(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165365
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】インクジェット装置およびインクジェット装置の印刷ミスの検出方法
(51)【国際特許分類】
B65H 63/06 20060101AFI20241121BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B65H63/06 Z
B41J2/01 305
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081510
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 省吾
【テーマコード(参考)】
2C056
3F115
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EB12
2C056EB37
2C056FB01
2C056FB07
2C056HA29
3F115AA07
3F115CA17
3F115CA39
3F115CB23
3F115CC28
3F115CD05
(57)【要約】
【課題】インクジェット装置の印刷ミスの発生を早期に検知する。
【解決手段】インクジェット装置は、インクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを制御するインクジェットコントローラと、線条体を引き取るキャプスタンと、キャプスタンモータと、前記キャプスタンモータによって回転駆動される駆動軸と、前記キャプスタンに接続され、前記駆動軸と連動する従動軸と、前記キャプスタンモータの回転を検知するキャプスタンモータエンコーダと、前記従動軸の回転を検知して、パルス信号を前記インクジェットコントローラに出力するインクジェットエンコーダと、制御部と、を備える。前記制御部は、前記キャプスタンモータエンコーダから出力されるパルス信号と、前記インクジェットエンコーダから出力されるパルス信号とに基づいて同期誤差を評価するように構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線条体の表面にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを制御するインクジェットコントローラと、
線条体を引き取るキャプスタンと、
キャプスタンモータと、
前記キャプスタンモータによって回転駆動される駆動軸と、
前記キャプスタンに接続され、前記駆動軸と連動する従動軸と、
前記キャプスタンモータの回転を検知するキャプスタンモータエンコーダと、
前記従動軸の回転を検知して、パルス信号を前記インクジェットコントローラに出力するインクジェットエンコーダと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記キャプスタンモータエンコーダから出力されるパルス信号と、前記インクジェットエンコーダから出力されるパルス信号とに基づいて同期誤差を評価するように構成される、
インクジェット装置。
【請求項2】
前記駆動軸と前記従動軸は、タイミングベルトを介して連動する、請求項1に記載のインクジェット装置。
【請求項3】
前記キャプスタンの軸と、前記従動軸と、前記インクジェットエンコーダとが同一軸上で連結されている、請求項1または請求項2に記載のインクジェット装置。
【請求項4】
前記同期誤差が所定の基準を超えた場合に、前記キャプスタンモータを停止するように構成されている、請求項1または請求項2に記載のインクジェット装置。
【請求項5】
前記線条体が光ファイバテープ心線である、請求項1または請求項2に記載のインクジェット装置。
【請求項6】
線条体の表面にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを制御するインクジェットコントローラと、
線条体を引き取るキャプスタンと、
キャプスタンモータと、
前記キャプスタンモータによって回転駆動される駆動軸と、
前記キャプスタンに接続され、前記駆動軸と連動する従動軸と、
前記キャプスタンモータの回転を検知するキャプスタンモータエンコーダと、
前記従動軸の回転を検知するインクジェットエンコーダと、を備えるインクジェット装置の印刷ミスの検出方法であって、
前記キャプスタンモータエンコーダから出力されるパルス信号と、前記インクジェットエンコーダから出力されるパルス信号とに基づいて同期誤差を評価して印刷ミスの有無を判断する、
