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特開2024-165370ロータ制動装置および魚釣用スピニングリール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165370
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ロータ制動装置および魚釣用スピニングリール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/02 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
A01K89/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081517
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】登尾 洋輝
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BE04
(57)【要約】
【課題】長期的な制動力の低下を抑制でき、ロータの高速逆回転時に自動で制動させることができる。
【解決手段】リール本体10を有する魚釣用スピニングリール1のロータ制動装置6であり、ロータ制動装置6は、リール本体10に回転自在に支持されたロータ3と、リール本体10に設けられ、ロータ3の釣糸繰り出し方向E2の逆回転に応じて、ロータ3の釣糸繰り出し方向E2の逆回転を制動する第1制動部40と、を備える魚釣用スピニングリールを提供する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体を有する魚釣用スピニングリールのロータ制動装置であって、
前記リール本体に回転自在に支持されたロータと、
前記リール本体に設けられ、前記ロータの釣糸繰り出し方向の回転に応じて、前記ロータの前記釣糸繰り出し方向の回転を制動する第1制動部と、
を備える、ロータ制動装置。
【請求項2】
前記第1制動部は、前記ロータにおける前記釣糸繰り出し方向の回転速度の増加に応じて、前記ロータに対する制動力が増加する、請求項1に記載のロータ制動装置。
【請求項3】
前記第1制動部は、前記ロータに対して非接触により制動する、請求項1に記載のロータ制動装置。
【請求項4】
前記ロータは、前記ロータと一体回転する磁性体からなるブレーキコアを有し、
前記第1制動部は、前記ブレーキコアと対向する磁石を支持する支持体を有し、
前記磁石の磁力により前記ブレーキコアの回転を制動する、請求項3に記載のロータ制動装置。
【請求項5】
前記支持体は、前記ロータの前記釣糸繰り出し方向の回転速度に応じて、前記磁石を前記ブレーキコアに近接離反するように移動可能に支持される、請求項4に記載のロータ制動装置。
【請求項6】
前記支持体は、前記ロータの前記釣糸繰り出し方向の回転に応じて、前記磁石を前記磁性体に近接離反するように、前記リール本体に対し揺動可能に支持される、請求項4に記載のロータ制動装置。
【請求項7】
前記リール本体に設けられた制動操作部と、
前記制動操作部の操作に応じて、前記ロータの前記釣糸繰り出し方向の回転を制動する第2制動部と、を備える、請求項1に記載のロータ制動装置。
【請求項8】
前記第2制動部は、前記ロータに対して接触により制動する、請求項7に記載のロータ制動装置。
【請求項9】
前記制動操作部は、
前記リール本体に対し揺動可能に支持される支持部と、
使用者が制動操作する操作端部と、
前記操作端部の操作に応じて、前記ロータに対して接触して制動する制動作用部と、
を有する、請求項8に記載のロータ制動装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のロータ制動装置を備える魚釣用スピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ制動装置および魚釣用スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用スピニングリールとして、キャスティング時にロータにおける釣糸繰り出し方向の高速逆回転が生じ、回転部の遠心力でブレーキシューが径方向外側に移動して非回転部との摩擦力を発生させて制動するレバーブレーキリールが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-121974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるレバーブレーキリールでは、ブレーキシューの取り付け部材が回転部に取り付けられることから、回転時の慣性が大きくなり、ブレーキが効き難い構造となる。また、ブレーキシューは接触により制動する構造であるため、ブレーキシューが摩耗し、長期的に制動力が低下するという問題があった。
【0005】
