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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165341
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】スポット溶接用電極補充装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/36 20060101AFI20241121BHJP
   B23K 11/11 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B23K11/36
B23K11/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081460
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】591260948
【氏名又は名称】株式会社キョクトー
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】草野 寛和
【テーマコード(参考)】
4E165
【Fターム(参考)】
4E165BA11
4E165BB02
4E165BB12
4E165BB33
(57)【要約】
【課題】生産効率を高めることができ、かつ、作業者による生産ライン内の作業を減らすことができる低コストなスポット溶接用電極補充装置を提供する。
【解決手段】スポット溶接用電極補充装置1は、分岐通路部3aに位置する電極Tをいずれか一方に移動させる装置本体2を備える。電極セット部5は、電極Tを分岐通路部3aにセットする。第1ガイド筒体6は、一端が第1電極格納装置に接続され、他端が分岐通路部3aの一端開口に接続される。第2ガイド筒体7は、一端が第2電極格納装置に接続され、他端が分岐通路部3aの他端開口に接続される。第1エア導入部8は、第1ガイド筒体6に圧縮エアを導入する。第2エア導入部9は、第2ガイド筒体7に圧縮エアを導入する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポット溶接用ガンに装着する一対の電極をそれぞれ反対向きの姿勢で格納する第1及び第2電極格納装置に対して前記電極をそれぞれ同方向から補充するスポット溶接用電極補充装置であって、
両端が開口する分岐通路部を内部に有し、当該分岐通路部に位置する前記電極をその中心軸が前記分岐通路部に沿う姿勢でいずれか一方に移動させる装置本体と、
前記電極をその中心軸が前記分岐通路部に沿う姿勢で当該分岐通路部にセット可能な電極セット部と、
一端が前記第1電極格納装置に接続され、かつ、他端が前記分岐通路部の一端開口に接続可能に構成され、前記電極を案内可能な第1ガイド筒体と、
一端が前記第2電極格納装置に接続され、かつ、他端が前記分岐通路部の他端開口に接続可能に構成され、前記電極を案内可能な第2ガイド筒体と、
前記第1ガイド筒体の内部に前記第1電極格納装置へ向かう圧縮エアを導入可能な第1エア導入部と、
前記第2ガイド筒体の内部に前記第2電極格納装置へ向かう圧縮エアを導入可能な第2エア導入部と、を備えていることを特徴とするスポット溶接用電極補充装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスポット溶接用電極補充装置において、
前記装置本体は、上下に直線状に延びる前記分岐通路部を有する本体フレームと、前記分岐通路部の他端開口に対する前記第2ガイド筒体の他端開口及び前記第1エア導入部のエア導入口の接続の切り替えを行う接続切替機構と、を備え、
前記第1ガイド筒体の他端開口は、前記分岐通路部の一端開口に接続され、
前記第2エア導入部は、前記第2ガイド筒体の他端寄りの位置に接続されていることを特徴とするスポット溶接用電極補充装置。
【請求項3】
請求項2に記載のスポット溶接用電極補充装置において、
前記接続切替機構は、前記第2ガイド筒体の他端開口と前記第1エア導入部のエア導入口とが上向く姿勢で固定されたスライドプレートと、このスライドプレートを水平方向にスライドさせる第1アクチュエータと、を備え、前記スライドプレートの一側へのスライド動作で前記第2ガイド筒体の他端開口を前記分岐通路部の他端開口に接続させる一方、前記スライドプレートの他側へのスライド動作で前記第1エア導入部のエア導入口を前記分岐通路部の他端開口に接続させるように構成されていることを特徴とするスポット溶接用電極補充装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のスポット溶接用電極補充装置において、
前記電極セット部は、先端側が前記第1ガイド筒体側となるように前記電極を前記分岐通路部にセットし、
前記第2エア導入部は、前記第1エア導入部よりも導入する圧縮エアの流量が多く設定されていることを特徴とするスポット溶接用電極補充装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1つに記載のスポット溶接用電極補充装置において、
前記電極セット部は、先端側が前記第1ガイド筒体側となるように前記電極を前記分岐通路部にセットし、
前記第1エア導入部から導入される圧縮エアと前記第2エア導入部から導入される圧縮エアは同一の流量に設定され、
前記第2ガイド筒体の少なくとも内周面を含む部分は、前記第1ガイド筒体の少なくとも内周面を含む部分よりも摩擦抵抗の低い材質で構成されていることを特徴とするスポット溶接用電極補充装置。
【請求項6】
請求項5に記載のスポット溶接用電極補充装置において、
前記第1ガイド筒体の中途部は、ウレタン材で形成され、
前記第2ガイド筒体の中途部は、テフロン(登録商標)材で形成されていることを特徴とするスポット溶接用電極補充装置。
【請求項7】
請求項2又は3に記載のスポット溶接用電極補充装置において、
前記本体フレームは、前記分岐通路部と直交する水平方向に延びて一端側が前記分岐通路部に連通する第1通路部と、前記第1通路部と直交する水平方向に延びて一端側が前記第1通路部の他端側に連通する第2通路部と、を備え、
