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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165339
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】音響減衰装置および音響減衰方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20241121BHJP
   G10K 11/172 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G10K11/16 100
G10K11/172
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081455
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大和 禎
(72)【発明者】
【氏名】植田 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 綱二
(72)【発明者】
【氏名】西野 宏
(72)【発明者】
【氏名】大平 丈夫
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061CC04
5D061EE18
(57)【要約】
【課題】ガスから伝達される振動を減衰する音響減衰装置において、ガスが流通する筒体を加工する工数を低減するとともにガスのエネルギー損失を抑制する。
【解決手段】軸線Xに沿って延びるように筒状に形成されるとともにガスGが流通する内部空間S1を形成する筒体200の外周面201を取り囲むように配置されるとともに外周面201との間に筒体200の内部空間S1と連通しない減衰空間S3を形成するライナ部10と、減衰空間S3に露出する筒体200の外周面201を所定周波数で振動させることにより、筒体200の内部空間S1を流通するガスGが発生させる振動のうち所定周波数の成分を減衰空間S3に伝播させる加振部20と、を備え、減衰空間S3は、外周面201を介して減衰空間S3に伝播される所定周波数の振動を減衰させる音響減衰装置100を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿って延びるように筒状に形成されるとともにガスが流通する内部空間を形成する筒体の外周面を取り囲むように配置されるとともに前記外周面との間に前記内部空間と連通しない減衰空間を形成するライナ部と、
前記減衰空間に露出する前記筒体の前記外周面を所定周波数で振動させることにより、前記筒体の前記内部空間を流通するガスが発生させる振動のうち前記所定周波数の成分を前記減衰空間に伝播させる加振部と、を備え、
前記減衰空間は、前記外周面を介して前記減衰空間に伝播される前記所定周波数の振動を減衰させる音響減衰装置。
【請求項2】
前記ライナ部は、前記外周面から所定距離を空けて配置されるとともに前記軸線に沿って延びるように筒状に形成される本体部を有し、
前記所定距離は、前記外周面を介して前記減衰空間に伝播される前記所定周波数の振動を減衰させるように設定されている請求項1に記載の音響減衰装置。
【請求項3】
前記所定距離は、前記所定周波数の振動の波長をλとした場合にλ/4に設定される請求項2に記載の音響減衰装置。
【請求項4】
前記加振部は、前記減衰空間に露出する前記筒体の前記外周面に取り付けられる複数の振動素子であり、
複数の前記振動素子は、前記所定周波数の振動の波長の1/2の間隔を空けて配置されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の音響減衰装置。
【請求項5】
前記振動素子は、圧電素子であり、
前記加振部は、複数の前記圧電素子に電圧を印加する電圧印加部を有する請求項4に記載の音響減衰装置。
【請求項6】
前記振動素子は、圧電素子であり、
前記加振部は、複数の前記圧電素子と並列に接続されるLC回路を有し、
前記LC回路の共振周波数は前記所定周波数である請求項4に記載の音響減衰装置。
【請求項7】
筒体の内部空間を流通するガスから伝達される振動を音響減衰装置により減衰する音響減衰方法であって、
前記音響減衰装置は、前記筒体の外周面を取り囲むように配置されるとともに前記外周面との間に前記内部空間と連通しない減衰空間を形成するライナ部を有し、
