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特開2024-165350表皮固定構造、およびシートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165350
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】表皮固定構造、およびシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47C 31/02 20060101AFI20241121BHJP
   B68G 7/05 20060101ALI20241121BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A47C31/02 A
B68G7/05 B
B60N2/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081476
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】矢田貝 茉那
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】表皮端末の固定作業の負担を軽減し、かつ、シートの外観品質を向上することが可能な表皮固定構造の提供を目的とする。
【解決手段】表皮固定構造は、後側端末材8に配置された第1プレート9と、第1プレート9を後側端末材8の表面に沿って線状に延びる第1縫着部11と、前側端末材7に配置された第2プレート10と、第2プレート10を前側端末材7の表面に固定する第2縫着部16とを備える。第2プレート10は、その長手方向に延びる横スリット17と、幅方向に延びる右側縦スリット18および左側縦スリット19とを有する。第1プレート9は、差込み側端部12から右側縦スリット18を通じて第2プレート10と前側端末材7の間隙15に差し込まれるとともに線状の第1縫着部11が横スリット17に挿入される。これにより、後側端末材8は、前側端末材7に重ね合わせた状態で固定される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの基材の外面を各々覆う第1表皮および第2表皮の端末同士の固定構造であって、
前記第1表皮の端末の縁に沿って配置された長尺の第1プレートと、
前記第1プレートの外周より内側で当該第1プレートの長手方向に沿って線状に延び、当該第1プレートを前記第1表皮の端末の表面に固定する第1固定部と、
前記第2表皮の端末の縁に沿って配置された長尺の第2プレートと、
前記第2プレートを前記第2表皮の端末の表面に固定する第2固定部と
を備え、
前記第2プレートは、
前記第2プレートの長手方向に沿って線状に形成された長手方向スリットと、
前記長手方向スリットに連通する位置で当該第2プレートの幅方向に沿って線状に形成された少なくとも1本の幅方向スリットと、
を有し、
前記第2固定部は、前記第2プレートにおける前記長手方向スリットおよび前記幅方向スリットを含む範囲の外側の位置で当該前記第2プレートを前記第2表皮の端末の表面に固定することにより、前記第2プレートと前記第2表皮の端末の間に前記第1プレートが挿入可能な間隙を形成し、
前記第1プレートがその長手方向端部から前記幅方向スリットを通じて前記第2プレートと前記第2表皮の端末の間隙に差し込まれるとともに線状の前記第1固定部が前記長手方向スリットに挿入されることにより、前記第1表皮および前記第2表皮の端末同士が固定されている、
ことを特徴とする表皮固定構造。
【請求項2】
請求項1記載の表皮固定構造において、
前記第1プレートの前記長手方向端部は、前記第1固定部の端部から当該第1プレートの長手方向に延び、前記幅方向スリットに挿入可能な差込み側端部によって構成されている、
ことを特徴とする表皮固定構造。
【請求項3】
請求項2記載の表皮固定構造において、
前記第1プレートは、線状の前記第1固定部における前記差込み側端部と反対側から前記第1プレートの長手方向に延び、前記第2プレートと前記第2表皮の端末の間に挟まれる固定側端部をさらに有し、
前記差込み側端部および前記固定側端部は、前記長手方向スリットの長手方向の両側で前記第2プレートと前記第2表皮の端末の間に保持され、
前記固定側端部の長さは、前記差込み側端部の長さ以下である、
ことを特徴とする表皮固定構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の表皮固定構造において、
前記第1プレートおよび前記第2プレートは、板厚方向に曲げ変形可能な樹脂製の板材で形成されている、
ことを特徴とする表皮固定構造。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の表皮固定構造において、
前記幅方向スリットは、前記長手方向スリットの両端にそれぞれ配置されている、
ことを特徴とする表皮固定構造。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の表皮固定構造において、
前記幅方向スリットは、前記長手方向スリットの途中で交差する位置に配置されている、
ことを特徴とする表皮固定構造。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の表皮固定構造において、
前記第1固定部および前記第2固定部は、糸状体による縫着部によって構成されている、
ことを特徴とする表皮固定構造。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載の表皮固定構造において、
前記第2固定部は、前記長手方向スリットから前記第2プレートの幅方向に離間した幅方向両側の位置で当該第2プレートの長手方向に延びる、
ことを特徴とする表皮固定構造。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載の表皮固定構造において、
前記第2固定部は、前記長手方向スリットから前記第2プレートの幅方向に離間した位置で当該第2プレートの長手方向に延びる長手方向部分と、前記長手方向スリットから前記第2プレートの長手方向に離間した長手方向両側の位置で当該第2プレートの幅方向に延びる一対の幅方向部分とを有する、
ことを特徴とする表皮固定構造。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項に記載の表皮固定構造において、
前記第1プレートが取り付けられた第1表皮は、前記第2プレートの前記長手方向スリットと直交する方向に引っ張られた状態で、前記第1プレートおよび前記第2プレートを介して、前記第2表皮に固定されている、
ことを特徴とする表皮固定構造。
【請求項11】
基材の外面を各々覆う第1表皮および第2表皮の端末同士が固定されたシートの製造方法であって、
長尺の第1プレートを、前記第1表皮の端末の縁に沿って配置し、前記第1プレートにおける当該第1プレートの外周より内側の部分を前記第1表皮の端末の表面に固定することにより、前記第1プレートの長手方向に沿って線状に延びる第1固定部を形成する第1プレート固定工程と、
長尺の第2プレートであって長手方向に線状に延びる長手方向スリットおよび前記長手方向スリットに連通する位置で当該第2プレートの幅方向に線状に延びる幅方向スリットを有する前記第2プレートを、前記第2表皮の端末の縁に沿って配置し、前記第2プレートにおける前記長手方向スリットおよび前記幅方向スリットを含む範囲の外側の位置で、前記第2プレートを前記第2表皮の端末の表面に固定することにより、前記第2プレートと前記第2表皮の端末の間に前記第1プレートが挿入可能な間隙を形成する第2プレート固定工程と、
前記第1プレートをその長手方向端部から前記幅方向スリットを通じて前記第1プレートを前記第2プレートと第2表皮の端末の間隙に差し込むとともに線状の前記第1固定部を前記長手方向スリットに挿入することにより、前記第1表皮および前記第2表皮の端末同士を固定する、 第1プレート差し込み工程と