前記電極セット部は、前記第2通路部に前記電極を順次供給するパーツフィーダと、前記第2通路部の前記第1通路部に連通する部分に位置する前記電極を前記第1通路部の一端側へと当該第1通路部に沿う方向に押圧する第2アクチュエータと、を備えていることを特徴とするスポット溶接用電極補充装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット溶接用ガンに取り付ける交換用の電極を格納する電極格納装置に電極を自動的に補充するスポット溶接用電極補充装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポット溶接用ガンには、溶接時に溶接対象物を挟み込んで加圧と通電とを行う一対の電極がガン本体のシャンク部分に嵌合により取り付けられ、両電極は互いに対向している。これら各電極は、溶接品質を安定させるために定期的に交換する必要があり、交換用の各電極は、例えば、特許文献1に開示されているように、溶接ロボットの周囲に配設された電極格納装置に格納されている。この電極格納装置は、スポット溶接用ガンのシャンク部分に嵌合する嵌合凹部が同一方向に開口するように複数並設した状態で収容可能な収容ケースを備え、この収容ケースは、装置の本体部分に対して着脱可能になっている。
上述の如き電極格納装置は、対向するように取り付けられた一対の電極を効率良く交換するために、溶接ロボットの周囲に2つ配設される場合がある。このとき、各電極格納装置は、一方の電極格納装置に収容された各電極の嵌合凹部の開口方向と他方の電極格納装置に収容された各電極の嵌合凹部の開口方向とが互いに反対向きとなる姿勢で配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6236192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の如き各電極格納装置は、当該装置の収容ケース内に収容されている各電極が無くなったり、あるいは、少なくなると、予め複数の電極が収容されている予備の収容ケースと交換する必要がある。
しかし、各電極格納装置の収容ケースを交換する作業は、作業者が生産ラインの稼働を止めてその内側に入って作業を行う必要があり、生産効率が悪くなるという課題がある。また、安全管理上、作業者が生産ライン内に入り込んで行う作業を極力減らしたいという要求もある。
これに対応するために、例えば、多数の電極を整列させながら生産ラインの外側から内側へと順次供給可能なパーツフィーダを利用して、各電極格納装置の収容ケースに電極を順次自動で補充するようにすることが考えられる。
【0005】
しかし、パーツフィーダは、一般的に、各電極を同じ姿勢で順次供給するようになっているので、上述の如き収容されている電極の嵌合凹部の開口方向が反対方向を向く2つの電極格納装置の収容ケースに各電極をそれぞれ同方向から補充しようとすると、各電極格納装置に対応するように補充する電極の向きを変える必要が生じる。これを回避しようとすると、電極格納装置毎にパーツフィーダが必要となり、コストが嵩むことになってしまう。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、生産効率を高めることができ、かつ、作業者による生産ライン内の作業を減らすことができる低コストなスポット溶接用電極補充装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明では、電極を案内可能な2つのガイド筒体を用いて、一方のガイド筒体の内側に位置する電極を当該電極の先端側から圧縮エアで押して一方の電極格納装置へと送り込む一方、他方のガイド筒体の内側に位置する電極を当該電極の基端側から圧縮エアで押して他方の電極格納装置へと送り込むようにしたことを特徴とする。
具体的には、スポット溶接用ガンに装着する一対の電極をそれぞれ反対向きの姿勢で格納する第1及び第2電極格納装置に対して前記電極をそれぞれ同方向から補充するスポット溶接用電極補充装置を対象とし、次のような対策を講じた。
【0007】
すなわち、第1の発明に係るスポット溶接用電極補充装置は、両端が開口する分岐通路部を内部に有し、当該分岐通路部に位置する前記電極をその中心軸が前記分岐通路部に沿う姿勢でいずれか一方に移動させる装置本体と、前記電極をその中心軸が前記分岐通路部に沿う姿勢で当該分岐通路部にセット可能な電極セット部と、一端が前記第1電極格納装置に接続され、かつ、他端が前記分岐通路部の一端開口に接続可能に構成され、前記電極を案内可能な第1ガイド筒体と、一端が前記第2電極格納装置に接続され、かつ、他端が前記分岐通路部の他端開口に接続可能に構成され、前記電極を案内可能な第2ガイド筒体と、前記第1ガイド筒体の内部に前記第1電極格納装置へ向かう圧縮エアを導入可能な第1エア導入部と、前記第2ガイド筒体の内部に前記第2電極格納装置へ向かう圧縮エアを導入可能な第2エア導入部と、を備えていることを特徴とする。
このように構成されるスポット溶接用電極補充装置では、収容された状態の電極の向きが異なる第1及び第2電極格納装置のそれぞれに電極を補充するのを1つの電極セット部だけで行えるように作用する。また、作業者が生産ラインの外側にいても、第1及び第2電極格納装置に同方向から電極を補充できるように作用する。
【0008】
第2の発明に係るスポット溶接用電極補充装置は、第1の発明において、前記装置本体は、上下に直線状に延びる前記分岐通路部を有する本体フレームと、前記分岐通路部の他端開口に対する前記第2ガイド筒体の他端開口及び前記第1エア導入部のエア導入口の接続の切り替えを行う接続切替機構と、を備え、前記第1ガイド筒体の他端開口は、前記分岐通路部の一端開口に接続され、前記第2エア導入部は、前記第2ガイド筒体の他端寄りの位置に接続されていることを特徴とする。
このように構成されるスポット溶接用電極補充装置では、接続切替機構によって分岐通路部の他端開口に第1エア導入部のエア導入口を接続し、かつ、当該第1エア導入部から圧縮エアを導入すると、分岐通路部にセットされた電極が第1ガイド筒体に移動するように作用する。また、接続切替機構によって分岐通路部の他端開口に第2ガイド筒体の他端開口を接続し、かつ、分岐通路部に電極をセットすると、当該分岐通路部から電極が落下して第2ガイド筒体に移動するように作用する。
