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特開2024-165349不織布積層体及びそれを用いた袋状物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165349
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】不織布積層体及びそれを用いた袋状物
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/011 20120101AFI20241121BHJP
   D04H 3/105 20120101ALI20241121BHJP
   D04H 3/14 20120101ALI20241121BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20241121BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
D04H3/011
D04H3/105
D04H3/14
D04H3/16
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081475
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩根 正好
(72)【発明者】
【氏名】西村 浩和
【テーマコード(参考)】
3E086
4L047
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA19
3E086BA35
3E086BB35
3E086BB51
3E086BB63
3E086BB67
4L047AA21
4L047AB03
4L047BA01
4L047BA03
4L047BA08
4L047CA05
4L047CA12
4L047CB01
4L047CC16
(57)【要約】
【課題】収縮性の高い不織布積層体を提供する。
【解決手段】 本発明の不織布積層体は、少なくとも第1長繊維不織布と当該第1長繊維不織布よりも乾熱面積収縮率が30%以上高い第2長繊維不織布とが積層されて成り、前記第2長繊維不織布は、構成繊維がポリエチレンテレフタレート成分が99質量%以上の樹脂を含み、乾熱面積収縮率が30%以上、前記構成繊維の複屈折率(Δn)が10×10-3~60×10-3、かつ、前記構成繊維の密度が1.335~1.340g/cm、である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1長繊維不織布と当該第1長繊維不織布よりも乾熱面積収縮率が30%以上高い第2長繊維不織布とが積層された不織布積層体であり、
前記第2長繊維不織布は、構成繊維がポリエチレンテレフタレート成分が99質量%以上の樹脂を含み、乾熱面積収縮率が30%以上、前記構成繊維の複屈折率(Δn)が10×10-3~60×10-3、かつ、前記構成繊維の密度が1.335~1.340g/cmである、ことを特徴とする不織布積層体。
【請求項2】
前記第2長繊維不織布は、縦方向と横方向との乾熱面積収縮率の比が0.95~1.05である、ことを特徴とする請求項1に記載の不織布積層体。
【請求項3】
当該不織布積層体は、機械交絡されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の不織布積層体。
【請求項4】
前記第1長繊維不織布は、構成繊維がポリエチレンテレフタレート成分が99質量%以上の樹脂から成る、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の不織布積層体。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の不織布積層体を用いた袋状物であり、前記第1長繊維不織布同士が熱圧着により接合した接合部を有する、ことを特徴とする袋状物。
【請求項6】
前記接合部における接合強度が、前記不織布積層体の基布強度の3分の1以下である、ことを特徴とする請求項5に記載の袋状物。
【請求項7】
当該袋状物に入れる内容物と加熱収縮により密着する、ことを特徴とする請求項5に記載の袋状物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不織布積層体及び袋状物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不織布において、加熱により収縮させる技術がある。例えば特許文献1では、非晶性ポリエステルをブレンドすることで低温にて収縮できるため、収縮加工に及ぼす熱エネルギーが少なく、省エネルギーに貢献できる技術が開示されている。また、特許文献2には、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートの短繊維を含む高収縮不織布が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-240531号