前記減衰空間に露出する前記筒体の前記外周面を所定周波数で振動させることにより、前記筒体の前記内部空間を流通するガスが発生させる振動のうち前記所定周波数の成分を前記減衰空間に伝播させる加振工程を備え、
前記減衰空間は、前記外周面を介して前記減衰空間に伝播される前記所定周波数の振動を減衰させる音響減衰方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音響減衰装置および音響減衰方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状に形成される配管を流通するガスが発生させる振動を減衰させる音響ライナが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示される音響ライナは、燃焼ガスが流通する燃焼筒の外周面を取り囲むように音響ライナを配置して共鳴空間を形成し、燃焼筒の外周面に形成される複数の孔から共鳴空間に導いて特定の周波数近傍の音を共鳴空間において吸音するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-121961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、燃焼筒の内部空間を流通するガスを共鳴空間に導くために配管に複数の孔を形成する必要があり、複数の孔を形成するための加工を予め行う必要がある。また、特許文献1では、燃焼筒を流通するガスを複数の孔から共鳴空間に導く際に圧力損失が発生してガスのエネルギー損失となってしまう。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ガスから伝達される振動を減衰する音響減衰装置において、ガスが流通する筒体を加工する工数を低減するとともにガスのエネルギー損失を抑制することが可能な音響減衰装置および音響減衰方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る音響減衰装置は、軸線に沿って延びるように筒状に形成されるとともにガスが流通する内部空間を形成する筒体の外周面を取り囲むように配置されるとともに前記外周面との間に前記内部空間と連通しない減衰空間を形成するライナ部と、前記減衰空間に露出する前記筒体の前記外周面を所定周波数で振動させることにより、前記筒体の前記内部空間を流通するガスが発生させる振動のうち前記所定周波数の成分を前記減衰空間に伝播させる加振部と、を備え、前記減衰空間は、前記外周面を介して前記減衰空間に伝播される前記所定周波数の振動を減衰させる。
【0007】
本開示の一態様に係る音響減衰方法は、筒体の内部空間を流通するガスから伝達される振動を音響減衰装置により減衰する音響減衰方法であって、前記音響減衰装置は、前記筒体の外周面を取り囲むように配置されるとともに前記外周面との間に前記内部空間と連通しない減衰空間を形成するライナ部を有し、前記減衰空間に露出する前記筒体の前記外周面を所定周波数で振動させることにより、前記筒体の前記内部空間を流通するガスが発生させる振動のうち前記所定周波数の成分を前記減衰空間に伝播させる加振工程を備え、前記減衰空間は、前記外周面を介して前記減衰空間に伝播される前記所定周波数の振動を減衰させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ガスから伝達される振動を減衰する音響減衰装置において、ガスが流通する筒体を加工する工数を低減するとともにガスのエネルギー損失を抑制することが可能な音響減衰装置および音響減衰方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1実施形態に係る音響減衰装置を示す断面図である。
図2図1に示す音響減衰装置のA部分の部分拡大図である。
図3図1に示す音響減衰装置のB-B矢視断面図である。
図4図3に示す音響減衰装置のC部分の平面図である。
図5】軸線方向の位置に対する筒体の外周面の径方向の位置を示すグラフである。
図6】筒体の外周面から減衰空間に伝達されるガスの振動の周波数と音響減衰装置の吸音率との関係を示すグラフである。
図7】本開示の第2実施形態に係る音響減衰装置の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1実施形態〕
以下、本開示の一実施形態に係る音響減衰装置100について、図面を参照して説明する。図1は、本開示の一実施形態に係る音響減衰装置を示す断面図である。図2は、図1に示す音響減衰装置のA部分の部分拡大図である。図3は、図1に示す音響減衰装置100のB-B矢視断面図である。図4は、図3に示す音響減衰装置100のC部分の平面図である。