インクジェット装置の印刷ミスの検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクジェット装置およびインクジェット装置の印刷ミスの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、移送時においてテープに作用する張力を一定に維持し、かつ振動を抑制することで印字精度を高める建材割付テープの印字装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェット装置を用いて線条体に印刷を行う場合、まずエンコーダが線条体の送り長さを計測する。インクジェットコントローラはその送り長さに基づいてインクジェットヘッドに指令を出力し、所定の位置にインクを吐出させる。
【0005】
しかしながら種々の要因により、実際の線条体の送り長さと、エンコーダの計測に基づいて算出される送り長さに誤差が生じる場合がある。その場合、適切な位置にインクを吐出することができず、印刷ミスが起こってしまう。目視による検査を行うことが考えられるが、印刷ミスを見逃すとその結果として大量の不良品が製造されてしまう可能性がある。
【0006】
本開示は、印刷ミスの発生を早期に検出することができるインクジェット装置およびインクジェット装置の印刷ミスの検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のインクジェット装置は、
線条体の表面にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを制御するインクジェットコントローラと、
線条体を引き取るキャプスタンと、
キャプスタンモータと、
前記キャプスタンモータによって回転駆動される駆動軸と、
前記キャプスタンに接続され、前記駆動軸と連動する従動軸と、
前記キャプスタンモータの回転を検知するキャプスタンモータエンコーダと、
前記従動軸の回転を検知して、パルス信号を前記インクジェットコントローラに出力するインクジェットエンコーダと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記キャプスタンモータエンコーダから出力されるパルス信号と、前記インクジェットエンコーダから出力されるパルス信号とに基づいて同期誤差を評価するように構成される。
【0008】
本開示のインクジェット装置の印刷ミスの検出方法は、
線条体の表面にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを制御するインクジェットコントローラと、
線条体を引き取るキャプスタンと、
キャプスタンモータと、
前記キャプスタンモータによって回転駆動される駆動軸と、
前記キャプスタンに接続され、前記駆動軸と連動する従動軸と、
前記キャプスタンモータの回転を検知するキャプスタンモータエンコーダと、
前記従動軸の回転を検知するインクジェットエンコーダと、を備えるインクジェット装置の印刷ミスの検出方法であって、
前記キャプスタンモータエンコーダから出力されるパルス信号と、前記インクジェットエンコーダから出力されるパルス信号とに基づいて同期誤差を評価して印刷ミスの有無を判断する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、インクジェット装置における印刷ミスの発生を早期に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、線条体に印刷を行う装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係るインクジェット装置の構成を示す概略図である。
【
図3】
図3は、印刷ミスの検出方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。本開示のインクジェット装置は、
(1)線条体の表面にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを制御するインクジェットコントローラと、
線条体を引き取るキャプスタンと、
キャプスタンモータと、
前記キャプスタンモータによって回転駆動される駆動軸と、
前記キャプスタンに接続され、前記駆動軸と連動する従動軸と、
前記キャプスタンモータの回転を検知するキャプスタンモータエンコーダと、
前記従動軸の回転を検知して、パルス信号を前記インクジェットコントローラに出力するインクジェットエンコーダと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記キャプスタンモータエンコーダから出力されるパルス信号と、前記インクジェットエンコーダから出力されるパルス信号とに基づいて同期誤差を評価するように構成される。