【特許文献2】特開2003-336151号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の不織布は、ポリエチレンテレフタレート単体ではなくブレンドである為、リサイクルしにくい。また、特許文献2は短繊維不織布であることから長繊維不織布より強度的に劣っている。
【0005】
本発明は上記従来技術の課題に鑑みなされ、その目的は、収縮性の高い不織布積層体を提供すること、さらに、それを用いて熱圧着可能な袋状物を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、ついに本発明を完成するに至った。即ち本発明は以下の通りである。
1.少なくとも第1長繊維不織布と当該第1長繊維不織布よりも乾熱面積収縮率が30%以上高い第2長繊維不織布との不織布積層体であり、前記第2長繊維不織布は、構成繊維がポリエチレンテレフタレート成分が99質量%以上の樹脂を含み、乾熱面積収縮率が30%以上、前記構成繊維の複屈折率(Δn)が10×10-3~60×10-3、かつ、前記構成繊維の密度が1.335~1.340g/cmである、ことを特徴とする不織布積層体。
2.前記第2長繊維不織布は、縦方向と横方向との乾熱面積収縮率の比が0.95~1.05である、上記1に記載の不織布積層体。
3.当該不織布積層体は、機械交絡されている、上記1又は2に記載の不織布積層体。
4.前記第1長繊維不織布は、構成繊維がポリエチレンテレフタレート成分が99質量%以上の樹脂から成る、上記1~3のいずれか1に記載の不織布積層体。
5.上記1~4のいずれか1に記載の不織布積層体を用いた袋状物であり、前記第1長繊維不織布同士が熱圧着により接合した接合部を有する、袋状物。
6.前記接合部における接合強度が、前記不織布積層体の基布強度の3分の1以下である、上記5に記載の袋状物。
7.当該袋状物に入れる内容物と加熱収縮により密着する、上記5又は6に記載の袋状物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、収縮性に優れた不織布積層体を得ることができ、熱圧着が良好に行え
る袋状物を得ることができる。また、本発明では、ポリエチレンテレフタレート成分が99質量%以上の樹脂を用いるため、リサイクル性が良い不織布積層体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に関して具体的に説明するが、本発明は下記に限定される訳ではなく前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0009】
[不織布積層体]
本発明は、少なくとも第1長繊維不織布と第2長繊維不織布とが積層された不織布積層体であり、第2長繊維不織布は、第1長繊維不織布よりも乾熱面積収縮率が30%以上高い。第1長繊維不織布と第2長繊維不織布とに乾熱面積収縮率が30%以上の差があることで、熱処理により得られる不織布積層体の高伸度化の効果が出やすくなる。ここで、本発明において、乾熱面積収縮率とは、100℃で3分間熱処理した際の面積収縮率を指す。
本発明の不織布積層は、少なくとも第1長繊維不織布と第2長繊維不織布とが積層されていればよく、他の不織布等が積層されていてもよい。
【0010】
本発明における第1長繊維不織布は、乾熱面積収縮率は好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。本発明における第2長繊維不織布の乾熱面積収縮率は好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上である。乾熱面積収縮率とは、第1及び第2長繊維不織布を積層して不織布積層体にする前に、それぞれ単独で測定した100℃で3分間の乾熱面積収縮率である。
【0011】
本発明における第1長繊維不織布について説明する。第1長繊維不織布に用いられる樹脂は、中でもポリエステルが好ましく、汎用熱可塑性樹脂で安価なポリエチレンテレフタレート(PET)が特に好ましい。用いられる樹脂として、他には、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート(PCHT)、ポリトリメチオレンテレフタレート(PTT)などのホモポリエステルが例示できる。本発明では、PETを用いる。PETは、強力や耐熱性等の特性に優れているからである。なお、PET以外のポリエステルがブレンドされていてもよい。また、本発明における第1長繊維不織布は、通常使用される添加剤、例えば、塗料、顔料、艶消剤、制電剤、難燃剤、強化粒子を含んでもよい。