【0011】
本実施形態の音響減衰装置100は、筒体200の内部空間S1を流通するガスGから伝達される振動を減衰し、筒体200の外部空間S2に騒音が伝達されることを抑制する装置である。図1から図3に示すように、本実施形態の音響減衰装置100は、ライナ部10と、加振部20と、を備える。
【0012】
筒体200は、軸線Xに沿って延びるように筒状に形成されるとともにガスGが流通する内部空間S1を形成する部材である。図1から図3に示す筒体200は、直線状の軸線Xに沿って延びるように形成されるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、曲線状の軸線に沿って延びるように形成される筒体としてもよい。筒体200の内部空間S1を流通するガスGは、例えば、筒体200の連結される燃焼器(図示略)が生成した燃焼ガスである。また、例えば、ガスGは、空気である。
【0013】
ライナ部10は、筒体200の外周面201を取り囲むように配置される部材である。ライナ部10は、筒体200の外周面201との間に内部空間S1および外部空間S2と連通しない減衰空間S3を形成する。図3に示すように、減衰空間S3は、軸線X回りの全周に環状に形成される空間である。減衰空間S3には、後述する所定周波数f1の振動の減衰効果を高めるために、吸音材(例えば、グラスウール)を充填しても良い。
【0014】
なお、図3に示す減衰空間S3は軸線X回りの全周に環状に形成される空間としたが、他の態様であってもよい。例えば、減衰空間S3は、軸線X回りの一部の領域に形成される空間としてもよい。
【0015】
図2に示すように、ライナ部10は、本体部11と、一対の側面部12を有する。本体部11は、筒体200の外周面201から所定距離D1を空けて配置されるとともに軸線Xに沿って延びるように筒状に形成される部分である。筒体200の外周面201から本体部11の内周面11aまでの距離は、軸線Xに沿った各位置のそれぞれで所定距離D1となっている。
【0016】
一対の側面部12は、軸線Xに直交する径方向RDに沿って延びるように板状に形成される部材である。径方向RDにおいて、側面部12の筒体200側の端部は筒体200の外周面201に溶接等により接合されている。側面部12の本体部11側の端部は本体部11に連結されている。ライナ部10は、例えば、本体部11と側面部12とを1枚の板状の金属部材を折り曲げることにより形成する。
【0017】
加振部20は、減衰空間S3に露出する筒体200の外周面201を所定周波数f1で振動させる装置である。所定周波数は、筒体200の内部空間S1を流通するガスGが発生させる振動に含まれる周波数である。所定周波数f1は、筒体200の内部空間S1から外部空間S2に伝達されることが望ましくない周波数として予め設定された周波数である。
【0018】
加振部20は、筒体200の外周面201を所定周波数f1で加振することにより、筒体200の内部空間S1を流通するガスGが発生させる振動のうち所定周波数f1の成分を筒体200の外周面201を介して減衰空間S3に伝播させる。加振部20により所定周波数に加振される筒体200の外周面201には、内部空間S1を流通するガスGが発生させる振動が伝達される。
【0019】
図2に示すように、加振部20は、複数の圧電素子(振動素子)21と、電圧印加部22とを有する。複数の圧電素子21は、減衰空間S3に露出する筒体200の外周面201に取り付けられている。図2に示すように、複数の圧電素子21は、軸線Xに沿って一定の間隔W1を空けて位置X1,X2,X3,X4,X5の5カ所に配置されている。
【0020】
間隔W1は、所定周波数f1の振動の波長λの1/2に設定されている。音速をc(m/s)とした場合、間隔W1(m)は、以下の式(1)で算出される。
W1=c/2f1 (1)
【0021】
図3および図4に示すように、複数の圧電素子21は、軸線X回りの周方向CDに沿って位置P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8を含む複数の位置に配置されている。図3に示すように、位置P3と隣接する位置P4との間の周方向CDに沿った間隔は、軸線Xに沿った間隔と同じ間隔W1となっている。
【0022】
図2に示すように、電圧印加部22は、複数の圧電素子21のそれぞれに並列に電圧を印加して圧電素子21を所定周波数f1で振動させる装置である。電圧印加部22は、各圧電素子21の正極に連結される電源線22aと、各圧電素子21の負極に連結される電源線22bとの間に所定周波数f1で変動する電圧を発生させる。
