(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165363
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】フォールトツリー簡素化方法、フォールトツリー簡素化装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G21C 17/00 20060101AFI20241121BHJP
G06Q 10/20 20230101ALI20241121BHJP
【FI】
G21C17/00 110
G06Q10/20
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081507
(22)【出願日】2023-05-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】塩屋 亮平
(72)【発明者】
【氏名】平井 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】大塚 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 和基
(72)【発明者】
【氏名】片山 卓
【テーマコード(参考)】
2G075
5L049
【Fターム(参考)】
2G075AA01
2G075BA03
2G075CA02
2G075EA05
2G075EA07
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】フォールトツリーを簡素化する方法を提供する。
【解決手段】フォールトツリー簡素化方法は、フォールトツリーに含まれるトップゲートと、基事象と、中間ゲートと、の対応関係を抽出ステップと、前記対応関係における前記基事象ごとに、その基事象から出発して、前記フォールトツリーを前記トップゲートに向かって辿ったときに到着する最上位のORゲートを特定するステップと、特定した前記ORゲートの配下の基事象を集約するステップと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォールトツリーを構成するトップゲートと基事象とそれらの間に存在する要素の対応関係を抽出するステップと、
抽出された前記対応関係における前記基事象ごとに、その基事象から出発して、前記フォールトツリーを前記トップゲートに向かって辿ったときにORゲート以外を経由せずに到達できる最上位のORゲートを特定するステップと、
特定した前記ORゲートの配下の基事象を集約するステップと、
を有するフォールトツリー簡素化方法。
【請求項2】
前記集約するステップでは、前記基事象のそれぞれについて、特定した前記ORゲートが1つのみ存在するときには、当該基事象を集約対象とする、
請求項1に記載のフォールトツリー簡素化方法。
【請求項3】
前記集約するステップでは、前記基事象のそれぞれについて、特定した前記ORゲートが複数存在するときには、当該基事象の重要度が閾値以下であれば、それぞれの前記ORゲートについて当該基事象を集約対象とする、
請求項1に記載のフォールトツリー簡素化方法。
【請求項4】
前記集約するステップでは、前記基事象のそれぞれについて、特定した前記ORゲートが複数存在するときには、当該基事象の重要度が閾値より大きければ、当該基事象を集約対象としない、
請求項1又は請求項3に記載のフォールトツリー簡素化方法。
【請求項5】
前記集約するステップでは、集約する前記基事象の発生確率を合計し、前記フォールトツリーにおける集約前の前記基事象を集約後の前記基事象で置き換える、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のフォールトツリー簡素化方法。
【請求項6】
集約対象外の基事象が登録されたリストを取得するステップ、をさらに有し、
前記特定するステップでは、抽出された前記対応関係における前記基事象の中から前記リストに登録されていない前記基事象について、前記最上位の前記ORゲートを特定する、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のフォールトツリー簡素化方法。
【請求項7】
前記抽出するステップでは、基事象の数に前記トップゲートの数を乗じた値分の前記対応関係を示すデータを抽出する、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のフォールトツリー簡素化方法。
【請求項8】
フォールトツリーを構成するトップゲートと基事象とそれらの間に存在する要素の対応関係を抽出する手段と、
抽出された前記対応関係における前記基事象ごとに、その基事象から出発して、前記フォールトツリーを前記トップゲートに向かって辿ったときにORゲート以外を経由せずに到達できる最上位のORゲートを特定する手段と、
特定した前記ORゲートの配下の基事象を集約する手段と、
を有するフォールトツリー簡素化装置。
【請求項9】
コンピュータに、