【0012】
キャプスタンモータ、駆動軸、従動軸、キャプスタンはすべて連動している。したがって正常時には、キャプスタンモータの回転を検知するキャプスタンモータエンコーダによって算出される送り長さと、従動軸の回転を検知するインクジェットエンコーダによって算出される送り長さは、一致する。しかしながら、インクジェットエンコーダまたはキャプスタンモータエンコーダの不具合、キャプスタン軸または従動軸とインクジェットエンコーダとの軸ずれや接続部分の破損、駆動軸と従動軸を接続するベルトの劣化等の要因により、インクジェットエンコーダによって算出される送り長さとキャプスタンモータエンコーダによって算出される送り長さとに誤差が生じる場合がある。
【0013】
上記の構成によれば、インクジェットエンコーダとキャプスタンモータエンコーダの同期誤差を評価することにより、インクジェットエンコーダまたはキャプスタンモータエンコーダによって算出される送り長さと実際のキャプスタンの送り長さに誤差が生じていることを検知できる。これにより、例えば印刷ミスの発生を早期に検出することができる。
【0014】
(2)(1)のインクジェット装置において、前記駆動軸と前記従動軸は、タイミングベルトを介して連動してもよい。
【0015】
タイミングベルトを用いることで、駆動軸と従動軸の回転のずれを低減できる。また、キャプスタンモータエンコーダとインクジェットエンコーダに同期誤差が生じた場合の原因の特定が容易となる。
【0016】
(3)(1)または(2)のインクジェット装置において、前記キャプスタンの軸と、前記従動軸と、前記インクジェットエンコーダとが同一軸上で連結されていてもよい。
【0017】
同一軸上で連結していることにより、インクジェットエンコーダ40によってキャプスタン20の回転を精度よく検知できる。また、キャプスタンモータエンコーダとインクジェットエンコーダに同期誤差が生じた場合の原因の特定が容易となる。
【0018】
(4)(1)から(3)のいずれかのインクジェット装置において、前記同期誤差が所定の基準を超えた場合に、前記キャプスタンモータを停止するように構成されていてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、印刷ミスを含む線条体の製造を早期に停止することができ、大量に不良品が製造されるのを防ぐことができる。
【0020】
(5)(1)から(4)のいずれかのインクジェット装置において、前記線条体が光ファイバテープ心線であってもよい。
【0021】
上記の構成によれば、印刷ミスが少ない光ファイバテープ心線の印字装置を提供できる。
【0022】
また、本開示のインクジェット装置の印刷ミスの検出方法は、
(6)線条体の表面にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを制御するインクジェットコントローラと、
線条体を引き取るキャプスタンと、
キャプスタンモータと、
前記キャプスタンモータによって回転駆動される駆動軸と、
前記キャプスタンに接続され、前記駆動軸と連動する従動軸と、
前記キャプスタンモータの回転を検知するキャプスタンモータエンコーダと、
前記従動軸の回転を検知するインクジェットエンコーダと、を備えるインクジェット装置の印刷ミスの検出方法であって、
前記キャプスタンモータエンコーダから出力されるパルス信号と、前記インクジェットエンコーダから出力されるパルス信号とに基づいて同期誤差を評価して印刷ミスの有無を判断する。
【0023】
上記の方法によれば、印刷ミスの発生を早期に検出することができる。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のインクジェット装置およびインクジェット装置の印刷ミスの検出方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
図1は、線条体の印刷装置の構成の一例を示す図である。
図1に示す構成では、予め製造された光ファイバテープ心線(線条体)FCがボビンBに巻かれた状態で繰出装置Fに取り付けられている。そして、繰出装置FのボビンBを回転させて光ファイバテープ心線FCを繰り出す。繰出装置Fから繰り出された光ファイバテープ心線FCは、ダンサローラDによって張力を調整されながら、キャプスタン20によって引き取られる。その後、インクジェットヘッド10からインクを吐出し、任意の数字、文字、模様を光ファイバテープ心線FCの表面に印刷する。その後、ダンサローラDによって張力を調整された状態で巻取装置Wにて巻き取られる。
