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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165356
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】冷却貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 21/14 20060101AFI20241121BHJP
   A47F 3/04 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F25D21/14 T
A47F3/04 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081495
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000239585
【氏名又は名称】フクシマガリレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】小沼 栄晴
(72)【発明者】
【氏名】原田 委千弘
【テーマコード(参考)】
3B110
3L048
【Fターム(参考)】
3B110AA07
3B110AA11
3B110BA08
3B110BA09
3B110CA08
3L048AA01
3L048AA02
3L048AA08
3L048BA04
3L048BC02
3L048BC06
3L048CA02
3L048CB06
3L048DA03
3L048DB05
3L048EA00
3L048EA01
3L048EA03
3L048GA02
3L048GA05
(57)【要約】
【課題】排水を電気ヒータで加熱する蒸発処理装置を備える冷却貯蔵庫において、水位センサと水温センサの出力に依存しない電気ヒータの制御を可能とする。
【解決手段】蒸発処理装置10の電気ヒータ16への通電を制御する蒸発制御部が、冷凍機3の運転率に基づく制御を行う運転率制御モードを備える。運転率制御モードにおける蒸発制御部は、冷凍機3の運転率が所定の基準値以上の場合は、当該運転率が高いほど電気ヒータ16の発熱量を高く設定し、冷凍機3の運転率が基準値未満の場合は、当該運転率にかかわらず電気ヒータ16を非通電とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
庫内(2)を冷却する冷凍機(3)と、庫内(2)で生じた排水を蒸発させる蒸発処理装置(10)とを有し、
蒸発処理装置(10)が、排水を受け入れる蒸発皿(15)と、蒸発皿(15)内の排水を加熱する電気ヒータ(16)とを備える冷却貯蔵庫であって、
電気ヒータ(16)への通電を制御する蒸発制御部(23)が、冷凍機(3)の運転率に基づく制御を行う運転率制御モードを備えており、
運転率制御モードにおける蒸発制御部(23)は、冷凍機(3)の運転率が所定の基準値以上の場合は、当該運転率が高いほど電気ヒータ(16)の発熱量を高く設定し、冷凍機(3)の運転率が前記基準値未満の場合は、当該運転率にかかわらず電気ヒータ(16)を非通電とすることを特徴とする冷却貯蔵庫。
【請求項2】
蒸発皿(15)内の排水の水位を検出する水位センサ(17)と、該排水の水温を検出する水温センサ(18)と、水位センサ(17)および水温センサ(18)の故障を検出する故障検出部(24)とを備えており、
蒸発制御部(23)は、故障検出部(24)により水位センサ(17)と水温センサ(18)の両方が故障していると判定された場合に、運転率制御モードで電気ヒータ(16)を制御し、水位センサ(17)と水温センサ(18)の少なくとも一方が正常であれば、正常なセンサ(17・18)の出力に基づいて電気ヒータ(16)を制御する請求項1に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項3】
蒸発制御部(23)が、水位センサ(17)および水温センサ(18)の出力に基づいて電気ヒータ(16)を制御する通常制御モードと、水位センサ(17)のみの出力に基づいて電気ヒータ(16)を制御する水位制御モードとを備えており、
