(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165366
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/36 20060101AFI20241121BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F01N3/36 C
F01N3/24 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081511
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下笠 宏周
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA18
3G091AB02
3G091AB13
3G091BA07
3G091CA18
3G091CA27
(57)【要約】
【課題】燃料添加弁を長寿命化することが可能な排気浄化装置、を提供することである。
【解決手段】排気浄化装置は、排気通路400を形成する排気管410と、噴射口620が設けられた先端部610を有し、噴射口620から燃料を噴射する燃料添加弁600とを備える。排気管410は、排気通路400に連通する連通路460を形成し、先端部610が接続される壁部430を有する。排気浄化装置は、先端部610と対向する基端部710kを有し、連通路460に配置され、基端部710kから排気通路400に向けて筒状に延びる筒部材700をさらに備える。筒部材700によって、連通路460内には、噴射口620が開口し、噴射口620から噴射された燃料が流れる内側空間460Pと、基端部710kにおいて内側空間460Pと遮断され、内側空間460Pの外側に配置される外側空間460Qとが区画形成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの排気ガスが流れる排気通路を形成する排気管と、
噴射口が設けられた先端部を有し、前記噴射口から前記排気通路に向けて燃料を噴射する燃料添加弁とを備え、
前記排気管は、前記排気通路に連通する連通路を形成し、前記先端部が接続される壁部を有し、さらに、
前記先端部と対向する基端部を有し、前記連通路に配置され、前記基端部から前記排気通路に向けて筒状に延びる筒部材を備え、
前記筒部材によって、前記連通路内には、前記噴射口が開口し、前記噴射口から噴射された燃料が流れる内側空間と、前記基端部において前記内側空間と遮断され、前記内側空間の外側に配置される外側空間とが区画形成される、排気浄化装置。
【請求項2】
前記排気管は、前記排気通路に設けられ、前記内側空間からの燃料が衝突する燃料分散板をさらに有する、請求項1に記載の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2021-116762号公報(特許文献1)には、排気通路と、排気通路に向けて燃料を噴射する燃料添加弁と、排気通路と連通するとともに、燃料添加弁から噴射される燃料が通過する噴射通路を形成する円筒状の内壁部と、内壁部の径方向外側に配置され、内壁部と協働して排気通路を流れる排気ガスを噴射通路における燃料添加弁側の領域に導入する導入通路を形成する外壁部とを備える排気浄化装置が開示されている。外壁部の上端位置は、内壁部の上端位置よりも高い。
【0003】
また、特開2013-2398号公報(特許文献2)、特開2011-157825号公報(特許文献3)、特開2014-234815号公報(特許文献4)および特開2009-209804号公報(特許文献5)にも、排気浄化装置の各種の構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-116762号公報
【特許文献2】特開2013-2398号公報
【特許文献3】特開2011-157825号公報
【特許文献4】特開2014-234815号公報
【特許文献5】特開2009-209804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に開示されるように、排気通路内に向けて還元剤としての燃料を噴射する燃料添加弁を備えた排気浄化装置が知られている。このような排気浄化装置において、排気通路内を流れる高温の排気ガスが、旋回流となって燃料添加弁の先端部に到達する現象が起こり得る。この場合、先端部に設けられた燃料の噴射口でデポジットの生成が促進され、燃料添加弁の寿命が短くなる懸念が生じる。
