(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165372
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】免震装置
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20241121BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
E04H9/02 331E
F16F15/02 L
F16F15/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081520
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小槻 祥江
(72)【発明者】
【氏名】劉 銘崇
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB00
2E139AC19
2E139AC26
2E139CA24
2E139CB04
2E139CC02
3J048AA07
3J048AC01
3J048AD05
3J048BC10
3J048BE12
3J048BF06
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】現場での施工を容易かつ安価に行うことができる免震装置を提供する。
【解決手段】上部構造物12と下部構造物14との間の免震層16に設けられ、前記上部構造物12を支持するすべり支承18を備える免震装置10であって、前記すべり支承18は、前記下部構造物14の上面に設けられた金属製のすべり板22と、前記上部構造物12の下面に設けられて前記すべり板22の上面を摺動可能なすべり材28とを有し、前記すべり板22は、第一すべり板30と、前記免震層16の大変形領域の想定変位に対応するために第一すべり板30の外周部に継ぎ合わせた第二すべり板32とを有するようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造物と下部構造物との間の免震層に設けられ、前記上部構造物を支持するすべり支承を備える免震装置であって、
前記すべり支承は、前記下部構造物の上面に設けられた金属製のすべり板と、前記上部構造物の下面に設けられて前記すべり板の上面を摺動可能なすべり材とを有し、前記すべり板は、第一すべり板と、前記免震層の大変形領域の想定変位に対応するために第一すべり板の外周部に継ぎ合わせた第二すべり板とを有することを特徴とする免震装置。
【請求項2】
第一すべり板と第二すべり板を継ぎ合わせた継ぎ目の角部において、R加工または面取り加工が施されていることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】
第二すべり板の上面と、第一すべり板の上面の高さの差は、所定値未満に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の免震装置。
【請求項4】
第二すべり板は、前記すべり材の移動方向に間隔をあけて配置した複数の板片からなることを特徴とする請求項1または2に記載の免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大変形に対応可能なすべり支承による免震装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、免震構造が知られている。免震構造は、主に建物基礎部に免震層を設け、地震時に免震層が大きく水平変形することで上部構造の加速度応答を低減し、免震層で効率的に入力エネルギーを吸収する構造である。免震構造は、大地震時においても上部構造の応答加速度を大きく低減できることから、建物の構造被害を防ぐだけでなく、地震後の建物機能維持も可能とする高い耐震性能を実現する構造である。
【0003】
近年、建物設計時に考慮すべき地震動レベルは増大しており、南海トラフや相模トラフにおける巨大地震による長周期・長時間地震動や、上町断層などの内陸の活断層型地震による長周期パルス地震動などが懸念されている。特に、2016年の熊本地震において観測されたような長周期パルス地震動は、免震層に1mを超える過大な変形を生じさせ、ダンパー量(減衰量)の増加のみでは変形を十分に抑えきれない。このような地震動によって、免震層変位がクリアランスを超えて上部構造が擁壁に衝突すると上部構造に過大な加速度が生じ、損傷が生じる可能性がある。
