(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165342
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】気流発生装置、気体昇圧装置、及び、推進装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/24 20060101AFI20241121BHJP
H01J 27/24 20060101ALI20241121BHJP
F04D 29/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H05H1/24
H01J27/24
F04D29/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081462
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂元 康朗
【テーマコード(参考)】
2G084
3H130
【Fターム(参考)】
2G084AA23
2G084CC11
2G084CC34
2G084DD11
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB41
3H130AC30
3H130CA01
3H130DF07Z
3H130DF09Z
(57)【要約】
【課題】良好なエネルギー効率で気流を発生可能な気流発生装置、気体昇圧装置、及び、推進装置を提供する。
【解決手段】気流発生装置は、第一電極及び前記第二電極の間に電磁波を照射することによりイオンを生成する。生成されたイオンは、第一電極と、第一電極より下流側に配置された少なくとの1つの第二電極との間に印加された電圧によって加速されることで、気流を発生させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電極と、
気流の流路に沿って前記第一電極より下流側に、前記第一電極に対向するように配置された少なくとの1つの第二電極と、
前記第一電極及び前記第二電極の間に電磁波を照射するための電磁波照射装置と、
前記第一電極及び前記第二電極の間に電圧を印加するための電源と、
を備える、気流発生装置。
【請求項2】
前記第一電極は正極であり、
前記第二電極は負極である、請求項1に記載の気流発生装置。
【請求項3】
前記電磁波は、前記気体に含まれる分子のイオン化エネルギーに相当するエネルギー、又は、前記イオン化エネルギーより高いエネルギーを有する、請求項1又は2に記載の気流発生装置。
【請求項4】
前記電磁波照射装置は、前記第一電極及び前記第二電極の間における前記電磁波の照射位置が、前記第二電極より前記第一電極に近くになるように前記電磁波を照射する、請求項1又は2に記載の気流発生装置。
【請求項5】
前記電磁波照射装置は、前記電磁波を間欠的に照射する、請求項1又は2に記載の気流発生装置。
【請求項6】
前記第一電極又は前記第二電極の少なくとも一方は翼形状を有する、請求項1又は2に記載の気流発生装置。
【請求項7】
前記流路は、壁面によって囲まれた閉空間である、請求項1又は2に記載の気流発生装置。
【請求項8】
前記流路は、外部に開放された開空間である、請求項1又は2に記載の気流発生装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第二電極は、前記第一電極に対する相対的位置が互いに異なる複数の電極を含み、
前記電源は、前記第一電極と、前記複数の電極のいずれか一方との間に前記電圧を印加可能である、請求項1又は2に記載の気流発生装置。
【請求項10】
前記第二電極は、前記第一電極に対する相対的位置を移動可能である、請求項1又は2に記載の気流発生装置。
【請求項11】
前記電磁波照射装置は、
レーザ光を発生するためのレーザ源
もしくは、
レーザ光を発生するためのレーザ源と、
レーザ光の波長を変換するための波長変換部と
を備える、請求項1又は2に記載の気流発生装置。
【請求項12】
前記気体は空気である、請求項1又は2に記載の気流発生装置。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の気流発生装置によって発生される気流を用いて、気体を昇圧可能な気体昇圧装置。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の気流発生装置によって発生される気流を用いて推力を発生可能な推進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は気流発生装置、気体昇圧装置、及び、推進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば送風、昇圧、推進のような様々な目的や用途で利用可能な気流を発生させるための気流発生装置が知られている。気流の発生方式の一つとして、放電によって気体からイオンを生成し、当該イオンを電圧印加された電極間に生じる電場で加速させることで運動エネルギーを与えることにより、気流(イオン風)を発生させるものがある。特許文献1には、このように放電によって生成されたイオンを利用することで発生させた気流を利用した送風装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、気体からイオンを生成し、電圧が印加された電極間で加速することで気流を発生可能な気流発生装置のエネルギー効率ηは、次式で表される。