また、従来の魚釣用スピニングリールでは、ブレーキの操作方法として、ロータの近傍に配置される制動操作レバーを操作する。そのため、ロータが釣糸繰り出し方向の高速逆回転になると、制動操作レバーを握る指がロータに接触するおそれがある。そのため、高速逆回転時には、自動でブレーキが効くことが求められており、その点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、長期的な制動力の低下を抑制でき、ロータの高速逆回転時に自動で制動させることができるロータ制動装置および魚釣用スピニングリールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係るロータ制動装置の態様1は、リール本体を有する魚釣用スピニングリールのロータ制動装置であって、前記リール本体に回転自在に支持されたロータと、前記リール本体に設けられ、前記ロータの釣糸繰り出し方向の回転に応じて、前記ロータの前記釣糸繰り出し方向の回転を制動する第1制動部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
本発明に係るロータ制動装置の態様1によれば、ロータの釣糸繰り出し方向の逆回転に応じて、ロータの釣糸繰り出し方向の逆回転を制動することができる。これにより、ロータの釣糸繰り出し方向の逆回転時における回転を自動で制動させることができ、ロータの釣糸繰り出し方向の高速逆回転が高速になることを抑制し、高速逆回転するロータに指が接触することを防止できる。
【0009】
(2)本発明の態様2は、態様1のロータ制動装置において、前記第1制動部は、前記ロータにおける前記釣糸繰り出し方向の回転速度の増加に応じて、前記ロータに対する制動力が増加することが好ましい。
【0010】
この場合には、ロータにおける釣糸繰り出し方向の回転速度の増加に応じて、ロータに対する制動力が増加することから、より効果的に、ロータが釣糸繰り出し方向に高速逆回転することを抑制できる。
【0011】
(3)本発明の態様3は、態様1又は態様2のロータ制動装置において、前記第1制動部は、前記ロータに対して非接触により制動することが好ましい。
【0012】
この場合には、ロータを非接触で制動できるので、長期使用による制動力の低下を抑えることができる。
【0013】
(4)本発明の態様4は、態様1から態様3のいずれか一つのロータ制動装置において、前記ロータは、前記ロータと一体回転する磁性体からなるブレーキコアを有し、前記第1制動部は、前記ブレーキコアと対向する磁石を支持する支持体を有し、前記磁石の磁力により前記ブレーキコアの回転を制動することを特徴としてもよい。
【0014】
この場合には、磁性体からなるブレーキコアと磁石との間に渦電流を発生させることによる磁力によって、ブレーキコアの回転を制動し、ロータの回転速度を抑えることができる。
【0015】
(5)本発明の態様5は、態様4のロータ制動装置において、前記支持体は、前記ロータの前記釣糸繰り出し方向の回転速度に応じて、前記磁石を前記ブレーキコアに近接離反するように移動可能に支持されることを特徴としてもよい。
【0016】
この場合には、ロータが高速逆回転になるに従い磁石に大きな渦電流が生じ、磁石は例えば付勢部の付勢力に抗して磁性体であるブレーキコアに近接する方向に移動する。これによりブレーキコアと磁石との距離が縮まり大きな磁力がブレーキコアに作用し、ブレーキコア、すなわちロータの回転を制動できる。このように本発明では、ロータが低速回転のときには小さな制動力となり、ロータが高速回転のときには自動的に大きな制動力を付与することができる。
【0017】
(6)本発明の態様6は、態様4または態様5のロータ制動装置において、前記支持体は、前記ロータの前記釣糸繰り出し方向の回転に応じて、前記磁石を前記磁性体に近接離反するように、前記リール本体に対し揺動可能に支持されることを特徴としてもよい。
【0018】
この場合には、磁性体であるブレーキコアに対して支持体を簡単な構造で効率よく移動させることができる。
【0019】
(7)本発明の態様7は、態様1から態様6のいずれか一つのロータ制動装置において、前記リール本体に設けられた制動操作部と、前記制動操作部の操作に応じて、前記ロータの前記釣糸繰り出し方向の回転を制動する第2制動部と、を備えることを特徴としてもよい。
【0020】
この場合には、第1制動部において高速逆回転するロータを自動で制動することができ、さらに手動で制動操作部を操作することで第2制動部によってロータの釣糸繰り出し方向の逆回転を制動することができる。
【0021】
(8)本発明の態様8は、態様1から態様7のいずれか一つのロータ制動装置において、前記第2制動部は、前記ロータに対して接触により制動することを特徴としてもよい。
【0022】
この場合には、第2制動部ではロータに対して例えば摩擦による接触によって確実かつ精度よく制動することができる。
【0023】
(9)本発明の態様9は、態様1から態様8のいずれか一つのロータ制動装置において、前記制動操作部は、前記リール本体に対し揺動可能に支持される支持部と、使用者が制動操作する操作端部と、前記操作端部の操作に応じて、前記ロータに対して接触して制動する制動作用部と、を有することを特徴としてもよい。
【0024】
この場合には、制動操作部を操作することで、接触によって作動する第2制動部を構成することで、ロータの逆回転の釣糸繰り出し方向の回転速度が低速の場合またはロータが停止した状態であっても、確実に制動または停止を維持することができる。
【0025】
(10)本発明に係る魚釣用スピニングリールの態様10は、態様1から態様9のいずれか一つのロータ制動装置を備えることを特徴としている。
