(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016534
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ウェビング巻取装置
(51)【国際特許分類】
B60R 22/46 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
B60R22/46 128
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118737
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土本 和輝
(72)【発明者】
【氏名】米野 史一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 望
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018MA02
(57)【要約】
【課題】作動部材の作動が開始された後に第2ウェビングの引張りを開始する。
【解決手段】ウェビング巻取装置10では、ピストン42が移動されて、ピニオン34が回転される。これにより、ウェビング20がスプール18に巻取られて、ショルダウェビング20Aによる乗員の拘束力が増加される。さらに、ピニオン34にワイヤ44が巻取られて、ラップウェビング20Bによる乗員の拘束力が増加される。ここで、ピニオン34の回転力によりワイヤ44の弛み部44Aが伸張される。このため、ピニオン34の回転が開始された後に、ワイヤ44によるラップウェビング20Bの引張りを開始できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員に装着される第1ウェビングが連絡され、巻取方向に回転されて第1ウェビングが巻取られるスプールと、
作動されることで前記スプールが巻取方向に回転される作動部材と、
乗員に装着される第2ウェビングと前記作動部材とを連絡し、前記作動部材が作動されることで第2ウェビングを引張ると共に、前記作動部材が作動を開始された後に第2ウェビングの引張りを開始する連絡部材と、
を備えるウェビング巻取装置。
【請求項2】
前記作動部材が作動されることで前記スプールが第1ウェビングの巻取りを開始した後に前記連絡部材が第2ウェビングの引張りを開始する請求項1記載のウェビング巻取装置。
【請求項3】
前記連絡部材に設けられると共に、移動が係止され、前記作動部材の作動力により移動係止が解除されて所定距離移動される移動部を備える請求項1記載のウェビング巻取装置。
【請求項4】
前記作動部材の作動による前記作動部材の前記連絡部材に対する所定距離の移動が許可される請求項1記載のウェビング巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動部材が作動されてスプールが巻取方向に回転されるウェビング巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のプリテンショナ装置では、スプールにショルダウェビングとラップウェビングとが連結されており、第1ラックと第2ラックとが移動されることで、スプールにショルダウェビングとラップウェビングとが巻取られる。
【0003】
ここで、このようなプリテンショナ装置では、スプールへのラップウェビングの巻取り開始を遅くできるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、作動部材の作動が開始された後に第2ウェビングの引張りを開始できるウェビング巻取装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のウェビング巻取装置は、乗員に装着される第1ウェビングが連絡され、巻取方向に回転されて第1ウェビングが巻取られるスプールと、作動されることで前記スプールが巻取方向に回転される作動部材と、乗員に装着される第2ウェビングと前記作動部材とを連絡し、前記作動部材が作動されることで第2ウェビングを引張ると共に、前記作動部材が作動を開始された後に第2ウェビングの引張りを開始する連絡部材と、を備える。
【0007】
本発明の第2態様のウェビング巻取装置は、本発明の第1態様のウェビング巻取装置において、前記作動部材が作動されることで前記スプールが第1ウェビングの巻取りを開始した後に前記連絡部材が第2ウェビングの引張りを開始する。