第3の発明に係るスポット溶接用電極補充装置は、第2の発明において、前記接続切替機構は、前記第2ガイド筒体の他端開口と前記第1エア導入部のエア導入口とが上向く姿勢で固定されたスライドプレートと、このスライドプレートを水平方向にスライドさせる第1アクチュエータと、を備え、前記スライドプレートの一側へのスライド動作で前記第2ガイド筒体の他端開口を前記分岐通路部の他端開口に接続させる一方、前記スライドプレートの他側へのスライド動作で前記第1エア導入部のエア導入口を前記分岐通路部の他端開口に接続させるように構成されていることを特徴とする。
このように構成されるスポット溶接用電極補充装置では、分岐通路部の他端開口に対する第2ガイド筒体の他端開口と第1エア導入部のエア導入口との切替動作がスライドプレートによるスライド動作だけで行えるように作用する。
【0009】
第4の発明に係るスポット溶接用電極補充装置は、第1から第3のいずれか1つの発明において前記電極セット部は、先端側が前記第1ガイド筒体側となるように前記電極を前記分岐通路部にセットし、前記第2エア導入部は、前記第1エア導入部よりも導入する圧縮エアの流量が多く設定されていることを特徴とする。
このように構成されるスポット溶接用電極補充装置では、第1ガイド筒体に位置する電極に対して圧縮エアから加わるエネルギーが小さくなる一方、第2ガイド筒体に位置する電極に対して圧縮エアから加わるエネルギーが大きくなるように作用する。
第5の発明に係るスポット溶接用電極補充装置は、第1から第3のいずれか1つの発明において、前記電極セット部は、先端側が前記第1ガイド筒体側となるように前記電極を前記分岐通路部にセットし、前記第1エア導入部から導入される圧縮エアと前記第2エア導入部から導入される圧縮エアは同一の流量に設定され、前記第2ガイド筒体の少なくとも内周面を含む部分は、前記第1ガイド筒体の少なくとも内周面を含む部分よりも摩擦抵抗の低い材質で構成されていることを特徴とする。
このように構成されるスポット溶接用電極補充装置では、第2ガイド筒体に位置する電極が第1ガイド筒体に位置する電極よりも移動し易くなるように作用する。
【0010】
第6の発明に係るスポット溶接用電極補充装置は、第5の発明において、前記第1ガイド筒体の中途部は、ウレタン材で形成され、前記第2ガイド筒体の中途部は、テフロン(登録商標)材で形成されていることを特徴とする。
このように構成されるスポット溶接用電極補充装置では、比較的加工し易く手に入れ易い部材で作られるように作用する。
第7の発明に係るスポット溶接用電極補充装置は、第2又は第3の発明において、前記本体フレームは、前記分岐通路部と直交する水平方向に延びて一端側が前記分岐通路部に連通する第1通路部と、前記第1通路部と直交する水平方向に延びて一端側が前記第1通路部の他端側に連通する第2通路部と、を備え、前記電極セット部は、前記第2通路部に前記電極を順次供給するパーツフィーダと、前記第2通路部の前記第1通路部に連通する部分に位置する前記電極を前記第1通路部の一端側へと当該第1通路部に沿う方向に押圧する第2アクチュエータと、を備えていることを特徴とする。
このように構成されるスポット溶接用電極補充装置では、パーツフィーダで整列されて順次装置本体に送られてくる補充用の各電極を第1及び第2通路部を介して1つずつ同じ姿勢で分岐通路部へと精度良く送り出すことができるように作用する。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明のスポット溶接用電極補充装置では、分岐通路部にセットされた電極を装置本体によって一端開口側に移動させるとともに第1エア導入部により圧縮エアを第1ガイド筒体に導入すると、電極が先端側を進行方向に向けた状態で第1ガイド筒体に案内されて第1電極格納装置に補充されるようになる。一方、分岐通路部にセットされた電極を装置本体によって他端開口側に移動させるとともに第2エア導入部により圧縮エアを第2ガイド筒体に導入すると、電極が基端側を進行方向に向けた状態で第2ガイド筒体に案内されて第2電極格納装置に補充されるようになる。このように、収容された状態の電極の向きが異なる第1及び第2電極格納装置のそれぞれに電極を補充するのを1つの電極セット部だけで行えるようになり、低コストなスポット溶接用電極補充装置にできる。また、作業者が生産ラインの外側にいても、第1及び第2電極格納装置に同方向から電極を補充できるようになる。したがって、第1及び第2電極格納装置の電極が無くなるか、または、少なくなった場合であっても、作業者が生産ラインの内側に侵入して第1及び第2電極格納装置の収容ケースの交換を行うといった作業を行う必要が無くなり、生産ラインの生産効率が上がるとともに、作業者による生産ライン内の作業を減らすことができる。
【0012】
第2の発明のスポット溶接用電極補充装置では、接続切替機構によって分岐通路部の他端開口に第1エア導入部のエア導入口を接続し、かつ、当該第1エア導入部から圧縮エアを導入すると、分岐通路部にセットされた電極が第1ガイド筒体に移動するようになる。その後、第1エア導入部による圧縮エアの導入を続けると、電極が圧縮エアに押されることにより第1ガイド筒体に案内されて第1電極格納装置に向かうようになる。一方、接続切替機構によって分岐通路部の他端開口に第2ガイド筒体の他端開口を接続し、かつ、分岐通路部に電極をセットすると、当該分岐通路部から電極が落下して第2ガイド筒体に移動するようになる。その後、第2ガイド筒体に圧縮エアを導入すると、電極が圧縮エアに押されることにより第2ガイド筒体に案内されて第2電極格納装置に向かうようになる。このように、第1ガイド筒体に位置する電極の移動に使用する第1エア導入部を利用して装置本体の分岐通路部においてセットされた電極の第1ガイド筒体側への移動と第2ガイド筒体側への移動とをそれぞれ行うことができるようになるので、分岐通路部における電極の第1ガイド筒体側への移動と第2ガイド筒体側への移動とを行うためにそれぞれ専用のエア導入部を設ける必要が無く、低コストな構造にすることができる。
【0013】
第3の発明のスポット溶接用電極補充装置では、分岐通路部の他端開口に対する第2ガイド筒体の他端開口と第1エア導入部のエア導入口との切替動作がスライドプレートによるスライド動作だけで行えるようになる。したがって、接続切替機構がシンプルな構造になり、低コストで、かつ、故障し難い装置にすることができる。
