(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165345
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/46 20240101AFI20241121BHJP
A61B 6/50 20240101ALI20241121BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A61B6/03 360P
A61B6/03 375
A61B6/03 370F
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081469
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】山根 俊瑞
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA24
4C093AA26
4C093CA15
4C093FF24
4C093FF34
4C093FF37
4C093FF50
(57)【要約】
【課題】差分画像の生成に用いる画像を効率的に選択する。
【解決手段】画像処理装置において、第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得する第1画像取得手段と、第1画像データと比較を行うための比較画像データを取得する比較画像取得手段であって、第1の検査の検査日時および第1画像データの造影状態に基づいて算出される、第1画像データと比較画像データの候補とを含む組み合わせに対する優先度に応じて、比較画像データを取得する比較画像取得手段と、を配する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得する第1画像取得手段と、
前記第1画像データと比較を行うための比較画像データを取得する比較画像取得手段であって、前記第1の検査の検査日時および前記第1画像データの造影状態に基づいて算出される、前記第1画像データと前記比較画像データの候補とを含む組み合わせに対する優先度に応じて、前記比較画像データを取得する比較画像取得手段と、を備える画像処理装置。
【請求項2】
取得された、前記第1画像データと、前記比較画像データとの差分画像データを取得する差分画像取得手段をさらに備える、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記差分画像取得手段は、取得した前記第1画像データと、前記比較画像データとの差分演算により差分画像データを算出することで、前記差分画像データを取得する、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記差分画像取得手段は、互いに異なる算出方法である第1の差分画像算出方法および第2の差分画像算出方法の少なくともいずれかの方法を前記比較画像データに基づいて選択し、選択された差分画像算出方法を用いて、前記差分画像データを算出する、請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第1の差分画像算出方法および前記第2の差分画像算出方法は、それぞれ互いに特性の異なる位置合わせ処理を含み、前記位置合わせ処理を用いた前記第1画像データと前記比較画像データとの位置合わせの結果に基づいて前記差分画像データを算出する、請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記優先度を設定するための優先度設定手段をさらに備える、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記優先度設定手段は、前記第1の検査を行った第1の日時と、前記比較画像データを得るために行った第2の日時との日時差が所定の値よりも大きい比較画像データと前記第1画像データとを含む組み合わせの優先度を、前記日時差が前記所定の値よりも小さい比較画像データと前記第1画像データとを含む組み合わせの優先度よりも高く設定する、請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記優先度設定手段は、前記第1の検査を行った第1の日時と、前記比較画像データを得るために行った第2の日時との日時差が所定の値よりも大きい比較画像データを含む組み合わせの場合には、前記第1画像データとの造影状態の差異が小さい比較画像データを含む組み合わせの優先度を、前記第1画像データとの造影状態の差異が大きい比較画像データを含む組み合わせの優先度よりも高く設定する、請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記優先度設定手段は、前記第1の検査を行った第1の日時と、前記比較画像データを得るために行った第2の日時との日時差が所定の値以下の比較画像データを含む組み合わせの場合には、前記第1画像データとの造影状態の差異が大きい比較画像データを含む組み合わせの優先度を、前記第1画像データとの造影状態の差異が小さい比較画像データを含む組み合わせの優先度よりも高く設定する、請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記優先度設定手段は、検査目的に基づいて優先度を設定する、請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項11】
表示部に前記第1画像データと、選択された前記比較画像データと、を含む画像ペアの表示処理を行う表示制御手段をさらに有する、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
表示部に前記第1画像データと、選択された前記比較画像データと、を含む画像ペアの表示処理を行う表示制御手段をさらに備え、
前記表示制御手段は、前記差分画像データの取得を行うか否かの確認画面を前記表示部に表示させる、請求項2乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記表示制御手段は、前記第1画像データと、前記比較画像データとを対比可能に表示させる、請求項11に記載の画像処理装置。
【請求項14】
表示部に前記第1画像データと、選択された前記比較画像データと、を含む画像ペアの表示処理を行う表示制御手段をさらに備え、
前記表示制御手段は、前記第1画像データと、前記比較画像データと、前記差分画像データとを対比可能に表示させる、請求項2乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記表示制御手段は、前記優先度に対応する情報を表示させる、請求項11に記載の画像処理装置。
【請求項16】
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得する第1画像取得手段と、
前記第1画像データと比較を行うための、比較画像データを取得する比較画像取得手段と、を備え、
前記比較画像取得手段は、前記第1の検査より過去の検査である第2の検査により前記被検体を撮影した画像データである第2画像データを比較画像データとして取得することを試行し、
前記第2画像データが取得できなかった場合に、前記第1画像データと造影状態の異なる画像データである第3画像データを比較画像データとして取得する、画像処理装置。
【請求項17】
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得する第1画像取得手段と、
前記第1画像データと比較を行うための、比較画像データを取得する比較画像取得手段と、を備え、
前記比較画像取得手段は、前記第1画像データと造影状態の異なる画像データである第2画像データを比較画像データとして取得することを試行し、
前記第2画像データが取得できなかった場合に、前記第1の検査より過去の検査である第3の検査により前記被検体を撮影した画像データである第3画像データを比較画像データとして取得する、画像処理装置。
【請求項18】
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得する第1画像取得手段と、
前記第1の検査において前記第1画像データとは異なる造影条件で前記被検体を撮影した画像データを第1比較画像データとして取得し、前記第1の検査とは異なる検査日に行った第2の検査により前記被検体を撮影した画像データを第2比較画像データとして取得する比較画像取得手段と、
前記第1画像データと前記第1比較画像データとの差分を表す第1差分画像データと、前記第1画像データと前記第2比較画像データとの差分を表す第2差分画像データとを取得する差分画像取得手段と、
前記第1差分画像データと前記第2差分画像データのそれぞれを評価する評価手段と、を備え、
前記第1差分画像データと前記第2差分画像データから、前記評価の結果のよい差分画像データを選択する、画像処理装置。
【請求項19】
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データの候補の夫々と、前記第1画像データと比較を行うための比較画像データの候補の夫々と、を含む組み合わせに対する優先度を取得する優先度取得手段と、
前記優先度に応じて、前記第1画像データの候補から前記第1画像データを取得する第1画像取得手段と、
前記優先度に応じて、前記比較画像データの候補から前記比較画像データを取得する比較画像取得手段と、
を備える画像処理装置。
【請求項20】
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得することと、
前記第1画像データと比較を行うための比較画像データを取得することであって、前記第1の検査の検査日時および前記第1画像データの造影状態に基づいて算出される、前記第1画像データと前記比較画像データの候補とを含む組み合わせに対する優先度に応じて、前記比較画像データを取得することと、を含む画像処理方法。
【請求項21】
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得することと、
前記第1画像データと比較を行うための、比較画像データを取得することと、を含み、
前記比較画像データを取得することでは、前記第1の検査より過去の検査である第2の検査により前記被検体を撮影した画像データである第2画像データを比較画像データとして取得することを試行し、
前記第2画像データが取得できなかった場合に、前記第1画像データと造影状態の異なる画像データである第3画像データを比較画像データとして取得する、画像処理方法。
【請求項22】
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得することと、
前記第1画像データと比較を行うための、比較画像データを取得することと、を含み、
前記比較画像データを取得することでは、前記第1画像データと造影状態の異なる画像データである第2画像データを比較画像データとして取得することを試行し、
前記第2画像データが取得できなかった場合に、前記第1の検査より過去の検査である第3の検査により前記被検体を撮影した画像データである第3画像データを比較画像データとして取得する、画像処理方法。
【請求項23】
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得することと、
前記第1の検査において前記第1画像データとは異なる造影条件で前記被検体を撮影した画像データを第1比較画像データとして取得し、前記第1の検査とは異なる検査日に行った第2の検査により前記被検体を撮影した画像データを第2比較画像データとして取得することと、