【0012】
本発明における第1長繊維不織布の製造方法は、特に限定されないが、長繊維不織布として生産性、機械強度特性を得やすいとの観点から、スパンボンド法で製造するのが好ましい。第1長繊維不織布を構成する長繊維(単繊維)の平均繊維径は、1~10dtex程度が好ましい。また、第1長繊維不織布の目付は、最終製品に必要な機械強度特性を考慮し、また、乾熱面積収縮率の高い第2長繊維不織布を熱処理により収縮させるときに、収縮性を阻害しないように考慮し、設定すればよい。
【0013】
本発明における第2長繊維不織布について説明する。第2長繊維不織布に用いられる樹脂は、中でもポリエステルが好ましく、汎用熱可塑性樹脂で安価なポリエチレンテレフタレート(PET)が特に好ましい。用いられる樹脂として、他には、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート(PCHT)、ポリトリメチオレンテレフタレート(PTT)などのホモポリエステルが例示できる。本発明では、PETを用いる。PETは、強力や耐熱性等の特性に優れているからである。なお、1質量%よりも少なければ、PET以外のポリエステルがブレンドされていてもよい。また、本発
明の第2長繊維不織布は、通常使用される添加剤、例えば、塗料、顔料、艶消剤、制電剤、難燃剤、強化粒子を含んでもよい。
【0014】
本発明における第2長繊維不織布を得る方法について説明する。第2長繊維不織布の製造方法は、特に限定されないが、長繊維不織布として生産性、機械強度特性を得やすいとの観点から、スパンボンド法で製造するのが好ましい。同方法で乾熱面積収縮率の高い第2長繊維不織布を得るためには、使用する樹脂が配向結晶化により安定なフィラメントを得られる条件より低い紡糸速度で繊維化し、シート化する方法を用いる。使用する樹脂により紡糸速度は適宜変更する必要があり、PETを使用する場合の紡糸速度としては、2000~3500m/minが好ましく、2000~3000m/minがより好ましい。第2長繊維不織布を構成する長繊維(単繊維)の平均繊維径は、1~20dtex程度が好ましく、より好ましくは2~15dtex程度である。また、第2長繊維不織布の目付は、最終製品に必要な機械強度特性を考慮し設定することができるが、熱処理により収縮させる応力を得るために80g/m以上が好ましい。第2長繊維不織布を得た後の機械交絡工程の工程通過性を考慮し、第2長繊維不織布は搬送性が得られる程度の圧着におさえることが好ましい。平均繊維径や目付けが上記範囲内であれば、強力、加工性、柔軟性等の各特性をバランスよく優れたものにすることができる。
【0015】
本発明における第2長繊維不織布の構成繊維の複屈折率(Δn)は60×10-3以下であることが好ましい。より好ましくは55×10-3以下、さらに好ましくは50×10-3以下である。繊維の複屈折率が60×10-3を超えると、ポリマー分子が配向し結晶化するために収縮を阻害し、収縮率が低いものとなる。複屈折率は、繊維化する際の吐出条件、冷却条件、延伸条件で制御可能である。特に高い収縮率を求める場合には、紡糸速度2000~3500m/minが好ましく、2500~3000m/minで紡糸するのがより好ましい。
【0016】
本発明における第2長繊維不織布の構成繊維の密度は、1.330~1.340g/cmが好ましく、1.335~1.340g/cmがより好ましい。上記範囲内であれば、強力、加工性、柔軟性等の各特性をバランスよく優れたものにすることができる。
【0017】
[機械交絡]
次に、本発明の第1長繊維不織布と第2長繊維不織布との積層方法の一例を説明する。
第1長繊維不織布と第2長繊維不織布とを重ねて、片側又は両側からニードルパンチによって繊維を機械交絡させる。機械交絡させる方法としてはニードルパンチ又はウォーターパンチなどの方法があるが、乾燥が不要、高い目付けが可能であることからニードルパンチが好ましい。ニードルパンチでニードルを不織布に貫入させ繊維を交絡させる。ペネ数や針深は使用するニードルの種類、得たい機械強力特性や目付により適宜設定すればよい。
【0018】
[袋状物]
本発明の不織布積層体は、第1長繊維不織布を内側にして、第1長繊維不織布同士を熱圧着により接合させることで容易に袋状物を成形することができる。袋状物では、中に入れる内容物に接する方が、第1長繊維不織布側になる。本発明の不織布積層体を用いた袋状物も本発明の範疇である。本発明の袋状物は、第1長繊維不織布同士が熱圧着により接合した接合部を有する。本発明の袋状物は、前記接合部の接合強度が、前記長繊維不織布の強度の3分の1以下が好ましい。この範囲であると、袋状物を接合部から開きたい場合には容易に開くことが可能となる。また袋状物は、袋状物に入れる内容物と加熱収縮により密着させられることができる。袋状物は、乾熱面積収縮率が低い第1長繊維不織布を内側にすることで、不織布積層体が内容物に融着しないので、袋状物として好適に用いることができる。