η=E_mech/E_elec=E_mech/(E_ion+E_loss_ion+E_mech+E_loss_mech) (1)
ここでE_ionはイオンを生成するためのイオン化エネルギーであり、E_loss_ionはイオン生成に伴う損失エネルギーであり、E_mechは電極間に印加された電圧によってイオンに付与される運動エネルギーであり、E_loss_mechは電極への電圧印加に伴う損失エネルギーである。
【0005】
一般的に、イオン生成時に必要なエネルギーには、イオン化エネルギーE_ionに加えて、少なからず損失エネルギーE_loss_ionが含まれる。この損失エネルギーE_loss_ionとしては、例えば、(i)イオン生成の際にイオン化エネルギーとして消費されず熱(損失)に変換されるエネルギーや、(ii)生成されたイオンが電子と再結合することで実質的に無駄になってしまうイオン化エネルギーなどがある。上記特許文献1のように、放電によってイオンを生成する方式では、このような損失エネルギーE_loss_ionは、イオン化エネルギーE_ionに比べて非常に大きくなってしまう。そのため上記(1)式で示されるエネルギー効率ηは高くない(一般的には数%程度である)。
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、良好なエネルギー効率で気流を発生可能な気流発生装置、気体昇圧装置、及び、推進装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係る気流発生装置は上記課題を解決するために、
第一電極と、
気流の流路に沿って前記第一電極より下流側に、前記第一電極に対向するように配置された少なくとの1つの第二電極と、
前記第一電極及び前記第二電極の間に電磁波を照射するための電磁波照射装置と、
前記第一電極及び前記第二電極の間に電圧を印加するための電源と、
を備える。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係る気体昇圧装置は上記課題を解決するために、
本開示の少なくとも一実施形態に係る気流発生装置によって発生される気流を用いて、
気体を昇圧可能である。
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態に係る推進装置は上記課題を解決するために、
本開示の少なくとも一実施形態に係る気流発生装置によって発生される気流を用いて推力を発生可能である。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、良好なエネルギー効率で気流を発生可能な気流発生装置、気体昇圧装置、及び、推進装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る気流発生装置を示す概略構成図である。
【
図3C】
図3Bの電極部の近傍を部分的に表面外側から示す平面図である。
【
図4】他の実施形態に係る気流発生装置を示す概略構成図である。
【
図5】他の実施形態に係る気流発生装置を示す概略構成図である。
【
図6】他の実施形態に係る気流発生装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0013】
図1は一実施形態に係る気流発生装置1Aを示す概略構成図である。気流発生装置1Aは、発生すべき気流が通過可能な流路2を有する。
図1では、流路2として、例えば配管やダクトのように、周囲を壁面によって囲まれることで気流が通過可能な内部空間として規定される。この内部空間は、全周にわたって壁面によって囲まれることにより、外部から隔離された閉空間であるが、一部が外部に開放されていてもよい。また
図1では、流路2がストレート形状を有する場合を例示しているが、流路2は湾曲していてもよいし、屈曲していてもよい。
尚、以下の説明では、流路2において気流の流れ方向を基準として、適宜、
図1の左方を上流側と称し、右方を下流側と称する。
【0014】
気流発生装置1Aは、第一電極4及び第二電極6を有する。これらの電極は、例えば金属のような導電性材料によって構成される。第二電極6は、第一電極4より下流側に対向するように配置される。第一電極4及び第二電極6は、流路2の延在方向に沿って、互いに所定の距離Lを隔てて配置される。
【0015】
ここで第一電極4及び第二電極6の具体的構成について説明する。
図2は
図1の第一電極4を単体で示す斜視図である。
【0016】
