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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165337
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】内装材
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20241121BHJP
   B60Q 3/217 20170101ALI20241121BHJP
   B60Q 3/64 20170101ALI20241121BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B60Q3/217
B60Q3/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081453
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片桐 彰伸
【テーマコード(参考)】
3D023
3K040
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB08
3D023BC01
3D023BD03
3D023BE03
3D023BE06
3D023BE19
3D023BE21
3K040AA02
3K040CA05
3K040GA04
3K040GA05
3K040GB08
3K040GC02
3K040GC14
3K040HB04
(57)【要約】
【課題】基材内部の光を貫通孔に向けて出射させる構成を実現すると共に、基材と表皮材との間に隙間が生じる事態を抑制することが可能な内装材を提供する。
【解決手段】光透過性を有する板状の基材30と、基材30における車室内側の面30Aに貼り付けられると共に貫通孔40Aを有する表皮材40と、を備え、車室内側の面30Aにおいて貫通孔40Aと対向する箇所には、凹部31が形成され、凹部31には、光透過性を有すると共に基材30内部の光を貫通孔40Aに向けて出射させる光出射部材32が充填されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する板状の基材と、
前記基材における一方の面に貼り付けられると共に貫通孔を有する表皮材と、を備え、
前記一方の面において前記貫通孔と対向する箇所には、凹部が形成され、
前記凹部には、光透過性を有すると共に前記基材内部の光を前記貫通孔に向けて出射させる光出射部材が充填されている、内装材。
【請求項2】
前記光出射部材は、前記貫通孔よりも外形が大きい、請求項1に記載の内装材。
【請求項3】
前記表皮材は、
前記表皮材の意匠面を構成する表層と、
前記表層と前記基材の間に配される軟質層と、を備える、請求項1又は請求項2に記載の内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される技術は、内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内装材として、下記特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1に記載された内装材は、貫通孔(通光部)を有する表皮材と、表皮材を支持する基材(導光部)と、を備え、光源から出射された光が基材の内部に進入し、基材内部の光が貫通孔を通じて内装材の外部に出射される構成となっている。これにより、貫通孔を発光させることで光による装飾を行うことができる。また、基材内部の光を貫通孔に向けて出射させるための構成として、基材の表面に梨地等の凹凸を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-107918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成において、表皮材との接触面である基材の表面に凹凸を形成すると、表皮材と基材との間に隙間が生じ、基材に対する表皮材の貼り付けが不十分になる虞がある。
【0005】
本明細書で開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、基材内部の光を貫通孔に向けて出射させる構成を実現すると共に、基材と表皮材との間に隙間が生じる事態を抑制することが可能な内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、本明細書で開示される内装材は、光透過性を有する板状の基材と、前記基材における一方の面に貼り付けられると共に貫通孔を有する表皮材と、を備え、前記一方の面において前記貫通孔と対向する箇所には、凹部が形成され、前記凹部には、光透過性を有すると共に前記基材内部の光を前記貫通孔に向けて出射させる光出射部材が充填されていることを特徴とする。
【0007】
上記構成において、光源からの出射光や自然光が基材内部に進入した場合、その光は、光出射部材を通じて貫通孔に出射され、貫通孔を通じて外部に出射される。これにより貫通孔に対応する箇所が光ることで、意匠性をより高くすることができる。仮に基材の一方の面に凹部を設けずに光出射部材を形成した場合、光出射部材の分だけ、表皮材との接触面が盛り上がってしまい、基材と表皮材の間に隙間が生じる虞がある。上記構成によれば、光出射部材は凹部に充填されているため、表皮材との接触面の平滑性をより高くすることができる。このため、基材と表皮材との間に隙間が生じる事態を抑制でき、基材に対して表皮材をより確実に貼り付けることができる。