【0004】
これを防ぐ対策としては、免震層の過大な変形を抑制する方法、および免震層を大変形に追従可能とする方法がある。免震層を大変形に追従可能とするためには、免震クリアランスを大きく確保することと、免震装置が従来以上に大きく変形できる必要がある。免震装置を大変形に対応可能とする方法の一つとして、すべり支承の大変形化がある。すべり支承は、すべり材がすべり板上を摺動する免震支承である(例えば、特許文献1を参照)。このすべり板をより大面積とすることで、すべり材が摺動可能な範囲が拡大し、より大変形に対応可能なすべり支承とすることができる。ただし、効率的な道路輸送を考慮するとすべり板のサイズは3m×3m程度が限界であり、それ以上の大面積になると、輸送のコストと手間が増大する。
【0005】
このような問題を解決するための方法として、合理的に輸送可能なサイズにすべり板を分割して現場に運び入れ、現場にてすべり板を繋げることですべり支承の摺動範囲を広げる方法が知られている。例えば、特許文献2、3には、下部構造物に固定されるすべり板と、すべり板に摺動可能に当接するすべり材を有するすべり支承本体とを備える構成が示されている。すべり板として樹脂材料とステンレス鋼板などの金属板を接続したものを使用し、摺動範囲を拡大する、あるいは摩擦係数を変化させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-250394号公報
【特許文献2】特開2019-82219号公報
【特許文献3】特開2021-156390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の特許文献2、3に記載のすべり板は、樹脂材料と金属材料という異種材料を接続するものであるため、現場での施工が難しくなるおそれがある。また、樹脂材料は一般に高価なため、コストアップを招いてしまう。このため、すべり支承の摺動範囲を広げた免震装置を実現する場合において、現場での施工を容易かつ安価に行うことができる技術が求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、現場での施工を容易かつ安価に行うことができる免震装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る免震装置は、上部構造物と下部構造物との間の免震層に設けられ、前記上部構造物を支持するすべり支承を備える免震装置であって、前記すべり支承は、前記下部構造物の上面に設けられた金属製のすべり板と、前記上部構造物の下面に設けられて前記すべり板の上面を摺動可能なすべり材とを有し、前記すべり板は、第一すべり板と、前記免震層の大変形領域の想定変位に対応するために第一すべり板の外周部に継ぎ合わせた第二すべり板とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の免震装置は、上述した発明において、第一すべり板と第二すべり板を継ぎ合わせた継ぎ目の角部において、R加工または面取り加工が施されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の免震装置は、上述した発明において、第二すべり板の上面と、第一すべり板の上面の高さの差は、所定値未満に設定されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る他の免震装置は、上述した発明において、第二すべり板は、前記すべり材の移動方向に間隔をあけて配置した複数の板片からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る免震装置によれば、上部構造物と下部構造物との間の免震層に設けられ、前記上部構造物を支持するすべり支承を備える免震装置であって、前記すべり支承は、前記下部構造物の上面に設けられた金属製のすべり板と、前記上部構造物の下面に設けられて前記すべり板の上面を摺動可能なすべり材とを有し、前記すべり板は、第一すべり板と、前記免震層の大変形領域の想定変位に対応するために第一すべり板の外周部に継ぎ合わせた第二すべり板とを有するので、現場での施工を容易かつ安価に行うことができる。