第一電極4は、導電性材料からなるメッシュ構造を有する。このメッシュ構造は、
図1に示すように、第一電極4が、その面を流路2に対して交差するように配置された際に、流路2を流れる気流が通過可能な隙間を有する。本実施形態では、メッシュ構造は、互いに略直交する格子形状に構成されている。
【0017】
尚、第二電極6の構成については、
図2に示す第一電極4と同様であるため詳述を省略する。但し、第一電極4及び第二電極6の構成は同一である場合に限られず、本発明が成立する限りにおいて、互いに異なる構成を有してもよい。
【0018】
第一電極4及び第二電極6の間には、電源8によって電圧Vが印加可能である。
図1に示すように、流路2に配置された第一電極4及び第二電極6は、それぞれ電源8に接続される。電源8は直流電圧源であり、流路2において上流側に配置される第一電極4が正極、下流側に配置される第二電極6が負極になるように接続される。電源8がON駆動されると、第一電極4及び第2電極6の間には電源8によって電圧Vによって電場が形成される。この電場は、後述するように、第一電極4及び第二電極6の間で生成されたイオンを下流側に向けて加速するために用いられる。
【0019】
また気流発生装置1Aは、電磁波照射装置10を有する。電磁波照射装置10は、所定の波長を有する電磁波を照射するための装置であり、特に、第一電極4及び第二電極6の間に電磁波を照射可能に配置される。電磁波照射装置10からの電磁波は、第一電極4及び第二電極6の間に存在する気体分子に照射されることにより、当該気体分子にイオン化エネルギーが付与されることによりイオン生成(光イオン化(光電離))が行われる。
【0020】
電磁波照射装置10から照射される電磁波は、気体に含まれる分子のイオン化エネルギーに相当するエネルギー、又は、イオン化エネルギーより高いエネルギーを有する。すなわち、電磁波照射装置10から照射される電磁波は、光電離可能な電磁波である。
【0021】
本実施形態では、流路2には空気が存在しており、空気に含まれる酸素をイオン化対象とする。この場合、電磁波照射装置10は、酸素の吸収波長である約103nm以下の波長λを有する電磁波によってイオン化エネルギーを付与する。電磁波は、当該波長λを有する単波長波であってもよいし、当該波長λを中心とした少なからずブロードな波長分布を有する波であってもよい。
【0022】
イオン化対象とする気体分子は酸素(O2)に限られず、電磁波照射装置10によって照射される電磁波の波長は、これらの気体分子に対応するように設定される。イオン化対象となる気体分子の他の例としては、例えば、窒素(N2)やアルゴン(Ar)のような希ガスであってもよい。
【0023】
電磁波照射装置10は、このような電磁波を出力するための構成として、レーザ光を発生するためのレーザ源12と、レーザ光の波長を変換するための波長変換部14とを備えてもよい。この場合、レーザ源12で発生されたレーザ光の波長は、波長変換部14によってイオン生成に適した値に変換されることで、イオン生成に適した電磁波が出力可能である。より具体的には、レーザ源12として、イオン生成に適した波長を有する光等の電磁波を発生可能なエキシマレーザを用いることができる。例えば、波長λ=308nmを有するレーザ光を発生可能なエキシマレーザを用いた場合、レーザ源12では波長λ=308nmを有するレーザ光が発生され、当該レーザ光を、波長変換部14である非線形結晶(LBO結晶等)によって上記波長に変換することで、イオン生成のための電磁波を得ることができる。
【0024】
図1では、電磁波照射装置10は、流路2の延在方向に沿って見た場合に、第一電極4及び第二電極6の間に配置され、流路2に対して略垂直に電磁波が照射可能である。電磁波照射装置10から出力された電磁波は、第一電極4及び第二電極6に存在する空気に含まれる酸素にイオン化エネルギーを付与することにより、酸素分子から電子が分離されることにより、イオン(陽イオン)が生成される。
【0025】
第一電極4及び第二電極6の間には、前述したように電源8によって印加される電圧Vによって電場Eが生じる。そのため、電磁波の照射によって生成された正電荷を有するイオンは、電場Eによって負極である第二電極6に引き寄せられる。これにより、第一電極4及び第二電極6の間には、下流側に向かうイオン風が形成され、流路2の上流側と下流側との間に圧力差が生じ、上流側から下流側に向かう気流が発生される。
【0026】
第二電極6に引き寄せられた正電荷を有するイオンは第二電極6によって捕捉されるとともに、イオン化の際に生じた負電荷を有する電子は、陽極である第一電極4によって捕捉される。これにより、陽極である第一電極4から、電源8を介して、負極である第二電極6に向けて電流Iが流れる。
【0027】
また電磁波照射装置10は、第一電極4及び第二電極6の間における電磁波の照射位置が、第二電極6より第一電極4に近くになるように電磁波を照射してもよい。イオン化の際に生じる電子は負電荷を有するため、電場Eによって上流側に向かう流れを形成する。これは、上流側から下流側に向かう気流とは逆向きであり、気流を弱める抵抗となってしまう。本実施形態では、