【0026】
本発明では、上述した効果を有するロータ制動装置を備えた優れた魚釣用スピニングリールを提供できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るロータ制動装置および魚釣用スピニングリールによれば、長期的な制動力の低下を抑制でき、ロータの高速逆回転時に自動で制動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態によるスピニングリールの全体構成を示す斜視図である。
図2図1に示すスピニングリールを左側から見た断面図である。
図3図2に示すリール内部の構成の要部を示す側面断面図である。
図4】第1制動部の構成を示す側面断面図である。
図5】ロータ制動装置の構成を示す断面図である。
図6】第1制動部と筒状部材の構成を示す斜視図である。
図7】制動部本体の構成を示す断面図である。
図8】第1制動部の構成を示す斜視図である。
図9】第2実施形態によるスピニングリールの第1制動部の構成を示す断面図であって、図5に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るロータ制動装置および魚釣用スピニングリールの実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において、各構成部材を視認可能な大きさとするために必要に応じて各構成部材の縮尺を適宜変更している場合がある。
【0030】
(第1実施形態)
図1及び図2に示すように本実施形態の魚釣用スピニングリール1は、釣り竿の長手方向に沿う第1軸X回りに釣り糸を巻き取るレバーブレーキ型のリールである。魚釣用スピニングリール1は、リール本体10と、リール本体10に回転自在に支持されたハンドル2と、ロータ3と、スプール4と、を備えている。
【0031】
ロータ3は、リール本体10の前部に回転自在に支持されている。スプール4は、釣り糸を外周面に巻き取るものであり、ロータ3の前部において前後移動自在に配置されている。なお、図1及び図2では、ハンドル2は、使用時の状態でリール本体10の左側に装着されている。ハンドル2はリール本体10の左右いずれにも装着可能である。
ここで、ロータ3の釣糸巻き取り方向E1(図5参照)の回転を正回転と定義し、ロータ3の釣糸繰り出し方向E2(図5参照)の回転を逆回転と定義する。
【0032】
ハンドル2は、ハンドル把手21と、先端にハンドル把手21が回転自在に装着されたハンドルアーム22と、を有している。ハンドルアーム22の基端部は、ハンドルアーム22と交差する方向に延びるハンドル軸23に対して回転不能に装着されている。ハンドル軸23は、後述するマスターギア軸51に一体回転可能かつ着脱可能に連結される。
【0033】
図1図3に示すように、リール本体10は、内部に空間を有するリールボディ11と、リールボディ11の空間を塞ぐためにリールボディ11に着脱自在に装着される蓋部材12と、を有している。
【0034】
リールボディ11は、例えばマグネシウム合金製、あるいはアルミニウム合金製である。リールボディ11には、上部に延びる脚部110と、脚部110の上端から前後に延びるT字形の竿取付部111と、が一体成形されている。脚部110の前面には、後述する制動操作レバー8を収納するための装着溝110aが形成されている。
【0035】
図3に示すように、リールボディ11は、各機構部を装着するための装着空間を内部に有している。リールボディ11の装着空間内には、ロータ駆動機構5と、ロータ制動装置6と、オシレーティング機構7と、が設けられている。
【0036】
リールボディ11の前部には、筒状の取付部材13が装着されている。蓋部材12は、例えばアルミニウム合金製の部材であり、リールボディ11の後部を覆い、複数の箇所でリールボディ11に対してビス止めされている。取付部材13の前部には、有底筒状の円筒部14が設けられている。
【0037】
リールボディ11には、スプール4のスプール軸16が貫通し、かつスプール軸16の後端部を回転可能に支持する第1軸受15Aを前方から収納している。また、リールボディ11及び蓋部材12には、ハンドル軸23が挿通可能な図示しない円形の貫通孔がそれぞれ形成されている。リールボディ11及び蓋部材12の内側面の貫通孔の周囲には、ハンドル軸23を回転自在に支持する転がり軸受24(図1参照)が収納されている。
【0038】
ロータ駆動機構5は、ハンドル2に連動してロータ3を回転させるための機構である。ロータ制動装置6は、ロータ3の釣糸繰り出し方向E2の逆回転を制動するための装置である。オシレーティング機構7は、ハンドル2の回転に連動してスプール軸16を介してスプール4を前後に往復移動させる機構である。
【0039】
ロータ駆動機構5は、ハンドル2が一体回転可能に固定されたマスターギア軸51と、マスターギア軸51ともに回転するマスターギア52と、マスターギア52に噛み合うピニオンギア53と、を有している。
【0040】
マスターギア軸51は、マスターギア52と一体に形成され、リールボディ11に回転自在に支持されている。ピニオンギア53は、筒状に形成されている。ピニオンギア53の前部は、ロータ3の前方でスプール4側に延びている。そして、ピニオンギア53の前部は、ナット54によりロータ3に一体回転可能に固定されている。ピニオンギア53は、後部と中間部においてそれぞれ軸受によりリールボディ11に回転自在に支持されている。