【0026】
(インクジェット装置)
図2は、
図1に示した本開示の一実施形態に係るインクジェット装置1の詳細な構成を示す図である。
図2に示すように、本実施形態に係るインクジェット装置1は、インクジェットヘッド10と、インクジェットコントローラ11と、キャプスタン20と、キャプスタンモータ21と、駆動軸22と、従動軸23と、キャプスタンモータエンコーダ30と、インクジェットエンコーダ40と、制御部50と、を備える。
図2は
図1のインクジェット装置1を上から見た模式図であり、
図2において、光ファイバテープ心線FCは図中の矢印で示す方向(下から上)へ向かって走行する。
【0027】
インクジェットヘッド10は、光ファイバテープ心線FCの表面にインクを吐出するように構成されている。インクジェットコントローラ11はインクジェットヘッド10を制御するコントローラであり、適切なタイミングで適切な位置にインクが吐出されるようインクジェットヘッド10に指令を出力する。
【0028】
キャプスタン20は、光ファイバテープ心線FCを引き取るための部材である。光ファイバテープ心線FCは、キャプスタン20が備えるキャプスタンローラとキャプスタンベルトの間に挟まれながら張力が付加されて走行する。キャプスタン20の回転速度を制御することにより光ファイバテープ心線FCの引き取り速度を制御できる。
【0029】
キャプスタンモータ21は、駆動軸22および従動軸23を介してキャプスタン20を回転させる。キャプスタンモータ21は、まず駆動軸22を回転駆動させる。駆動軸22は、従動軸23と連動するように構成されている。本実施形態では駆動軸22に駆動プーリ24が設けられ、従動軸23に従動プーリ25が設けられており、各々のプーリがタイミングベルト26を介して連動している。また、従動軸23はキャプスタン20に接続されている。従動軸23とキャプスタン20の軸は同一軸上で接続され、同一の回転数で回転するように構成されている。当該構成により、キャプスタンモータ21が駆動軸22を回転駆動させることで、従動軸23、キャプスタン20がそれぞれ連動して回転する。
【0030】
キャプスタンモータエンコーダ30は、キャプスタンモータ21の回転を検知するためのロータリエンコーダである。キャプスタンモータエンコーダ30は、キャプスタンモータ21の回転を検知して後述する制御部50にパルス信号を出力する。キャプスタンモータエンコーダ30は、例えば、キャプスタンモータ21の出力軸の回転を検出する、あるいは、駆動軸22の回転を検出するように構成してもよい。キャプスタンモータエンコーダ30は、キャプスタンモータ21に組み込まれていてもよいし、キャプスタンモータ21とは別体で構成されていてもよい。
【0031】
インクジェットエンコーダ40は、従動軸23の回転を検知するためのロータリエンコーダである。本実施形態において、インクジェットエンコーダ40は、従動軸23およびキャプスタン20の軸とカップリング41を介して同一軸上で連結されている。カップリング41は、例えば、金属の円筒材にスリットが形成された金属ばね構造のカップリングである。インクジェットエンコーダ40は、従動軸23の回転を検知してインクジェットコントローラ11にパルス信号を出力する。従動軸23はキャプスタン20と接続されているため、従動軸23の回転を検知することによりキャプスタン20の回転を検知できる。インクジェットコントローラ11は当該パルス信号に基づいてキャプスタン20上の光ファイバテープ心線FCの送り長さを算出し、算出した送り長さに基づいてインクジェットヘッド10へ指令を出力する。
【0032】
制御部50は、キャプスタンモータエンコーダ30から出力されるパルス信号に基づいて、キャプスタンモータ21をフィードバック制御して適切な回転数を保持する。制御部50は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)である。制御部50は、キャプスタンモータ21の回転数やトルクを制御してもよい。
【0033】
本実施形態において、インクジェットエンコーダ40は、インクジェットコントローラ11に加えて制御部50にもパルス信号を出力する。すなわち制御部50には、インクジェットコントローラ11から得られる従動軸23(キャプスタン20)の回転に基づくパルス信号と、キャプスタンモータエンコーダ30から得られるキャプスタンモータ21の回転に基づくパルス信号の両方が出力される。
【0034】
(送り長さの算出)
次に、インクジェットエンコーダ40またはキャプスタンモータエンコーダ30による送り長さの算出について説明する。