水位制御モードにおける電気ヒータ(16)の通電時の発熱量が、通常制御モードにおける電気ヒータ(16)の通電時の発熱量よりも低く設定されている請求項2に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項4】
蒸発制御部(23)が、水温センサ(18)のみの出力に基づいて電気ヒータ(16)を制御する水温制御モードを備えており、
水温制御モードにおける蒸発制御部(23)は、水温センサ(18)で検出される水温が所定の下限温度以下になると電気ヒータ(16)への通電を開始し、前記水温が前記下限温度よりも高い上限温度以上になると電気ヒータ(16)への通電を停止し、冷凍機(3)の運転率が所定の低域値以下になると前記下限温度および前記上限温度を下方修正する請求項2または3に記載の冷却貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除霜水や結露水などの排水の蒸発処理装置を備える冷蔵庫や冷蔵ショーケースなどの冷却貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
排水の蒸発処理装置を備える冷却貯蔵庫は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の蒸発処理装置は、貯蔵室の下方に形成された機械室内に収容されており、貯蔵室からの排水を受け入れる蒸発皿と、蒸発皿を加熱して排水の蒸発を促進する電気ヒータなどで構成される。電気ヒータへの通電は、蒸発皿内の排水の水位を検出する水位センサの出力と、同水温を検出する水温センサの出力とに基づいて制御されている。具体的には、水位センサで検出される水位が一定以上の場合に、水温センサで検出される水温が下限温度(例えば40℃)以下になると、制御部(マイクロコンピュータ)は電気ヒータへの通電を開始し、同水温が上限温度(例えば50℃)以上になると通電を停止する。排水の水位が一定未満の場合は、その水温にかかわらず電気ヒータへの通電は行わない。
【0003】
ヒータ式の蒸発処理装置を備える冷却貯蔵庫は、特許文献2と特許文献3にも開示されている。特許文献2の蒸発処理装置では、水位センサのみの出力に基づいて電気ヒータへの通電を制御しており、具体的には、水位センサで検出される水位が一定以上になると電気ヒータに通電する制御を行っている。また、特許文献3の蒸発処理装置では、水温センサのみの出力に基づいて電気ヒータへの通電を制御しており、具体的には、水温センサの検出値の上昇勾配が一定以上となった場合に、蒸発皿内に排水が無いと判断して電気ヒータを非通電とする制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-318233号公報
【特許文献2】特開2005-74090号公報
【特許文献3】特開2009-85473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の蒸発処理装置のように、蒸発皿に水位センサと水温センサを設け、両センサの出力に基づいて電気ヒータを制御すると、仮に水温センサが故障した場合でも、正常な水位センサの出力のみに基づいて、例えば特許文献2に記載の方法で電気ヒータを制御することができる。また、仮に水位センサが故障した場合でも、正常な水温センサの出力のみに基づいて、例えば特許文献3に記載の方法で電気ヒータを制御することができる。つまり、水位センサと水温センサの一方が故障しても、他方の出力に基づいて電気ヒータを制御して、蒸発処理装置ひいては冷却貯蔵庫の運転を継続することができ、以て冷却貯蔵庫の信頼性を高めることができる。