前記第1画像データと前記第1比較画像データとの差分を表す第1差分画像データと、前記第1画像データと前記第2比較画像データとの差分を表す第2差分画像データとを取得することと、
前記第1差分画像データと前記第2差分画像データのそれぞれを評価することと、を含み、
前記第1差分画像データと前記第2差分画像データから、前記評価の結果のよい差分画像データを選択する、画像処理方法。
【請求項24】
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データの候補の夫々と、前記第1画像データと比較を行うための比較画像データの候補の夫々と、を含む組み合わせに対する優先度を取得することと、
前記優先度に応じて、前記第1画像データの候補から前記第1画像データを取得することと、
前記優先度に応じて、前記比較画像データの候補から前記比較画像データを取得することと、
を含む画像処理方法。
【請求項25】
請求項20乃至24のいずれか1項に記載の画像処理方法をコンピュータで実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置、画像処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医用の分野では、コンピュータ断層撮影装置(以下、CT(Computed Tomography)装置と呼ぶ)などの種々の医用画像撮像装置(モダリティ)によって取得される画像を用いた診断が行われている。効率的な診断のためには、病変の経時的な変化や造影剤による造影効果を可視化して医師の診断を助ける技術が求められる。
【0003】
経時的な変化を可視化する技術として、経時差分画像算出技術が知られている。この技術では、異なる時刻に撮影された同一患者の2つの画像(例えば現在画像と過去画像)の位置合わせを行い、その画像間の差異を可視化した差分画像を算出している。このようにして算出された経時差分画像を表示することにより、画像間の対比を支援することができる。なお、画像間の差異の算出の基準となる検査は対象検査と称される。前述の現在画像には、対象検査で撮影された画像が対応し、過去画像には、対象検査の対象の患者と同一患者の画像で対象検査よりも過去の検査で撮影した画像が対応する。
【0004】
一方、造影剤による造影効果を可視化する技術として、造影時相間差分画像算出技術(非特許文献1)が知られている。この技術では、造影画像と非造影画像との差異を可視化することで、腫瘍や浸潤の箇所を見やすくしている。これは、癌細胞が他の細胞と比べて細胞分裂を活発に行い、酸素や栄養を多く必要とする特性を利用している。この特性により、腫瘍や浸潤は血流が多くなり、造影剤が多く取り込まれるため、他の部位よりも造影効果が強く表れる。造影時相間差分画像算出技術には、造影画像から非造影画像を減算する方法や、早期相と後期相のように時相が異なる造影画像同士の減算などを行う方法がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】瓜倉厚志「造影CT画像の特性を活かし正確な画像診断へ」 Advaned Imaging Seminar 2019(2019年5月号) インターネット<URL:https://www.innervision.co.jp/sp/ad/suite/canonmedical/sup201905/session2-1_ct3>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先述の経時差分画像算出技術を用いて腫瘍や浸潤等の病変の発生を可視化するためには、現在画像と過去画像との両方が必要となる。一方、造影時相間差分画像算出技術を用いて病変を可視化するためには、造影画像と非造影画像との両方が必要となる。従来は、過去画像や造影画像の存在の有無をユーザが確認し、複数の医用画像の中から検査目的に合致し、差分画像の生成に用いられる画像を適宜選択することが必要であった。また、その際に、経時差分画像算出処理と造影時相間差分画像算出処理とのいずれを行うかについても、画像等を考慮してその都度ユーザが選択する必要があった。このため、差分画像の生成に用いる画像の選択は、ユーザにとって煩雑な手間を要する作業となっていた。
【0007】
本開示は、上記状況に鑑みてなされたものであって、差分画像の生成に用いる画像を効率的に選択できる画像処理装置の提供をその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の一態様に係る画像処理装置は、
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得する第1画像取得手段と、
前記第1画像データと比較を行うための比較画像データを取得する比較画像取得手段であって、前記第1の検査の検査日時および前記第1画像データの造影状態に基づいて算出される、前記第1画像データと前記比較画像データの候補とを含む組み合わせに対する優先度に応じて、前記比較画像データを取得する比較画像取得手段と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、差分画像の生成に用いる画像を効率的に選択できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る画像処理装置の全体構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図1に示す画像処理装置において実行される全工程を示すフローチャートである。
【
図3】画像ペアの生成処理における各工程を示すフローチャートである。
【
図4(a)】画像ペアの決定方法を説明する図であって、日時を変えて造影画像と非造影画像とを主と記した場合を模式的に示す図である。
【
図4(b)】画像ペアの決定方法を説明する図であって、画像ペアと優先度との関係を示す図である。
【
図4(c)】画像ペアの決定方法を説明する図であって、画像ペアと優先度との関係を示す図である。
【
図5】第1の実施形態の変形例2に係る画像処理において実行される画像ペアの生成処理における各工程を示すフローチャートである。
【
図6】第2の実施形態に係る画像処理装置において実行される差分画像の生成処理における各工程を示すフローチャートである。
【
図7】差分画像生成処理における各工程を示すフローチャートである。
【
図8】第3の実施形態に係る画像処理装置の全体構成を模式的に示す図である。
【
図9】
図8に示す画像処理装置において実行される全工程を示すフローチャートである。
【
図10】評価値付きの差分画像生成処理における各工程を示すフローチャートである。
【
図11】第4の実施形態に係る画像処理装置の全体構成を模式的に示す図である。
【
図12】
図11に示す画像処理装置において実行される全工程を示すフローチャートである。
【
図13】確認ダイアログの表示処理における各工程を示すフローチャートである。
【
図14】画像一覧の表示の際のコールバック処理における各工程を示すフローチャートである。
【
図15】画像表示処理における各工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して、本開示をその好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本開示は図示された構成に限定されるものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが本開示に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。また、図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<第1の実施形態>
本実施形態に係る画像処理装置は、対象患者の複数の画像間の比較により、対象患者の病変を可視化するための差分画像を取得する。画像処理装置は、対象患者の経時差分画像、もしくは造影時相間差分画像のうち、病変を可視化するのに適切な差分画像の生成に用いる画像を選択的に取得する。なお、本開示において、経時差分画像は、現在画像と過去画像との間の差分画像である。また、造影時相間差分画像は、造影時相画像と非造影時相画像との間の差分画像や、早期相と後期相のように時相が異なる造影画像同士の差分画像である。本開示は、差分画像生成に用いる画像の選択方法に係るが、差分画像の生成も、本開示の一態様に含まれる。
【0013】
図1は、第1の実施形態に係る画像処理装置10の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、画像処理装置10は、処理回路11と、通信インターフェース12と、記憶回路13と、ディスプレイ14と、入力インターフェース15と、接続部16と、を有している。また、画像処理装置10は、図示しないネットワークを介して、医用画像診断装置(モダリティ)や、医用画像保管装置、各部門システム等に通信可能に接続されている。
【0014】
医用画像診断装置は、X線CT(Computed Tomography)装置、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置、X線診断装置などを含む。医用画像保管装置は、PACS(Picture Archiving and Communication System)等によって実現される。そして、医用画像診断装置が撮影した医用画像をDICOM(Digital
Imaging and Communications in Medicine)に準拠した形式で保管する。各部門システムは、例えば、病院情報システム(HIS:Hospital Information System)や、放射線情報システム(RIS:Radiology Information System)を含む。また、診断レポートシステムや、臨床検査情報システム(LIS:Laboratory Information System)などの種々のシステムも各部門システムに含まれる。
【0015】
本実施形態に係る処理回路11は、制御機能11aと、画像取得機能11bと、比較画像取得機能11cと、差分画像取得機能11dと、優先度設定機能11eとを備える。そして、入力インターフェース15を介してユーザから受け付けた入力操作に応じて、これら機能を実行して、画像処理装置10を制御する。ここで、画像取得機能11bは、画像取得手段の一例である。また、比較画像取得機能11cは、比較画像取得手段の一例である。また、差分画像取得機能11dは、差分画像取得手段の一例である。また、優先度設定機能11eは、優先度設定手段の一例である。
【0016】
制御機能11aは、入力インターフェース15を介した操作に応じて、種々のGUI(Graphical User Interface)や、種々の表示情報を生成して、ディスプレイ14に表示する制御を実行する。また、制御機能11aは、通信インターフェース12を介して、図示しないネットワーク上の装置やシステムとの情報の送受信を制御する。具体的には、制御機能11aは、ネットワークに接続された医用画像診断装置や、医用画像保管装置などからの、3次元の医用画像(ボリュームデータ)の取得を制御する。また、制御機能11aは、ネットワークに接続された外部システムからの被検体に関する情報の取得を制御する。また、制御機能11aは、ネットワーク上の装置やシステムへの処理結果の出力を制御する。
【0017】
画像取得機能11bは、医用画像診断装置等により被検体を撮影した画像データを、医用画像保管装置等から取得する。その際、画像データの取得は、画像の参照アドレス情報(URL(Uniform Resource Locator)や各種UID(Unique IDentifier)、Path文字列等)に基づいて行われる。なお、画像取得機能11bによる処理については、後に詳述する。
