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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165368
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】推進装置
(51)【国際特許分類】
   B64U 50/19 20230101AFI20241121BHJP
   F04D 29/32 20060101ALI20241121BHJP
   B64U 30/294 20230101ALI20241121BHJP
   B64C 27/473 20060101ALI20241121BHJP
   B64C 11/20 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B64U50/19
F04D29/32 J
F04D29/32 C
B64U30/294
B64C27/473
B64C11/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081514
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】芦田 喜章
(72)【発明者】
【氏名】北 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】苗村 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】山川 寛展
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB06
3H130AB26
3H130AB40
3H130AB52
3H130AC01
3H130AC30
3H130BA24C
3H130BA33G
3H130CB06
3H130DA02Z
3H130DD01Z
3H130EA07C
3H130EA08C
3H130EB02G
3H130EB04C
(57)【要約】
【課題】ドローンやeVTOLなどの飛行体を対象として、複数のブレードおよびハブ部で構成されるファンと、モータとを備える推進装置において、ファンの構造信頼性を確保しつつ、モータの冷却を実現する推進装置を提供する。
【解決手段】モータ3と、モータ3によって駆動される回転軸17と、回転軸17に取り付けられたファン2とを備える推進装置1において、ファン2は、回転軸17に取り付けられたハブ部5と、ハブ部5の外周に等間隔に設けられた複数のブレード4とを有し、ハブ部5は、ハブ部5の周方向に等間隔に配置された複数の穴部6を有し、複数の穴部6の側面の少なくとも一部は、回転軸17の中心軸に対して傾斜している。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータによって駆動される回転軸と、前記回転軸に取り付けられたファンとを備える推進装置において、
前記ファンは、前記回転軸に取り付けられたハブ部と、前記ハブ部の外周に等間隔に設けられた複数のブレードとを有し、
前記ハブ部は、前記ハブ部の周方向に等間隔に配置された複数の穴部を有し、
前記複数の穴部の側面の少なくとも一部は、前記回転軸の中心軸に対して傾斜している
ことを特徴とする推進装置。
【請求項2】
請求項1に記載の推進装置において、
前記複数の穴部の側面の少なくとも一部は、前記回転軸の中心軸に対して前記ファンの回転方向側に傾斜している
ことを特徴とする推進装置。
【請求項3】
請求項1に記載の推進装置において、
前記複数の穴部のうち隣接する2つの穴部に挟まれた前記ハブ部の一部である梁部に発生する応力が、前記複数のブレードに発生する応力よりも小さくなるように、前記ハブ部の周方向における前記梁部の断面積が設定されている
ことを特徴とする推進装置。
【請求項4】
請求項1に記載の推進装置において、
前記複数の穴部の数は、前記複数のブレードの枚数の整数倍である
ことを特徴とする推進装置。
【請求項5】
請求項1に記載の推進装置において、
前記複数のブレードの枚数と前記複数の穴部の数とが同数であり、
前記ファンを前記複数のブレードの枚数で等分した領域内に、前記複数のブレードのうちの1つのブレードの全体と、前記複数の穴部のうち隣接する2つの穴部に挟まれた前記ハブ部の一部である梁部の全体とが収まる
ことを特徴とする推進装置。
【請求項6】
請求項5に記載の推進装置において、