フォールトツリーを構成するトップゲートと基事象とそれらの間に存在する要素の対応関係を抽出するステップと、
抽出された前記対応関係における前記基事象ごとに、その基事象から出発して、前記フォールトツリーを前記トップゲートに向かって辿ったときにORゲート以外を経由せずに到達できる最上位のORゲートを特定するステップと、
特定した前記ORゲートの配下の基事象を集約するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フォールトツリー簡素化方法、フォールトツリー簡素化装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントのリスク評価に確率論的リスク評価(Probabilistic Risk Assessment:PRA)が用いられる(例えば、特許文献1)。PRAでは、プラントの系統図から機器等を網羅的に抽出し、抽出した機器等の故障モードの検討を行って、フォールトツリーやイベントツリーを作成する。
【0003】
フォールトツリー(以下、FTと記載する場合がある)の一例を
図1Aに示す。
図1AのFT100Aは、トップゲートの事象が発生する条件の組合せを木構造で表している。FT100Aのトップゲートは、「緩和策1の失敗」である。トップゲートの下部に接続されている記号をANDゲートと呼び、ANDゲートに接続される「機器A/Bの故障」と「機器Cの故障」の両方が起こると「緩和策1の失敗」が発生することを示している。緩和策1とは、原子力プラントで異常が発生したときに、重大な事故に至らないように、事象の進展を食い止めるために行われる措置や機器のことである。「機器A/Bの故障」のブロックの下部に接続されている記号をORゲートと呼び、ORゲートに接続される「機器Aの故障」と「機器Bの故障」の何れかが起こると、「機器A/Bの故障」が発生することを示している。FTの最下端部の事象(「機器Aの故障」、「機器Bの故障」、「機器Cの故障」)を基事象と呼び、トップゲートと基事象の中間に位置する「機器A/Bの故障」をトップゲート(ここでは「緩和策1の失敗」)に対する中間ゲートと呼ぶ。基事象は、それ以上細かい単位に分解できない故障や失敗の事象である。FT100Aは、「機器Aの故障」と「機器Bの故障」の何れかが生じ、且つ、機器Cの故障が生じると、緩和策1に失敗することを表している。
【0004】
イベントツリー(以下、ETと記載する場合がある)の一例を
図1Bに示す。
図1BのET100Bは、原子力プラントにて、ある望ましくない事象(起因事象)が発生したときに生じる事象の進展を示している。ET100Bの上部の「望ましくない事象(起因事象)発生」に続く「緩和策1」、「緩和策2」をヘディングと呼び、起因事象の後に生じる事象が発生順に示され、図の右側へ行くほど事象が進んだ状態であることを表している。ヘディングの下方には、ヘディングで示された緩和策1、2に成功するか失敗するかで分岐する樹形図が示されており、成功すれば分岐を右側へ進み、失敗すれば下方へ進むということを繰り返し、樹形図を右側へ進む。樹形図の右端には、最終的に発生する事象が示されている。ET100Bは、緩和策1に成功するか、又は、緩和策1に失敗しても緩和策2に成功すれば起因事象に対して安全に収束し、両方に失敗すると事故に至ることを示している。
【0005】
フォールトツリー解析は、システムの信頼性を評価する手法として広く利用されている。多くの適用例では、FTとETを組み合わせて解析することにより、システムのリスクを定量化するために用いられる。例えば、
図1AのFT100Aから「緩和策1の失敗」が発生する確率を計算し、計算した値を
図1BのET100Bの緩和策1の成功と失敗の分岐に適用する。同様に、図示しない緩和策2のFTに基づいて、緩和策2が失敗する確率を計算し、計算した値を
図1Bの緩和策2の分岐に適用する。すると、
図1BのET100Bに基づいて、起因事象が発生した後、緩和策1と緩和策2の両方に失敗し、事故に至る場合の発生頻度を計算することができる。
【0006】
原子力プラントは、大規模かつ複雑な制御・安全機能を有しており、起因事象のパターンも多岐に渡るため、FTの構造が巨大になり、それに伴いトップゲートの発生確率などの計算時間が長大化する傾向がある。原子力プラントは定期的に機器をメンテナンスする必要があるが、その期間中は当該機器を必要とする緩和策が利用不能となるため、FTの入力情報が変化し、それに伴い事故の発生頻度が増加する。例えば、機器Cがメンテナンス中であれば、
図1AのFT100Aの入力情報において機器Cの故障確率が1となり、その結果、緩和策1の失敗確率が増加し、
図1BのET100Bにおける事故の発生頻度も増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
原子力プラントの安全性の担保及びリスクが許容値を超えないことを確認するためには、機器の運転状態の変更に伴うリスク変動を都度計算する必要がある。しかし、巨大なFT構造のために計算時間が長大化すれば、リスク変動の計算結果を速やかに取得することができない可能性がある。そこで、FTに基づいて算出されるリスクの計算精度を維持しつつ、FTの構造を簡素化することにより、計算速度の向上を図る技術を提供する。
