(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165359
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】直流遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 33/59 20060101AFI20241121BHJP
H01H 33/53 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01H33/59 C
H01H33/53 Z
H01H33/53 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081501
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】網田 芳明
(72)【発明者】
【氏名】金谷 和長
(72)【発明者】
【氏名】落合 隆介
(72)【発明者】
【氏名】色見 晃輔
(72)【発明者】
【氏名】石黒 崇裕
【テーマコード(参考)】
5G028
【Fターム(参考)】
5G028AA22
5G028FB01
5G028FC01
(57)【要約】
【課題】高さを低く抑えることができる直流遮断器を提供することである。
【解決手段】実施形態の直流遮断器は、機械遮断部を持つ。機械遮断部は、複数の機械遮断ユニットと、絶縁支柱と、を持つ。複数の機械遮断ユニットは、一対の単体遮断部、および一対の単体遮断部を支持する支持架台を持つ。絶縁支柱は、複数の機械遮断ユニットを上下方向に並べた状態で支持架台を支持する。一対の単体遮断部のそれぞれは、露出部を持つ。露出部は、固定接触子に導通する。露出部は、密閉容器の外部に配置されている。上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニットにおいて、一方の機械遮断ユニットの一対の単体遮断部それぞれの露出部と、他方の機械遮断ユニットの一対の単体遮断部それぞれの露出部とが、上下方向から見て互いにずれて配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械遮断部、アレスタおよび転流装置を備えた直流遮断器において、
前記機械遮断部は、
一対の単体遮断部、および前記一対の単体遮断部を支持する支持架台を有する複数の機械遮断ユニットと、
前記複数の機械遮断ユニットを上下方向に並べた状態で前記支持架台を支持する絶縁支柱と、
を備え、
前記一対の単体遮断部のそれぞれは、
固定接触子および可動接触子を有し、大地から電気的に絶縁された機械接点部と、
前記機械接点部および絶縁性ガスを封入し、大地から電気的に絶縁された密閉容器と、
前記固定接触子に導通し、前記密閉容器の外部に配置された露出部と、
前記可動接触子に連結され、前記密閉容器の内部から外部に延出した操作ロッドと、
前記操作ロッドに連結され、前記可動接触子を前記固定接触子に対して接離させるとともに、前記可動接触子と同電位に設けられた操作機構と、
を有し、
前記一対の単体遮断部は、それぞれの前記操作ロッドが前記操作機構により同一直線上で動作し、かつ前記操作機構による前記操作ロッドの動作方向が互いに逆方向となるように配置され、かつそれぞれの前記操作機構が互いに対向するように配置され、
全ての前記一対の単体遮断部は、互いに直列接続され、両端が直流送電系統に接続される機械接点モジュールを形成し、
前記アレスタは、前記機械接点モジュールに並列接続され、
前記転流装置は、リアクトル、コンデンサおよび高速投入器を直列接続して形成された転流回路を有し、
前記転流回路は、前記機械接点モジュールに並列接続され、
前記複数の機械遮断ユニットのうち前記上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニットにおいて、一方の機械遮断ユニットの前記一対の単体遮断部それぞれの前記露出部と、他方の機械遮断ユニットの前記一対の単体遮断部それぞれの前記露出部とが、前記上下方向から見て互いにずれて配置されている、
直流遮断器。
【請求項2】
前記一対の機械遮断ユニットは、第1機械遮断ユニットおよび第2機械遮断ユニットを有し、
前記第1機械遮断ユニットの前記一対の単体遮断部は、前記上下方向に直交する第1方向に並び、前記上下方向および前記第1方向に直交する第2方向の第1位置に配置され、
前記第2機械遮断ユニットの前記一対の単体遮断部は、前記第1方向に並び、かつ前記第2方向の前記第1位置とは異なる第2位置に配置されている、
請求項1に記載の直流遮断器。
【請求項3】
前記一対の機械遮断ユニットは、第1機械遮断ユニットおよび第2機械遮断ユニットを有し、
前記第1機械遮断ユニットの前記一対の単体遮断部は、前記上下方向に直交する第1方向に並び、
前記第2機械遮断ユニットの前記一対の単体遮断部は、前記上下方向および前記第1方向に傾斜する方向に並ぶ、
請求項1に記載の直流遮断器。
【請求項4】
前記支持架台は、前記上下方向から見て多角形状に形成され、
前記一対の機械遮断ユニットのそれぞれにおいて、前記一対の単体遮断部は、前記支持架台の外形の辺に対して平行に配置されている、
請求項2または請求項3に記載の直流遮断器。
【請求項5】
前記支持架台は、前記上下方向から見て多角形状に形成され、
前記一対の機械遮断ユニットのそれぞれにおいて、前記一対の単体遮断部は、前記支持架台の外形の各辺に対して傾斜して配置されている、
請求項2または請求項3に記載の直流遮断器。
【請求項6】
前記機械遮断部は、建屋内に設置され、
前記絶縁支柱は、前記建屋の天井から吊り下げられている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の直流遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、直流遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
直流送電は、交流送電に比べて送電効率が高い。対して設備の導入コストは交直変換器が必要であるため、直流送電の方が高コストとなる。しかし長距離送電や海底送電などでは、直流送電の送電効率が圧倒的に高いため、設備コストに運用コストを加えて評価すると、直流送電の方が総合的に低コストとなる。このため、直流送電は、例えば海を挟んだ二箇所の拠点間での送電に利用されている。近年、発電電力うち再生可能エネルギーを用いた発電電力の比率を向上させ、より大きな電力を再生可能エネルギーで賄うため、洋上風力発電や砂漠地帯での太陽光発電等を用いて、主要な電力消費地である都市部から遠く離れた場所で大規模な発電を行い、長距離送電する方法が検討されている。それに伴い、複数の電力の供給地点と需要地点とを接続した直流送電網の構築が計画されている。
【0003】
3箇所以上の拠点間を接続した送電網を構築する際には、送電網で事故が発生した場合に、事故点を健全な系統から迅速に切り離す遮断装置が必要となる。一般的に、交流電流系統においては機械接点式遮断器が用いられている。機械接点式遮断器は、交流電流によって発生する電流ゼロ点において接点を開極し、絶縁性媒体を接点間のアーク電流に吹き付けることで事故電流を遮断するものである。これに対して直流送電系統においては、事故電流には電流ゼロ点が発生しないため、従来の機械接点式遮断器では事故電流を迅速に遮断することは難しいとされている。