【実施例0019】
下記では、実施例によって本発明を更に詳述する。ただし、以下の実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは全て本発明の技術的範囲に包含される。
初めに、特性評価方法について説明する。
【0020】
<乾熱面積収縮率>
JIS L 1913(2010)の6.10に準拠し、長繊維不織布を任意の10箇所で250mm角に裁断し、たて方向及びよこ方向それぞれ3箇所に200mm長さを表す印をつける。恒温乾燥機にて100℃で3分間熱処理し、熱処理前後での寸法変化により、面積収縮率を求める。
【0021】
<複屈折率>
長繊維不織布から取り出した単繊維について、ベレックコンペンセーターを装着した偏向顕微鏡を用いてレターデーションと繊維径とを求め、n=5の平均値を繊維の複屈折率(Δn)とする。
【0022】
<密度>
密度勾配管を用いて繊維の密度をn=4で測定し、平均値を求める。
【0023】
<縦方向と横方向の乾熱面積収縮率の比>
JIS L 1913(2010)の6.10に準拠し、長繊維不織布を任意の10箇所で250mm角に裁断したサンプルを用いて、たて方向及びよこ方向それぞれ3箇所に200mm長さを表す印をつける。サンプルを恒温乾燥機100℃で3分間熱処理し、熱処理前後での寸法変化より、縦方向/横方向の比を求める。
【0024】
<接合強度>
交絡処理した不織布積層体からサンプルを2枚カットし、第1長繊維不織布同士が内側になるように重ねて、ヒートシーラー(富士インパルス(株)製 Auto Sealer FA-450-5W系)を用いて幅方向に268℃で2分間ヒートシールを行う。このヒートシールしたサンプルを広げたものを、JIS L 1913(2010)の6.3引張強さ及び伸び率(ISO法)に従い、定速伸長型引張試験機(オリエンテック製テンシロン)と同試験機を用いて、サンプルの製品巾から巾50mm長さ200mm試料片3点につき、つかみ間隔100mmで引張り、速度200mm/分で測定し、得られた引張強さの平均値を接合強度(N/5cm)とする。
【0025】
<目付>
JIS L 1913(2010)記載の方法に準拠し、長繊維不織布を20cm×20cmのサイズで測定し、単位面積当たりの質量を測定する。
【0026】
<基布強度>
交絡処理した不織布積層体を用い、JIS L 1913(2010)の6.3 引張強さ及び伸び率(ISO法)に従い、定速伸長型引張試験機(オリエンテック製テンシロン)と同試験機を用いて、不織布積層体の製品巾から巾50mm長さ200mmの試料片5点につき、つかみ間隔100mmで引張り、速度200mm/分で測定し得られた引張強さの平均値を、基布強度(N/5cm)とする。
【0027】
(実施例1)
第1長繊維不織布を以下のように製造した。原料には固有粘度0.63dl/gのポリ
エチレンテレフタレート成分99質量%以上のポリエステルを使用した。紡糸温度285℃にてオリフィス径φ0.30mmの紡糸口金より単孔吐出量1.74g/minで紡出し、紡糸口金直下120mmより風速0.75m/secの20℃空気にて冷却しつつ、紡糸口金直下900mmの位置に配したエジェクタに2.20kg/cmの圧力で乾燥エアを供給し、1段階で延伸させ、下方1.0mの位置のコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ繊維配列がランダムになるように速度調整して堆積させた。次にインライン上に設置された圧着面積率8%の角錐台形状の凸部が千鳥配列されたエンボスロールにて180℃、線圧20kN/mでエンボス加工を行った。これにより、単糸繊度が2.2dtex、換算した紡糸速度が4500m/min、Δnが90×10-3、密度が1.370g/cm、乾熱面積収縮率が4%、目付が10g/mの第1長繊維不織布を得た。
【0028】
第2長繊維不織布を以下のように製造した。原料には固有粘度0.63dl/gのポリエチレンテレフタレート成分99質量%以上のポリエステルを使用した。紡糸温度285℃にてオリフィス径φ0.30mmの紡糸口金より単孔吐出量1.74g/minで紡出し、紡糸口金直下120mmより風速0.75m/secの20℃空気にて冷却しつつ、紡糸口金直下900mmの位置に配したエジェクタに0.85kg/cmの圧力で乾燥エアを供給し、1段階で延伸させ、下方1.0mの位置のコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ繊維配列がランダムになるように速度調整して堆積させた。次にインライン上に設置された圧着面積率8%の角錐台形状の凸部が千鳥配列されたエンボスロールにて60℃、線圧30kN/mでエンボス加工を行った。これにより、単糸繊度が6.0dtex、換算した紡糸速度が2500m/min、Δnが41×10-3、密度が1.335g/cm、乾熱面積収縮率が58%、縦方向と横方向の乾熱面積収縮率の比が1.01、目付が100g/mの第2長繊維不織布を得た。