【0041】
オシレーティング機構7は、トラバースカム式のものである。オシレーティング機構7は、リールボディ11にスプール軸16と平行な軸回りに回転自在に装着された螺軸71と、螺軸71の回転により前後移動するスライダ72と、を有している。
【0042】
ロータ3は、リール本体10に回転自在に支持されている。ロータ3は、ロータ本体31と、ロータ本体31の先端に釣糸開放姿勢と釣糸巻き取り姿勢とに揺動自在に装着されたベールアーム32と、ベールアーム32を釣糸開放姿勢から釣糸巻き取り姿勢に戻すためにロータ本体31に装着されたベール反転機構33と、を有している。
【0043】
図3に示すように、ロータ本体31は、リールボディ11にスプール軸16回りに回転自在に装着された筒状部310を有している。図1及び図2に示すように、ベールアーム32は、筒状部310の側方に互いに対向して設けられている。筒状部310及びベールアーム32は、例えばアルミニウム合金製であり、一体成形されている。互いに対向するベールアーム32の先端部同士の間には、釣り糸をスプール4に案内し、線材を略U字状に湾曲させた形状のベール34が固定されている。
【0044】
図3に示すように、筒状部310の前部には、前壁313が形成されている。前壁313の中央部には、貫通孔311aが形成されており、この貫通孔311aにスプール軸16が貫通している。前壁313の前部には、ロータ3の固定用のロータ固定カバー35(図2参照)が配置されている。
【0045】
図1に示すように、スプール4は、ロータ3の対向するベールアーム32同士の間に配置されている。スプール4は、スプール軸16の先端にドラグ機構(図示省略)を介して装着されている。スプール4は、外周に釣り糸が巻かれる糸巻胴部を有する。スプール4は、例えばアルミニウム合金製であり、非磁性の電気的導電体である。スプール4は、スプール4に連動して回転する導電体ともいえる。
【0046】
図3に示すように、スプール軸16は、ステンレス合金製の軸部材であり、前端部には上記のドラグ機構を介してスプール4が連結され、後端部にはオシレーティング機構7のスライダ72が固定されている。スプール軸16は、ピニオンギア53の内周部を貫通しており、ロータ本体31の筒状部310の前部より前方のスプール軸16の外周が不図示の軸受によって回転自在に支持されている。
【0047】
図3図7に示すように、ロータ制動装置6は、第1制動部40と、第2制動部30と、を有している。
【0048】
第2制動部30は、図3図5及び図7に示すように、制動部本体37を有している。制動部本体37は、制動操作レバー8の先端が圧接されて制動される制動面を有している。
第2制動部30は、後述する操作端部80の操作に応じて、ロータ3の釣糸繰り出し方向E2の逆回転を制動する。第2制動部30は、ロータ3に対して接触により制動する。
【0049】
制動部本体37は、ロータ3の筒状部310の内周側にロータ3と同心に配置された筒状のブレーキコア371と、ブレーキコア371の内周面に固定されたブレーキドラム372と、を有している。
【0050】
ブレーキコア371は、ロータ3が釣糸繰り出し方向E2に逆回転する際に、ロータ3のロータ本体31と一体回転する。
ブレーキドラム372は、図4に示すように、ブレーキコア371の内周面から第2軸受15Bの後面に向かって延びている。このブレーキドラム372におけるブレーキコア371に沿った内周面372aは、制動面となっている。ブレーキドラム372は、ブレーキコア371にねじ止め固定されている。
【0051】
図7に示すように、ブレーキコア371には、ロータ3と制動部本体37とをロータ3の回転方向に応じて連結・遮断する連結切替レバー38が設けられている。連結切替レバー38は、ロータ3が釣糸繰り出し方向E2に逆回転したときにのみロータ3と制動部本体37のブレーキコア371とを連結し、ロータ3に連動してブレーキコア371を釣糸繰り出し方向E2に逆回転させる。したがって、ロータ3が釣糸巻き取り方向E1に正回転したときには、ロータ3とブレーキコア371とが遮断され、ロータ3からブレーキコア371に回転が伝達されない。
【0052】
具体的に連結切替レバー38は、ブレーキコア371の先端側を塞ぐ先端壁373の前面373aに、ロータ3が釣糸巻き取り方向E1に正回転するときの正回転位置F1(図7に示す二点鎖線)と、ロータ3が釣糸繰り出し方向E2に逆回転するときの逆回転位置F2(図7に示す実線)と、の間で揺動自在に装着されている。連結切替レバー38は、揺動軸38aを中心に揺動する。連結切替レバー38の揺動先端38bには、ばね部材39が取り付けられている。ばね部材39は、一端39aが連結切替レバー38の揺動先端38bに係止され、他端39bがリール本体10に係止されている。ばね部材39は、連結切替レバー38をロータ本体31の筒状部310側に向けて付勢する。
【0053】
筒状部310の内周面には、連結切替レバー38に係合する鋸歯部310aが径方向内方に突出して形成されている。鋸歯部310aは、連結切替レバー38が逆回転位置F2のとき、連結切替レバー38に係合してブレーキコア371と筒状部310とが釣糸繰り出し方向E2に一体回転する。一方で、連結切替レバー38が正回転位置F1のとき、鋸歯部310aと連結切替レバー38とが非係合となり、筒状部310のみが釣糸巻き取り方向E1に回転する。このとき、ブレーキコア371は、筒状部310から切り離されて固定された状態となる。