【0008】
ところで、内装材の仕様によっては、発光機能を有していないものが想定される。この場合、基材に対して、貫通孔を有していない表皮材を貼り付けることになる。基材と表皮材との間に隙間が生じると、内装材の温度が上昇した際に、隙間にある空気が膨張する事態が懸念される。表皮材が貫通孔を有していれば、貫通孔を通じて膨張した空気が排出されるが、貫通孔を有していない表皮材では、隙間にある空気が膨張する結果、表皮材の表面が部分的に膨張し、意匠性が低下する。上記構成の基材であれば、基材と表皮材の間に隙間が生じる事態を抑制できるため、このような事態を抑制できる。つまり、上記構成の基材は、異なる仕様に対応した2種類の表皮材(貫通孔を有する表皮材及び有していない表皮材)の双方に対して好適に用いることができる。言い換えると、2種類の内装材を1種類の基材で兼用することができ、部品管理を行いやすくなる。
【0009】
また、前記光出射部材は、前記貫通孔よりも外形が大きいものとすることができる。このような構成とすれば、基材に対する表皮材の貼り付け位置が所定の位置からずれた場合であっても、貫通孔を覆う形で光出射部材を配置することができ、基材内部の光を貫通孔に向けて確実に出射させることができる。
【0010】
また、前記表皮材は、前記表皮材の意匠面を構成する表層と、前記表層と前記基材の間に配される軟質層と、を備えるものとすることができる。軟質層を備えることで、表皮材の触感を向上させることができる。しかしながら、軟質層が基材と接触することになるため、基材表面に凹凸がある場合には、軟質層が凹凸に応じて変形し、基材と表皮材との間に隙間がより生じやすくなる。この点、上記構成によれば、基材と表皮材との間に隙間が生じる事態を抑制できるため好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基材内部の光を貫通孔に向けて出射させる構成を実現すると共に、基材と表皮材との間に隙間が生じる事態を抑制することが可能な内装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るオーナメントを備えるドアトリムを示す正面図
図2】オーナメントの一部を切断して視た断面図(図1のII-II線で切断した図に対応)
図3】貫通孔を有していない表皮材を基材に貼り付けてなるオーナメントを切断して視た断面図
図4】比較例に係るオーナメントを切断して視た断面図
図5】貫通孔を有していない表皮材を比較例に係る基材に貼り付けてなるオーナメントを切断して視た断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を図1から図5によって説明する。本実施形態では、内装材として、車両用のドアトリムを構成するオーナメントを例示する。ドアトリム10は、車両のドアパネル(図示せず)を車室内側から覆う構成とされ、図1に示すように、アッパーボード11と、ロアボード12と、アッパーボード11とロアボード12の間に配されるオーナメント20と、ロアボード12に取り付けられたスピーカグリル13と、を備える。アッパーボード11及びロアボード12は、例えば、天然繊維及び合成樹脂材料によって構成されている。
【0014】
オーナメント20は、加飾部材であり、例えば、車両前後方向を長辺とする長板状をなしている。オーナメント20は、図2に示すように、光透過性を有する板状の基材30と、基材30における車室内側の面30A(一方の面)に貼り付けられる表皮材40と、を備える。
【0015】
基材30は、光透過性の高い合成樹脂材料(例えばアクリルやポリカーボネート等)によって構成されている。また、基材30の端面30Bと対向する形で光源50が配されている。光源50は、例えばLEDによって構成されており、基材30の端面30Bに向けて光を出射することが可能な構成となっている。
【0016】
表皮材40は、表皮材40の意匠面を構成する表層41と、表層41と基材30の間に配される軟質層42と、を備える。表層41及び軟質層42は、それぞれ遮光性を有している。軟質層42は、例えば、ポリウレタンなどの軟質の合成樹脂によって構成されている。また、表層41は、例えば、人工皮革、合成皮革等によって構成されている。なお、軟質層42及び表層41の各材質は、上述したものに限定されず、適宜変更可能である。
【0017】
表皮材40は、複数の貫通孔40Aを有する。貫通孔40Aは、表層41及び軟質層42の双方を貫通する形で形成されている。また、図1に示すように、複数の貫通孔40Aは、車両前後方向(図1の左右方向)及び上下方向に沿って配列されている。
【0018】
図2に示すように、基材30における車室内側の面30Aにおいて貫通孔40Aと対向する箇所には、凹部31が形成されている。凹部31には、光透過性を有すると共に、基材30内部の光を貫通孔40Aに向けて出射させる光出射部材32が充填されている。光出射部材32における車室内側の面32Aは、基材30における車室内側の面30Aと面一となっている。
【0019】
光出射部材32は、例えば、光反射性の高い金属粒が含有された塗料を凹部31に充填し、この塗料を乾燥させることで形成することができる。これにより、基材30内部の光のうち、光出射部材32に入射した光は、光出射部材32に含まれる金属粒によって拡散されることで、その一部が貫通孔40Aに向かう構成になっている。なお、光出射部材32の厚さは、基材30内部の光を貫通孔40A側に透過させるために、ある程度小さいことが好ましく、例えば、基材30の厚さの半分以下であることが好ましいが、これに限定されない。なお、光出射部材32の具体的な厚さとしては、例えば、100~200μmで設定されるが、この値に限定されない。