【0009】
本開示は、上記課題を解決することができるフォールトツリー簡素化方法、フォールトツリー簡素化装置およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の評価対象のフォールトツリー簡素化方法は、フォールトツリーを構成するトップゲートと基事象とそれらの間に存在する要素の対応関係を抽出するステップと、抽出された前記対応関係における前記基事象ごとに、その基事象から出発して、前記フォールトツリーを前記トップゲートに向かって辿ったときにORゲート以外を経由せずに到達できる最上位のORゲートを特定するステップと、特定した前記ORゲートの配下の基事象を集約するステップと、を有する。
【0011】
また、本開示のフォールトツリー簡素化装置は、フォールトツリーを構成するトップゲートと基事象とそれらの間に存在する要素の対応関係を抽出する手段と、抽出された前記対応関係における前記基事象ごとに、その基事象から出発して、前記フォールトツリーを前記トップゲートに向かい中間ゲートを辿ったときにORゲート以外を経由せずに到達できる最上位のORゲートを特定する手段と、特定した前記ORゲートの配下の基事象を集約する手段と、を有する。
【0012】
また、本開示のプログラムは、コンピュータに、フォールトツリーを構成するトップゲートと基事象とそれらの間に存在する中間ゲートの対応関係を抽出するステップと、抽出された前記対応関係における前記基事象ごとに、その基事象から出発して、前記フォールトツリーを前記トップゲートに向かって辿ったときにORゲート以外を経由せずに到達できる最上位のORゲートを特定するステップと、特定した前記ORゲートの配下の基事象を集約するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
上述のフォールトツリー簡素化方法、フォールトツリー簡素化装置およびプログラムによれば、フォールトツリーの構造を、計算精度を維持しつつ、自動的に簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】実施形態のフォールトツリー簡素化装置の一例を示すブロック図である。
【
図3A】実施形態のフォールトツリーの簡素化の一例を示す第1図である。
【
図3B】実施形態のフォールトツリーの簡素化の一例を示す第2図である。
【
図4】実施形態のフォールトツリー簡素化処理の全体を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態のトップゲートと基事象の対応関係の抽出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6A】実施形態の対応表について説明する第1図である。
【
図6B】実施形態の対応表について説明する第2図である。
【
図7】実施形態に係る集約処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態に係る集約処理について説明する図である。
【
図9】実施形態に係るフォールトツリー簡素化装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
以下、本実施形態のフォールトツリー簡素化方法について、
図1~
図9を参照して説明する。
(システム構成)
図2は、実施形態に係るフォールトツリー簡素化装置(以下、FT簡素化装置)の一例を示すブロック図である。FT簡素化装置10は、リスク評価の計算精度を維持しつつ、FTを自動的に簡素化する。
【0016】
FT簡素化装置10は、簡素化対象のFTなどの各種データを取得するデータ取得部11と、ユーザの操作を受け付ける入力受付部12と、FTの簡素化処理の実行制御を行う制御部13と、作成されたFT等を表示装置や電子ファイルとして出力する出力部14と、データ取得部11が取得したデータや処理中のデータを記憶する記憶部15と、を備える。制御部13は、FTを構成するトップゲートと基事象とそれらの間に存在する各種ゲートの対応関係を抽出した対応表を作成する対応表作成部131と、対応表に基づいて基事象を集約することにより、FTを簡素化する集約部132と、を備える。これらの機能部の詳細については、後にフローチャート(
図4、
図7)等を用いて詳しく説明する。
【0017】
基本的な考え方として、FTの構成要素である基事象の数を減らすことでFTの構造を簡素化し、計算負荷の低減を図る。
図3Aに簡素化前のFT3Aと簡素化後のFT3A´を示す。FT3Aのトップゲート3A1と、基事象3A3および基事象3A4とは、ORゲート3A2で接続されている。このような場合、基事象3A3および基事象3A4は、基事象3A3が発生する確率値と基事象3A4が発生する確率値を合計した発生確率値を有する新たな基事象X(基事象3A5)に等価変換可能である。
【0018】
