及び32Rとの距離を近づけることができる。その結果、草刈り機100の全長が長くなるのを抑制することができる。
【0073】
[草刈り機100の走行中又は作業中の動作の例]
図4を用いて、草刈り機100の走行中又は作業中に段差があった場合の昇降部材15の昇降(上下回動)動作について説明する。図4は、地面200に段差があった場合の草刈り機100のゲージ部190が段差を上がり、天面刈取り部30が段差に位置する状態を示す左側の側面図である。なお、草刈り機100のゲージ部190が段差を上がり、天面刈取り部30が段差に位置する状態を示す右側は左側と同様であるため、ここでは、左側に注目して説明する。
【0074】
上述の通り、ばね90Lの一端は本体フレーム側ばね取付部91Lに固定され、ばね90Lの他端は昇降部材側ばね取付部92Lに固定されている。また、図4に示されるとおり、左側の側面視において、ばね90Lは、昇降部材側ばね取付部92L及び本体フレーム側ばね取付部91Lとの間に懸架される。上述したように、ばね90Lは引っ張りばねで構成されており、ばね90Lにより、昇降部材側ばね取付部92Lは、本体フレーム側ばね取付部91の方向に引っ張られるような力が作用している。つまり、ばね90Lは昇降部材側ばね取付部92Lが立設された昇降部材15(天面刈取り部30、オルタネータ70、及びエンジン60などの駆動系が取付けられた昇降部材15)の、回動軸部材95Lを回動軸とした上方への回動を補助するように、昇降部材側ばね取付部92L及び本体フレーム側ばね取付部91Lとの間に懸架されている。なお、昇降部材15には、天面刈取り部30、オルタネータ70、及びエンジン60などの昇降部材15に搭載されたもの及び昇降部材15自身の重量に起因する力、すなわち、ばね90Lの力に抗する力が作用しており、ゲージ部材19が地面200に接する構成となっている。
【0075】
ゲージ部190が、地面200の段差を上り始めると、ゲージ部190は、地面200からの力を受けて、段差の上りに追従して上方に動き、昇降部材15も、ゲージ部190の動きにあわせて、回動軸部材95Lを回動軸として、図4に示される湾曲した黒矢印の方向(時計回り)に回動する。なお、ばね90Lは、引っ張りばねであり、昇降部材側ばね取付部92Lを、図4に示される直線の黒矢印の方向に引っ張る(移動させる)ように力を作用させている。すなわち、ばね90Lは、昇降部材15を、図4に示される湾曲した黒矢印の方向(時計回り)に回動するように力を作用させており、ばね90Lは、ゲージ部190の上方への動き(回動)を補助している。なお、ゲージ部190が、地面200の下りの段差を越えた後も、前述と同様の動きとなる。
【0076】
ゲージ部190が段差を上りきり、走行部20Lが段差を上り始めると、天面刈取り部30、オルタネータ70、エンジン60及び昇降部材15自身などの重量により、ばね90Lは、図4に示される直線の黒矢印と反対の方向に伸び、昇降部材15は、ばね90Lの力に反して、回動軸部材95Lを回動軸として、図4に示される湾曲した黒矢印の方向と反対の方向(反時計回り)に回動し、下方回動制限部材18(本体フレーム14)に向かって動く。その結果、ゲージ部190が地面200に追従する。なお、ゲージ部190が下りの段差を下り始めた場合や、段差の進行方向の長さが短く、ゲージ部190が段差を上りきり、走行部20Lが段差を上り始める前に、ゲージ部190が段差を下り始めた場合も、前述と同様の動きとなる。
【0077】
なお、草刈り機100では、ゲージ部190が一つ設けられる例が示されるが、本実施形態の構成から逸脱すること無くゲージ部190を配置可能である場合には、ゲージ部材の数は2つ以上で設ける構成としてもよい。
【0078】