前記複数のブレードのうちの1つのブレードの任意の径方向位置における周方向断面であるブレード周方向断面の断面積をa、
前記1つのブレードの前記ブレード周方向断面よりも外周側に位置する部分であるブレード外周部の質量をm、
前記回転軸の回転中心から前記ブレード外周部の重心までの距離をr、
前記ブレード周方向断面における応力集中係数をKb、
前記複数のブレードの枚数をZ、
前記複数の穴部のうち隣接する2つの穴部に挟まれた前記ハブ部の一部である梁部の任意の径方向位置における周方向断面である梁部周方向断面の断面積をA、
前記ハブ部を前記回転中心を通る平面でZ等分した部分のうち前記梁部周方向断面よりも外周側に位置する部分であるハブ外周部の質量をM、
前記回転中心から前記1つのブレードと前記ハブ外周部との合成重心までの距離をR、
前記梁部周方向断面における応力集中係数をKhとした場合、
【数1】
の関係式が成立する
ことを特徴とする推進装置。
【請求項7】
請求項1に記載の推進装置において、
前記ファンを前記回転軸に垂直な平面に投影した場合に、前記複数のブレードのうち隣接する2つのブレードの投影面が重ならない
ことを特徴とする推進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローンや垂直離着陸可能なエアモビリティであるeVTOL(electric Vertical Take-Off and Landing)などと称される飛行体に用いられる推進装置のファン構造に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物流用途向けのドローンや、eVTOLなどの飛行体に注目が集まっている。このような飛行体は、滑走路が不要であることから、市街地での低空飛行を実現できる可能性があり、今後、その市場規模は拡大すると考えられている。
【0003】
このような飛行体の推進装置に搭載されるファン構造に関する背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1の図3および要約には、課題として、「電気部品ユニットの温度上昇を適切に抑制し、飛行体の長寿命化が図れる飛行体を提供する」ことが記載されており、解決手段として、「飛行体(ドローン)は、本体部11と、本体部11から伸びる複数のフレーム部12と、フレーム部12の先端部に設けられた回転翼(プロペラ)22および回転翼22を回転させるモータ21を有する推進駆動部20と、推進駆動部20を駆動するための電気部品ユニットと、回転翼22の下方においてモータ21の回転軸に連結され、モータ21により回転する送風ファン24と、を備える。フレーム部12は、内側に空間を有する中空部材であり、当該空間と外部とを連通する複数の給排気口を有し、電気部品ユニットは、フレーム部12の空間内であって、少なくとも2つの給排気口の間に配置されている。また、送風ファン24は、外部の空気を、少なくとも1つの給排気口から空間内に取り込む。」ことが記載されている。
【0004】
また、飛行体向けではないが、車両向けのファン構造に関する背景技術として、特許文献2のような技術がある。特許文献2の図2および要約には、課題として、「中央部にボス部を有する送風ファンに対し、ボス部の内部における塵埃の堆積を抑制することができる構成を提供する」ことが記載されており、解決手段として、「送風ファン7のボス部8に、電動モータ6の回転軸62の延在方向に沿って貫通する通風孔85を設けると共に、ボス部8において、電動モータ6の回転軸62に取り付けられる取付部81と、該取付部81の外周側に設けられ且つ内部に電動モータ6が配設される筒部82とをインナ送風ブレード83で成る結合部によって結合する。」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-131781号公報
【特許文献2】特開2019-108872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
飛行体を市街地で飛ばす場合、推進装置に搭載されるファンの低騒音化が重要となる。ファン騒音の主要因の一つは、翼通過周波数BPF(Blade Passing Frequency)と呼ばれるピーク騒音fBPFである。このピーク騒音fBPFを抑制するには、fBPFを、聴力感度が低下する高周波側にシフトさせる案が考えられる。fBPFは、ファンのブレード枚数Zと回転数Nを用いて、fBPF=Z・N/60で表されるため、fBPFを高周波側へシフトさせるには、ZまたはNを大きくすればよい。一方で、ブレード端部周速の高速化による衝撃波を抑制するためには、ファン径を小型化する必要がある。以上より、ファン騒音を低減するためには、小径・高速・複数ブレードのファン構造を開発する必要がある。飛行体には、このようなファンを多数並列させた構造を用いる。