図3Bに簡素化前のFT3Bと簡素化後のFT3B´を示す。FT3Bにおいて、トップゲート3B1と中間ゲート3B3および基事象3B4はORゲート3B2で接続され、中間ゲート3B3と、基事象3B6,3B7,3B8は、ORゲート3B5で接続されている。FT3Bは
図3AのFT3Aより少し複雑であるが、可能な限りFTの上流で集約することにより、効果的に基事象の数を減らすことができる。例えば、
図3Aと同様の考え方で基事象3B6~3B8は1つに集約することができ、さらに基事象3B6~3B8を集約した基事象と中間ゲート3B3とを新たな1つの基事象Y(不図示)で表すことができる。すると、ORゲート3B2に接続される基事象Yと基事象3B4を集約して、1つの基事象3B9で表すことができるので、FT3Bは、FT3B´のように簡素化できる。このように、可能な限り上流で集約することで、基事象の数を減らし、計算負荷を軽減することができる。
【0019】
(動作)
本実施形態では、上記のような簡素化を
図4に示す2つのプロセスで実現する。
図4は、実施形態のFT簡素化処理の全体を示すフローチャートである。
(P1)トップゲートと基事象の対応関係を抽出する。
(P2)基事象を集約する。
以下では、上記の各プロセスについて、詳細に説明する。
【0020】
(P1)トップゲートと基事象の対応関係の抽出
基事象の集約においては、それぞれの基事象の集約先ゲートを特定することが必要である。集約先ゲートは、可能な限り上流のORゲートである。最初のプロセス(P1)では、集約先ゲートの特定のために、各緩和策に対して構築されているFTにおけるトップゲートと各基事象とその間の各種ゲートの対応関係を抽出する。この処理フローを
図5に示す。対応表作成部131は、1つ又は複数のFTの中から、指定したトップゲートのFTを特定し、そのFTのトップゲートから下流にかけて各種ゲート(中間ゲート、ORゲート、ANDゲート、基事象)を網羅的に辿り、トップゲートと基事象、及び両者の経路に存在する各種ゲートを整理した対応表を作成する。
【0021】
図5は、本実施形態に係るトップゲートと基事象の対応関係の抽出処理の一例を示すフローチャートである。
最初に、データ取得部11が処理に必要なデータを取得し、取得したデータを記憶部15に保存する。例えば、データ取得部11はFTデータを取得する(ステップS1)。FTデータとは、例えば、
図1Aで例示したFT100A等の構造を記述したデータである。記述の形式はどのようなものであってもよい。例えば、
図1Bに例示するET100Bにおける事故の発生頻度を評価する場合、データ取得部11は、緩和策1失敗のFTデータと緩和策2失敗のFTデータを取得する。また、データ取得部11はトップゲートのリストを取得する(ステップS2)。例えば、データ取得部11は、緩和策1失敗のIDと緩和策2失敗のIDを含むトップゲートリストを取得する。これらのデータを取得すると、制御部13は、対応表作成部131に対応表の作成を指示する。
【0022】
まず、対応表作成部131は、FTデータからトップゲートIDを抽出する(ステップS3)。対応表作成部131は、ステップS1で取得されたFTデータから、ステップS2で取得されたトップゲートリストに記載された緩和策1、2のIDに基づいて、トップゲートを特定し、そのIDを抽出する。
【0023】
次に、対応表作成部131が、当該ゲートの直下に基事象が含まれているかどうかを判定する(ステップS4)。当該ゲートとは、抽出したゲート、この場合はトップゲートである。直下とは、トップゲートに直接接続されているゲートの直下の中間ゲート又は基事象のことである。ステップS1で取得したFTデータには、各ゲートの種別(中間ゲートか、ゲートの種類は何か、基事象か)と接続関係が含まれており、種別の情報に基づいて、直下のゲートが基事象かどうかを判別することができる。対応表作成部131は、トップゲートに直接接続するゲートに接続されている要素が基事象であれば、トップゲートの直下に基事象が含まれていると判定し、そうでない場合には、トップゲートの直下に基事象が含まれていないと判定する。例えば、
図3AのFT3Aの場合、ゲート3A3,3A4は共に基事象であるから、対応表作成部131は、基事象が含まれていると判定する。基事象が含まれていないと判定した場合(ステップS4;No)、ステップS7の処理に進む。
【0024】
基事象が含まれていると判定した場合(ステップS4;Yes)、対応表作成部131は、直下の基事象を全て抽出する(ステップS5)。FT3Aの場合、対応表作成部131は、基事象3A3,3A4を抽出する。次に対応表作成部131は、トップゲートID、中間ゲートID、基事象IDの対応表を作成する(ステップS6)。
図3AのFTの場合、対応表作成部131は、トップゲート3A1と基事象3A3とそれらがORゲートで接続されていることを対応付けた行データ(対応する中間ゲートは無し)と、トップゲート3A1と基事象3A4とそれらがORゲートで接続されていることを対応付けた行データ(対応する中間ゲートは無し)と、を含む対応表を生成する。
【0025】
次に対応表作成部131は、当該ゲートの直下に中間ゲートが含まれるかどうかを判定する(ステップS7)。例えば、