【0004】
そこで、単独で直流電流を遮断可能な直流遮断器が提案されている。この直流遮断器は、直流線路に挿入されている遮断部と転流回路とが並列に接続されて形成されている。転流回路は、コンデンサとリアクトルと高速投入器とから構成される。直流系統に事故が発生すると外部指令により高速投入器が閉じられ、コンデンサとリアクトルとにより振動電流が発生し、電流ゼロ点が直流経路に形成される。その電流ゼロ点において遮断部で直流電流を遮断する。
【0005】
このような直流遮断器の遮断部および高速投入器は、数ミリ秒の高応答性が求められる。このため、遮断部および高速投入器の接点部には、短時間での消弧性能に優れる真空バルブが用いられている。さらに操作機構には、所望の応答性と大きな操作力が得られる電磁反発方式が用いられることが多い。ただし、真空バルブの電気的な絶縁性能は、接点部の開極距離と比例関係ではなく、ある程度の開極距離で耐電圧性能に限界が生じることが一般的に知られている。また、電磁反発方式の操作機構は原理上、長いストロークを発生させることに適していない。したがって、定格電圧が大きい直流遮断器の遮断部および高速投入器を実現する場合、接点部を多直列に接続する方法(カスケード接続)がとられている。
【0006】
直流遮断器は、直流系統のシステム構成上、交直変換器の直近に配置される。交直変換器の主要部分は半導体で構成されるため、温度および湿度の影響を受けやすい。そのため、交直変換器は温湿度管理された建屋内に収容される。直流遮断器が交直変換器と同じ建屋に配置される場合、高電圧化により大型化すると建屋の建設コストが高くなる。このコストを低減させるためには、サイズの小さい直流遮断器の開発が望まれる。
【0007】
また、洋上風力で発電した電力を陸上に送電する際、洋上に交直変換器が配置される場合がある。洋上に変換所を配置するためには、着床式または浮体式のプラットフォーム内に機器を収納する必要がある。プラットフォームは非常に高額であり、低コスト化するためにサイズを小さくする必要がある。したがって、プラットフォーム内に配置される直流遮断器のサイズも小さくする必要がある。
【0008】
さらに直流遮断器は、電気的な絶縁を確保するため、地上または接地された基礎等より高い位置に機器を配置する必要がある。そのため直流遮断器は、地震や波浪などによる振動の影響を受けやすく、直流遮断器の支持構造材の強度を強固にする必要があり、小型・低コスト化の妨げとなる。したがって、振動の影響を低減させるためには、直流遮断器の高さを低くする必要がある。
【0009】
直流遮断器として、2つの接点を対向配置した単体遮断部が直列接続されて形成された機械遮断部を備えるものがある。機械遮断部の両端の接点の充電露出部(シールドリングや端子板など)の電位差が大きくなる傾向にある。そのため、単体遮断部が上下に配置された場合、充電露出部同士の十分な絶縁距離を確保するため、上下の単体遮断部の間隔を広くする必要がある。したがって、機械遮断部の全体の高さが高くなるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、高さを低く抑えることができる直流遮断器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態の直流遮断器は、機械遮断部、アレスタおよび転流装置を持つ。機械遮断部は、複数の機械遮断ユニットと、絶縁支柱と、を持つ。複数の機械遮断ユニットは、一対の単体遮断部、および一対の単体遮断部を支持する支持架台を持つ。絶縁支柱は、複数の機械遮断ユニットを上下方向に並べた状態で支持架台を支持する。一対の単体遮断部のそれぞれは、機械接点部と、密閉容器と、露出部と、操作ロッドと、操作機構と、を持つ。機械接点部は、固定接触子および可動接触子を持つ。機械接点部は、大地から電気的に絶縁されている。密閉容器は、機械接点部および絶縁性ガスを封入する。密閉容器は、大地から電気的に絶縁されている。露出部は、固定接触子に導通する。露出部は、密閉容器の外部に配置されている。操作ロッドは、可動接触子に連結されている。操作ロッドは、密閉容器の内部から外部に延出している。操作機構は、操作ロッドに連結されている。操作機構は、可動接触子を固定接触子に対して接離させる。操作機構は、可動接触子と同電位に設けられている。一対の単体遮断部は、それぞれの操作ロッドが操作機構により同一直線上で動作し、かつ操作機構による操作ロッドの動作方向が互いに逆方向となるように配置されている。一対の単体遮断部は、それぞれの操作機構が互いに対向するように配置されている。全ての一対の単体遮断部は、互いに直列接続され、両端が直流送電系統に接続される機械接点モジュールを形成している。アレスタは、機械接点モジュールに並列接続されている。転流装置は、リアクトル、コンデンサおよび高速投入器を直列接続して形成された転流回路を持つ。転流回路は、機械接点モジュールに並列接続されている。複数の機械遮断ユニットのうち上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニットにおいて、一方の機械遮断ユニットの一対の単体遮断部それぞれの露出部と、他方の機械遮断ユニットの一対の単体遮断部それぞれの露出部とが、上下方向から見て互いにずれて配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】第1の実施形態の1つの機械遮断ユニットを含む機械遮断部の一部を示す斜視図。
【
図5】第1の実施形態の機械遮断ユニットを側方から見た断面図。
【
図10】第4の実施形態の機械遮断部を示す斜視図。
【
図11】第4の実施形態の機械遮断部を示す平面図。
【
図12】第5の実施形態の機械遮断部を示す斜視図。
【
図13】第5の実施形態の機械遮断部を示す正面図。
【
図14】第6の実施形態の機械遮断部を示す斜視図。
【
図15】第7の実施形態の機械遮断部を示す斜視図。
【
図16】第8の実施形態の機械遮断部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態の直流遮断器を、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0015】
図1は、実施形態の直流遮断器1を示す回路図である。
図1に示すように、直流遮断器1は、機械遮断部2と、アレスタ部3と、転流装置4と、を備える。直流遮断器1は、供給地点と需要地点とを接続した直流送電系統に接続されている。
【0016】
機械遮断部2は、互いに直列接続された複数の単体遮断部11を有する。アレスタ部3は、機械遮断部2に対して並列に接続されている。アレスタ部3は、アレスタ100を備える。アレスタ100は、一定電圧以上が印加されると導通する複数の非線形素子により形成されている。アレスタ100は、複数の非線形素子を並列接続した複数のモジュールを直列接続することにより形成されている。
【0017】