【0007】
次に、課題について説明する。このような小型で複数ブレード型のファン構造の場合、ブレードの根元領域(つまり、ブレードが接続されるハブ部の近傍領域)において、ブレードとブレードが重なることが発生しうる。この場合、ファン回転時に、ブレードの根元領域において、ブレードの上面側から下面側に風が流れず、ファンと同じ回転軸に設置されるモータへの冷却性能が低下することが課題となる。また、上記のようにブレードとブレードの重なりが発生しない場合でも、ファン上面から平面視した場合、ブレードとブレードの投影面が重なることが発生しうる。この場合、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)などの樹脂材を用いた型成形での製造を想定すると、型を抜くことが困難となるため、量産性に優れた型成形を適用できない点が課題となる。
【0008】
なお、特許文献1の飛行体は、回転翼と送風ファンとが別体で構成されているため、組立性に難がある。一方、特許文献2に記載の送風ファンは、内周側送風ブレードによる送風でモータを冷却することが可能であるが、外周側送風ブレードと回転軸との間を内周側送風ブレードで支持する(ハブ部を有さない)構造であるため、高速回転時の応力負荷に耐えられない(構造信頼性が低い)。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ドローンやeVTOLなどの飛行体を対象として、複数のブレードおよびハブ部で構成されるファンと、モータとを備える推進装置において、ファンの構造信頼性を確保しつつ、モータの冷却を実現する推進装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、モータと、前記モータによって駆動される回転軸と、前記回転軸に取り付けられたファンとを備える推進装置において、前記ファンは、前記回転軸に取り付けられたハブ部と、前記ハブ部の外周に設けられた複数のブレードとを有し、前記ハブ部は、前記ハブ部の周方向に等間隔に配置された複数の穴部を有し、前記複数の穴部の側面の少なくとも一部は、前記回転軸に対して傾斜しているものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ドローンやeVTOLなどの飛行体を対象として、複数のブレードおよびハブ部で構成されるファンと、モータとを備える推進装置において、ファンの構造信頼性を確保しつつ、モータの冷却を実現する推進装置を提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の推進装置に搭載されるファンの上面図。
図2図1のA-B断面図。
図3】実施例1の推進装置の斜視図。
図4】実施例1の推進装置を適用した飛行体の上面模式図。
図5】実施例2の推進装置に搭載されるファンの上面図。
図6】実施例3の推進装置に搭載されるファンの上面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。各図、各実施例において、同一または類似の構成要素については同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【実施例0014】
図1は、実施例1の飛行体18に搭載される推進装置1のファン2の上面図である。図2は、図1中のA-B断面図である。図3は、ファン2とモータ3で構成される推進装置1の斜視図である。図4は、複数の推進装置1を搭載する飛行体18の上面模式図である。発明者らが検討した結果、実現可能なファン構造案の一つとして、ブレード枚数Z=12枚、回転数N=40000rpm、ファン径=100mmが考えられることがわかっている。以下、この構造を基本構造として説明する。
【0015】