特許文献1に記載の自走式の草刈り機は、モータ及び圧縮ばねを用いて、昇降アームに接続された草刈機を含むハウジングを昇降可能に構成されている。すなわち、自走式の草刈り機は、草刈機を含むハウジングを昇降するための駆動はモータが用いられ、モータ自体は昇降可能に構成されていない。一方、草刈り機100は、ゲージ部190を含み、草刈り機100が段差を走行すると、草刈り機100は、引っ張りばねであるばね90L及び90Rを用いて、天面刈取り部30、オルタネータ70、及びエンジン60などの駆動系が取付けられた昇降部材15を、回動軸部材95Lを回動軸として回動させることによって、天面刈取り部30、オルタネータ70、及びエンジン60などの駆動系ごと上下に動かすことができる。このため、本発明の一実施形態に係る草刈り機100では、駆動系に対する配線、動力伝達の構成や昇降の構成(機構)を簡易な構成で実現可能であり、さらに、当該簡易な構成で、ゲージ部190を段差に追従させることができるとともに、天面刈取り部30を、段差に追従させて、移動させることができる。よって、草刈り機100は、段差がある畦の上であっても、草刈り部を段差に追従させて、安定した草刈り作業が可能である。
【0079】
以上、本発明の草刈り機100について、図面を参照しながら説明したが、本発明は前述の各実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、前述した各実施形態に係る構成は、相互に矛盾がない限り適宜組み合わせが可能であり、各実施形態に共通する技術事項は、明示の記載がなくても各構成に含まれる。
【0080】
前述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0081】
10:機体、11L:天面刈取り部取付部、11R:天面刈取り部取付部、12L:法面刈取り部取付部、12R:法面刈取り部取付部、14:本体フレーム、15:昇降部材、16:制御部、17L:後方左の端部、17R:後方右の端部、18:下方回動制限部材、19:ゲージ部材、20L:走行部、20R:走行部、21L:クローラベルト、21R:クローラベルト、22L:駆動輪、22R:駆動輪、23L:従動輪、23R:従動輪、24L:クローラフレーム、24R:クローラフレーム、25L:リンク取付部材、25La:第1取付部、25Lb:第2取付部、30:天面刈取り部、31:ケーシング、31a:上面部、31b:取付座、32:刃部、32L:刃部、32R:刃部、33L:駆動部、33R:駆動部、34L:回転軌跡、34La:前端、34R:回転軌跡、34Ra:前端、40:バッテリ、50L:リンク機構、50R:リンク機構、51L:第1リンクアーム、52L:第2リンクアーム、53L:電動シリンダ、54L:駆動部、55L:移動補助機構、55La:ロッド、56L:プレートリンク、57L:第1固定部材、57R:第1固定部材、58L:第2固定部材、58R:第2固定部材、59L:支持ブラケット、60:エンジン、61L:支持ブラケット、70:オルタネータ、80:法面刈取り部、80L:左側法面刈取り部、80R:右側法面刈取り部、81L:ケーシング、81R:ケーシング、82L:刃部、82R:刃部、83L:駆動部、83R:駆動部、89L:法面刈取り部支持部、89R:法面刈取り部支持部、90L:ばね、90R:ばね、91L:本体フレーム側ばね取付部、91R:本体フレーム側ばね取付部、92L:昇降部材側ばね取付部、92R:昇降部材側ばね取付部、93L:支持部、93R:支持部、95L:回動軸部材、95R:回動軸部材、100:草刈り機、110:中心線、111:水平面、120:刈取り部、130:角度調整機構、130L:角度調整機構、130R:角度調整機構、140L:取っ手、140R:取っ手、190:ゲージ部、191:ゲージ部材取付部、192:橇、192a:湾曲部、192c:後端、193:内部ケース、193a:挿入孔、194:ゲージ部材ブラケット、195:橇取付ピン、196:橇取付ピン挿入孔、197:軸受、198:取付部、199:アーム部、200:地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6