【0029】
上記第1長繊維不織布と第2長繊維不織布とを重ねて、片面にニードル密度95ケ/cm、ニードル針深度10mmにてニードルパンチによる交絡処理を行い、不織布積層体を得た。
【0030】
上記不織布積層体を縦25cm、横10cmに裁断して、190℃で10秒間予熱を行い、その後、第1長繊維不織布を内側にして半分に折って、不織布積層体の端から1cmのところで接合温度190℃、接合圧力15kg/cm、接合時間5秒で熱圧着を行い、接合部を有する袋状物を得た。熱圧着した部分の全面が接合して接合部となっていた。この袋状物の中に内容物を入れ、100℃で3分間熱処理を行い、加熱収縮させた袋状物を得た。加熱収縮により袋状物と内容物とが密着していることが目視により確認できた。さらに、袋状物の接合部の縦方向の両端を裁断して接合強度を上記の方法で評価した。
【0031】
(実施例2)
【0032】
第1長繊維不織布を以下のように製造した。原料には固有粘度0.63dl/gのポリエチレンテレフタレート成分99質量%以上のポリエステルを使用した。紡糸温度285℃にてオリフィス径φ0.30mmの紡糸口金より単孔吐出量1.74g/minで紡出し、紡糸口金直下120mmより風速0.75m/secの20℃空気にて冷却しつつ、紡糸口金直下900mmの位置に配したエジェクタに2.20kg/cmの圧力で乾燥エアを供給し、1段階で延伸させ、下方1.0mの位置のコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ繊維配列がランダムになるように速度調整して堆積させた。次にインライン上に設置された圧着面積率8%の角錐台形状の凸部が千鳥配列されたエンボスロールにて180℃、線圧20kN/mでエンボス加工を行った。これにより、単糸繊度が2.2dtex、換算した紡糸速度が4500m/min、Δnが90×10-3、密度が1.370g/cm、乾熱面積収縮率が3%、目付が20g/mの第1長繊維不織布を得た。
【0033】
第2長繊維不織布を以下のように製造した。原料には固有粘度0.63dl/gのポリエチレンテレフタレート成分99質量%以上のポリエステルを使用した。紡糸温度285℃にてオリフィス径φ0.30mmの紡糸口金より単孔吐出量1.74g/minで紡出し、紡糸口金直下120mmより風速0.75m/secの20℃空気にて冷却しつつ、紡糸口金直下900mmの位置に配したエジェクタに0.85kg/cmの圧力で乾燥エアを供給し、1段階で延伸させ、下方1.0mの位置のコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ繊維配列がランダムになるように速度調整して堆積させた。次にインライン上に設置された圧着面積率8%の角錐台形状の凸部が千鳥配列されたエンボスロールにて60℃、線圧30kN/mでエンボス加工を行った。これにより、単糸繊度が6.0dtex、換算した紡糸速度が2800m/min、Δnが48×10-3、密度が1.338g/cm、乾熱面積収縮率が58%、縦方向と横方向の乾熱面積収縮率の比が1.01、目付が100g/mの第2長繊維不織布を得た。
【0034】
上記第1長繊維不織布と第2長繊維不織布とを重ねて、片面にニードル密度49ケ/cm、ニードル針深度8mmにてニードルパンチによる交絡処理を行い、次いでニードルパンチの貫出面より密度51ケ/cm、ニードル針深度8mmにてニードルパンチによる交絡処理を行い、不織布積層体を得た。
【0035】
上記不織布積層体を縦25cm、横10cmに裁断して190℃で10秒間予熱を行い、その後、第1長繊維不織布を内側にして半分に折って、不織布積層体の端から1cmのところを接合温度190℃、接合圧力15kg/cm、接合時間5秒で熱圧着を行い、接合部を有する袋状物を得た。熱圧着した部分の全面が接合して接合部となっていた。この袋状物の中に内容物を入れ、100℃で3分間熱処理を行い、加熱収縮させた袋状物を得た。加熱収縮により袋状物と内容物とが密着していることが目視により確認できた。さらに、袋状物の接合部の縦方向の両端を裁断して接合強度を上記の方法で評価した。
【0036】
(実施例3)
