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特開2024-165357白煙防止システム、焼却設備、白煙防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165357
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】白煙防止システム、焼却設備、白煙防止方法
(51)【国際特許分類】
   F23J 15/00 20060101AFI20241121BHJP
   F23J 13/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F23J15/00 F
F23J13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081497
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】523183714
【氏名又は名称】月島JFEアクアソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】長沢 英和
(72)【発明者】
【氏名】河岸 正泰
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊樹
【テーマコード(参考)】
3K070
【Fターム(参考)】
3K070AC34
3K070DA04
3K070DA50
3K070DA58
3K070DA60
(57)【要約】
【課題】排ガスを加熱する加熱熱量を低減する。
【解決手段】排ガスを加熱する白煙防止予熱器と、外気の温度と湿度とを取得する外気条件取得部と、焼却炉から排出される排ガスの水分と温度とを取得する排ガス状態取得部と、前記外気の温度及び湿度に応じた外気条件に基づいて飽和湿りガス曲線に対して求められる接線と、当該飽和湿りガス曲線との関係によって定まる複数の領域のうち、いずれの領域に、前記排ガスの水分及び温度に応じた排ガスの状態を表す排ガス点が該当するかを判定する判定部と、前記判定された結果に基づいて、前記排ガスを加熱する加熱熱量を、前記該当する領域に応じた加熱熱量となるように必要加熱熱量を求める加熱熱量決定部と、前記加熱熱量決定部によって決定された必要加熱熱量に基づいて、前記白煙防止予熱器によって前記排ガスを加熱させる制御部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスを加熱する白煙防止予熱器と、
外気の温度と湿度とを取得する外気条件取得部と、
焼却炉から排出される排ガスの水分と温度とを取得する排ガス状態取得部と、
前記外気の温度及び湿度に応じた外気条件に基づいて飽和湿りガス曲線に対して求められる接線と、当該飽和湿りガス曲線との関係によって定まる複数の領域のうち、いずれの領域に、前記排ガスの水分及び温度に応じた排ガスの状態を表す排ガス点が該当するかを判定する判定部と、
前記判定された結果に基づいて、前記排ガスを加熱する加熱熱量を、前記該当する領域に応じた加熱熱量となるように必要加熱熱量を求める加熱熱量決定部と、
前記加熱熱量決定部によって決定された必要加熱熱量に基づいて、前記白煙防止予熱器によって前記排ガスを加熱させる制御部と、
を有する白煙防止システム。
【請求項2】
前記判定部によって、前記排ガス点が、
前記外気条件に応じて定まる点である外気点を基点として前記飽和湿りガス曲線のうち温度が高い方に対して定まる第1接線と、
前記外気点を基点として前記飽和湿りガス曲線のうち温度が低い方に対して定まる第2接線と、
前記飽和湿りガス曲線と、
によって囲まれる第2領域に該当すると判定された場合、
前記加熱熱量決定部は、前記加熱熱量を増加しないと決定する
請求項1に記載の白煙防止システム。
【請求項3】
前記判定部によって、前記排ガス点が、
前記第1接線を基準として前記飽和湿りガス曲線とは反対側であって、前記第2接線を基準として前記飽和湿りガス曲線とは反対側である第4領域に該当すると判定された場合、
前記加熱熱量決定部は、前記加熱熱量を増加しないと決定する
請求項2に記載の白煙防止システム。
【請求項4】
前記判定部によって、前記排ガス点が、
前記第2接線と前記飽和湿りガス曲線との間である第3領域に該当すると判定された場合、
前記加熱熱量決定部は、前記排ガス点が前記第2接線に到達するために必要な加熱熱量となるように前記加熱熱量を決定する
請求項3に記載の白煙防止システム。
【請求項5】
前記判定部によって、前記排ガス点が、
前記第1接線と前記飽和湿りガス曲線との間である第1領域に該当すると判定された場合、
前記加熱熱量決定部は、前記排ガス点が前記第1接線に到達するために必要な加熱熱量となるように前記加熱熱量を決定する
請求項4に記載の白煙防止システム。
【請求項6】
前記排ガスに含まれる水滴量を取得する水滴量取得部を有し、
前記判定部が、
前記排ガス点が、前記飽和湿りガス曲線より水分率が高い領域である第5領域にあると判定した場合、
前記加熱熱量決定部は、
前記水滴量取得部によって得られた水滴量に応じた加熱熱量を含むように加熱熱量を決定する
請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の白煙防止システム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記必要加熱熱量と、
前記白煙防止予熱器に供給される熱媒の温度である入り口温度と、前記白煙防止予熱器から出る熱媒の温度である出口温度と、前記白煙防止予熱器に供給される熱媒の流量と、に基づいて求まる放熱側の加熱熱量である放熱側加熱熱量と、
の大小関係に基づいて、
前記必要加熱熱量が前記放熱側加熱熱量よりも小さい場合に、前記白煙防止予熱器によって前記排ガスを加熱する加熱熱量を減らし、
前記必要加熱熱量が前記放熱側加熱熱量よりも大きい場合に、前記白煙防止予熱器によって前記排ガスを加熱する加熱熱量を増やす、
請求項6に記載の白煙防止システム。
【請求項8】
前記制御部は、
前記必要加熱熱量と、
前記白煙防止予熱器に供給される熱媒のエンタルピーである入口エンタルピーと、前記白煙防止予熱器から出る熱媒のエンタルピーである出口エンタルピーと、前記白煙防止予熱器に供給される熱媒の流量と、に基づいて求まる放熱側の加熱熱量である放熱側加熱熱量と、
の大小関係に基づいて、
前記必要加熱熱量が前記放熱側加熱熱量よりも小さい場合に、前記白煙防止予熱器によって前記排ガスを加熱する加熱熱量を減らし、
前記必要加熱熱量が前記放熱側加熱熱量よりも大きい場合に、前記白煙防止予熱器によって前記排ガスを加熱する加熱熱量を増やす、
請求項6に記載の白煙防止システム。
【請求項9】
前記放熱側加熱熱量と、
前記白煙防止予熱器の出口の排ガスの温度である排ガス出口温度と、前記白煙防止予熱器の出口の排ガスの流量と、に基づいて求まる受熱側の加熱熱量である受熱側加熱熱量と、
の大小関係に基づいて、
前記排ガスに含まれる水滴が蒸発しているか否かを表す結果を出力する出力部
を有する請求項7に記載の白煙防止システム。
【請求項10】
焼却炉と、請求項1に記載の白煙防止システムを備えた、焼却設備。
【請求項11】
外気条件取得部が、外気の温度と湿度とを取得し、
排ガス状態取得部が、焼却炉から排出される排ガスの水分と温度とを取得し、
判定部が、前記外気の温度及び湿度に応じた外気条件に基づいて飽和湿りガス曲線に対して求められる接線と、当該飽和湿りガス曲線との関係によって定まる複数の領域のうち、いずれの領域に、前記排ガスの水分及び温度に応じた排ガスの状態を表す排ガス点が該当するかを判定し、
加熱熱量決定部が、前記判定された結果に基づいて、前記排ガスを加熱する加熱熱量を、前記該当する領域に応じた加熱熱量となるように必要加熱熱量を求め、
制御部が、前記加熱熱量決定部によって決定された必要加熱熱量に基づいて、排ガスを加熱する白煙防止予熱器によって前記排ガスを加熱させる
白煙防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白煙防止システム、焼却設備、白煙防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物焼却設備から排出される排ガスを加熱することで、煙突から排出される排ガスに白煙が生じることを防止する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