【0023】
圧電素子21は、電圧印加部22から印加される電圧により、軸線Xに沿った方向に所定周波数で伸縮する。図5は、軸線X方向の位置に対する筒体200の外周面201の径方向RDの位置を示すグラフである。図5において、実線は複数の圧電素子21の全てが軸線X方向に最も伸長した状態の外周面201の位置を示し、点線は複数の圧電素子21の全てが軸線X方向に最も収縮した状態の外周面201の位置を示す。筒体200に振動が全く伝達されていない静止状態における外周面201の位置を0とする。
【0024】
図5に示すように、複数の圧電素子21の全てが軸線X方向に最も伸長した状態で、外周面201の位置は、位置X1と位置X2との中間位置、位置X2と位置X3との中間位置、位置X3と位置X4との中間位置、位置X4と位置X5との中間位置のそれぞれで最大の+VAとなる。一方、複数の圧電素子21の全てが軸線X方向に最も収縮した状態で、外周面201の位置は、位置X1と位置X2との中間位置、位置X2と位置X3との中間位置、位置X3と位置X4との中間位置、位置X4と位置X5との中間位置のそれぞれで最小の-VAとなる。
【0025】
外周面201の位置は、各圧電素子21に印加される電圧により、図5に実線で示す位置から点線へ示す位置へ変化し、更に点線で示す位置から実線で示す位置に変化する1周期の変動を、所定周波数f1で繰り返す。外周面201は、加振部20により加振されて所定周波数f1で振動する際に、内部空間S1から伝達された所定周波数f1の振動を減衰空間S3に伝播させる。
【0026】
外周面201から減衰空間S3に伝播されたガスの所定周波数f1の振動は、減衰空間S3で減衰される。図2に示す外周面201から本体部11の内周面11aまでの所定距離D1は、外周面201を介して減衰空間S3に伝播される所定周波数f1の振動を減衰させるように設定されている。所定距離D1は、所定周波数f1の振動の波長をλとした場合にλ/4に設定される。
【0027】
図6は、筒体200の外周面201から減衰空間S3に伝達されるガスの振動の周波数と音響減衰装置100の吸音率との関係を示すグラフである。吸音率は、外周面201から減衰空間S3に伝達される振動のエネルギーに対する、減衰空間S3から外部空間S2に伝達される振動のエネルギーの比をいう。
【0028】
図6に示すように、本実施形態の音響減衰装置100は、所定周波数f1の振動の吸音率αが最も高くい、所定周波数f1との差異が大きい周波数となるにしたがって吸音率が低くなる。所定周波数f1を、筒体200を流通するガスから発生する振動の周波数分布に応じて適切に設定することにより、所望の周波数の振動を適切に抑制することができる。
【0029】
以上で説明した本実施形態の音響減衰装置100が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の音響減衰装置100によれば、加振部20は、減衰空間S3に露出する筒体200の外周面201を所定周波数f1で振動させることにより、筒体200の内部空間S1を流通するガスGが発生させる振動のうち所定周波数f1の成分を減衰空間S3に伝播させる。減衰空間S3は、外周面201を介して減衰空間S3に伝播される所定周波数f1の振動を減衰させる。筒体200の内部空間S1を流通するガスを減衰空間S3に導くために筒体200に複数の孔を形成する必要がないため、ガスGが流通する筒体200を加工する工数を低減することができる。また、内部空間S1から減衰空間S3にガスGを導く際の圧力損失が発生せずガスGのエネルギー損失を抑制することができる。
【0030】
本実施形態の音響減衰装置100によれば、ライナ部10の本体部11を外周面201から所定距離D1を空けて配置し、所定距離D1を減衰空間S3に伝播される所定周波数f1の振動を減衰させるように設定することにより、外周面201から減衰空間S3に伝播された所定周波数f1の振動を適切に減衰させることができる。
【0031】
本実施形態の音響減衰装置100によれば、所定距離D1を所定周波数f1の波長をλとした場合にλ/4に設定することにより、外周面201から減衰空間S3に伝播された所定周波数f1の振動を適切に減衰させることができる。
【0032】
本実施形態の音響減衰装置100によれば、複数の圧電素子21を、所定周波数f1の振動の波長の1/2の間隔W1を空けて減衰空間S3に露出する筒体200の外周面201に取り付けることにより、外周面201を所定周波数f1で適切に振動させることができる。