【0008】
本発明の第3態様のウェビング巻取装置は、本発明の第1態様又は第2態様のウェビング巻取装置において、前記連絡部材に設けられると共に、移動が係止され、前記作動部材の作動力により移動係止が解除されて所定距離移動される移動部を備える。
【0009】
本発明の第4態様のウェビング巻取装置は、本発明の第1態様~第3態様の何れか1つのウェビング巻取装置において、前記作動部材の作動による前記作動部材の前記連絡部材に対する所定距離の移動が許可される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1態様のウェビング巻取装置では、乗員に装着される第1ウェビングがスプールに連絡されており、作動部材が作動されることで、スプールが巻取方向に回転されて、第1ウェビングがスプールに巻取られる。さらに、乗員に装着される第2ウェビングと作動部材とを連絡部材が連絡しており、作動部材が作動されることで、連絡部材が第2ウェビングを引張る。
【0011】
ここで、作動部材が作動を開始された後に、連絡部材が第2ウェビングの引張りを開始する。このため、作動部材の作動が開始された後に、第2ウェビングの引張りを開始できる。
【0012】
本発明の第2態様のウェビング巻取装置では、作動部材が作動されることで、スプールが第1ウェビングの巻取りを開始した後に、連絡部材が第2ウェビングの引張りを開始する。このため、第1ウェビングの引張りが開始された後に、第2ウェビングの引張りを開始できる。
【0013】
本発明の第3態様のウェビング巻取装置では、連絡部材の移動部の移動が係止されており、作動部材の作動力により移動部の移動係止が解除されて、移動部が所定距離移動される。このため、連絡部材による第2ウェビングの引張り開始を簡単な構成で遅くできる。
【0014】
本発明の第4態様のウェビング巻取装置では、作動部材の作動による作動部材の連絡部材に対する所定距離の移動が許可される。このため、連絡部材による第2ウェビングの引張り開始を簡単な構成で遅くできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(A)及び(B)は、本発明の第1実施形態に係るウェビング巻取装置を示す図であり、(A)は、背面図であり、(B)は、側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るウェビング巻取装置が適用されたシートベルト装置を示す側面図である。
【
図3】(A)及び(B)は、本発明の第2実施形態に係るウェビング巻取装置を示す図であり、(A)は、背面図であり、(B)は、側面図である。(C)は、本発明の第2実施形態の変形例に係るウェビング巻取装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
図1(A)には、本発明の実施形態に係るウェビング巻取装置10が背面図にて示されており、
図1(B)には、ウェビング巻取装置10が側面図にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車幅方向外側(車両左方)を矢印OUTで示し、上方を矢印UPで示している。
【0017】
本実施形態に係るウェビング巻取装置10は、車両(自動車)のシートベルト装置12(
図2参照)を構成している。シートベルト装置12は、車室内のシート14に適用されており、ウェビング巻取装置10は、シート14後部の車幅方向外側かつ下側における車両のセンタピラーに設置されている。
【0018】
図1の(A)及び(B)に示す如く、ウェビング巻取装置10には、設置体としての金属製で断面U字形板状のフレーム16が設けられており、ウェビング巻取装置10は、フレーム16において、車両に設置されている。フレーム16の車幅方向内側には、背板16Aが設けられると共に、フレーム16の車両前側及び車両後側には、それぞれ側板16B及び側板16Cが設けられており、側板16B及び側板16Cは、背板16Aから車幅方向外側に延出されている。
【0019】
フレーム16内には、金属製で略円筒状のスプール18が設けられており、スプール18は、フレーム16の側板16Bと側板16Cとの間に回転可能に支持されている。スプール18には、長尺帯状のウェビング20が基端側(長手方向基端側)から巻取られており、スプール18が巻取方向(
図1(B)の矢印Aの方向)に回転されて、ウェビング20がスプール18に巻取られると共に、ウェビング20がスプール18から引出されて、スプール18が引出方向(