転流装置4は、機械遮断部2に対して並列に接続されている。転流装置4は、リアクトル210と、コンデンサ220と、高速投入器240と、を備える。リアクトル210、コンデンサ220および高速投入器240は、転流回路200を構成している。転流回路200は、コンデンサ220の両端にリアクトル210および高速投入器240を直列接続して形成されている。高速投入器240は、直流送電系統の定常送電時に開放されており、転流回路200を遮断状態にしている。高速投入器240は、直流送電系統を遮断する際に投入されて、転流回路200の両端間を導通状態にする。高速投入器240は、少なくとも1つ設けられている。高速投入器240が複数設けられる場合、複数の高速投入器240は互いに直列接続される。高速投入器240は、油圧やばねの復元力、電磁ソレノイドの電磁力により駆動する機械接点よりも高速で投入可能な投入器である。
【0018】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の機械遮断部2について詳述する。
図2は、第1の実施形態の機械遮断部2を示す斜視図である。
図3は、第1の実施形態の機械遮断部2を示す側面図である。
図2および
図3に示すように、機械遮断部2は、図示しないアレスタ部3および転流装置4とともに、大地上の基礎5に設置されている。基礎5の上面は、水平に形成されている。本実施形態では、互いに直交する水平の2方向をX方向およびY方向と定義する。
【0019】
機械遮断部2は、上下方向(鉛直方向)に並ぶ複数(本実施形態では3個)の機械遮断ユニット10と、複数の機械遮断ユニット10を支持する複数(本実施形態では4本)の絶縁支柱60と、を備える。複数の機械遮断ユニット10は、絶縁支柱60に対して上下方向に複数段に積み上げられている。
【0020】
図4は、第1の実施形態の1つの機械遮断ユニット10を含む機械遮断部2の一部を示す斜視図である。
図4に示すように、機械遮断ユニット10は、一対の単体遮断部11と、電源部12と、制御部13と、絶縁トランス14と、支持架台15と、を備える。一対の単体遮断部11は、水平方向に並んでいる。
【0021】
図5は、第1の実施形態の機械遮断ユニット10を側方から見た断面図である。なお
図5では、閉極状態を示している。
図5に示すように、単体遮断部11は、固定接触子22および可動接触子23を有する機械接点部21を備える。機械接点部21は、固定接触子22に対して可動接触子23を開離させることで開極する。単体遮断部11は、機械接点部21を開極させることで、機械接点部21を通る通電経路を遮断する。単体遮断部11は、真空遮断器11Aを構成している。真空遮断器11Aは、機械接点部21を真空の絶縁筒24内に配置した真空バルブ20を有する。真空遮断器11Aの機械接点部21は、電流ゼロ点において電流を機械的に遮断可能な接点である。
【0022】
真空遮断器11Aは、機械接点部21を有する真空バルブ20と、真空バルブ20を封入する密閉容器30と、固定接触子22に導通し、密閉容器30の外部に配置された露出部40と、機械接点部21の固定接触子22に連結された通電軸34と、機械接点部21の可動接触子23に連結された操作ロッド35と、操作ロッド35に連結された操作機構37と、機械接点部21に並列接続されたコンデンサ39(
図4参照)と、を備える。
【0023】
真空バルブ20は、上述の機械接点部21と、機械接点部21を封入する絶縁筒24と、絶縁筒24の内側に設けられたベローズ25と、を備える。
【0024】
機械接点部21の固定接触子22および可動接触子23は、互いに接離可能に設けられている。固定接触子22は、絶縁筒24に対して固定的に配置されている。可動接触子23は、絶縁筒24に対して変位可能に設けられている。以下の単体遮断部11に関する説明では、固定接触子22および可動接触子23が接離する方向を接点動作方向と称する。
【0025】
絶縁筒24は、接点動作方向に沿って延びる円筒状に形成されている。絶縁筒24は、例えば絶縁材料により形成された碍管である。絶縁筒24の内部は、真空に保たれている。
【0026】
ベローズ25は、絶縁筒24の内部において、操作ロッド35を囲うように配置されている。ベローズ25の一端部は、可動接触子23の外周面に固着されている。ベローズ25の他端部は、絶縁筒24の第2端部に固着されている。ベローズ25は、可動接触子23および操作ロッド35を絶縁筒24に対して変位可能としつつ、真空バルブ20内の真空を保っている。
【0027】
密閉容器30は、絶縁性ガスとして、例えば六フッ化硫黄(SF6)ガス等を封入している。密閉容器30は、円筒状の絶縁筒31と、絶縁筒31の両端開口を閉塞する第1フランジ32および第2フランジ33と、を備える。絶縁筒31は、接点動作方向に沿って延びている。絶縁筒31は、例えば絶縁材料により形成された碍管である。第1フランジ32および第2フランジ33は、それぞれ金属材料により形成されている。
【0028】
露出部40は、端子板41および電界緩和用のシールドリング42を備える。端子板41およびシールドリング42は、第1フランジ32に固着されている。端子板41およびシールドリング42は、それぞれ第1フランジ32に導通している。なお、本実施形態における「導通」とは、複数の対象が互いに電気的に接続して同電位となっている状態の意とする。また複数の対象が持つインピーダンスによって電位差が生じている場合でも、機器の定格電圧に比べて十分無視できる程度(例えば、数十V以下)に電位差が小さい場合は同電位として扱う。
【0029】
端子板41は、第1フランジ32から接点動作方向に沿って絶縁筒31の反対側に突出している。シールドリング42は、端子板41の周囲に配置されている。具体的に、シールドリング42は、接点動作方向において端子板41が存在する範囲に配置され、接点動作方向から見て端子板41を囲うように形成されている。さらに、シールドリング42は、接点動作方向から見て第1フランジ32およびコンデンサ39の接続部を囲うように形成されている。これにより、シールドリング42は、接点動作方向から見て露出部40のうち最も外側に位置する部材である。
【0030】
通電軸34は、密閉容器30の第1フランジ32に固定されている。通電軸34は、真空バルブ20の絶縁筒24を貫くように配置されている。通電軸34は、真空バルブ20を密閉容器30に対して固定的に支持している。通電軸34は、真空バルブ20の絶縁筒24内で固定接触子22を固定的に支持している。通電軸34は、金属等の導電材により形成され、固定接触子22に導通している。通電軸34は、固定接触子22と密閉容器30の第1フランジ32とを導通している。さらに、通電軸34は、第1フランジ32を通じて端子板41およびシールドリング42と導通している。
【0031】
操作ロッド35は、接点動作方向に沿って延在している。操作ロッド35の第1端部は、真空バルブ20の絶縁筒24内で可動接触子23に結合している。操作ロッド35は、絶縁筒24の第2端部に対して接点動作方向に摺動可能に設けられている。操作ロッド35は、密閉容器30の内部から第2フランジ33に設けられた貫通孔を通って密閉容器30の外部に延出している。操作ロッド35は、密閉容器30の内部の気密を保ちつつ、第2フランジ33に対して導通し、かつ摺動可能に設けられている。操作ロッド35のうち第1端部から第2フランジ33との摺動部に亘る部分は、金属等の導電材により形成されている。これにより、操作ロッド35は、可動接触子23と第2フランジ33とを導通している。操作ロッド35のうち、密閉容器30外に位置する部分の少なくとも一部には、操作ロッド35の両端部間を電気的に絶縁するロッド絶縁部35aが設けられている。