第4の発明のスポット溶接用電極補充装置では、第1ガイド筒体に位置する電極に対して圧縮エアから加わるエネルギーが小さくなる一方、第2ガイド筒体に位置する電極に対して圧縮エアから加わるエネルギーが大きくなる。したがって、電極の基端側の嵌合凹部で圧縮エアを受けることにより圧縮エアから電極に加わるエネルギーの損失が少ない第1ガイド筒体を移動する電極の移動速度と、電極の先端側の半球状をなす部分で圧縮エアを受けることにより圧縮エアから電極に加わるエネルギーの損失が大きい第2ガイド筒体を移動する電極の移動速度とが同じか、あるいは、近づくようになるので、第1電極格納装置側と第2電極格納装置側の各電極の動きのばらつきを抑えて当該各電極の動きに起因した装置の劣化の進行が偏るのを防ぐことができる。
【0014】
第5の発明のスポット溶接用電極補充装置では、第2ガイド筒体に位置する電極が第1ガイド筒体に位置する電極よりも移動し易くなる。したがって、電極の基端側の嵌合凹部で圧縮エアを受けることにより圧縮エアから電極に加わるエネルギーの損失が少ない第1ガイド筒体を移動する電極の移動速度と、電極の先端側の半球状をなす部分で圧縮エアを受けることにより圧縮エアから電極に加わるエネルギーの損失が大きい第2ガイド筒体を移動する電極の移動速度とが同じか、あるいは、近づくようになるので、第1電極格納装置側と第2電極格納装置側の各電極の動きのばらつきを抑えて当該各電極の動きに起因した装置の劣化の進行が偏るのを防ぐことができる。
【0015】
第6の発明のスポット溶接用電極補充装置では、比較的加工し易く手に入れ易い部材で作られるようになり、安価な装置にすることができる。
第7の発明のスポット溶接用電極補充装置では、パーツフィーダで整列されて順次装置本体に送られてくる補充用の各電極を第1及び第2通路部を介して1つずつ同じ姿勢で分岐通路部へと精度良く送り出すことができるようになる。したがって、第1及び第2電極格納装置への各電極の補充を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例に係るスポット溶接用電極補充装置と当該スポット溶接用電極補充装置から電極が補充される一対の電極格納装置とを示す斜視図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3図2のIII-III線における断面図である。
図4図2の後、一方の電極格納装置への電極の補充を開始した直後の状態を示す図である。
図5図4のV-V線における断面図である。
図6】他方の電極格納装置への電極の補充を開始する直前の状態を示す図2相当図である。
図7図6のVII-VII線における断面図である。
図8図6の後、他方の電極格納装置への電極の補充を開始した直後の状態を示す図である。
図9図1のIX-IX線における断面図である。
図10図9の後、一方の電極格納装置に補充された電極を電極取出位置まで移送させた直後の状態を示す図である。
図11図1のXI-XI線における断面図である。
図12図11のXII-XII線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の好ましい実施例の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0018】
図1は、本発明の実施例に係るスポット溶接用電極補充装置1と、スポット溶接用ガンGに対する交換用の電極Tを格納する第1電極格納装置10A及び第2電極格納装置10Bと、を示す。スポット溶接用電極補充装置1は、第1及び第2電極格納装置10A、10Bに対して使用前の電極Tを自動的に補充していくものであり、自動車生産ラインの外側に配置されている。
スポット溶接用電極補充装置1は、図2に示すように、側面視で略L字状をなす装置本体2を備え、該装置本体2は、水平方向に延びる略直方体のブロック形状をなす本体フレーム3と、この本体フレーム3の下方に配置された接続切替機構4と、を備えている。
【0019】
本体フレーム3の長手方向一側内部には、上下に直線状に延びて両端が開口する断面円形状をなす分岐通路部3aが形成され、この分岐通路部3aは、電極Tの中心軸が分岐通路部3aに沿う姿勢で電極Tを上側か下側かのいずれか一方に移動させることができるようになっている(図4及び図8参照)。
また、本体フレーム3は、図2及び図3に示すように、分岐通路部3aと直交する水平方向に直線状に延びて一端側が分岐通路部3aに連通する第1通路部3bと、該第1通路部3bと直交する水平方向に延びて一端側が第1通路部3bの他端側に連通する第2通路部3cと、を備え、第1通路部3bの中途部から他端に亘る領域と第2通路部3cとは、上方が開放する断面略U字状をなしている。
【0020】
接続切替機構4は、本体フレーム3の長手方向に延び、かつ、本体フレーム3の幅方向に離間して当該本体フレーム3の下面に固定された一対の支持フレーム41を備えている。該両支持フレーム41の間には、平面視で長方形状をなすスライドプレート42が配設され、両支持フレーム41の一端には、第1エアシリンダ43(第1アクチュエータ)が固定されている。
スライドプレート42の長手方向一側中央には、上下に貫通する断面円形状をなす第1貫通孔42aが形成され、該第1貫通孔42aの断面は、分岐通路部3aの断面と同じ大きさになっている。また、スライドプレート42の長手方向他側中央には、上下に貫通する断面円形状をなす第2貫通孔42bが形成され、該第2貫通孔42bの断面は、分岐通路部3aの断面より小さい形状になっている。
【0021】
第1エアシリンダ43は、本体フレーム3の長手方向に沿って伸縮可能で、かつ、先端がスライドプレート42の長手方向一端に接続された第1ピストンロッド43aを備え、この第1ピストンロッド43aが収縮すると、図2及び図3に示すように、スライドプレート42が水平方向一側にスライドして第2貫通孔42bが分岐通路部3aの下端開口(他端開口)に対応する一方、第1ピストンロッド43aが伸長すると、図6及び図7に示すように、スライドプレート42が水平方向他側にスライドして第1貫通孔42aが分岐通路部3aの下端開口に対応するようになっている。
【0022】