図1(B)の矢印Bの方向)に回転される。フレーム16には、付勢機構(図示省略)が設けられており、付勢機構は、スプール18を巻取方向に付勢して、ウェビング20にスプール18側への付勢力を作用させている。フレーム16には、ロック機構が設けられており、車両の緊急時(衝突時等)には、ロック機構が、スプール18の引出方向への回転をロックして、ウェビング20のスプール18からの引出しをロックする。
【0020】
シートベルト装置12(
図2参照)では、ウェビング20が、スプール18よりも先端側(長手方向先端側)において、金属製のスルーアンカ(図示省略)に移動可能に貫通されており、スルーアンカは、シート14後部の車幅方向外側かつ上側に設置されている。ウェビング20の先端部には、金属製で板状のアンカ22の先端部が連結されており、アンカ22は、シート14後部の車幅方向外側かつ下側に設置されている。ウェビング20は、スルーアンカとアンカ22との間において、金属製のタング24に移動可能に貫通されている。
【0021】
シート14後部の車幅方向内側かつ下側には、バックル26が設置されている。バックル26には、タング24が着脱可能にされており、バックル26にタング24が装着されて、シート14に着座した乗員28にウェビング20が装着される。ウェビング20のタング24より基端側は、第1ウェビングとしてのショルダウェビング20Aにされており、ショルダウェビング20Aは、スルーアンカとタング24との間の部分において、乗員28の肩部から腰部に斜め方向に掛渡される。ウェビング20のタング24より先端側は、第2ウェビングとしてのラップウェビング20Bにされており、ラップウェビング20Bは、乗員28の腰部に横方向に掛渡される。
【0022】
ウェビング巻取装置10には、フレーム16の車両前側において、プリテンショナ機構30が設けられている。
【0023】
プリテンショナ機構30には、支持体としての金属製で直方体形箱状のカバープレート32が設けられており、カバープレート32は、内部が車両後側に開放されると共に、フレーム16の側板16Bに固定されている。
【0024】
カバープレート32内には、作動部材(回転部材)としての金属製で略円柱状のピニオン34が設けられており、ピニオン34は、スプール18と同軸上に配置されると共に、車両後側部分にギヤ34Aが同軸上に形成されている。ピニオン34は、スプール18に回転可能に支持されており、ピニオン34の回転は、係止されている。ピニオン34の車両前側部分には、円柱状の巻取部34Bが同軸上に形成されており、巻取部34Bは、ピニオン34の巻取部34Bより車両前側及び車両後側の部分に対し縮径されると共に、径がスプール18のウェビング20巻取部分の径に比し小さくされている。
【0025】
スプール18とピニオン34との間には、切替部材としての金属製のクラッチ36が設けられており、クラッチ36は、スプール18とピニオン34とを連結せずに、スプール18のピニオン34に対する回転を許可している。
【0026】
ピニオン34の上側には、案内部材としての金属製で円筒状のシリンダ38が設けられており、シリンダ38の軸方向は、上下方向に平行にされている。シリンダ38は、カバープレート32の上壁を貫通しており、シリンダ38は、カバープレート32とフレーム16の側板16Bとの間に固定されている。シリンダ38の基端部(上端部)には、ガス供給機構としてのガスジェネレータ40(マイクロガスジェネレータ)が固定されており、車両の緊急時(衝突時等)には、ガスジェネレータ40がシリンダ38内に高圧のガスを瞬時に供給する。
【0027】
シリンダ38内には、移動部材としての金属製で柱状のピストン42が設けられており、ピストン42は、基端部(上端部)がシリンダ38内に嵌合されて、下側に移動可能にされている。ピストン42の基端部以外の部分は、ラック42Aにされており、ラック42Aがピニオン34のギヤ34Aに噛合されて、ピストン42の下側への移動が制限されている。
【0028】
ピニオン34の巻取部34Bには、連絡部材としての金属製のワイヤ44の基端部が結合されており、ワイヤ44は、巻取部34Bから下側に延出されて、カバープレート32の車幅方向内側壁(側壁)を貫通している。ワイヤ44の先端部は、アンカ22の基端部に結合されており、これにより、アンカ22が車両に設置されると共に、ワイヤ44がピニオン34とウェビング20の先端部とを連絡している。ワイヤ44の中間部には、移動部としての弛み部44A(余長部)が形成されており、弛み部44Aの両端部が係止部44Bによって係止されて、弛み部44Aの延伸(ピニオン34側端のピニオン34側への移動及び弛みの解除)が係止されている。