を含むことを特徴とするシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの表皮を固定する構造、およびその構造を有するシートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シートにおける基材の外面を各々覆う2枚の表皮の端末同士を固定する固定構造が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、シートのシートバック背面部下部における表皮の固定に関する構造であって、パッド材の背面を覆う上下両側の2枚の表皮の端末にそれぞれJ字断面のフックが取り付けられた構造が開示されている。この構造では、上側の表皮を下方に引っ張りながらフック同士を連結することにより、上下両側の2枚の表皮の端末同士を固定することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-169979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の構造では、上下両側の2枚の表皮の端末の固定が一対のフックの連結によってなされている。そのため、上下両側の表皮の端末同士を固定する際に、上側の表皮を下方に強く引っ張りながらフック同士を連結させる作業が必要であり、作業者に負担がかかる。
【0006】
また、表皮固定後のシートでは、フック同士を連結した部分がシートの外側に大きく突出するので、見た目が悪く、シートの外観品質の向上が難しいという問題もある。
【0007】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、表皮端末の固定作業の負担を軽減し、かつ、シートの外観品質を向上することが可能な表皮固定構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明の表皮固定構造は、シートの基材の外面を各々覆う第1表皮および第2表皮の端末同士の固定構造であって、前記第1表皮の端末の縁に沿って配置された長尺の第1プレートと、前記第1プレートの外周より内側で当該第1プレートの長手方向に沿って線状に延び、当該第1プレートを前記第1表皮の端末の表面に固定する第1固定部と、前記第2表皮の端末の縁に沿って配置された長尺の第2プレートと、前記第2プレートを前記第2表皮の端末の表面に固定する第2固定部とを備え、前記第2プレートは、前記第2プレートの長手方向に沿って線状に形成された長手方向スリットと、前記長手方向スリットに連通する位置で当該第2プレートの幅方向に沿って線状に形成された少なくとも1本の幅方向スリットと、を有し、前記第2固定部は、前記第2プレートにおける前記長手方向スリットおよび前記幅方向スリットを含む範囲の外側の位置で当該前記第2プレートを前記第2表皮の端末の表面に固定することにより、前記第2プレートと前記第2表皮の端末の間に前記第1プレートが挿入可能な間隙を形成し、前記第1プレートがその長手方向端部から前記幅方向スリットを通じて前記第1プレートが前記第2プレートと前記第2表皮の端末の間隙に差し込まれるとともに線状の前記第1固定部が前記長手方向スリットに挿入されることにより、前記第1表皮および前記第2表皮の端末同士が固定されている、ことを特徴とする。
【0009】
上記の構造を有することにより、第1表皮および第2表皮の端末同士を固定する際に、第1プレートを第2プレートと第2表皮の端末の間に差し込むだけでよく、表皮端末の固定作業の負担を軽減し、作業性が向上する。すなわち、上記の構造では、第1表皮の端末に固定された第1プレートをその長手方向端部から第2表皮の端末に固定された第2プレートの幅方向スリットを通じて前記第2プレートと第2表皮の端末の間隙に差し込むとともに第1プレートを第1表皮の端末に固定する線状の第1固定部を長手方向スリットに挿入することにより表皮端末固定作業を行えばよい。これにより、第1プレートを前記第2プレートと第2表皮の端末の間に保持することが可能になる。このように第1プレートを第2プレートと第2表皮の端末の間に当該第2プレートの長手方向に沿って差し込むだけで第1表皮の端末を第2表皮の端末に固定することが可能になるので、表皮端末の固定作業の負担を軽減し、作業性が向上する。
【0010】
また、この第1プレートの保持状態では、第1プレートの第1固定部の幅方向両側の部分および差込み側端部が、前記第2プレートによって広範囲に面接触した状態で保持される。これにより、第1表皮の端末が長手方向スリットと直交する方向に引っ張られても第1プレートが第2プレートから外れない。
【0011】
しかも、上記の構造では、第1プレートと第2プレートとを重ね合わせた部分によって第1表皮の端末を第2表皮の端末に固定しているので、従来のようなJ字断面のフック同士を連結した表皮固定構造と比べて端末同士の固定部分がシートの外側に突出する量を抑えることが可能になり、シートの外観品質が向上する。
【0012】
上記の表皮固定構造において、前記第1プレートの前記長手方向端部は、前記第1固定部の端部から当該第1プレートの長手方向に延び、前記幅方向スリットに挿入可能な差込み側端部によって構成されているのが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、第1プレートの長手方向端部が第1固定部から長手方向に延びる差込み側端部によって構成されている。差込み側端部は、第1固定部に拘束されないので、曲げながら容易に幅方向スリットに挿入することが可能である。また、差込み側端部が第2プレートと第2表皮の端末の間に保持されることにより、第1プレートを第2プレートによって安定した状態で保持することが可能である。
【0014】
上記の表皮固定構造において、前記第1プレートは、線状の前記第1固定部における差込み側端部と反対側から前記第1プレートの長手方向に延び、前記第2プレートと前記第2表皮の端末の間に挟まれる固定側端部をさらに有し、前記差込み側端部および前記固定側端部は、前記長手方向スリットの長手方向の両側で前記第2プレートと前記第2表皮の端末の間に保持され、前記固定側端部の長さは、前記差込み側端部の長さ以下であるのが好ましい。
【0015】
かかる構成では、第1プレートは、長手方向スリットの範囲で第2プレートと第2表皮の端末の間で保持されるだけでなく、さらに、線状の第1固定部の両側の差込み側端部および固定側端部が長手方向スリットの長手方向の両側で第2プレートと第2表皮の端末の間に保持されている。これにより、第1プレートを第2プレートによってより安定した状態で保持することが可能である。
【0016】
また、固定側端部の長さは、差込み側端部の長さ以下であるので、第1プレートを第2プレートの長手方向に往復移動させるだけで、差込み側端部および固定側端部の両方の差し込み動作を容易に行うことが可能である。具体的には、第1プレートの差込み側端部を第2プレートの幅方向スリットに差し込み、線状の第1固定部を長手方向スリットに挿入しながら第1プレートを第2プレートと第2表皮の端末の間隙に沿って移動させて長手方向スリットよりも奥側に差込み側端部を差し込む。その際、固定側端部が幅方向スリットに挿入されるように固定側端部と差し込み側端部の長さが設定されているため、第1プレートを上記の移動方向と反対方向に移動させるだけで、差込み側端部を第2プレートと第2表皮の端末の間に容易に差し込むことが可能である。
【0017】
上記の表皮固定構造において、前記第1プレートおよび前記第2プレートは、板厚方向に曲げ変形可能な樹脂製の板材で形成されているのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、第1プレートおよび第2プレートが板厚方向に曲げ変形可能であるので、第1表皮の端末を第2表皮の端末に固定する作業時には、第1プレートまたは第2プレートを曲げながら、第1プレートの差込み側端部を第2プレートの幅方向スリットに容易に挿入することが可能になり、作業性がさらに向上する。
【0019】
上記の表皮固定構造において、前記幅方向スリットは、前記長手方向スリットの両端にそれぞれ配置されているのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、第1プレートの差込み側端部を第2プレートの長手方向スリットの両端の幅方向スリットのうち挿入しやすい方向の幅方向スリットを選択して挿入することが可能になり、作業性がさらに向上する。