【0020】
また、貫通孔40Aは、図1に示すように、例えば、円形状をなし、ドアトリム10の正面視において、凹部31及び光出射部材32は、貫通孔40Aよりも直径が大きい円形状をなしている。つまり、光出射部材32は、貫通孔40Aよりも外形が大きいものとされる。なお、貫通孔40A及び光出射部材32の形状は、円形状に限定されず、適宜変更可能である。
【0021】
次に本実施形態の効果について説明する。本実施形態において、光源50からの出射光や自然光が基材30内部に進入した場合、その光は、光出射部材32を通じて貫通孔40Aに出射され、貫通孔40Aを通じて外部に出射される。これにより貫通孔40Aに対応する箇所が光ることで、意匠性をより高くすることができる。仮に基材30における車室内側の面30Aに凹部31を設けずに光出射部材32を形成した場合、光出射部材32の分だけ、表皮材40との接触面が盛り上がってしまい、基材30と表皮材40の間に隙間が生じる虞がある。
【0022】
また、比較例に係るオーナメント220(図4参照)に示すように、表皮材40との接触面である基材230の表面に梨地等の凹凸232を形成して、基材230内部の光を貫通孔40Aに向けて出射させる構成とした場合、表皮材40が凹凸232の形状に倣って変形する結果、表皮材40と基材230との間に隙間が生じる虞がある。上記構成によれば、光出射部材32は凹部31に充填されているため、表皮材40との接触面の平滑性をより高くすることができる。このため、基材30と表皮材40との間に隙間が生じる事態を抑制でき、基材30に対して表皮材40をより確実に貼り付けることができる。
【0023】
ところで、オーナメントの仕様によっては、発光機能を有していないものが想定される。この場合、図3に示すように、基材30に対して、貫通孔40Aを有していない表皮材140を貼り付けることになる。基材30と表皮材140との間に隙間が生じると、オーナメント120の温度が上昇した際に、隙間にある空気が膨張する事態が懸念される。表皮材が貫通孔40Aを有していれば、貫通孔40Aを通じて膨張した空気が排出されるが、貫通孔40Aを有していない表皮材140では、隙間にある空気が膨張する結果、表皮材140の表面が部分的に膨張し、意匠性が低下する。上記構成の基材30であれば、基材30と表皮材140の間に隙間が生じる事態を抑制できるため、このような事態を抑制できる。つまり、上記構成の基材30は、異なる仕様に対応した2種類の表皮材(貫通孔40Aを有する表皮材40及び有していない表皮材140)の双方に対して好適に用いることができる。言い換えると、2種類のオーナメント20,120を1種類の基材30で兼用することができ、部品管理を行いやすくなる。
【0024】
また、本実施形態では、光出射部材32は、貫通孔40Aよりも外形が大きいものとされる。このような構成とすれば、基材30に対する表皮材40の貼り付け位置が所定の位置からずれた場合であっても、貫通孔40Aを覆う形で光出射部材32を配置することができ、基材30内部の光を貫通孔40Aに向けて確実に出射させることができる。
【0025】
また、表皮材40は、表皮材40の意匠面を構成する表層41と、表層41と基材30の間に配される軟質層42と、を備える。軟質層42を備えることで、表皮材40の触感を向上させることができる。しかしながら、軟質層42が基材30と接触することになるため、比較例に係るオーナメント320(図5参照)に示すように、基材230表面に凹凸232がある場合には、軟質層42が凹凸232の形状に応じて変形し、基材230と表皮材140との間に隙間234がより生じやすくなる。この点、上記構成によれば、基材30と表皮材40との間に隙間が生じる事態を抑制できるため好適である。
【0026】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、内装材を車両用のオーナメントに適用したものを例示したが、これに限定されず、例えば、ピラーガーニッシュ、ダッシュボード、インストルメントパネルなどの車両用内装材に適用することができる。また、鉄道、飛行機、船舶等の乗物用内装材や、乗物用以外の内装材に適用することができる。
(2)上記実施形態では、凹部31に光拡散性の高い金属粒が含有された塗料を充填することで、光出射部材32を形成するものを例示したが、この塗料が着色されたものであってもよい。また、光出射部材として、塗料以外(例えば光拡散性の高い透明フィルム等)を用いてもよい。
(3)上記実施形態では、表皮材が表層41及び軟質層42からなるものを例示したが、これに限定されず、例えば、表皮材が表層41のみを備えていてもよい。
(4)上記実施形態では、1つの貫通孔40Aを1つの凹部31が覆うものを例示したが、これに限定されない。例えば、2つ以上の貫通孔40Aを1つの凹部で覆う構成としてもよい。
(5)上記実施形態では、光出射部材32として、光拡散性の高い金属粒が含まれるものを例示したが、これに限定されない。金属粒以外の光拡散粒子(例えば二酸化ケイ素、炭酸カルシウムなど)が光出射部材32に含まれていてもよい。また、光出射部材32が、基材30内部の光を蓄光する蓄光塗料によって構成されていてもよい。なお、光出射部材32が、蓄光塗料によって構成されている場合、光出射部材32の厚さは、例えば、800μm程度で設定することが好ましいが、この値に限定されない。
【符号の説明】
【0027】
20…オーナメント、30…基材、30A…基材における車室内側の面(一方の面)、31…凹部、32…光出射部材、40…表皮材、40A…貫通孔、41…表層、42…軟質層
図1
図2
図3
図4
図5