白煙は、外気条件(外気の温度及び湿度)と排ガスの状態(温度及び湿度)との関係に応じて白煙が生じるか否かを把握することが可能である。例えば、絶対湿度と温度との関係に基づく飽和湿りガス曲線に対して、排ガスの状態に応じたプロットと外気の状態に応じたプロットとを結ぶ直線が、当該飽和湿りガス曲線と交差する場合には白煙が生じることを把握することができる。白煙が生じることが把握できる場合には、白煙防止予熱器等を用いて、白煙が生じない状態まで排ガスを加熱することで、白煙を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-189195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、白煙防止予熱器での加熱熱量は、冬場の白煙が発生しやすい外気条件と排煙処理塔出口温度が高い時の条件に合わせて白煙を防止するのに必要な熱量を算出し、この熱量を基づいて排ガスを加熱することが行われている。この場合、白煙が生じ易い環境を想定した熱量に基づいて排ガスを加熱することで、外気条件または排ガスの状態が変動したとしても、白煙が生じないように、年間を通じて余裕を持って十分な加熱をしているため、過大な加熱熱量を消費してしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、排ガスを加熱する加熱熱量を低減することができる白煙防止システム、焼却設備、白煙防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、排ガスを加熱する白煙防止予熱器と、外気の温度と湿度とを取得する外気条件取得部と、焼却炉から排出される排ガスの水分と温度とを取得する排ガス状態取得部と、前記外気の温度及び湿度に応じた外気条件に基づいて飽和湿りガス曲線に対して求められる接線と、当該飽和湿りガス曲線との関係によって定まる複数の領域のうち、いずれの領域に、前記排ガスの水分及び温度に応じた排ガスの状態を表す排ガス点が該当するかを判定する判定部と、前記判定された結果に基づいて、前記排ガスを加熱する加熱熱量を、前記該当する領域に応じた加熱熱量となるように必要加熱熱量を求める加熱熱量決定部と、前記加熱熱量決定部によって決定された必要加熱熱量に基づいて、前記白煙防止予熱器によって前記排ガスを加熱させる制御部と、を有する白煙防止システムである。
【0007】
また、本発明の一態様は、外気条件取得部が、外気の温度と湿度とを取得し、排ガス状態取得部が、焼却炉から排出される排ガスの水分と温度とを取得し、判定部が、前記外気の温度及び湿度に応じた外気条件に基づいて飽和湿りガス曲線に対して求められる接線と、当該飽和湿りガス曲線との関係によって定まる複数の領域のうち、いずれの領域に、前記排ガスの水分及び温度に応じた排ガスの状態を表す排ガス点が該当するかを判定し、加熱熱量決定部が、前記判定された結果に基づいて、前記排ガスを加熱する加熱熱量を、前記該当する領域に応じた加熱熱量となるように必要加熱熱量を求め、制御部が、前記加熱熱量決定部によって決定された必要加熱熱量に基づいて、排ガスを加熱する白煙防止予熱器によって前記排ガスを加熱させる白煙防止方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、この発明によれば、排ガスを加熱する加熱熱量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の一実施形態による白煙防止システムSの構成を示す概略機能構成図である。
図2】制御盤100の機能を説明する概略ブロック図である。
図3】絶対湿度と温度との関係を示す湿りガス曲線図の一例を示す図である。
図4】水分率と温度との関係を示す湿りガス曲線図の一例を示す図である。
図5】湿りガス曲線図に対して領域を定めた場合の一例を示す図である。
図6】白煙防止システムSの動作を説明するフローチャートである。
図7】白煙防止システムSの動作を説明するフローチャートである。
図8】白煙防止システムSの動作を説明するフローチャートである。
図9】白煙防止システムSの動作を説明するフローチャートである。
図10】第5領域R5から第1領域R1に遷移する場合について説明する湿りガス曲線図である。
図11】第5領域R5から第2領域R2に遷移する場合について説明する湿りガス曲線図である。
図12】第5領域R5から第3領域R3に遷移する場合について説明する湿りガス曲線図である。
図13】スチーム等の気相の熱媒を用いて排ガスを直接加熱する場合における白煙防止システムSaの構成を示す概略機能構成図である。
図14】白煙防止空気を排ガスに加えて混合させることで加熱する場合における白煙防止システムSbの構成を示す概略機能構成図である。
図15】白煙防止システムSbにおける排ガスの状態の遷移を説明する湿りガス曲線図である。
図16】間接加熱方式において、排ガスが第5領域R5から第1領域R1に遷移する場合について説明する湿りガス曲線図である。
図17】間接加熱方式において、排ガスが第5領域R5から第2領域R2に遷移する場合について説明する湿りガス曲線図である。
図18】間接加熱方式において、排ガスが第5領域R5から第3領域R3に遷移する場合について説明する湿りガス曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態による白煙防止システムについて図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施形態による白煙防止システムSの構成を示す概略機能構成図である。
この図において、白煙防止システムSにおいて、排煙処理塔10、経路11、熱媒流量制御弁13、白煙防止システム入口排ガス温度センサ15、白煙防止システム入口排ガス流量センサ16、白煙防止システム入口排ガス水分率計17、加熱装置17a、温度センサ17b、湿度センサ17c、白煙防止予熱器20、熱媒22、熱媒ボイラ23、熱媒流量センサ26、熱媒入口温度センサ27、熱媒出口温度センサ28、白煙防止予熱器出口温度センサ31、白煙防止予熱器出口流量センサ35、経路40、煙突41、大気温度センサ50、大気相対湿度センサ51、制御盤100を含む。
【0011】
このような白煙防止システムSは、例えば焼却設備に備えられるようにしてもよい。この場合、例えば、白煙防止システムSの排煙処理塔10の前段には、焼却炉が設けられ、焼却炉から排出される排ガスが排煙処理塔10へ供給されるようにしてもよい。
【0012】
排煙処理塔10は、焼却炉などの外部装置から供給される排ガスから、粉塵・不純物等の所定の物質を除去し、除去処理が行われた後の排ガスは経路11を介して白煙防止予熱器20に供給される。焼却炉は、例えば、脱水処理された後の汚泥を焼却する。また、焼却炉は、例えば、流動式焼却炉、ストーカー式焼却炉などである。
【0013】
白煙防止システム入口排ガス温度センサ15は、経路11に設けられ、排煙処理塔10から排出される排ガスの温度(白煙防止システム入口排ガス温度)を測定し、測定結果を制御盤100に出力する。
白煙防止システム入口排ガス流量センサ16は、経路11に設けられ、排煙処理塔10から排出される排ガスの流量(白煙防止システム入口排ガス流量)を測定し、測定結果を制御盤100に出力する。
白煙防止システム入口排ガス水分率計17は、経路11に設けられ、排煙処理塔10から排出される排ガスの水分率(白煙防止システム入口排ガスの水滴量と水蒸気を合わせたもの)を測定し、測定結果を制御盤100に出力する。
水分率計は、経路11の排ガスの一部を導入し、加熱装置17aにより排ガス中の水滴を蒸発させ、その排ガスの温度と排ガスの湿度から排ガスの水分率を算出する。
【0014】
白煙防止予熱器20は、排煙処理塔10と煙突41との間の経路に接続され、排煙処理塔10から供給される排ガスを熱媒からの熱によって加熱する。熱媒は、液相でも気相でもよいが、この実施形態では液相である場合について説明する。
白煙防止予熱器20は、経路11から供給される排ガスを加熱した後、白煙防止予熱器20と煙突41とを接続する経路40を介して、加熱した後の排ガスを煙突に供給する。
白煙防止予熱器20は、排煙処理塔10から供給される排ガスを加熱してから煙突41に供給することで、煙突41から排出される排ガスの白煙を防止する。
【0015】
白煙防止予熱器20には、熱媒22が供給される。熱媒22は、例えば合成系有機熱媒油が用いられる。熱媒22は、液相の状態で白煙防止予熱器20に供給され、白煙防止予熱器20において熱交換した後、液相の状態で白煙防止予熱器20から排出される。熱媒22は、白煙防止予熱器20において熱交換を行った後であって状態変化はせず、熱交換前の温度よりも熱交換後の温度の方が低い。白煙防止予熱器20から排出された熱媒22は、外部の加熱装置によって加熱された後、白煙防止予熱器20に供給される。なお熱媒22は、液相である場合について説明するが、気相であってもよい。
【0016】