【0032】
操作機構37は、電力により動作する応答性の高い電磁アクチュエータで形成されている。電磁アクチュエータは、例えば電磁反発式の操作機構37である。電磁反発式の操作機構37は、操作ロッド35の第2端部と連結した良導体の金属板と、金属板と対向するように配置したコイルと、を有する。駆動時はコイルに電流を印加し、金属板に逆方向の誘導電流を発生させ、金属板にコイルと逆方向の電磁反発力を与えて操作ロッド35を動作させる。
【0033】
操作機構37は、密閉容器30の外側において、接点動作方向で第2フランジ33と並んで配置されている。操作機構37は、連結部材38によって第2フランジ33に連結されている。連結部材38の少なくとも一部は、絶縁材料により形成されており、連結部材38の両端部間を電気的に絶縁している。操作機構37は、操作ロッド35を接点動作方向に往復動作させる。これにより、操作機構37は、操作ロッド35に対して固定的に設けられた可動接触子23を変位させ、可動接触子23を固定接触子22に対して接離させる。
【0034】
図4に示すように、コンデンサ39は、密閉容器30の外側に配置されている。コンデンサ39は、密閉容器30に対して水平方向に並び、密閉容器30と平行に配置されている。コンデンサ39は、密閉容器30の第1フランジ32および第2フランジ33に電気的かつ機械的に接続されている。コンデンサ39と第1フランジ32との接続部は、露出部40の一部を構成している。コンデンサ39は、高抵抗の円筒に誘電体を封入し、両端に電極を備え、静電容量と抵抗を持つ。コンデンサ39は、電流遮断時および開極状態の機械接点部21にかかる電圧を調整する。
【0035】
各機械遮断ユニット10において、一対の単体遮断部11は、それぞれの操作ロッド35が操作機構37による機械接点部21の開極動作時に同一直線上で動作するように配置されている。すなわち、一対の単体遮断部11は、接点動作方向に並んでいる。一対の単体遮断部11は、操作機構37による機械接点部21の開極動作時の操作ロッド35の動作方向が互いに逆方向になるように配置されている。具体的に、各機械遮断ユニット10において、一対の単体遮断部11は、それぞれの操作機構37が互いに接触するように配置されている。
【0036】
電源部12は、一対の単体遮断部11の操作機構37に電力を供給する。電源部12は、基準電位が操作機構37と同電位になるように設けられている。制御部13は、電源部12、および一対の単体遮断部11の操作機構37の状態監視を行う。また、制御部13は、電源部12から一対の単体遮断部11の操作機構37への電力供給を制御する。絶縁トランス14は、図示しない外部電源から電力の供給を受け、電源部12に給電する。これら電源部12、制御部13および絶縁トランス14は、接点動作方向に並んでいるとともに、一対の単体遮断部11に対して接点動作方向に直交する水平の一方向に並んでいる。
【0037】
支持架台15は、一対の単体遮断部11、電源部12、制御部13、絶縁トランス14を下方から支持する。例えば、支持架台15は、アルミニウム合金等の金属材料により形成されている。支持架台15は、平面視矩形状に形成されている。支持架台15は、外縁の2辺が接点動作方向と平行となるように配置されている。本実施形態では、支持架台15は、外形の一対の辺がX方向に延び、かつ外形の残りの一対の辺がY方向に延びるように形成されている。支持架台15は、絶縁支柱60に対して上下方向に複数段並べられている。
【0038】
各機械遮断ユニット10において、一対の単体遮断部11は、支持架台15の外形の一対の辺に対して平行に配置されている。各単体遮断部11の密閉容器30の少なくとも一部は、水平方向で支持架台15の外側に配置されている。換言すると、一対の単体遮断部11の密閉容器30は、上下方向から見て、支持架台15から突出するように配置されている。なお、図示の例では、密閉容器30の一部のみが水平方向で支持架台15の外側に配置されているが、密閉容器30の全体が水平方向で支持架台15の外側に配置されていてもよい。密閉容器30における固定接触子22と同電位の箇所(例えば第1フランジ32)が水平方向で支持架台15の外側に配置されていればよい。さらに、一対の単体遮断部11の両端に位置する露出部40も、水平方向で支持架台15の外側に配置されている。
【0039】
図4および
図5に示すように、機械遮断ユニット10は、ブスバー16をさらに備える。ブスバー16は、一対の単体遮断部11同士を直列接続する。ブスバー16は、一対の単体遮断部11の第2フランジ33それぞれに電気的かつ機械的に接続されている。ブスバー16は、金属等の導電材により形成されている。これにより、ブスバー16は、一対の単体遮断部11の第2フランジ33同士を導通し、一対の単体遮断部11の機械接点部21を直列接続している。各機械遮断ユニット10において、互いに直列接続された一対の単体遮断部11のうち高電位側の単体遮断部11を第1単体遮断部11、低電位側の単体遮断部11を第2単体遮断部11と称する。
【0040】
図2から
図4に示すように、絶縁支柱60は、例えば碍子や、ポリマー、繊維強化プラスチック等により形成されている。絶縁支柱60は、基礎5に立設されている。絶縁支柱60は、上下方向に沿って延びている。各絶縁支柱60は、複数の機械遮断ユニット10を上下方向に並べた状態で支持架台15の角部を支持している。絶縁支柱60は、複数の機械遮断ユニット10を互いに電気的に絶縁するとともに、各機械遮断ユニット10を大地に対して電気的に絶縁しつつ、各機械遮断ユニット10を固定的に支持している。なお、各絶縁支柱60は、下端から上端に亘って連続して延びていてもよいし、各支持架台15を挟むように複数に分割されていてもよい。後述する他の絶縁支柱についても同様である。
【0041】
各機械遮断ユニット10において、一対の単体遮断部11はX方向に並んでいる。一対の単体遮断部11は、上下方向から見て、X方向に並ぶ一方の一対の絶縁支柱60と、X方向に並ぶ他方の一対の絶縁支柱60と、の間に配置されている。各単体遮断部11は、絶縁支柱60に接触しないように配置されている。上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10において、一方の機械遮断ユニット10の第1単体遮断部11は、他方の機械遮断ユニット10の第2単体遮断部11に近接するように配置されている。本実施形態では、各機械遮断ユニット10における第1単体遮断部11および第2単体遮断部11が、上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10で互い違いになるように配置されている。
【0042】