【0029】
ピニオン34の下側には、案内部としての金属製で略円柱状のプーリ46が設けられており、プーリ46は、カバープレート32の底壁(車両前側壁)とフレーム16の側板16Bとの間にボルト及びナット(図示省略)によって取付けられている。プーリ46は、ボルトが同軸上に貫通されて、ボルトを中心軸として回転可能にされており、プーリ46の軸方向(回転軸方向)は、ピニオン34の軸方向(回転軸方向)と平行にされている。プーリ46の軸方向中間部には、略円柱状の配置部46Aが同軸上に形成されており、配置部46Aは、ピニオン34の巻取部34Bの下方に配置されている。配置部46Aの下側には、ワイヤ44が巻掛けられており、ワイヤ44の配置部46Aによる曲がり部分の内角は、90°以上(本実施形態では90°より僅かに大きい角度)にされている。プーリ46の配置部46Aより車両前側及び車両後側には、制限部としての略円錐台状の傾斜部46Bが同軸上に形成されており、傾斜部46Bの径が配置部46Aから離間されるに従い徐々に大きくされて、ワイヤ44の配置部46Aから傾斜部46Bへの移動が傾斜部46Bによって制限されている。
【0030】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0031】
以上の構成のシートベルト装置12では、バックル26にタング24が装着されて、乗員28にウェビング20が装着される。このため、ウェビング20のショルダウェビング20Aが乗員28の肩部から腰部に斜め方向に掛渡されると共に、ウェビング20のラップウェビング20Bが乗員28の腰部に横方向に掛渡される。また、ウェビング巻取装置10の付勢機構がスプール18を巻取方向に付勢して、ウェビング20にスプール18側への付勢力が作用される。このため、ウェビング20の弛みが除去されると共に、アンカ22とピニオン34の巻取部34Bとの間でワイヤ44(弛み部44Aを除く)が伸張される。
【0032】
車両の緊急時には、ウェビング巻取装置10のロック機構がスプール18の引出方向への回転をロックして、ウェビング20のスプール18からの引出しがロックされる。このため、ウェビング20によって乗員28が拘束される。
【0033】
さらに、車両の緊急時には、ウェビング巻取装置10のプリテンショナ機構30において、ガスジェネレータ40がシリンダ38内に高圧のガスを瞬時に供給することで、当該ガスの圧力によりピストン42に下側への移動力が作用されて、ピストン42のラック42Aがピニオン34のギヤ34Aに巻取方向への回転力を作用させる。このため、ピニオン34の回転係止が解除されることで、ワイヤ44にピニオン34の巻取部34Bへの巻取力が作用されて、ワイヤ44における弛み部44A両端部の係止部44Bによる係止が解除される。さらに、ピストン42(ラック42A)が下側に移動されて、ピニオン34(ギヤ34A)が巻取方向に回転(作動)される。
【0034】
そして、ピニオン34が巻取方向に回転されることで、クラッチ36がスプール18とピニオン34とを連結して、スプール18がピニオン34及びクラッチ36と一体に巻取方向に回転される。このため、ウェビング20がスプール18に巻取られて、ショルダウェビング20Aによる乗員28の拘束力が増加される。
【0035】
しかも、ピニオン34が巻取方向に回転されることで、ワイヤ44が、ピニオン34の巻取部34Bにプーリ46(配置部46A)によって案内されつつ、巻取部34Bに巻取られる。このため、ワイヤ44の弛み部44Aが伸張された後に、ワイヤ44によってアンカ22を介してウェビング20の先端部が引張られて、ラップウェビング20Bによる乗員28の拘束力が増加される。
【0036】
このように、1つのプリテンショナ機構30によって、ショルダウェビング20Aによる乗員28の拘束力が増加されると共に、ラップウェビング20Bによる乗員28の拘束力が増加される。このため、ショルダウェビング20Aによる乗員28の拘束力を増加させる機構とラップウェビング20Bによる乗員28の拘束力を増加させる機構とが別々に設けられる場合に比し、部品点数及び重量が低減されている。
【0037】
ここで、プリテンショナ機構30では、ピニオン34の巻取方向への回転が開始された後に、ワイヤ44によるウェビング20先端部の引張りが開始される。このため、ラップウェビング20Bによる乗員28の拘束力が過剰に大きくなることを抑制できる。