装置本体2の側方には、図1図3に示すように、電極Tを分岐通路部3aにセット可能な電極セット部5が配設されている。この電極セット部5は、本体フレーム3の幅方向一側に配設されたパーツフィーダ51と、本体フレーム3の長手方向他端に固定された第2エアシリンダ52(第2アクチュエータ)と、本体フレーム3の幅方向他側に固定された第3エアシリンダ53と、当該第3エアシリンダ53に並設された電極検出センサ54と、を備えている。
パーツフィーダ51は、多数の電極Tを貯留可能な上方に開口するボウル部51aと、該ボウル部51aの外周部分と第2通路部3cの他端部分とを繋ぐ断面凹状をなす略直線状の電極ガイド部51bと、を備え、ボウル部51aは、上下に延びる回転軸心を中心として回転可能に構成されている。そして、パーツフィーダ51は、ボウル部51aの回転動作により当該ボウル部51aに位置する各電極Tがその先端を上側にした状態で直線状に整列しながら電極ガイド部51bに案内されて第2通路部3cへと順次供給されるようになっている。
【0023】
第2エアシリンダ52は、本体フレーム3の長手方向に沿って第1通路部3b内を伸縮可能な第2ピストンロッド52aを備えている。この第2ピストンロッド52aの先端には、第1通路部3bに対応する形状をなす押圧ブロック52bが固定され、第2ピストンロッド52aが伸長すると、図4及び図5に示すように、押圧ブロック52bが第2通路部3cの第1通路部3bに連通する部分に位置する電極Tを第1通路部3bの一側へと当該第1通路部3bに沿う方向に押圧するようになっている。そして、押圧ブロック52bに押圧された電極Tは、その中心線が分岐通路部3aに沿う姿勢で、かつ、先端側が分岐通路部3aの上端開口側(一端開口側)になる姿勢で分岐通路部3aにセットされるようになっている。
【0024】
第3エアシリンダ53は、本体フレーム3の幅方向に沿って第1通路部3bを遮るように伸縮可能な第3ピストンロッド53aを備え、この第3ピストンロッド53aは、電極ガイド部51bにおける分岐通路部3a側の内壁に沿う位置に配設されている。そして、第3エアシリンダ53は、第3ピストンロッド53aを伸長させると、図2及び図3に示すように、当該第3ピストンロッド53aが第1通路部3bを遮って電極Tが第1通路部3bを通過不能となり、第3ピストンロッド53aを収縮させると、図4及び図5に示すように、当該第3ピストンロッド53aが第1通路部3bに位置しなくなって電極Tが第1通路部3bを通過可能となるように構成されている。
電極検出センサ54は、電極Tが第2通路部3cにおける第1通路部3bに連通する部分に位置するか否かを検出可能になっている。
【0025】
装置本体2と第1電極格納装置10Aとの間には、図1に示すように、一端開口が第1電極格納装置10Aに接続され、かつ、他端開口が分岐通路部3aの一端開口に接続された第1ガイド筒体6が配設され、当該第1ガイド筒体6は、電極Tの中心軸が筒中心線に沿う姿勢で電極Tを案内可能になっている。
第1ガイド筒体6は、図2に示すように、分岐通路部3aの上端開口周縁に固定された第1接続筒部6aと、この第1接続筒部6aに外嵌合されたウレタン材からなる第1可撓筒部6bと、を備えている。つまり、第1ガイド筒体6の中途部は、ウレタン材で構成されている。
【0026】
一方、装置本体2と第2電極格納装置10Bとの間には、図1に示すように、一端が第2電極格納装置10Bに接続され、かつ、他端開口がスライドプレート42の第1貫通孔42aに上向く姿勢で固定された第2ガイド筒体7が配設され、当該第2ガイド筒体7は、電極Tの中心軸が筒中心線に沿う姿勢で電極Tを案内可能になっている。
第2ガイド筒体7は、図2に示すように、スライドプレート42における第1貫通孔42aの下端開口周縁に固定された第2接続筒部7aと、この第2接続筒部7aに外嵌合されたテフロン(登録商標)材からなる第2可撓筒部7bと、を備えている。つまり、第2ガイド筒体7の中途部は、ウレタン材で形成された第1ガイド筒体6の中途部よりも摩擦抵抗の低いテフロン(登録商標)材で構成されている。
【0027】
スライドプレート42の下方には、第1ガイド筒体6に圧縮エアを導入可能な第1エア導入部8が配設されている。該第1エア導入部8は、第2ガイド筒体7の他端側部分に並設されていて、第1エア導入部8のエア導入口8aは、スライドプレート42における第2貫通孔42bに上向く姿勢で固定されている。
そして、接続切替機構4は、図6及び図7に示すように、スライドプレート42の一側へのスライド動作で第1貫通孔42aを介して第2ガイド筒体7の他端開口を分岐通路部3aの下端開口に接続させるようになっている。この状態において、図8に示すように、第3エアシリンダ53の第3ピストンロッド53aを収縮させるとともに第2エアシリンダ52の第2ピストンロッド52aを伸長させて分岐通路部3aに電極Tをセットすると、当該電極Tが落下して第2ガイド筒体7へと移動するようになっている。すなわち、装置本体2は、分岐通路部3aに位置する電極Tをその中心軸が分岐通路部3aに沿う姿勢で第2ガイド筒体7へと向かうように下方へと移動させるようになっている。
【0028】
一方、接続切替機構4は、図2及び図3に示すように、スライドプレート42の他側へのスライド動作で第2貫通孔42bを介して第1エア導入部8のエア導入口8aを分岐通路部3aの下端開口に接続させるようになっている。これにより、第1エア導入部8は、第2貫通孔42b及び分岐通路部3aを介して第1ガイド筒体6の内部に第1電極格納装置10Aへ向かう圧縮エアを導入できるようになる。そして、この状態において、図4及び図5に示すように、第3エアシリンダ53の第3ピストンロッド53aを収縮させるとともに第2エアシリンダ52の第2ピストンロッド52aを伸長させて分岐通路部3aに電極Tをセットし、かつ、第1エア導入部8により第2貫通孔42bを介して圧縮エアを分岐通路部3aに導入すると、電極Tが上昇して第1ガイド筒体6へと移動するようになっている。すなわち、装置本体2は、分岐通路部3aに位置する電極Tをその中心軸が分岐通路部3aに沿う姿勢で第1ガイド筒体6へと向かうように上方へと移動させるようになっている。
このように、接続切替機構4は、分岐通路部3aの下端開口に対する第2ガイド筒体7の他端開口及び第1エア導入部8のエア導入口8aの接続の切り替えを行えるようになっている。