しかし、水位センサと水温センサの両方が故障した場合に、冷却貯蔵庫の運転を継続するには、これらセンサの出力に依存しない別の方法で電気ヒータを制御する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、排水を電気ヒータで加熱する蒸発処理装置を備える冷却貯蔵庫において、水位センサと水温センサの出力に依存しない電気ヒータの制御を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、庫内2を冷却する冷凍機3と、庫内2で生じた排水を蒸発させる蒸発処理装置10とを有し、蒸発処理装置10が、排水を受け入れる蒸発皿15と、蒸発皿15内の排水を加熱する電気ヒータ16とを備える冷却貯蔵庫を対象とする。電気ヒータ16への通電を制御する蒸発制御部23が、冷凍機3の運転率に基づく制御を行う運転率制御モードを備えており、運転率制御モードにおける蒸発制御部23は、冷凍機3の運転率が所定の基準値以上の場合は、当該運転率が高いほど電気ヒータ16の発熱量を高く設定し、冷凍機3の運転率が前記基準値未満の場合は、当該運転率にかかわらず電気ヒータ16を非通電とすることを特徴とする。本発明において冷凍機3の運転率とは、例えば冷却貯蔵庫の稼働時間(除霜時間を除く)に占める冷凍機3の運転時間の割合のことである。
【0008】
蒸発皿15内の排水の水位を検出する水位センサ17と、該排水の水温を検出する水温センサ18と、水位センサ17および水温センサ18の故障を検出する故障検出部24とを備えており、蒸発制御部23は、故障検出部24により水位センサ17と水温センサ18の両方が故障していると判定された場合に、運転率制御モードで電気ヒータ16を制御し、水位センサ17と水温センサ18の少なくとも一方が正常であれば、正常なセンサ17・18の出力に基づいて電気ヒータ16を制御する。
【0009】
蒸発制御部23が、水位センサ17および水温センサ18の出力に基づいて電気ヒータ16を制御する通常制御モードと、水位センサ17のみの出力に基づいて電気ヒータ16を制御する水位制御モードとを備えており、水位制御モードにおける電気ヒータ16の通電時の発熱量が、通常制御モードにおける電気ヒータ16の通電時の発熱量よりも低く設定されている。
【0010】
蒸発制御部23が、水温センサ18のみの出力に基づいて電気ヒータ16を制御する水温制御モードを備えており、水温制御モードにおける蒸発制御部23は、水温センサ18で検出される水温が所定の下限温度以下になると電気ヒータ16への通電を開始し、前記水温が前記下限温度よりも高い上限温度以上になると電気ヒータ16への通電を停止し、冷凍機3の運転率が所定の低域値以下になると前記下限温度および前記上限温度を下方修正する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る冷却貯蔵庫は、蒸発処理装置10の電気ヒータ16への通電を冷凍機3の運転率に基づいて制御する運転率制御モードを備える。運転率制御モードにおいては、冷凍機3の運転率が基準値以上の場合は、当該運転率が高いほど電気ヒータ16の発熱量を高く設定し、冷凍機3の運転率が基準値未満の場合は、当該運転率にかかわらず電気ヒータ16を非通電とする。一般に、冷凍機3の運転率が高くその運転時間が長いほど、庫内2で生じる排水の量は増えると予測されるから、同運転率が高いほど電気ヒータ16の発熱量を高く設定すると、蒸発皿15内の排水をその量に応じて過不足無く加熱して、これを効率良く蒸発処理することができる。また、冷凍機3の運転率が基準値よりも低く、排水の量が少ないと予測される場合には、当該運転率にかかわらず電気ヒータ16を非通電とすることにより、蒸発処理装置10の消費電力を抑えることができる。運転率制御モードを備える本発明の冷却貯蔵庫によれば、蒸発処理装置10の水位センサ17と水温センサ18が故障した場合にも、同モードで蒸発処理装置10ひいては冷却貯蔵庫の運転を継続することができ、以て冷却貯蔵庫の信頼性を高めることができる。
【0012】
上記のように、冷凍機3の運転率に基づく排水量の予測は有用であるが、蒸発皿15内の排水の水位を検出する水位センサ17と、該排水の水温を検出する水温センサ18とを設けると、蒸発皿15内の排水の状態をより正確に把握することができる。水位センサ17と水温センサ18の少なくとも一方が正常である場合には、正常なセンサ17・18の出力に基づいて電気ヒータ16を制御することにより、電気ヒータ16の発熱量の過多や不足をより確実に防止することができる。