【0021】
上記の表皮固定構造において、前記幅方向スリットは、前記長手方向スリットの途中で交差する位置に配置されていてもよい。
【0022】
かかる構成によれば、長手方向スリットの途中の位置に配置された幅方向スリットから第1プレートの差込み側端部を挿入することが可能になり、差込み側端部の挿入動作時に第1プレートおよび第1表皮の端末の移動量(具体的には、第1プレートの長手方向における移動量)を抑えることが可能になり、第1表皮の端末を引っ張る負担が軽減するので、作業性がさらに向上する。
【0023】
上記の表皮固定構造において、前記第1固定部および前記第2固定部は、糸状体による縫着部によって構成されているのが好ましい。
【0024】
かかる構成では、第1固定部および第2固定部が糸状体による縫着部によって構成されているので、第1プレートおよび第2プレートをそれぞれの長手方向に沿って第1表皮および第2表皮の端末にそれぞれ容易にかつ強固に固定することが可能である。
【0025】
上記の表皮固定構造において、前記第2固定部は、前記長手方向スリットから前記第2プレートの幅方向に離間した幅方向両側の位置で当該第2プレートの長手方向に延びるのが好ましい。
【0026】
かかる構成によれば、第2プレートを安定かつ強固に第2表皮の端末に固定することが可能である。しかも、第2固定部は、長手方向スリットから第2プレートの幅方向に離間した幅方向両側の位置にあるので、第1プレートの長手方向の両端部に干渉しない。よって、第1プレートの長さ設定に影響を与えないので設計自由度が上がる。
【0027】
上記の表皮固定構造において、前記第2固定部は、前記長手方向スリットから前記第2プレートの幅方向に離間した位置で当該第2プレートの長手方向に延びる長手方向部分と、前記長手方向スリットから前記第2プレートの長手方向に離間した長手方向両側の位置で当該第2プレートの幅方向に延びる一対の幅方向部分とを有してもよい。
【0028】
かかる構成によれば、第2固定部は長手方向部分および一対の幅方向部分を有することにより、第2プレートをU字状に三か所から安定かつ強固に第2表皮の端末に固定することが可能である。
【0029】
上記の表皮固定構造において、前記第1プレートが取り付けられた第1表皮は、前記第2プレートの前記長手方向スリットと直交する方向に引っ張られた状態で、前記第1プレートおよび前記第2プレートを介して、前記第2表皮に固定されているのが好ましい。
【0030】
かかる構成によれば、第1表皮および第2表皮を長手方向スリットに直交した方向に引っ張られた状態で固定することが可能であり、表皮端末固定後の第1表皮および第2表皮のしわやたるみの発生を抑えることが可能である。しかも、第1表皮の引張りによって生じる第1プレートへの長手方向スリットと直交する方向に引張力によって生じる板厚方向の分力は第2プレートの板厚に対応する程度の大きさで済むので、第1プレートが第2プレートから抜け出るおそれが低い。
【0031】
本発明のシートの製造方法は、基材の外面を各々覆う第1表皮および第2表皮の端末同士が重ね合わされた状態で固定されたシートの製造方法であって、長尺の第1プレートを、前記第1表皮の端末の縁に沿って配置し、前記第1プレートにおける当該第1プレートの外周より内側の部分を前記第1表皮の端末の表面に固定することにより、前記第1プレートの長手方向に沿って線状に延びる第1固定部を形成する第1プレート固定工程と、長尺の第2プレートであって長手方向に線状に延びる長手方向スリットおよび前記長手方向スリットに連通する位置で当該第2プレートの幅方向に線状に延びる幅方向スリットを有する前記第2プレートを、前記第2表皮の端末の縁に沿って配置し、前記第2プレートにおける前記長手方向スリットおよび前記幅方向スリットを含む範囲の外側の位置で、前記第2プレートを前記第2表皮の端末の表面に固定することにより、前記第2プレートと前記第2表皮の端末の間に前記第1プレートが挿入可能な間隙を形成する第2プレート固定工程と、前記第1プレートをその長手方向端部から前記幅方向スリットを通じて前記第1プレートを前記第2プレートと第2表皮の端末の間隙に差し込むとともに線状の前記第1固定部を前記長手方向スリットに挿入することにより、前記第1表皮の端末を、前記第2表皮および前記第2表皮の端末同士を固定する、第1プレート差し込み工程とを含むことを特徴とする。
【0032】
上記の製法では、第1表皮の端末を第2表皮の端末に固定する際に、第1プレートを第2プレートと第2表皮の端末の間に差し込むだけでよく、表皮端末の固定作業の負担を軽減し、作業性が向上する。具体的には、上記の製法では、第1表皮の端末に固定された第1プレートをその長手方向端部から第2表皮の端末に固定された第2プレートの幅方向スリットを通じて前記第2プレートと第2表皮の端末の間隙に差し込むとともに第1表皮の端末に固定する線状の第1固定部を長手方向スリットに挿入することにより表皮端末固定作業を行えばよい。これにより、第1プレートを前記第2プレートと第2表皮の端末の間に保持することが可能になる。このように第1プレートを第2プレートと第2表皮の端末の間に当該第2プレートの長手方向に沿って差し込むだけで第1表皮の端末を第2表皮の端末に固定することが可能になるので、表皮端末の固定作業の負担を軽減し、作業性が向上する。
【発明の効果】
【0033】
以上のように、本発明の表皮固定構造によれば、表皮端末の固定作業の負担を軽減し、かつ、シートの外観品質を向上することができる。
【0034】
また、本発明のシートの製造方法によれば、表皮端末の固定作業の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の表皮固定構造が適用されたシートのシートバックの断面図である。
図2】本発明の第1実施形態の表皮固定構造に係る図1の前側端末材および後側端末材を重ね合わせて固定した固定構造をシートバックの背面側から見た図である。
図3図2の前側端末材および後側端末材を固定する前の状態を示す図である。
図4図2の後側端末材を省略して第1プレートが第2プレートと前側端末材の間に差し込まれた状態を示す図である。
図5図4のV-V線断面図である。
図6】(a)は図4のH型スリットを有する第2プレートおよび第2縫着部の平面図、(b)は図4の第1プレートおよび第1縫着部の平面図である。
図7図1のシートの製造方法であって、図4の第1プレートの差込み側端部を第2プレートの右側縦スリットに挿入する直前の状態を示す斜視図である。
図8図7の第1プレートを左方向へ移動させながら第2プレートと前側端末材の間に挿入し、第1縫着部が横スリットの左側端部まで到達するとともに差込み側端部を第2プレートの左側端部からはみ出した状態を示す斜視図である。
図9図8の第1プレートを右方向へ移動させて固定側端部が右側縦スリットの直前の位置まで到達した状態を示す斜視図である。
図10図8の第1プレートを右方向へ移動させて固定側端部を第2プレートの右側端部からはみ出した状態を示す斜視図である。
図11】第2実施形態の表皮固定構造に係る第1プレートおよび第2プレートの平面図であって、(a)は第2プレートおよび第2縫着部の平面図、(b)は第1プレートおよび第1縫着部の平面図である。
図12】第2実施形態の第1プレートの差込み動作の説明図であって、図11(b)の第1プレートを左方向へ移動させて固定側端部が右側縦スリットに差込み完了した状態を示す斜視図である。
図13】第2実施形態の第1プレートの差込み動作の説明図であって、図11(b)の第1プレートを右方向へ移動させて固定側端部のV字ノッチの全体が右側縦スリットの中に入っている状態を示す斜視図である。
図14】第2実施形態の第1プレートの差込み動作の説明図であって、図11(b)の第1プレートをさらに右方向へ移動させて固定側端部のVノッチの角が右側縦スリットの右端に到達した状態を示す斜視図である。
図15】第3実施形態の表皮固定構造に係る第1プレートおよび第2プレートの平面図であって、(a)は第1プレートおよび第1縫着部の平面図、(b)はT型スリットを有する第2プレートおよび第2縫着部の平面図である。
図16】第4実施形態の表皮固定構造に係る土型スリットを有する第2プレートの平面図である。
図17】第5実施形態の表皮固定構造に係る王型スリットを有する第2プレートの平面図である。