また、上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10において、一方の機械遮断ユニット10の一対の単体遮断部11と、他方の機械遮断ユニット10の一対の単体遮断部11とが、Y方向にずれて配置されている。具体的に、一方の機械遮断ユニット10の一対の単体遮断部11がY方向の第1位置に配置され、他方の機械遮断ユニット10の一対の単体遮断部11がY方向における第1位置とは異なる第2位置に配置されている。これにより、上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10において、一方の機械遮断ユニット10の一対の単体遮断部11それぞれの露出部40と、他方の機械遮断ユニット10の一対の単体遮断部11それぞれの露出部40とが、上下方向から見て互いにずれて配置されている。より詳細に、露出部40同士は、上下方向から見て互いに重ならないように配置されている。図示の例では、一方の機械遮断ユニット10の一対の単体遮断部11は、上下方向から見て他方の機械遮断ユニット10の電源部12、制御部13および絶縁トランス14に重なっている。上記の単体遮断部11の位置関係は、上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10の全ての組み合わせに適用される。
【0043】
機械遮断ユニット10同士の電気的な接続について説明する。
図2および
図3に示すように、上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10において、一方の機械遮断ユニット10の一対の単体遮断部11と、他方の機械遮断ユニット10の一対の単体遮断部11とは、第1母線80を介して互いに導通している。具体的に、一方の機械遮断ユニット10の第1単体遮断部11の端子板41、および他方の機械遮断ユニット10の第2単体遮断部11の端子板41は、それらに共通して接続された第1母線80を介して互いに導通している。第1母線80は、上下方向から見て支持架台15の周囲を延びている。機械遮断部2における全ての単体遮断部11は直列接続されている。直列接続された全ての単体遮断部11は、閉極状態で1本の通電経路となる機械接点モジュール90を形成している。
【0044】
機械接点モジュール90の両端の端子板41は、機械接点モジュール90の電気的な端部を形成している。機械接点モジュール90の両端の端子板41は、それらに接続された第2母線70を通じて直流送電系統に接続されている。
【0045】
機械遮断ユニット10の通電経路について説明する。
図5に示すように、単体遮断部11において、機械接点部21が閉極していると、第1フランジ32および第2フランジ33が導通する。一対の単体遮断部11のうち一方の単体遮断部11の第2フランジ33同士は、ブスバー16を介して導通している。よって、一対の単体遮断部11を流れる電流は、一方の単体遮断部11の端子板41から第1フランジ32、通電軸34、機械接点部21、操作ロッド35、第2フランジ33、ブスバー16を流れ、他方の単体遮断部11の端子板41に至る。
【0046】
次に機械遮断ユニット10の動作について説明する。
例えば、直流送電系統に事故電流が発生した際には、図示しない制御装置により事故電流を検出し、機械遮断ユニット10の制御部13に開極指令が与えられる。それに伴い、各単体遮断部11の機械接点部21が開極する。この時、各機械遮断ユニット10において、一対の操作ロッド35は、同一直線上で互いに逆方向に動作するので、操作機構37に生じる衝撃力および反動が相殺される。動作方向が逆である閉極動作についても開極動作と同様な原理により、操作機構37に生じる衝撃力および反動が相殺される。
【0047】
直流遮断器1の動作について説明する。
図1に示すように、直流送電系統の定常送電時は、送電電流が機械接点モジュール90に流れる。この状態では、アレスタ100および転流回路200には電流は流れていない。また、転流回路200のコンデンサ220は充電される。
【0048】
例えば、直流送電系統に事故電流が発生した際には、図示しない制御装置により事故電流を検出し、直流遮断器1に事故遮断指令を与え、転流回路200を導通状態にする。具体的に、図示しない制御装置により転流装置4の高速投入器240を投入する。また、機械接点モジュール90の全ての単体遮断部11の機械接点部21を開極する。具体的に、図示しない制御装置により、機械遮断ユニット10の制御部13に開極動作指令を与え、各単体遮断部11の機械接点部21を開極させる。
【0049】
転流回路200が導通状態になると、充電されていたコンデンサ220の電荷が放電される。コンデンサ220の電荷が放電されると、コンデンサ220およびリアクトル210によるLC共振によって転流回路200に並列接続された機械接点モジュール90の電流が低下し、機械接点モジュール90に電流ゼロ点が生成される。これにより、各単体遮断部11の機械接点部21においてアークが消弧し、機械接点モジュール90を通る通電経路が遮断される。なお、高速投入器240を投入するタイミングは、単体遮断部11の機械接点部21を開極するタイミングと同時でもよいし、単体遮断部11の機械接点部21を開極するタイミングよりも後でもよい。一般的には、高速投入器240のほうが機械接点部21よりも応答が早いため、上記のタイミングで高速投入器240を投入することで、機械接点部21が完全に開極する前に電流ゼロ点が生成されることを回避できる。
【0050】
機械接点モジュール90を通る通電経路が遮断されると、事故電流は機械接点モジュール90に並列接続されたアレスタ100に転流する。その後、アレスタ100において事故電流のエネルギーが吸収され、直流送電系統の事故電流の遮断が完了する。
【0051】
以上に説明したように、本実施形態の直流遮断器1は、全ての単体遮断部11を直列接続して形成された機械接点モジュール90と、機械接点モジュール90に並列接続された転流回路200と、を持つ。転流回路200は、リアクトル210、コンデンサ220および高速投入器240を直列接続して形成されている。
この構成によれば、高速投入器240を投入してコンデンサ220の電荷を放電し、転流回路200におけるコンデンサ220およびリアクトル210によるLC共振によって、転流回路200に並列接続された機械接点モジュール90に電流ゼロ点を生成できる。このため、従来技術のような機械接点モジュール90に並列接続される半導体遮断器が必要ないので、機器コストを抑制することができる。
さらに、本実施形態では、転流装置4が高速投入器240を有しているので、機械接点よりも高速で転流回路200を導通状態にできる。よって、従来技術のような半導体遮断器を用いた構成と同等の速度で、機械接点モジュール90に流れる電流を遮断できる。
以上により、電流の遮断時間の短縮、および機器コストの抑制が可能な直流遮断器1を提供できる。
【0052】
さらに、上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10において、一方の機械遮断ユニット10の一対の単体遮断部11それぞれの露出部40と、他方の機械遮断ユニット10の一対の単体遮断部11それぞれの露出部40とが、上下方向から見て互いにずれて配置されている。この構成によれば、各機械遮断ユニット10の端部に配置されたシールドリング42などの露出部40同士の絶縁距離を広くとることができる。このため、支持架台15間の絶縁支柱60を短くできるとともに、機械遮断部2の全体の高さを低くすることができる。したがって、直流遮断器1の高さを低く抑えることができる。また、直流遮断器1を収容する建屋や洋上プラットフォーム等の建造物の高さも低くでき、その建造物の製造コストおよび建設コストを抑制することが可能となる。