【0018】
比較画像取得機能11cは、対象検査の画像と比較するための画像(比較画像)を、後述する対象患者の画像リストから選び出す。なお、比較画像取得機能11cによる処理については、後に詳述する。
【0019】
差分画像取得機能11dは、対象検査の画像と比較画像との間の差分画像を取得する。なお、差分画像取得機能11dによる処理については、後に詳述する。
【0020】
優先度設定機能11eは、検査日時や検査目的を参照して、対象検査の画像と、比較対象画像として取得予定とする画像との組み合わせとして、両画像のペアの優先度を設定する。なお、優先度設定機能11eによる処理については、後に詳述する。なお、検査日時とは時刻情報を含まない検査の日付だけの情報(検査日)も含むものとする。
【0021】
上述した処理回路11は、例えば、プロセッサによって実現される。その場合に、上述した各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路13に記憶される。そして、処理回路11は、記憶回路13に記憶された各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、処理回路11は、各プログラムを読み出した状態で、
図1に示した各処理機能を有することとなる。
【0022】
なお、処理回路11は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサがプログラムを実行することによって各処理機能を実現するものとしてもよい。また、処理回路11が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散または統合されて実現されてもよい。また、処理回路11が有する各処理機能は、回路等のハードウェアとソフトウェアとの混合によって実現されても構わない。また、ここでは、各処理機能に対応するプログラムが単一の記憶回路13に記憶される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、各処理機能に対応するプログラムが複数の記憶回路に分散して記憶され、処理回路11が、各記憶回路から各プログラムを読み出して実行する構成としても構わない。
【0023】
通信インターフェース12は、画像処理装置10と、ネットワークを介して接続された他の装置やシステムとの間で送受信される各種データの伝送および通信を制御する。具体的には、通信インターフェース12は、処理回路11に接続されており、他の装置やシステムから受信したデータを処理回路11に出力する、または、処理回路11から出力されたデータを他の装置やシステムに送信する。例えば、通信インターフェース12は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface
Controller)等によって実現される。
【0024】
記憶回路13は、各種データおよび各種プログラムを記憶する。具体的には、記憶回路13は、処理回路11に接続されており、処理回路11から入力されたデータを記憶し、または記憶しているデータを読み出して処理回路11に出力する。例えば、記憶回路13は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0025】
ディスプレイ14は、各種情報および各種データを表示する。具体的には、ディスプレイ14は、処理回路11に接続されており、処理回路11から出力された各種情報および各種データを表示する。例えば、ディスプレイ14は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネル等によって実現される。
【0026】
入力インターフェース15は、ユーザから各種指示および各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インターフェース15は、処理回路11に接続されており、ユーザから受け取った入力操作を電気信号へ変換して処理回路11に出力する。例えば、入力インターフェース15は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、および表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーンによって実現される。また、該入力インターフェース15は、光学センサを用いた非接触入力インターフェース、および音声入力インターフェース等によっても実現される。なお、本明細書において、入力インターフェース15は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース15の例に含まれる。
【0027】
接続部16は、処理回路11と、通信インターフェース12と、記憶回路13と、ディスプレイ14と、入力インターフェース15とを接続するバス等である。
【0028】
図2は、第1の実施形態に係る画像処理装置10で実行される処理の全工程を示すフローチャートである。画像処理装置10は、画像処理対象を識別する対象患者IDと、対象検査IDと、検査目的と、を入力とする。そして、これら入力に基づいて、対象検査の画像データから選択した第1画像データと、それと比較するための画像データである比較画像データとを取得し、病変を可視化するための差分画像データを出力する。
【0029】
ここで、各画像データは、全て3次元のボリュームデータである。本実施形態では、対象検査はX線CT検査であり、第1画像データと比較画像データは、共にX線CT画像であるものとして説明する。ただし、本開示の実施はこれに限定されるものではなく、MRI(Magnetic Resonance Imaging)画像や超音波画像等の他のモダリティの画像データに対しても本開示は適用可能である。また、本実施形態における第1画像データと比較画像データとは、対象患者の現在画像と過去画像といった異なる検査の撮影画像であってもよいし、それ以外の組み合わせであってもよい。例えば、同一の検査で撮影した造影条件の異なる2画像(例えば造影画像と非造影画像)であってもよい。さらに例えば、非造影画像はDual-Energy CT等を用いて生成された仮想単純CT画像であってもよい。
【0030】
次に、
図2のフローチャートを参照して、本実施形態にて実行される差分画像生成の工程について説明する。例えば、
図2に示すように、本実施形態では、入力インターフェース15を介した指示操作等によって決定した、ある被検体の対象患者IDと、対象検査IDと、検査目的と、を入力として画像処理をスタートする(ステップS200)。本実施形態では、「検査目的」として、「脊柱管内浸潤の可視化」や「肝臓腫瘍の可視化」等の規定の選択肢から入力インターフェース15を介してユーザによる選択がなされ、該選択肢中のいずれがこの検査の目的であるかを示す情報が取得される。なお、ここで挙げられた検査目的は、以降の説明を容易とするための例示であって、例えば、「骨転移の可視化」、「肺転移の可視化」、および「脳腫瘍の可視化」等、公知の差分画像を用いる検査目的も選択肢中に含まれる。
【0031】
制御機能11aは、対象検査IDが示す検査(対象検査)で撮像された画像(対象検査の画像)と、対象患者IDが示す患者(対象患者)に関する過去の検査の画像を検索する。具体的には、DICOMプロトコルのC-FINDメッセージやSQLのSELECT文等を用いて、対象患者IDに紐づけられ、かつ、対象検査IDの検査日と同じか、それより過去の検査日を持つ画像データを検索し、対象患者の画像リストを取得する(ステップS201)。
【0032】
次に、優先度設定機能11eは、ステップS200で取得した検査目的に基づいて、優先度を設定するための各種パラメータを設定する(ステップS202)。具体的な例として、画像の検査日時が十分離れているかどうかを判定する際の「検査日時の日時差境界値」や、優先度を算出する際の検査日時の日時差にかける重み値である「日時重み大」と「日時重み小」や、造影状態の違い(造影差)にかける重み値である「造影重み」がある。ステップS202では、優先度設定機能11eは、これらパラメータを検査目的に応じて設定する。
【0033】
ここで、「日時重み大」は経時差分画像の生成を優先する場合に、日時差があるほど優先度を上げるようにするための重みであることから、100程度の比較的大きな値が設定される。また、「日時重み小」は造影時相間差分画像の生成を優先する場合に、日時差があるほど優先度を下げるようにするための重みであることから、-0.1程度の比較的小さな値が設定される。
【0034】
例えば、検査目的が「脊柱管内浸潤の可視化」の場合には、脊柱管内浸潤の有無が経時変化として明瞭に現れるため、経時差分画像の生成を優先することが望ましい。このため、「検査日時の日時差境界値」を所定値として1週間程度に設定し、「造影重み」の重み値を「日時重み大」の重み値よりも小さく設定する。これにより、検査日時の日時差が大きく、造影状態の差異が小さい画像ペアの優先度を高くすることができる。
【0035】
また、例えば、検査目的が「肝臓腫瘍の可視化」の場合には、肝臓腫瘍の有無が造影効果の差異として明瞭に描出されるため、造影時相間差分画像の生成を優先することが望ましい。このため、「検査日時の日時差境界値」を所定値として2日程度に設定し、「造影重み」の重み値を「日時重み大」の重み値よりも大きく設定する。これにより、同日に撮影され、かつ造影状態の差異がある画像ペアの優先度を高くすることができる。
【0036】
また、上述したどちらの検査目的であっても、「日時重み大」の重み値には「日時重み小」の重み値より十分大きな値を設定する。また、「検査日時の日時差境界値」は、例えば患者の年齢が若い場合など、腫瘍や浸潤の進行速度が速いと予測される場合には、重み値として小さい値を設定するのが望ましい。
【0037】
なお、ここでは、ユーザが検査目的に応じて、優先度を決定するパラメータ(重み値)を設定することとしているが、パラメータの設定方法はユーザによるものに限られない。例えば、検査目的、日時差、および造影差、等に応じて予め定められた重み付けの数値(重み値)がテーブルとして記憶回路13にあらかじめ保有されており、後述する優先度算出に用いる画像ペアに応じてそれらが適宜読み出されることとしてもよい。なお、ここで述べる造影差とは、造影の時相の違いを数値化したものとなる。また、優先度設定機能11eにより、患者の年齢に応じて「検査日時の日時差境界値」が自動的に設定される場合も本発明の一実施形態になりうる。患者が若い場合には、一般的に腫瘍の成長等は早いと考えられる。したがって、患者の年齢が若くなるにしたがって、「検査日時の日時差境界値」は短く設定されることが望ましい。
【0038】
次に、比較画像取得機能11cは、検査日時および造影状態の少なくともいずれか1つに基づく優先度に応じて、第1画像と、比較画像とを含む組み合わせである画像ペアのリストを取得する(ステップS203)。すなわち、比較画像取得機能11cは、対象患者の画像リストのうちの対象検査の画像から第1画像を選択し、対象患者の画像リストのうちの当該第1画像以外の画像から比較画像を選択する。
【0039】
以下に、ステップS203において実行される画像ペア生成のサブ工程について、
図3のステップS300からステップS312に至るフローチャートを参照して説明する。ステップS301において、具体的には、ステップS201で得られた画像リスト内で対象検査IDと同じ検査IDを持つ全ての画像(すなわち、対象検査の画像)のそれぞれが、第1画像の候補とされる。そして、当該第1画像の候補の情報(画像の場所、検査日時、造影状態)を対象画像の情報として、ステップS302からS310までのループ処理が比較画像取得機能11cにより実行される。