【0035】
光ファイバテープ心線FCがキャプスタン20において滑らないことを前提とすると、光ファイバテープ心線FCがキャプスタン20を所定の時間内に走行する長さ(以下、「キャプスタン20の送り長さL0」と呼ぶ)は、キャプスタン20の回転数を計測することで算出することができる。キャプスタン20の回転数は従動軸23の回転数と同一であり、従動軸23の回転はインクジェットエンコーダ40によって検知できる。インクジェットエンコーダ40が1回転あたりに出力するパルス信号の数をn0、所定の時間内にインクジェットエンコーダ40から出力されたパルス信号の数をn、キャプスタン20の外径をDとすると、インクジェットエンコーダ40によって算出される送り長さL1はL1=πD×(n/n0)で表される。本実施形態では、インクジェットコントローラ11が上記の演算を行い送り長さL1を算出することで、光ファイバテープ心線FCの位置を認識し、算出した位置に基づいてインクジェットヘッド10に指令を出力する。
【0036】
また、キャプスタンモータ21、駆動軸22、従動軸23、キャプスタン20はすべて連動しているため、従動軸23の回転を検知するインクジェットエンコーダ40ではなく、キャプスタンモータ21の回転を検知するキャプスタンモータエンコーダ30によっても、送り長さを算出できる。キャプスタンモータエンコーダ30による送り長さの算出方法はインクジェットエンコーダ40による場合と同様である。以下の説明では、キャプスタンモータエンコーダ30によって算出される送り長さをL2と表す。
【0037】
正常時においては、キャプスタン20の送り長さL0と、インクジェットエンコーダ40によって算出される送り長さL1と、キャプスタンモータエンコーダ30によって算出される送り長さL2は、すべて一致する。しかしながら、インクジェットエンコーダ40またはキャプスタンモータエンコーダ30の不具合、キャプスタン20または従動軸23とインクジェットエンコーダ40との軸ずれやカップリング41の損傷、駆動プーリ24と従動プーリ25を接続するタイミングベルト26の劣化等の要因により、インクジェットエンコーダ40またはキャプスタンモータエンコーダ30によって算出される送り長さL1、L2と、キャプスタン20の送り長さL0に誤差が生じる場合がある。例えばキャプスタン20の送り長さL0とインクジェットエンコーダ40によって算出される送り長さL1に誤差が生じた場合、インクジェットコントローラ11が認識する光ファイバテープ心線FCの位置が実際の光ファイバテープ心線FCの位置とずれるため、印刷ミスが発生する。
【0038】
(印刷ミスの検出方法)
本実施形態では、制御部50が、インクジェットエンコーダ40から出力されるパルス信号(以下、「インクジェットパルス」と呼ぶことがある)と、キャプスタンモータエンコーダ30から出力されるパルス信号(以下、「モータパルス」と呼ぶことがある)との同期誤差を評価する。以下、同期誤差の評価および印刷ミスの検出方法について具体的に説明する。
【0039】
本開示における「同期誤差」とは、パルス比を考慮したインクジェットパルスの数とモータパルスの数の誤差を意味する。例えばインクジェットエンコーダ40の1回転あたりのパルス数をn0、キャプスタンモータエンコーダ30の1回転あたりのパルス数をN0とすると、パルス比kはk=N0/n0で表される。このとき所定の時間内のインクジェットパルスの数がn、同時間内のモータパルスの数がNであった場合、Nとk×nの差の絶対値(|N-k×n|)が同期誤差である。
【0040】
パルス比kが1でない場合、正常時であってもパルス比を考慮したインクジェットパルスの数k×nとモータパルスの数Nの間には誤差が生じうる。例えばパルス比kが5である場合、インクジェットパルスが1回出力される間にモータパルスが5回出力される。このときパルス信号をカウントするタイミングによってNとk×nの値に最大でモータパルス4回分の誤差が生じうる。したがって同期誤差の評価では、正常時に生じうる最大の誤差よりも大きい所定の閾値を設定し、同期誤差が当該閾値を超えた場合に異常と判定する。
【0041】
本実施形態に係るインクジェット装置において同期誤差を評価して印刷ミスを検出する手順の一例を、
図3のフローチャートに従って説明する。
【0042】
まず、制御部50は、インクジェットパルスとモータパルスをそれぞれ取得し、パルス信号の数をカウントする(ステップS1)。
【0043】
スタートから所定のエラー検出周期Tが経過するまでに取得したインクジェットパルスの数n、モータパルスの数Nを算出する(ステップS2)。
【0044】