【0029】
また、第2ガイド筒体7の第2接続筒部7aには、図7に示すように、当該第2ガイド筒体7に圧縮エアを導入可能な第2エア導入部9が接続されている。すなわち、第2エア導入部9は、第2ガイド筒体7の他端寄りの位置に接続され、斜め下方に直線状に延びて第2接続筒部7aの内部に連通する連通孔部91aが形成された接続ブロック91と、連通孔部91aに接続されたエア導入チューブ92と、を備えている。そして、第2エア導入部9は、第2ガイド筒体7の内部に第2電極格納装置10Bへ向かう圧縮エアを導入可能になっていて、第1エア導入部8から第1ガイド筒体6に導入される圧縮エアと第2エア導入部9から第2ガイド筒体7に導入される圧縮エアとが同一の流量に設定されている。
【0030】
第1電極格納装置10Aは、図1に示すように、水平方向に延びる略角筒状の収容ケース11を備え、この収容ケース11は、スポット溶接用ガンGから電極Tを取外可能な電極取外装置X1の一側面に着脱可能に取り付けられている。
収容ケース11の内部には、図9に示すように、当該収容ケース11の長手方向に沿って延びる直線状の収容通路11aが形成され、該収容通路11aには、電極Tをその中心軸が上下に延びる姿勢で、かつ、先端側が下向く姿勢で収容可能になっている。
すなわち、第1電極格納装置10Aの収容通路11aは、電極Tをスポット溶接用ガンGのシャンクG1に嵌合する嵌合凹部T1が上方に開口するように収容可能になっている。
収容通路11aの一端側上面には、電極Tを取出可能な電極取出口11bが形成され、収容通路11aの一端寄りの一側面には、電極Tを収容通路11aの他側面に押し当てるボールプランジャ11cが取り付けられている。
一方、収容通路11aの他端側上面には、第1ガイド筒体6の一端が上方から接続され、収容通路11aの他端には、押圧機構12が設けられている。
【0031】
押圧機構12は、筒中心線が収容通路11aの延長方向に延び、一端が収容ケース11の他端に固定された略円筒状をなす押圧エアシリンダ13を備え、該押圧エアシリンダ13の一端中央には、当該押圧エアシリンダ13の内方に形成された中空部13aを収容通路11aに連通させるガイド孔13bが形成されている。
また、押圧エアシリンダ13の一端寄りの位置と他端寄りの位置とには、それぞれ圧縮エアを中空部13aに導入可能な第1エア導入孔13c及び第2エア導入孔13dが形成され、それぞれ図示しない配管を介してエアコンプレッサーに接続されている。
【0032】
中空部13aには、当該中空部13aを2つに仕切る円板状のピストン14が配設され、当該ピストン14は、押圧エアシリンダ13の筒中心線に沿ってスライド可能になっている。
ピストン14の収容通路11a側中央には、押圧エアシリンダ13の筒中心線に沿って延びるロッド部材15が一体に設けられ、当該ロッド部材15は、ガイド孔13bに摺接可能に嵌挿されている。
ロッド部材15の先端には、収容通路11aに収容されたブロック形状をなす押圧部材16が接続され、該押圧部材16は、収容通路11aに沿って進退可能になっている。
【0033】
そして、押圧機構12は、第2エア導入孔13dを介して圧縮エアを中空部13aに導入すると、図10に示すように、ピストン14が収容通路11a側にスライドすることにより、ロッド部材15がガイド孔13bに案内されながら収容通路11a側にスライドして押圧部材16が第1ガイド筒体6を介して収容通路11aに補充された電極Tを電極取出口11bに対応する位置まで押圧するようになっている。
一方、押圧機構12は、第1エア導入孔13cを介して圧縮エアを中空部13aに導入すると、図9に示すように、ピストン14が収容通路11aから離間する側にスライドすることにより、ロッド部材15がガイド孔13bに案内されながら収容通路11aから離間する側にスライドして押圧部材16が元位置へと戻るようになっている。
【0034】
第2電極格納装置10Bは、図11及び図12に示すように、電極取外装置X1の他側面に着脱可能に取り付けられている点、収容ケース11が上下反対の構造になっている点、及び、電極Tが収容通路11aにその先端が上方に向くように収容される点を除いて第1電極格納装置10Aと同一の構造をしているので、第1電極格納装置10Aと同じ個所には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
このように、第1電極格納装置10A及び第2電極格納装置10Bは、スポット溶接用ガンGに装着する一対の電極Tをそれぞれ反対向きの姿勢で格納しており、スポット溶接用電極補充装置1は、第1電極格納装置10A及び第2電極格納装置10Bに対して電極Tをそれぞれ同方向(上側)から補充するようになっている。
【0035】
次に、スポット溶接用電極補充装置1の第1電極格納装置10A及び第2電極格納装置10Bに対する電極Tの補充動作について詳述する。
まず、作業者は、多量の電極Tがボウル部51aに予め貯留された状態のパーツフィーダ51を作動させてボウル部51aを回転させる。すると、図2及び図3に示すように、ボウル部51aに位置する各電極Tがその先端を上側にした状態で直線状に整列しながら電極ガイド部51bに案内されて装置本体2における第2通路部3cへと順次供給され、先頭の電極Tが第1通路部3bに到達した状態になる。
【0036】
次いで、図1に示すように、スポット溶接用ガンGの上側のシャンクG1に取り付けられている使用済みの電極Tを電極取外装置X1にて取り外した後、第1電極格納装置10Aの電極取出口11bを介して当該第1電極格納装置10Aの収容通路11aに位置する使用前の電極Tの嵌合凹部T1にスポット溶接用ガンGの上側のシャンクG1を嵌合させて当該シャンクG1に電極Tを取り付け、その後、電極取出口11bを介して電極Tを第1電極格納装置10Aの外側に取り出す。電極Tが第1電極格納装置10Aの外側に取り出されると、第3エアシリンダ53の第3ピストンロッド53aが収縮し、その後、第2エアシリンダ52の第2ピストンロッド52aが伸長する。すると、図4及び図5に示すように、第1通路部3bに位置する電極Tが押圧ブロック52bに押圧されて分岐通路部3aに到達する。
【0037】