したがって、すべり支承の摺動範囲を広げた免震装置を容易かつ安価に実現することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他の免震装置によれば、第一すべり板と第二すべり板を継ぎ合わせた継ぎ目の角部において、R加工または面取り加工が施されているので、すべり材が継ぎ目を健全に摺動できて、継ぎ目のないすべり板を摺動する場合と同等の性能を発揮することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る他の免震装置によれば、第二すべり板の上面と、第一すべり板の上面の高さの差は、所定値未満に設定されているので、すべり材が継ぎ目を健全に摺動できて、継ぎ目のないすべり板を摺動する場合と同等の性能を発揮することができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る他の免震装置によれば、第二すべり板は、前記すべり材の移動方向に間隔をあけて配置した複数の板片からなるので、すべり材の変位に対するブレーキ効果を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明に係る免震装置の実施の形態を示す側断面図である。
【
図2】
図2(1)は、
図1のA-A線に沿った平面図、(2)は、
図1のB-B線に沿った平面図である。
【
図3】
図3は、すべり板の継ぎ目の形状を示す側断面図である。
【
図4】
図4は、継ぎ目のあるすべり板を通過した場合のすべり支承の摩擦係数と変位の関係を示す図である。
【
図5】
図5は、継ぎ目のあるすべり板を通過した場合のすべり支承の摩擦係数の変化を示す図である。
【
図6】
図6は、段差幅を連続で設けることで得られるブレーキ効果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る免震装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0019】
図1および
図2に示すように、本発明の実施の形態に係る免震装置10は、建物躯体をなす上部構造物12と、コンクリート基礎をなす下部構造物14との間の免震層16に設けられ、上部構造物12を支持するすべり支承18を備える。
【0020】
すべり支承18は、下部構造物14の上面に固定されたベースプレート20と、ベースプレート20の上面に固定された金属製のすべり板22と、上部構造物12の下面に固定されたプレート24と、プレート24の下面に固定されたホルダー26と、ホルダー26の下面に固定されたすべり材28とを有する。すべり材28は、すべり板22の上面を摺動可能に設けられる。すべり材28の平面形状は円形であるが、本発明はこれに限るものではなく、他の形状でもよい。すべり材28の円の直径はL3程度を想定しているが、本発明はこれに限るものではない。すべり材28の構成材料は、従来のすべり支承と同じものをそのまま使用することができる。
【0021】
すべり板22は、第一すべり板30と、第二すべり板32とを有する。第一すべり板30は、変形前の初期位置のすべり材28の直下に配置される。第二すべり板32は、免震層16の大変形領域の想定変位に対応するために第一すべり板30の外周部に継ぎ目を介して継ぎ合わせたものである。従来のすべり支承の許容変形領域を超えた部分に第二すべり板32を追加することで、従来の変位よりも大きな摺動範囲を確保する。これにより、すべり支承18の摺動範囲を広げ、大変形に対応可能な免震建物が可能となる。
【0022】
第一すべり板30の平面形状は、一辺がL1の正方形であるが、本発明はこれに限るものではなく、他の形状でもよい。第一すべり板30の正方形の中心と、変形前の初期位置のすべり材28の中心は同一鉛直線上に配置される。L1は、従来のすべり支承の摺動範囲L3(例えば、最大±0.9m)を考慮して、最大2.7m程度の長さを想定しているが、本発明はこれに限るものではない。第一すべり板30の構成材料は、従来のすべり支承のすべり板と同じものをそのまま使用することができる。例えば、すべり板として広く用いられる正方形状のステンレス鋼板などの金属板をそのままの形態で使用してもよい。すべり面に樹脂材料が設けられた金属板を用いてもよい。
【0023】
第二すべり板32の平面形状は、長辺がL1+ΔL、短辺がΔLの長方形である。この第二すべり板32を第一すべり板30の四辺に沿って連続的に配置することで、一辺がL2(=L1+2×ΔL)の正方形のすべり板22を形成することができる。L2は、3mを超えた長さとなる。第二すべり板32の平面形状および並べ方は、
図1(2)の例に限るものではなく、円形や曲線形状など他の形状、並べ方でもよい。第二すべり板32の構成材料は、従来のすべり支承のすべり板と同じものをそのまま使用することができる。例えば、すべり板として広く用いられるステンレス鋼板などの金属板を切断加工して使用してもよい。すべり面に樹脂材料が設けられた金属板を用いてもよい。