図4に示すように、飛行体18は、積載部19、フレーム20、複数の推進装置1、図示していない制御装置部とで構成されている。推進装置1は、図3に示す通り、ファン2とモータ3とで構成されている。飛行体18は、背景技術に記載した公知の技術などと同様に、モータ3を駆動させてファン2を回転させることによって、下降気流による揚力を発生させて中空に浮き、飛行する。フレーム20は、軽量化を目的として、例えばCFRPの樹脂材などでつくられる。フレーム20の先端に、複数個の推進装置1を搭載する。課題に記載した通り、本発明のファンは、小型であることを特徴とする。公知のドローンやeVTOLでは、一般に、4個の推進装置を設置することが多いが、本発明では、4個よりも多くの推進装置を設置する。図4では、16個の推進装置1を設置した図を示しているが、これ以外の数量とすることも可能である。
【0016】
図3に示すように、推進装置1は、飛行体18の飛行のための推力を発生させるユニットであり、回転軸17上に設置されるモータ3と、モータ3によって回転されるファン2とを備える。モータは、図示しない制御装置によって、回転速度が制御される。
【0017】
図1に示すように、実施例1のファン2は、回転軸17を中心として、円板形状のハブ部5を有し、そのハブ部5にブレード4が12枚接続されている。なお、ブレード枚数は12枚に特定されるものではなく、他の複数枚数も可能である。ファン2の材質は、アルミニウム合金などの金属材料またはCFRPの樹脂材などである。複数の材料を組み合わせて構成することも可能である。ブレード4は、周方向に対して均等に配置されている。ファン2を上面から平面視した場合、各ブレード4の投影面には重なりが発生していない。
【0018】
ハブ部5には、上下面方向に貫通した複数個の穴部6が設けられている。穴部6は、周方向に均等に配置されている。穴部6と穴部6の間には、梁部10が形成されている。ファン2は、回転軸17を中心として、半時計回り方向に回転することによって、推力を発生する。ブレード4は、ブレード前縁7とブレード後縁8とを有する。図2に、図1中のA-B断面図を示す。穴部6および梁部10を含む周方向の断面図である。穴部6の側面は、図2に示す通り、斜面部11を有する。回転方向21と斜面部11との為す角度は鋭角である。これは、ファン2が回転した際に、穴部6から風を取り込んで、ファン2の下方に設置されるモータ3を冷却するためである。なお、図2では、穴部6の2箇所の側面に斜面部11を設けているが、一方の側面のみに斜面を設けてもよい。
【0019】
本実施例における穴部6の2つの側面は、回転軸17の中心軸に対してファン2の回転方向21側に傾斜している。これにより、ファン2の回転時に穴部6を通過する風量を大きくすることができる。なお、穴部6の側面はファン2の径方向側に傾斜させてもよい。その場合でも、飛行体18の水平飛行時などに穴部6を介して風を取り込むことが可能となる。ただし、穴部6を通過する風量は、穴部6の側面を回転方向21側に傾斜させた場合の方がファン2の径方向側に傾斜させた場合よりも顕著に大きくなる。
【0020】
次に、本構造の効果について説明する。図1および2に示す通り、ハブ部5の周方向に、穴部6が設けられており、また、穴部6の側面には、斜面部11が設けられているため、ファン2が回転した際に、穴部6から風を取り込むことができるため、モータ冷却を実現することができる。また、ファン2を上面から平面視した場合、各ブレード4の投影面には重なりが発生していない。この場合、CFRPなどの樹脂材を用いた型成形でのファン製造を想定すると、型を抜くことが可能となるため、量産性に優れた型成形での製造が可能となる。
【0021】
(まとめ)
実施例1では、モータ3と、モータ3によって駆動される回転軸17と、回転軸17に取り付けられたファン2とを備える推進装置1において、ファン2は、回転軸17に取り付けられたハブ部5と、ハブ部5の外周に等間隔に設けられた複数のブレード4とを有し、ハブ部5は、ハブ部5の周方向に等間隔に配置された複数の穴部6を有し、複数の穴部6の側面の少なくとも一部は、回転軸17の中心軸に対して傾斜している。
【0022】
以上のように構成した実施例1によれば、ハブ部5の外周に複数のブレード4が設けられるため、ファン2の構造信頼性を確保することが可能となる。また、複数の穴部6の側面の少なくとも一部が回転軸17の中心軸に対して傾斜しているため、ファン2の回転時に穴部6を介してモータ3に風を送り込むことができる。これにより、モータ3の冷却を実現することが可能となる。
【0023】
また、実施例1では、複数の穴部6の側面の少なくとも一部は、回転軸17の中心軸に対してファン2の回転方向21側に傾斜している。これにより、ファン2の回転時に穴部6を通過する風量を増加させることができるため、モータ3の冷却性能を向上させることが可能となる。