熱媒流量制御弁13は、白煙防止予熱器20に流れる熱媒22の流量が、目標熱媒流量に対応した流量となるような開度で弁を開ける。この熱媒22は、図示しない熱媒循環ポンプによって白煙防止予熱器20に供給される。この熱媒循環ポンプは、熱媒を加熱する熱媒ボイラ23から、加熱された後の熱媒を白煙防止予熱器20に供給し、白煙防止予熱器20から排出される熱媒を熱媒ボイラ23に戻すように循環させることができる。熱媒循環ポンプは、例えば、制御盤100からの指令値に応じてオンオフ駆動されるとともに、指令値に応じた流量の熱媒を供給する。
熱媒ボイラ23は、熱媒22を収容し、熱媒22を加熱する。
【0017】
熱媒流量センサ26は、白煙防止予熱器20に供給される熱媒22の流量を測定し、測定結果を制御盤100に出力する。
熱媒入口温度センサ27は、白煙防止予熱器20の入口側における熱媒22の温度である熱媒入口温度を測定し、測定結果を制御盤100に出力する。
熱媒出口温度センサ28は、白煙防止予熱器20の出口側における熱媒の温度である熱媒出口温度を測定し、測定結果を制御盤100に出力する。
【0018】
白煙防止予熱器出口温度センサ31は、白煙防止予熱器20の出口の排ガスの温度である排ガス出口温度を測定する。
白煙防止予熱器出口流量センサ35は、経路40に設けられ、白煙防止予熱器20の出口の排ガスの流量を測定する。
【0019】
経路40は、白煙防止予熱器20の排ガス出口側の経路であり、排煙処理塔10から排出される排ガスを煙突41に供給する。
煙突41は、経路40を介して供給された排ガスを外部に排出する。
【0020】
大気温度センサ50は、煙突41の周辺の外気温を測定し、測定結果を制御盤100に出力する。
大気相対湿度センサ51は、煙突41の周辺の外気の湿度を測定し、測定結果を制御盤100に出力する。
【0021】
制御盤100は、白煙防止システムSの各部を制御する。制御盤100は、例えば、コンピュータ等によって構成される。
図2は、制御盤100の機能を説明する概略ブロック図である。
外気条件取得部101は、外気の温度と湿度とを取得する。例えば、外気条件取得部101は、大気温度センサ50によって測定された外気温を当該大気温度センサ50から取得する。外気条件取得部101は、大気相対湿度センサ51によって測定された湿度を当該大気相対湿度センサ51から取得する。
【0022】
排ガス状態取得部102は、焼却炉から排出される排ガスの水分と温度とを取得する。ここでいう水分は、少なくとも排ガスの湿度(水蒸気)であり、排ガスの湿度(水蒸気)と水滴とを含むものであってもよい。なお、水分率は、排ガスの湿度(水蒸気)と水滴とを合算した値を言う。
例えば、排ガス状態取得部102は、排ガスの水分率を、白煙防止システム入口排ガス水分率計17によって検出された水分率を取得するようにしてもよい。
排ガス状態取得部102は、排ガスの温度を白煙防止システム入口排ガス温度センサ15から取得するようにしてもよい。
【0023】
水滴量取得部103は、排ガスに含まれる水滴量を、白煙防止システム入口排ガス水分率計17と白煙防止システム入口排ガス温度センサ15の値から計算をすることで取得する。
【0024】
《領域判定》
判定部104は、外気の温度及び湿度に応じた外気条件に基づいて飽和湿りガス曲線に対して求められる接線と、当該飽和湿りガス曲線との関係によって定まる複数の領域のうち、いずれの領域に、排ガスの水分及び温度に応じた排ガスの状態を表す排ガス点が該当するかを判定する。
排ガス点がいずれの領域に該当するか否かについては、湿りガス曲線図を用いて上述の領域を定め、排ガスの温度と水分に応じた点をプロットすることで、そのプロットがいずれの領域に収まっているかを判定することであってもよい。
【0025】
ここで、飽和湿りガス曲線、領域等について、湿りガス曲線図を用いつつ説明する。
本実施形態において、湿りガス曲線図は、絶対湿度と温度との関係を示す湿りガス曲線図(第1湿りガス曲線図)と、水分率と温度との関係を示す湿りガス曲線図(第2湿りガス曲線図)との2種類について説明する。
また、本実施形態における白煙防止システムSは、第1湿りガス曲線図と第2湿りガス曲線図とのいずれの湿りガス曲線図であっても利用することができるが、第1湿りガス曲線図を用いた場合には、排ガスの湿度を考慮して白煙防止をすることができ、第2湿りガス曲線図を用いる場合には、排ガスの湿度だけでなく排ガスに含まれる水滴についても考慮した白煙防止をすることができる。
【0026】
《第1湿りガス曲線図:絶対湿度と温度との関係を示す湿りガス曲線図》
図3は、絶対湿度と温度との関係を示す湿りガス曲線図の一例を示す図である。
湿りガス曲線図は、一般に、空気を対象とした特性を表すものであるが、排ガスにも適用することができる。
この図において、横軸が排ガスの温度を示し、縦軸が空気(及び排ガス)に含まれる水蒸気量(湿度)を表す。縦軸の単位は、[kg-HO/kmol-乾ガス]であり、空気に対する絶対湿度、排ガスに対する絶対湿度のいずれにも対応可能な単位を用いている。ここで、排ガスには、空気だけではなく別の成分も含まれており、分子量が異なるため、単純に重さに基づく[kg/kg]の単位を用いるのではなく、空気と排ガスの両方を考慮するためにmolを用いた[kg-HO/kmol-乾ガス]の単位を用いている。
空気に含まれ得る水蒸気の量は決まっている。飽和湿りガス曲線300は温度と絶対湿度との関係を示す曲線であり、空気の温度が高い(温かい)場合により多くの水蒸気を含むことが可能であり、温度が低い(冷たい)場合には含まれ得る水蒸気の量は少なくなることを示している。
例えば、多くの水蒸気が含まれていた高い温度の空気が冷やされると、空気に含まれる水分が凝縮し、霧、もや等のような水滴として視認可能な状態となる。排ガスの場合、例えば、飽和湿りガス曲線300を基準として温度が高くかつ絶対湿度が低い領域A(符号311)のいずれかの状態である排ガスが冷やされ、飽和湿りガス曲線300を越えた左側の領域B(符号312)の状態に遷移する場合がある。この場合、排ガスに含まれる水蒸気の一部が水滴として視認可能な状態となり、いわゆる白煙として見える。
【0027】
この原理を白煙防止予熱器20に適用する場合について説明する。
外気条件として、時期が冬季である場合を想定する。冬季は夏季に比べて外気温度が低いため、外気温度より高い温度の排ガスを煙突から排出すると、夏季に比べて白煙が生じやすい。そのため、白煙が生じ易い冬季について検討する。
また、排煙処理塔の出口の温度は、20℃~30度程度であることが多いが、通常時よりも厳しい条件である40℃程度である場合であって、外気条件として温度が0度であり、かつ飽和状態である空気(プロットA1、例えば冬季における空気)である場合について検討する。このような場合において排ガスを排出する場合、どのような条件の排ガスを煙突から排出すれば、排ガスが外気によって冷やされても排ガスに含まれる水分が凝縮しにくいか(白煙になりにくいか)を検討すればよい。
【0028】
例えば、温度が40度であり、湿度が飽和状態である排ガス(例えばプロットB1の状態)を冬季において外気に排出すると、外気によって排ガスが冷やされ、排ガスの状態としては温度が下がるため、プロットの位置が左側(低温側)に遷移するとともに、排ガスの湿度よりも外気の湿度の方が低いため、排ガスと外気が混合されることで、排ガスの湿度が下がる。すなわち、排ガスの状態が、外気条件の状態に近づくため、排ガスの状態を示すプロットの位置は、プロットB1とプロットA1とを結ぶ直線B2に沿って遷移するが、飽和湿りガス曲線300よりも左側の領域B(符号312)のいずれかの位置における状態に遷移するため、排ガスに含まれる水蒸気が凝縮され白煙が生じる。
【0029】
そこで、プロットB1に示すような状態の排ガスに対して、当該排ガスよりも高い温度まで加熱すると、排ガスの温度が高くなり、湿りガス曲線図においては、破線Cに示すようにプロットB1が右側(高温側)に遷移し、例えば符号B3に示すように、符号B1に示す状態よりも、飽和湿りガス曲線から右側(高温側)に離れる。
ここで、湿りガス曲線図において、白煙防止限界線301を設定することが可能である。白煙防止限界線は、飽和湿りガス曲線300上の位置のうち外気条件(外気温度、外気の湿度)に応じた位置に接する接線を求めることで得ることができる。ここでは外気条件が飽和湿りガス曲線上におけるプロットA1に示す状態(気温が0℃)である場合には、プロットA1に接する接線Tを求めることで、この外気条件における白煙防止限界線301を求めることができる。
【0030】
そして、白煙防止予熱器20が、この白煙防止限界線301上におけるいずれかの状態まで、排ガスを加熱した場合には、加熱後の排ガスを煙突から排出し、外気と混合され外気によって冷やされたとしても、飽和湿りガス曲線300よりも左側の領域B(符号312)のいずれかの位置に遷移することなく、外気条件の状態を示すプロットA1に到達する。そのため、煙突から排出された排ガスは、拡散しながら空気と混合されるが、白煙が生じ難い状態を維持しながら、空気と混合され希釈されるため、白煙が生じない状態とすることができる。