第1長繊維不織布を以下のように製造した。原料には固有粘度0.63dl/gのポリエチレンテレフタレート成分99質量%以上のポリエステルを使用した。紡糸温度285℃にてオリフィス径φ0.30mmの紡糸口金より単孔吐出量1.74g/minで紡出し、紡糸口金直下120mmより風速0.75m/secの20℃空気にて冷却しつつ、紡糸口金直下900mmの位置に配したエジェクタに2.20kg/cmの圧力で乾燥エアを供給し、1段階で延伸させ、下方1.0mの位置のコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ繊維配列がランダムになるように速度調整して堆積させた。次にインライン上に設置された圧着面積率8%の角錐台形状の凸部が千鳥配列されたエンボスロールにて180℃、線圧20kN/mでエンボス加工を行った。これにより、単糸繊度が2.2dtex、換算した紡糸速度が4500m/min、Δnが90×10-3、密度が1.370g/cm、乾熱面積収縮率が3%、目付が30g/mの第1長繊維不織布を得た。
【0037】
第2長繊維不織布を以下のように製造した。原料には固有粘度0.63dl/gのポリエチレンテレフタレート成分99質量%以上のポリエステルを使用した。紡糸温度285℃にてオリフィス径φ0.30mmの紡糸口金より単孔吐出量1.74g/minで紡出し、紡糸口金直下120mmより風速0.75m/secの20℃空気にて冷却しつつ、紡糸口金直下900mmの位置に配したエジェクタに0.85kg/cmの圧力で乾燥エアを供給し、1段階で延伸させ、下方1.0mの位置のコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ繊維配列がランダムになるように速度調整して堆積させた。次にインライン上に設置された圧着面積率8%の角錐台形状の凸部が千鳥配列されたエンボスロールにて60℃、線圧30kN/mでエンボス加工を行った。これにより、単糸繊度が6.0dtex、換算した紡糸速度が2800m/min、Δnが48×10-3、密度が1.338g/cm、乾熱面積収縮率が61%、縦方向と横方向の乾熱面積収縮率の比が1.01
、目付が100g/mの第2長繊維不織布を得た。
【0038】
上記第1長繊維不織布と第2長繊維不織布とを重ねて、片面にニードル密度49ケ/cm、ニードル針深度8mmにてニードルパンチによる交絡処理を行い、次いでニードルパンチの貫出面より密度51ケ/cm、ニードル針深度8mmにてニードルパンチによる交絡処理を行い、不織布積層体を得た。
【0039】
上記不織布積層体を縦25cm、横10cmに裁断して、170℃で10秒間予熱を行い、その後、第1長繊維不織布を内側にして半分に折って、不織布積層体の端から1cmのところを接合温度170℃、接合圧力10kg/cm、接合時間5秒で熱圧着し、接合部を有する袋状物を得た。熱圧着した部分の全面が接合して接合部となっていた。この袋状物の中に内容物を入れ、100℃で3分間熱処理を行い、加熱収縮させた袋状物を得た。加熱収縮により袋状物と内容物とが密着していることが目視により確認できた。さらに、袋状物の接合部の縦方向の両端を裁断して接合強度を上記の方法で評価した。
【0040】
(比較例1)
第1長繊維不織布を以下のように製造した。原料には固有粘度0.63dl/gのポリエチレンテレフタレート成分99質量%以上のポリエステルを使用した。紡糸温度285℃にてオリフィス径φ0.30mmの紡糸口金より単孔吐出量1.74g/minで紡出し、紡糸口金直下120mmより風速0.75m/secの20℃空気にて冷却しつつ、紡糸口金直下900mmの位置に配したエジェクタに2.20kg/cmの圧力で乾燥エアを供給し、1段階で延伸させ、下方1.0mの位置のコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ繊維配列がランダムになるように速度調整して堆積させた。次にインライン上に設置された圧着面積率8%の角錐台形状の凸部が千鳥配列されたエンボスロールにて180℃、線圧20kN/mでエンボス加工を行った。これにより、単糸繊度が2.2dtex、換算した紡糸速度が4500m/min、Δnが90×10-3、密度が1.370g/cm、乾熱面積収縮率が4%、目付が10g/mの第1長繊維不織布を得た。
【0041】
第2長繊維不織布を以下のように製造した。原料には固有粘度0.63dl/gのポリエチレンテレフタレート成分99質量%以上のポリエステルを使用した。紡糸温度285℃にてオリフィス径φ0.30mmの紡糸口金より単孔吐出量1.74g/minで紡出し、紡糸口金直下120mmより風速0.75m/secの20℃空気にて冷却しつつ、紡糸口金直下900mmの位置に配したエジェクタに0.85kg/cmの圧力で乾燥エアを供給し、1段階で延伸させ、下方1.0mの位置のコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ繊維配列がランダムになるように速度調整して堆積させた。次にインライン上に設置された圧着面積率8%の角錐台形状の凸部が千鳥配列されたエンボスロールにて180℃、線圧20kN/mでエンボス加工を行った。これにより、単糸繊度が4.8dtex、換算した紡糸速度が3800m/min、Δnが70×10-3、密度が1.358g/cm、乾熱面積収縮率が27%、縦方向と横方向の乾熱面積収縮率の比が1.05、目付が100g/mの第2長繊維不織布を得た。