【0054】
制動操作レバー8は、第2制動部30の制動力を調整操作するための部材である。図5に示す制動制御部61は、制動操作レバー8により、所定の制動力を作用させる制動状態と、制動が解除された制動解除状態と、に切り換えるための機構である。
図3に示すように、制動操作レバー8は、リール本体10の脚部110に装着された支持軸84によりリール本体10に対して左右方向の軸回りに揺動自在に支持されている。また、制動操作レバー8は、バネ部材85により竿取付部111と離反する方向に付勢されている。
【0055】
制動操作レバー8は、所定制動位置P1と、制動解除位置P0より竿取付部111に接近した制動位置P2と、の間で揺動自在である。なお、制動操作レバー8は、通常は、バネ部材85及び制動制御部61の機構により、制動解除位置P0と所定制動位置P1とのいずれかに保持される。
【0056】
制動操作レバー8は、使用者が制動操作するための操作端部80と、リール本体10である脚部110の装着溝110aに揺動自在に支持されるレバー本体81(支持部)と、操作端部80の操作に応じて、ロータ3に対して接触して制動し、レバー本体81の先端部に装着されたブレーキシュー82(制動作用部)及び弾性部材(図示省略)と、を有している(図5参照)。ブレーキシュー82は、ブレーキドラム372の制動面である内周面372aに対向して配置されている。
【0057】
図1図2及び図3に示すように、操作端部80は、リール本体10に設けられている。操作端部80は、複数のボルト86によりレバー本体81に着脱自在に連結されている。操作端部80は、前方先端部が分岐しており、引き込み操作部80a及び第1押し込み操作部80bを有している。また、レバー本体81に連結される部分に第2押し込み操作部80cを有している。引き込み操作部80aは、例えば、釣り竿を持つ手(例えば左手)の人差し指で引き込み操作して操作力に応じてロータ3を制動する際に使用される。また、第1押し込み操作部80bは、釣り竿を持つ手の人差し指で押し込み操作する際に使用され、第2押し込み操作部80cは、釣り竿を持つ手の中指で押し込み操作する際に使用される。
【0058】
より具体的には、図3に示すように、引き込み操作部80aを用いた引き込み操作により、制動操作レバー8は、制動解除位置P0から竿取付部111に接近した位置となる制動位置P2に向けて揺動する。また、第1押し込み操作部80b又は第2押し込み操作部80cを用いた押し込み操作により、制動操作レバー8は、制動解除位置P0から竿取付部111から離反した位置となる所定制動位置P1に向け揺動する。
【0059】
なお、制動操作レバー8は、操作されていない状態では、バネ部材85により付勢されて制動解除位置P0に配置されている。この状態では、ブレーキシュー82はブレーキドラム372から離反している。
【0060】
制動制御部61は、図5に示すように、制動操作レバー8と連動して揺動するレバー部材611と、トグルバネ612と、を有している。トグルバネ612は、レバー部材611を制動解除位置と所定制動位置とで保持する。トグルバネ612は、一端がレバー部材611の基端に係止され、他端がリール本体10内の前端面に係止されている。そして、トグルバネ612は、レバー部材611を付勢して制動操作レバー8を所定制動位置P1と制動解除位置P0とに付勢し、その姿勢を保持することができる。
【0061】
このような構成では、制動操作レバー8を所定制動位置P1に引き込み操作すると、それに連動してレバー部材611も制動解除位置から所定制動位置に揺動する。この状態において、制動操作レバー8のブレーキシュー82がブレーキコア371(ブレーキドラム372)に対して摩擦摺動し、ロータ3の釣糸繰り出し方向E2の逆回転が所定制動状態で制動される。
【0062】
図4図8に示すように、第1制動部40は、リール本体10に設けられる。第1制動部40は、ロータ3の釣糸繰り出し方向E2の逆回転に応じて、ロータ3の釣糸繰り出し方向E2の逆回転を制動する。具体的に第1制動部40は、ロータ3の釣糸繰り出し方向E2の回転速度が増加に応じて、ロータ3に対する制動力を増加する。第1制動部40は、ロータ3に対して非接触により制動する。ロータ3は、磁性体により形成される。ロータ3は、ロータ3と一体回転する上述したブレーキコア371(ブレーキコア)を有し、第1制動部40は、ブレーキコア371と対向する磁石41を支持する支持体42を有する。磁石41の磁力によりブレーキコア371の回転を制動する。
【0063】
支持体42は、リール本体10の取付部材13の外周部13aに固定されている。支持体42は、ブレーキドラム372の外周面に沿って湾曲した円弧状に形成されている。支持体42の円弧状の外周面42aは、ブレーキドラム372およびロータ3の中心軸と一致するように配置される。
ここで、支持体42の周長および複数の磁石41が配列される周方向の領域は、本実施形態では全周の略1/4程度(略90°の範囲)に設定されているが、とくに制限されることはなく、例えば全周であってもよい。
【0064】