図1に示すように、電磁波照射装置10による電磁波の照射位置が、第一電極4のすぐそばになるように構成される。これにより、イオン化で生じた電子を第一電極4によって良好に回収でき、電子によって気流が弱められることを抑制できる。
【0028】
また電磁波照射装置10による電磁波の照射は、間欠的に行われてもよい。電磁波の照射を連続的に行う場合、電磁波によってイオン化エネルギーが付与されることで生成されたイオンが電子と再結合してしまう場合がある。これに対して、電磁波の照射を間欠的に行うことで、このようなイオンと電子との再結合を抑制できる。その結果、電磁波の照射によるイオン生成におけるエネルギー損失を抑え、エネルギー効率を向上できる。
【0029】
図1に示す構成では、流路2の圧力が比較的低い条件下では、電磁波照射装置10から照射される電磁波の減衰が少なく、電磁波が流路2の幅方向に沿った広い範囲に到達することにより、十分なイオン生成が可能である。一方で、例えば、流路2の圧力が大気圧程度の条件下では、電磁波照射装置10から照射される電磁波は短い距離(例えば波長103nmの光の場合には数mm程度)で減衰するため、電磁波照射装置10の近傍である流路2の上端壁近くでしかイオン生成ができないという課題がある。
【0030】
図3Aは
図1の変形例であり、
図3Bは
図3Aの電磁波放出部10aの拡大図の例であり、
図3Cは
図3Bの電極部10a2の近傍を部分的に表面外側から示す平面図である。この変形例では、電磁波照射装置10は、流路2の幅方向に沿って配置された複数の電磁波放出部10aにおいて、それぞれ電磁波の照射が行われる。そのため、流路2の圧力が大気圧程度であることにより、電磁波の減衰が比較的大きい場合であっても、複数の電磁波放出部10aの表面近傍において電磁波によるイオン生成が可能である。
【0031】
また
図3Bに示すように、電磁波放出部10aは発生される気流に対して抵抗が少ない翼形状の本体部10a1を有しており、その表面の一部から電磁波を放出するための窓10a3と、その窓10a3の気流側に部分的に窓10a3を覆う電極部10a2とを有する。
図3Cに示すように、電極部10a2は、例えば、網目状や縞状を有する。この実施形態では、本体部10a1のうち上下の表面上には一対の窓10a3と電極部10a2とが設けられる。窓10a3は、本体部10a1の表面に沿って延在することにより、仮に電磁波の減衰が比較的大きい場合であっても、その表面の広い範囲にわたって電磁波によるイオン生成が可能である(
図3Bでは、イオン生成が可能な表面近傍の領域を符号10bで示している)。また電極部10a2は正電位が印加されることで、電離によって生じた電子を取り込む。このとき電極部10a2は、イオン生成が行われる位置(符号10bを参照)に近いため、効率的に空間から電子を捕捉し、空間から電子を除去することができる。
【0032】
また電磁波放出部10aは、その表面に網目形状の電極を追加付与することで、イオン化によって生じる電子を除去し、イオン化によって生成されたイオンの再結合を抑制してもよい。また電磁波放出部10aは、流路2の壁面も設置されてもよい。
【0033】
続いて
図4は他の実施形態に係る気流発生装置1Bを示す概略構成図である。尚、
図4に示す気流発生装置1Bでは、前述の気流発生装置1Aと対応する構成については共通の符号を付しており、特段の記載がない限りにおいて、重複する説明は適宜省略する。
【0034】
気流発生装置1Bは、気流を発生させる対象となる流路2として、外部に開放された開空間を取り扱う。このような開空間である流路2に対しても、前述の気流発生装置1Aと同様の原理によって、第一電極4及び第二電極6の間に電磁波を照射することによりイオンを生成し、電場Eによる加速によって気流を発生させることができる。
【0035】
また第一電極4及び第二電極6は、発生される気流に対して抵抗が少ない翼形状を有してもよい。
図4では第一電極4及び第二電極6の両方が翼形状を有する場合を例示しているが、いずれか一方のみが翼形状を有してもよい。また第一電極4又は第二電極6の少なくとも一方が、前述の気流発生装置1Aの電極が有するメッシュ構造のような他の構成を有してもよい。
【0036】
尚、第一電極4や第二電極6に翼形状を採用する場合には、その角度を調整することにより、流路2に所定の流れを形成するようにしてもよい。例えば、翼形状を有する第一電極4や第二電極6の角度を調整することにより、流路2に旋回流のような気流を発生させることができる。
【0037】
続いて
図5は他の実施形態に係る気流発生装置1Cを示す概略構成図である。尚、
図5に示す気流発生装置1Cでは、前述の気流発生装置1Aと対応する構成については共通の符号を付しており、特段の記載がない限りにおいて、重複する説明は適宜省略する。
【0038】
気流発生装置1Cは、前述の第二電極6を複数備える。本実施形態では、気流発生装置1Cが2つの第二電極6を備えており、以下の説明では、これらの第二電極6を区別する際には、適宜、符号6a及び6bで示す。