【0042】
上記第1長繊維不織布と第2長繊維不織布とを重ねて、片面にニードル密度95ケ/cm、ニードル針深度10mmにてニードルパンチによる交絡処理を行い、不織布積層体を得た。
【0043】
上記不織布積層体を縦25cm、横10cmに裁断して100℃で10秒間予熱を行い、その後、第1長繊維不織布を内側にして半分に折って、不織布積層体の端から1cmのところを接合温度100℃、接合圧力15kg/cm、接合時間10秒で熱圧着し、接合部を有する袋状物を得た。熱圧着した部分の全面が接合部となっていた。この袋状物の中に内容物を入れ、100℃で3分間熱処理を行い、加熱収縮させた袋状物を得た。加熱
収縮は弱いが袋状物と内容物とが密着していることが目視により確認できた。さらに、袋状物の接合部の縦方向の両端を裁断して接合強度を上記の方法で評価した。
【0044】
(比較例2)
第1長繊維不織布を以下のように製造した。原料には固有粘度0.63dl/gのポリエチレンテレフタレート成分99質量%以上のポリエステルを使用した。紡糸温度285℃にてオリフィス径φ0.30mmの紡糸口金より単孔吐出量1.74g/minで紡出し、紡糸口金直下120mmより風速0.75m/secの20℃空気にて冷却しつつ、紡糸口金直下900mmの位置に配したエジェクタに2.20kg/cm2の圧力で乾燥エアを供給し、1段階で延伸させ、下方1.0mの位置のコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ繊維配列がランダムになるように速度調整して堆積させた。次にインライン上に設置された圧着面積率8%の角錐台形状の凸部が千鳥配列されたエンボスロールにて180℃、線圧20kN/mでエンボス加工を行った。これにより、単糸繊度が2.2dtex、換算した紡糸速度が4500m/min、Δnが90×10-3、密度が1.370g/cm、乾熱面積収縮率が2%、目付が10g/mの第1長繊維不織布を得た。
【0045】
第2長繊維不織布を以下のように製造した。原料には固有粘度0.63dl/gのポリエチレンテレフタレート成分99質量%以上のポリエステルを使用した。紡糸温度285℃にてオリフィス径φ0.30mmの紡糸口金より単孔吐出量1.74g/minで紡出し、紡糸口金直下120mmより風速0.75m/secの20℃空気にて冷却しつつ、紡糸口金直下900mmの位置に配したエジェクタに2.30kg/cm2の圧力で乾燥エアを供給し、1段階で延伸させ、下方1.0mの位置のコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ繊維配列がランダムになるように速度調整して堆積させた。単糸繊度は4.7dtex、換算した紡糸速度は4500m/min、Δn103×10-3、密度1.370g/cm、乾熱面積収縮率が8%、縦方向と横方向の乾熱面積収縮率の比が1.05からなる目付100g/mの第2長繊維不織布を得た。
【0046】
上記第1長繊維不織布と第2長繊維不織布とを重ねて、片面にニードル密度95ケ/cm、ニードル針深度8mmにてニードルパンチによる交絡処理を行い、不織布積層体を得た。
【0047】
上記不織布積層体を縦25cm、横10cmに裁断して190℃で10秒間予熱を行い、その後、第1長繊維不織布を内側にして半分に折って、不織布積層体の端から1cmのところを接合温度190℃、接合圧力3kg/cm、接合時間5秒で熱圧着し、接合部を有する袋状物を得た。熱圧着した部分の一部だけが接合し接合部となっていた。この袋状物の中に内容物を入れ、100℃で3分間熱処理を行い、加熱収縮させた袋状物を得た。袋状物と内容物とが密着していることは目視では確認できなかった。さらに、袋状物の接合部の縦方向の両端を裁断して接合強度を上記の方法で評価した。
【0048】
表1に実施例1~3及び比較例1~2に関する各物性値の測定結果を示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1から、実施例1~3は、袋状物にした際、内容物との密着性に優れ、接合強度に優れていることがわかる。またポリエチレンテレフタレート成分99質量%以上のポリエステルを使用しているため、リサイクル性もよい。なお、実施例1~3において、袋状物と内容物とは、密着していても融着はしていないことも確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明により、収縮性が高く、機械的強度特性に優れ、軽量で取扱い性に優れた不織布積層体及びそれを用いた袋状物を提供することが可能となり、産業界への寄与は大きい。