分岐通路部3aに電極Tが到達すると、第1エア導入部8が作動して圧縮エアがスライドプレート42の第2貫通孔42bを介して分岐通路部3aに導入されて電極Tを上方へと押圧する。すると、図9に示すように、電極Tが第1ガイド筒体6に案内された後、第1電極格納装置10Aの収容通路11aに到達する。つまり、第1電極格納装置10Aに電極Tが補充される。
電極Tが第1電極格納装置10Aの収容通路11aに到達すると、押圧機構12が作動し、押圧エアシリンダ13の第2エア導入孔13dを介して中空部13aに圧縮エアが導入され、ピストン14とロッド部材15とが収容通路11a側にスライドして押圧部材16が電極Tを電極取出口11bに対応する位置まで押圧する。そして、収容通路11aの電極取出口11bに対応する位置まで移動してきた電極Tは、ボールプランジャ11cにより収容通路11aの壁面に押し付けられて保持され、取付待機状態になる。
【0038】
次に、図1に示すように、スポット溶接用ガンGの下側のシャンクG1に取り付けられている使用済みの電極Tを電極取外装置X1にて取り外した後、第2電極格納装置10Bの電極取出口11bを介して当該第2電極格納装置10Bの収容通路11aに位置する使用前の電極Tの嵌合凹部T1にスポット溶接用ガンGの下側のシャンクG1を嵌合させて当該シャンクG1に電極Tを取り付け、その後、電極取出口11bを介して電極Tを第2電極格納装置10Bの外側に取り出す。電極Tが第2電極格納装置10Bの外側に取り出されると、図6及び図7に示すように、第1エアシリンダ43の第1ピストンロッド43aが伸長してスライドプレート42がスライドして第2ガイド筒体7の他端開口が第1貫通孔42aを介して分岐通路部3aの他端開口に接続される。しかる後、第3エアシリンダ53の第3ピストンロッド53aが収縮し、その後、第2エアシリンダ52の第2ピストンロッド52aが伸長する。すると、図8に示すように、第1通路部3bに位置する電極Tが押圧ブロック52bに押圧されて分岐通路部3aに到達する。
【0039】
分岐通路部3aに到達した電極Tは、当該分岐通路部3aを落下し、第1貫通孔42aを通過して第2ガイド筒体7に入り込み、第2エア導入部9の接続ブロック91を通過する。すると、第2エア導入部9が作動して圧縮エアが第2ガイド筒体7の内部に導入されて電極Tを押圧する。そして、電極Tが第2ガイド筒体7に案内されて第2電極格納装置10Bの収容通路11aに到達する。つまり、第2電極格納装置10Bに電極Tが補充される。
電極Tが第2電極格納装置10Bの収容通路11aに到達すると、押圧機構12が作動し、押圧エアシリンダ13の第2エア導入孔13dを介して中空部13aに圧縮エアが導入され、図11及び図12に示すように、ピストン14とロッド部材15とが収容通路11a側にスライドして押圧部材16が電極Tを電極取出口11bに対応する位置まで押圧する。そして、収容通路11aの電極取出口11bに対応する位置まで移動してきた電極Tは、ボールプランジャ11cにより収容通路11aの壁面に押し付けられて保持され、取付待機状態になる。
【0040】
このように、本発明の実施例によると、分岐通路部3aにセットされた電極Tを装置本体2によって上端開口(一端開口)側に移動させるとともに第1エア導入部8により圧縮エアを第1ガイド筒体6に導入すると、電極Tが先端側を進行方向に向けた状態で第1ガイド筒体6に案内されて第1電極格納装置10Aに補充されるようになる。一方、分岐通路部3aにセットされた電極Tを装置本体2によって下端開口(他端開口)側に移動させるとともに第2エア導入部9により圧縮エアを第2ガイド筒体7に導入すると、電極Tが基端側を進行方向に向けた状態で第2ガイド筒体7に案内されて第2電極格納装置10Bに補充されるようになる。このように、収容された状態の電極Tの向きが異なる第1電極格納装置10A及び第2電極格納装置10Bのそれぞれに電極Tを補充するのを1つの電極セット部5だけで行えるようになり、低コストなスポット溶接用電極補充装置1にできる。また、作業者が生産ラインの外側にいても、第1電極格納装置10A及び第2電極格納装置10Bに同方向から電極Tを補充できるようになる。したがって、第1電極格納装置10A及び第2電極格納装置10Bにおいて電極Tが無くなっても、作業者が生産ラインの内側に侵入して第1電極格納装置10A及び第2電極格納装置10Bの収容ケース11の交換を行うといった作業を行う必要が無くなり、生産ラインの生産効率が上がるとともに、作業者による生産ライン内の作業を減らすことができる。
【0041】
また、接続切替機構4によって分岐通路部3aの他端開口に第1エア導入部8のエア導入口8aを接続し、かつ、当該第1エア導入部8から圧縮エアを導入すると、分岐通路部3aにセットされた電極Tが第1ガイド筒体6に移動するようになる。その後、第1エア導入部8による圧縮エアの導入を続けると、電極Tが圧縮エアに押されることにより第1ガイド筒体6に案内されて第1電極格納装置10Aに向かうようになる。一方、接続切替機構4によって分岐通路部3aの他端開口に第2ガイド筒体7の他端開口を接続し、かつ、分岐通路部3aに電極Tをセットすると、当該分岐通路部3aから電極Tが落下して第2ガイド筒体7に移動するようになる。その後、第2ガイド筒体7に圧縮エアを導入すると、電極Tが圧縮エアに押されることにより第2ガイド筒体7に案内されて第2電極格納装置10Bに向かうようになる。このように、第1ガイド筒体6に位置する電極Tの移動に使用する第1エア導入部8を利用して装置本体2の分岐通路部3aにおいてセットされた電極Tの第1ガイド筒体6側への移動と第2ガイド筒体7側への移動とをそれぞれ行うことができるようになるので、分岐通路部3aにおける電極Tの第1ガイド筒体6側への移動と第2ガイド筒体7側への移動とを行うためにそれぞれ専用のエア導入部を設ける必要が無く、低コストな構造にすることができる。
【0042】
また、分岐通路部3aの他端開口に対する第2ガイド筒体7の他端開口と第1エア導入部8のエア導入口8aとの切替動作がスライドプレート42によるスライド動作だけで行えるようになる。したがって、接続切替機構4がシンプルな構造になり、低コストで、かつ、故障し難いスポット溶接用電極補充装置1にすることができる。