図18】第6実施形態の表皮固定構造に係る十型スリットを有する第2プレートの平面図である。
図19】第7実施形態の表皮固定構造に係る第1プレートおよび第2プレートの平面図であって、(a)は第1プレートおよび第1プレートの幅方向中心から上方にずれた位置の第1縫着部の平面図、(b)は横スリットが上方にずれたH型スリットを有する第2プレートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態に係る表皮固定構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
図1は、本発明の表皮固定構造が適用されたシート1のシートバック3の断面図である。
【0038】
シート1は、例えば、自動車のシートであり、シートクッション2と、当該シートクッション2の後方側X2に立設された乗員の背中支持用のシートバック3とを備える。
【0039】
シートバック3は、基材となるパッド4と、パッド4の前面側X1の部分を覆う前側表皮5(第2表皮)と、パッド4の背面側X2の部分を覆う後側表皮6(第1表皮)とを備える。
【0040】
本実施形態では、前側表皮5は、その端末を構成する部分として、皮革からなる前側表皮5の下端からパッド4の下側を通ってパッド4の背面側X2に延びる布製などの前側端末材7を有する。後側表皮6は、その端末を構成する部分として、皮革からなる後側表皮6の下端からパッド4の下方Z2に延びる布製などの後側端末材8を有する。前側端末材7のパッド4の背面側X2の終端部7aは、上方Z1に折り曲げられている。後側端末材8の終端部8aは、前側端末材7の終端部7aと重ね合わされた状態で、後述の第1プレート9および第2プレート10を用いて終端部7aに固定されている。
【0041】
なお、前側表皮5および後側表皮6の端末は、上記のようにこれら皮革製の表皮と別の部材である布製などの前側端末材7および後側端末材8で構成するだけでなく、表皮と同一の部材の構成(例えば、前側表皮5および後側表皮6そのものを延長した構成)であってもよい。
【0042】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の表皮固定構造は、図1~5に示されるように、第1プレート9および第2プレート10を用いて、第1表皮および第2表皮の端末同士を固定した構造として、後側表皮6(第1表皮)の後側端末材8および前側表皮5(第2表皮)の前側端末材7が重ね合わされた状態で固定された構造である。
【0043】
すなわち、第1実施形態の表皮固定構造は、第1プレート9と、第1プレート9の両端部(後述の差込み側端部12および固定側端部13)を除く中間部分を後側端末材8(第1表皮の端末)に沿って線状に延びる第1縫着部11(第1固定部)と、H型のスリット(後述の横スリット17、右側縦スリット18、および左側縦スリット19)を有する第2プレート10と、第2プレート10を前側端末材7(第2表皮の端末)に固定する第2縫着部16(第2固定部)とを備える。
【0044】
なお、第1プレート9および第2プレート10の配置は、上記とは逆の配置、すなわち、上記第1プレート9を前側端末材7に固定し、第2プレート10を後側端末材8に固定してもよい。すなわち、本発明の第1プレート9が固定される第1表皮の端末は、前側端末材7および後側端末材8の一方であればよく、第2プレート10が固定される第2表皮の端末は、前側端末材7および後側端末材8の他方であればよい。
【0045】
第1プレート9は、後側端末材8の縁に沿ってシート1の幅方向(図1の紙面垂直方向)と一致する方向(すなわち、図2~4の横方向Y)に延びるように配置された長尺かつ板状の部材である。
【0046】
図2~4および図6(b)に示されるように、第1プレート9は、一対の長手方向端部を有し、具体的には、第1プレート9の長手方向に対応する横方向Yの左側の端部の差込み側端部12と、右側の端部の固定側端部13とを有する。
【0047】
差込み側端部12は、第1縫着部11の左側端部から当該第1プレート9の横方向Yに隣接した位置において、第2プレート10の右側縦スリット18から第2プレート10と前側端末材7の間に差し込むことが可能な長手方向端部である。
【0048】
固定側端部13は、線状の第1縫着部11における差込み側端部12と反対側の位置に配置され、第2プレート10と前側端末材7の間に挟まれる長手方向端部である。
【0049】
固定側端部13の長さは、差込み側端部12の長さ以下である。すなわち、固定側端部13は、差込み側端部12と同じ長さまたは差込み側端部12よりも短くなるように設定されている。上記のように、差込み側端部12および固定側端部13は、第1プレート9のうち第1縫着部11が形成されていない当該第1縫着部11の横方向Yの両側の部分で構成されている。したがって、差込み側端部12および固定側端部13の長さは、第1縫着部11の位置によって任意に設定される。
【0050】
第1縫着部11(第1固定部)は、第1プレート9の外周より内側で当該第1プレート9の横方向Yに沿って線状に延び、当該第1プレート9を後側端末材8の表面(具体的には、前側端末材7と対向する面)に固定する。第1縫着部11は、第1プレート9の幅方向に対応する上下方向Zの中間の中心線を通って横方向Yに延びる。
【0051】
本実施形態では、第1固定部および第2固定部は、糸状体による縫着によって形成される第1縫着部11および第2縫着部16によって構成されている。第1縫着部11および第2縫着部16は、引張強度の高い繊維または金属などからなる糸状体により上記の第1プレート9および第2プレート10をそれぞれ後側端末材8および前側端末材7に線状に縫い付けることによって形成される。
【0052】
第2プレート10は、前側端末材7の縁に沿ってシート1の幅方向(図1の紙面垂直方向)と一致する方向(すなわち、図2~4の横方向Y)に延びるように配置された長尺かつ板状の部材である。
【0053】
図2~4および図6(a)に示されるように、第2プレート10は、H型のスリットを構成する3本のスリット、すなわち、横スリット17(長手方向スリット)と、右側縦スリット18および左側縦スリット19(幅方向スリット)とを有する。
【0054】
横スリット17は、第2プレート10の長手方向に対応する横方向Yに沿って線状に形成され、線状の第1縫着部11が挿入可能な長さ(具体的には、線状の第1縫着部11より長い長さ)を有する。さらに、詳しく言えば、横スリット17の長さは、線状の第1縫着部11の長さ以上であって、第1プレート9の全長(すなわち、線状の第1縫着部11、差込み側端部12、および固定側端部13の長さの合計)よりも短い長さになるように設定されている。なお、横スリット17は本実施形態では第2プレート10の上下方向Zの中間位置において横方向Yに延びている。
【0055】
右側縦スリット18および左側縦スリット19は、横スリット17に連通する位置で当該第2プレート10の幅方向に対応する上下方向Zに沿って線状に形成され、第1プレート9が挿入可能な長さ(具体的には、第1プレート9の幅と同じかそれよりも長い長さ)を有する。
【0056】
右側縦スリット18および左側縦スリット19は、横スリット17の両端にそれぞれ配置され、横スリット17の両端に連通するように形成されている。
【0057】
これら横スリット17、右側縦スリット18および左側縦スリット19は、第2プレート10を線状に貫通して形成されている。
【0058】
第2縫着部16(第2固定部)は、第2プレート10を前側端末材7の表面(具体的には、後側端末材8と対向する面)に固定する。
【0059】
第2縫着部16は、第2プレート10における横スリット17および右側縦スリット18および左側縦スリット19を含む範囲の外側の位置、言い換えれば第1プレート9を挿入した際に第1プレート9と重なる範囲を避けた位置で当該第2プレート10を前側端末材7の表面に固定し、第2プレート10と前側端末材7の間に第1プレート9を挿入可能な間隙15を形成するように構成されている。
【0060】
具体的には、本実施形態では、一対の第2縫着部16は、横スリット17から第2プレート10の上下方向Zに離間した上下方向Zの両側の位置で横方向Yに延びる。
【0061】