【0024】
ベースプレート20は、長方形状のプレート34の長辺同士を短辺方向に継ぎ合わせた正方形のものである。ベースプレート20の上面に敷設されるすべり板22が大面積であるため、ベースプレート20も大面積のものとなる。本実施の形態では、ベースプレート20の一辺の長さL4は4m程度を想定している。各プレート34は、ステンレス鋼板などの金属板で構成することができる。各プレート34は、トラック等で輸送可能な大きさのものを用いることが望ましい。また、各プレート34を現場で継ぎ合わせてベースプレート20を施工することが好ましい。図の例では、プレート4枚を継ぎ合わせて構成しているが、本発明はこれに限るものではなく、他の枚数を継ぎ合わせて構成してもよい。また、各プレート34の形状および並べ方は、
図1(3)の例に限るものではなく、すべり板22を設置可能な形状および並べ方であれば、円形や曲線形状など他の形状、並べ方でもよい。
【0025】
本実施の形態によれば、従来のすべり支承に使用されている材料のみですべり板22の面積を拡大することにより、従来のすべり支承と同等の安定した摺動特性で、大変形に対応可能である。大面積のすべり板22、ベースプレート20はそれぞれ分割して運搬可能であることから、一般的な道路輸送が可能であり、輸送コストと効率の面で合理的である。
【0026】
また、従来のすべり支承に使用されている材料のみで構成されるため、比較的安価である。すべり板22を構成する第一すべり板30、第二すべり板32は、同じ金属板で構成されるため、現場での継ぎ合わせ施工が容易である。したがって、本実施の形態によれば、現場での施工を容易かつ安価に行うことができる。これにより、すべり支承18の摺動範囲を広げた免震装置10を容易かつ安価に実現することができる。
【0027】
巨大地震による大きな免震層変位にも変位追従で対応できるので、擁壁衝突やストッパーによる変位抑制で生じる衝撃力が上部構造物12に作用することがない。このため、中小地震~巨大地震まで安定した免震性能を発揮できる。
【0028】
上記の実施の形態において、
図3(1)に示すように、第一すべり板30と第二すべり板32を継ぎ合わせた継ぎ目36の角部38に、R加工を施してもよい。R加工は、第一すべり板30、第二すべり板32の各厚さの1/2を半径とするR加工とすることが好ましい。また、
図3(2)に示すように、面取り加工を施してもよい。面取り加工は、第一すべり板30、第二すべり板32の各厚さの1/2の高さで30~60度の面取り加工とすることが好ましい。このようにすることで、すべり材28が継ぎ目36を健全に摺動でき、継ぎ目のないすべり板を摺動する場合と同等の安定した摺動性能を発揮することができる。
【0029】
また、継ぎ目36において、第二すべり板32の上面と、第一すべり板30の上面の段差高さHは所定値以下に設定することが好ましい。なお、
図3の例では、第二すべり板32の上面が第一すべり板30の上面よりも低い場合を図示しているが、高くしてもよい。第一すべり板30と第二すべり板32は、すべり材28の水平移動方向に段差幅Wの間隔をあけて配置してもよい。段差幅Wは2mm程度以下、段差高さHは0.5mm未満に設定することが望ましい。このようにすることで、すべり材28が継ぎ目36を健全に摺動でき、継ぎ目のないすべり板を摺動する場合と同等の安定した摺動性能を発揮することができる。
【0030】
段差高さHを0.5mm未満に設定するための手段として、例えば、ベースプレート20とすべり板22の間に薄い鋼板を挟み込んでもよい。薄い鋼板を挟み込むことにより、ベースプレート20上の継ぎ目36の凹凸等を吸収し、継ぎ目36に過剰な段差が生じることを防ぐことができる。これに代えて、またはこれに加えて、ベースプレート20の下の下部構造物14の上面を磨き仕上げとし、凹凸のない平滑な面と水平精度を確保するようにしてもよい。
【0031】
図4に、継ぎ目のあるすべり板をすべり材が通過する摺動実験により得られたすべり支承の摩擦係数と変位の関係を示す。
図4(1)はR加工を施した場合、
図4(2)は面取り加工を施した場合である。変位0の位置が継ぎ目である。いずれも段差高さ0.1mm以下、段差幅2mm、支承面圧20MPa、通過速度20cm/s、水平変位±230mm、5サイクルの条件下で得られている。これらの図に示すように、継ぎ目形状の加工と段差幅・段差高さを許容値(段差幅は2mm程度、段差高さは0.5mm未満)以下とすることで、すべり材が継ぎ目を健全に摺動することがわかる。また、本実験において、継ぎ目のないすべり板を摺動した時と同等の性能を発揮することを本発明者は確認している。