【0053】
また、各機械遮断ユニット10において、操作機構37に生じる衝撃力および反動が相殺されるので、単体遮断部11を支える強固な絶縁支柱60を必要としない。これによりコストの抑制が可能となる。さらに、上記の通り機械遮断部2の高さを低くすることができるため、機械遮断部2の全体の重心を低くすることが可能となり、耐震性能を満足するために強固な絶縁支柱60を必要としない。これによりコストの抑制が可能となる。
【0054】
上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10において、それぞれの一対の単体遮断部11は、水平のX方向に並んでいる。さらに、一方の機械遮断ユニット10の一対の単体遮断部11は、X方向に直交するY方向の第1位置に配置され、他方の機械遮断ユニット10の一対の単体遮断部11は、Y方向の第1位置とは異なる第2位置に配置されている。この構成により、一方の機械遮断ユニット10の露出部40と、他方の機械遮断ユニット10の露出部40とがY方向にずれて配置される。したがって、上記の効果を奏する機械遮断部2が得られる。
【0055】
機械遮断ユニット10のそれぞれにおいて、一対の単体遮断部11は、支持架台15の外形の辺に対して平行に配置されている。この構成によれば、支持架台15上の空間が一対の単体遮断部11の周囲で上方から見て歪な形状になることを抑制できる。これにより、支持架台15上の機器のレイアウトの自由度の向上を図ることができる。
【0056】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の機械遮断部2Aについて詳述する。
図6および
図7は、第2の実施形態の機械遮断部2Aを示す斜視図である。
図6および
図7に示す第2の実施形態では、支持架台15に対する一対の単体遮断部11の配置が第1の実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0057】
図6および
図7に示すように、第2の実施形態の機械遮断部2Aは、上下方向に並んだ状態で絶縁支柱60に支持された複数(本実施形態では2個)の機械遮断ユニット10Aを備える。上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10Aにおいて、一方の機械遮断ユニット10Aの一対の単体遮断部11がX方向およびY方向に傾斜した水平の第1方向に並び、他方の機械遮断ユニット10Aの一対の単体遮断部11が第1方向に直交した水平の第2方向に並んでいる。図示の例では、第1方向および第2方向は、それぞれX方向およびY方向に対して45°傾斜した方向である。これにより、上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10Aにおいて、一方の機械遮断ユニット10Aの一対の単体遮断部11それぞれの露出部40と、他方の機械遮断ユニット10Aの一対の単体遮断部11それぞれの露出部40とが、上下方向から見て互いにずれて配置されている。
【0058】
各機械遮断ユニット10Aにおいて、一対の単体遮断部11は、支持架台15の外形の各辺に対して傾斜して配置されている。一対の単体遮断部11の両端に位置する露出部40は、水平方向で支持架台15の外側に配置されている。各機械遮断ユニット10Aにおいて、一対の単体遮断部11は、上下方向から見て1本の絶縁支柱60と、残りの3本の絶縁支柱60との間に配置されている。各単体遮断部11は、絶縁支柱60に接触しないように配置されている。
【0059】
上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10Aにおいて、一方の機械遮断ユニット10Aの一対の単体遮断部11と、他方の機械遮断ユニット10Aの一対の単体遮断部11とは、第1母線80を介して互いに導通している。具体的に、一方の機械遮断ユニット10Aの第1単体遮断部11の端子板41、および他方の機械遮断ユニット10Aの第2単体遮断部11の端子板41は、それらに共通して接続された第1母線80を介して互いに導通している。第1母線80は、上下方向から見て支持架台15の周囲を延びている。機械遮断部2Aにおける全ての単体遮断部11は、互いに直列接続され、閉極状態で1本の通電経路となる機械接点モジュール90を形成している。
【0060】
以上に説明したように、本実施形態の直流遮断器1は、上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10Aにおいて、一方の機械遮断ユニット10A一対の単体遮断部11それぞれの露出部40と、他方の機械遮断ユニット10Aの一対の単体遮断部11それぞれの露出部40とが、上下方向から見て互いにずれて配置されている。この構成により、第1の実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、本実施形態では、一対の単体遮断部11の並ぶ方向が隣り合う一対の機械遮断ユニット10Aの間で相違しているので、第1の実施形態と比較して、露出部40同士の水平方向の距離を確保しやすい。したがって、支持架台15間の絶縁支柱60をより一層短くできる。
【0061】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の機械遮断部2Bについて詳述する。
図8および
図9は、第3の実施形態の機械遮断部2Bを示す斜視図である。
図8および
図9に示す第3の実施形態では、支持架台15に対する一対の単体遮断部11の配置が第1の実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0062】
図8および
図9に示すように、第3の実施形態の機械遮断部2Bは、上下方向に並んだ状態で絶縁支柱60に支持された複数(本実施形態では2個)の機械遮断ユニット10Bを備える。上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10Bにおいて、一方の機械遮断ユニット10Bの一対の単体遮断部11がX方向に並び、他方の機械遮断ユニット10Bの一対の単体遮断部11がY方向に並んでいる。これにより、上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10Bにおいて、一方の機械遮断ユニット10Bの一対の単体遮断部11それぞれの露出部40と、他方の機械遮断ユニット10Bの一対の単体遮断部11それぞれの露出部40とが、上下方向から見て互いにずれて配置されている。
【0063】
各機械遮断ユニット10Bにおいて、一対の単体遮断部11は、支持架台15の外形の一対の辺に対して平行に配置されている。一対の単体遮断部11の両端に位置する露出部40は、水平方向で支持架台15の外側に配置されている。各機械遮断ユニット10Bにおいて、一対の単体遮断部11は、上下方向から見て、接点動作方向に並ぶ一方の一対の絶縁支柱60と、接点動作方向に並ぶ他方の一対の絶縁支柱60と、の間に配置されている。各単体遮断部11は、絶縁支柱60に接触しないように配置されている。