【0031】
また、図3では、白煙防止予熱器20が、排ガスを直接加熱するため、排ガスの温度が上がるが、排ガスに含まれる水蒸気の量は変わらないため、符号B1から符号B3に示すように、直線Cに沿って状態が遷移する。
なお、ここでは排煙処理塔出口排ガスは、出口温度での飽和状態として水滴は無いものとしている。
【0032】
《第2湿りガス曲線図:水分率と温度との関係を示す湿りガス曲線図》
図4は、水分率と温度との関係を示す湿りガス曲線図の一例を示す図である。
この湿りガス曲線図は、空気と排ガスのいずれであっても適用することができる。
また、この第2湿りガス曲線図は、上述した第1湿りガス曲線図と同様に、右図の排ガス点4Aaから外気状態4Bに引いた直線4L上で排ガスと外気が混合し、この直線4Lが湿り空気エリア410にある範囲については白煙が生じないが、この直線4Lが飽和湿りガス曲線400の左側(凝縮エリア411)にある範囲については、水蒸気が凝縮し白煙が発生する。
【0033】
また、第1湿りガス曲線図では、排ガスに含まれる水蒸気のみを対象としているため、縦軸が「絶対湿度」であり、空気中の水滴が考慮されない概念である。
これに対し、第2湿りガス曲線図では、縦軸として水分率を用い、その単位として[kg-HO/kmol-乾ガス]を用いている。そのため、第2湿りガス曲線図では、空気中の水蒸気、排ガス中の水蒸気だけでなく、排ガス中の水滴も考慮することができる。これにより、水蒸気と水滴との両方を考慮して、白煙を防止することができる。そして、排ガスが飽和状態となりさらに水滴が含まれるような場合には、排ガス点4Abに示すように、飽和湿りガス曲線400よりも左側領域(例えば図3の領域B(符号312)に対応する領域)のいずれかにプロットし、排ガスに含まれる水蒸気だけでなく水滴についても対象として白煙防止を検討することができる。
排ガスに水滴が含まれる(同伴される)場合としては、排煙処理塔10において、高温の排ガスが搬送される経路上において、その経路における各種部材が排ガスの熱によって損傷しないように水スプレー等によって水分が噴射される場合があるが、例えば、このような噴射された水滴が排ガスに同伴されて排煙処理塔10から排出される場合、条件によっては、白煙として見える場合がある。このような排ガスに含まれる(同伴される)水滴については、白煙防止システムSにおいて水滴を蒸発させることで、白煙を防止することができる(後述する)。
【0034】
次に、領域について説明する。
図5は、図4に示す湿りガス曲線図に対して領域を定めた場合の一例を示す図である。
領域は、白煙防止限界と飽和湿りガス曲線との関係から定まるものであり、外気条件を起点として飽和湿りガス曲線に対する接線と、飽和湿ガス曲線との関係によって複数の領域を定めることができる。
湿りガス曲線図において、飽和湿りガス曲線400が設定されており、さらに、外気の温度と湿度が測定された測定結果に基づいて外気条件(外気の温度と湿度)の状態に応じたプロット(点A)を定めることができる。そして、外気条件に応じて定まる外気点(点A)を基点とした場合、飽和湿りガス曲線400に対し第1接線と第2接線の2つの接線を求めることができる。
第1接線(直線H)は、飽和湿りガス曲線400(曲線S)のうち接点Hを通り、温度が高い方に対して定まる接線(白煙防止限界線(高温側))である。
第2接線(直線L)は、飽和湿りガス曲線400(曲線S)のうち接点Lを通り、温度が低い方に対して定まる接線(白煙防止限界線(低温側))である。
そして、湿りガス曲線図は、飽和湿りガス曲線400(曲線S)と、第1接線(直線H)、第2接線(直線L)によって、複数の領域に区切ることができる。
【0035】
《第1領域R1》
第1領域R1は、第1接線(直線H)と飽和湿りガス曲線400(曲線S)との間の領域である。第1領域R1は、接点Hと、接点Hより温度が高い飽和湿りガス曲線400(曲線S)と、接点Hより温度が高い第1接線(直線H)の間の範囲であるともいえる。
排ガスの状態が第1領域R1にある場合、排ガスの温度が外気条件の温度よりも高い。この場合、白煙防止の対応をせずにそのまま外気へ放出した場合には、排ガスに含まれる水蒸気が、外気と混合されることで外気に冷やされて凝縮することで、白煙として見える。
これに対し、第1領域R1については、排ガスを第1接線(直線H)(白煙防止限界線)に達する状態まで加熱してから放出すれば、白煙が生じない。
【0036】
《第2領域R2》
第2領域R2は、飽和湿りガス曲線400(曲線S)と、第1接線(直線H)と、第2接線(直線L)によって囲まれる領域である。第2領域R2は、点Aから第1接線(直線H)に沿って接点H、第1接線(直線H)から曲線Sに沿って接点L、接点Lから第2接線(直線L)に沿って点Aまでに囲まれる範囲であるともいえる。
ただし、外気条件が飽和湿ガス曲線上にある場合には、この第2領域R2は生じない。
第2領域R2は、排ガスを加熱せずにそのまま放出しても白煙が生じない範囲である。排ガスが外気と混合されても、白煙防止限界線を越えることがないからである。そのため、排ガスの状態が、第2領域R2に該当する場合には、排ガスに対して加熱をしない、あるいは、加熱熱量を下げることで、白煙を防止しつつ、加熱熱量を削減することができる。
【0037】
《第3領域R3》
第3領域R3は、第2接線(直線L)と飽和湿りガス曲線400(曲線S)との間の領域である。第3領域R3は、接点Lと、接点Lより温度が低い飽和湿りガス曲線400(曲線S)と、接点Lより温度が低い第2接線(直線L)の間の範囲であるともいえる。
第3領域R3については、排ガスを第2接線(直線L)に達するまで加熱してから放出すれば、白煙が生じない。
排ガスの状態が第3領域R3にある場合、排ガスの温度が外気より低い。そのため、この状態における排ガスを、白煙防止の対応をせずにそのまま外気へ放出した場合には、外気中の水蒸気が、排ガスに冷やされて凝縮することで、白煙として見える(第1領域R1とは、冷却される対象が異なる)。このような第3領域R3の状態については、図3に示す湿りガス曲線図では考慮されていない。
【0038】
《第4領域R4》
第4領域R4は、第1接線(直線H)を基準として飽和湿りガス曲線400(曲線S)とは反対側の領域である。また、第4領域は、第2接線(直線L)を基準として飽和湿りガス曲線400(曲線S)とは反対側の領域でもある。
第4領域R4は、第1接線(直線H)と第2接線(直線L)とのうち少なくとも一方の線から、右側の範囲であるともいえる。
第4領域R4は、排ガスを加熱せずにそのまま放出しても、白煙は生じない範囲である。排ガスが外気と混合されても、白煙防止限界線を越えることがないからである。そのため、排ガスの状態が、第4領域R4に該当する場合には、排ガスに対して加熱をしない、あるいは、加熱熱量を下げることで、白煙を防止しつつ、加熱熱量を削減することができる。
【0039】
《第5領域R5》
第5領域R5は、外気条件に応じて定まる点である外気点(点A)が示す温度が、飽和湿りガス曲線400(曲線S)のうち外気点(点A)の水分率と同一の水分率における飽和湿りガス曲線400(曲線S)における温度よりも高い状態であり、かつ、排ガス点が、飽和湿りガス曲線400(曲線S)を挟んで外気点(点A)とは異なる領域である。第5領域R5は、飽和湿りガス曲線より水分率が高い領域である。また、第5領域R5は、飽和湿りガス曲線400(曲線S)より左側の範囲であるともいえる。
第5領域R5は、排煙処理塔10において、高温の排ガスが搬送される経路上において、その経路における各種部材が排ガスの熱によって損傷しないように水スプレー等によって水分が噴射されるような場合において、噴射された水滴が排ガスに同伴されて排煙処理塔10から排出される場合である。このような場合、排ガスの湿度は飽和状態であり、また、排ガスには水滴が同伴される状態である。
この第5領域R5では、排ガスに同伴される水滴を蒸発させるための熱量を加えることで、水滴に基づく白煙を防止することができる。ここでは水滴の量に応じた水分率を用いることで、排ガス点4Abの位置を特定することができる。
このような、排ガスに含まれる水滴を考慮することは、図3に示す湿りガス曲線図では、考慮されていない。また、従来では、必要以上の加熱熱量を排ガスに加えていたため、排ガスに水滴が含まれていたとしても、水滴についても加熱されていることから、白煙として問題が生じていなかったが、必要以上に加熱されてしまっているという問題があった。
第5領域R5は、飽和湿りガス曲線400(曲線S)に達するまで再加熱もしくは白煙防止空気を混合し、飽和湿りガス曲線400(曲線S)との交差点を求め、その排ガスの状態点が第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3のいずれかの領域に当たるので、その領域での扱いに従うことで、白煙が生じない領域である。