【0006】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、燃料添加弁を長寿命化することが可能な排気浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]エンジンからの排気ガスが流れる排気通路を形成する排気管と、噴射口が設けられた先端部を有し、上記噴射口から上記排気通路に向けて燃料を噴射する燃料添加弁とを備え、上記排気管は、上記排気通路に連通する連通路を形成し、上記先端部が接続される壁部を有し、さらに、上記先端部と対向する基端部を有し、上記連通路に配置され、上記基端部から上記排気通路に向けて筒状に延びる筒部材を備え、上記筒部材によって、上記連通路内には、上記噴射口が開口し、上記噴射口から噴射された燃料が流れる内側空間と、上記基端部において上記内側空間と遮断され、上記内側空間の外側に配置される外側空間とが区画形成される、排気浄化装置。
【0008】
このように構成された排気浄化装置では、排気通路を流れる排気ガスが連通路に進入し、旋回流となって壁部の内壁に沿って流れる。この場合に、筒部材により、燃料添加弁の噴射口が開口する内側空間と、排気ガスの旋回流が流れる外側空間とを区画することによって、排気ガスが噴射口に向かうことを抑制できる。これにより、噴射口におけるデポジットの生成を抑え、燃料添加弁を長寿命化することができる。
【0009】
[2]上記排気管は、上記排気通路に設けられ、上記内側空間からの燃料が衝突する燃料分散板をさらに有する、[1]に記載の排気浄化装置。
【0010】
このように構成された排気浄化装置によれば、燃料分散板によって、排気通路における排気ガスの主流から連通路が隔てられる。これにより、連通路に対する排気ガスの進入を抑制して、噴射口におけるデポジットの生成をより効果的に抑えることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上に説明したように、この発明に従えば、燃料添加弁を長寿命化することが可能な排気浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の実施の形態における排気浄化装置が搭載される車両の吸排気系統を模式的に示す図である。
【
図2】
図1中の燃料添加弁と、その周辺の排気通路とを示す図である。
【
図3】
図2中の矢印IIIに示す方向に見た燃料添加弁と、その周辺の排気通路とを示す断面図である。
【
図4】
図3中の2点鎖線IVで囲まれた範囲を拡大して示す断面図である。
【
図5】比較例における排気浄化装置を示す断面図である。
【
図6】実施例における排気ガスの流速分布を示す図である。
【
図7】比較例における排気ガスの流速分布を示す図である。
【
図8】
図6中の実施例および
図7中の比較例における燃料添加弁の先端部のガス流速と、燃料添加弁の先端部の温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態における排気浄化装置が搭載される車両の吸排気系統を模式的に示す図である。
【0015】
図1を参照して、本実施の形態における排気浄化装置1は、車両に搭載されている。排気浄化装置1は、エンジン300を有する。エンジン300は、車両の走行用動力源として設けられている。代表的な例として、エンジン300は、ディーゼルエンジンである。エアクリーナ100を通過した空気は、吸気通路200を通じてエンジン300に供給される。
【0016】
排気浄化装置1は、排気管410と、排気浄化ユニット500と、燃料添加弁600とをさらに有する。排気管410は、エンジン300に接続されている。排気管410は、排気通路400を形成している。排気通路400には、エンジン300からの排気ガスが流れる。
【0017】
排気浄化ユニット500は、排気管410の経路上に設けられている。排気管410は、エンジン300および排気浄化ユニット500の間で延びている。排気浄化ユニット500は、たとえば、DOC(Diesel Oxidation Catalyst)およびDPF(Diesel Particulate Filter)を含む。
【0018】
燃料添加弁600は、排気浄化ユニット500よりも、排気管410における排気ガス流れの上流側に設けられている。燃料添加弁600は、排気通路400に向けて燃料を噴射する。燃料添加弁600により排気ガスに添加される燃料は、主として、DPFの再生のための還元剤として使用される。
【0019】
図2は、
図1中の燃料添加弁と、その周辺の排気通路とを示す図である。
図3は、
図2中の矢印IIIに示す方向に見た燃料添加弁と、その周辺の排気通路とを示す断面図である。
【0020】
図2および
図3を参照して、燃料添加弁600は、仮想上の直線である中心軸650を中心に延びる筒体からなる。燃料添加弁600は、先端部610を有する。先端部610は、中心軸650の軸方向における燃料添加弁600の一方端部に対応する部分である。
【0021】
先端部610には、噴射口620が設けられている。噴射口620は、中心軸650の軸上で開口している。燃料添加弁600は、噴射口620から燃料Fを噴射する。噴射口620からの燃料Fの噴射方向は、中心軸650の軸方向である。噴射口620から噴射された燃料Fは、中心軸650の半径方向外側に向けて放射状に広がりながら、中心軸650の軸方向に進行する。