図3AのFT3Aの場合、トップゲートの直下には、中間ゲートが含まれていないので、この判定は、Noとなる。
図3BのFT3Bの場合、トップゲートの直下には、中間ゲート3B3が含まれているので、この判定は、Yesとなる。中間ゲートが含まれていないと判定した場合(ステップS7;No)、ステップS9の処理に進む。
【0026】
中間ゲートが含まれていると判定した場合(ステップS7;Yes)、対応表作成部131は、FTデータからトップゲート直下の中間ゲートを特定し、そのIDを抽出する(ステップS8)。
図3BのFT3Bの場合、中間ゲート3B3が抽出される。そして、ステップS4以降の処理を繰り返し実行する。この例の場合、ステップS4の当該ゲートは特定した中間ゲート3B3となる。中間ゲート3B3の直下には基事象3B6~3B8が含まれるので、対応表作成部131は、基事象3B6~3B8を抽出し(ステップS5)、トップゲート3B1と、中間ゲート3B3と、基事象3B6と、各ゲートの接続関係(どの種類のゲートで接続されているか)を対応付けた行データ、トップゲート3B1と、中間ゲート3B3と、基事象3B7とそれらの接続関係を対応付けた行データ、トップゲート3B1と、中間ゲート3B3と、基事象3B8とそれらの接続関係を対応付けた行データ、を含む対応表を生成する(ステップS6)。そして、ステップS7の判定を行って、この判定がYesであれば、ステップS8、ステップS4~S6の処理を繰り返し、ステップS7の判定がNoであれば、これまでに生成した対応表を、制御部13や表示装置等へ出力して(ステップS9)、
図5のフローチャートを終了する。
【0027】
図6Aに処理対象の一例としてFT5を示す。FT5において、トップゲートG1には、中間ゲートG2と基事象AがANDゲートで接続され、中間ゲートG2には、中間ゲートG3と、基事象Bと、基事象CがORゲートで接続され、中間ゲートG3には基事象DがORゲートで接続されている。このFT5に対し、
図5を参照して説明した処理フローによって対応関係を抽出すると、
図6Bに例示する対応表が得られる。図示するように、対応表では、トップゲート数×基事象数だけ対応関係の行データ(表の各行)が生成される。制御部13は、対応表を生成すると、次のプロセス(P2)に進む。
【0028】
(P2)基事象の集約
このプロセス(P2)では、前段のプロセス(P1)で生成したトップゲートと基事象の対応表に基づき、なるべく上流のORゲートで基事象を集約することにより、FT構造の簡素化を行う。集約処理のフローを
図7に示す。最初の判定ロジック(
図7のステップS17)では、FTの論理構造的に集約によるリスク評価結果への影響がない基事象を選定する。次の判定ロジック(
図7のステップS19)では、論理構造的に集約することでリスク評価結果への影響が生じ得るが、重要度(即ち、基事象が有するリスクへの寄与度)の低い基事象に限定して集約対象を選定することで、評価結果への影響を抑える。なお、集約可否を決める重要度の閾値は、評価者が任意に指定することができ、入力受付部12は、指定された閾値を記憶部15へ設定する。全ての基事象の集約先ゲートを特定した後は、集約先ゲートが同じ基事象同士で確率値を合計し、集約後のFT構造を元のFTデータへ反映することで、最終的な簡素化されたFTデータが得られる。
【0029】
図7は、本実施形態に係る簡素化処理の一例を示すフローチャートである。
最初に、データ取得部11が処理に必要なデータを取得し、取得したデータを記憶部15に保存する。例えば、データ取得部11は、FTデータを取得する(ステップS11)。また、データ取得部11は、前段のプロセス(P1)で作成された対応表を取得する(ステップS12)。緩和策1失敗のFTと緩和策2失敗のFTが存在する場合、対応表には、2つのFTの各々にて抽出された基事象の合計分の行データが含まれている。また、データ取得部11は、集約対象外の基事象リストを取得する(ステップS13)。基事象リストには、集約対象外の基事象のIDが含まれている。例えば、評価者は、集約せずに個別に評価したい基事象のIDを基事象リストに登録し、基事象リストをFT簡素化装置10へ入力する。集約せずに個別に評価したい基事象とは、例えば、
図1AのFT100Aの機器Cがメンテナンス対象となる場合であれば、基事象「機器C故障」である。「機器C故障」を集約対象外とし、他の基事象(メンテナンス等が予定されていないとする。)を集約することで、他の基事象については繰り返し計算する必要がなくなり、機器Cがメンテナンス中の期間のリスク評価と、そうでない期間のリスク評価を少ない計算時間で実行することができるようになる。
【0030】
また、データ取得部11は、基事象の重要度リストを取得する(ステップS14)。重要度リストには、FTデータに含まれる基事象の重要度が記載されている。重要度は、基事象が有するリスクへの寄与度を示し、例えば、別途リスク評価を実行することで取得する。また、データ取得部11は、基事象の確率値リストを取得する(ステップS15)。確率値リストには、基事象の発生確率が記載されている。発生確率は、例えば、過去の故障実績データ等に基づいて、知見を有する技術者によって設定される。これらのデータを取得すると、制御部13は、集約部132に基事象の集約処理を指示する。