これにより、図4~5に示されるように、第2プレート10と前側端末材7とで挟まれた部分でかつ横方向Yに延びる一対の第2縫着部16の間の部分には、第1プレート9を挿入可能な間隙15が形成されている。
【0062】
一対の第2縫着部16の間隔は、第1プレート9が間隙15に挿入可能な間隔、例えば、第1プレート9の幅よりも数ミリ程度大きい間隔に設定される。
【0063】
図4~5に示されるように、第1プレート9は、第2プレート10と前側端末材7の間隙15に保持されるとともに線状の第1縫着部11が横スリット17に挿入されている。これにより、後側端末材8は、前側端末材7に重ね合わせた状態で固定されている。
【0064】
本実施形態では、さらに、差込み側端部12および固定側端部13は、横スリット17の両側で第2プレート10と前側端末材7の間に保持されている。
【0065】
上記の第1プレート9および第2プレート10は、それぞれ板厚方向に曲げ変形可能な樹脂製の板材で形成されている。樹脂製の板材としては、たとえばポリプロピレン製の板材などが採用される。
【0066】
第1プレート9および第2プレート10は、長尺で板状の部材であればよく、板厚方向に曲げ変形可能な材料であるのが好ましい。例えば、上記のように樹脂製の薄い板材だけでなく、表皮端末の固定に必要な強度があれば、木製の板材や、厚紙などでもよい。
【0067】
(シート1の製造方法)
上記のように構成された表皮端末構造を有するシート1は、以下のようにして製造される。
【0068】
この製造方法は、図1に示される基材であるパッド4の外面である前面および背面を各々覆う前側表皮5および後側表皮6のそれぞれの端末材である前側端末材7および後側端末材8同士が重ね合わされた状態で固定されたシート1を製造する方法である。
【0069】
この製造方法では、まず、第1プレート9を後側端末材8に固定する(第1プレート固定工程)。具体的には、図2~4および図6(b)に示される長尺かつ板状であって差込み側端部12および固定側端部13を有する第1プレート9を、後側端末材8の縁に沿ってシート1の幅方向に一致する横方向Yに延びるように配置する。第1プレート9における差込み側端部12および固定側端部13以外でかつ第1プレートの外周より内側の部分(言い換えれば、差込み側端部12と固定側端部13の間において当該第1プレート9の幅よりも狭い横方向Yに延びる部分)を、後側端末材8の表面に沿って線状に縫製することにより線状の第1縫着部11を形成する。
【0070】
ついで、第2プレート10を前側端末材7に固定する(第2プレート固定工程)。具体的には、図2~4および図6(a)に示される長尺かつ板状の第2プレート10であって横方向Yに線状に延びる横スリット17および横スリット17に連通する位置で当該第2プレート10の上下方向Zに線状に延びる右側縦スリット18および左側縦スリット19を有する第2プレート10を、前側端末材7の縁に沿ってシート1の幅方向に一致する横方向Yに延びるように配置する。第2プレート10における横スリット17および右側縦スリット18および左側縦スリット19を含む範囲の外側の位置で、横方向Yに延びる一対の第2縫着部16を縫製によって形成することで、第2プレート10を前側端末材7の表面に固定する。これにより、第1プレート9が挿入可能な第2プレート10と前側端末材7の間隙15(図4~5参照)を形成する。
【0071】
その後、第1プレート9を第2プレート10と前側端末材7の間隙15に差し込む(第1プレート差し込み工程)。具体的には、まず、図7~8に示されるように、第1プレート9の一方の長手方向端部である差込み側端部12を第2プレート10の右側縦スリット18に差し込み、線状の第1縫着部11を横スリット17に挿入しながら第1プレート9および後側端末材8を図7~8の左方向へ移動させ、第1プレート9を第2プレート10と前側端末材7の間隙15に差し込む。本実施形態では、その後、さらに図9~10に示されるように、第1プレート9および後側端末材8を図7~8の反対方向、すなわち、右方向へ移動させることにより、固定側端部13を第2プレート10と前側端末材7の間隙15に差し込む。これにより、差込み側端部12および固定側端部13の両方が第2プレート10と前側端末材7の間に差し込まれる。以上のようにして、第1プレート9および第2プレート10を用いて、後側端末材8を、前側端末材7に重ね合わせた状態で固定することが可能である。
【0072】
(第1実施形態の特徴)
(1)
第1実施形態の表皮固定構造では、図2~6に示されるように、第1プレート9は、第1縫着部11(第1固定部)の端部から当該第1プレート9の横方向Yに隣接した位置において、第2プレート10の右側縦スリット18(幅方向スリット)から第2プレート10と前側端末材7(第2表皮の端末)の間隙15(図4~5参照)に差し込むことが可能な長手方向端部である差込み側端部12を有する。第1プレート9は、差込み側端部12から右側縦スリット18を通じて第1プレート9が第2プレート10と前側端末材7の間隙15に差し込まれるとともに線状の第1縫着部11が横スリット17(長手方向スリット)に挿入されることにより、後側端末材8(第1表皮の端末)は、前側端末材7に重ね合わせた状態で固定されている。
【0073】
上記の構造を有することにより、後側端末材8を前側端末材7に固定する際に、第1プレート9を第2プレート10と前側端末材7の間に差し込むだけでよく、表皮端末の固定作業の負担を軽減し、作業性が向上する。具体的には、上記の構造では、後側端末材8に固定された第1プレート9の差込み側端部12を前側端末材7に固定された第2プレート10の右側縦スリット18に差し込んだ後に、第1プレート9を後側端末材8に固定する線状の第1縫着部11を横スリット17に挿入しながら第1プレート9を第2プレート10と前側端末材7の間隙15に差し込むことにより表皮端末固定作業を行えばよい。本実施形態では、さらに、第1プレート9の差込み側端部12と固定側端部13を第2プレート10と前側端末材7の間隙15に挿入する。これにより、第1プレート9を第2プレート10と前側端末材7の間に保持することが可能になる。このように第1プレート9を第2プレート10と前側端末材7の間隙15に当該第2プレート10の横方向Yに沿って差し込むだけで後側端末材8を前側端末材7に固定することが可能になるので、表皮端末の固定作業の負担を軽減し、作業性が向上する。
【0074】
また、この第1プレート9の保持状態では、第1プレート9の第1縫着部11の上下方向Z(上下方向)両側の部分(すなわち縫着部分の上下方向Z両側の部分)および横方向Y(左右方向)両側の差込み側端部12および固定側端部13が、第2プレート10によって広範囲に面接触した状態で保持される。これにより、後側端末材8が横スリット17と直交する方向(上下方向Z)に引っ張られても第1プレート9が第2プレート10から外れない。さらに詳しく言えば、後側表皮6および前側表皮5が弛まないように後側端末材8を前側端末材7に固定するに際して後側表皮6または前側表皮5のいずれか一方が寸法的に余裕が無かったとしても、第1プレート9および第2プレート10の弾性力により後側表皮6および前側表皮5は互いに引っ張り合った状態で保持される。
【0075】
しかも、本実施形態の構造では、第1プレート9と第2プレート10とを重ね合わせた部分によって後側端末材8を前側端末材7に固定しているので、従来のようなJ字断面のフック同士を連結した表皮固定構造と比べて前側端末材7および後側端末材8の固定部分がシート1の外側に突出する量を抑えることが可能になり、シート1の外観品質が向上する。
【0076】
<従来構造との比較説明>
ここで、本実施形態の表皮固定構造と従来構造とを比較する。従来のJ字断面のフックを連結する表皮固定構造では、背面側表皮を強く下方に引っ張った状態でJ字断面フック同士の係合を行わないと表皮をたるみなく張ることができないので、表皮はJ字断面フックを横方向にスライドさせる余裕がない。そのため、J字断面フックを横方向にスライドすることができない構造である。また、J字断面のフックはJ字断面形状を維持するために硬質樹脂または金属などで硬質の材料で製造されている必要があり、フックは板厚方向に曲げ変形が全くできず、さらにJ字断面の折り返し部分が開く方向への変形もしにくいので、フック同士を横方向から差し込みながら連結することは構造上不可能である。しかも、従来構造では、表皮を引っ張ってテンションをかけた状態でJ字断面のフック同士を強固に係合させなければJ字断面フックの係合が外れるおそれがあるので、表皮端末固定作業に多大な労力が必要である。