このように、第5領域R5では、排ガスに水蒸気の他に水滴が含まれている場合には、その水滴による白煙が生じないようにすることができる分(加熱熱量)を、水滴の量を計測し、その計測結果に基づくことで、水滴に起因する白煙を防止しつつ、加熱に必要なエネルギーの量を低減することができる。
【0040】
ここで、外気の水分率は水蒸気のみを対象とし、雨や霧などの水滴分は水分率に含めない。
白煙防止限界線は、通常、飽和湿りガス曲線へ高温側(第1接線(直線H))と低温側(第2接線(直線L))の2本を引くことができる。外気の状態が飽和湿りガス曲線上にあるときは1本引くことができる。接線が1本引ける場合は、外気の状態から高温側と低温側にそれぞれ白煙防止限界線を引いたものとみなし、接点は、同じ温度とする。
【0041】
図2に戻り説明を続ける。
加熱熱量決定部105は、判定部104によって判定された結果に基づいて、排ガスを加熱する加熱熱量を、該当する領域に応じた加熱熱量となるように必要加熱熱量を求める。
【0042】
《第2領域における加熱熱量》
加熱熱量決定部105は、判定部104によって、排ガス点が、外気条件に応じて定まる点である外気点を基点として飽和湿りガス曲線のうち温度が高い方に対して定まる第1接線と、外気点を基点として飽和湿りガス曲線のうち温度が低い方に対して定まる第2接線と、飽和湿りガス曲線と、によって囲まれる第2領域に該当すると判定された場合、加熱熱量を増加しないと決定する。
【0043】
《第4領域における加熱熱量》
加熱熱量決定部105は、判定部104によって、排ガス点が、第1接線を基準として飽和湿りガス曲線とは反対側であって、第2接線を基準として飽和湿りガス曲線とは反対側である第4領域に該当すると判定された場合、加熱熱量を増加しないと決定する。
【0044】
《第3領域における加熱熱量》
加熱熱量決定部105は、判定部104によって、排ガス点が、第2接線と飽和湿りガス曲線との間である第3領域に該当すると判定された場合、排ガス点が第2接線に到達するために必要な加熱熱量となるように加熱熱量を決定する。
【0045】
《第1領域における加熱熱量》
加熱熱量決定部105は、判定部104によって、排ガス点が、第1接線と飽和湿りガス曲線との間である第1領域に該当すると判定された場合、排ガス点が第1接線に到達するために必要な加熱熱量となるように加熱熱量を決定する。
【0046】
《第5領域における加熱熱量》
加熱熱量決定部105は、判定部104が、外気条件に応じて定まる点である外気点が示す温度が、飽和湿りガス曲線のうち外気点の水分率と同一の水分率における飽和湿りガス曲線における温度よりも高い状態であり、かつ、排ガス点が、飽和湿りガス曲線を挟んで外気点とは異なる領域にあると判定した場合、水滴量取得部103によって得られた水滴量に応じた加熱熱量を含むように加熱熱量を決定する。
この場合、飽和湿りガス曲線は、水分率と温度との関係に基づいて定まる曲線である。
【0047】
制御部106は、加熱熱量決定部105によって決定された必要加熱熱量に基づいて、白煙防止予熱器20によって排ガスを加熱させる。
【0048】
《大小関係の判定》
制御部106は、必要加熱熱量と、白煙防止予熱器20に供給される熱媒の温度である入り口温度と、白煙防止予熱器20から出る熱媒の温度である出口温度と、白煙防止予熱器20に供給される熱媒の流量と、に基づいて求まる放熱側の加熱熱量である放熱側加熱熱量と、の大小関係に基づいて、必要加熱熱量が放熱側加熱熱量よりも小さい場合に、白煙防止予熱器20によって排ガスを加熱する加熱熱量を減らし、必要加熱熱量が放熱側加熱熱量よりも大きい場合に、白煙防止予熱器20によって排ガスを加熱する加熱熱量を増やす。
【0049】
《水滴蒸発確認》
出力部107は、放熱側加熱熱量と、白煙防止予熱器の出口の排ガスの温度である排ガス出口温度と、白煙防止予熱器20の出口の排ガスの流量と、に基づいて求まる受熱側の加熱熱量である受熱側加熱熱量と、の大小関係に基づいて、排ガスに含まれる水滴が蒸発しているか否かを表す結果を出力する。
【0050】
記憶部108は、各種データを記憶する。
【0051】
記憶部108は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
この記憶部108は、例えば、不揮発性メモリを用いることができる。
【0052】
制御盤100は、上述した機能の他に、白煙防止システムSに設けられる各種センサからのデータを取得したり、白煙防止システムSに設けられる各種機器に対してデータや処理命令等を送信する機能を有する。
また、制御盤100において、外気条件取得部101、排ガス状態取得部102、水滴量取得部103、判定部104、加熱熱量決定部105、制御部106、出力部107は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてよい。
【0053】
次に、上述した白煙防止システムSの動作を説明する。
図6図7図8図9は、白煙防止システムSの動作を説明するフローチャートである。
制御盤100の排ガス状態取得部102は、白煙防止システム入口排ガス温度センサ15から、排ガスの温度(白煙防止システム入口排ガス温度)を取得する(ステップS101)。また、白煙防止システム入口排ガス水分率計17から排ガスの水分率(白煙防止システム入口排ガスの水滴量と水蒸気を合わせたもの)を取得する(ステップS102)。
水滴量取得部103は、白煙防止システム入口排ガス温度センサ15によって検出された排ガスの温度における飽和水蒸気量を白煙防止予熱器20の白煙防止システム入口排ガス水分率計17から得られる水分率から引いて、排ガスに含まれる水滴量を求める(ステップS103)。なお、水滴量は、実測しなくても、排煙処理塔出口のミストセパレータの性能などから水滴量を推定することで、水滴量を得るようにしても良い。
【0054】
一方、制御盤100の外気条件取得部101は、大気温度センサ50から外気温の測定結果を取得し(ステップS111)、大気相対湿度センサ51から外気の相対湿度を測定した測定結果を取得する(ステップS112)。そして、外気条件取得部101は、外気温度と、外気の相対湿度とに基づいて、外気の絶対湿度を算出する(ステップS113)。絶対湿度は、その時の温度を基に、相対湿度と飽和湿り空気線図を用いて求めることができる。また、飽和湿り曲線の近似式を用いて、外気温度での飽和絶対湿度を求め、この飽和絶対湿度に相対湿度を乗じることで絶対湿度を求めるようにしてもよい。
【0055】
判定部104は、水分率と温度との関係に基づく湿りガス曲線図上に、外気の状態に基づいて、白煙防止限界線(接線)を求める(ステップS114)。
次に判定部104は、白煙防止限界線と飽和湿りガス曲線の接点の温度を求める(ステップS115)。
次に、判定部104は、生成された第1接線と第2接線と飽和湿りガス曲線とに基づいて、湿りガス曲線図に対して、複数の領域を設定する(ステップS116)。ここでは、判定部104は、第1領域、第2領域、第3域、第4領域、第5領域の5つの領域に分割する。
そして、判定部104は、湿りガス曲線図上に排ガスの温度と湿度の状態に応じたプロットをする(ステップS117)。以下、この実施形態においては、プロットする場合について説明するが、湿りガス曲線図上における位置を特定することができれば、実際にプロットしていなくてもよい。
【0056】
次に、判定部104は、プロットした点が第1領域から第5領域のいずれの領域に該当するかを判定する(ステップS201)。
判定部104によって判定された結果が、プロットした点が第5領域に該当する場合(ステップS201-第5領域)、判定部104は、白煙防止対策(加熱)をした場合に排ガスが飽和湿りガス曲線と交差する点の排ガスの状態(温度、水分率)を求める(ステップS202)。
そして、加熱熱量決定部105は、求められた排ガスの状態に応じた加熱熱量を算出する(ステップS203)。このステップS203において加熱熱量を求めることで、排ガスに含まれる水滴を水蒸気にするための加熱熱量(水滴蒸発加熱熱量)を求めることができる。
そして、判定部104は、排ガスが飽和湿りガス曲線と交差する点をプロットし(ステップS204)、処理をステップS201に移行する。
ここでは、水滴を蒸発させるための加熱熱量を排ガスに与えることで、排ガスの温度が上がり、水滴が蒸発し、排ガスのプロットの位置が湿りガス曲線図において右側にずれ、飽和湿りガス曲線に当接または交差して反対側の領域に到達すると考えることができるため、そのあとは、第1領域から第4領域のいずれかと同様の処理をすればよい。
【0057】