【0013】
水位センサ17のみの出力に基づいて電気ヒータ16を制御する水位制御モードによれば、水温センサ18の故障時においても蒸発皿15内の排水の水位を正確に把握して、蒸発皿15からの溢水や蒸発皿15の空焚きを防止することができる。また、水位制御モードにおける電気ヒータ16の通電時の発熱量を、通常制御モードにおける同発熱量よりも低く設定すると、水温センサ18からの出力に依存することなく蒸発皿15の過熱を防止することができる。
【0014】
水温センサ18のみの出力に基づいて電気ヒータ16を制御する水温制御モードによれば、水位センサ17の故障時においても蒸発皿15内の排水の水温を正確に把握して、排水の加熱不足に起因する蒸発皿15からの溢水や、蒸発皿15の過熱を防止することができる。また、冷凍機3の運転率が低域値以下となり、庫内2で生じる排水の量が比較的少ないと予測される場合に、電気ヒータ16の通電制御に係る下限温度と上限温度を下方修正すると、排水の枯渇による蒸発皿15の空焚きを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る冷却貯蔵庫の概略構成図である。
図2】同冷却貯蔵庫が備える蒸発処理装置の概略構成図である。
図3】同冷却貯蔵庫の制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態) 本発明に係る冷却貯蔵庫の実施形態を図1ないし図3に示す。本実施形態の冷却貯蔵庫は、上面に開口を有する平型の冷蔵オープンショーケースであり、断熱性のケース本体1で囲まれる庫内2が、蒸気圧縮式の冷凍機3により冷却される。この冷凍機3は、庫外の機械室4に設置される圧縮機5および凝縮器6と、庫内2の底部に設置される蒸発器7などを、冷媒配管で接続して構成されており、圧縮機5の駆動時に低温低圧の液状冷媒が蒸発器7に供給される。蒸発器7の周囲で冷却された冷気を循環ファン8で循環させることにより、庫内2を万遍なく冷却することができる。
【0017】
ケース本体1の下側に形成された機械室4には、圧縮機5と凝縮器6に加えて、これら機器を空冷する冷却ファン9と、庫内2で生じた排水を蒸発させる蒸発処理装置10とが収容されている。蒸発器7の除霜により生じる除霜水などの排水は、庫内2の底部の排水口から排水管11を通じて蒸発処理装置10へ流れ込み、そこで蒸発処理される。なお冷却ファン9は、蒸発処理装置10の周囲に気流を形成して、排水の蒸発を促進することにも寄与する。
【0018】
図2に示すように蒸発処理装置10は、排水管11から流下する排水を受け入れる蒸発皿15と、蒸発皿15の外底面に取り付けられる電気ヒータ16とを備える。蒸発皿15内の排水は、電気ヒータ16に通電しなくても徐々に蒸発するが、電気ヒータ16に通電して蒸発皿15を加熱することにより、排水の蒸発を促進することができる。また蒸発処理装置10には、蒸発皿15内の排水の水位を検出する水位センサ17と、該排水の水温を検出する水温センサ18とが設けられている。水位センサ17は、蒸発皿15内の排水の水位に従って上下動するフロート19と、該フロート19が所定の高位置まで上昇するとON信号を出力する図外のスイッチとを備える。
【0019】
図3に示すように冷却貯蔵庫の制御系は、冷凍機3の圧縮機5を制御する冷却制御部22と、蒸発処理装置10の電気ヒータ16を制御する蒸発制御部23と、蒸発皿15に設けられた水位センサ17および水温センサ18の故障を検出する故障検出部24とを含む。冷却制御部22は、庫内2に設けられた庫内温度センサ26の出力に基づいて、圧縮機5をオンオフ制御しており、具体的には、庫内温度センサ26により検出される庫内温度が所定の上限値まで上昇すると、圧縮機5を駆動させて庫内2の冷却を開始し、庫内温度が上限値よりも低い下限値まで低下すると、圧縮機5を停止させて庫内2の冷却を停止する。なお庫内2の循環ファン8は常時駆動され、機械室4の冷却ファン9は圧縮機5に連動してオンオフ制御される。
【0020】