【0077】
一方、本実施形態の表皮固定構造では、差込み側の第1プレート9が上記のJ字断面フックと違って板材(好ましくは曲げ変形可能な樹脂製の板材)なので、第1プレート9を曲げながら第2プレート10の右側縦スリット18に差し込んで横方向Yに容易にスライドできる。また、第1プレート9の差込み完了後では、第1プレート9および第2プレート10の弾性を利用して前側表皮5および後側表皮6をしわやたるみのない平坦に張った状態を維持することができる。
【0078】
また、本実施形態の構造では、第1プレート9を第2プレート10の右側縦スリット18に挿入する際に、線状の第1縫着部11と横スリット17が同じ高さになるまで後側表皮6を引っ張るだけでよい。したがって、表皮端末固定作業時における後側表皮6の引張り量は、従来のJ字状のフックの場合に比べて小さい引張り量で済む。すなわち、従来のJ字断面のフックでは表皮の縮む力に抗してフック同士の係合が外れないように、J字断面のフックの折返し部分の長さをある程度確保する必要があるので、表皮端末固定作業時における前側表皮5の引張り量はJ字状のフックの折返し部分の長さ以上必要であり、引張り量がどうしても大きくなる。一方、本実施形態の第1プレート9は第2プレート10との連結時には、横スリット17の全長にわたって横スリット17の上下両側で第2プレート10が第1プレート9を保持するので、上記のように、表皮端末固定作業時における前側表皮5の引張り量は、線状の第1縫着部11(縫着部分)と横スリット17が同じ高さになるまで後側表皮6を下方に引っ張るのに必要な引張り量だけでよく、小さい引張り量で済む。
【0079】
(2)
第1実施形態の表皮固定構造では、図2~6に示されるように、第1プレート9の長手方向端部は、第1縫着部11の端部から当該第1プレート9の長手方向(横方向Y)に延び、右側縦スリット18に挿入可能な差込み側端部12によって構成されている。差込み側端部12は、第1縫着部11に拘束されないので、曲げながら容易に右側縦スリット18に挿入することが可能である。また、差込み側端部12が第2プレート10と前側端末材7の間隙15に保持されることにより、第1プレート9を第2プレート10によって安定した状態で保持することが可能である。
【0080】
なお、本発明では、差込み側端部12は必須ではなく、差込み側端部12が無い第1プレート9の長手方向端部も右側縦スリット18に挿入することが可能であるが、差込み側端部12を有する方が容易に挿入することができるとともに第1プレート9の安定した保持が可能になる点で好ましい。
【0081】
(3)
第1実施形態の表皮固定構造では、図2~6に示されるように、第1プレート9は、線状の第1縫着部11における差込み側端部12と反対側から第1プレート9の長手方向(横方向Y)に延び、第2プレート10と前側端末材7の間に挟まれる固定側端部13を有する。差込み側端部12および固定側端部13は、横スリット17の長手方向(横方向Y)の両側で第2プレート10と前側端末材7の間に保持されている。固定側端部13の長さは、差込み側端部12の長さ以下である。
【0082】
かかる構成では、第1プレート9は、横スリット17の範囲で第2プレート10と前側端末材7の間で保持されるだけでなく、さらに、線状の第1縫着部11の両側の差込み側端部12および固定側端部13が横スリット17の両側で第2プレート10と前側端末材7の間に保持されている。これにより、第1プレート9を第2プレート10によってより安定した状態で保持することが可能である。
【0083】
しかも、この構成では、図4に示されるように、第1プレート9の全長が第2プレート10の長さよりも長いので、第1プレート9を第2プレート10と前側端末材7の間隙15に差し込んで表皮端末固定を完了した状態では、差込み側端部12および固定側端部13が第2プレート10の両側からはみ出る。そのため、差込み側端部12および固定側端部13の位置を見るだけで表皮端末固定状態の確認を容易に行うことができる。
【0084】
また、固定側端部13の長さは、差込み側端部12の長さ以下であるので、第1プレート9を第2プレート10の横方向Yに往復移動させるだけで、差込み側端部12および固定側端部13の両方の差し込み動作を容易に行うことが可能である。具体的には、第1プレート9の差込み側端部12を第2プレート10の右側縦スリット18に差し込み、線状の第1縫着部11を横スリット17に挿入しながら第1プレート9を第2プレート10と前側端末材7の間隙に沿って移動させて横スリット17よりも奥側に差込み側端部12を差し込む。その際、固定側端部13が右側縦スリット18から第2プレート10と前側端末材7の間に挿入された状態となるように差込み側端部12と固定側端部13の長さが設定されている。よって、第1プレート9を上記の移動方向と反対方向に移動させるだけで、差込み側端部12を第2プレート10と前側端末材7の間に容易に差し込むことが可能である。
【0085】
(4)
第1実施形態の表皮固定構造では、第1プレート9および第2プレート10は、板厚方向に曲げ変形可能な樹脂製の板材で形成されている。したがって、第1プレート9および第2プレート10が板厚方向に曲げ変形可能であるので、後側端末材8を前側端末材7に固定する作業時には、第1プレート9または第2プレート10を曲げながら、第1プレート9の差込み側端部12を第2プレート10の右側縦スリット18に容易に挿入することが可能になり、作業性がさらに向上する。
【0086】
(5)
第1実施形態の表皮固定構造では、右側縦スリット18および左側縦スリット19は、横スリット17の両端にそれぞれ配置されている。かかる構成によれば、第1プレート9の差込み側端部12を第2プレート10の横スリット17の両端の右側縦スリット18および左側縦スリット19のうち挿入しやすい方向の右側縦スリット18および左側縦スリット19を選択して挿入することが可能になり、作業性がさらに向上する。
【0087】
例えば、シートの形状などによって、第1プレート9を右側から挿入しやすい構造の場合には、上記図3~8に示されるように、差込み側端部12を第1プレート9の左側端部に配置し、差込み側端部12を右側縦スリット18に挿入すればよい。一方、第1プレート9を左側から挿入しやすい構造の場合には、差込み側端部12を第1プレート9の右側端部に配置し、差込み側端部12を左側縦スリット19に挿入すればよい。
【0088】
(6)
第1実施形態の表皮固定構造では、第1固定部および第2固定部が糸状体による縫着部である第1縫着部11および第2縫着部16によって構成されているので、第1プレート9および第2プレート10をそれぞれの横方向Yに沿って後側端末材8および前側端末材7にそれぞれ容易にかつ強固に固定することが可能である。
【0089】
なお、上記の実施形態では、第1固定部および第2固定部は、縫着部である第1縫着部11および第2縫着部16によって構成されているが、縫着だけなく他の固定手段を採用してもよい。例えば、第1固定部および第2固定部として、接着や溶着、またはクリップ、面ファスナ、磁石などの固定手段を採用してもよい。例えば、線状の第1固定部は、接着や溶着または線状のクリップ(ステイプラのようなコ字状のクリップを線状に複数並べた構成)などの固定手段を採用することが可能である。また、第2プレート10を固定するための第2固定部は、第2プレート10における横スリット17および右側縦スリット18および左側縦スリット19を含む第1プレート9と重なる範囲を避けた位置で当該第2プレート10を前側端末材7に固定することが可能な固定手段であればよく、接着や溶着だけでなく、種々のクリップ、面ファスナ、磁石などの種々の固定手段を採用することが可能である。
【0090】
(7)
第1実施形態の表皮固定構造では、一対の第2縫着部16は、横スリット17から第2プレート10の上下方向Zに離間した上下方向Z両側の位置で当該第2プレート10の横方向Yに延びる。かかる構成によれば、第2プレート10を安定かつ強固に後側端末材8に固定することが可能である。しかも、横方向Yに延びる一対の第2縫着部16は、横スリット17から第2プレート10の上下方向Zに離間した位置にあるので、第1プレート9の横方向Yの両端部に干渉しないので、第1プレート9の長さに影響を与えず、設計自由度が上がる。