【0022】
排気管410は、壁部430を有する。壁部430は、排気管410において筒状に突出し、その突出する先で開口する形状をなしている。壁部430には、先端部610が接続されている。先端部610は、壁部430の開口端に接続されている。
【0023】
壁部430は、連通路460を形成している。連通路460は、中心軸650を中心に円柱状に延びる空間である。壁部430は、内壁435(後出の
図4を参照)を有する。連通路460は、内壁435により規定されている。連通路460は、排気通路400に連通している。中心軸650の軸方向における連通路460の一方端部が、排気通路400に連通している。噴射口620は、中心軸650の軸方向における連通路460の他方端部で開口している。噴射口620の開口面積は、中心軸650に直交する平面により切断された場合の連通路460の開口面積よりも小さい。
【0024】
排気浄化装置1は、燃料分散板420をさらに有する。燃料分散板420は、排気通路400に設けられている。燃料分散板420は、たとえば、鋳造により排気管410に一体的に成形されている。
【0025】
燃料分散板420は、中心軸650の軸方向において、噴射口620と対向するように設けられている。噴射口620から噴射された燃料Fは、燃料分散板420と衝突する。燃料Fが燃料分散板420と衝突することにより、燃料Fが微粒化される。これにより、還元剤としての燃料Fの分散が促進され、還元剤を排気ガス中に均一に分散させることができる。
【0026】
排気通路400は、燃料分散板420によって、第1通路400Aと、第2通路400Bとに区画されている。第1通路400Aは、第2通路400Bの上側に位置している。第1通路400Aは、排気ガス流れの上流側において、入口部421を通じて第2通路400Bと連通し、排気ガス流れの下流側において、出口部422を通じて第2通路400Bと連通している。
【0027】
第2通路400Bを流れる排気ガスの主流の一部が、矢印Aに示されるように、入口部421を通じて第1通路400Aに流入する。燃料Fは、第2通路400Bを流れる排気ガスに向けて噴射される。第1通路400Aを流れる排気ガスは、矢印Bに示されるように、出口部422を通じて第1通路400Aに流出する。
【0028】
燃料分散板420は、排気ガス流れの上流側(入口部421)から排気ガス流れの下流側(出口部422)に向かって、下側に傾斜するように設けられている。入口部421および出口部422は、たとえば、略楕円状の断面形状を有する。入口部421の開口面積は、出口部422の開口面積よりも小さい。第2通路400Bから第1通路400Aへの排気ガスの流入方向(矢印Aに示す方向)は、第1通路400Aから第2通路400Bへの排気ガスの流出方向(矢印Bに示す方向)と交差する方向である。
【0029】
入口部421よりも排気ガス流れの下流側であって、燃料添加弁600よりも排気ガス流れの上流側の第1通路400Aには、壁部(不図示)がさらに設けられてもよい。壁部は、第1通路400Aの流路面積を縮小させるように、第1通路400Aの内方に向かって設けられる。
【0030】
図4は、
図3中の2点鎖線IVで囲まれた範囲を拡大して示す断面図である。
図2から
図4を参照して、排気浄化装置1は、筒部材700をさらに有する。筒部材700は、先端部610から筒状に延びている。筒部材700は、金属製である。筒部材700は、壁部430に対して着脱可能に設けられている。
【0031】
筒部材700は、円筒部710と、装着部720とを有する。円筒部710は、円筒形状を有する。円筒部710は、中心軸650を中心としてその軸方向に円筒状に延びている。中心軸650を中心とする円筒部710の直径は、中心軸650の軸方向における位置に拘わらず一定である。
【0032】
筒部材700(円筒部710)は、基端部710kと、先端部710jとを有する。円筒部710は、基端部710kおよび先端部710jの間で円筒状に延びている。基端部710kは、先端部610と対向している。基端部710kは、中心軸650の軸方向において、先端部610と当接している。先端部710jは、排気通路400および連通路460の境界に位置している。先端部710jは、排気通路400(第1通路400A)に位置してもよいし、連通路460に位置してもよい。
【0033】
装着部720は、円筒部710の基端部710kに接続されている。装着部720は、壁部430の開口端の内側に圧入されている。
【0034】
連通路460内には、筒部材700(円筒部710)によって、内側空間460Pと、外側空間460Qとが区画形成されている。噴射口620は、内側空間460Pに開口している。内側空間460Pには、噴射口620から噴射された燃料Fが流れる。外側空間460Qは、基端部710kにおいて、内側空間460Pと遮断されている。外側空間460Qは、内側空間460Pの外側に配置されている。