【0031】
まず、集約部132は、集約対象の基事象を対応表から抽出する(ステップS16)。集約部132は、ステップS12で取得された対応表から、ステップS13で取得された集約対象外の基事象リストに登録されていない基事象のIDを抽出する。以下の処理では、ここで抽出された基事象を対象に処理が行われる。
【0032】
次に、集約部132が、基事象から数えて最上位にあるORゲートが1つのみかどうかを判定する(ステップS17)。最上位にあるORゲートとは、対象とする基事象から出発してトップゲートに向かってFTを辿ったときにOR以外のゲートに至る1つ手前のORゲート(OR以外のゲートを経由せずに到達できる最上位のORゲート)のことである。また、1つのみかどうかについて、例えば、ある基事象が緩和策1失敗のFTにのみ含まれ、その基事象からトップゲートへ辿ったときの最上位のORゲートが1つであればこの判定はYesとなり、当該基事象が、緩和策1失敗のFTと緩和策2失敗のFTの両方に含まれ、それぞれのFTで最上位のORゲートが1つずつ見つかり、且つ、この2つのORゲートが異なる場合、最上位のORゲートが2つ存在することになるので、この判定はNoとなる。ステップS17の判定の具体例については、後に
図8を用いて説明する。集約部132は、処理対象の全ての基事象についてこの判定を行う。
【0033】
基事象から数えて最上位にあるORゲートが1つのみの場合(ステップS17;Yes)、集約部132は、このORゲートを当該基事象の集約先として特定し、抽出する(ステップS18)。この場合は、基事象を集約してもリスク評価結果への影響がない。集約部132は、ステップS17の判定がYesとなる全ての基事象について、集約先のORゲートを抽出する処理を行う。集約先のORゲートを抽出した基事象については、ステップS22の処理に進む。
【0034】
基事象から数えて最上位にあるORゲートが1つのみではない場合(ステップS17;No)、集約部132は、ステップS14で取得された重要度リストを参照して、当該基事象の重要度が閾値以下かどうかを判定する(ステップS19)。なお、閾値は、予め評価者により設定されているものとする。集約部132は、ステップS17でNo判定となった全ての基事象についてステップS19の判定を行う。基事象の重要度が閾値を上回る場合(ステップS19;No)、集約部132は、重要度が閾値を上回る基事象を集約対象外に設定し(ステップS20)、集約対象外に設定した基事象については、ステップS20で処理完了となり、後続の処理は行わない。
【0035】
基事象の重要度が閾値以下の場合(ステップS19;Yes)、集約部132は、当該基事象を集約対象とし、基事象から数えて最上位にある複数のORゲートを集約先として抽出する(ステップS21)。この場合、基事象を集約することでリスク評価への影響が生じ得るが、重要度の低い基事象に限定して集約することで、その影響を抑制する。集約によるリスク評価結果への影響については、
図8を用いて説明する。
【0036】
次に、集約部132は、ステップS18又はステップS21で抽出されたORゲートの配下に存在し、集約対象外の基事象(ステップS16で除かれた基事象とステップS20で集約対象外に設定した基事象)を除くすべての基事象について、ステップS15で取得された確率値リストを参照して、各基事象の発生確率の確率値を取得する。集約部132は、集約先として抽出したORゲート単位で、取得した基事象の確率値を合計し、集約対象の基事象を集約した新たな基事象を生成する(ステップS22)。
【0037】
次に、集約部132は、ステップS11で取得されたFTデータに対して、生成した基事象の上書きと、集約された基事象の削除の2つの処理を実行する(ステップS23)。例えば、基事象aと基事象bを集約して基事象cを生成する場合、元のFTデータから、基事象aと基事象bを削除し、基事象cで上書きする(基事象a、bを基事象cで置換する。)。また、基事象cについてはステップS22で合計した確率値をFTデータ内に基事象cと対応付けて含めるようにしてもよいし、ステップS15で取得した確率値リストに基事象cが発生する確率値を追加してもよい。次に、出力部14が、簡素化されたFTデータ等を表示装置や電子ファイル等へ出力する(ステップS24)。
【0038】
次に
図8を用いて、
図7のステップS17の判定について説明する。
図8に例示するトップゲートT1,T2,T3は、例えば、緩和策1の失敗、緩和策2の失敗、緩和策3の失敗である。
図8は、これらをトップゲートとする3つのFTを並べて記載したもので、3つのFTのうち共通する構成については、それらが複数のFTの構造において共通するものであることが分かるような形式で記載している。