【0033】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態に係る音響減衰装置100について、図面を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。
【0034】
第1実施形態の音響減衰装置100の加振部20は、複数の圧電素子21に電圧を印加する電圧印加部22を有するものであった。それに対して、本実施形態の音響減衰装置100の加振部20Aは、複数の圧電素子21に並列に接続されるLC回路22Aを有する。
【0035】
図7は、本開示の第2実施形態に係る音響減衰装置100の部分拡大図である。図7に示すように、本実施形態の音響減衰装置100の加振部20Aは、キャパシタ22A1とインダクタ22A2とを有するLC回路22Aを備える。LC回路22Aは、電源線22aを介して各圧電素子21の正極に接続され、電源線22bを介して各圧電素子21の負極に接続される。複数の圧電素子21は、筒体200の内部空間S1から伝達されるガスGの振動を圧電素子21で電圧に変換してLC回路22Aを動作させる。
【0036】
また、LC回路22Aが動作すると、各圧電素子21の正極に連結される電源線22aと、各圧電素子21の負極に連結される電源線22bとの間に所定周波数f1で変動する電圧を発生させる。LC回路22Aは、共振周波数が所定周波数f1となるようにキャパシタ22A1の容量とインダクタ22A2の磁気エネルギー量が設定されている。共振周波数を所定周波数f1とすることにより、LC回路22Aから複数の圧電素子21のそれぞれに印加される電圧により筒体200の外周面201を所定周波数f1で振動させることができる。
【0037】
本実施形態の音響減衰装置100によれば、複数の圧電素子21と並列にLC回路22Aを接続することにより、筒体200の内部空間S1から伝達されるガスGの振動を圧電素子21で電圧に変換してLC回路22Aを動作させることができる。また、LC回路22Aの共振周波数を所定周波数f1とすることにより、LC回路22Aから圧電素子21に印加される電圧により筒体200の外周面201を所定周波数f1で振動させることができる。
【0038】
〔他の実施形態〕
以上の説明において、圧電素子21は、電圧印加部22から印加される電圧により、軸線Xに沿った方向に所定周波数で伸縮するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、圧電素子21は、電圧印加部22から印加される電圧により、径方向RDに所定周波数で伸縮するものとしてもよい。
【0039】
以上説明した各実施形態に記載の音響減衰装置および音響減衰方法は、例えば以下のように把握される。
【0040】
本開示の第1態様に係る音響減衰装置(100)は、軸線(X)に沿って延びるように筒状に形成されるとともにガスが流通する内部空間(S1)を形成する筒体(200)の外周面(201)を取り囲むように配置されるとともに前記外周面との間に前記筒体の内部空間と連通しない減衰空間(S3)を形成するライナ部(10)と、前記減衰空間に露出する前記筒体の前記外周面を所定周波数で振動させることにより、前記筒体の前記内部空間を流通するガスが発生させる振動のうち前記所定周波数の成分を前記減衰空間に伝播させる加振部(20)と、を備え、前記減衰空間は、前記外周面を介して前記減衰空間に伝播される前記所定周波数の振動を減衰させる。
【0041】
本開示の第1態様に係る音響減衰装置によれば、加振部は、減衰空間に露出する筒体の外周面を所定周波数で振動させることにより、筒体の内部空間を流通するガスが発生させる振動のうち所定周波数の成分を減衰空間に伝播させる。減衰空間は、外周面を介して減衰空間に伝播される所定周波数の振動を減衰させる。筒体の内部空間を流通するガスを減衰空間に導くために筒体に複数の孔を形成する必要がないため、ガスが流通する筒体を加工する工数を低減することができる。また、内部空間から減衰空間にガスを導く際の圧力損失が発生せずガスのエネルギー損失を抑制することができる。
【0042】
本開示の第2態様に係る音響減衰装置は、第1態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記ライナ部は、前記外周面から所定距離(D1)を空けて配置されるとともに前記軸線に沿って延びるように筒状に形成される本体部(201)を有し、前記所定距離は、前記外周面を介して前記減衰空間に伝播される前記所定周波数の振動を減衰させるように設定されている。
【0043】