磁石41は、支持体42の外周面42aに面一となるように埋め込まれている。磁石41は、支持体42の外周面42aの周方向に間隔をあけて複数(図5図6及び図8では5つ)配列されている。これら5つの磁石41は、周方向に沿ってN極とS極とが交互に配列されている。
【0065】
次に、上述した構成の魚釣用スピニングリール1の動作及び操作について、具体的に説明する。
キャスティング時には、ベールアーム32を糸開放姿勢側に倒し、キャスティングすることにより、スプール4の外周から釣り糸が繰り出される。釣糸巻き取り時には、ハンドル2を釣糸巻き取り方向E1に正回転させると、ベールアーム32がベール反転機構33により糸巻き取り姿勢に戻る。ハンドル2の回転力は、マスターギア軸51、マスターギア52を介してピニオンギア53に伝達される。ピニオンギア53に伝達された回転力はロータ3に伝達される。このときロータ3は釣糸巻き取り方向E1に正回転するので、連結切替レバー38によって、この回転力はブレーキコア371には伝達されない。また、ピニオンギア53が回転することにより、スプール軸16が前後方向に往復移動する。
【0066】
第2制動部30において、制動操作レバー8が操作されていない状態では、制動操作レバー8は、バネ部材48及び制動制御部61の作用により押圧され、制動解除位置P0または所定制動位置P1に配置される。
【0067】
ロータ3を釣糸繰り出し方向E2に逆回転させて魚とやりとりする時には、制動操作レバー8の引き込み操作部80aを例えば人差し指により竿取付部111側に引き込み操作して制動力を調整する。
【0068】
釣り糸が魚により引かれてロータ3が糸繰り出し方向に逆転するとロータ3の回転力が連結切替レバー38を介してブレーキコア371に伝達され、さらにブレーキドラム372に伝達され、ロータ制動装置6が制動可能な状態になる。
【0069】
連結切替レバー38によってロータ3の回転がブレーキコア371伝達されると、ブレーキドラム372がロータ3と一体で回転する。このとき、制動操作レバー8の引き込み操作部80aを竿取付部111に接近する方向に引き込み操作すると、たとえ制動操作レバー8が所定制動位置P1にあっても、レバー部材611が制動解除位置P0側に揺動する。この結果、制動制御部61による所定制動状態が一旦解除される。このとき、トグルバネ612がレバー部材611の揺動により反転し、レバー部材611は制動解除位置側に付勢されて制動解除位置で保持される。
【0070】
この状態でさらに制動操作レバー8を竿取付部111に接近する方向に操作すると、制動操作レバー8のブレーキシュー82がブレーキドラム372の内周面を径方向外方に強く押圧する。この制動力は制動操作レバー8に加える力を加減することにより調整でき、ロータ3の逆転量を任意に調整できる。この結果、制動操作レバー8の操作力に応じた制動力がロータ3に付与される。このように、所定制動状態の解除を忘れても、制動操作レバー8を引き込み操作するだけで、所定制動状態を解除できる。
【0071】
ここで、制動操作レバー8を操作すると、ブレーキシュー82が制動面41aに押し付けられるが、このときレバー本体81とブレーキシュー82の当接部82aとの間に設けられた弾性部材83が弾性変形する。したがって、弾性部材が設けられていない従来の装置に比較して、制動力の調整幅をより広くすることができる。
【0072】
また、第1制動部40では、ロータ3がスプール4と共に釣糸巻き取り方向E1に正回転する際、連結切替レバー38によってロータ3とブレーキコア371とが遮断されて一体で回転しない状態となる。このときロータ3のみが回転し、ブレーキコア371と支持体42(磁石41)との間で相対回転が生じない。すなわち、磁石41に遠心力が作用しないので、磁石41による負荷が生じることがない。つまり、ロータ3の釣糸巻取り方向E1の正回転の際には、制動が作動しない。
【0073】
一方、ロータ3がスプール4とともに釣糸繰り出し方向E2に逆回転する際には、連結切替レバー38によってロータ3とブレーキコア371とが連結されて一体回転する。このとき、第1制動部40が作動し、遠心力によって磁石41とロータ3とが所定の回転速度で相対運動した場合に生じる磁力によって、非接触でロータ3の釣糸繰り出し方向E2の逆回転に制動力を伝達できる。
そして、第1制動部40における釣糸繰り出し方向E2の逆回転が所定の回転速度より小さくなった場合、あるいは逆回転が止まると、磁石41とロータ3との間で生じる磁力が無くなる。
【0074】
次に、このように構成されるロータ制動装置6および魚釣用スピニングリール1の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0075】
本実施形態は、図3及び図5に示すように、リール本体10を有する魚釣用スピニングリール1のロータ制動装置6である。ロータ制動装置6は、リール本体10に回転自在に支持されたロータ3と、リール本体10に設けられ、ロータ3の釣糸繰り出し方向E2の逆回転に応じて、ロータ3の釣糸繰り出し方向E2の逆回転を制動する第1制動部40と、を備える。
【0076】
このように構成することで、ロータ3の釣糸繰り出し方向E2の逆回転に応じて、ロータ3の釣糸繰り出し方向E2の逆回転を制動することができる。これにより、ロータ3の釣糸繰り出し方向E2の高速逆回転時における回転を自動で制動させることができ、逆回転が高速になることを抑制し、高速逆回転するロータ3に指が接触することを防止できる。