【0091】
(8)
第1実施形態の表皮固定構造では、第1プレート9が取り付けられた後側表皮6(第1表皮)の端末である後側端末材8は、第2プレート10の横スリット17と直交する方向(図4の上方向Z1、さらに詳しくは図5の方向D)に引っ張られた状態で、第1プレート9および第2プレート10を介して、後側表皮6の端末である後側端末材8に固定されている。
【0092】
かかる構成によれば、前側表皮5および後側表皮6を横スリット17に直交した方向(図4の上下方向Z)に引っ張られた状態で固定することが可能であり、表皮端末固定後の前側表皮5および後側表皮6のしわやたるみの発生を抑えることが可能である。しかも、後側表皮6の引張りによって生じる第1プレート9への横スリット17と直交する上下方向Zに引張力によって生じる板厚方向の分力(いいかえれば、図5の第1プレート9を横スリット17を通して第2プレート10から引っ張り出す方向の力)は第2プレート10の板厚に対応する程度の大きさで済むので、第1プレート9が第2プレート10から抜け出るおそれが低い。
【0093】
(9)
第1実施形態のシート1の製造方法は、上記のように、第1プレート固定工程と、第2プレート固定工程と、第1プレート差し込み工程とを含む。第1プレート固定工程では、上記の第1プレート9を、後側端末材8の縁に沿って配置し、第1プレート9における差込み側端部12および固定側端部13以外でかつ第1プレート9の外周より内側の部分を後側端末材8の表面に固定することにより、第1プレート9の長手方向(横方向Y)に沿って線状に延びる第1縫着部11を形成する。第2プレート固定工程では、上記の第2プレート10を、前側端末材7の縁に沿って配置し、第2プレート10における横スリット17および右側縦スリット18および左側縦スリット19を含む範囲の外側の位置で、第2縫着部16により、第2プレート10を前側端末材7の表面に固定する。これにより、第2プレート10と前側端末材7の間に第1プレート9が挿入可能な間隙15を形成する。第1プレート差し込み工程では、第1プレート9の差込み側端部12を第2プレート10の右側縦スリット18に差し込み、第1プレート9を第2プレート10と前側端末材7の間隙15に差し込むとともに線状の第1縫着部11を横スリット17に挿入することにより、後側端末材8を前側端末材7に重ね合わせた状態で固定する。
【0094】
上記の製法では、後側端末材8を前側端末材7に固定する際に、第1プレート9を第2プレート10と前側端末材7の間に差し込むだけでよく、表皮端末の固定作業の負担を軽減し、作業性が向上する。具体的には、上記の製法では、後側端末材8に固定された第1プレート9の差込み側端部12を前側端末材7に固定された第2プレート10の右側縦スリット18に差し込んだ後に、第1プレート9を後側端末材8に固定する線状の第1縫着部11を横スリット17に挿入しながら第2プレート10と前側端末材7の間隙15に差し込むことにより表皮端末固定作業を行えばよい。これにより、第1プレート9を第2プレート10と前側端末材7の間に保持することが可能になる。このように第1プレート9を第2プレート10と前側端末材7の間に当該第2プレート10の横方向Yに沿って差し込むだけで後側端末材8を前側端末材7に固定することが可能になるので、表皮端末の固定作業の負担を軽減し、作業性が向上する。
【0095】
また、上記実施形態の製法では、第1プレート9を横方向(横方向Y)にスライドして第2プレート10と前側端末材7の間隙15に差し込むだけでよいので、従来の表皮端末固定のためのJ字断面フック同士の連結作業に比べて作業者がしゃがみ込む必要がなく作業性が良い。
【0096】
また、上記実施形態の製法では、第1プレート9の差込み側端部12および固定側端部13の位置を見るだけで、表皮端末固定が正常に完了しているか容易に確認することが可能である。すなわち、第1プレート9の差込み側端部12および固定側端部13が、第2プレート10と前側端末材7の間に潜り込ませた状態で第2プレート10の両側からはみ出ていることを確認するだけで表皮端末固定が正常に完了しているか容易に確認することができる。
【0097】
(第2実施形態)
図11は、本発明の第2実施形態の表皮固定構造に係る第1プレートおよび第2プレートの平面図であって、(a)は第2プレートおよび第2縫着部の平面図、(b)は第1プレートおよび第1縫着部の平面図である。図12~14は、第2実施形態の第1プレートの差込み動作の説明図である。
【0098】
第2実施形態の表皮端末構造では、図11(a)、(b)に示されるように、第1実施形態の表皮端末構造と比較して、第2縫着部21がU字状に延びている点、第1プレート9の長手方向(横方向Y)の両端部にV字ノッチ22が形成されている点、第1プレート9に第1縫着部11の縫着位置を示す2つの目印23が形成されている点で異なる。
【0099】
具体的には、図11(a)に示されるように、U字状に延びる第2縫着部21は、長手方向部分21aと、一対の幅方向部分21b、21cとを有する。長手方向部分21aは、第2プレート10の横スリット17から第2プレート10の幅方向に離間した位置、例えば、図11(a)における下方Z2に離間した位置で当該第2プレート10の横方向Yに延びる。一対の幅方向部分21b、21cは、横スリット17から横方向Yに離間した横方向Yの両側の位置で当該第2プレート10の上下方向Zに延びる。
【0100】
U字状に延びる第2縫着部21は、第2プレート10における横スリット17および右側縦スリット18および左側縦スリット19を含む第1プレート9と重なる範囲を避けた位置で当該第2プレート10を前側端末材7の表面に固定するように構成されている。したがって、長手方向部分21aは、右側縦スリット18および左側縦スリット19の下端から下方Z2に離れた位置で横方向Yに延びている。また、一対の幅方向部分21b、21cの間隔は、第1プレート9の全長よりも大きい幅に設定されている。
【0101】
第2実施形態では、第2縫着部21は、長手方向部分21aおよび一対の幅方向部分21b、21cを有することにより、第2プレート10をU字状に三か所から安定かつ強固に前側端末材7に固定することが可能である。
【0102】
図11(b)に示されるように、V字ノッチ22は、第1プレート9の差込み側端部12および固定側端部13の幅方向両端にそれぞれV字状に切り欠かれている。V字ノッチ22は、第1プレート9を横方向Yにスライドさせるときの位置決めの役割をする。
【0103】
上記のように構成された第1プレート9を第2プレート10と前側端末材7の間隙に差し込む場合には、まず、上記第1実施形態と同様に、第1プレート9の左側の差込み側端部12を第2プレート10の右側縦スリット18に差し込み、線状の第1縫着部11を横スリット17に挿入しながら第1プレート9を第2プレート10と前側端末材7の間隙に沿って移動させて横スリット17よりも奥側に差込み側端部12を差し込む。このとき、差込み側端部12のV字ノッチ22が左側縦スリット19を通過したこと、および左側の目印23の位置で差込み側端部12が左側縦スリット19の左側まで正常に差し込まれたことを目で確認することができる。
【0104】
その後、図12~14に示されるように、第1プレートの右側の固定側端部13の差し込みを行う。なお、図12~14では、第1プレート9および固定側端部13の位置を視認し易くするために、後側端末材8における第1縫着部11によって縫着されていない部分は上方にまくり上げられている。
【0105】
まず、図12に示されるように、第1プレート9を左方向へ移動させて固定側端部13
を右側縦スリット18に完全に差し込む。
【0106】
その後、図13~14に示されるように、第1プレート9を右方向へ移動させて固定側端部13を右側縦スリット18よりも右側の第2プレート10と前側端末材7の間隙に差し込む。このとき、図13に示されるV字ノッチ22の全体が右側縦スリット18の中に入っている状態から図14に示されるV字ノッチ22の角が右側縦スリット18の右端に到達した状態になったことを目で確認することにより、固定側端部13が右側縦スリット18の右側まで正常に差し込まれたことを目で確認することができる。
【0107】