また、第2ガイド筒体7が第1ガイド筒体6よりも摩擦抵抗の低い材質で構成されているので、第2ガイド筒体7に位置する電極Tが第1ガイド筒体6に位置する電極Tよりも移動し易くなる。したがって、電極Tの基端側の嵌合凹部T1で圧縮エアを受けることにより圧縮エアから電極Tに加わるエネルギーの損失が少ない第1ガイド筒体6を移動する電極Tの移動速度と、電極Tの先端側の半球状をなす部分で圧縮エアを受けることにより圧縮エアから電極Tに加わるエネルギーの損失が大きい第2ガイド筒体7を移動する電極Tの移動速度とが同じか、あるいは、近づくようになるので、第1電極格納装置10A側と第2電極格納装置10B側の各電極Tの動きのばらつきを抑えて当該各電極Tの動きに起因したスポット溶接用電極補充装置1の劣化の進行が偏るのを防ぐことができる。
【0043】
また、第1ガイド筒体6の中途部は、ウレタン材で形成され、第2ガイド筒体7の中途部は、テフロン(登録商標)材で形成されているので、第1ガイド筒体6と第2ガイド筒体7とが比較的加工し易く手に入れ易い部材で作られ、安価なスポット溶接用電極補充装置1にできる。
また、パーツフィーダ51で整列されて順次装置本体2に送られてくる補充用の各電極Tを第1通路部3b及び第2通路部3cを介して1つずつ同じ姿勢で分岐通路部3aへと精度良く送り出すことができるようになる。したがって、第1電極格納装置10A及び第2電極格納装置10Bへの各電極Tの補充を効率良く行うことができる。
【0044】
なお、本発明の実施例では、第1エア導入部8から導入される圧縮エアと第2エア導入部9から導入される圧縮エアを同一の流量に設定するとともに、第2ガイド筒体7を第1ガイド筒体6よりも摩擦抵抗の低い材質で構成しているが、これに限らず、例えば、第1ガイド筒体6と第2ガイド筒体7とを同じ材質で構成するとともに、第2エア導入部9の圧縮エアの流量を第1エア導入部8よりも多く設定するようにしてもよい。そうすると、第1ガイド筒体6に位置する電極Tに対して圧縮エアから加わるエネルギーが小さくなる一方、第2ガイド筒体7に位置する電極Tに対して圧縮エアから加わるエネルギーが大きくなる。したがって、電極Tの基端側の嵌合凹部T1で圧縮エアを受けることにより圧縮エアから電極Tに加わるエネルギーの損失が少ない第1ガイド筒体6を移動する電極Tの移動速度と、電極Tの先端側の半球状をなす部分で圧縮エアを受けることにより圧縮エアから電極Tに加わるエネルギーの損失が大きい第2ガイド筒体7を移動する電極Tの移動速度とが同じか、あるいは、近づくようになるので、第1電極格納装置10A側と第2電極格納装置10B側の各電極Tの動きのばらつきを抑えて当該各電極Tの動きに起因したスポット溶接用電極補充装置1の劣化の進行が偏るのを防ぐことができる。
【0045】
また、本発明の実施例では、第1ガイド筒体6の中途部の材質をウレタン材とし、第2ガイド筒体7の中途部の材質をテフロン(登録商標)材としているが、全ての部分をその材質で構成する必要は無く、例えば、第1ガイド筒体6の少なくとも内周面を含む部分がウレタン材で形成され、かつ、第2ガイド筒体7の少なくとも内周面を含む部分がテフロン(登録商標)材で形成される構造であってもよい。
また、本発明の実施例では、第1ガイド筒体6の中途部の材質をウレタン材とし、第2ガイド筒体7の中途部の材質をテフロン(登録商標)材としているが、第2ガイド筒体7が第1ガイド筒体6よりも摩擦抵抗の低い材質で構成されているのであれば、それぞれその他の材質で構成されていてもよい。
また、本発明の実施例では、接続切替機構4によって分岐通路部3aの下端開口に対する第2ガイド筒体7の他端開口及び第1エア導入部8のエア導入口8aの接続の切り替えを行っているが、例えば、第1ガイド筒体6側においても同様の構造を設けるようにしてもよい。すなわち、分岐通路部3aの上端開口に対して第1ガイド筒体6の他端開口の接続と第2エア導入部9の接続とを切り替えれるような構造にしてもよい。そうすると、分岐通路部3aに位置する電極Tの第2ガイド筒体7への移動を第2エア導入部9の圧縮エアを利用して行うことができるようになる。
また、本発明の実施例では、第1電極格納装置10A及び第2電極格納装置10Bに格納される電極Tは、それぞれ1つずつ格納するようになっているが、これに限らず、収容通路11aに複数個の電極Tを格納するような構造であってもよい。
また、本発明の実施例では、スライドプレート42のスライド動作や押圧ブロック52bを押圧動作、さらには、第1通路部3bの通路を遮る機構を、それぞれ第1エアシリンダ43、第2エアシリンダ52及び第3エアシリンダ53で行っているが、それぞれ電動シリンダや油圧シリンダ等の他のアクチュエータでも代替えすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、スポット溶接用ガンに取り付ける交換用の電極を格納する電極格納装置に電極を自動的に補充するスポット溶接用電極補充装置に適している。
【符号の説明】
【0047】
1…スポット溶接用電極補充装置 2…装置本体 3…本体フレーム 3a…分岐通路部 3b…第1通路部 3c…第2通路部 4…接続切替機構 5…電極セット部 6…第1ガイド筒体 6a…第1接続筒部 6b…第1可撓筒部 7…第2ガイド筒体 7a…第2接続筒部 7b…第2可撓筒部 8…第1エア導入部 8a…エア導入口 9…第2エア導入部 10A…第1電極格納装置 10B…第2電極格納装置 11…収容ケース 11a…収容通路 11b…電極取出口 11c…ボールプランジャ 12…押圧機構 13…押圧エアシリンダ 13a…中空部 13b…ガイド孔 13c…第1エア導入孔 13d…第2エア導入孔 14…ピストン 15…ロッド部材 16…押圧部材 41…支持フレーム 42…スライドプレート 42a…第1貫通孔 42b…第2貫通孔 43…第1エアシリンダ 43a…第1ピストンロッド 51…パーツフィーダ 51a…ボウル部 51b…電極ガイド部 52…第2エアシリンダ 52a…第2ピストンロッド 52b…押圧ブロック 53…第3エアシリンダ 53a…第3ピストンロッド 54…電極検出センサ 91…接続ブロック 91a…連通孔部 92…エア導入チューブ G…スポット溶接用ガン G1…シャンク T…電極 T1…嵌合凹部 X1…電極取外装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12