【0077】
また、本実施形態では、第1制動部40がロータ3に対して非接触により制動できるので、長期使用による制動力の低下を抑えることができる。
【0078】
さらに、本実施形態によるロータ制動装置6では、ロータ3は、ロータ3と一体回転する磁性体からなるブレーキコア371を有する。第1制動部40は、ブレーキコア371と対向する磁石41を支持する支持体42を有し、磁石41の磁力によりブレーキコア371の逆回転を制動する。そのため、磁性体からなるブレーキコア371と磁石41との間に渦電流を発生させることによる磁力によって、ブレーキコア371の逆回転を制動し、ロータ3の回転速度を抑えることができる。
【0079】
さらにまた、本実施形態では、リール本体10に設けられた制動操作レバー8と、制動操作レバー8の操作に応じて、ロータ3の釣糸繰り出し方向E2の逆回転を制動する第2制動部30と、を備える。これにより、第1制動部40において高速逆回転するロータ3を自動で制動することができ、さらに手動で制動操作レバー8を操作することで第2制動部30によってロータ3の釣糸繰り出し方向E2の逆回転を制動することができる。
【0080】
また、本実施形態では、第2制動部30は、ロータ3に対して接触により制動する。これにより、第2制動部30ではロータ3に対して例えば摩擦による接触によって確実かつ精度よく制動することができる。
【0081】
また、本実施形態では、制動操作部は、リール本体10に対し揺動可能に支持されるレバー本体81と、使用者が制動操作する操作端部80と、操作端部80の操作に応じて、ロータ3に対して接触して制動するブレーキシュー82及び弾性部材83と、を有する。これにより、制動操作レバー8を操作することによって、接触による第2制動部30を構成することで、ロータ3の逆回転の釣糸繰り出し方向E2の回転速度が低速(または停止)であっても、確実に制動(停止を維持)することができる。
【0082】
本実施形態では、上述した効果を有するロータ制動装置6を備えた優れた魚釣用スピニングリール1を実現することができる。
【0083】
上述のように構成された本実施形態によるロータ制動装置6および魚釣用スピニングリール1では、長期的な制動力の低下を抑制でき、ロータ3の高速逆回転時に自動で制動させることができる。
【0084】
次に、本発明によるロータ制動装置および魚釣用スピニングリールの他の実施形態について説明する。なお、上述した第1実施形態の構成要素と同一機能を有する構成要素には同一符号を付し、これらについては、説明が重複するので詳しい説明は省略する。
【0085】
(第2実施形態)
図9に示すように、第2実施形態による魚釣用スピニングリール1Aのロータ制動装置6Aは、第1制動部40Aの支持体42Aがロータ3の釣糸繰り出し方向E2の回転速度に応じて、磁石41をブレーキコア371に近接離反するように移動可能に支持された構成である。
【0086】
支持体42Aは、ロータ3の釣糸繰り出し方向E2の逆回転に応じて、磁石41をロータ3(磁性体)に近接離反するように、リール本体10に対し揺動可能に支持される。支持体42Aは、ブレーキドラム372の内周面372aに沿って湾曲した円弧状に形成されている。支持体42Aの円弧状の外周面42aは、ブレーキドラム372およびロータ3の中心軸と一致するように配置される。支持体42Aの一端(揺動基端42b)には、制動部本体37のブレーキコア371に支持される揺動軸421が設けられている。支持体42Aの揺動軸421とは反対側の他端(揺動先端42c)には、揺動ばね422(付勢部)が設けられている。
【0087】
磁石41は、第1実施形態と同様に支持体42Aの外周面42aに面一となるように埋め込まれている。磁石41は、支持体42Aの外周面42aの周方向に間隔をあけて複数配列されている。
【0088】
揺動軸421の軸方向は、スプール軸16と平行である。支持体42Aは、スプール軸16から離隔した揺動軸421回りに揺動可能に支持される。そのため、磁石41は、ブレーキドラム372の内周面372aから離反した離反位置T1(図9の実線)と、ブレーキドラム372の内周面372aに近接した近接位置T2とを取り得る。ブレーキドラム372の揺動先端42cに対向する位置には、揺動ばね422を揺動先端42cとの間で支持するばね押さえ423が設けられている。揺動ばね422は、ばね押さえ423と支持体42Aの揺動先端42cとの間に保持されている。揺動ばね422は、圧縮コイルばねであり、ばね押さえ423側(ブレーキドラム372側)に向かう方向、すなわち磁石41における上述した近接位置T2から離反位置T1に向かって付勢されている。
【0089】
支持体42Aが離反位置T1にある場合において、揺動ばね422に近い磁石41は、揺動軸421に近い磁石41よりブレーキドラム372から遠い位置にある。ロータ3が支持体42A(ブレーキドラム372)に対して回転していない状態(すなわち、ロータ3がブレーキコア371と遮断されている状態)では、ブレーキコア371がロータ3とともに回転しないことから、磁石41による渦電流が発生しない。磁石41には磁力による制動力が作用しないので、磁石41は揺動ばね422の付勢力によって離反位置T1のまま動かない。
【0090】