【0064】
上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10Bにおいて、一方の機械遮断ユニット10Bの一対の単体遮断部11と、他方の機械遮断ユニット10Bの一対の単体遮断部11とは、第1母線80を介して互いに導通している。具体的に、一方の機械遮断ユニット10Bの第1単体遮断部11の端子板41、および他方の機械遮断ユニット10Bの第2単体遮断部11の端子板41は、それらに共通して接続された第1母線80を介して互いに導通している。第1母線80は、上下方向から見て支持架台15の周囲を延びている。第1母線80は、絶縁支柱60を外側から跨ぐ位置で、絶縁支柱60に支持された支持部材50に支持されている。支持部材50は、絶縁材料により形成されている。機械遮断部2Bにおける全ての単体遮断部11は、互いに直列接続され、閉極状態で1本の通電経路となる機械接点モジュール90を形成している。
【0065】
以上に説明したように、本実施形態の直流遮断器1は、上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10Bにおいて、一方の機械遮断ユニット10Bの一対の単体遮断部11それぞれの露出部40と、他方の機械遮断ユニット10Bの一対の単体遮断部11それぞれの露出部40とが、上下方向から見て互いにずれて配置されている。この構成により、第1の実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、本実施形態では、一対の単体遮断部11の並ぶ方向が隣り合う一対の機械遮断ユニット10Bの間で相違しているので、第1の実施形態と比較して、露出部40同士の水平方向の距離を確保しやすい。したがって、支持架台15間の絶縁支柱60をより一層短くできる。
【0066】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の機械遮断部2Cについて詳述する。
図10は、第4の実施形態の機械遮断部2Cを示す斜視図である。
図11は、第4の実施形態の機械遮断部2Cを示す平面図である。
図10および
図11に示す第4の実施形態では、支持架台15Cの形状が第1の実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0067】
図10および
図11に示すように、第4の実施形態の機械遮断部2Cは、上下方向に並ぶ複数(本実施形態では4個)の機械遮断ユニット10Cと、複数の機械遮断ユニット10Cを支持する複数の絶縁支柱61,62と、を備える。
【0068】
機械遮断ユニット10Cは、第1の実施形態の支持架台15に代えて、支持架台15Cを備える。支持架台15Cは、平面視正六角形状に形成されている。支持架台15Cは、絶縁支柱62に対して上下方向に複数段に並べられている。
【0069】
絶縁支柱61,62は、基礎5に立設された支柱本体61と、複数の支持架台15Cを連結する連結支柱62と、を備える。連結支柱62は、上下方向に沿って延び、各支持架台15Cの角部を支持している。本実施形態では、連結支柱62は、支持架台15Cの角部の数に対応して6本設けられている。支柱本体61は、基礎5から上方に延びている。本実施形態では、支柱本体61は、4本設けられている。支柱本体61は、連結支柱62によって互いに連結された全ての機械遮断ユニット10Cをまとめて下方から支持している。なお絶縁支柱の構成はこれに限定されない。例えば絶縁支柱は、連結支柱62が基礎5まで下方に延長された構成を有していてもよい。
【0070】
各機械遮断ユニット10Cにおいて、一対の単体遮断部11は、上方から見て支持架台15Cの外形の一対の対辺に直交するように配置されている。一対の単体遮断部11の両端に位置する露出部40は、水平方向で支持架台15Cの外側に配置されている。各機械遮断ユニット10Cにおいて、一対の単体遮断部11は、上下方向から見て3本の連結支柱62と、残りの3本の連結支柱62との間に配置されている。各単体遮断部11は、連結支柱62に接触しないように配置されている。
【0071】
上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10Cにおいて、一方の機械遮断ユニット10Cの一対の単体遮断部11が水平の第1方向に並び、他方の機械遮断ユニット10Cの一対の単体遮断部11が第1方向に傾斜した水平の第2方向に並んでいる。第2方向は、第1方向に対して60°傾斜した方向である。これにより、上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10Cにおいて、一方の機械遮断ユニット10Cの一対の単体遮断部11それぞれの露出部40と、他方の機械遮断ユニット10Cの一対の単体遮断部11それぞれの露出部40とが、上下方向から見て互いにずれて配置されている。
【0072】
上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10Cにおいて、一方の機械遮断ユニット10Cの一対の単体遮断部11と、他方の機械遮断ユニット10Cの一対の単体遮断部11とは、第1母線80を介して互いに導通している。具体的に、一方の機械遮断ユニット10Cの第1単体遮断部11の端子板41、および他方の機械遮断ユニット10Cの第2単体遮断部11の端子板41は、それらに共通して接続された第1母線80を介して互いに導通している。第1母線80は、上下方向から見て支持架台15Cの周囲を延びている。機械遮断部2Cにおける全ての単体遮断部11は、互いに直列接続され、閉極状態で1本の通電経路となる機械接点モジュール90を形成している。
【0073】
以上に説明したように、本実施形態の直流遮断器1は、上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10Cにおいて、一方の機械遮断ユニット10Cの一対の単体遮断部11それぞれの露出部40と、他方の機械遮断ユニット10Cの一対の単体遮断部11それぞれの露出部40とが、上下方向から見て互いにずれて配置されている。この構成により、第1の実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、本実施形態では、一対の単体遮断部11の並ぶ方向が隣り合う一対の機械遮断ユニット10Cの間で相違しているので、第1の実施形態と比較して、露出部40同士の水平方向の距離を確保しやすい。したがって、支持架台15C間の連結支柱62をより一層短くでき、機械遮断部2Cの全体の高さを低くすることができる。
【0074】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の機械遮断部2Dについて詳述する。
図12は、第5の実施形態の機械遮断部2Dを示す斜視図である。
図13は、第5の実施形態の機械遮断部2Dを示す正面図である。
図12および
図13に示す第5の実施形態は、機械遮断ユニット10が天井6に支持されている点で、機械遮断ユニット10が基礎5に支持されている第1の実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0075】