なお、第2実施形態の表面端末固定構造においても、U字状の第2縫着部21およびV字ノッチ22以外の構成は第1実施形態の構造と共通しているので、(第1実施形態の特徴)のうち(6)を除くすべての作用効果を奏することが可能である。
【0108】
(第3実施形態)
図15は、第3実施形態の表皮固定構造に係る第1プレートおよび第2プレートの平面図であって、(a)は第1プレートおよび第1縫着部の平面図、(b)はT型スリットを有する第2プレートおよび第2縫着部の平面図である。
【0109】
図15(b)に示される第3実施形態の第2プレート10は、上記第1実施形態の第2プレート10と比較して、左側縦スリット19が無い構成、すなわち、横スリット17および右側縦スリット18からなるT型スリットを有する構成である。この構成では、縦スリットが1本のみであるので、縦スリットを形成する加工作業が容易になり、製造コストを抑えることが可能である。
【0110】
第3実施形態におけるその他の構成は、第1実施形態の表面端末固定構造と共通する。
【0111】
なお、図15(b)に示される第3実施形態の第2プレート10を左右反転した構成、すなわち、横スリット17および上記の左側縦スリット19からなるT型スリットを有する構成にしても、縦スリットが1本のみであるので、縦スリットを形成する加工作業が容易になり、製造コストを抑えることが可能である。
【0112】
(第4実施形態)
図16は、第4実施形態の表皮固定構造に係る土型スリットを有する第2プレート10の平面図である。
【0113】
図16に示される第4実施形態の第2プレート10は、上記第1実施形態の第2プレート10と比較して、左側縦スリット19が無く、横スリット17の途中に中間縦スリット20が配置された構成、すなわち、横スリット17、右側縦スリット18、および中間縦スリット20からなる土型スリットを有する構成である。この構成では、図3に示される第1プレート9が固定された上記の後側端末材8を下方Z2に強く引っ張った状態で、第1プレート9の差込み側端部12を上記の第1~3実施形態のH型スリットまたはT型スリットを有する第2プレート10の横スリット17の端部の右側縦スリット18または左側縦スリット19まで移動しにくい場合には、差込み側端部12を中間縦スリット20に挿入して第1プレート9を横方向Yにスライドすることにより、第1プレート9を第2プレート10と前側端末材7の間隙に容易に差し込むことが可能になる。
【0114】
なお、図16に示される第4実施形態の第2プレート10を左右反転した構成、すなわち、横スリット17、上記の左側縦スリット19、中間縦スリット20からなる土型スリットを有する構成にしても、差込み側端部12を中間縦スリット20に挿入して第1プレート9を横方向Yにスライドすることにより、第1プレート9を第2プレート10と前側端末材7の間隙に容易に差し込むことが可能になる。
【0115】
(第5実施形態)
図17は、第5実施形態の表皮固定構造に係る王型スリットを有する第2プレートの平面図である。
【0116】
図17に示される第5実施形態の第2プレート10は、上記第1実施形態の第2プレート10と比較して、横スリット17の途中に中間縦スリット20が追加された構成、すなわち、横スリット17、右側縦スリット18、左側縦スリット19、および中間縦スリット20からなる王型スリットを有する構成である。
【0117】
この第5実施形態の第2プレート10の構成においても、上記第4実施形態の第2プレート10と同様に中間縦スリット20を有するので、図3に示される第1プレート9が固定された上記の後側端末材8を下方Z2に強く引っ張った状態で、第1プレート9の差込み側端部12を第2プレート10の右側縦スリット18または左側縦スリット19まで移動しにくい場合には、差込み側端部12を中間縦スリット20に挿入して第1プレート9を横方向Yにスライドすることにより、第1プレート9を第2プレート10と前側端末材7の間隙に容易に差し込むことが可能になる。
【0118】
(第6実施形態)
図18は、第6実施形態の表皮固定構造に係る十型スリットを有する第2プレートの平面図である。
【0119】
図18に示される第6実施形態の第2プレート10は、上記第1実施形態の第2プレート10と比較して、右側縦スリット18および左側縦スリット19が無く、横スリット17の途中に中間縦スリット20が配置された構成、すなわち、横スリット17および中間縦スリット20からなる十型スリットを有する構成である。この構成も、上記第4~5実施形態と同様に、図3に示される第1プレート9が固定された上記の前側端末材7を下方Z2に強く引っ張った状態で、第1プレート9の差込み側端部12を上記の第1~3実施形態のH型スリットまたはT型スリットを有する第2プレート10の横スリット17の端部の右側縦スリット18または左側縦スリット19まで移動しにくい場合には、差込み側端部12を中間縦スリット20に挿入して第1プレート9を横方向Yにスライドすることにより、第1プレート9を第2プレート10と前側端末材7の間隙に容易に差し込むことが可能になる。
【0120】
以上のように、第4~6実施形態の構成では、中間縦スリット20が横スリット17の途中の位置に配置されているので、中間縦スリット20から第1プレート9の差込み側端部12を挿入することが可能になり、差込み側端部12の挿入動作時に第1プレート9および前側端末材7の移動量(具体的には、第1プレート9の長手方向における移動量)を抑えることが可能になり、前側端末材7を引っ張る負担が軽減するので、作業性がさらに向上する。
【0121】
第4~6実施形態において、図16~18に示される横スリット17の途中に配置された中間縦スリット20から第1プレート9の第1プレート9の差込み側端部12(図15参照)を挿入して左方向へ差し込む場合、差込み側端部12の長さは、中間縦スリット20から右側縦スリット18まで(または横スリット17の右端まで)の長さ以上に設定されていれば、固定側端部13を中間縦スリット20に確実に挿入することが可能になる。
【0122】
(第7実施形態)
図19は、第7実施形態の表皮固定構造に係る第1プレート9および第2プレート10の平面図であって、(a)は第1プレート9および第1プレート9の幅方向(図19の上下方向Z)中心から上方Z1にずれた位置の第1縫着部11の平面図、(b)は横スリット17が上方にずれたH型スリットを有する第2プレート10の平面図である。
【0123】
図19(a)、(b)に示されるように、シート1の設計上または製造上の様々な理由によって、第1縫着部11の位置を第1プレート9の幅方向(図19の上下方向Z)中心から上方Z1または下方Z2にずれた位置にせざるを得ない場合であっても、それに対応して、第2プレート10の横スリット17の位置を上方Z1または下方Z2にずらすことによって、上記第1実施形態の表皮固定構造と同様に、第1縫着部11を横スリット17に挿入しながら第1プレート9を第2プレート10と前側端末材7の間隙に挿入することが可能である。
【0124】
なお、上記の第1~第7実施形態の表皮固定構造では、自動車のシート1のシートバック3に適用された例が示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、基材の表面を各々覆う2枚の表皮の端末同士が固定された構造を有するシートに広く適用することが可能である。例えば、本発明の表皮固定構造は、ソファ、座椅子、シートクッション、スタジアムなどのベンチシートカバー、またはこれらに類似する物品や家具などに広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 シート
3 シートバック
5 前側表皮(第2表皮)
6 後側表皮(第1表皮)
7 前側端末材(第2表皮の端末)
8 後側端末材(第1表皮の端末)
9 第1プレート
10 第2プレート
11 第1縫着部
12 差込み側端部
13 固定側端部
15 間隙
16、21 第2縫着部
17 横スリット(長手方向スリット)
18 右側縦スリット(幅方向スリット)
19 左側縦スリット(幅方向スリット)
20 中間縦スリット(幅方向スリット)
21a 長手方向部分
21b、21c 幅方向部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図19