【0024】
また、実施例1では、複数の穴部6のうち隣接する2つの穴部6に挟まれたハブ部5の一部である梁部10に発生する応力が、複数のブレード4に発生する応力よりも小さくなるように、ハブ部5の周方向における梁部10の断面積が設定されている。これにより、ファン2の構造信頼性を向上させることが可能となる。
【0025】
また、実施例1では、ファン2を回転軸17に垂直な平面に投影した場合に、複数のブレード4のうち隣接する2つのブレード4の投影面が重ならない。これにより、量産性に優れた型成形を適用してファン2を製造することが可能となる。
【実施例0026】
図5は、実施例2の飛行体18に搭載される推進装置1のファン2の上面図である。なお、ファン2以外の構成は、実施例1(図2図4に示す)と同じである。
【0027】
図5に示すように、実施例2のファン2は、回転軸17を中心として、円板形状のハブ部5を有し、そのハブ部5にブレード4が12枚接続されている。なお、ブレード枚数は12枚に特定されるものではなく、他の複数枚数も可能である。ファン2の材質は、アルミニウム合金などの金属材料またはCFRPの樹脂材などである。複数の材料を組み合わせて使用することも可能である。ブレード4は、周方向に対して均等に配置されている。ファン2を上面から平面視した場合、各ブレード4の投影面には重なりが発生していない。
【0028】
ハブ部5には、上下面方向に貫通した穴部6が12箇所設けられている。穴部6は、周方向に均等に配置されている。穴部6と穴部6の間には、梁部10が設けられている。ファン2は、回転軸17を中心として、半時計回り方向に回転することによって、推力を発生する。ブレード4は、ブレード前縁7とブレード後縁8とを有する。図2に、図1中のA-B断面図を示す。穴部6の側面は、図2に示す通り、斜面部11を有する。回転方向21と斜面部11との為す角度は鋭角である。なお、図2では、穴部6の2箇所の側面に斜面部11を設けているが、一方のみに設けてもよい。これは、ファン2が回転する際に、穴部6から風を取り込んで、ファン2の下方に設置されるモータ3を冷却するためである。
【0029】
また、ブレード根元9が周方向に占める領域であるブレード周方向領域15は、梁部10が周方向に占める領域である梁部周方向領域16と大きく重なっている。すなわち、ファン2を複数のブレード4の枚数で等分した領域OCD内に、ブレード4の全体と1つの梁部10の全体とが収まる。
【0030】
次に、実施例2の効果について説明する。まず、実施例1に示した効果は、実施例2においても同様の効果を有する。その他の効果について説明する。ファン回転時には、ブレード4およびハブ部5に発生する遠心力によって、ブレード4およびハブ部5には変形が発生する。ここで、ブレード4および穴部6の数は同じであり、周方向に等間隔に設置されているため、ブレード4の変形状態は、全て同じ状態となる。ブレード4の変形状態が異なる場合、偏心などによって、ファン回転時に軸振動などが発生する可能性が増加する。しかし、実施例2では、ブレード4の変形状態が同じであるため、その可能性が抑制される。また、実施例2では、ブレード周方向領域15は、梁部周方向領域16と大きく重なっている。この場合、ブレード4に発生する遠心力は、梁部10への引張力となって作用する。もし、周方向に重なっている領域が存在しない場合、ブレード4に起因した遠心力によって、梁部10には、曲げモーメントが印加されるが、曲げモーメントが作用すると、梁部10の角部に発生する応力が増大する。しかし、本実施例の場合、曲げモーメントの発生を抑制できるため、梁部10の角部に発生する応力を抑制でき、ファンの構造信頼性を向上させることが可能である。
【0031】
これらの効果は、穴部6の数を、ブレード4の枚数の整数倍とすることでも実現できる。
【0032】
(まとめ)
実際例2では、ハブ部5は、ハブ部5の周方向に等間隔に配置された複数の穴部6を有し、複数の穴部6の数は、複数のブレード4の枚数の整数倍である。
【0033】
以上のように構成した実施例2によれば、ファン回転時の複数のブレード4の変形状態が同じとなるため、ファン回転時に軸振動などが発生する可能性を抑制することが可能となる。
【0034】
また、実施例2では、ファン2は、複数のブレード4の枚数と複数の穴部6の数とが同数であり、ファン2を複数のブレード4の枚数で等分した領域OCD内に、複数のブレード4のうちの1つのブレード4の全体と、複数の穴部6のうち隣接する2つの穴部6に挟まれたハブ部5の一部である梁部10の全体とが収まる。これにより、梁部10の角部に発生する応力を抑制できるため、ファン2の構造信頼性を向上させることが可能となる。