【0040】
なお、ここでは、比較画像取得機能11cが、対象患者の画像リストのうちの対象検査の画像の全てのうちから第1画像を選択する、こととしている。しかし、本実施形態はこれに限られず、例えば、ユーザが予めディスプレイ14に表示されている対象検査の画像の中から、求める差分画像に適した1または複数の画像を選択することとしてもよい。或いは、予め例えば撮影部位や再構成関数等の目的に合致する選択条件を定めておき、対象検査の画像から比較画像取得機能11cがこの選択条件に応じて1または複数の画像を選択することとしてもよい。
【0041】
実際のループ処理においては、まず、画像リストから第1画像を除いたリストを比較画像リストとして取得する(ステップS302)。次に、比較画像リスト内の全ての画像のそれぞれを比較画像の候補として、当該比較画像の候補の情報(例えば画像の場所、検査日時、造影状態)について、ステップS304からS310までをループ処理する(ステップS303)。まず、第1画像の検査日時から比較画像の検査日時を引いた日時差を算出する(ステップS304)。ここで、日時差とは検査日の差や検査時刻の差でもよい。
【0042】
次に、[第1画像が造影画像]から[比較画像が造影画像]を引くことで造影差を算出する(ステップS305)。ここで、[命題]はアイバーソンの記法であり、命題が真であるときには1、偽であるときには0とする。造影差の算出方法としては、時相の違いを数値化するものであれば他の方法、例えば造影剤投与からの経過時間の差等でも構わない。次に
、ステップS306において、日時差が「検査日時の日時差境界値」より大きい場合は、差分画像として経時差分画像を算出することを優先すると判断し、処理をステップS307へと進める。そうでない場合は、差分画像として造影時相間差分画像を算出することを優先すると判断し、処理をステップS308へと進める。
【0043】
ステップS307では、造影差が無く日時差が大きい画像ペアを優先させるように、画像ペアの優先度を算出する処理を実行する。具体的には以下の計算を行う。
優先度←日時差×日時重み大+
(1-|造影差|)×(1+[第1画像が造影画像])-
0.1×|造影差|×[第1画像が造影画像]
これによれば、第1項によって、日時差が大きい画像ペアの優先度を高くすることができる。また、日時差が同一の場合には、第2項によって造影差が無い画像ペアの優先度を高くし、さらにその中でも造影画像同士のペアの優先度を高くすることできる。日時差が同一でも造影差が有る画像ペアの場合には、第3項によって第1画像が造影画像のペアの優先度を低くすることができる。
【0044】
これによれば、画像間の相違から病変を発見する際の特異度が低い画像ペアの優先度を下げる効果がある。なお、上記の優先度算出式は、経時差分画像算出を優先する優先度算出式の一例であり、特異度の高い画像ペアの優先度を高くし、低い画像ペアの優先度を低くすることが可能であれば、これ以外の算出式を用いてもよい。
【0045】
ステップS308では、造影差が有り日時差が小さい画像ペアを優先させるように、画像ペアの優先度を算出する処理を実行する。具体的には以下の計算を行う。
優先度←日時差×(日時重み小)+造影差×造影重み
【0046】
これによれば、造影差が有る画像ペアの優先度を造影差が無い画像ペアの優先度よりも高くすることができる。また、造影差が同じ場合には、「日時重み小」が負の値なので、日時差が有る画像ペアの優先度を下げることができる。さらに、日時差が小さく造影差も無い画像ペアや、非造影画像から造影画像を引く組み合わせの画像ペアの優先度は0以下になる。なお、上記の優先度算出式は、造影時相間差分画像算出を優先する優先度算出式の一例であり、造影差が有る画像ペアの優先度を高くし、造影差が無い画像ペアの優先度低くすることが可能であれば、これ以外の算出式であってもよい。
【0047】
次に、ステップS309では、ステップS307またはステップS308において算出された優先度に基づく判定を行う。具体的には、算出された優先度が0以下の場合は、差分画像の算出には適さない画像の組み合わせと判断し、処理をステップS303に戻して次の画像ペアに関しての優先度の計算に進む。算出された優先度が0より大きい場合は、処理はステップS310へと進められる。
【0048】
ステップS310では、以上の処理により取得した第1画像の場所、比較画像の場所、および優先度を組みにした情報を、画像ペアのリストに追加する(ステップS310)。リスト追加後、フローはステップS303に戻り、ステップS302において得られている比較画像リストに基づく画像ペアの各々について優先度が求められ、適宜リストへの画像ペアの追加が行われる。
【0049】
ステップS302において得られている比較画像リストに基づく画像ペア全ての優先度の算出が終了すると、フローはステップS301に戻り、新たな第1画像についてのステップS302からS310の処理が行われる。対象検査IDと同じ検査IDを持つ全ての画像に関して画像ペアの優先度を求める処理が終了し2重ループを抜けた後、優先度をキーにして画像ペアのリストを降順にソートする(ステップS311)。
【0050】
これらの処理は、例えば、処理回路11が、制御機能11aや優先度設定機能11eや比較画像取得機能11cに対応するプログラムを記憶回路13から呼び出して実行することにより実現される。以上に説明したステップS300からステップS312の処理により、優先度の降順に並んだ画像ペアのリストが取得される。
【0051】
以上で説明したステップS203について実行された
図3に示すサブ工程の処理の詳細について、
図4(a)~4(c)に示す具体例を参照して詳しく説明する。以下、ある被検体について撮影した造影画像と非造影画像とが
図4(a)のように取得され、検査目的が「脊柱管内浸潤可視化」の場合について説明する。
【0052】
図4(a)では、同一検査IDを有する被検体について、T1(過去),T2(少し過去),T3(現在)の3時点(3つの日時)でそれぞれ検査が行われており、各検査で造影画像と非造影画像との撮影が行われている。また、T1とT2との間で被検体に浸潤や腫瘍の発生といった変化が生じており、その変化がT1とT2との各検査画像の間での差異となって表れている。さらに、T2の少し後のT3の時点でも検査が実施されており、その日時差は「検査日時の日時差境界値」の範囲内であるとする。
【0053】
まず、差分対象の検査日時T3(=13日)では、造影画像C3と非造影画像N3とが取得されているとする。また、T3より1日前の時点のT2(=12日)の時点では、造影画像C2と非造影画像N2とが取得されているとする。画像C2、C3、N2、N3の検査日時は、検査対象の検査日時T3から予め定めた「検査日時の日時差境界値」の範囲内に入っているとする。また、浸潤や腫瘍の発生時点より前に撮影された画像として、検査日時T1(=1日)で造影画像C1と非造影画像N1とが取得されているとする。
【0054】
先にも述べたように、脊柱管内浸潤の有無は経時変化として明瞭に現れるため、経時差分画像の生成を優先することが望ましい。この例の場合、検査目的が「脊柱管内浸潤可視化」なので、造影重み=1.0と小さく設定する。その結果、検査日時T3の対象検査に対する画像ペアのリストは、例えば
図4(b)の表に示すように、経時差分となる画像ペアを優先し、その中でも造影画像同士で差分を取る画像ペア(C3-C1)を最も高い優先度とするリストとなる。
【0055】
なお、この例では、造影時相間差分(C3-N3、C3-N2)の優先度が低く設定される。しかし、例えば検査目的が「肝臓腫瘍の可視化」の場合には、肝臓腫瘍の有無は造影効果の差異として明瞭に描出される。したがって、この場合には、造影重み=10000.0と大きく設定することが望ましい。このようなパラメータの設定を行った結果を、
図4(c)の表に示す。このような設定により、
図4(c)に示されるように造影時相間差分の優先度を高くすることも可能である。
【0056】
本実施形態の説明では、造影剤の有無や時相差に応じて優先度を決定する例を示したが、本発明はそれ以外にも造影剤の種類に応じて優先度を決定してもよい。例えば、肝臓癌のMRI画像診断であれば、プリモビスト造影剤を用いた検査画像を含む画像ペアの優先度を高くするようにしてもよい。具体的には、
図3のステップS307やS308で行われる優先度の算出時に用いる造影重みについて、プリモビスト造影剤を用いている場合には、1.1を乗ずることで優先度を高くするようにしてもよい。
【0057】
ステップS203において上述したサブ工程を実行することで画像ペアのリストが得られる。制御機能11aは、
図2に示すように、得られた画像ペアのリスト内の全てのペア情報(第1画像の場所、比較画像の場所)について、優先度の高いペア情報から順に、以降のステップS205からS209をループ処理として繰り返し実行する(ステップS204)。これらの処理は、例えば、処理回路11が、制御機能11aや画像取得機能11bに対応するプログラムを記憶回路13から呼び出して実行することにより実現される。
【0058】
ループ処理の中で、画像取得機能11bは、第1画像の場所から画像データを取得する(ステップS205)。具体的には、画像取得機能11bは、画像の場所に応じて、DICOMプロトコルのC-MOVE・C-STOREメッセージを用いて画像データを取得する。或いは、HTTP(HyperText Transfer Protocol)や、SMB(Server Message Block)や、ファイル入出力等を用いて画像データを取得することもできる。ここで、もし通信エラーやファイルI/Oエラー等で第1画像データの取得に失敗した場合は、処理をステップS204に戻し、画像ペアのリスト内の次のペアを処理対象としてループ処理を続行する(ステップS206)。
【0059】
次に、画像取得機能11bは、比較画像の場所から同様に画像データを取得する(ステップS207)。ここでも、もし通信エラーやファイルI/Oエラー等で比較画像データの取得に失敗した場合は、処理をステップS204に戻し、画像ペアのリスト内の次のペアを処理対象としてループ処理を続行する(ステップS208)。取得に成功した場合は、処理をステップS209に進める。
【0060】
次に、差分画像取得機能11dは、ステップS204の処理によって選択された第1画像データと比較画像データとから差分画像データを取得する(ステップS209)。具体的には、差分画像取得機能11dが差分画像算出処理を呼び出すことで差分画像の取得を実現する。ここで、差分画像算出処理は、画像処理装置10の内部で実行する以外に、クラウド等にある別の装置で実行しても構わない。差分画像データとは、第1画像データの各座標のボクセル値から、位置合わせによって対応付けられた比較画像データの対応する座標のボクセル値を引き算した結果のデータである。
【0061】
また、ステップS209において差分画像は取得しなくてもよい。第1画像と比較画像を対比可能な形で(並べて、重ねて、或いは切り替えられるようにして)表示部に表示する構成でもよい。また、表示や差分画像取得を行わず、(他の、画像表示装置や差分画像生成装置が利用できるように)画像ペアの情報を保存または出力するだけでもよい。
【0062】
これらの処理は、例えば、処理回路11が、画像取得機能11bや差分画像取得機能11dに対応するプログラムを記憶回路13から呼び出して実行することにより実現される。画像ペアのリスト内の全てのペアに関して差分画像データが得られる、或いは表示等が行われると、フローはステップS210に進められ、以上の処理が終了する。
【0063】
上述した説明では、複数の時点で、造影および非造影の両方の画像が撮影された場合の例について説明した。ただし本発明の実施はこれに限らず、より限られた画像を対象として画像ペアの生成処理を行ってもよい。