プロットした点が第2領域または第4領域に該当する場合(ステップS201-第2領域または第4領域)、加熱熱量決定部105は、加熱熱量をゼロとして求める(ステップS211)。
【0058】
プロットした点が第1領域または第3領域に該当する場合(ステップS201-第1領域または第3領域)、判定部104は、白煙防止対策(加熱)した場合に排ガスの状態が白煙防止限界線と交差する温度を算出する(ステップS212)。
そして、加熱熱量決定部105は、飽和湿りガス曲線と交わる状態から白煙防止限界線と交差するまで加熱する熱量である加熱熱量(接線まで加熱するための加熱熱量である接線加熱熱量)を算出する(ステップS213)。
【0059】
そして、加熱熱量決定部105は、ステップS203において算出された水滴蒸発加熱熱量と、ステップS213において算出された接線加熱熱量を合算することで、必要加熱熱量を求める(ステップS214)。
【0060】
次に、制御盤100は、放熱側からの加熱熱量を算出する。
放熱側からの加熱熱量の算出は次のステップに従って行われる。すなわち、制御盤100は、熱媒出口温度センサ28から、白煙防止予熱器20の出口側である熱媒出口温度を取得し(ステップS301)、熱媒入口温度センサ27から、白煙防止予熱器20の入口側における熱媒入口温度を取得し(ステップS302)、熱媒流量センサ26から、白煙防止予熱器20に供給される熱媒22の流量の測定結果を取得する(ステップS303)。
【0061】
制御盤100は、熱媒出口温度と、熱媒入口温度と、熱媒22の流量とに基づいて、放熱側の加熱熱量を算出する(ステップS304)。
例えば、放熱側の加熱熱量は、次の式に基づいて求めることができる。
放熱側の加熱熱量=((熱媒入口温度センサ27の温度での熱媒のエンタルピー)-(熱媒出口温度センサ28の温度での熱媒のエンタルピー))×(熱媒流量センサ26の流量)-(放熱量)
【0062】
次に、制御盤100は、受熱側からの加熱熱量の算出及び受熱後の温度の算出をする。すなわち、制御盤100の排ガス状態取得部102は、白煙防止装置出口排ガスの温度を白煙防止システム入口排ガス温度センサ15から取得し(ステップS310)、白煙防止装置出口における排ガスの流量を白煙防止システム入口排ガス流量センサ16から取得する(ステップS311)。
そして制御盤100は、白煙防止装置出口排ガスの温度と、白煙防止装置出口における排ガスの流量とに基づいて、受熱側の加熱熱量を算出する(ステップS312)。
例えば、受熱側の加熱熱量は、次の式に基づいて求めることができる。
受熱側の加熱熱量=((白煙防止予熱器出口温度センサ31の温度での排ガスのエンタルピー)-(白煙防止システム入口排ガス温度センサ15の温度での排ガスのエンタルピー))×(白煙防止システム入口排ガス流量センサ16の流量)-(放熱量)
【0063】
次に、制御部106は、放熱側の加熱熱量と受熱側の加熱熱量とに基づいて、放熱側の加熱熱量が受熱側の加熱熱量と同程度であるか否かを判定する(ステップS313)。同程度であるか否かについては、放熱側の加熱熱量と受熱側の加熱熱量との差が一定値以内である場合に、同程度であると判定するようにしてもよい。出力部107は、この判定結果を出力する(ステップS314)。ここでは、判定結果が同程度の場合には、排ガスに含まれる水滴が蒸発していることを確認することができる。もし放熱側の加熱熱量が受熱側の加熱熱量より一定値以上に小さい場合には、水滴が蒸発していないと判定される。水滴が蒸発していない場合には、各種設定値の変更等をすることで、水滴が蒸発するような各種対応をすることができる。
【0064】
一方、制御部106は、ステップS214において求められた必要加熱熱量と、ステップS304において求められた放熱側の加熱熱量との大小関係について判定する(ステップS401)。
必要加熱熱量が、放熱側の加熱熱量よりも小さい場合、加熱熱量決定部105は、必要加熱熱量より多い分の加熱熱量を減らす(ステップS402)。ここでは、放熱側加熱熱量が、現在の必要加熱熱量を越えているため、その差分となる加熱熱量を減らすことで、白煙防止予熱器20から排ガスに与える加熱熱量を維持することができる。これにより、白煙が生じることを防止しつつ、必要以上に加熱熱量を与えてしまわないようにすることができる。
【0065】
必要加熱熱量が、放熱側の加熱熱量と同程度である場合、加熱熱量決定部105は、加熱熱量を維持する(ステップS403)。同程度であるか否かは、必要加熱熱量と、放熱側の加熱熱量との差が一定値以内である場合に同程度であると判定してもよい。
【0066】
必要加熱熱量が、放熱側の加熱熱量よりも大きい場合、加熱熱量決定部105は、必要加熱熱量より少ない分の加熱熱量を増やす(ステップS404)。これにより、放熱側加熱熱量では現在の必要加熱熱量まで到達していない分(加熱熱量が不足している分)の加熱熱量を増やすことができ、白煙防止予熱器20から排ガスに与える加熱熱量を増やすことができる。これにより、白煙が生じることを防止しつつ、必要以上に加熱熱量を与えてしまわないようにすることができる。
ステップS402、ステップS403、ステップS404のいずれの処理が行われると、制御盤100は、処理をステップS101、S102、S111、S112の開始前の段階のステップに移行する。
【0067】
ここで、ある時期の実際の計測結果において、排煙処理塔のミスト量(水滴量)は、概ね0.005~0.015[kg-水/kg-乾ガス]の範囲であった。ここでは、排ガスに水滴が同伴されていたとしても、少量では目視で確認できなかった。
そのため、排ガスに含まれる水滴の量が0になるように白煙防止予熱器20によって加熱することが好ましいが、必ずしも水滴量を0まで低減させていなくても、一定程度まで低減できれば、白煙を防止することができる。この場合、上述した第5領域R5における、水滴に対する加熱熱量をさらに低減させることができる。
【0068】
図10は、第5領域R5から第1領域R1に遷移する場合について説明する湿りガス曲線図である。横軸は温度、縦軸は水分率を表す。
ここでは、大気温度センサ50によって外気の温度が測定され、大気相対湿度センサ51によって外気の湿度が測定され、測定結果に基づいて、外気点C1が求められる。
排煙処理塔10の出口温度、湿度、水滴の量を実測する。
排ガスの温度と湿度とに応じた状態は、プロットC2aによって表される。これに対し、水滴の量に応じた水滴分を、湿度の水蒸気分(プロットC2a)に加えると、排煙処理塔出口の排ガスの条件は、プロットC2の位置に到達する。
この場合、排ガスを直接加熱すると水分率は一定であり、温度のみ上昇する。ここでは、排ガスに同伴される水滴を蒸発させて飽和湿りガス曲線に達する条件がC3に該当する。
条件C3では、排ガスが外気と混合すると再び凝縮して白煙が発生するので(第5領域R5のいずれかの位置を通ってC1に到達するため)、更に加熱する。
排ガスをさらに加熱し、白煙防止限界線401に達するまで排ガスが加熱された状態は、排ガス点C4であり、この後、外気に放出されても、排ガス点は白煙防止限界線に到達している状態から外気に放出されるため、白煙は発生しない。
加熱熱量については水滴を水蒸気にする気化熱が必要である。排ガス側の温度から判断すると水滴が残っている場合に、加熱熱量が不足する場合があるので(排ガス点C2から排ガス点C3までの分の熱量が不足するため)、加熱側の熱量で判断する必要がある。
水滴量は実測しなくても、排煙処理塔出口をその温度の飽和状態と仮定し、ミストセパレータの性能などから水滴量を推定しても良い。
【0069】
図11は、第5領域R5から第2領域R2に遷移する場合について説明する湿りガス曲線図である。横軸は温度、縦軸は水分率を表す。
ここでは、大気温度センサ50によって外気の温度が測定され、大気相対湿度センサ51によって外気の湿度が測定され、測定結果に基づいて、外気点C1が求められる。
排煙処理塔10の出口温度、湿度、水滴の量を実測する。
排ガスの温度と湿度とに応じた状態は、プロットC2aによって表される。これに対し、水滴の量に応じた水滴分(水分率)を、湿度の水蒸気分(プロットC2a)に加えると、排煙処理塔出口の排ガスの条件は、プロットC2の位置に到達する。
この場合、排ガスを直接加熱すると水分率は一定であり、温度のみ上昇する。ここでは、排ガスに同伴される水滴を蒸発させて飽和湿りガス曲線に達すると、排ガス点C3まで到達する。
条件C3では、第2領域R2に該当する。そして排ガス点C3の温度が接点Hの温度から接点Lの温度の間にあるときは、排ガス点C3から外気点C1に向かう間に、飽和湿りガス曲線400を越えた第5領域R5に入ることがないため、外気と混合する過程で水蒸気が凝縮することがない。そのため、白煙が発生しない。これにより、排ガスに対して、水滴を蒸発させる加熱熱量を加えることができれば、それ以上の加熱が不要である。