【実施例0035】
図6は、実施例3の飛行体18に搭載される推進装置1のファン2の上面図である。実施例3におけるファン2の構造は、基本的には、実施例2のファン構造と同じである。以下、実施例2と異なる点のみを説明する。
【0036】
実施例1および2に記載した通り、モータ3の冷却性能を向上させるには、ハブ部5に設ける穴部6のサイズを大型化することが有効と考えられる。しかし、穴部6のサイズを大型化した場合、梁部10の周方向の幅が減少する。ここで、[発明が解決しようとする課題]に記載した通り、本推進装置は、高速回転することを特徴とするため、過大な遠心力が発生する。したがって、梁部10の幅が狭い場合、遠心力によって、梁部10に過大な引張応力が発生することが懸念され、梁部10が損傷する可能性がある。
【0037】
したがって、本実施例では、ブレード4の任意の径方向位置における周方向断面であるブレード周方向断面13の断面積をa、ブレード4のブレード周方向断面13よりも外周側に位置する部分であるブレード外周部の質量をm、回転軸17の回転中心Oから前記ブレード外周部の重心までの距離をr、ブレード周方向断面13における応力集中係数をKb、穴部6の数(すなわち、ブレード4の枚数)をZ、梁部10の任意の径方向位置における周方向断面である梁部周方向断面14の断面積をA、ハブ部5を回転中心Oを通る平面OC,ODでZ等分した領域OCDのうち梁部周方向断面14よりも外周側に位置する部分であるハブ外周部の質量をM、回転中心Oからブレード4と前記ハブ外周部との合成重心までの距離をR、前記梁部周方向断面における応力集中係数をKh、ファン2の角速度をωとした場合、ブレード周方向断面13に発生する応力σbは、作用する外力は遠心力が支配的と考えて、簡易的に以下のように表せる。
【0038】
【数1】
【0039】
なお、一般には、ブレード根元9で応力σbは最大となる。
【0040】
また、梁部10の任意の径方向位置における周方向断面に発生する応力σhは、作用する外力は遠心力が支配的と考えて、簡易的に以下のように表せる。
【0041】
【数2】
【0042】
ここで、梁部10の強度信頼性を確保するためには、梁部10に発生する応力は、ブレード4に発生する応力と同等以下となるようにすればよい。したがって、以下の式が成り立つようにすればよい。
【0043】
【数3】
【0044】
(まとめ)
実施例3では、複数のブレード4のうちの1つのブレード4の任意の径方向位置における周方向断面であるブレード周方向断面13の断面積をa、1つのブレード4のブレード周方向断面13よりも外周側に位置する部分であるブレード外周部の質量をm、回転軸17の回転中心Oから前記ブレード外周部の重心までの距離をr、ブレード周方向断面13における応力集中係数をKb、複数のブレード4の枚数をZ、複数の穴部6のうち隣接する2つの穴部6に挟まれたハブ部5の一部である梁部10の任意の径方向位置における周方向断面である梁部周方向断面14の断面積をA、ハブ部5を回転中心Oを通る平面OC,ODでZ等分した領域OCDのうち梁部周方向断面14よりも外周側に位置する部分であるハブ外周部の質量をM、回転中心Oから1つのブレード4と前記ハブ外周部との合成重心までの距離をR、前記梁部周方向断面における応力集中係数をKhとした場合、
【0045】
【数4】
【0046】
の関係式が成立する。
【0047】
以上のように構成した実施例3によれば、梁部10に過大な引張応力が発生することを防ぐことができるため、梁部10の強度信頼性を確保することが可能となる。
【0048】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、本発明は必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…推進装置、2…ファン、3…モータ、4…ブレード、5…ハブ部、6…穴部、7…ブレード前縁、8…ブレード後縁、9…ブレード根元、10…梁部、11…斜面部、12…フレーム部、13…ブレード周方向断面、14…梁部周方向断面、15…ブレード周方向領域、16…梁部周方向領域、17…回転軸、18…飛行体、19…積載部、20…フレーム、21…回転方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6