本実施形態の電気ヒータ16は、その通電率を制御可能に構成されており、蒸発制御部23は電気ヒータ16の通電率を0%(オフ)から100%の間で制御して、その発熱量を調整する。また蒸発制御部23は、パラメータの種類が異なる複数の制御モードを備えており、故障検出部24からの出力に基づいて制御モードを選択する。具体的には、次の表1に示すように、故障検出部24からの出力が無く、水位センサ17と水温センサ18が共に正常である場合は、両センサ17・18の出力に基づく通常制御モードで電気ヒータ16を制御する。また、故障検出部24が水温センサ18のみの故障を出力している場合は、水位センサ17の出力に基づく水位制御モードで電気ヒータ16を制御し、故障検出部24が水位センサ17のみの故障を出力している場合は、水温センサ18の出力に基づく水温制御モードで電気ヒータ16を制御する。そして、故障検出部24が両センサ17・18の故障を出力している場合は、圧縮機5(冷凍機3)の運転率に基づく運転率制御モードで電気ヒータ16を制御する。圧縮機5の運転率とは、冷却貯蔵庫の稼働時間(蒸発器7の除霜時間を除く)に占める圧縮機5の運転時間の割合のことであり、例えば1時間毎に最新の値に更新される。なお各制御モードの詳細は後述する。
【0021】
【表1】
【0022】
故障検出部24は、水位センサ17の故障の有無を判定する第1判定部27と、水温センサ18の故障の有無を判定する第2判定部28とを備える。故障検出部24は、各判定部27・28によりセンサ17・18が故障していると判定されると、その旨の信号を蒸発制御部23へ出力するとともに、センサ17・18の故障をユーザに報知する報知手段30を作動させて、故障したセンサ17・18の交換や修理を促す。
【0023】
水位センサ17に生じ得る故障としては、スケールの付着によりフロート19の上下動が妨げられる動作不良を挙げることができる。水位センサ17の正常時の動作の一例として、圧縮機5の運転率が比較的低い(例えば40%以下)ときに、蒸発皿15内の排水を電気ヒータ16で加熱して、長時間(例えば3時間)に亘って蒸発に適した温度(例えば50~60℃)に維持し続けると、通常は排水の水位と共にフロート19が下降して、水位センサ17の出力はONからOFFに切り替わる筈である。また、圧縮機5の運転率が比較的高い(例えば80%以上)状態が長時間(例えば3時間)に亘るときは、庫内2(蒸発器7)で多くの排水が生じて蒸発皿15に流れ込むから、通常は水位と共にフロート19が上昇して、水位センサ17の出力はOFFからONに切り替わる筈である。これらの原則に反した信号を水位センサ17が出力すると、第1判定部27は水位センサ17が故障していると判定する。
【0024】
水温センサ18に生じ得る故障としては、内部における短絡と断線を挙げることができる。水温センサ18の内部で短絡が生じると、水温センサ18が異常な高温(例えば100℃以上)を出力し、同内部で断線が生じると、水温センサ18が異常な低温(例えば0℃以下)を出力するから、このような場合に第2判定部28は水温センサ18が故障していると判定する。なお本発明において、第1判定部27と第2判定部28の構成は上記のものに限られず、任意の手法で水位センサ17と水温センサ18の故障の有無を判定することができる。
【0025】
蒸発制御部23による電気ヒータ16の各制御モードについて以下に説明する。まず、水位センサ17と水温センサ18の正常時は通常制御モードとなり、蒸発制御部23は両センサ17・18の出力に基づいて電気ヒータ16への通電を制御する。具体的には、蒸発皿15内の排水量が比較的多く、水位センサ17の出力がONであるときに、水温センサ18で検出される水温が所定の下限温度(例えば50℃)以下になると、蒸発制御部23は電気ヒータ16への通電を開始し、同水温が下限温度よりも高い上限温度(例えば60℃)以上になると、電気ヒータ16への通電を停止する。蒸発皿15内の排水量が比較的少なく、水位センサ17の出力がOFFであるときは、水温にかかわらず電気ヒータ16への通電は行わない。この通常制御モードにおいて、電気ヒータ16の通電時の通電率(発熱量)は、例えば100%に設定することができる。
【0026】