【0039】
第二電極6a及び6bは、第一電極4に対する相対的位置が互いに異なるように配置される。電源8は、第一電極4と、第二電極6a及び6bのうち選択されたいずれか一方との間に電圧Vを印加可能である。例えば、第一電極4と第二電極6aとの間に電圧Vを印加した場合には、第一電極4と第二電極6aとの間を含む第一流路2aに対して気流を発生させることができる。一方、第一電極4と第二電極6bとの間に電圧Vを印加した場合には、第一電極4と第二電極6bとの間を含む第二流路2bに対して気流を発生させることができる。
【0040】
このように気流発生装置1Cでは、第一電極4との間に電圧Vを印加する第二電極6a又は6bのいずれか一方を選択することで、気流を発生させる流路を変更することができる。言い換えると、第一電極4との間で電圧Vを印加する第二電極を選択することにより、流路を切り替えることができる。
【0041】
尚、電源8は、第二電極6a及び6bの両方に対して、第一電極4との間に電圧Vを印加可能であってもよい。この場合、第一電極4及び第二電極6aとの間を含む第一流路2aと、第一電極4及び第二電極6bとの間を含む第二流路2bとに、それぞれ同時に気流を発生させることができる。
【0042】
続いて
図6は他の実施形態に係る気流発生装置1Dを示す概略構成図である。尚、
図6に示す気流発生装置1Dでは、前述の気流発生装置1Cと対応する構成については共通の符号を付しており、特段の記載がない限りにおいて、重複する説明は適宜省略する。
【0043】
気流発生装置1Dでは、第二電極6は、第一電極4に対する相対的位置を移動可能である。
図6では、第二電極6は、前述の気流発生装置1Cにおいて第二電極6a及び6bが配置された位置に移動可能である。これにより、第二電極6の数を増やすことなく、第二電極6の移動によって、異なる流路2a及び2bを実現可能である。特に、第二電極6が移動可能な範囲において流路2を自由に変更することができる。
【0044】
以上説明したように上記各実施形態によれば、第一電極4及び第二電極6の間に電磁波照射装置10によって電磁波を照射することにより、当該領域にある気体にイオン化エネルギーが付与されることによって陽イオンが生成される。このような電磁波の照射によるイオン化は、放電によるイオン生成に比べて熱損失が少なく、エネルギー効率が高い。生成された陽イオンは、第一電極4及び第二電極6の間に印加される電圧Vによって生じる電場Eによって、流路2に沿って加速される。その結果、加速された陽イオンによって、流路2の上流側と下流側との間に圧力差が生じ、良好なエネルギー効率で気流を発生することができる。
【0045】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0046】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0047】
(1)一態様に係る気流発生装置は、
第一電極と、
気流の流路に沿って前記第一電極より下流側に、前記第一電極に対向するように配置された少なくとの1つの第二電極と、
前記第一電極及び前記第二電極の間に電磁波を照射するための電磁波照射装置と、
前記第一電極及び前記第二電極の間に電圧を印加するための電源と、
を備える。
【0048】
上記(1)の態様によれば、第一電極及び第二電極の間に電磁波照射装置によって電磁波を照射することにより、当該領域にある気体にイオン化エネルギーを付与することによって陽イオンが生成される。このような電磁波の照射によるイオン化は、放電によるイオン生成に比べて熱損失が少なく、エネルギー効率が高い。生成された陽イオンは、第一電極及び第二電極の間に印加される電圧によって生じる電場によって、流路に沿って加速される。その結果、加速された陽イオンによって、流路の上流側と下流側との間に圧力差が生じ、良好なエネルギー効率で気流を発生することができる。
【0049】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記第一電極は正極であり、
前記第二電極は負極である。
【0050】
上記(2)の態様によれば、上流側に配置された正極と、下流側に配置された負極との間に印加される電場によって、電磁波の照射によって生成された陽イオンを、流路に沿って効果的に加速させることができる。これにより、流路の上流側と下流側との間に、気流を発生させるための圧力差を好適に形成できる。
【0051】
(3)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記電磁波は、前記気体に含まれる分子のイオン化エネルギーに相当するエネルギー、又は、前記イオン化エネルギーより高いエネルギーを有する。
【0052】
上記(3)の態様によれば、電磁波照射装置からイオン化エネルギーに相当するエネルギー、又は、イオン化エネルギーより高いエネルギーを有する電磁波が照射される。これにより、電磁波が照射された気体がイオン化されることにより、気流を発生させるための陽イオンを好適に生成できる。