図12および
図13に示すように、第5の実施形態の機械遮断部2Dは、第1の実施形態の絶縁支柱60に代えて、複数(本実施形態では4本)の絶縁支柱63を備える。絶縁支柱63は、建屋の天井6から吊り下げられている。絶縁支柱63は、上下方向に沿って延びている。各絶縁支柱63は、複数の機械遮断ユニット10を上下方向に並べた状態で支持架台15の角部を支持している。各絶縁支柱63には、ジョイントが設けられている。ジョイントは、機械遮断部2Dと天井6との間に設けられ、機械遮断部2Dと天井6とを揺動可能に連結している。
【0076】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、本実施形態では、絶縁支柱63が各機械遮断ユニット10を上方から支持するので、絶縁支柱63に対して機械遮断ユニット10から絶縁支柱63の撓み方向の力が作用しても、機械遮断ユニット10の重力により撓み方向の力を相殺できる。よって、各機械遮断ユニット10を下方から支持する構成と比較して、絶縁支柱63に曲げモーメントが発生することをより確実に抑制できる。したがって、機械遮断部2Dの振動を抑制でき、絶縁支柱63の過剰な大型化や支持構造物の増加、またそれらに伴う重量の増加を抑制できる。
【0077】
(第6の実施形態)
第6の実施形態の機械遮断部2Eについて詳述する。
図14は、第6の実施形態の機械遮断部2Eを示す斜視図である。
図14に示す第6の実施形態は、機械遮断ユニット10Aが天井6に支持されている点で、機械遮断ユニット10Aが基礎5に支持されている第2の実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第2の実施形態と同様である。
【0078】
図14に示すように、第6の実施形態の機械遮断部2Eは、第2の実施形態の絶縁支柱60に代えて、複数(本実施形態では4本)の絶縁支柱63を備える。絶縁支柱63の構成は、第5の実施形態と同様である。
【0079】
本実施形態によれば、第2の実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、本実施形態では、絶縁支柱63が各機械遮断ユニット10Aを上方から支持するので、絶縁支柱63に対して機械遮断ユニット10Aから絶縁支柱63の撓み方向の力が作用しても、機械遮断ユニット10Aの重力により撓み方向の力を相殺できる。よって、各機械遮断ユニット10Aを下方から支持する構成と比較して、絶縁支柱63に曲げモーメントが発生することをより確実に抑制できる。したがって、機械遮断部2Eの振動を抑制でき、絶縁支柱63の過剰な大型化や支持構造物の増加、またそれらに伴う重量の増加を抑制できる。
【0080】
(第7の実施形態)
第7の実施形態の機械遮断部2Fについて詳述する。
図15は、第7の実施形態の機械遮断部2Fを示す斜視図である。
図15に示す第7の実施形態は、機械遮断ユニット10Bが天井6に支持されている点で、機械遮断ユニット10Bが基礎5に支持されている第3の実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第3の実施形態と同様である。
【0081】
図15に示すように、第7の実施形態の機械遮断部2Fは、第3の実施形態の絶縁支柱60に代えて、複数(本実施形態では4本)の絶縁支柱63を備える。絶縁支柱63の構成は、第5の実施形態と同様である。
【0082】
本実施形態によれば、第3の実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、本実施形態では、絶縁支柱63が各機械遮断ユニット10Bを上方から支持するので、絶縁支柱63に対して機械遮断ユニット10Bから絶縁支柱63の撓み方向の力が作用しても、機械遮断ユニット10Bの重力により撓み方向の力を相殺できる。よって、各機械遮断ユニット10Bを下方から支持する構成と比較して、絶縁支柱63に曲げモーメントが発生することをより確実に抑制できる。したがって、機械遮断部2Fの振動を抑制でき、絶縁支柱63の過剰な大型化や支持構造物の増加、またそれらに伴う重量の増加を抑制できる。
【0083】
(第8の実施形態)
第8の実施形態の機械遮断部2Gについて詳述する。
図16は、第8の実施形態の機械遮断部2Gを示す斜視図である。
図16に示す第8の実施形態は、機械遮断ユニット10Cが天井6に支持されている点で、機械遮断ユニット10Cが基礎5に支持されている第4の実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第4の実施形態と同様である。
【0084】
図16に示すように、第8の実施形態の機械遮断部2Gは、第4の実施形態の絶縁支柱61,62に代えて、複数(本実施形態では6本)の絶縁支柱63を備える。絶縁支柱63は、第4の実施形態の連結支柱62を天井6まで上方に延長するように設けられている。各絶縁支柱63の構成は、第5の実施形態と同様である。
【0085】
本実施形態によれば、第4の実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、本実施形態では、絶縁支柱63が各機械遮断ユニット10Cを上方から支持するので、絶縁支柱63に対して機械遮断ユニット10Cから絶縁支柱63の撓み方向の力が作用しても、機械遮断ユニット10Cの重力により撓み方向の力を相殺できる。よって、各機械遮断ユニット10Cを下方から支持する構成と比較して、絶縁支柱63に曲げモーメントが発生することをより確実に抑制できる。したがって、機械遮断部2Gの振動を抑制でき、絶縁支柱63の過剰な大型化や支持構造物の増加、またそれらに伴う重量の増加を抑制できる。
【0086】
上記実施形態では、単体遮断部11が真空遮断器を構成しているが、単体遮断部はガス断路器を構成していてもよい。
【0087】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、上下方向で隣り合う一対の機械遮断ユニットにおいて、一方の機械遮断ユニットの一対の単体遮断部それぞれの露出部と、他方の機械遮断ユニットの一対の単体遮断部それぞれの露出部とが、上下方向から見て互いにずれて配置されている。この構成により、械遮断ユニットの露出部同士の絶縁距離を広くとることができる。このため、支持架台間の絶縁支柱を短くできるとともに、機械遮断部の全体の高さを低くすることができる。したがって、直流遮断器の高さを低く抑えることができる。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0089】
1…直流遮断器、2,2A,2B,2C,2D,2E,2F,2G…機械遮断部、4…転流装置、6…天井、10,10A,10B,10C…機械遮断ユニット、11…単体遮断部、15,15C…支持架台、21…機械接点部、22…固定接触子、23…可動接触子、30…密閉容器、35…操作ロッド、37…操作機構、40…露出部、60,61,62,63…絶縁支柱、90…機械接点モジュール、100…アレスタ、200…転流回路、210…リアクトル、220…コンデンサ、240…高速投入器