一方で、キャスティング操作によってスプール4及びロータ3が釣糸繰り出し方向E2に逆回転すると、連結切替レバー38が連結されてロータ3とともにブレーキコア371が一体回転する。これにより、ブレーキコア371に対向する磁石41の磁束によってロータ3の回転速度に応じた渦電流が発生する。この渦電流によってロータ3には逆回転の方向(釣糸繰り出し方向E2)と逆方向の誘導力がかかり、ロータ3が制動される。ロータ3の逆回転で磁石41によって引き起こされる誘導力の反力で、逆に磁石41はロータ3の正回転する方向に引きずられる。その結果、支持体42Aは揺動ばね422の付勢力に抗して揺動軸421を中心にしてロータ3(ブレーキコア371)の回転面(ブレーキドラム372の内周面372a)に引き寄せられ、支持体42Aが近接位置T2となる。なお、揺動ばね422は、近接位置T2となる支持体42Aがブレーキドラム372の内周面372aに接触しないように設定される。
【0091】
このように第2実施形態では、第1制動部40Aがロータ3の釣糸繰り出し方向E2の回転速度の増加に応じて、ロータ3に対する制動力を増加できるので、より効果的に、ロータ3が釣糸繰り出し方向E2の高速逆回転することを抑制することができる。
【0092】
また、第2実施形態では、支持体42Aがロータ3の釣糸繰り出し方向E2の回転速度に応じて、磁石41をブレーキコア371に近接離反するように移動可能に支持される。これにより、ロータ3が高速回転になるに従い磁石41に大きな渦電流が生じ、磁石41は、揺動ばね422の付勢力に抗して磁性体であるブレーキコア371に近接する方向に移動する。これによりブレーキコア371と磁石41との距離が縮まり大きな磁力がロータ3に作用し、ブレーキコア371(ロータ3)の逆回転を制動できる。この場合には、ロータ3が低速回転のときには小さな制動力となり、ロータ3が高速回転のときには自動的に大きな制動力を付与することができる。
【0093】
また、第2実施形態では、支持体42Aがロータ3の釣糸繰り出し方向E2の逆回転に応じて、磁石41をロータ3に近接離反するように、リール本体10に対し揺動可能に支持される。これにより、磁性体であるブレーキコア371に対して支持体42Aを簡単な構造で効率よく移動させることができる。
【0094】
以上、本発明によるロータ制動装置および魚釣用スピニングリールの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0095】
例えば、本実施形態では、第1制動部40、40Aにおいて、複数の磁石41が支持体42、42Aの周方向に1列で配列されているが、複数列で配列されていてもよい。この場合でも、磁石41は、磁性体のロータ3(ブレーキコア371)の回転面に向き合う面において周方向にN極とS極とが交互に配列されるように配置されることが好ましい。また、支持体42、42Aに配置される磁石41の大きさ、数量は適宜設定することができる。さらに、支持体42、42Aの形状、周方向の長さ等の構成についても本実施形態に限定されることはない。
【0096】
また、第1制動部の構成としては、本実施形態ではブレーキコア371(ロータ3)と対向する磁石41を支持する支持体42、42Aを有し、磁石41の磁力により磁性体であるブレーキコア371の逆回転を制動する構成としているが、このような磁石41による非接触な制動であることに制限されることはない。例えば、ロータ3の高速逆回転時に生じる遠心力を利用して、ブレーキコア371に接触するように近接離反して移動する支持体であってもよい。すなわち、第1制動部は、非接触ではなく接触による制動であってもよい。
【0097】
また、上述した第2実施形態では、第1制動部40Aの支持体42Aが揺動可能にリール本体10に支持された構成とし、ロータ3の釣糸繰り出し方向の回転速度が増加に応じて、ロータ3に対する制動力を増加する構成としているが、このように支持体が揺動によって移動する構成に限定されることはない。
【0098】
また、本実施形態では、制動操作レバー8と第2制動部30を備えたレバーブレーキ型のリールを一例としているが、これに限定されることはなく、制動操作レバー8や第2制動部30を省略したスピニングリールであってもよい。
【0099】
その他、リールボディ11、ハンドル2、ロータ3、スプール4の形状や大きさ等の構成については、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0100】
1、1A 魚釣用スピニングリール
2 ハンドル
3 ロータ
4 スプール
5 ロータ駆動機構
6、6A ロータ制動装置
7 オシレーティング機構
8 制動操作レバー(制動操作部)
10 リール本体
11 リールボディ
111 竿取付部
13 取付部材
16 スプール軸
30 第2制動部
31 ロータ本体
32 ベールアーム
37 制動部本体
371 ブレーキコア(磁性体)
372 ブレーキドラム
38 連結切替レバー
40、40A 第1制動部
41 磁石
42、42A 支持体
421 揺動軸
422 揺動ばね(付勢部)
53 ピニオンギア
80 操作端部
81 レバー本体(支持部)
82 ブレーキシュー(制動作用部)
83 弾性部材(制動作用部)
E1 釣糸巻き取り方向
E2 釣糸繰り出し方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9