【0070】
図12は、第5領域R5から第3領域R3に遷移する場合について説明する湿りガス曲線図である。横軸は温度、縦軸は水分率を表す。
ここでは、大気温度センサ50によって外気の温度が測定され、大気相対湿度センサ51によって外気の湿度が測定され、測定結果に基づいて、外気点C1が求められる。
排煙処理塔10の出口温度、湿度、水滴の量を実測する。
排ガスの温度と湿度とに応じた状態は、プロットC2aによって表される。これに対し、水滴の量に応じた水滴分を、湿度の水蒸気分(プロットC2a)に加えると、排煙処理塔出口の排ガスの条件は、プロットC2の位置に到達する。
この場合、排ガスを直接加熱すると水分率は一定であり、温度のみ上昇する。ここでは、排ガスに同伴される水滴を蒸発させて飽和湿りガス曲線に達する条件がC3に該当する。
条件C3では、排ガスが外気と混合すると、外気に含まれる水蒸気が当該排ガスによって冷却されることで凝縮し、白煙が発生するので(第5領域R5のいずれかの位置を通ってC1に到達するため)、更に加熱する。
排ガスをさらに加熱し、白煙防止限界線402に達するまで排ガスが加熱された状態は、排ガス点C4であり、この後、外気に放出されても、排ガス点は白煙防止限界線に到達している状態から外気に放出されるため、白煙は発生しない。
加熱熱量については水滴を水蒸気にする気化熱が必要である。排ガス側の温度から判断すると水滴が残っている場合に、加熱熱量が不足する場合があるので(排ガス点C2から排ガス点C3までの分の熱量が不足するため)、加熱側の熱量で判断する必要がある。
【0071】
以上説明した実施形態において、白煙防止システムSは、排ガスを白煙防止予熱器20において、液相の熱媒で直接する場合について説明したが、熱媒としてスチームを用いるようにしてもよい。
図13は、スチーム等の気相の熱媒を用いて排ガスを直接加熱する場合における白煙防止システムSaの構成を示す概略機能構成図である。図1の白煙防止システムSと共通する部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、図1とは異なる機能について説明する。
白煙防止システムSaにおいて、熱媒22としては、スチームが用いられる。
熱媒流量制御弁13aは、白煙防止予熱器20に流れる熱媒22(ここではスチーム)の流量が、目標熱媒流量に対応した流量となるような開度で弁を開閉する。熱媒流量制御弁13aは、制御盤100からの指令値に従って開閉動作を行うことができ、制御盤100からの指令値に応じた開度で弁を開ける。
このように、熱媒が気相であったとしても、白煙防止予熱器20において、排ガスを直接加熱し、白煙を防止することができ、排ガスを加熱する加熱熱量を低減することができる。
【0072】
以上説明した実施形態において、白煙防止システムSは、排ガスを白煙防止予熱器20において、液相の熱媒で直接する場合について説明したが、排ガスに白煙防止空気を混合することで、白煙防止をするようにしてもよい。
《間接加熱方式》
図14は、白煙防止空気を排ガスに加えて混合させることで加熱する場合における白煙防止システムSbの構成を示す概略機能構成図である。図1の白煙防止システムSと共通する部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、図1とは異なる機能について説明する。
白煙防止システムSaにおいて、熱媒としては、排煙処理塔10に供給される前の排ガスが用いられる。排煙処理塔10に供給される前の排ガスは、排煙処理塔10から出る排ガスの温度よりも高い。
空気ファン11bは、送風経路12を介して白煙防止予熱器20bに空気を送風する。空気ファン11bからの送風量は、制御盤100からの指令値によって決まる。
風量センサ26bは、白煙防止予熱器20に供給される空気の送風量を測定し、測定結果を制御盤100に出力する。
白煙防止予熱器20aは、排煙処理塔10に供給される前の排ガスと、空気ファン11bから送風された空気との熱交換することで、空気ファン11bから送風された空気を加熱し、加熱された後の空気を白煙防止空気として経路40に供給する。白煙防止空気の温度は、例えば300℃程度である。
白煙防止予熱器出口温度センサ27bは、白煙防止予熱器20bの白煙防止空気を排出する経路の出口の温度を測定し、制御盤100に出力する。
混合部37は、白煙防止予熱器20bから供給される白煙防止空気と、排煙処理塔10から排出される排ガスとを混合し、経路40に送る。
混合部出口温度センサ31bは、混合部37の出口の排ガスの温度である排ガス出口温度を測定する。
混合部出口流量センサ35bは、経路40に設けられ、混合部37の出口の排ガスの流量を測定する。
混合部37は、白煙防止空気を、排煙処理塔10から排出された排ガスに対して混合することで、排ガスを加熱する。
このように、白煙防止空気を排ガスに混合させることで排ガスを加熱する方式であったとしても、排ガスを加熱することができ、白煙を防止することができ、排ガスを加熱する加熱熱量を低減することができる。
【0073】
図15は、白煙防止システムSbにおける排ガスの状態の遷移を説明する湿りガス曲線図である。
ここでは、白煙処理塔出口における排ガスは、白煙処理塔の出口温度での飽和状態として水滴は無いものとしている。
また、ここでは、排ガスに対して加熱された空気が白煙防止空気として混合される。空気を熱交換することで加熱されて得られる白煙防止空気は、加熱されるが、含まれる水蒸気の量は同じである。そのため、白煙防止空気の湿度は、排ガスの湿度よりも低い。そのため、排ガスに対して白煙防止空気を混合すると、混合された排ガスの湿度は低下する。
そのため、状態C2から状態C3に示すように、直線Cのような、ある程度の傾きがある直線上に沿って変化する。そして、白煙防止限界に到達するまで加熱された排ガスが、煙突から排出されて外気と混合しても、白煙防止限界に到達するまで加熱された排ガスと空気とが混合されるため、白煙が発生しない。
【0074】
ここで、白煙防止空気を排ガスに加える場合、白煙防止空気は、一般に、排ガスよりも湿度が低い。そのため、白煙防止空気を排ガスに加えると、混合された後の排ガスの湿度は低下する。そのため、湿りガス曲線図において、排煙処理塔10の出口における排ガスの温度及び湿度に応じた状態を示すプロットの位置は、プロットC2として表される場合、白煙防止空気によって排ガスが加熱されると、温度が上がるとともに、湿度が低下するため、排ガスの状態は、プロットC3に示すように、プロットC2に対して、直線Cに沿って、右下方向に遷移する。プロットC3において、煙突41の出口における排ガスの温度は、例えば115℃程度である。
外気条件における温度は0℃、湿度は飽和状態である場合、外気点C1としてプロットされ、この外気点C1を基点として白煙防止限界線401が設定される。そして、排ガスがプロットC3に示す状態まで加熱されることで、白煙防止限界線401に到達するため、煙突41から排出されたとしても、白煙が生じない。
白煙防止空気と排ガスを混合する加熱方式(間接加熱方式)は、直接加熱方式に比べて、加熱されると、排ガスの状態は温度が上がるだけでなく、湿度が下がる点において異なるが、他については、直接加熱方式と同じである。そのため、白煙防止空気と排ガスを混合する加熱方式であっても、白煙防止システムを適用することができ、白煙を防止しつつ、排ガスを加熱する加熱熱量を低減することができる。
【0075】
図16は、間接加熱方式において、排ガスが第5領域R5から第1領域R1に遷移する場合について説明する湿りガス曲線図である。
ここでは、大気温度センサ50によって外気の温度が測定され、大気相対湿度センサ51によって外気の湿度が測定され、測定結果に基づいて、外気点C1が求められる。
排煙処理塔10の出口温度、湿度、水滴の量を実測する。
排ガスの温度と湿度と水滴の量に応じた状態は、プロットC2によって表される。
この排ガスに白煙防止空気を混合させることで加熱すると、混合された後の排ガスの水分率が減り、温度は上昇する。そして、排ガスに含まれる水滴を蒸発させて飽和湿りガス曲線に達した場合の排ガスの状態は、プロットC3のように示すことができる。
プロットC3の状態では、外気と混合すると再び凝縮して白煙が発生するため、更に加熱する。このとき、排ガスの状態は、プロットC2からプロットC3、プロットC4のように、直線Dに沿って温度が上がり湿度が下がるようにして遷移する。
そして、排ガスをさらに加熱し白煙防止限界線401に達するまで加熱した場合には、その後外気に放出されても白煙は発生しない。
【0076】
図17は、間接加熱方式において、排ガスが第5領域R5から第2領域R2に遷移する場合について説明する湿りガス曲線図である。
ここでは、大気温度センサ50によって外気の温度が測定され、大気相対湿度センサ51によって外気の湿度が測定され、測定結果に基づいて、外気点C1が求められる。