水位センサ17の正常時かつ水温センサ18の故障時は水位制御モードとなり、蒸発制御部23は水位センサ17のみの出力に基づいて電気ヒータ16への通電を制御する。具体的には、水位センサ17の出力がONであるときに電気ヒータ16に通電し、同出力がOFFであるときは電気ヒータ16を非通電とする。この水位制御モードにおいて、電気ヒータ16の通電時における通電率(発熱量)は、蒸発皿15の過熱を防止する観点から、先の通常制御モードにおける同通電率よりも低く設定することができる。
【0027】
水温センサ18の正常時かつ水位センサ17の故障時は水温制御モードとなり、蒸発制御部23は水温センサ18のみの出力に基づいて電気ヒータ16への通電を制御する。具体的には、先の通常制御モードと同様に下限温度(例えば50℃)と上限温度(例えば60℃)を設定し、水温センサ18で検出される水温が下限温度以下になると電気ヒータ16への通電を開始し、同水温が上限温度以上になると電気ヒータ16への通電を停止する。ただし、圧縮機5(冷凍機3)の運転率が所定の低域値(例えば40%)以下となり、庫内2で生じる排水の量が比較的少ないと予測される場合には、排水の枯渇による蒸発皿15の空焚きを防止する観点から、蒸発制御部23は下限温度と上限温度を例えば30℃と40℃に下方修正する。
【0028】
水位センサ17と水温センサ18の故障時は運転率制御モードとなり、蒸発制御部23は圧縮機5(冷凍機3)の運転率に基づいて電気ヒータ16への通電を制御する。具体的には、圧縮機5の運転率が所定の基準値(例えば40%)以上の場合は、当該運転率が高いほど電気ヒータ16の通電率(発熱量)を高く設定し、圧縮機5の運転率が基準値未満の場合は、当該運転率にかかわらず電気ヒータ16を非通電とする。本実施形態では、電気ヒータ16に通電する場合の通電率を、圧縮機5の運転率に一致させている。例えば、圧縮機5の運転率が80%のときは、電気ヒータ16の通電率もこれと同じ80%に設定される。
【0029】
一般に、圧縮機5の運転率が高くその運転時間が長いほど、庫内2で生じる排水の量は増えると予測されるから、同運転率が高いほど電気ヒータ16の通電率(発熱量)を高く設定すると、蒸発皿15内の排水をその量に応じて過不足無く加熱して、これを効率良く蒸発処理することができる。また、圧縮機5の運転率が基準値よりも低く、排水の量が少ないと予測される場合には、当該運転率にかかわらず電気ヒータ16を非通電とすることにより、蒸発処理装置10の消費電力を抑えることができる。運転率制御モードを備える本実施形態の冷却貯蔵庫によれば、蒸発処理装置10の水位センサ17と水温センサ18が故障した場合にも、同モードで蒸発処理装置10ひいては冷却貯蔵庫の運転を継続することができ、以て冷却貯蔵庫の信頼性を高めることができる。
【0030】
蒸発処理装置10に水位センサ17と水温センサ18を設けると、蒸発皿15内の排水の状態をより正確に把握することができる。水位センサ17と水温センサ18の少なくとも一方が正常である場合には、正常なセンサ17・18の出力に基づいて電気ヒータ16を制御することにより、電気ヒータ16の発熱量の過多や不足をより確実に防止することができる。
【0031】
本発明において電気ヒータ16は、通電率の制御が可能なものに限られず、例えば独立してオンオフ制御が可能な複数本のヒータの群で電気ヒータ16を構成してもよい。この場合は、通電するヒータの本数を変更することにより、電気ヒータ16の全体の発熱量を調整することができる。また電気ヒータ16の取付位置は、蒸発皿15の内外面のどちらであってもよい。水温センサ18についても同様である。水位センサ17は、排水の水位を多段階や無段階で検出するものであってもよく、その種類もフロートスイッチに限られない。また本発明は、上記実施形態に示した冷蔵オープンショーケース以外に、貯蔵室の開口が扉で開閉される密閉型のショーケースや冷蔵庫など、各種の冷却貯蔵庫に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
2 庫内
3 冷凍機
5 圧縮機
10 蒸発処理装置
15 蒸発皿
16 電気ヒータ
17 水位センサ
18 水温センサ
23 蒸発制御部
24 故障検出部
図1
図2
図3