【0064】
上述した例では、過去画像(比較画像)としては、浸潤や腫瘍が発生する前に撮影された画像が必要となり、現在画像(第1画像)としては、浸潤や腫瘍が発生した後に撮影された画像が必要となる。しかし、入院や転院直後のような場合には過去画像が存在しないことがある。また、造影時相差分画像生成法では、適切な造影剤を患者に投与し、その造影効果の有無を検討したうえで、造影状態の異なる複数の画像を得ておく必要がある。しかし、患者の病状や体質(アレルギーなど)によっては造影剤を使った撮影が行えず、造影画像が存在しない場合がある。以下では、このような場合への対応について詳述する。
【0065】
このような場合の具体例として、
図4(a)において、造影画像C3とC1、非造影画像N3の3個の画像のみ存在する場合について説明する。第1画像データを画像C3とすると、画像C3とそれ以外の画像との画像ペアの優先度は、検査目的が「脊柱管内浸潤可視化」の場合、それぞれ、(C3-C1):1202.0、(C3-N3):1.0となる。このため、画像処理装置10は、比較画像として過去の検査の画像C1の取得を試み、通信エラーやファイルI/Oエラー等で取得できなかった場合には、画像C3と造影状態の異なる画像N3とを比較画像として取得する。さらに、
図4(a)において、過去の検査の画像C1が存在せず、造影画像C3と非造影画像N3の2個の画像のみ存在する場合にも、画像C3と造影状態の異なる画像N3を比較画像として取得する。
【0066】
また、検査目的が「肝臓腫瘍の可視化」の場合、優先度はそれぞれ、(C3-C1):1202.0、(C3-N3):10000.0となる。このため、画像処理装置10は、比較画像として造影状態の異なる検査の画像N3の取得を試み、通信エラーやファイルI/Oエラー等で取得できなかった場合には、画像C3の過去の検査の画像C1を比較画像として取得する。さらに、
図4(a)において、造影状態の異なる検査の画像N3が存在せず、造影画像C3と過去の画像C1との2個の画像のみ存在する場合にも、造影画像C3の過去の画像C1を比較画像として取得する。
【0067】
<第1の実施形態の変形例1>
上述した第1の実施形態では、検査目的に応じて優先度を算出し、優先度の高い画像ペアを選択したが、本変形例はこれに限られるものではない。例えば、検査目的を「脊柱管内浸潤可視化」に固定して、単純に過去の検査の画像が存在しなければ造影状態の異なる検査の画像を取得するようにしてもよい。また、検査目的を「肝臓腫瘍の可視化」に固定して、単純に造影状態の異なる検査の画像が存在しなければ過去の検査の画像を取得するようにしてもよい。
【0068】
また、検査目的に応じた処理は必ずしも必要ではない。例えば、検査目的に関わらず、過去の検査の検査画像を比較画像として優先して取得し、過去の検査画像がない場合に対象検査における造影状態の異なる検査画像を比較画像として取得する構成でもよい。あるいは、検査目的に関わらず、対象検査における造影状態の異なる検査画像を比較画像として優先して取得し、造影状態の異なる検査画像がなければ過去の検査の検査画像を比較画像として取得する構成としてもよい。
【0069】
以上のように、本実施形態に係る画像処理装置を用いることで、経時差分画像生成処理と造影時相間差分画像生成処理とを適切に切り替えることができる。これによって、入院や転院直後のように対象検査の画像と比較可能な過去画像が無い場合においても、体調不良やアレルギーのために造影画像が無い場合においても、病変を可視化するための差分画像を手間なく生成することが可能である。また、検査目的に応じて、検査日時および造影状態に基づく優先度をつけることで、病変の可視化により適した差分方法を選択することが可能である。これにより、ユーザに煩雑な手間をかけることなく病変を可視化するために適切な画像ペアを選択し、これを用いて差分画像を生成することが可能となる。
【0070】
<第1の実施形態の変形例2>
第1の実施形態では、画像ペアを生成する際の選択条件として、日時差や造影時相をパラメータとして用いた。例えば、検査目的が「脊柱管内浸潤可視化」や「肝臓腫瘍の可視化」である場合には、これらをパラメータとすることは有用である。しかし、検査目的によっては、例えば、撮影部位の一致度に鑑みて優先度を設定してもよい。
【0071】
以下に、本変形例2に関して、ステップS203において実行される画像ペア生成のサブ工程について、
図5のステップS500からS509に至るフローチャートを参照して説明する。ステップS501において、具体的には、ステップS201で得られた画像リスト内で対象検査IDと同じ検査IDを持つ全ての画像(すなわち、対象検査の画像)のそれぞれが、第1画像とされる。そして、当該第1画像の情報(画像の場所、撮影部位)を用いて、ステップS502からS507までのループ処理が比較画像取得機能11cにより実行される。
【0072】
まず、画像リストから第1画像を除いたリストを比較画像リストとして取得する(ステップS502)。次に、比較画像リスト内の全ての画像のそれぞれを比較画像の候補として、当該比較画像の情報(例えば画像の場所、撮影部位)について、ステップS504からS507までをループ処理する(ステップS503)。まず、第1画像に含まれる撮影部位と比較画像に含まれる撮影部位とを比較し、両撮影部位の一致度を確認する。撮影部位が同じであれば一致度は最大となり、撮影部位が全く異なれば一致度は0となる。また、撮影部位が異なる大きさである場合や部分的に重なる場合には、重複する部分の範囲にしたがって一致度が定められる。一致度が第1の所定値以下である場合には、画像ペアを形成するには不適当であるとし、第1の所定値以上であれば画像ペアとして差分画像が算出可能であると判断する(ステップS505)。
【0073】
差分画像を算出可能である場合には、ステップS506にて一致度を優先度とする。以上の処理により取得した第1画像の場所、比較画像の場所、および優先度を組みにした情報を、画像ペアのリストに追加する(ステップS507)。リスト追加後、フローはステップS503に戻り、ステップS502において得られている比較画像リストに基づく画像ペアの各々について優先度が求められ、適宜リストへの画像ペアの追加が行われる。
【0074】
ステップS502において得られている比較画像リストに基づく画像ペア全ての優先度の算出が終了すると、フローはステップS501に戻り、新たな第1画像についてのステップS502からS507の処理が行われる。対象検査IDと同じ検査IDを持つ全ての画像に関して画像ペアの優先度を求める処理が終了し2重ループを抜けた後、優先度をキーにして画像ペアのリストを降順にソートする(ステップS508)。以上に説明したステップS500からステップS509の処理により、優先度の降順に並んだ画像ペアのリストが取得される。
【0075】
以上に述べたように、第1の実施形態に係る画像処理装置は、第1画像取得手段としての画像取得機能11bと、第2画像取得手段としての比較画像取得機能11cとを備える。画像取得機能11bは、第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得する。また、比較画像取得機能11cは、第1画像データと比較を行うための比較画像データを取得する。そして、比較画像取得機能11cは、第1の検査の検査日時および第1画像データの造影状態に基づいて、第1画像データと比較画像データの候補とを含む組み合わせ(実施形態では画像ペア)についての優先度を算出する。比較画像取得機能11cは、さらに算出された優先度に応じて、差分画像の生成に用いる比較画像データを取得する。また、本開示に係る画像処理装置は、次の画像処理方法を実行することもできる。すなわち、画像取得機能11bは、第1画像データを取得する第1の画像取得ステップを実行し、比較画像取得機能11cは、比較画像データを取得する比較画像取得ステップを実行する
【0076】
変形例1で述べたように、比較画像データを決定する際に、過去画像或いは造影画像が存在しない場合も想定される。このような場合、第1の検査の検査日時および第1の画像データの造影状態に基づいて優先度を算出する画像ペアは形成できない。このような場合には、第1の検査の検査日時および第1の画像データの造影状態のいずれか一方に基づくのであれば、優先度を算出できる画像の組み合わせが形成できる。比較画像取得機能11cは、このような場合、例えば
図3におけるステップS304かS305のいずれかをスキップし、優先度を算出可能なペアに基づいて、比較画像データを決定する。より具体的には、比較画像取得機能11cは、第1の検査より過去の検査である第2の検査により被検体を撮影した画像データである第2画像データを比較画像データとして取得することを試行する。そして、取得できなかった場合には、第1画像データと造影状態の異なる画像データである第3画像データを比較画像データとして取得する。或いは、比較画像取得機能11cは、第1の検査とは異なる造影状態で行った第2の検査により被検体を撮影した画像データである第2画像データを比較画像データとして取得することを試行することもできる。この態様において第2画像データが取得できなかった場合には、比較画像取得機能11cは、第1の検査より過去の検査である第3の検査により被検体を撮影した画像データである第3画像データを比較画像データとして取得する。
【0077】
画像ペアを構成する第1画像データと、比較画像データとは、上述した画像処理装置によって取得される。しかし、上述したように、差分画像取得手段である差分画像取得機能11dは、画像取得機能と比較画像取得機能とを備える構成とは別個の構成とすることもできる。そして、この差分画像取得機能は、画像の組み合わせを構成する第1画像データと、比較画像データとの差分演算により差分画像データを算出することで、差分画像データを取得する。
【0078】
また、本開示に係る画像処理装置は、優先度を設定するための優先度設定手段として、優先度設定機能11eをさらに備える。優先度設定機能11eは、第1の検査を行った第1の日時と、比較画像データを得るために行った第2の日時との日時差と、予め定めてある所定の値と比較する。上述した実施形態では、所定の値として例えば1週間或いは2日を設定している。そして、この所定の値よりも日時差が大きい比較画像データと第1画像データとを含む組み合わせの優先度を、日時差が所定の値よりも小さい比較画像データと第1画像データとを含む組み合わせの優先度よりも高く設定する。
【0079】
優先度設定機能11eは、さらに、第1の日時と第2の日時との日時差が所定の値よりも大きい比較画像データを含む組み合わせの場合と、所定の値以下の比較画像データを含む組み合わせの場合とで優先度の設定を変更する。具体的には、日時差が所定の値より大きい場合、第1画像データとの造影状態の差異が小さい比較画像データを含む画像ペアの優先度を、造影状態の差異が大きい比較画像データを含む画像ペアの優先度よりも高く設定する。また、日時差が所定の値以下の場合、第1画像データとの造影状態の差異が大きい比較画像データを含む画像ペアの優先度を、造影状態の差異が小さい比較画像データを含む画像ペアの優先度よりも高く設定する。そして、この優先度設定手段は、検査目的に基づいてこれら優先度を設定することができる。また、ここでは比較画像データを選択する際に、画像ペアを生成してその際に優先度を算出することとしているが、予め全ての画像ペアについて優先度を算出しておき、該優先度に応じて画像ペアを選択する方式としてもよい。
【0080】