図8のFTにおいて、基事象A,B,CはトップゲートT1,T2との接続があるが、トップゲートT1,T2の両方の場合において、最上流にあるORゲートはORゲートG2であり1つしか存在しない。よって、ステップS17の判定結果はYesとなり、ORゲートG2が基事象A,B,Cの集約先として抽出される(ステップS18)。一方、基事象Dは2箇所に存在しており、トップゲートT1,T2,T3との接続があるが、トップゲートT1,T2の場合の最上流にあるORゲートはゲートG2であるのに対し、トップゲートT3の場合の最上流にあるORゲートはゲートG7となり、最上流のORゲートが複数存在する。よって、基事象Dについては、ステップS17の判定結果はNoとなる。基事象Dの重要度が閾値より大きい場合(ステップS19;No)、基事象Dは、集約されない。基事象Dの重要度が閾値以下の場合(ステップS19;Yes)、基事象Dは、ORゲートG2とORゲートG7の両方について集約される。
【0039】
基事象DがORゲートG2とORゲートG7の両方について集約される場合には、リスク評価結果への影響が生じ得る。ここで、説明を簡便にするため、トップゲートT1が
図1BのET100Bのヘディングの「緩和策1の失敗」に対応し、トップゲートT3が「緩和策2の失敗」に対応し、
図8の基事象A~Dと基事象A~Dからトップゲートまでの経路に存在する各種ゲート以外が存在しないとする。すると、基事象Dが発生すると、緩和策1の失敗と緩和策2の失敗の両方が生じるような構造となる。基事象DをORゲートG2とORゲートG7の両方に集約して簡素化した簡略化後のFTにおいては、緩和策1の失敗や緩和策2の失敗が基事象Dによって生じたものであるかどうかは不明である。基事象DをORゲートG2とORゲートG7の両方に集約して簡素化したFTに基づく緩和策1が失敗する確率と、緩和策2に失敗する確率を
図1BのET100Bに適用すると、実際には、基事象Dが発生した場合、緩和策1と緩和策2の両方に失敗するにもかかわらず、そのことが考慮されず、基事象Dが発生した場合であっても緩和策1に失敗し、緩和策2に成功するような事象が生じ得ることとして、緩和策2に失敗する確率が計算されてしまう。つまり、
図1BのETを用いた評価を例にすると、基事象Dが集約されることに伴い、緩和策1失敗かつ緩和策2失敗に至ることの期待値が過小評価されてしまう。これが、ステップS17でNoの判定となった基事象を集約することによる影響である。しかし、このようなリスク評価結果への影響は、ステップS19の判定に係る重要度の閾値を調整することによって低減することができる。
【0040】
(効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、巨大かつ複雑なFTの構造を簡素化することで、計算負荷を低減し、システムの状態変更に伴うリスクの繰り返し計算の時間を短縮することができる。例えば、機器Cについて、メンテナンス等の状態変更に伴う計算が必要な場合、機器Cの故障の基事象を、集約対象外の基事象リストに登録し、
図7の処理によって、機器C以外の基事象を集約した簡素化されたFTを用意し、集約された基事象については確率値を計算しておく。すると、例えば、機器Cにメンテナンスが発生した場合、簡素化されたFTに基づいて、機器Cの基事象の確率値を変更し、他の基事象については、予め計算しておいた確率値を適用して計算するだけでトップゲートの発生確率を計算することができる。これにより、簡素化していないFTに基づいて、機器Cの状態変更が生じるたびに全ての要素について計算を行う場合に比べ、少ない計算量と計算時間でリスク評価を行うことができる。なお、本実施形態の簡素化処理自体にも計算処理が発生するが、予めメンテナンス対象となる機器全般を集約対象外に指定しておくことで、一度簡素化したFTは様々なプラント状態の計算に繰り返し利用することが可能であるため、長期的な観点からは、計算量及び計算時間を削減が可能である。
【0041】
また、
図7、
図8を用いて説明したように、FTを集約しても論理的に等価又は重要度の低い基事象を集約対象に絞り込むロジックにより、リスク評価結果への影響を最小限に留めることができる。つまり、本実施形態によれば、リスク評価の計算精度を維持しつつ、FT構造を簡素化することができる。
【0042】
上記の実施形態では、原子力プラントのリスク評価に用いるFTを簡素化することとしたが、FT簡素化装置10の適用分野は、原子力プラントのリスク評価に限定されず、FTを用いて信頼性評価を行う他の産業分野にも適用が可能である。
【0043】
図9は、実施形態に係るフォールトツリー簡素化装置のハードウェア構成の一例を示す図である。コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述のフォールトツリー簡素化装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0044】
なお、フォールトツリー簡素化装置10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0045】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0046】
<付記>
各実施形態に記載のフォールトツリー簡素化方法、フォールトツリー簡素化装置およびプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0047】