排煙処理塔10の出口温度、湿度、水滴の量を実測する。
排ガスの温度と湿度とに応じた状態は、プロットC2aによって表される。これに対し、水滴の量に応じた水滴分を、湿度の水蒸気分(プロットC2a)に加えると、排煙処理塔出口の排ガスの条件は、プロットC2の位置に到達する。
この排ガスに白煙防止空気を混合させることで加熱すると、混合された後の排ガスの水分率が減り、温度は上昇する。そして、排ガスに含まれる水滴を蒸発させて飽和湿りガス曲線に達した場合の排ガスの状態は、プロットC3のように示すことができる。ここでは、排ガスの状態は、プロットC2からプロットC3のように、直線Dに沿って温度が上がり湿度が下がるようにして遷移する。
プロットC3における状態では、第2領域R2に該当する。そして排ガス点C3の温度が接点Hの温度から接点Lの温度の間にあるときは、排ガス点C3から外気点C1に向かう間に、飽和湿りガス曲線400を越えた第5領域R5に入ることがないため、外気と混合する過程で水蒸気が凝縮することがない。そのため、白煙が発生しない。これにより、排ガスに対して、水滴を蒸発させる加熱熱量を加えることができれば、それ以上の加熱が不要である。
【0077】
図18は、間接加熱方式において、排ガスが第5領域R5から第3領域R3に遷移する場合について説明する湿りガス曲線図である。
ここでは、大気温度センサ50によって外気の温度が測定され、大気相対湿度センサ51によって外気の湿度が測定され、測定結果に基づいて、外気点C1が求められる。
排煙処理塔10の出口温度、湿度、水滴の量を実測する。
排ガスの温度と湿度とに応じた状態は、プロットC2aによって表される。これに対し、水滴の量に応じた水滴分を、湿度の水蒸気分(プロットC2a)に加えると、排煙処理塔出口の排ガスの条件は、プロットC2の位置に到達する。
この排ガスに白煙防止空気を混合させることで加熱すると、混合された後の排ガスの水分率が減り、温度は上昇する。そして、排ガスに含まれる水滴を蒸発させて飽和湿りガス曲線に達した場合の排ガスの状態は、プロットC3のように示すことができる。ここでは、排ガスの状態は、プロットC2からプロットC3のように、直線Dに沿って温度が上がり湿度が下がるようにして遷移する。
プロットC3における状態では、排ガスが外気と混合すると、外気に含まれる水蒸気が当該排ガスによって冷却されることで凝縮し、白煙が発生するので(第5領域R5のいずれかの位置を通ってC1に到達するため)、更に加熱する。
排ガスをさらに加熱し、白煙防止限界線402に達するまで排ガスが加熱された状態は、排ガス点C4であり、この後、外気に放出されても、排ガス点は白煙防止限界線に到達している状態から外気に放出されるため、白煙は発生しない。
ここでは、排ガスの状態は、プロットC2からプロットC3、プロットC4のように、直線Dに沿って温度が上がり湿度が下がるようにして遷移する。
【0078】
このように、直接加熱方式と間接加熱方式との2つの方式のうちいずれの方式であっても、白煙を防止することができる。
【0079】
ここで、加熱熱量の削減量について例を挙げて説明する。例えば、排煙処理塔出口排ガス量が6500[Nm/h]の設備において、排ガス温度40℃、外気温度0℃、外気相対湿度100%の場合に、従来の設備(本実施形態の機能を有していない制御盤が求めた加熱熱量)では、白煙を防止するために必要な加熱熱量が940[MJ/h]となる。
一方、夏季の一例として、排ガス温度27℃、同伴する水滴0.01[kg/kg-乾ガス]、外気温度32℃、外気相対湿度70%の場合は、本実施形態における機能を有する制御盤100が夏季の場合を想定して求めた加熱熱量が280[MJ/h]となり、従来の方法に対して70%程度加熱熱量を削減できる。
また、条件が厳しくなる冬季の一例として、排ガス温度20℃、同伴する水滴0.01[kg/kg-乾ガス]、外気温度3℃、外気相対湿度80%の場合は、本実施形態における機能を有する制御盤100が冬季の場合を想定して求めた加熱熱量が410[MJ/h]となり、従来の方法に対して50%程度加熱熱量を削減できる。
【0080】
以上説明した実施形態によれば、外気の温度と湿度と排煙処理塔出口排ガスの温度、湿度、水滴の量から白煙を防止する条件を計算し、必要な熱量だけ加熱する。従来技術では、排ガスを白煙防止限界線まで加熱しているが、上述した実施形態によれば、条件によっては飽和湿りガス曲線に応じた状態まで排ガスを加熱することで、白煙防止することが可能であり、その分の加熱熱量を削減することができる。
【0081】
また、以上説明した実施形態によれば、湿式(水スプレーを用いる方式)の排煙処理塔排ガスに対する白煙防止において外気の温度と湿度、排煙処理塔出口排ガスの温度、湿度、水滴の量から必要加熱熱量を算出しその熱量を加熱する。このとき、従来方式では排煙処理塔出口排ガスに同伴する水滴の量が考慮されていなかったが、本実施形態においては、この同伴される水滴の量を考慮して排ガスを加熱することで、排ガスに水滴が同伴される場合であっても、排煙処理塔出口温度と外気温度の条件によっては従来技術より少ない加熱熱量で白煙を防止することができる。
【0082】
従来では、排ガスに同伴される水滴の量を考慮することなく、余裕をもった加熱熱量を排ガスに与えるようにしていたが、以上説明した実施形態によれば、排ガスに同伴される水滴の量に応じた加熱熱量を求め、その加熱熱量を排ガスに与えるようにした。これにより、排ガスに水滴が同伴される場合であっても、白煙を防止するために必要な熱量をより正確に把握できる。例えば、排ガスを必ずしも白煙防止限界線までの加熱する必要がないため、白煙防止予熱器への加熱熱量を減少することができる。
【0083】
このように、運転条件に応じて白煙防止に必要な分だけ加熱を行うことができるため、従来のような過剰な加熱を防ぐことができ、過剰に加熱していた分の熱量を発電など廃熱の有効利用に利用することができる。
【0084】
以上説明した実施形態では、水分率と温度との関係を表すグラフにおいて飽和湿りガス曲線を用いることで、排ガスに水蒸気と水滴とが含まれる場合についても考慮し、加熱熱量を求めるようにしたが、排ガスに含まれる水滴を考慮しない場合には、絶対湿度と温度との関係を表すグラフにおいて飽和湿りガス曲線を用いるようにしてもよい。この場合、上述の第5領域に排ガスのプロットがされないため、第1領域、第2領域、第3領域、第4領域を対象として、領域判定処理を行うことで、加熱熱量を求めることもできる。
【0085】
以上説明した実施形態によれば、排ガスに与える加熱熱量を低減することができる。排ガスを加熱するための熱は、焼却炉から生じた熱を回収し、排ガスを加熱するための熱として再利用されるだけでなく、回収された熱を利用して発電することも行われている。そのため、排ガスを加熱する加熱熱量を減らすことで、その減った分の熱を発電に回すことができ、発電量を向上させることができ、回収された熱の有効利用を増大することができる。
また、排ガスに水滴が同伴される場合であっても、同伴された水滴に量に応じた、必要な加熱熱量も含むようにして、排ガスへの加熱熱量を求めるようにしたので、必要以上に排ガスを加熱する必要がなくなり、排ガスに水滴が同伴される場合であっても、白煙を防止することができる。
【0086】
上述した実施形態における制御盤100をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0087】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0088】
S…白煙防止システム、10…排煙処理塔、11…経路、11b…空気ファン、12…送風経路、13…熱媒流量制御弁、13a…熱媒流量制御弁、15…白煙防止システム入口排ガス温度センサ、16…白煙防止システム入口排ガス流量センサ、17…白煙防止システム入口排ガス水分率計、17a…加熱装置、17b…温度センサ、17c…湿度センサ、20…白煙防止予熱器、20a…白煙防止予熱器、20b…白煙防止予熱器、22…熱媒、23…熱媒ボイラ、26…熱媒流量センサ、26b…風量センサ、27…熱媒入口温度センサ、27b…白煙防止予熱器出口温度センサ、28…熱媒出口温度センサ、31…白煙防止予熱器出口温度センサ、31b…混合部出口温度センサ、35…白煙防止予熱器出口流量センサ、35b…混合部出口流量センサ、37…混合部、40…経路、41…煙突、50…大気温度センサ、51…大気相対湿度センサ、100…制御盤、101…外気条件取得部、102…排ガス状態取得部、103…水滴量取得部、104…判定部、105…加熱熱量決定部、106…制御部、107…出力部、108…記憶部
図1
図2
図3
図4
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