また、本開示では、画像取得機能11bが、第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データの候補を取得し、比較画像取得機能11cが、第1画像データと比較を行うための比較画像データの候補を取得する。実施形態において、優先度設定機能11eは、優先度取得手段として、これら第1画像データの候補の各々と、比較画像データの候補の各々とを含む組み合わせに対して、優先度を取得することもできる。優先度がこのような組み合わせに対して取得された場合、画像取得機能11bは、取得された優先度に応じて、第1画像データの候補の内から、例えば差分画像の生成に用いる第1画像データを取得することとできる。また、比較画像取得機能11cは、取得された優先度に応じて、比較画像データの候補の内から、例えば差分画像の生成に用いる比較画像データを取得することとできる。
【0081】
以上に述べたように、本開示は、撮影部位の一致度や重なり合う領域の大小に基づいても画像ペアを生成する優先度を決定することができる。本変形例によれば、一致度の高さに基づいて、ユーザに煩雑な手間をかけることなく病変を可視化するために適切な画像ペアを選択し、これを用いて差分画像を生成することが可能となる。また、本変形例で用いた一致度と日時差とを用いて優先度を決定してもよい。或いは、第1の実施形態において、例えば画像の不足等により適当な画像ペアが得られない場合に、優先度を決定するパラメータを本変形例で述べた一致度に変更して比較画像を探索することとしてもよい。また、画像データが他の情報を含む場合、画像ペア以外の例えば付帯情報の一致度や、上述したパラメータを参照させる対象をこれら付帯情報とすることもできる。従って、第1画像データと第2画像データとからなる画像ペアを求める際の優先度として、第1画像データと第2画像データとを含む組み合わせに対して定める優先度を用いてもよい。
【0082】
<第2の実施形態>
上述した第1の実施形態では、ステップS209の処理として、従前のステップで取得した第1画像データと比較画像データの間の差分画像を取得している。この差分画像を取得する処理は、第1画像データと比較画像データとの関係性に基づいて算出方法を切り替えてもよく、この場合も本発明の一実施形態となりうる。この場合の例について本開示の第2の実施形態として以下に説明する。
【0083】
本実施形態の画像処理装置の全体構成は、
図1を用いて説明した第1の実施形態の全体構成と同様であることから、ここでの詳細な説明は省略する。また、本実施形態の画像処理装置が実行する処理のフローチャートは、
図2を用いて説明した第1の実施形態のフローチャートと同様である。ただし、ステップS209として実行する差分画像データの取得処理は、第1の実施形態とは異なるため、以下ではこの差分画像データの取得処理について詳しく説明する。
【0084】
図6は、本実施形態においてステップS209で行われる処理を詳しく説明するフローチャートである。
図6に示すように、本実施形態に係る画像処理装置は、例えば第1画像データと比較画像データの撮影日時が異なるかどうかで、差分画像データの算出方法を切り替える(ステップS601)。具体的には、ステップS601において、第1画像データと比較画像データの撮影日時が同じ場合は、処理をステップS602へと進め、そうでない場合は、処理をステップS603へと進める。
【0085】
撮影日時が異なる場合は、第1画像と比較画像とで患者の姿勢や体形が異なることが多く、これらの画像に対して適切な比較演算を行うことが望ましい。このため、第1の差分画像算出方法で差分画像データを算出する(ステップS602)。
【0086】
ステップS602で行われる具体的な処理のフローチャートを、
図7(a)に示す。
図7(a)に示す処理では、第1画像データと比較画像データとに対して、画像間の被検体の姿勢や体形の変化に対してロバストな方法による位置合わせが行われる。
図7(a)に示す例では、ステップS701において、例えばLDDMM(Large Deformation Diffeomorphic Metric Mapping)法のような、高度な位置合わせを行う。そして、適応的ボクセルマッチング法のような、変形位置合わせの残差等に対してロバストに差分を算出できる高度な差分処理で差分画像データを算出する(ステップS702)。
【0087】
一方、撮影日時が同じ場合は、第1画像と比較画像とで患者の姿勢や体形の相違が微小であり、主に造影状態のみの違いが多い。このため、第1の差分画像算出方法と比して、より簡易な第2の差分画像算出方法で差分画像を算出する(ステップS603)。具体的には、
図7(b)に示すように2画像間の並進や回転だけを補正するような簡易な位置合わせを行う(ステップS711)。そして、位置合わせの終了後、例えば双方の画像の対応する座標の画素値の単純な引き算といった簡易な差分処理で差分画像データを算出する(ステップS712)。
【0088】
なお、ここでは、画像ペアの生成後に、撮影日時が異なるかどうかによって患者の姿勢や体形の相違が生じることを考慮して差分画像を算出する方法を異ならせている。しかし、撮影日時によらず、例えば第1画像データと比較画像データの造影状態の違いを考慮して差分画像算出方法を切り替えてもよい。具体的には、例えば造影状態が異なる画像間の差分画像を算出する場合には、造影の有無により濃度値が大きく変化する臓器や血管等を除外し、その他の部位に関して位置合わせ処理や差分処理を用いた差分画像算出方法を用いるのが望ましい。
【0089】
上述したように、本実施形態において、差分画像取得機能11dは、互いに異なる算出方法である第1の差分画像算出方法(ステップS602)および第2の差分画像算出方法(ステップS603)の少なくともいずれかの方法を実行できる。差分画像取得機能11dは、これら算出方法のいずれかを比較画像データに基づいて選択し、選択された差分画像算出方法を用いて、差分画像データを算出することができる。より詳細には、第1の差分画像算出方法および第2の差分画像算出方法は、それぞれ互いに特性の異なる位置合わせ処理を実行する。そして、位置合わせ処理を用いた第1画像データと比較画像データとの位置合わせの結果に基づいて差分画像データを算出する。
【0090】
以上に説明した方法によれば、比較画像データに基づいて差分画像算出方法を切り替えることで、第1画像と比較画像との間で適切な比較演算を行うことができる効果がある。また、本実施形態は、第1の実施形態の変形例2で述べた一致度に基づく優先度を参照して画像ペアを形成する場合において、一致度が低い場合にと高い場合とで位置合わせ方法を変えるように適用してもよい。
【0091】
<第3の実施形態>
本開示に係る別の実施形態には、第1画像データと複数の比較画像データとから差分画像を算出し、それぞれの算出処理毎に評価値を求めて、その評価値に基づいて画像ペアの優先度を求めることも含まれる。この場合、評価値が最も良い差分画像が最終的にユーザに提示される差分画像となる。本実施形態によれば、第1画像データと複数の比較画像データとの間の実際の差分画像の算出処理の結果に基づいて病変をより適切に可視化する差分画像を取得できる。
【0092】
このとき、複数の比較画像データは、第1画像データと同一の被検体を撮影した第1画像データ以外の全ての画像データであってもよいし、そのうちの一部の画像データであってもよい。一部の画像データを選択するために、第1の実施形態で説明した優先度を算出する方法を用い、優先度が所定値以上の画像データについて差分画像の算出処理を実行するようにしてもよい。
【0093】
図8に本実施形態に係る画像処理装置50の全体構成を示す。なお、本実施形態の処理回路51は、第1および第2の実施形態における処理回路11と比較して、差分画像取得機能11dによる処理内容が異なる。また、評価機能11fが追加されている。具体的には、本実施形態に係る差分画像取得機能11dは、後述する評価値付きの差分画像の取得を行うことで差分画像データとそれを算出する際の評価値を取得する。そして、評価機能11fが最も評価値の高い差分画像データを選び出す。以下、これらを中心に説明する。
【0094】
図9は、本実施形態に係る画像処理装置50の全工程を示すフローチャートである。ここで、
図9の点線枠で示したステップS901では、
図2のステップS201からS203の処理が実行され、ステップS903では、
図2のステップS205からS208の処理が実行される。また、
図9に示すステップS904の処理は、例えば、処理回路51が、差分画像取得機能11dに対応するプログラムを記憶回路13から呼び出して実行することにより実現される。また、
図9に示すステップS902とステップS905からS906の処理は、例えば、処理回路11が、評価機能11fに対応するプログラムを記憶回路13から呼び出して実行することにより実現される。
【0095】
ステップS902において、画像処理装置50は、画像ペアのリスト内の先頭N個の画像ペアの情報(第1画像の場所、比較画像の場所)について、以降のステップS903からS905をループ処理として繰り返し実行する。すなわち、優先度の高い画像ペアの情報から順に、ループ処理が行われる。ここで、Nを大きくすると多数の画像ペアに対して実際に差分画像の算出処理を行うことになり計算時間が掛かるため、リストの長さの半分から4分の1程度の値にすることが望ましい。
【0096】
ステップS904において差分画像取得機能11dは、第1の実施形態におけるステップS208と同様に、比較画像データの取得が成功した際には、第1画像データと比較画像データとの間の差分画像データを取得する。ただし、本実施形態の画像処理装置50は、差分画像データを評価値付きで取得する点で第1の実施形態と異なる(ステップS904)。
【0097】
具体的には、ステップS904において、差分画像取得機能11dは、
図10(a)に示すように、評価値付き差分画像の算出処理を呼び出すことで差分画像の取得を実現する(ステップS1001)。
図10は、ステップS904で行われるサブ処理の詳細を示すステップS1000からステップS1001のフローチャートである。ここで、評価値付きの差分画像の算出処理は、画像処理装置50の内部で実行する以外に、クラウド等にある別の装置で実行しても構わない。
【0098】
差分画像算出時の評価値とは、例えば以下3つの評価値から計算される代表値である。以下に、評価値の算出処理について示す
図10(b)のフローチャートを参照して、ステップS1011からステップS1013で実行される評価値の算出処理について説明する。
【0099】
図10(b)の評価値1は、ステップS1011で算出される評価値であって、第1画像データと比較画像データとの間の位置合わせ処理に関する評価値である。例えば、位置合わせ処理の結果である画像間の空間的な対応に局所的歪みが無い場合や、位置合わせの際の画像間の類似度を最大化する繰り返し処理における類似度の推移の収束性が高い場合によい評価値となる。
【0100】
一般に、同一患者の画像間の位置合わせが適切に行われた場合には、画像間の対応に局所的歪みが生じることは少ない。したがって、局所的歪みの評価により位置合わせが適切に行われたか否かの評価が行える。また、一般に、画像間の位置合わせの手掛かりとなる画像特徴が存在する場合には繰り返し処理における画像類似度が高い収束性を示し、信頼度の高い位置合わせが行われる。一方、画像特徴が乏しい場合には、画像類似度の収束性は低く、位置合わせの信頼度は低いものとなる。したがって収束性の評価により位置合わせの信頼度の評価が行える。
【0101】
図10(b)の評価値2は、ステップS1012で算出される評価値であって、差分処理に関する評価値である。例えば、算出された差分画像にパーシャルボリューム効果等に起因するノイズが少ないほどよい評価値となる。なお、差分画像中のノイズの量は、機械学習や空間周波数解析等の既知の手法を用いて算出可能である。
【0102】