【0038】
しかも、スプール18へのウェビング20の巻取り(スプール18の巻取方向への回転)が開始された後に、ワイヤ44によるウェビング20先端部の引張りが開始される。このため、ラップウェビング20Bによる乗員28の拘束力が過剰に大きくなることを適切に抑制できる。
【0039】
さらに、ワイヤ44では、弛み部44Aのピニオン34側端のピニオン34側への移動を係止部44Bが係止しており、ピニオン34の巻取方向への回転力により弛み部44Aのピニオン34側端の係止部44Bによるピニオン34側への移動係止が解除されて、弛み部44Aのピニオン34側端が所定距離ピニオン34側に移動される。このため、ワイヤ44によるウェビング20先端部の引張り開始を簡単な構成で遅くできる。しかも、スプール18の巻取方向への回転のための駆動装置とウェビング20先端部の引張りのための駆動装置とに別々に作動信号を送信する必要をなくすことができ、作動信号を送信するためのハーネスを削減できる。また、弛み部44Aの長手方向寸法を調整することで、ワイヤ44によるウェビング20先端部の引張り開始タイミングを容易に調整できる。
【0040】
なお、上記第1実施形態では、ピニオン34の上側にシリンダ38、ガスジェネレータ40及びピストン42が設けられる。しかしながら、ピニオン34の下側にシリンダ38、ガスジェネレータ40及びピストン42が設けられてもよい。
【0041】
また、上記第1実施形態では、ピニオン34に巻取部34Bが設けられる。しかしながら、クラッチ36(作動部材)に巻取部34Bが設けられてもよい。
【0042】
さらに、上記第1実施形態では、金属製のピストン42(ラック42A)がピニオン34のギヤ34Aを回転させる。しかしながら、ピストン42が樹脂製にされてもよく、この場合、ピストン42が移動されつつピストン42にピニオン34のギヤ34Aが食込んでピニオン34が回転されてもよい。さらに、ピストン42が複数の球体にされてもよく、この場合、複数の球体が移動されつつピニオン34のギヤ34Aの歯間に球体が侵入してピニオン34が回転されてもよい。
【0043】
また、上記第1実施形態では、プーリ46がボルト及びナットによって取付けられて、プーリ46にボルトが同軸上に貫通されることで、プーリ46がボルトを中心軸として回転可能にされる。しかしながら、プーリ46がリベットによって取付けられて、プーリ46にリベットが同軸上に貫通されることで、プーリ46がリベットを中心軸として回転可能にされてもよい。
【0044】
さらに、上記第1実施形態では、プーリ46の配置部46A両側に傾斜部46Bが設けられる。しかしながら、プーリ46の配置部46A両側に円柱状の円柱部(制限部)が設けられてもよく、この場合、円柱部の径が配置部46Aの径に比し大きくされる。
【0045】
また、上記第1実施形態では、プーリ46(案内部)がワイヤ44を案内する。しかしながら、案内部が回転不能にされてもよく、例えば、カバープレート32(例えば下壁)又はフレーム16の側板16Bに設けられる貫通孔(案内部)にワイヤ44が貫通されて、貫通孔の周面がワイヤ44を案内してもよい。この場合、案内部の長手方向がピニオン34(巻取部34B)の軸方向と平行にされてもよい。
【0046】
[第2実施形態]
図3(A)には、本発明の第2実施形態に係るウェビング巻取装置50が背面図にて示されており、
図3(B)には、ウェビング巻取装置50が側面図にて示されている。
【0047】
本実施形態に係るウェビング巻取装置50は、上記第1実施形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0048】
図3の(A)及び(B)に示す如く、本実施形態に係るウェビング巻取装置50のプリテンショナ機構30では、ピニオン34に巻取部34Bが設けられておらず、上記第1実施形態のワイヤ44が設けられていない。ピニオン34の下側には、シリンダ38が設けられており、シリンダ38は、カバープレート32の下壁を貫通している。シリンダ38の基端部(下端部)には、ガスジェネレータ40が固定されており、作動部材としてのピストン42は、基端部(下端部)がシリンダ38内に嵌合されて、上側に移動可能にされている。
【0049】