次に、インクジェットエンコーダ40の1回転あたりのパルス数n0とキャプスタンモータエンコーダ30の1回転あたりのパルス数N0の比であるパルス比k(N0/n0)をもとに同期誤差(|N-k×n|)を算出し、当該同期誤差が所定の閾値を超えるか否かを判定する(ステップS3)。
【0045】
同期誤差が所定の閾値を超える場合(ステップS3においてYES)、インクジェットエンコーダ40またはキャプスタンモータエンコーダ30による回転の検知に何らかの異常が発生していると考えられる。この場合、印刷ミスが発生している可能性があるため、制御部50はキャプスタンモータ21を停止する(ステップS4)。その後、同期誤差の評価を終了する。
【0046】
同期誤差が所定の閾値を超えない場合(ステップS3においてNO)、正常に印刷が行われていると考えられるため、同期誤差の評価を終了する。実際には所定のエラー検出周期Tで上記ステップS1からS3を繰り返し実行し、印刷ミスの発生をモニタリングする。
【0047】
上記の構成によれば、インクジェットエンコーダ40とキャプスタンモータエンコーダ30の同期誤差を評価することにより、インクジェットエンコーダ40またはキャプスタンモータエンコーダ30によって算出される送り長さと実際のキャプスタン20の送り長さに誤差が生じていることを検知できる。例えばインクジェットエンコーダ40によって算出される送り長さと実際のキャプスタン20の送り長さに誤差が生じていた場合、印刷ミスが発生する。あるいはキャプスタンモータエンコーダ30によって算出される送り長さと実際のキャプスタン20の送り長さに誤差が生じていた場合、タイミングベルト26等の部材が劣化している可能性がある。本実施形態によれば、同期誤差を評価することによりこのような印刷ミスや設備の不具合を早期に検出することができる。
【0048】
また、本実施形態ではタイミングベルト26を用いて駆動プーリ24と従動プーリ25が連結されている。これにより、駆動軸22と従動軸23の間の回転のずれを低減できる。また、キャプスタンモータエンコーダ30とインクジェットエンコーダ40に同期誤差が生じた場合に、他の箇所の不良(例えばカップリング41の損傷)を確認すればよいため、原因の特定が容易となる。
【0049】
また、本実施形態ではキャプスタン20の軸、従動軸23およびインクジェットエンコーダ40が同一軸上で連結している。これにより、インクジェットエンコーダ40によってキャプスタン20の回転を精度よく検知できる。また、キャプスタンモータエンコーダ30とインクジェットエンコーダ40に同期誤差が生じた場合に、他の箇所の不良(例えばカップリング41の損傷)を確認すればよいため、原因の特定が容易となる。
【0050】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
【0051】
上記の実施形態では線条体は光ファイバテープ心線であったが、その他のケーブルや光ファイバであってもよい。線条体の形状はテープに限定されず、長手方向に垂直な断面の形状が円や楕円であってもよい。
【0052】
上記の実施形態ではインクジェットエンコーダ40からパルス信号が制御部50に直接出力されていたが、当該パルス信号が間接的に制御部50に出力されてもよい。例えば、インクジェットエンコーダ40からインクジェットコントローラ11を経由して制御部50にパルス信号が出力されてもよい。
【0053】
上記の実施形態では同期誤差を評価する制御部50はキャプスタンモータエンコーダ30を制御する構成要素と同一であったが、同期誤差を評価する制御部50とキャプスタンモータエンコーダ30を制御する構成要素が別であってもよい。例えば、インクジェットコントローラ11が制御部50としての機能を有し、同期誤差を評価するように構成されてもよい。その場合、キャプスタンモータエンコーダ30からインクジェットコントローラ11に直接または間接的にパルス信号が出力される。
【0054】
上記の実施形態では駆動軸22と従動軸23がプーリを介して連結されていたが、駆動軸22と従動軸23とが連動していれば他の態様も採用できる。例えば、駆動軸22と従動軸23が歯車で連結されていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 インクジェット装置
10 インクジェットヘッド
11 インクジェットコントローラ
20 キャプスタン
21 キャプスタンモータ
22 駆動軸
23 従動軸
24 駆動プーリ
25 従動プーリ
26 タイミングベルト
30 キャプスタンモータエンコーダ
40 インクジェットエンコーダ
41 カップリング
50 制御部
F 繰出装置
B ボビン
D ダンサローラ
W 巻取装置
FC 光ファイバテープ心線