図10(b)の評価値3は、ステップS1013で算出される評価値であって、差分画像データがどれほど病変を可視化しているかを表す評価値である。具体的には、算出された差分画像上で差分値が大きい部分について、当該部分に対応する第1画像または比較画像の画像特性が病変らしいか否かを判定する。当該部分が病変らしいと判断された場合によい評価値となる。なお、第1画像または比較画像の当該部分が病変らしいか否かの判定は例えば機械学習や空間的自己相関等の既知の手法を用いて実行可能である。
【0103】
最終的な差分画像算出時の評価値としては、上記3つの評価値を統合した値として例えば平均値を計算することにより算出できる(ステップS1014)。また、平均値以外にも最大値や最小値などによって算出してもよいし、各評価値を乗算することによって算出してもよい。以上の処理により画像間の位置合わせが適切に実行され、病変の可視化の妨げとなる不要なノイズが少なく、可視化の目的である病変部分が視認しやすい差分画像が生成されたか否かを評価した評価値を算出すことができる。以上に説明したステップS1010からステップS1015の処理により、評価値付きの差分データが算出される。
【0104】
このように算出された差分画像データと評価値とは、それぞれ差分画像データリストと評価値リストに追加される(ステップS905)。全ての画像ペアについて上記の算出処理が終わったのち、評価機能11fは、評価値リストの中で評価値が最大となるインデックスを算出し、そのインデックスに対応する差分画像データリスト内のデータを評価値が最大となる最良の差分画像データとして取得する(ステップS906)。
【0105】
本実施形態に係る画像処理装置は、上述した画像取得機能11b(画像取得手段)、比較画像取得機能11c(比較画像取得手段)、および差分画像取得機能11d(差分画像取得手段)などに加え、評価機能11f(評価手段)を備える。画像取得機能11bは、第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得する。比較画像取得機能11cは、第1の検査において第1画像データとは異なる造影条件で被検体を撮影した画像データを第1比較画像データとして取得し、第1の検査とは異なる検査日に行った第2の検査により被検体を撮影した画像データを第2比較画像データとして取得する。差分画像取得機能11dは、第1画像データと第1比較画像データとの差分を表す第1差分画像データと、第1画像データと第2比較画像データとの差分を表す第2差分画像データとを取得する。評価機能11fは、第1差分画像データと第2差分画像データのそれぞれを評価し、差分画像取得機能11dは、第1差分画像データと第2差分画像データから、評価の結果のよい差分画像データを選択する。
【0106】
以上のように、本実施形態に係る画像処理装置を用いることで、複数の差分画像の中から病変の可視化に適した差分画像を選択的に生成することができる。これにより、ユーザに煩雑な手間をかけることなく病変を可視化するための差分画像を生成することが可能となる。
【0107】
<第4の実施形態>
本開示に係る別の実施形態には、差分画像の算出時に入力インターフェース15を用いてユーザに実施確認を求めたり、算出した差分画像をディスプレイ14に表示したりする形態も含まれる。例えば、画像処理装置10がPCやワークステーション等の上で実行されるアプリケーションとして実施される場合には、当該アプリケーションの使い勝手の向上に有用である。
【0108】
図11に本実施形態に係る画像処理装置60の全体構成を示す。なお、本実施形態は、第1、第2、および第3の実施形態と比較して、表示制御機能11gが追加されている。具体的には、本実施形態に係る表示制御機能11gは、差分画像算出時のユーザ確認を行ったり、ディスプレイ14への差分画像の表示を行ったりする。以下、これらを中心に説明する。
【0109】
図12は、本実施形態に係る画像処理装置60の全工程を示すフローチャートである。ここで、
図11の点線枠で示したステップS1601では、第1の実施形態におけるステップS201からS203の処理が実行され、ステップS1603ではステップS205からS208の処理が実行される。また、ステップS1605では、第1の実施形態におけるステップS209の処理が実行される。また、
図11に示すステップS1604、S1606、およびS1607の処理は、例えば、処理回路61が、表示制御機能11gに対応するプログラムを記憶回路13から呼び出して実行することにより実現される。
【0110】
ステップS1604において、表示制御機能11gは、第1の実施形態のステップS208と同様に、ステップS1603の処理において比較画像データ取得が成功した際に、差分画像データの取得を行うかを判断する。ただし、ユーザによる実施確認に基づいて処理を切り替える点で第1の実施形態とは異なる(ステップS1604)。
【0111】
ステップS1604で行われる処理について、
図13に示すサブ処理のフローチャートを参照して具体的に説明する。ステップS1604において、表示制御機能11gは、
図13に示すように、差分画像データの取得を行うか否かを判断する処理を呼び出す(ステップS1700)。この処理では、まず例えば、
図16に示すように、第1画像の情報と比較画像の情報を表示した確認ダイアログ20をディスプレイ14に表示する(ステップS1701)。表示する情報としては、例えば検査日時やシリーズ番号等を表示する。これ以外にも第1画像と比較画像の断面画像や投影画像などを表示してもよい。
【0112】
次に、ユーザが入力インターフェース15を介して「はい」ボタン21(取得を行う)、もしくは、「いいえ」ボタン22のどちらが押されたかを判定する(ステップS1702)。判定結果を、ブール変数okに格納し(ステップS1703、S1704)、確認ダイアログ20を消した後(ステップS1705)、判定結果を返す(S1706)。
【0113】
判定結果がNo(取得しない)の場合は、画像ペアのリストの次の候補を取り出し、繰り返し処理を行う(ステップS1602)。ここで、繰り返し処理を行う代わりに、処理を終了してもよい。判定結果がYes(取得する)の場合は、第1の実施形態と同様に、差分画像データを取得する(ステップS1605)。差分画像データ取得失敗の場合は、そのまま処理を終了する。その際、表示制御機能11gは、ディスプレイ14に何らかのエラーダイアログを表示してもよい(ステップS1606)。
【0114】
差分画像データ取得成功の場合は、表示制御機能11gは、例えば画像一覧画面に、第1画像、比較画像、差分画像を表示する(ステップS1607)。ステップS1607で行われる処理について、
図14に示すサブ処理のフローチャートを参照して具体的に説明する。具体的には、
図14に示すように、第1画像データ、比較画像データ、差分画像データと共に、与えられた画像データを画像詳細画面に表示するためのコールバック(callback)を指定して、画像一覧に表示する処理を呼び出す(ステップS1800)。
【0115】
この処理では、ディスプレイ14に例えば
図16に示すような画像一覧画面30を表示する(ステップS1801)。画像一覧画面30は、マトリクス状にサムネイルを表示する形態だけではなく、リスト状にサムネイルを表示する形態でもよい。次に、第1画像の検査日時やモダリティ等で決まる所定位置に、第1画像のサムネイル31を表示する(ステップS1802)。次に、第1画像のサムネイルと対比可能に比較画像のサムネイル32も表示する(ステップS1803)。その際、検査日時の違いや造影状態の違いが分かるように表示する。例えば、検査日時の違い(日数)のテキスト情報や、検査日時の日時差境界値の範囲内外を表す印等をサムネイルに隣接、または重畳して表示するようにできる。或いは、造影状態の違いの有無やその大きさを表すテキスト情報や印をサムネイルに隣接、または重畳して表示するようにすることもできる。
【0116】
さらに、差分画像のサムネイル33(経時差分の場合)・サムネイル34(造影時相間差分の場合)も表示する(ステップS1804)。その際、例えば検査が脊柱管内浸潤を可視化する目的であれば、優先度の低い造影時相間差分画像には例えば
図17の星型アイコン35のように印を付けて、経時差分画像と区別できるように表示することでユーザに注意を促す(ステップS1804)。逆に、優先度が高い経時差分画像に印を付けて、優先度の低い他の経時差分画像や造影時相間差分画像と区別できるようにしてもよい。また、各サムネイルには、入力インターフェース15によって選択された際に呼び出されるコールバックを設定する(ステップS1805)。このコールバックが呼び出される際には、関連する画像データがまとめてコールバックの引数に渡される(ステップS1806)。
【0117】
図15に、画像詳細画面に各画像を表示するコールバック処理についてのステップS1900からステップS1905に至るフローチャートを示す。コールバック処理では、まず、表示制御機能11gは、ディスプレイ14に例えば
図18に示すような画像詳細画面(40a、40b、40c、40d、40eのいずれか)を表示する(ステップS1901)。画像詳細画面は、縦横2段に表示する形態だけではなく、縦もしくは横1列に画像を表示する形態でもよい。
【0118】
次に、第1画像(現在画像)を画像詳細画面に表示する(ステップS1902)。次に、第1画像と対比可能なように比較画像(過去画像)を表示する(ステップS1903)。その際、例えば各画像の上部に現在画像・過去画像のラベル表示や造影・非造影のラベル表示を行い、画像の検査日時の違いや造影状態の違いが分かるように表示する。さらに、差分画像も画像詳細画面に表示する(ステップS1904)。その際、例えば、
図18の画像詳細画面42aから画像詳細画面42eのラベル表示のように経時差分画像なのか造影時相間差分画像なのかが分かるように表示する。
【0119】
また、例えば検査が脊柱管内浸潤を可視化する目的であれば、優先度の低い造影時相間差分画像には、例えば
図18の星型アイコン41のように印を付けて、経時差分画像と区別できるように表示してもよい。逆に、優先度が最も高い経時差分画像に印を付けて、他の経時差分画像や造影時相間差分画像と区別できるようにしてもよい。
【0120】
図12のステップS1607では、まず画像一覧画面にサムネイルを表示し、入力インターフェース15で選択されると、画像詳細画面を表示するように説明した。しかし、本実施形態の態様はここで例示したものに限られず、直接、ステップS1607の時点で画像詳細画面を表示するようにしてもよい。以上に説明したステップS1600からステップS1608の処理により、所望の差分画像を適切に表示することが可能となる。
【0121】
以上に述べたように、本実施形態に係る画像処理装置は、表示部に画像ペアの表示処理を行う表示制御機能11g(表示制御手段)をさらに備える。この表示制御機能11gは、差分画像データの取得を行うか否かの確認画面(
図15)を表示部に表示させるように構成することができる。また、表示制御機能11gは、第1画像データと、比較画像データとを対比可能に表示させる(
図16)ように構成することもできる。さらに、表示制御機能11gは、第1画像データと、比較画像データと、差分画像データとを対比可能に表示させる(
図17)ように構成することもできる。そして、表示制御機能11gは、優先度に対応する情報(
図17の星型アイコン35)を表示させるように構成することもできる。
【0122】
以上のように、本実施形態に係る画像処理装置を用いることで、各種差分画像のそれぞれが検査目的に適うものであるか否か、または検査目的との適合の度合いをユーザに提示することができる。これによりアプリケーションの使い勝手を向上させることができ、ユーザに煩雑な手間をかけることなく病変を可視化するための差分画像を生成することが可能となる。
【0123】
なお、上述した開示は、以下の構成、方法、およびプログラムを含む。
(構成1)
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得する第1画像取得手段と、