ピストン42(ラック42A)の先端部(上端部)には、連絡部材(連結部材)としての金属製で長尺矩形板状の連結リンク52が基端部(上端部)において回動(変位)可能に連結されており、連結リンク52の基端部は、上方に延出されている。連結リンク52の基端部には、許可部としての許可孔52Cが形成されており、許可孔52Cは、連結リンク52を車両前後方向(幅方向)に貫通すると共に、上下方向に延伸されている。連結リンク52の基端部は、ピストン42の先端部に被許可部としての金属製で略円柱状の第1軸52Aによって連結されており、第1軸52Aは、許可孔52Cに貫通されると共に、許可孔52Cの下端部に係止されて許可孔52Cに対する上方への移動を係止されている。
【0050】
連結リンク52の基端部以外の部分は、下側へ向かうに従い車幅方向内側へ向かう方向に延出されており、連結リンク52は、カバープレート32の車幅方向内側壁(側壁)を下側に移動可能に貫通している(連結リンク52がカバープレート32の下壁まで移動可能にされてもよい)。連結リンク52の先端部(下端部)には、ウェビング20の先端部が連結されており、本実施形態では、上記第1実施形態のアンカ22が設けられていない。
【0051】
連結リンク52の中間部(上下方向中間部)には、調整部材としての金属製で長尺矩形板状の調整リンク54が先端部(上端部)において回動(変位)可能に連結されており、調整リンク54の先端部は、連結リンク52の中間部を回動可能に貫通した状態で、連結リンク52の中間部に金属製で略円柱状の第2軸54Aによって連結されている。調整リンク54は、下側へ向かうに従い車幅方向外側へ向かう方向に延出されており、調整リンク54の基端部(下端部)は、金属製で略円柱状の第3軸54Bによって、カバープレート32の底壁(車両前側壁)に回動(変位)可能に連結されている。
【0052】
ところで、車両の緊急時には、ウェビング巻取装置50のプリテンショナ機構30において、ガスジェネレータ40がシリンダ38内に供給したガスの圧力により、ピストン42に上側への移動力が作用されることで、第1軸52Aの許可孔52C下端部への係止が解除されて、ピストン42(ラック42A)が上側に移動(作動)される。さらに、第1軸52Aが、ピストン42と一体に上側に移動されて、許可孔52Cの上端部に当接されることで、連結リンク52の基端部が上側に移動されて、調整リンク54が基端部を中心として車幅方向外側に回動されつつ、連結リンク52が基端部(第1軸52A)を中心として下側に回動される。このため、連結リンク52によってウェビング20の先端部が引張られて、ラップウェビング20Bによる乗員28の拘束力が増加される。
【0053】
ここで、本実施形態でも、上記第1実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0054】
特に、ピストン42の第1軸52Aが連結リンク52の許可孔52C下端部に係止されており、ピストン42の上側への移動力により第1軸52Aの許可孔52C下端部への係止が解除されることで、第1軸52Aの許可孔52C上端部への移動が許可されて、ピストン42の連結リンク52に対する所定距離の移動が許可される。このため、連結リンク52によるウェビング20先端部の引張り開始を簡単な構成で遅くできる。しかも、スプール18の巻取方向への回転のための駆動装置とウェビング20先端部の引張りのための駆動装置とに別々に作動信号を送信する必要をなくすことができ、作動信号を送信するためのハーネスを削減できる。また、許可孔52Cの上下方向寸法を調整することで、連結リンク52によるウェビング20先端部の引張り開始タイミングを容易に調整できる。
【0055】
なお、本実施形態では、連結リンク52の基端部に許可孔52Cが設けられると共に、ピストン42先端部の第1軸52Aが許可孔52Cの下端部に係止されて許可孔52Cに対する上方への移動を係止される。しかしながら、ピストン42の先端部に許可孔52Cが設けられると共に、連結リンク52基端部の第1軸52Aが許可孔52Cの上端部に係止されて許可孔52Cに対する下方への移動を係止されてもよい。この場合、ガスジェネレータ40がシリンダ38内に供給したガスの圧力により、ピストン42に上側への移動力が作用されることで、第1軸52Aの許可孔52C上端部への係止が解除されて、ピストン42(ラック42A)が上側に移動(作動)される。さらに、ピストン42が第1軸52Aと別に上側に移動されて、第1軸52Aが許可孔52Cの下端部に当接されることで、連結リンク52の基端部が上側に移動されて、調整リンク54が基端部を中心として車幅方向外側に回動されつつ、連結リンク52が基端部(第1軸52A)を中心として下側に回動される。
【0056】
(変形例)
図3(C)には、本発明の第2実施形態の変形例に係るウェビング巻取装置60が側面図にて示されている。