【0032】
図5に、摺動実験により得られたすべり支承の摩擦係数の変化を示す。ここでは、速度条件を図のように変えながら継ぎ目上をすべり材が通過する摺動実験(段差試験)を実施し、1つの速度条件ケースあたり継ぎ目上を10回通過させた。各速度条件ケースの間に実施した継ぎ目を通らない基準試験(段差試験前)の摩擦係数を1として、段差試験後の摩擦係数の変化率を求めた。なお、図の凡例において、「R加工-幅0高0」は、R加工を施した段差幅0、段差高さ0の場合、「R加工-幅2高0」は、R加工を施した段差幅2mm、段差高さ0の場合、「面取り-幅0高0」は、面取り加工を施した段差幅0、段差高さ0の場合、「面取-幅2高0」は、面取り加工を施した段差幅2mm、段差高さ0の場合である。この図に示すように、継ぎ目形状の段差幅・高さを上記の許容値以下とした場合、継ぎ目通過による摩擦係数の変動は、元の摩擦係数に対して+20%以下を維持することがわかる。
【0033】
継ぎ目形状の段差幅・高さを上記の許容値以下とすれば、すべり支承18が健全に摺動可能であることから、継ぎ目36を超えた大変形領域で摩擦係数を高めて変形量を抑制することが可能である。
【0034】
また、継ぎ目形状の段差幅・高さが上記の許容値以下であれば、すべり材28は健全に摺動するが、継ぎ目36による段差を通過する際には、摩擦係数がわずかに大きくなる。第二すべり板32の摩擦係数が、従来のすべり板の摩擦係数よりも大きくなるように、第二すべり板32の形状と並べ方を設定することで、大変形時にすべり材28の変位を抑制するブレーキ効果を得ることができる。
【0035】
例えば、
図6に示すように、第二すべり板32を、すべり材28の移動方向に間隔をあけて配置した複数の板片40によって構成してもよい。必要に応じて第二すべり板32の分割数を多くして、板片40と板片40の間に適切な幅を連続的に並設することにより、すべり材28の変位に対するブレーキ効果を得ることができる。
【0036】
以上説明したように、本発明に係る免震装置によれば、上部構造物と下部構造物との間の免震層に設けられ、前記上部構造物を支持するすべり支承を備える免震装置であって、前記すべり支承は、前記下部構造物の上面に設けられた金属製のすべり板と、前記上部構造物の下面に設けられて前記すべり板の上面を摺動可能なすべり材とを有し、前記すべり板は、第一すべり板と、前記免震層の大変形領域の想定変位に対応するために第一すべり板の外周部に継ぎ合わせた第二すべり板とを有するので、現場での施工を容易かつ安価に行うことができる。したがって、すべり支承の摺動範囲を広げた免震装置を容易かつ安価に実現することができる。
【0037】
また、本発明に係る他の免震装置によれば、第一すべり板と第二すべり板を継ぎ合わせた継ぎ目の角部において、R加工または面取り加工が施されているので、すべり材が継ぎ目を健全に摺動できて、継ぎ目のないすべり板を摺動する場合と同等の性能を発揮することができる。
【0038】
また、本発明に係る他の免震装置によれば、第二すべり板の上面と、第一すべり板の上面の高さの差は、所定値未満に設定されているので、すべり材が継ぎ目を健全に摺動できて、継ぎ目のないすべり板を摺動する場合と同等の性能を発揮することができる。
【0039】
また、本発明に係る他の免震装置によれば、第二すべり板は、前記すべり材の移動方向に間隔をあけて配置した複数の板片からなるので、すべり材の変位に対するブレーキ効果を得ることができる。
【0040】
なお、2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施の形態に係る免震装置は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「9.産業と技術革新の基盤を作ろう」の目標などの達成に貢献し得る。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明に係る免震装置は、大変形に対応可能な免震装置に有用であり、特に、すべり支承の摺動範囲を広げるのに適している。
【符号の説明】
【0042】
10 免震装置
12 上部構造物
14 下部構造物
16 免震層
18 すべり支承
20 ベースプレート
22 すべり板
24,34 プレート
26 ホルダー
28 すべり材
30 第一すべり板
32 第二すべり板
36 継ぎ目
38 角部
40 板片