【0053】
(4)他の態様では、上記(1)から(3)のいずれか一態様において、
前記電磁波照射装置は、前記第一電極及び前記第二電極の間における前記電磁波の照射位置が、前記第二電極より前記第一電極に近くになるように前記電磁波を照射する。
【0054】
上記(4)の態様によれば、電磁波の照射位置が、第二電極より第一電極に近くなるように設定される。これにより、電磁波の照射によって陽イオンを生成する際に発生する電子を、第一電極によって好適に回収できる。
【0055】
(5)他の態様では、上記(1)から(4)のいずれか一態様において、
前記電磁波照射装置は、前記電磁波を間欠的に照射する。
【0056】
上記(5)の態様によれば、電磁波の照射を間欠的に行うことで、電磁波を連続的に照射した場合に比べて、イオン化によって生じたイオンと電子とが再結合することを抑制できる。その結果、電磁波の照射によるイオン生成におけるエネルギー損失を抑え、エネルギー効率を向上できる。
【0057】
(6)他の態様では、上記(1)から(5)のいずれか一態様において、
前記第一電極又は前記第二電極の少なくとも一方は翼形状を有する。
【0058】
上記(6)の態様によれば、電位が印加される電極の形状が翼形状とされる。これにより、電極間でイオンが加速されることで発生する気流に対して、電極が抵抗となりにくく、気流を効果的に発生させることができる。
【0059】
(7)他の態様では、上記(1)から(6)のいずれか一態様において、
前記流路は、壁面によって囲まれた閉空間である。
【0060】
上記(7)の態様によれば、壁面によって囲まれた閉空間として規定される流路において、電磁波の照射によって生成されたイオンを加速させることで、気流を好適に発生できる。
【0061】
(8)他の態様では、上記(1)から(6)のいずれか一態様において、
前記流路は、外部に開放された開空間である。
【0062】
上記(8)の態様によれば、外部に開放された開空間として規定される流路において、電磁波の照射によって生成されたイオンを加速させることで、気流を好適に発生できる。
【0063】
(9)他の態様では、上記(1)から(8)のいずれか一態様において、
前記少なくとも1つの第二電極は、前記第一電極に対する相対的位置が互いに異なる複数の電極を含み、
前記電源は、前記第一電極と、前記複数の電極のいずれか一方との間に前記電圧を印加可能である。
【0064】
上記(9)の態様によれば、第一電極に対して互いに異なる相対的位置を有する複数の第二電極を備え、第一電極といずれか一方の第二電極との間に電圧が印加される。これにより、いずれの第二電極を選択するかに応じて、気流を発生させる流路を変更することができる。
【0065】
(10)他の態様では、上記(1)から(9)のいずれか一態様において、
前記第二電極は、前記第一電極に対する相対的位置を移動可能である。
【0066】
上記(10)の態様によれば、第一電極に対する第二電極の相対的位置移動することにより、第一電極及び第二電極との間で生成・加速されるイオンによって発生する気流の流路を変更することができる。
【0067】
(11)他の態様では、上記(1)から(10)のいずれか一態様において、
前記電磁波照射装置は、
レーザ光を発生するためのレーザ源
もしくは、
レーザ光を発生するためのレーザ源と、
レーザ光の波長を変換するための波長変換部と
を備える。
【0068】
上記(11)の態様によれば、電磁波照射装置では、レーザ源から発生するレーザ光の波長をイオン生成に適した値に変換することで、イオン生成に適した電磁波を照射可能である。
【0069】
(12)他の態様では、上記(1)から(11)のいずれか一態様において、
前記気体は空気である。
【0070】
上記(12)の態様によれば、気体である空気に電磁波を照射することで生成される陽イオンを、第一電極及び第二電極の間に印加される電圧によって加速させることで、好適に気流を発生させることができる。
【0071】
(13)一態様に係る気体昇圧装置は、
上記(1)から(12)のいずれか一態様に係る気流発生装置によって発生される気流を用いて、気体を昇圧可能である。
【0072】
上記(13)の態様によれば、上記の気流発生装置で発生させた気流を用いて、気圧を昇圧するための気体昇圧装置を実現できる。
【0073】
(14)一態様に係る推進装置は、
上記(1)から(12)のいずれか一態様に係る気流発生装置によって発生される気流を用いて推力を発生可能である。
【0074】
上記(14)の態様によれば、上記の気流発生装置で発生させた気流を用いて、推力を発生可能な推力装置を実現できる。
【符号の説明】
【0075】
1A~1D 気流発生装置
2 流路
2a 第一流路
2b 第二流路
4 第一電極
6(6a、6b) 第二電極
8 電源
10 電磁波照射装置
10a 電磁波放出部
10a1 本体部
10a2 電極部
10a3 窓
12 レーザ源
14 波長変換部