【0057】
図3(C)に示す如く、本変形例に係るウェビング巻取装置60のプリテンショナ機構30では、連絡部材を構成する解除部材としての連結リンク52の基端部が上方に延出されないと共に、連結リンク52の許可孔52Cが上下方向に延伸されておらず、ピストン42の第1軸52Aは、許可孔52Cに対する上方への移動を許可されない。
【0058】
連結リンク52の先端部には、連絡部材を構成する結合部材としてのアンカ22が基端部において回動(変位)可能に連結されており、アンカ22の先端部には、ウェビング20の先端部が連結されている。連結リンク52の先端部には、解除部としての解除孔52Dが形成されており、解除孔52Dは、連結リンク52を車両前後方向(幅方向)に貫通すると共に、連結リンク52の長手方向に延伸されている。アンカ22の基端部は、連結リンク52の先端部を回動可能にかつ連結リンク52長手方向へ移動可能に貫通した状態で、連結リンク52の先端部に移動部としての金属製で略円柱状の第4軸52Bによって連結されており、第4軸52Bは、解除孔52Dに貫通されると共に、解除孔52Dの下端部に係止されて解除孔52Dに対する上側への移動を係止されている。
【0059】
ところで、車両の緊急時には、ウェビング巻取装置60のプリテンショナ機構30において、ガスジェネレータ40がシリンダ38内に供給したガスの圧力により、ピストン42に上側への移動力が作用されることで、調整リンク54に基端部を中心とする車幅方向外側への回動力が作用されつつ、連結リンク52に基端部を中心とする下側への回動力が作用される。このため、第4軸52Bの解除孔52D下端部への係止が解除されることで、ピストン42(ラック42A)が上側に移動(作動)されて、調整リンク54が基端部を中心として車幅方向外側に回動されつつ、連結リンク52が基端部を中心として下側に回動される。さらに、第4軸52Bが、解除孔52Dに対し上側に移動されて、解除孔52Dの上端部に当接されることで、第4軸52Bが下側に移動されて、アンカ22が第4軸52Bと一体に下側に移動される。このため、アンカ22によってウェビング20の先端部が引張られて、ラップウェビング20Bによる乗員28の拘束力が増加される。
【0060】
ここで、本変形例でも、上記第1実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0061】
特に、連結リンク52では、アンカ22の第4軸52Bの解除孔52D下端部から上側(ウェビング20先端部側)への移動を係止しており、連結リンク52の下側への回動力により第4軸52Bの解除孔52D下端部から上側への移動係止が解除されて、第4軸52Bが解除孔52Dの上端部まで所定距離移動される。このため、アンカ22によるウェビング20先端部の引張り開始を簡単な構成で遅くできる。しかも、スプール18の巻取方向への回転のための駆動装置とウェビング20先端部の引張りのための駆動装置とに別々に作動信号を送信する必要をなくすことができ、作動信号を送信するためのハーネスを削減できる。また、解除孔52Dの連結リンク52長手方向寸法を調整することで、アンカ22によるウェビング20先端部の引張り開始タイミングを容易に調整できる。
【0062】
なお、上記第2実施形態(変形例を含む)において、調整リンク54が設けられなくてもよい。この場合、例えば、連結リンク52が中間部において第2軸54Aによってカバープレート32の底壁に回動可能に連結され、かつ、連結リンク52の基端側が車幅方向外側に延長されると共に、第1軸52Aが連結リンク52に対し車幅方向外側に相対変位可能にされる。
【0063】
さらに、上記第1実施形態及び第2実施形態(変形例を含む)では、フレーム16の車両前側にプリテンショナ機構30が設けられる。しかしながら、フレーム16の車両後側にプリテンショナ機構30が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10・・・ウェビング巻取装置、18・・・スプール、20・・・ウェビング、20A・・・ショルダウェビング(第1ウェビング)、20B・・・ラップウェビング(第2ウェビング)、22・・・アンカ(連絡部材)、28・・・乗員、34・・・ピニオン(作動部材)、42・・・ピストン(作動部材)、44・・・ワイヤ(連絡部材)、44A・・・弛み部(移動部)、50・・・ウェビング巻取装置、52・・・連結リンク(連絡部材)、52B・・・第4軸(移動部)、60・・・ウェビング巻取装置