前記第1画像データと比較を行うための比較画像データを取得する比較画像取得手段であって、前記第1の検査の検査日時および前記第1画像データの造影状態に基づいて算出される、前記第1画像データと前記比較画像データの候補とを含む組み合わせに対する優先度に応じて、前記比較画像データを取得する比較画像取得手段と、を備える画像処理装置。
(構成2)
取得された、前記第1画像データと、前記比較画像データとの差分画像データを取得する差分画像取得手段をさらに備える、構成1、16、17、および19のいずれかに記載の画像処理装置。
(構成3)
前記差分画像取得手段は、取得した前記第1画像データと、前記比較画像データとの差分演算により差分画像データを算出することで、前記差分画像データを取得する、構成2に記載の画像処理装置。
(構成4)
前記差分画像取得手段は、互いに異なる算出方法である第1の差分画像算出方法および第2の差分画像算出方法の少なくともいずれかの方法を前記比較画像データに基づいて選択し、選択された差分画像算出方法を用いて、前記差分画像データを算出する、構成3に記載の画像処理装置。
(構成5)
前記第1の差分画像算出方法および前記第2の差分画像算出方法は、それぞれ互いに特性の異なる位置合わせ処理を含み、前記位置合わせ処理を用いた前記第1画像データと前記比較画像データとの位置合わせの結果に基づいて前記差分画像データを算出する、構成4に記載の画像処理装置。
(構成6)
前記優先度を設定するための優先度設定手段をさらに備える、構成1乃至5、16、17、および19のいずれかに記載の画像処理装置。
(構成7)
前記優先度設定手段は、前記第1の検査を行った第1の日時と、前記比較画像データを得るために行った第2の日時との日時差が所定の値よりも大きい比較画像データと前記第1画像データとを含む組み合わせの優先度を、前記日時差が前記所定の値よりも小さい比較画像データと前記第1画像データとを含む組み合わせの優先度よりも高く設定する、構成6に記載の画像処理装置。
(構成8)
前記優先度設定手段は、前記第1の検査を行った第1の日時と、前記比較画像データを得るために行った第2の日時との日時差が所定の値よりも大きい比較画像データを含む組み合わせの場合には、前記第1画像データとの造影状態の差異が小さい比較画像データを含む組み合わせの優先度を、前記第1画像データとの造影状態の差異が大きい比較画像データを含む組み合わせの優先度よりも高く設定する、構成6に記載の画像処理装置。
(構成9)
前記優先度設定手段は、前記第1の検査を行った第1の日時と、前記比較画像データを得るために行った第2の日時との日時差が所定の値以下の比較画像データを含む組み合わせの場合には、前記第1画像データとの造影状態の差異が大きい比較画像データを含む組み合わせの優先度を、前記第1画像データとの造影状態の差異が小さい比較画像データを含む組み合わせの優先度よりも高く設定する、構成6に記載の画像処理装置。
(構成10)
前記優先度設定手段は、検査目的に基づいて優先度を設定する、構成6に記載の画像処理装置。
(構成11)
表示部に前記第1画像データと、選択された前記比較画像データと、を含む画像ペアの表示処理を行う表示制御手段をさらに有する、請求項1乃至10、および16乃至19のいずれかに記載の画像処理装置。
(構成12)
表示部に前記第1画像データと、選択された前記比較画像データと、を含む画像ペアの表示処理を行う表示制御手段をさらに備え、
前記表示制御手段は、前記差分画像データの取得を行うか否かの確認画面を前記表示部に表示させる、構成2乃至5、および18のいずれか1項に記載の画像処理装置。
(構成13)
前記表示制御手段は、前記第1画像データと、前記比較画像データとを対比可能に表示させる、構成11に記載の画像処理装置。
(構成14)
表示部に前記第1画像データと、選択された前記比較画像データと、を含む画像ペアの表示処理を行う表示制御手段をさらに備え、
前記表示制御手段は、前記第1画像データと、前記比較画像データと、前記差分画像データとを対比可能に表示させる、構成2乃至5、および18のいずれかに記載の画像処理装置。
(構成15)
前記表示制御手段は、前記優先度に対応する情報を表示させる、構成11に記載の画像処理装置。
(構成16)
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得する第1画像取得手段と、
前記第1画像データと比較を行うための、比較画像データを取得する比較画像取得手段と、を備え、
前記比較画像取得手段は、前記第1の検査より過去の検査である第2の検査により前記被検体を撮影した画像データである第2画像データを比較画像データとして取得することを試行し、
前記第2画像データが取得できなかった場合に、前記第1画像データと造影状態の異なる画像データである第3画像データを比較画像データとして取得する、画像処理装置。
(構成17)
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得する第1画像取得手段と、
前記第1画像データと比較を行うための、比較画像データを取得する比較画像取得手段と、を備え、
前記比較画像取得手段は、前記第1画像データと造影状態の異なる画像データである第2画像データを比較画像データとして取得することを試行し、
前記第2画像データが取得できなかった場合に、前記第1の検査より過去の検査である第3の検査により前記被検体を撮影した画像データである第3画像データを比較画像データとして取得する、画像処理装置。
(構成18)
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得する第1画像取得手段と、
前記第1の検査において前記第1画像データとは異なる造影条件で前記被検体を撮影した画像データを第1比較画像データとして取得し、前記第1の検査とは異なる検査日に行った第2の検査により前記被検体を撮影した画像データを第2比較画像データとして取得する比較画像取得手段と、
前記第1画像データと前記第1比較画像データとの差分を表す第1差分画像データと、前記第1画像データと前記第2比較画像データとの差分を表す第2差分画像データとを取得する差分画像取得手段と、
前記第1差分画像データと前記第2差分画像データのそれぞれを評価する評価手段と、を備え、
前記第1差分画像データと前記第2差分画像データから、前記評価の結果のよい差分画像データを選択する、画像処理装置。
(構成19)
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データの候補の夫々と、前記第1画像データと比較を行うための比較画像データの候補の夫々と、を含む組み合わせに対する優先度を取得する優先度取得手段と、
前記優先度に応じて、前記第1画像データの候補から前記第1画像データを取得する第1画像取得手段と、
前記優先度に応じて、前記比較画像データの候補から前記比較画像データを取得する比較画像取得手段と、
を備える画像処理装置。
(方法1)
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得することと、
前記第1画像データと比較を行うための比較画像データを取得することであって、前記第1の検査の検査日時および前記第1画像データの造影状態に基づいて算出される、前記第1画像データと前記比較画像データの候補とを含む組み合わせに対する優先度に応じて、前記比較画像データを取得することと、を含む画像処理方法。
(方法2)
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得することと、
前記第1画像データと比較を行うための、比較画像データを取得することと、を含み、
前記比較画像データを取得することでは、前記第1の検査より過去の検査である第2の検査により前記被検体を撮影した画像データである第2画像データを比較画像データとして取得することを試行し、
前記第2画像データが取得できなかった場合に、前記第1画像データと造影状態の異なる画像データである第3画像データを比較画像データとして取得する、画像処理方法。
(方法3)
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得することと、
前記第1画像データと比較を行うための、比較画像データを取得することと、を含み、
前記比較画像データを取得することでは、前記第1画像データと造影状態の異なる画像データである第2画像データを比較画像データとして取得することを試行し、
前記第2画像データが取得できなかった場合に、前記第1の検査より過去の検査である第3の検査により前記被検体を撮影した画像データである第3画像データを比較画像データとして取得する、画像処理方法。
(方法4)
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データを取得することと、
前記第1の検査において前記第1画像データとは異なる造影条件で前記被検体を撮影した画像データを第1比較画像データとして取得し、前記第1の検査とは異なる検査日に行った第2の検査により前記被検体を撮影した画像データを第2比較画像データとして取得することと、
前記第1画像データと前記第1比較画像データとの差分を表す第1差分画像データと、前記第1画像データと前記第2比較画像データとの差分を表す第2差分画像データとを取得することと、
前記第1差分画像データと前記第2差分画像データのそれぞれを評価することと、を含み、
前記第1差分画像データと前記第2差分画像データから、前記評価の結果のよい差分画像データを選択する、画像処理方法。
(方法5)
第1の検査により被検体を撮影した画像データである第1画像データの候補の夫々と、前記第1画像データと比較を行うための比較画像データの候補の夫々と、を含む組み合わせに対する優先度を取得することと、
前記優先度に応じて、前記第1画像データの候補から前記第1画像データを取得することと、
前記優先度に応じて、前記比較画像データの候補から前記比較画像データを取得することと、
を含む画像処理方法。
(プログラム)
方法1乃至5のいずれかに記載の画像処理方法をコンピュータで実行させるためのプログラム。
【0124】
<その他の実施形態>
以上、実施形態例を詳述したが、本発明は例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記録媒体(記憶媒体)等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インターフェース機器、撮像装置、Webアプリケーション等)から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0125】
また、本開示の目的は、以下のようにすることによって達成されることはいうまでもない。即ち、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコード(コンピュータプログラム)を記録した記録媒体(または記憶媒体)を、システムあるいは装置に供給する。係る記憶媒体は言うまでもなく、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。この場合、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した記録媒体は本開示を構成することになる。
【符号の説明】
【0126】
10、50、60:画像処理装置
11、51、61:処理回路
11a:制御機能
11b:画像取得機能
11c:比較画像取得機能
11d:差分画像取得機能
11e:優先度設定機能
12:通信インターフェース
13:記憶回路
14:ディスプレイ
15:入力インターフェース