【0035】
内側空間460Pは、中心軸650を中心に円柱状に延びる空間である。中心軸650に直交する平面による切断された場合の内側空間460Pの開口面積は、中心軸650に直交する平面による切断された場合の連通路460の開口面積よりも小さい。中心軸650に直交する平面による切断された場合の内側空間460Pの開口面積は、噴射口620の開口面積よりも大きい。
【0036】
噴射口620から噴射された燃料Fは、内側空間460Pを通って、排気通路400(第1通路400A)に向かう。噴射口620から噴射され、中心軸650の軸方向に進行する燃料Fは、筒部材700(円筒部710)と干渉しないことが好ましい。
【0037】
外側空間460Qは、中心軸650の半径方向において、円筒部710と、壁部430の内壁435との間に規定され、中心軸650の軸方向に延びるリング状の空間である。外側空間460Qは、内側空間460Pに対して中心軸650の半径方向外側に配置されている。基端部710kが中心軸650の軸方向において先端部610に当接することによって、外側空間460Qは、基端部710kにおいて、内側空間460Pと遮断されている。
【0038】
図5は、比較例における排気浄化装置を示す断面図である。
図5には、
図3に対応する排気浄化措置の断面が示されている。
図5を参照して、本変形例では、連通路460に、
図3中の筒部材700が設けられていない。
【0039】
このような構成において、排気通路400(第1通路400A)を流れる排気ガスが、連通路460に進入し、中心軸650を中心とする旋回流Sとなって壁部430の内壁435に沿って流れる。排気ガスの旋回流Sが先端部610に達することによって、先端部610が高温となり、噴射口620にデポジットが生成される現象が生じる。
【0040】
図4を参照して、これに対して、本実施の形態では、筒部材700によって、連通路460内に、噴射口620が開口する内側空間460Pと、基端部710kにおいて内側空間460Pと遮断され、内側空間460Pの外側に配置される外側空間460Qとが区画されている。このような構成によれば、排気ガスは、主に外側空間460Qに進入して、中心軸650を中心とする旋回流Sとなる。これにより、高温の排気ガスが、内側空間460Pで開口する噴射口620に向かうことを抑制して、噴射口620におけるデポジットの生成を抑えることができる。結果、燃料添加弁600の長寿命化を図ることができる。
【0041】
また、本実施の形態では、排気通路400に、排気ガスにおける燃料の分散を促進させるための燃料分散板420が設けられている。このような構成により、連通路460が連通する第1通路400Aが、排気ガスの主流が流れる第2通路400Bから隔てられるため、連通路460に進入する排気ガスの量を抑制できる。これにより、噴射口620におけるデポジットの生成をさらに効果的に抑えることができる。
【0042】
図6は、実施例における排気ガスの流速分布を示す図である。
図7は、比較例における排気ガスの流速分布を示す図である。
図8は、
図6中の実施例および
図7中の比較例における燃料添加弁の先端部のガス流速と、燃料添加弁の先端部の温度との関係を示すグラフである。
【0043】
図6中の実施例では、筒部材700を設け、
図7中の比較例では、筒部材700を設けなかった。実施例および比較例において、CFD(Computational Fluid Dynamics)解析により、排気通路400(第1通路400A)および連通路460における排気ガスの流速分布を算出した。
【0044】
なお、
図6中の実施例では、筒部材700(円筒部710)の基端部710kが、中心軸650の半径方向外側に向けて広がる鍔形状を有する。中心軸650の軸方向における先端部610および基端部710kの間には、隙間が設けられている。基端部710kの外周縁が壁部430の内壁435に嵌合されることによって、外側空間460Qは、基端部710kにおいて、内側空間460Pと遮断されている。
【0045】
図8に示されるように、連通路460に筒部材700を設置することによって、先端部610における排気ガスの速度を低減させるとともに、先端部610の温度を低下させることができた。
【0046】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0047】
1 排気浄化装置、100 エアクリーナ、200 吸気通路、300 エンジン、400 排気通路、400A 第1通路、400B 第2通路、410 排気管、420 燃料分散板、421 入口部、422 出口部、430 壁部、435 内壁、460 連通路、460P 内側空間、460Q 外側空間、500 排気浄化ユニット、600 燃料添加弁、610,710j 先端部、620 噴射口、650 中心軸、700 筒部材、710 円筒部、710k 基端部、720 装着部。