本開示の第2態様に係る音響減衰装置によれば、ライナ部の本体部を外周面から所定距離を空けて配置し、所定距離を減衰空間に伝播される所定周波数の振動を減衰させるように設定することにより、外周面から減衰空間に伝播された所定周波数の振動を適切に減衰させることができる。
【0044】
本開示の第3態様に係る音響減衰装置は、第2態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記所定距離は、前記所定周波数の振動の波長をλとした場合にλ/4に設定される。
本開示の第3態様に係る音響減衰装置によれば、所定距離を所定周波数の波長をλとした場合にλ/4に設定することにより、外周面から減衰空間に伝播された所定周波数の振動を適切に減衰させることができる。
【0045】
本開示の第4態様に係る音響減衰装置は、第1態様から第3態様のいずれかにおいて、更に以下の構成を備える。すなわち、前記加振部は、前記減衰空間に露出する前記筒体の前記外周面に取り付けられる複数の振動素子であり、複数の前記振動素子は、前記所定周波数の振動の波長の1/2の間隔(W1)を空けて配置されている。
【0046】
本開示の第4態様に係る音響減衰装置によれば、複数の振動素子を、所定周波数の振動の波長の1/2の間隔を空けて減衰空間に露出する筒体の外周面に取り付けることにより、外周面を所定周波数で適切に振動させることができる。
【0047】
本開示の第5態様に係る音響減衰装置は、第4態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記振動素子は、圧電素子であり、前記加振部は、複数の前記圧電素子に電圧を印加する電圧印加部(22)を有する。
本開示の第5態様に係る音響減衰装置によれば、複数の圧電素子に電圧印加部から電圧を印加することにより、外周面を所定周波数で適切に振動させることができる。
【0048】
本開示の第6態様に係る音響減衰装置は、第4態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記振動素子は、圧電素子であり、前記加振部は、複数の前記圧電素子と並列に接続されるLC回路を有し、前記LC回路の共振周波数は前記所定周波数である。
【0049】
本開示の第6態様に係る音響減衰装置によれば、複数の圧電素子と並列にLC回路を接続することにより、筒体の内部空間から伝達されるガスの振動を圧電素子で電圧に変換してLC回路を動作させることができる。また、LC回路の共振周波数を所定周波数とすることにより、LC回路から圧電素子に印加される電圧により筒体の外周面を所定周波数で振動させることができる。
【0050】
本開示の第7態様に係る音響減衰方法は、筒体の内部空間を流通するガスから伝達される振動を音響減衰装置により減衰する音響減衰方法であって、前記音響減衰装置は、前記筒体の外周面を取り囲むように配置されるとともに前記外周面との間に前記筒体の内部空間と連通しない減衰空間を形成するライナ部を有し、前記減衰空間に露出する前記筒体の前記外周面を所定周波数で振動させることにより、前記筒体の前記内部空間を流通するガスが発生させる振動のうち前記所定周波数の成分を前記減衰空間に伝播させる加振工程を備え、前記減衰空間は、前記外周面を介して前記減衰空間に伝播される前記所定周波数の振動を減衰させる。
【0051】
本開示の第7態様に係る音響減衰方法によれば、加振工程は、減衰空間に露出する筒体の外周面を所定周波数で振動させることにより、筒体の内部空間を流通するガスが発生させる振動のうち所定周波数の成分を減衰空間に伝播させる。減衰空間は、外周面を介して減衰空間に伝播される所定周波数の振動を減衰させる。筒体の内部空間を流通するガスを減衰空間に導くために筒体に複数の孔を形成する必要がないため、ガスが流通する筒体を加工する工数を低減することができる。また、内部空間から減衰空間にガスを導く際の圧力損失が発生せずガスのエネルギー損失を抑制することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 ライナ部
11 本体部
11a 内周面
12 側面部
20,20A 加振部
21 圧電素子
22 電圧印加部
22A LC回路
22A1 キャパシタ
22A2 インダクタ
22a,22b 電源線
100 音響減衰装置
200 筒体
201 外周面
CD 周方向
D1 所定距離
G ガス
RD 径方向
S1 内部空間
S2 外部空間
S3 減衰空間
W1 間隔
X 軸線
f1 所定周波数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7