(1)第1の態様に係る評価対象のフォールトツリー簡素化方法は、フォールトツリーを構成するトップゲートと基事象とそれらの間に存在する要素(中間ゲート及びそのゲート種類(例えば、ORゲート、ANDゲート等)など)の対応関係を抽出するステップと、抽出された前記対応関係における前記基事象ごとに、その基事象から出発して、前記フォールトツリーを前記トップゲートに向かって辿ったときにORゲート以外を経由せずに到達できる最上位のORゲートを特定するステップと、特定した前記ORゲートの配下の基事象を集約するステップと、を有する。
これにより、フォールトツリーを自動的に簡素化することができる。
【0048】
(2)第2の態様に係る評価対象のフォールトツリー簡素化方法は、(1)のフォールトツリー簡素化方法であって、前記集約するステップでは、前記基事象のそれぞれについて、特定した前記ORゲートが1つのみ存在するときには、当該基事象を集約対象とする。
これにより、集約前のFTによって表現されているリスクの精度を維持したまま、FTの構造を簡素化することができる。
【0049】
(3)第3の態様に係るフォールトツリー簡素化方法は、(1)~(2)のフォールトツリー簡素化方法であって、前記集約するステップでは、前記基事象のそれぞれについて、特定した前記ORゲートが複数存在するときには、当該基事象の重要度が閾値以下であれば、それぞれの前記ORゲートに対して当該基事象を集約対象とする。
これにより、集約前のFTによって表現されているリスクの精度を維持したまま、FTの構造を簡素化することができる。
【0050】
(4)第4の態様に係るフォールトツリー簡素化方法は、(1)~(3)のフォールトツリー簡素化方法であって、前記集約するステップでは、前記基事象のそれぞれについて、特定した前記ORゲートが複数存在するときには、当該基事象の重要度が閾値より大きければ、当該基事象は集約対象としない。
重要度の大きい基事象を集約対象から除外することにより、集約前のFTによって表現されているリスクの精度を維持したまま、FTの構造を簡素化することができる。
【0051】
(5)第5の態様に係るフォールトツリー簡素化方法は、(1)~(4)のフォールトツリー簡素化方法であって、前記集約するステップでは、前記基事象について、集約する前記基事象の発生確率を合算し、前記フォールトツリーにおける集約前の前記基事象を集約後の前記基事象で置き換える。
これにより、集約前のFTによって表現されているリスクの精度を維持したまま、FTの構造を簡素化することができる。
【0052】
(6)第6の態様に係るフォールトツリー簡素化方法は、(1)~(5)のフォールトツリー簡素化方法であって、集約対象外の基事象が登録されたリストを取得するステップ、をさらに有し、前記特定するステップでは、抽出された前記対応関係における前記基事象の中から前記リストに登録されていない前記基事象について、前記最上位の前記ORゲートを特定する。
これにより、集約したくない基事象を指定し、それ以外の基事象のみを集約対象としてFTを簡素化することができる。
【0053】
(7)第7の態様に係るフォールトツリー簡素化方法は、(1)~(6)のフォールトツリー簡素化方法であって、前記抽出するステップでは、基事象の数に前記トップゲートの数を乗じた値分の前記対応関係を示すデータを抽出する。
これにより、集約対象の全ての基事象について、基事象と中間ゲートとトップゲートとそれらの接続関係(ORゲート、ANDゲート等)の対応関係を抽出し、それぞれの基事象からトップゲートへ辿ったときの最上位のORゲートを特定することができる。
【0054】
(8)第8の態様に係るフォールトツリー簡素化装置10は、フォールトツリーを構成するトップゲートと基事象とそれらの間に存在する要素の対応関係を抽出する手段と、抽出された前記対応関係における前記基事象ごとに、その基事象から出発して、前記フォールトツリーを前記トップゲートに向かって辿ったときにORゲート以外を経由せずに到達できる最上位のORゲートを特定する手段と、特定した前記ORゲートの配下の基事象を集約する手段と、を有する。
【0055】
(9)第9の態様に係るプログラムは、コンピュータ900に、フォールトツリーを構成するトップゲートと基事象とそれらの間に存在する要素の対応関係を抽出するステップと、抽出された前記対応関係における前記基事象ごとに、その基事象から出発して、前記フォールトツリーを前記トップゲートに向かって辿ったときにORゲート以外を経由せずに到達できる最上位のORゲートを特定するステップと、特定した前記ORゲートの配下の基事象を集約するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0056】
10・・・フォールトツリー簡素化装置
11・・・データ取得部
12・・・入力受付部
13・・・制御部
131・・・対応表作成部
132・・・集約部
14・・・出力部
15・・・記憶部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース